JP2008221867A - 車両の電子ユニットカバー構造 - Google Patents

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Abstract

【課題】車両の電子ユニットカバー構造において、電子ユニットの組付け性とメンテナンス・サービス性を確保するとともに、カバー部材で電子ユニットの上端部分をコネクタ及びハーネスと共にカバーして盗難防止対策を施し、そのうえで、ボンネットに衝突物が衝突した際にカバー部材の下方変位を許容してエネルギー吸収性能を高めること、更に、カバー部材が下方変位した後に容易に取外されないようにする。
【解決手段】 電子ユニットカバー構造30は下方変位許容機構60を備え、この下方変位許容機構60は、カバー本体40に対してカバー部材50を可動に連結して通常取付位置に保持すると共に、ボンネット8からカバー部材50に設定荷重以上の荷重が入力された場合に、カバー本体40に対してカバー部材50の連結を維持してカバー部材50を通常取付位置から下方変位させる。
【選択図】 図3

Description

本発明は、車両のエンジンルーム内に配設された電子ユニットの少なくとも上端部分をカバーするカバー部材を備えた車両の電子ユニットカバー構造に関するものである。
従来、自動車等の車両において、エンジンルーム内にエンジン等の制御系装置を制御する電子ユニットを配設し、この電子ユニットの組付け性やメンテナンス・サービス性を向上させるために、電子ユニットの上端部がボンネットに接近して位置するように電子ユニットを配置して、電子ユニットの上面部にコネクタを取付け、このコネクタを介して制御系装置との通信用のハーネスを電子ユニットに接続し、更に、このハーネスをコネクタの上側に配置した構造が周知である。
このような構造において、車両や車載荷物の盗難防止対策として、電子ユニットをカバーする電子ユニットカバー構造が周知であり、この電子ユニットカバー構造では、電子ユニットの上端部分以外の大部分をカバーするカバー本体と、電子ユニットの上端部分をコネクタ及びハーネスと共にカバーするカバー部材とを有し、カバー部材はカバー本体に対して取外し可能に取付けられるが、カバー部材が容易に取外されないように、例えば特殊な締結構造を用いて強固に固定されている。
一方、車両衝突時、ボンネットに衝突物が衝突した場合に、ボンネットが下方変位することで衝突エネルギーを吸収することができ、このエネルギー吸収性能を高めるためには、ボンネットにエンジンルーム内機器を接近し過ぎないようにする必要がある。尚、特許文献1には、ボンネットに衝突物が衝突した際のエネルギー吸収性能を高めるために、ボンネットを開閉する為のヒンジを、弾性体を有する衝撃吸収部を介してボンネットに連結した構造が開示されている。
特開2000−108842号公報
前記のように、電子ユニットの上端部がボンネットに接近して位置するように電子ユニットが配設されると、電子ユニットの組付け性やメンテナンス・サービス性を向上させる上で有利になるが、前記電子ユニットカバー構造では、カバー部材により、電子ユニットの上端部分が、電子ユニットの上面部に取付けられたコネクタと共に、更に、コネクタの上側に配置されたハーネスと共にカバーされるため、カバー部材の上端部の高さ位置が高くなって、カバー部材の上端部がボンネットに接近し過ぎてしまう。
そして、前記電子ユニットカバー構造では、カバー部材がカバー本体に対して移動不可能に強固に固定されているため、車両衝突時、ボンネットに衝突物が衝突した場合に、カバー部材の上方近傍のボンネット部分が下方変位すると、衝突エネルギーが吸収されるが、このボンネット部分は下方変位開始後直ぐにカバー部材に当たって受止められ、それ以上は下方変位しにくくなるで、ボンネットに衝突物が衝突した際のエネルギー吸収性能を高めることができないという問題が生じる。
そこで、電子ユニット及びカバーの配置を全体的に下げることも考えられるが、前記のように、カバー部材は電子ユニットの上端部分を電子ユニットの上面部に取付けられたコネクタ及びコネクタの上側に配置されたハーネスと共にカバーするため、これら電子ユニット及びカバーの全上下長が大きくなり、その下側に位置するエンジンルーム内機器が配置制約を受け、既存のエンジンルーム内機器の配置では、電子ユニット及びカバーの配置を全体的に下げることが困難な場合もある。
本発明の目的は、車両の電子ユニットカバー構造において、電子ユニットの組付け性とメンテナンス・サービス性を確保するとともに、カバー部材で電子ユニットの上端部分をコネクタ及びハーネスと共にカバーして盗難防止対策を施し、そのうえで、ボンネットに衝突物が衝突した際にカバー部材の下方変位を許容してエネルギー吸収性能を高めること、更に、カバー部材が下方変位した後も容易に取外されないようにすること、等である。
請求項1の車両の電子ユニットカバー構造は、車両のエンジンルーム内に配設され上端部がボンネットに接近して位置する電子ユニットの少なくとも上端部分を、この電子ユニットの上面部に取付けられたコネクタ及びそのコネクタに接続されてコネクタの上側に配置されたハーネスと共にカバーするカバー部材を備えた車両の電子ユニットカバー構造において、前記ボンネットから所定の通常取付位置のカバー部材に設定荷重以上の荷重が入力された場合に、カバー部材が通常取付位置からカバー部材の下側のハーネス配置空間を減少させて下方変位することを許容する下方変位許容手段を設けたことを特徴とする。
車両のエンジンルーム内に電子ユニットが配設され、その上端部がボンネットに接近して位置し、電子ユニットの上面部にコネクタが取付けられるので、電子ユニットの組付け性とメンテナンス・サービス性が向上する。カバー部材により、電子ユニットの少なくとも上端部分がコネクタ及びそのコネクタに接続されてコネクタの上側に配置されたハーネスと共にカバーされるので、車両や車載荷物の盗難防止対策が施される。
車両衝突時、ボンネットに衝突物が衝突した場合、ボンネットが下方変位することで衝突エネルギーを吸収する。電子ユニットの上端部がボンネットに接近し、カバー部材が電子ユニットの上端部分をコネクタ及びハーネスと共にカバーするため、カバー部材の上端部はボンネットに更に接近するが、ボンネットに衝突物が衝突した場合に、ボンネットが下方変位してカバー部材に当たって、ボンネットから通常取付位置のカバー部材に設定荷重以上の荷重が入力された場合に、下方変位許容手段により、カバー部材が通常取付位置からカバー部材の下側のハーネス配置空間を減少させて下方変位することが許容される。
ここで、ハーネスは複数の信号線を束ねて構成され、ハーネスがボンネットからカバー部材を介して受ける力で全体的に上下方向に圧縮変形できるので、ボンネットが下方変位してカバー部材に当たってから更にカバー部材と共に確実に下方変位して衝突エネルギーを吸収し、故に、ボンネットに衝突物が衝突した際のエネルギー吸収性能が高められる。
ここで、請求項1の従属請求項として次の構成を採用してもよい。
前記カバー部材の上端面が、その上方近傍に位置するボンネット部分と対面するように、電子ユニット及びカバー部材が前傾姿勢に配設される(請求項2)。前記電子ユニットの少なくとも上端部分以外の大部分をカバーするカバー本体を備え、前記下方変位許容手段は、カバー本体に対してカバー部材を可動に連結して前記通常取付位置に保持すると共に、ボンネットからカバー部材に設定荷重以上の荷重が入力された場合に、カバー本体に対してカバー部材の連結を維持してカバー部材を前記通常取付位置から下方変位させるように構成される(請求項3)。
前記カバー本体とカバー部材の対応する側壁部同士が対向状に配設され、前記下方変位許容手段は、カバー本体とカバー部材の一方の側壁部に固定的に設けられたピン状部材と、カバー本体とカバー部材の他方の側壁部に形成され且つ前記ピン状部材が係合する上下方向に細長い長孔とを有する(請求項4)。前記ピン状部材が締結部材からなり、前記下方変位許容手段は、前記締結部材の両端部でカバー本体とカバー部材とを挟持することで、カバー部材を前記通常取付位置に保持する(請求項5)。前記下方変位許容手段は、カバー本体とカバー部材の一方に設けられ他方を係止する係止部であって、カバー部材を前記通常取付位置に保持するとともに、ボンネットからカバー部材に設定荷重以上の荷重が入力された場合に破断する係止部を有する(請求項6)。
請求項1の車両の電子ユニットカバー構造によれば、車両のエンジンルーム内に電子ユニットを配設し、その上端部がボンネットに接近して位置し、カバー部材により、電子ユニットの少なくとも上端部分を、この電子ユニットの上面部に取付けられたコネクタ及びそのコネクタに接続されてコネクタの上側に配置されたハーネスと共にカバーするので、電子ユニットの組付け性とメンテナンス・サービス性を確保するとともに、車両や車載荷物の盗難防止対策を施すことができ、そのうえで、ボンネットから通常取付位置のカバー部材に設定荷重以上の荷重が入力された場合に、カバー部材が通常取付位置からカバー部材の下側のハーネス配置空間を減少させて下方変位することを許容する下方変位許容手段を設けたので、車両衝突時、ボンネットに衝突物が衝突した場合、ボンネットが下方変位してエネルギーを吸収するが、ボンネットが下方変位してカバー部材に当たってから更にカバー部材と共に確実に下方変位して衝突エネルギーを吸収でき、故に、ボンネットに衝突物が衝突した際のエネルギー吸収性能を高めることができる。
請求項2の車両の電子ユニットカバー構造によれば、カバー部材の上端面が、その上方近傍に位置するボンネット部分と対面するように、電子ユニット及びカバー部材を前傾姿勢に配設したので、ボンネットからカバー部材に入力される荷重の入力方向にカバー部材が変位し易いようにして、カバー部材を確実に下方変位させ、ボンネットに衝突物が衝突した際のエネルギー吸収性能を確実に高めることができる。
請求項3の車両の電子ユニットカバー構造によれば、電子ユニットの少なくとも上端部分以外の大部分をカバーするカバー本体を備え、下方変位許容手段は、カバー本体に対してカバー部材を可動に連結して通常取付位置に保持すると共に、ボンネットからカバー部材に設定荷重以上の荷重が入力された場合に、カバー本体に対してカバー部材の連結を維持してカバー部材を通常取付位置から下方変位させるように構成したので、通常時は、カバー部材をカバー本体に支持して通常取付位置に保持でき、カバー部材が下方変位した後も容易に取外されないようにすることができるので、盗難防止対策を維持できる。
請求項4の車両の電子ユニットカバー構造によれば、カバー本体とカバー部材の対応する側壁部同士を対向状に配設し、下方変位許容手段は、カバー本体とカバー部材の一方の側壁部に固定的に設けられたピン状部材と、カバー本体とカバー部材の他方の側壁部に形成され且つピン状部材が係合する上下方向に細長い長孔とを有するので、ボンネットからカバー部材に設定荷重以上の荷重が入力された場合に、カバー部材をガイドして確実に下方変位させることができ、カバー部材が下方変位した後も容易に取外されることを確実に防止できる。
請求項5の車両の電子ユニットカバー構造によれば、ピン状部材が締結部材からなり、下方変位許容手段は、締結部材の両端部でカバー本体とカバー部材とを挟持することで、カバー部材を通常取付位置に保持するので、この締結部材により、ボンネットから通常取付位置のカバー部材に設定荷重以上の荷重が入力された場合に、カバー部材を確実に下方変位させるとともに、カバー部材を通常取付位置に保持する機能と、カバー部材が下方変位した後に容易に取外されないようにする機能とを両立させることができる。
請求項6の車両の電子ユニットカバー構造によれば、下方変位許容手段は、カバー本体とカバー部材の一方に設けられ他方を係止する係止部であって、カバー部材を通常取付位置に保持するとともに、ボンネットからカバー部材に設定荷重以上の荷重が入力された場合に破断する係止部を有するので、請求項5のように、ピン状部材(締結部材)にカバー部材を通常取付位置に保持する機能を持たせずに、つまり、ピン状部材の構成を簡単化できて、係止部によりカバー部材を通常取付位置に確実に保持できる。
本発明の車両の電子ユニットカバー構造は、車両のエンジンルーム内に配設され上端部がボンネットに接近して位置する電子ユニットの少なくとも上端部分を、この電子ユニットの上面部に取付けられたコネクタ及びそのコネクタに接続されてコネクタの上側に配置されたハーネスと共にカバーするカバー部材を備え、ボンネットから所定の通常取付位置のカバー部材に設定荷重以上の荷重が入力された場合に、カバー部材が通常取付位置からカバー部材の下側のハーネス配置空間を減少させて下方変位することを許容する下方変位許容手段を設けたものである。
図1、図2に示すように、自動車1の前部にエンジンルーム2が形成され、その後端がダッシュパネル3により車室4と仕切られ、エンジンルーム2の左右両側部分に、左右1対の前後方向へ延びるフロントサイドフレーム5が配設され、これらフロントサイドフレーム5の後端部がダッシュパネル3に結合され、更に、上側部分に左右1対の前後方向へ延びるエプロン部材6が配設され、左右1対のホイールハウス7が形成されている。
エンジンルーム2の上方は、前方程下方へ移行する傾斜状に且つ左右方向中央部に対して左右方向外側程下方へ移行する傾斜状に形成されたボンネットド8(図3参照)により開閉可能に覆われ、このエンジンルーム2の内部に、エンジン9等の他、エンジン9や盗難防止装置等の制御系装置を制御する電子ユニット10、電子ユニット10やエンジンスタータやランプ類等の電気系装置に電力を供給するバッテリ20等、種々の装置、機構、部材、部品(エンジンルーム内機器)が収容されている。
エンジン9は横向きにしてエンジンルーム2の中央部分に少し右よりに配置され、エンジンの左側に、バッテリ20、電子ユニット10、エアクリーナ19が後側から前側へ順に配置されている。バッテリ20は平面視にて前後方向長さが左右方向長さよりも長くなる縦向きにして左側のホイールハウス7に接近した位置に配設されて、バッテリトレー21(図3参照)に載置支持され、そのバッテリトレー21はフロントサイドフレーム5やホイールハウス7等の車体部材に連結支持されている。
図1〜図3に示すように、電子ユニット10は、バッテリ20の前方近傍部に、正面視にて矩形で左右方向長さよりも前後方向長さが長くなる鉛直姿勢で配置され、バッテリトレー21の前壁22にブラケット25,26を介して連結支持され、電子ユニット10の上端部がバッテリ20の上端部よりも高くなってボンネット8に接近して位置している。
図3、図4に示すように、電子ユニット10の上面部に左右1対のコネクタ11が取付けられ、これらコネクタ11を介して制御系装置との通信用の1対のハーネス12が電子ユニット10に接続されている。1対のハーネス12は、1対のコネクタ11から互いに左右反対方向へ延び、コネクタ11との接続端部分とその近傍部分がコネクタ11の上側に配置されるとともに、電子ユニット10の左右両側において下方へ屈曲して延びている。各ハーネス12は複数の信号線を束ねてチューブでカバーして構成されている。
次に、本発明の電子ユニットカバー構造30について詳細に説明する。
図3〜図7に示すように、電子ユニットカバー構造30は、電子ユニット10の上端部分以外の大部分をカバーするカバー本体40と、電子ユニット10の上端部分を1対のコネクタ11及びそのコネクタ11の上側及び側方に配置された1対のハーネス12と共にカバーするカバー部材50と、ボンネット8から図3、図4に示す所定の通常取付位置のカバー部材50に設定荷重以上の荷重が入力された場合に、図6に示すように、カバー部材50が通常取付位置からカバー部材50の下側のハーネス配置空間15を減少させて下方変位することを許容する下方変位許容機構60とを備えている。
カバー本体40は、金属又は高強度の合成樹脂で構成され、底壁部41、前側壁部42、左右両側壁部43を有し、上方且つ後方を開口した形状に形成され、車体部材に支持されたブラケット27に連結支持され、また、必要に応じて、バッテリトレー21や電子ユニット10に連結支持される。カバー本体40は、電子ユニット10よりも少しだけ広い左右幅を有し、カバー本体40の上端と電子ユニット10の上端の高さ位置は略一致し、前側壁部42は電子ユニット10の前面の前側に隙間を空けて位置している。
カバー部材50は、金属又は高強度の合成樹脂で構成され、上壁部51、前側壁部52、後側壁部53、左右両側壁部54を有し、下方を開口した形状に形成されている。前側壁部52の下部が、カバー本体40の前側壁部42の上部の前面に摺動自在に当接されて、カバー本体40とカバー部材50の対応する前側壁部42,52同士が対向状に配設されている。ここで、ブラケット25は断面凹状に形成され、このブラケット25の前端鉛直部の後面に後側壁部53の下部が摺動自在に当接されている。
カバー部材50はカバー本体40よりも広い左右幅を有し、左右両側壁部54とカバー本体40の左右両側壁部43との間に1対の通過口50aが形成され、1対のコネクタ11から左右反対方向へ延びる1対のハーネス12は、カバー本体40の左右両端部分において下方へ屈曲して延びて、1対の通過口50aから外部へ導出されている。尚、上壁部51の左右両端部分は、左右両側壁部54へ向かって下方傾斜状に形成されている。
下方変位許容機構60は、カバー本体40に対してカバー部材50を可動(上下方向へ移動可能)に連結して通常取付位置(図3〜5参照)に保持すると共に、ボンネット8からカバー部材50に設定荷重以上の荷重が入力された場合に、カバー本体40に対してカバー部材50の連結を維持してカバー部材50を通常取付位置から下方変位させる(図6、図7参照)ように構成されている。
下方変位許容機構60は、カバー本体40の前側壁部42の上部に固定的に設けられた左右1対のピン状部材である締結部材61と、カバー部材50の前側壁部52の下部に形成され且つ1対の締結部材61が夫々係合する上下方向に細長い左右1対の長孔65とを有する。
各締結部材61はボルト62とナット63を有し、ボルト62の頭部62aが前側壁部52の前側に配設され、ボルト62の軸状部62bが長孔65及び前側壁部42に形成された孔42aに前側から挿通され、軸状部62bの少なくとも後端部分に形成されたネジ部62cが、前側壁部42の後側に配設されたナット63に内嵌螺合され、軸状部62bが長孔65の下端部に係合された状態で、締結部材61の両端部であるボルト62の頭部62aとナット63とでカバー本体40とカバー部材50が挟持されて、カバー部材50が通常取付位置に保持される。尚、ナット63は、予めカバー本体40の前側壁部42の後面に孔42aに一致した状態に固着されている。
ここで、電子ユニットカバー構造30は、1対の締結部材61のボルト62の頭部62aを夫々覆う1対のこじ開け防止筒部66を備え、これらこじ開け防止筒部66はカバー部材50の前側壁部52の前面に固定的に設けられている。例えば、こじ開け防止筒部66はカバー部材50に一体成形されているが、カバー部材50に固着して設けてもよい。
また、図5に鎖線で示すように、ボルト62は組付け前にねじ切りボルト部材64の先端側部分として構成されている。このねじ切りボルト部材64は、ボルト62に多少脆弱なねじ切り部64bを介して一体に設けられた基端側軸部64aを有し、その基端側軸部64aの基端部に角形ヘッド部64cが形成されている。ボルト62を組付ける場合には、ねじ切りボルト部材64を角形ヘッド部64cに工具を係合させ回動させることで、ボルト62をナット63に螺合させて締結し、締結後も回動力を付加することで、ねじ切り部64bが切断されて、ボルト62のみが残留して組付けが完了する。尚、組付けられたボルト62を取外す場合には、その頭部62aからキリで穴を形成し、タップで逆ネジを嵌め込んで回動させて行うが、非常に煩雑で短時間では行うことが難しい。
以上説明した電子ユニットカバー構造30の作用・効果について説明する。
先ず、図3〜図5に示すように、通常の状態では、下方変位許容機構60により、カバー部材50が通常取付位置に保持されて、カバー部材50の上端部がボンネット8の下側に僅かな隙間を空けて位置し、カバー部材50の上壁部51の下側のハーネス配置空間15も所期容量が確保されている。
車両衝突時、ボンネット8に衝突物が衝突した場合、図6、図7に示すように、カバー部材50の上方近傍のボンネット8部分が下方変位して、カバー部材50に当たった場合、ボンネット8からカバー部材50に設定荷重以上の荷重が入力された場合に、下方変位許容機構60により、カバー部材50が通常取付位置からカバー部材50の上壁部51の下側のハーネス配置空間15を減少させて下方変位し、その際、カバー部材50は締結部材61に対して下方変位するので、カバー部材50に固定のこじ開け防止筒部66の上側部分がボルト62の頭部62aによって破断される。
ハーネス12は複数の信号線を束ねて構成されているので、カバー部材50が下方変位する際、ハーネス12がボンネット8からカバー部材50を介して受ける力で全体的に上下方向に圧縮変形することで、ハーネス配置空間15が減少し、また、カバー部材50の前側壁部52が下方変位許容機構60で上下方向へガイドされるが、その後側壁部53もブラケット25で上下方向へガイドされるので、カバー部材50のガイド性が高められ、カバー部材50がこじれて下方変位しないようになることも極力防止され、更に、カバー部材50の下方変位は締結部材61の両端部でカバー本体40とカバー部材50とを挟持する挟持力に抗して行われるため、そこでの衝突エネルギーの吸収も期待される。
この電子ユニットカバー構造30によれば、エンジンルーム2内に電子ユニット10を配設し、その上端部がボンネット8に接近して位置し、カバー部材50により、電子ユニット10の上端部分を、この電子ユニット10の上面部に取付けられたコネクタ11及びそのコネクタ11に接続されてコネクタ11の上側に配置されたハーネス12と共にカバーするので、更に、ねじ切りボルト部材64から分離されたボルト62とこじ開け防止筒部66を設けたので、電子ユニット10の組付け性とメンテナンス・サービス性を確保するとともに、車両や車載荷物の盗難防止対策を施すことができる。
そのうえで、ボンネット8から通常取付位置のカバー部材50に設定荷重以上の荷重が入力された場合に、カバー部材50が通常取付位置からカバー部材50の下側のハーネス配置空間15を減少させて下方変位することを許容する下方変位許容機構60を設けたので、車両衝突時、ボンネット8に衝突物が衝突した場合、ボンネット8が下方変位してエネルギーを吸収するが、ボンネット8が下方変位してカバー部材50に当たってから更にカバー部材50と共に確実に下方変位して衝突エネルギーを吸収でき、故に、ボンネット8に衝突物が衝突した際のエネルギー吸収性能を高めることができる。
電子ユニット10の上端部分以外の大部分をカバーするカバー本体40を備え、下方変位許容機構60は、カバー本体40に対してカバー部材50を可動に連結して通常取付位置に保持すると共に、ボンネット8からカバー部材50に設定荷重以上の荷重が入力された場合に、カバー本体40に対してカバー部材50の連結を維持してカバー部材50を通常取付位置から下方変位させるように構成したので、通常時は、カバー部材50をカバー本体40に支持して通常取付位置に保持でき、カバー部材50が下方変位した後も容易に取外されないようにすることができるので、盗難防止対策を維持できる。
カバー本体40とカバー部材50の対応する前側壁部42,52同士を対向状に配設し、下方変位許容機構60は、カバー本体40の前側壁部42に固定的に設けられた締結部材61と、カバー部材50の前側壁部52に形成され且つ締結部材61が係合する上下方向に細長い長孔65とを有するので、ボンネット8からカバー部材50に設定荷重以上の荷重が入力された場合に、カバー部材50をガイドして確実に下方変位させることができ、カバー部材50が下方変位した後も容易に取外されることを確実に防止できる。
下方変位許容機構60は、締結部材61の両端部(ボルト62の頭部62aとナット63)でカバー本体40とカバー部材50とを挟持することで、カバー部材50を通常取付位置に保持するので、この締結部材61により、ボンネット8から通常取付位置のカバー部材50に設定荷重以上の荷重が入力された場合に、カバー部材50を確実に下方変位させるとともに、カバー部材50を通常取付位置に保持する機能と、カバー部材50が下方変位した後に容易に取外されないようにする機能とを両立させることができる。
次に、前記実施例1を部分的に変更した実施例について説明する。尚、実施例1と基本的に同じものには同一符号を付して説明を省略する。
図8に示すように、この電子ユニットカバー構造30Aにおいては、下方変位許容機構60Aが、前記締結部材61及び長孔65に加えて、ブラケット25の前端鉛直部に固定的に設けられた左右1対のピン状部材である締結部材70と、カバー部材50Aの後側壁部53Aの下部に形成され且つ1対の締結部材70が夫々係合する上下方向に細長い左右1対の長孔71とを有し、締結部材70は前記締結部材61と同様の構成である。
この電子ユニットカバー構造30Aによれば、下方変位許容機構60Aにより、カバー部材50Aを確実に支持して通常取付位置に保持できるとともに、ボンネット8から通常取付位置のカバー部材50Aに設定荷重以上の荷重が入力された場合に、カバー部材50Aを下方変位させる際にガイドするガイド性を高めて、カバー部材50Aを確実に下方変位させることができ、また、カバー部材50Aの下方変位は締結部材61及び締結部材70の両端部でカバー本体40とカバー部材50Aとを挟持する挟持力に抗して行われるため、そこでの衝突エネルギーの吸収性の向上も期待できる。
図9に示すように、この電子ユニットカバー構造30Bでは、下方変位許容機構60Bが、前記長孔65を省略し、カバー本体40Bの前側壁部42Bに形成された左右1対の上下方向に細長い長孔65Bを有し、1対の締結部材61のボルト62がこれら長孔65Bに係合している。また、電子ユニットカバー構造30Bは、1対の締結部材61のボルト62の頭部62aを夫々覆う1対のこじ開け防止筒部75を備え、これらこじ開け防止筒部75がカバー部材50Bの前側壁部52Bの前面に固定的に設けられている。カバー部材50Bが通常取付位置から下方変位する際、カバー部材50Bと一体的にボルト62も下方変位するので、こじ開け防止筒部66は破断されることはない。
図10に示すように、この電子ユニットカバー構造30Cでは、下方変位許容機構60Cが、前記締結部材61の代わりに、左右1対のピン状部材(締結部材)であるリベット80を備え、各リベット80は、頭部80aが前側壁部52の前側に配設され、軸状部80bが長孔65及び前側壁部42に形成された孔42aに前側から挿通されて、後端部がかしめられ、このリベット80の両端部である頭部80aとかしめ部80cとでカバー本体40とカバー部材50が挟持されて、カバー部材50が通常取付位置に保持される。、かしめ部80cを形成するために、カバー本体40又はカバー部材50を上下2分割に構成し、その2部材を分離した状態でかしめ部80cを形成し、その後、これら2部材を締結部材(例えば、実施例1の締結部材)で締結して一体化してもよい。
図11に示すように、この電子ユニットカバー構造30Dでは、下方変位許容機構60Cが、前記締結部材61の代わりに、左右1対のピン状部材であるボルト85を有するとともに、カバー本体40に設けられカバー部材50を係止する係止部90であって、カバー部材50を通常取付位置に保持するとともに、ボンネット8からカバー部材50に設定荷重以上の荷重が入力された場合に破断する係止部90を有する。
各ボルト85は、カバー部材50の前側壁部52に形成された長孔65に前側から挿通されて、カバー本体40の前側壁部42に螺合され、このボルト85については、カバー部材50を通常取付位置に保持する機能は必須ではない。また、この電子ユニットカバー構造30Dは、1対のボルト85の頭部を夫々覆う1対のこじ開け防止筒部86を備え、これらこじ開け防止筒部86がカバー部材50の前側壁部52の前面に固定的に設けられている。この電子ユニットカバー構造30Dによれば、ボルト85にカバー部材50を通常取付位置に保持する機能を持たせずに、つまり、ボルト85の構成を簡単化できて、係止部90によりカバー部材50を通常取付位置に確実に保持できる。
図12に示すように、この電子ユニットカバー構造30Eにおいては、カバー部材50の上壁部51の上端面が、その上方近傍に位置するボンネット8部分と対面するように、電子ユニット10及びカバー本体40及びカバー部材50が前傾姿勢に配設され、これらの取付けのために、ブラケット25E,26E,27Eが多少変更されている。この電子ユニットカバー構造30Eによれば、ボンネット8からカバー部材50に入力される荷重の入力方向にカバー部材50が変位し易いようにして、カバー部材50を確実に下方変位させ、ボンネット8に衝突物が衝突した際のエネルギー吸収性能を確実に高めることができる。
尚、実施例1,2,4〜6において、締結部材60やリベット80やボルト85等のピン状部材を、カバー部材50の前側壁部52に固定的に設け、このピン状部材が係合する長孔をカバー本体40の前側壁部42に形成してもよい。また、ピン状部材と長孔を夫々1つ又は3つ以上設けてもよい。ピン状部材と長孔を夫々1つ設ける場合には、他の結合構造により、カバー本体40とカバー部材50を解除可能に結合してもよい。
尚、実施例5においては、係止部90について、カバー部材50に設けられカバー本体40を係止して、カバー部材50を通常取付位置に保持するとともに、ボンネット8からカバー部材50に設定荷重以上の荷重が入力された場合に破断するように構成してもよい。また、締結部材60やリベット80やボルト85等のピン状部材を省略し、単に、カバー本体40に対してカバー部材50を保持可能に係止する、例えばピン状の係止部を設け、その係止部がボンネット8からカバー部材50に設定荷重以上の荷重が入力された場合に破断するように構成してもよい。この場合、カバー本体40とカバー部材50の連結は解除されるが、エネルギー吸収性を高められる。
本発明の電子ユニットカバー構造を備えた車体前部の斜視図である。 車体前部の平面図である。 実施例1の電子ユニットカバー構造の通常時の断面図である。 実施例1の電子ユニットカバー構造の正面図である。 図3の要部拡大図である。 実施例1の電子ユニットカバー構造の衝突時の断面図である。 図6の要部拡大図である。 実施例2の図3相当図である。 実施例3の図5相当図である。 実施例4の図5相当図である。 実施例5の図5相当図である。 実施例6の図3相当図である。
符号の説明
2 エンジンルーム
8 ボンネット
10 電子ユニット
11 コネクタ
12 ハーネス
30,30A,30B,30C,30D,30E電子ユニットカバー構造
40 カバー本体
50,50A カバー部材
60,60A,60C,60D 下方変位許容機構
61,70 締結部材
65,71 長孔
80 リベット
85 ボルト
90 係止部

Claims (6)

  1. 車両のエンジンルーム内に配設され上端部がボンネットに接近して位置する電子ユニットの少なくとも上端部分を、この電子ユニットの上面部に取付けられたコネクタ及びそのコネクタに接続されてコネクタの上側に配置されたハーネスと共にカバーするカバー部材を備えた車両の電子ユニットカバー構造において、
    前記ボンネットから所定の通常取付位置のカバー部材に設定荷重以上の荷重が入力された場合に、カバー部材が通常取付位置からカバー部材の下側のハーネス配置空間を減少させて下方変位することを許容する下方変位許容手段を設けたことを特徴とする車両の電子ユニットカバー構造。
  2. 前記カバー部材の上端面が、その上方近傍に位置するボンネット部分と対面するように、電子ユニット及びカバー部材が前傾姿勢に配設されたことを特徴とする請求項1に記載の車両の電子ユニットカバー構造。
  3. 前記電子ユニットの少なくとも上端部分以外の大部分をカバーするカバー本体を備え、
    前記下方変位許容手段は、カバー本体に対してカバー部材を可動に連結して前記通常取付位置に保持すると共に、ボンネットからカバー部材に設定荷重以上の荷重が入力された場合に、カバー本体に対してカバー部材の連結を維持してカバー部材を前記通常取付位置から下方変位させるように構成されたことを特徴とする請求項1又は2に記載の車両の電子ユニットカバー構造。
  4. 前記カバー本体とカバー部材の対応する側壁部同士が対向状に配設され、
    前記下方変位許容手段は、カバー本体とカバー部材の一方の側壁部に固定的に設けられたピン状部材と、カバー本体とカバー部材の他方の側壁部に形成され且つ前記ピン状部材が係合する上下方向に細長い長孔とを有することを特徴とする請求項3に記載の車両の電子ユニットカバー構造。
  5. 前記ピン状部材が締結部材からなり、
    前記下方変位許容手段は、前記締結部材の両端部でカバー本体とカバー部材とを挟持することで、カバー部材を前記通常取付位置に保持することを特徴とする請求項4に記載の車両の電子ユニットカバー構造。
  6. 前記下方変位許容手段は、カバー本体とカバー部材の一方に設けられ他方を係止する係止部であって、カバー部材を前記通常取付位置に保持するとともに、ボンネットからカバー部材に設定荷重以上の荷重が入力された場合に破断する係止部を有することを特徴とする請求項4に記載の車両の電子ユニットカバー構造。
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