JP2008222881A - エポキシ・シリコーン混成樹脂組成物及び発光半導体装置 - Google Patents

エポキシ・シリコーン混成樹脂組成物及び発光半導体装置 Download PDF

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Abstract

【課題】透明で、表面タック性がなく、かつリフロー試験時においても透明性が低下しない発光半導体素子被覆保護材として好適なエポキシ・シリコーン混成樹脂組成物、及びこれを用いた発光半導体装置を提供する
【解決手段】(A)オルガノポリシロキサンとして下記平均組成式(1):
1(OH)aSiO(3-a)/2 (1)
(式中、R1はメチル基又はγ-グリシドキシプロピル基であり、aは0<a<2を満たす数である。)
で表されるポリスチレン換算の重量平均分子量が3×104以上の高分子量体であり、1分子中に少なくとも2個以上のエポキシ基を有するポリメチルグリシドキシシロキサン樹脂、
(B)一分子中に少なくとも2個のエポキシ基を有するエポキシ樹脂、
(C)硬化剤、及び
(D)硬化触媒として第四級ホスホニウム塩
を含むエポキシ・シリコーン混成樹脂組成物。
【選択図】なし

Description

本発明は、発光半導体被覆保護材として有用なエポキシ・シリコーン混成樹脂組成物、及びこれを用いて発光半導体素子を被覆してなる発光半導体装置に関するものである。
発光ダイオード(LED)等の発光半導体素子の被覆保護用樹脂組成物には、その硬化物が透明であることが要求され、一般にビスフェノールA型エポキシ樹脂又は脂環式エポキシ樹脂等のエポキシ樹脂と酸無水物系硬化剤を用いて得られるものが用いられている(特許文献1、特許文献2参照)。しかし、これらの透明エポキシ樹脂は吸水性が高いため耐湿性が低い。特に短波長の光に対する光線透過性が低いために耐光性が低く、光劣化により着色し易いという欠点を有している。
そのため、ケイ素に結合した水素原子(SiH基)と反応性を有する炭素−炭素二重結合を一分子中に少なくとも2個含有する有機化合物、一分子中に少なくとも2個のSiH基を含有するケイ素化合物、及びヒドロシリル化触媒を含む、光半導体素子の被覆保護用樹脂組成物が提案されている(特許文献3、特許文献4参照)。しかし、このような樹脂組成物から得られるシリコーン系の硬化物は、耐クラック性を改良しようとすると一般に硬化物表面にタックが残るため、埃が容易に付着し、光の透過性を損なう欠点がある。
そのため、表面のタック性が低い硬化物が得られる高硬度シリコーン樹脂を保護被覆用に使用することが提案されている(特許文献5、特許文献6参照)。しかし、これらの高硬度シリコーン樹脂では接着性が乏しい。そのため、セラミック及び/又はプラスチックからなる筐体内に発光素子を配置し、その筐体内部にシリコーン樹脂を充填して発光素子を被覆するケース型の発光半導体装置は、例えば−40〜120℃での熱衝撃試験に供すると、硬化シリコーン樹脂がセラミックやプラスチックでできた筐体から剥離してしまう問題点が生じていた。
これらの欠点を補う可能性をもつ組成物として、ケイ素原子結合水酸基を有する有機ケイ素化合物、エポキシ化合物、アルミニウム系触媒、及びケイ素結合水素原子を有するオルガノケイ素化合物を含む組成物が提案されている(特許文献7参照)が、接着力及び変色の問題が生じていた。
近年、光半導体素子パッケージの小型化・薄型化・環境対応等の市場の要求に応えるべく、鉛フリー半田による実装に対応することが要求され、高い実装信頼性、特に高温での耐リフロー信頼性が求められている。特に光半導体用途では、リフロー試験時に樹脂硬化物の透明性が低下せずに維持されることが重要である。
一方、ケイ素を含んだネットワーク型オリゴマーであるシルセスキオキサンに関しては、例えば、エポキシ基及び/又はオキセタニル基含有シルセスキオキサンをカチオン性硬化剤で硬化させる発光ダイオード用封止樹脂が知られている(特許文献8参照)。しかし、カチオン性硬化剤を用いて硬化させて得られる硬化物は可とう性に乏しい。そのため、このような樹脂で発光ダイオードを封止すると、加熱や冷却の時に発光素子と封止樹脂の間などで大きな応力が生じ、硬化樹脂にクラックが発生したり、筐体からの封止樹脂の剥離、ボンディングワイヤーの切断などを誘発し、発光ダイオードの出力低下や不良の原因となる。
また、エポキシ環を少なくとも2つ有するシルセスキオキサン、エポキシ樹脂、酸無水物系硬化剤及び硬化触媒からなりBステージ化されてなる光半導体封止用樹脂組成物が開示されている(特許文献9参照)。しかし、該硬化触媒の選択とリフロー試験時の着色可能性に関しては何ら言及されていない。
特許第3241338号公報 特開平7−25987号公報 特開2002−327126号公報 特開2002−338833号公報 特開2002−314139号公報 特開2002−314143号公報 特開昭52−107049号公報 特開2004−238589号公報 特開2005−263869号公報
本発明は、上記事情に鑑みてなされたもので、透明で、表面タック性がなく、かつリフロー試験時においても透明性が低下しない発光半導体素子被覆保護材として好適なエポキシ・シリコーン混成樹脂組成物、及びこれを用いた発光半導体装置を提供することを課題とする。
本発明者は、上記目的を達成するため鋭意検討した結果、下記の組成物で半導体素子を封止保護することで、信頼性に優れた発光半導体装置が得られることを見出したものである。
(A)オルガノポリシロキサンとして下記平均組成式(1):
1(OH)aSiO(3-a)/2 (1)
(式中、R1はメチル基又はγ-グリシドキシプロピル基であり、aは0<a<2を満たす数である。)
で表されるポリスチレン換算の重量平均分子量が3×104以上の高分子量体であり、1分子中に少なくとも2個以上のエポキシ基を有するポリメチルグリシドキシシロキサン樹脂、
(B)一分子中に少なくとも2個のエポキシ基を有するエポキシ樹脂、
(C)硬化剤、及び
(D)硬化触媒として第四級ホスホニウム塩
を含むエポキシ・シリコーン混成樹脂組成物。
本発明の特に好適な実施形態においては、前記第四級ホスホニウム塩として下記式(2)で示される化合物、下記式(3)で示される化合物、又はこれらの組合わせが使用される。
Figure 2008222881
また、本発明は、発光半導体素子と、該発光半導体素子を封止する上記のエポキシ・シリコーン混成樹脂組成物の透明硬化物とを有する発光半導体装置を提供する。
本発明のエポキシ・シリコーン混成樹脂組成物の硬化物で発光半導体素子を被覆保護すると、リフロー試験においても硬化物の透明性が高く保持され変色が起こり難いので実装信頼性に優れる発光半導体装置が得られる。
また硬化物のガラス転移点が130℃以上であると硬化物表面のタック性が著しく抑制されていて埃付着が全く起らず、耐熱性に優れるためクラックが起りにくい。
以下、本発明をさらに詳細に説明する。なお、本明細書において用いる「ポリスチレン換算の重量平均分子量」とは、ゲルパーミエーションクロマトグラフィにより測定される分子量分布における重量平均分子量である。この分子量分布においてピークが2個以上ある場合には、最大分子量のピークについての重量平均値を意味する。
−エポキシ・シリコーン混成樹脂組成物−
第一に、(A)成分として用いられる、一分子中に少なくとも2個以上のエポキシ基を有し、高分子量体を含有するポリメチルグリシドキシシロキサン樹脂について説明する。
<(A)ポリメチルグリシドキシシロキサン樹脂>
本発明のポリメチルグリシドキシシロキサン樹脂とは、通常RSiX3(Rがメチル基のものとγ−グリシドキシプロピル基のものとの組合わせ、Xはハロゲン、アルコキシ基等の加水分解性基)で表される3官能性有機ケイ素化合物の加水分解、縮合により合成される、RSiO1.5単位を基本構成単位とするポリシロキサン樹脂である。但し、ケイ素原子に結合した水酸基を有するので、樹脂全体として原子構成は平均組成式(1)で表される。平均組成式(1)において、aは0<a<2の数であり、好ましくは0.01〜0.1の数であり、より好ましくは0.02〜0.05の数である。
一般にオルガノポリシロキサンの分子構造としては、代表的には、無定形構造(三次元網状構造)、ラダー型構造、かご型(完全縮合ケージ型)構造もしくはその部分開裂構造体(かご型構造からケイ素原子のうちの一部が欠けた構造やかご型構造の一部のケイ素−酸素結合が切断された構造)等が知られている。本発明の(A)成分のポリメチルグリシドキシシロキサン樹脂の構造はこれらのいずれの構造のものであってもよく、またそれらの組合わせであってもよい。
上記平均組成式(1)中、R1はメチル基とγ-グリシドキシプロピル基であり、分子中にRとして存在するメチル基とγ-グリシドキシプロピル基のモル比がメチル基:γ-グリシドキシプロピル基=0.1:99.9〜60:40であることが好ましく、更に好ましくは、メチル基:γ-グリシドキシプロピル基=10:90〜50:50であることが光学的特性において良好である。メチル基が多くなると、光学的特性、耐熱性などはより良好になるが、エポキシ樹脂との相溶性、基材との密着性が低下する傾向がある。エポキシ基が少ない場合は、特に基材との密着性が悪くなる傾向である。
・製造方法
上記平均組成式(1)で示されるポリメチルグリシドキシシロキサン樹脂は、例えば、
(i)加水分解性基を有するシラン化合物を第一次の加水分解および縮合に供してオルガノポリシロキサンを得る工程(工程(i))と、
(ii)得られたオルガノポリシロキサンをさらに第二次の加水分解および縮合に供する工程(工程(ii))
を含む方法により製造することができる。この方法を工程ごとに説明する。
<工程(i)>
工程(i)の出発原料として使用されるシラン化合物は、下記一般式(4):、
Si(OX1)3 (4)
(式中、Rは前記で定義の通りであり、X1は独立に炭素原子数1〜6のアルキル基、アルケニル基、アルコキシアルキル基またはアシル基である)
で表される3官能性シラン化合物である。
該一般式(4)で表されるシラン化合物としては、例えば、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリプロポキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリ(メトキシエトキシ)シラン、γ−グリシドキシプロピルトリ(イソプロペノキシ)シラン、γ−グリシドキシプロピルトリ(アセチルオキシ)シラン、メチルトリプロポキシシラン、メチルトリ(メトキシエトキシ)シラン、メチルトリ(イソプロペノキシ)シラン、メチルトリ(アセチルオキシ)シラン等が挙げられ、メチルトリメトキシシラン及びγ-グリシドキシプロピルトリメトキシシランが好ましい。
(A)成分のシロキサン樹脂は上記3官能性シラン化合物を加水分解・縮合して得られるRSiO3/2単位(オルガノシルセスキオキサン単位)を基本構成単位とするものであるが、(A)成分中にはこのRSiO3/2単位に加えて0〜10モル%程度、特に0〜5モル%程度のR SiO(4−b/2)(Rは炭素原子数1〜8の1価炭化水素基、bは1、2又は3)で示される1、2、3官能シロキサン単位を含有するものであってもよく、この場合原料として上記一般式(4)の特定の3官能性シラン化合物とともに用いることができる他の加水分解性基を有するシラン化合物として、R Si(OX4−bで示される1、2又は3官能性シラン化合物を0〜10モル%、特に0〜5モル%程度併用することができるものである。このシラン化合物はOXで示されるアルコキシ基などの加水分解基を官能基として1〜3個有し、不活性な置換基(即ち、Rで示される炭素原子数1〜8の1価炭化水素基)としてメチル基、エチル基等のアルキル基やフェニル基等のアリール等の有機基をもつ1官能、2官能、及び3官能シラン化合物が挙げられる。具体的には、例えば、トリメチルメトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、ジフェニルジメトキシシラン等である。
上記工程(i)において加水分解性基を有するシラン化合物の加水分解および縮合は、通常の方法で行えばよい。例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化テトラメチルアンモニウム等の塩基性触媒の存在下で行うことが好ましい。特に水酸化テトラメチルアンモニウム触媒を用いる場合には、アルコール系溶剤中で加水分解し、その後トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素基系溶媒等の有機溶剤中で平衡化反応を行うことにより、低分子量の加水分解物を得ることが出来る。塩基性触媒の使用量は、所要の適切な分子量の加水分解縮合物を得る上で、例えば、加水分解性基を有するシラン化合物中の加水分解性基の合計1モル当り、通常0.001〜0.1モルであり、好ましくは0.005〜0.05モル程度である。
工程(i)の加水分解および縮合の際に添加される水の量は、後述の組成物の作業性及びその硬化物の強靭性に鑑み、原料シラン化合物中の加水分解性基の合計量1モル当り、通常、1.5〜2.0モルであり、好ましくは1.6〜1.8モルである。
上記原料シラン化合物は、通常、アルコール類、芳香族化合物類等の有機溶剤に溶解して使用することが好ましい。具体的には、例えば、まずイソプロピルアルコール中で加水分解し、その後トルエン等の芳香族炭化水素基系溶媒で溶剤置換することが好ましい。アルコール中の加水分解・縮合は、ランダムな加水分解であり、その後の芳香族炭化水素基系溶媒中では平衡化反応がおこり、低分子量の縮合物を得ることが出来る。
工程(i)の加水分解および縮合の反応温度は、好ましくは10〜50℃、より好ましくは20〜30℃である。反応温度がかかる範囲を満たすと、ゲル化することなく、次の工程に適した分子量の加水分解縮合物が得られる。
こうして工程(i)で目的とするオルガノポリシロキサンが得られる。このオルガノポリシロキサンは、上記有機溶剤を使用した場合には溶液の状態で得られ、溶液の状態で工程(ii)に用いても、溶剤を留去して不揮発分のみとしてから工程(ii)に用いてもよいが、通常、工程(ii)に供するには、溶剤等による揮発分が5質量%以上であることが好ましく、10〜35質量%であることがより好ましい。揮発分が5質量%未満ではゲル化し易くなることがあり、35質量%を超えると反応性が低下することがある。工程(i)で得られるオルガノポリシロキサンのポリスチレン換算の重量平均分子量は、好ましくは5×102〜1×104、より好ましくは8×102〜8×103、特に好ましくは1×103〜4×103である。かかる範囲を満たすと、工程(ii)において、高分子量化し易くなり、目的とする適切な高分子量のオルガノポリシロキサンを得ることができる。
・工程(ii)
工程(ii)は、工程(i)で得られた上記オルガノポリシロキサンをさらに第二次の加水分解および縮合に供するものである。
この第二次の加水分解および縮合は加水分解縮合触媒である陰イオン交換樹脂の存在下で行われることが好ましい。この陰イオン交換樹脂としては、ポリスチレン系陰イオン交換樹脂が好ましい。この陰イオン交換樹脂は、一種単独で用いても二種以上を併用してもよい。ポリスチレン系陰イオン交換樹脂の具体例としては、例えば三菱化学(株)製商品名:ダイヤイオンSAシリ−ズ(SA10A,SA10AOH,SA11A,SA12A,NSA100,SA20A,SA21A)、ダイヤイオンPAシリ−ズ(PA308,PA312,PA316,PA406,PA412,PA418)、ダイヤイオンHPAシリ−ズ(HPA25)、ダイヤイオンWAシリ−ズ(WA10,WA20,WA21J,WA30)やオルガノ(株)製商品名:アンバーライトIRA-400,IRA-401,IRA-402、アンバーリストA-26,A-27,A-21や住友化学(株)製商品名:デユオライトA-101D,A-102D,A-104,A-109,A-132,A-143,A-161,A-161T,A-162,A-171P,A-7,A-30,A-340,A-375,A-377,A-378,A-561等を挙げることができる。
前記陰イオン交換樹脂の中でも、水分含有系ポリスチレン系陰イオン交換樹脂が好ましく、中でも樹脂中に30〜70質量%、とりわけ40〜50質量%の水分を含有するポリスチレン系陰イオン交換樹脂が特に好ましい。具体的には、下記式(5)で表される分子構造を有するダイヤイオンSA-10A、及び下記式(6)で表される分子構造を有するダイヤイオンSA-10AOHが挙げられる。
Figure 2008222881
Figure 2008222881
上記具体例のうち、式(6)で表される分子構造を有するSA10AOHは、樹脂中に43〜47質量%の水分を含有するポリスチレン系陰イオン交換樹脂であるので、特に好適に使用される。
水分含有系のポリスチレン系陰イオン交換樹脂等の陰イオン交換樹脂を用いた場合には、該触媒中の水分が作用して反応が進行する。なお、水分含有系のポリスチレン系陰イオン交換樹脂とは、最も一般的なものは、ゲル型のイオン交換樹脂であり、該樹脂粒子内部が均一な架橋高分子で構成されているもので、透明感のある外観である。該樹脂粒子の内部は橋架けされた高分子が均一な網目状の構造となっており、この網目の隙間を通って水分等が粒子内部まで自由に拡散しているものである。水分含有系の陰イオン交換樹脂を用いない場合には、別途、水を添加する必要がある。その際の水の使用量は、樹脂中に30〜70質量%の割合で添加することが好ましく、水がない場合や少なすぎる場合には陰イオンの塩基性が弱くなり、反応性が低下する場合があり、上記適切な割合の水分が存在することによって塩基性が強くなり、反応が良好に進行する。
この陰イオン交換樹脂の使用量は、工程(ii)の出発物質であるオルガノポリシロキサンの不揮発分に対して、通常、1〜50質量%、好ましくは5〜30質量%である。かかる範囲を満たすと、反応速度が良好であり、かつ得られる高分子量オルガノポリシロキサンはより安定したものとなる。
工程(ii)の加水分解および縮合の反応温度は、0〜40℃が好ましく、特に15〜30℃であるとより良好に反応が進行する。反応温度がかかる範囲を満たすと、反応速度が良好であり、かつ得られる高分子量オルガノポリシロキサンはより安定したものとなる。
工程(ii)の加水分解および縮合は、溶剤中で行うことが好ましく、有機固形成分の濃度が、特には50〜95質量%、とりわけ65〜90質量%の条件で行うことが好ましい。かかる範囲を満たすと、反応速度が良好であり、かつ得られる高分子量オルガノポリシロキサンはより安定したものとなる。
前記溶剤としては、特に限定されないが、沸点が64℃以上であるものが好ましく、例えば、ベンゼン、トルエン、キシレン等の炭化水素系溶媒;テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン、ジエチルエーテル等のエーテル系溶媒;メチルエチルケトン等のケトン系溶媒;クロロホルム、塩化メチレン、1,2−ジクロロエタン等のハロゲン系溶媒;メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、イソブチルアルコール等のアルコール系溶媒;オクタメチルシクロテトラシロキサン、ヘキサメチルジシロキサン等が挙げられ、更にセロソルブアセテート、シクロヘキサノン、ブチロセロソルブ、メチルカルビトール、カルビトール、ブチルカルビトール、ジエチルカルビトール、シクロヘキサノール、ジグライム、トリグライム等の沸点150℃以上の有機溶媒等が挙げられ、好ましくはキシレン、イソブチルアルコール、ジグライム、トリグライム、特に好ましくはイソブチルアルコールである。これらの溶媒は、一種単独で用いても二種以上を併用してもよい。
こうして本発明の目的とする、上記平均組成式(1)で表され、ポリスチレン換算の重量平均分子量が3×104以上、典型的には5×104〜6×105、より典型的には6×104〜5×105である高分子量体を含むオルガノポリシロキサンが得られる。GPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィ)による分子量分布においてピークが2個以上ある場合、この最大分子量のピーク(高分子量体)は、オルガノポリシロキサン中に少なくとも1%(1〜100%)、好ましくは5〜100%、特に10〜100%の含有量が必要であり、この含有量が1%未満では特に低応力性に劣るため硬化物にクラックが生じる不利がある。工程(ii)の加水分解および縮合を溶剤中で行った場合には、該高分子量オルガノポリシロキサンは溶液の状態で得られるものであり、溶液の状態で保存・使用してもよいし、溶媒を留去して不揮発分のみとしてから保存・使用してもよいが、溶媒がない状態では容易にゲル化する傾向が強くなるため、保存安定性の観点から、溶液の状態で保存することが好ましく、特に溶液の状態で5℃以下の温度で保存することがより好ましい。
<(B)エポキシ樹脂>
(B)成分であるエポキシ樹脂としては、一分子中に少なくとも2個のエポキシ基を有するエポキシ樹脂であれば特に限定されないが、前記(A)成分との区別を明確にする意味では、分子中にケイ素原子を含有しないものであることが望ましい。例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、フェノールアラルキル型エポキシ樹脂、ビフェニルアラルキル型エポキシ樹脂等の芳香族系エポキシ樹脂、前記各種エポキシ樹脂の芳香環を水素添加した水添型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂、脂環式エポキシ樹脂、トリグリシジルイソシアヌレート等の非芳香族系エポキシ樹脂などを挙げることができる。これらエポキシ樹脂は、一種単独でも2種以上組合わせても何ら差し支えない。なかでも光による劣化を防止するため水添型エポキシ樹脂、脂環式エポキシ樹脂、トリグリシジルイソシアヌレート等の非芳香族系エポキシ樹脂が好適に使用される。
(B)成分のエポキシ樹脂の配合量(即ち、(A)成分及び(B)成分の合計に占める(B)成分の割合)は、5〜80質量%であることが好ましい。5質量%未満では本組成物を硬化させて得られる硬化物の強度が不十分となり易く、得られる組成物で発光半導体装置を封止した場合、温度サイクルなどの試験で硬化物に容易にクラックが発生したり、封止される装置との間で接着不良が生じるおそれがある。一方、80質量%を超えるとエポキシ樹脂分が多くなり過ぎて、発光素子が紫外線等を発光するような場合、該組成物の硬化物が紫外光により劣化してしまうおそれがある。このため、より望ましくは10〜70質量%、特に望ましくは20〜60質量%である。
<(C)硬化剤>
本発明においては、(A)成分及び(B)成分が有するエポキシ基との反応により架橋物を形成するために、硬化剤((C)成分)を使用することができる。このような硬化剤としては、エポキシ樹脂に通常使用される硬化剤を使用することができ、例えばアミン系硬化剤、フェノール系硬化剤、酸無水物系硬化剤のいずれであってもよい。特に、酸無水物系硬化剤を好適に使用できる。
このような酸無水物系硬化剤としては、無水フタル酸、無水マレイン酸、無水トリメリット酸、無水ピロメリット酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸、3−メチル−ヘキサヒドロ無水フタル酸、4−メチル−ヘキサヒドロ無水フタル酸、あるいは3−メチル−ヘキサヒドロ無水フタル酸と4−メチル−ヘキサヒドロ無水フタル酸との混合物、テトラヒドロ無水フタル酸、無水ナジック酸、無水メチルナジック酸、ノルボルナン−2,3−ジカルボン酸無水物、メチルノルボルナン−2,3−ジカルボン酸無水物などを挙げることができる。硬化剤の配合量は、(A)成分中のエポキシ基と(B)成分中のエポキシ基との合計1モルに対して0.5〜1.5モルが好ましく、より好ましくは0.8〜1.2モルである。
<(D)硬化触媒>
(D)成分としては1種または2種以上の第四級ホスホニウム塩が用いられ、これは硬化触媒として働く。該硬化触媒としては、特に下記式(2)で示される化合物及び下記式(3)で示される化合物が好ましい。これらは1種単独で用いてもよいし2種を併用してもよい。これら以外の第四級ホスホニウム塩を組合わせて使用してもよい。硬化触媒として第四級ホスホニウム塩を用いることにより、透明で表面タック性がなく、リフロー試験時に変色が起こらず、高い実装信頼性を得ることができる。
下記式(2)及び(3)で示される化合物以外の第四級ホスホニウム塩の具体例としては、第四級ホスホニウムのブロマイド塩であるサンアプロ社製「U−CAT5003」を挙げることができる。
Figure 2008222881
また、硬化触媒としては、(D)成分である第四級ホスホニウム塩の他に、任意的にその他の硬化触媒を用いることもできる。このようなその他の硬化触媒としては、トリフェニルフォスフィン、ジフェニルフォスフィン等の有機フォスフィン系硬化触媒、1,8−ジアザビシクロ(5,4,0)ウンデセン−7、トリエタノールアミン、ベンジルジメチルアミン等の三級アミン系硬化触媒、2−メチルイミダゾール、2−フェニル−4−メチルイミダゾールなどのイミダゾール類などを挙げることができる。
このような(D)成分の硬化触媒の配合量は、有効量、即ち、エポキシ樹脂と硬化剤との反応を促進させる効果を十分に得ることができる量であればよい。具体的には、上記(A)、(B)、及び(C)成分の合計量100質量部に対し0.05〜3質量部が好ましい。硬化触媒の配合量が多すぎると、硬化時やリフロー試験時に変色発生の原因となるおそれがある。
<その他の成分>
本発明の組成物には、必要に応じて、本発明の目的、効果を損なわない限りその他の成分を添加することができる。
例えば、波長変更するための蛍光体、酸化チタン微粉末等の光散乱剤、酸化防止剤、変色防止剤、劣化防止剤、シリカなどの無機充填剤、シラン系カップリング剤、変性剤、可塑剤、希釈剤などが挙げられる。
本発明のエポキシ・シリコーン混成樹脂組成物は、(A)、(B)、(C)及び(D)成分等を混合することにより容易に製造することができる。
本発明の発光半導体を被覆保護するための、(A)、(B)、(C)及び(D)成分を必須成分とする被覆保護材をポッティングやインジェクションなどで使用する場合は液状であることが好ましく、25℃の粘度は回転粘度計による測定値として10〜1,000,000mPa・s、特には100〜1,000,000mPa・s程度が好ましい。一方、トランスファー成型で発光半導体装置を製造する場合には、上記の液状樹脂を使用することもできるが、液状樹脂を増粘させて固形化し、ペレット化した後、成型することでも製造することができる。
<使用>
本発明のエポキシ・シリコーン混成樹脂組成物は、発光半導体を被覆保護するための被覆保護材として好適に使用される。この場合、発光半導体としては、発光ダイオード(LED)、有機電界発光素子(有機EL)、レーザーダイオード、LEDアレイ等を挙げることができる。発光半導体を被覆保護する態様は特に制限されるものではないが、開口部を有する筐体内に配置された発光半導体を覆って筐体内に被覆保護材を充填し、硬化させる等の方法を採用し得る。また、マトリックス化された基板上にLEDを搭載したものを印刷法、トランスファー成型、インジェクション成型などで製造することもできる。
なお、本発明において、被覆保護材の硬化条件は、25℃で72時間から200℃で3分間と、それぞれの作業において求めれる条件に合わせて広い範囲において選択できる。また、生産性と発光素子や筐体の耐熱性とのバランスを考慮して適宜選定することができる。トランスファー成型やインジェクション成型の場合は150〜180℃の温度、20〜50kgf/cm2の圧力で1〜5分間成型することで容易に製造することができる。また、後硬化(二次硬化又はポストキュア)を150〜200℃で1〜4時間の条件で行うことができる。
本発明の組成物は、その硬化物のガラス転移点が130℃以上、通常、130〜180℃、特に135〜165℃のものであることが好ましい。この場合、このガラス転移点は熱機械分析(TMA)測定法における線膨張係数の変曲点として定義される値(温度)である。
ここで、本発明の組成物の硬化物のガラス転移点を130℃以上にする具体的手段としては、(B)成分のエポキシ樹脂、特に、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂、脂環式エポキシ樹脂、トリグリシジルイソシアヌレート等の非芳香族系エポキシ樹脂の配合量(即ち、(A)成分及び(B)成分の合計に占める(B)成分の割合)を10〜70質量%、特に20〜60質量%に調整することによって達成することができる。
以下、実施例及び比較例を示し、本発明を具体的に説明するが、本発明は下記の実施例に制限されるものではない。
まず、実施例及び比較例の被覆保護材の評価方法を示す。
−評価方法−
組成物を5mm×10mm×100mm(長さ)の角棒状に成形し硬化させた。また、LEDチップ及びリードフレームの配置された砲弾型発光半導体装置を組成物で被覆し、100℃,2時間加熱し、次いで150℃,4時間加熱して硬化させて該発光半導体装置を封止した。
こうして得られた硬化物を用いて下記の項目の評価を行った。
・表面タック性:
角棒状硬化物を触診し、表面タック性の有無を評価した。
・硬化物外観:
角棒状硬化物及び作製した発光半導体装置の封止硬化物において変色発生の有無を目視にて評価した。
・耐リフロー性:
作製した発光半導体装置に、260℃ピークのリフローテスト処理を5回行い、変色発生の有無を目視にて評価した。
・硬度:
角棒状硬化物についてJIS K6301に準拠して測定した(ショアD)。
・ガラス転移点:
角棒状硬化物から幅4mm、長さ10mm、厚さ4mmの測定用試料を切り出し、JIS K7197に従って熱機械分析(TMA)測定法により、線膨張係数の変曲点をガラス転移点(Tg)とした。
・熱衝撃試験:
作製した発光半導体装置50個を、最低温度−40℃、最高温度120℃の温度サイクル(一サイクル10分)に200サイクル供した。その後、封止硬化物の外観を観察しクラックが発生した個数を測定した。
−使用材料−
以下の記載において、成分又は材料に付した星印(*)はそのものが本発明の条件を満たさないことを示す。
・(A)ポリメチルグリシドキシシロキサン樹脂:
一分子中に少なくとも2個以上のエポキシ基を有し、高分子量体を含有するポリメチルグリシドキシシロキサン樹脂は次の合成例に示すように製造した。
<合成例1>
反応容器にイソプロピルアルコール900g、水酸化テトラメチルアンモニウムの25%水溶液13g、水91gを仕込んだ後、あらかじめ混合したγ―グリシドキシプロピルトリメトキシシラン153g(0.65モル)およびメチルトリメトキシシラン59g(0.43モル)とを添加し、室温で20時間攪拌下で反応させた。
反応終了後、系内にトルエン1200g加え、減圧下でイソプロピルアルコール等を除去した。分液漏斗を用いて、残渣を熱水にて洗浄した。水層が中性になるまで、洗浄を行った後、トルエン層を無水硫酸ナトリウムで脱水した。無水硫酸ナトリウムをろ去後、減圧下でトルエンを除去して樹脂を得た。ポリスチレン換算の重量平均分子量は1.6×104である高分子量体を含む重合体であった。
得られた樹脂から25gとり、ポリスチレン系陰イオン交換樹脂(商品名:ダイヤイオンSA10A、三菱化学(株)製、水分含有量:43〜47質量%)5gとともにフラスコに入れ、室温で48時間、攪拌下で混合しながら反応させた。48時間の反応の終了後、反応混合物にキシレン100gを加えた。こうして得られたキシレン溶液には不溶のゲルは認められなかった。前記のイオン交換樹脂をろ去後、減圧下でキシレンを除去して樹脂を得た。ポリスチレン換算の重量平均分子量が1.2×105である高分子量体を含むポリメチルグリシドキシシロキサン樹脂(重合体A1)を得た。
<合成例2>
原料単量体として用いるγ―グリシドキシプロピルトリメトキシシランの量を229g(0.97モル)に、メチルトリメトキシシランの量を15g(0.11モル)に変えた以外は合成例1と同様にしてポリスチレン換算の重量平均分子量が8.5×104である高分子量体を含むポリメチルグリシドキシシロキサン樹脂(重合体A2)を得た。
<比較合成例1>
原料単量体としてγ―グリシドキシプロピルトリメトキシシラン255g(1.08モル)だけを使用した以外は合成例1と同様にしてポリスチレン換算の重量平均分子量が1.6×104である高分子量体を含む重合体(重合体A3(*))を得た。
・(B)エポキシ樹脂:
トリ(2,3−エポキシプロピル)イソシアヌレート(商品名:「TEPIC」、である日産化学工業社製)
・(C)硬化剤:
メチルヘキサヒドロ無水フタル酸(商品名「MH」、新日本理化社製)
・(D)硬化触媒:
・・前記式(2)で示される化合物(日本化学工業社製、商品名「ヒシコーリンPX−4MP」)、
前記式(3)で示される化合物(日本化学工業社製、商品名「ヒシコーリンPX−4ET」)
・・前記式(2)又は(3)に該当しない第四級ホスホニウム塩(サンアプロ社製「U−CAT5003」)、
・・2−エチル−4メチルイミダゾール(*)(略称:2E4MZ)(四国化成工業社製)
・・2,3−ジヒドロ−1H−ピロロ[1,2−a]ベンズイミダゾール(*)(略称:TBZ)(四国化成工業社製)
[実施例1〜3及び比較例1〜3]
各例において、下記表1に示す配合量で、成分(A)、(B)、(C)及び(D)を配合して組成物を調製した。各組成物を用いて上記条件で硬化物及び発光半導体装置を作製し、表面タック性、硬化物外観、耐リフロー性評価した。結果を表1に併記する。
Figure 2008222881
[比較例4]
YX−8000(50部)、MH(40部)、PX−4MP(1部)を配合して組成物を調製した。該組成物を用いて前述のようにして棒状の硬化物及び発光半導体装置を作製した。
なお、ここで用いた材料は次の通りである。
YX−8000:水素添加ビスフェノールA型エポキシ樹脂(ジャパンエポキシレジン社製)
MH:メチルヘキサヒドロ無水フタル酸(新日本理化社製)
PX−4MP:有機ホスホニウム塩(日本化学工業社製)]
[比較例5]
シリコーン樹脂KJR−632(商品名、信越化学工業社製)を用いて前述のようにして棒状の硬化物及び発光半導体装置を作製した。
次に、上記の評価方法に従って、実施例1及び比較例4、5で得られた硬化物の表面タック性、硬度、ガラス転移点を測定し、発光半導体装置を熱衝撃試験に供した。測定した。結果を表2に示す。
Figure 2008222881

Claims (6)

  1. (A)オルガノポリシロキサンとして下記平均組成式(1):
    1(OH)aSiO(3-a)/2 (1)
    (式中、R1はメチル基又はγ-グリシドキシプロピル基であり、aは0<a<2を満たす数である。)
    で表されるポリスチレン換算の重量平均分子量が3×104以上の高分子量体であり、1分子中に少なくとも2個以上のエポキシ基を有するポリメチルグリシドキシシロキサン樹脂、
    (B)一分子中に少なくとも2個のエポキシ基を有するエポキシ樹脂、
    (C)硬化剤、及び
    (D)硬化触媒として第四級ホスホニウム塩
    を含むエポキシ・シリコーン混成樹脂組成物。
  2. (A)成分のポリメチルグリシドキシシロキサン樹脂が、更に、R SiO(4−b/2)(但し、Rは炭素原子数1〜8の1価炭化水素基、bは1、2又は3)で示されるシロキサン単位を10モル%以下含有するものである請求項1に係るエポキシ・シリコーン混成樹脂組成物。
  3. (A)成分のポリメチルグリシドキシシロキサン樹脂中に存在する複数のRを構成するメチル基とγ-グリシドキシプロピル基のモル比が、メチル基:γ-グリシドキシプロピル基=0.1:99.9〜60:40あることを特徴とする請求項1に係る組成物。
  4. 前記第四級ホスホニウム塩が、下記式(2)で示される化合物、下記式(3)で示される化合物、又はこれらの組み合わせを含むことを特徴とする請求項1に係る組成物。
    Figure 2008222881
  5. 硬化物のガラス転移点が130℃以上である請求項1〜3のいずれか1項に係る組成物。
  6. 発光半導体素子と、該発光半導体素子を封止する請求項1〜4のいずれか1項に記載のエポキシ・シリコーン混成樹脂組成物の透明硬化物とを有する発光半導体装置。
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