以下、適宜図面が参照されて本発明の実施形態が説明される。なお、本実施形態は本発明の一例にすぎず、本発明の要旨を変更しない範囲で、実施形態を適宜変更できることは言うまでもない。
[第1実施形態]
図1は、本発明の第1実施形態に係るスキャナ10の外観構成を示す斜視図であり、原稿カバー17が開かれた状態を示す。
スキャナ10(本発明に係る画像読取装置の一例)は、原稿の画像を読み取るスキャナ機能を有するものである。本実施形態においては、スキャナ機能のみを有するスキャナ10を例に本発明が説明される。ただし、本発明に係る画像読取装置はスキャナ10に限定されるものではない。本発明に係る画像読取装置は、スキャナ機能を有するものであれば、コピー機やファクシミリ機、複数の機能を併せ持つ複合機(Multi Function Device)として実現されてもよい。
図1に示されるように、スキャナ10は、原稿台11を備える。原稿台11は、フラットベッドスキャナ(FBS:Flat Bed Scanner)として機能するものである。原稿台11は、略直方体の筐体15を有する。筐体15の内部にはラインセンサ40(図2及び図3参照)が設けられている。スキャナ10では、このラインセンサ40により原稿の画像が読み取られる。
図1に示されるように、スキャナ10は、原稿カバー17を備える。原稿カバー17は、後述の第2ガラス20(本発明の第2透過部材の一例)に載置された原稿を第2ガラス20に密着させるものである。原稿カバー17は、原稿台11に対して開閉自在に設けられている。具体的には、原稿カバー17は、原稿台11の背面側の蝶番(不図示)を介して原稿台11と回動可能に連結されている。この原稿カバー17は、自動原稿搬送機構(ADF:Auto Document Feeder)28を備えている。
図2は、本発明の第1実施形態に係るスキャナ10における搬送路12の一部を示す模式断面図である。
図1及び図2に示されるように、ADF28は、原稿トレイ22に載置された原稿を搬送路12に沿って排紙トレイ23へ搬送するものである。すなわち、搬送路12は、原稿が搬送される経路である。なお、図2においては、原稿トレイ22と搬送路12における原稿トレイ22側の一部が省略されている。原稿トレイ22(図1参照)及び排紙トレイ23(図2参照)は、原稿トレイ22を上側として上下二段となるように原稿カバー17に設けられている。搬送路12は、縦断面視において横向き略U字形状となるようにADF28の内部に設けられている。搬送路12は、ADF28本体を構成する部材やガイド板、ガイドリブ等により、原稿が通過可能な所定幅の通路として連続的に形成されている。この搬送路12により原稿トレイ22と排紙トレイ23とが連結されている。
搬送路12には、原稿を搬送する複数のローラ73(図4参照)が配設されている。図には示されていないが、ローラ73は、所謂ピックアップローラ、分離ローラ、搬送ローラ、及び排紙ローラから構成される。これらの各ローラ73には、単一のモータ72(図4参照)から駆動力が伝達される。各ローラ73の回転力が原稿に伝達され、原稿が原稿トレイ22から排紙トレイ23へ向けて搬送路12に沿って搬送される。図2に示されるように、搬送路12の途中には、第1ガラス18(本発明の第1透過部材の一例)が設けられている。原稿カバー17が閉じられた状態において、原稿トレイ22に載置された原稿は、ADF28により搬送路12に沿って搬送されて第1ガラス18上を通過する。その際、原稿は、第1ガラス18の下方に待機するラインセンサ40によりその画像が読み取られる。原稿は、さらに搬送されて排紙トレイ23へ排出される。
図1に示されるように、筐体15の一部を構成する上カバー16の天面には、第1ガラス18及び第2ガラス20が配設されている。第1ガラス18(図1及び図2参照)は、透明なガラス板やアクリル板等からなる透過板である。原稿トレイ22に原稿が載置されて原稿の読取開始が指示されると、ラインセンサ40が第1ガラス18と対向する位置(例えば図5参照)に配置される。このラインセンサ40により、第1ガラス18上を搬送される原稿の画像が第1ガラス18を通してラインセンサ40により読み取られる。
第2ガラス20(図1及び図2参照)は、原稿台11をFBSとして使用する場合に原稿が載置されるものである。第2ガラス20は、透明なガラス板やアクリル板等からなる透過板である。第2ガラス20に原稿が載置されて原稿の読取開始が指示されると、ラインセンサ40が第2ガラス20に対向して原稿の副走査方向(矢印38で示される方向)へ移動される。その過程で、第2ガラス20上の原稿の画像が第2ガラス20を通してラインセンサ40により読み取られる。
原稿台11の天面における第1ガラス18と第2ガラス20との間には、区画部材51(図1及び図2参照)が設けられている。区画部材51は、第1ガラス18及び第2ガラス20と同様に、スキャナ10の奥行き方向(図3における矢印39で示される方向)に延設された長尺の部材である。図2に示されるように、区画部材51は、スキャナ10の幅方向(矢印38で示される方向)の断面が略L字形状のものである。第1ガラス18は、その短手方向の一端(図2における右側)が区画部材51により支持されている。区画部材51は、第2ガラス20に原稿を載置する際に原稿の位置決め基準として用いられる。区画部材51には、中央位置やA4(日本工業規格A列4番)サイズ、B5(日本工業規格B列5番)サイズ等の各種原稿サイズの両端位置を示す表示が記されている。原稿は、区画部材51に記された中央位置を基準として第2ガラス20に載置される。
第1ガラス18及び第2ガラス20は、原稿カバー17が開かれることによりその上面が露出される(図1参照)。原稿カバー17が閉じられることにより、第1ガラス18及び第2ガラス20を含む原稿台11の上面全体が原稿カバー17に覆われる。原稿カバー17の下面には、第2ガラス20を覆う原稿押さえ19(図1参照)が設けられている。原稿押さえ19は、第2ガラス20上に載置された原稿を押さえるために、スポンジ及び白板等から構成されている。原稿カバー17が閉じられると、第2ガラス20に載置された原稿は、原稿カバー17により原稿押さえ19を介して第2ガラス20へ向けて押圧される。また、第1ガラス18は、原稿台11の上面に設けられているので、原稿カバー17が閉じられることにより搬送路12の一部を構成する。このため、ADF28は、原稿台11に対して原稿カバー17が閉じられた状態で使用される。
図3は、原稿台11の内部構成を示す平面図である。なお、図3においては、上カバー16が取り外された状態が示されている。
図3に示されるように、原稿台11における筐体15の内部には、画像読取ユニット14が設けられている。画像読取ユニット14は、第1ガラス18又は第2ガラス20を通して原稿を読み取るものである。画像読取ユニット14は、ラインセンサ40、キャリッジ41、ガイドシャフト42、及びベルト駆動機構43から構成される。
ラインセンサ40(図2及び図3参照)は、光源から原稿へ光照射して原稿からの反射光を主走査ライン毎に読み取るものである。ラインセンサ40としては、焦点距離が短い読取デバイスが使用される。本実施形態においては、ラインセンサ40は、いわゆる密着型のイメージセンサ(CIS:Contact Image Sensor)である。図には示されていないが、ラインセンサ40は、光源、レンズ、及び受光素子を備える。ラインセンサ40は、光源から第1ガラス18又は第2ガラス20を通して原稿に光を照射する。すなわち、ラインセンサ40は、ADF28により搬送される原稿に第1ガラス18を通して光を照射し、又は第2ガラス20に載置された原稿に第2ガラス20を通して光を照射する。ラインセンサ40は、原稿からの反射光をレンズにより受光素子に集光して電気信号(画像信号)に変換する。これにより、原稿の画像が得られる。ラインセンサ40の受光素子は、例えばチップ単位で原稿の主走査方向(矢印39で示される方向)に並べて配置されている。ラインセンサ40の光源及びレンズは、この受光素子と同方向に配列されている。
キャリッジ41は、その上側にラインセンサ40を搭載する(図2参照)。ラインセンサ40は、コイルバネ74を介してキャリッジ41のバネ受け部64上に搭載されている。筐体15の内部には、その幅方向(図3における左右方向)にわたってガイドシャフト42が架設されている。キャリッジ41は、このガイドシャフト42と嵌合している。キャリッジ41は、ベルト駆動機構43により駆動されてガイドシャフト42上を矢印38で示される方向へ移動する。キャリッジ41の長手方向の両端に対応するキャリッジ41の上面には、ローラ30(図2及び図3参照)が設けられている。各ローラ30は、キャリッジ41の移動方向(矢印38で示される方向)に転動可能な状態でキャリッジ41にそれぞれ軸支されている。各ローラ30は、キャリッジ41の上面から均等に上方へ突出している。筐体15の上面側には、ガイド部材34(図2参照)が設けられている。ガイド部材34は、キャリッジ40の移動方向に延設された細長の平板部材である。このガイド部材34は、ローラ30が移動する軌跡に沿うように配置されている。各ローラ30は、ガイド部材34の裏面に当接する。これにより、ラインセンサ40の上面と第2ガラス20の裏面との間に一定の間隙が形成される。この一定の間隙により、ラインセンサ40の焦点が第2ガラス20の上面に一致している。各ローラ30の転動により、キャリッジ41がガイド部材34に沿って円滑に移動される。ラインセンサ40がキャリッジ41に搭載されているので、ラインセンサ40は、第1ガラス18又は第2ガラス20に対向して移動される。
ベルト駆動機構43(図3参照)は、駆動ベルト44、駆動プーリ45、及び従動プーリ46から構成される。図3に示されるように、駆動プーリ45及び従動プーリ46は、筐体15の幅方向の両端にそれぞれ設けられている。駆動ベルト44は、内側に歯が設けられた無端環状のものであり、駆動プーリ45と従動プーリ46との間に張架されている。駆動プーリ45の軸には、CR(キャリッジ)モータ65(本発明の駆動部に相当する:図4参照)から駆動力が伝達される。駆動プーリ45の回転により駆動ベルト44が周運動し、キャリッジ41に搭載されたラインセンサ40が第1ガラス18又は第2ガラス20に対向して移動される。なお、CRモータ65としては例えばステッピングモータが用いられる。スキャナ10の幅方向(矢印39で示される方向)におけるラインセンサ40の位置は、CRモータ65のステップ数を測定することによって制御部55(図4参照)により監視される。
ADF28により搬送される原稿は、第1ガラス18に沿って移動される。原稿は、第1ガラス18の下方に配置されたラインセンサ40によりその画像が第1ガラス18を通して読み取られる。このため、第1ガラス18の上面には、ラインセンサ40による原稿の読取面25(図2参照)が構成される。ここで、読取面25は、第1ガラス18におけるラインセンサ40の読取領域である。つまり、第1ガラス18上を通過する原稿は、第1ガラス18の上面における読取面25においてラインセンサ40によりその画像が読み取られる。図2に示されるように、読取面25は、ラインセンサ40が移動する平面(図3の紙面に平行な面:以下、「移動面」とも称される。)に対して傾斜されている。本実施形態においては、読取面25は、搬送路12における原稿の搬送方向上流側(図2における左側)よりも下流側(図2における右側)が移動面から離間されている(図2参照)。このため、搬送中の原稿は、第1ガラス18に当接して押し付けられる。その結果、第1ガラス18に対する原稿の浮きが原因でラインセンサ40の上面と読取面25との相対距離が変化することが防止される。
ラインセンサ40は、CRモータ65から付与される駆動力により、第1ガラス18と対向して移動される。CRモータ65の駆動は、後述の制御部55(図4参照)により制御される。この制御部55が本発明の区画部、第1制御部、第1受付部、変更部、第2受付部、第1受信部、第3受付部、第1転送部、第2受信部、第4受付部、第5受付部、検出部、第2転送部、第3受信部、第6受付部、第2制御部、演算部、決定部に相当する。上述のように、第1ガラス18における読取面25は、移動面に対して傾斜されている。制御部55は、CRモータ65を駆動させてラインセンサ40(キャリッジ41)を矢印38で示される方向へ移動させる。ラインセンサ40の位置に応じて、読取面25の位置が第1ガラス18の短手方向に移動する(図5参照)。これにより、制御部55は、第1ガラス18における原稿の読取面25とラインセンサ40との相対距離(以下、「第1相対距離」とも称される。)を変更する(図5中のD1、D2参照)。ラインセンサ40の駆動源であるCRモータ65を利用して第1相対距離が変更されるので、簡易な構成で第1相対距離を変更することが可能である。すなわち、第1相対距離を変更するための部材を新たに追加することなく第1相対距離が容易に変更される。第1相対距離が変更されることにより、原稿の読取面25に対してラインセンサ40のピントを変更して、ADF28により搬送される原稿を読み取ることができる。
なお、移動面に対する読取面25の傾斜角は、特に限定されるものではない。ただし、傾斜角は、ラインセンサ40のMTF(Modulation Transfer Function)特性に基づいて設定されることが好ましい。傾斜角を大きくすると、ラインセンサ40の移動に対する第1相対距離の変化が大きくなる。逆に、傾斜角を小さくすると、ラインセンサ40の移動に対する第1相対距離の変化は小さくなる。したがって、ラインセンサ40としてピントが合う範囲が非常に狭い読取デバイスを使用する場合には、傾斜角を小さめに設定することが好ましい。逆に、ラインセンサ40としてピントが合う範囲が広い読取デバイスを使用する場合には、傾斜角を大きめに設定してもよい。
また、読取面25は、搬送路12における原稿の搬送方向下流側よりも上流側が移動面から離間されていてもよい。ただし、読取面25に対する原稿の浮きを防止するために、読取面25は、図2に示されるように、原稿の搬送方向上流側よりも下流側が移動面から離間されていることが好ましい。
図2に示されるように、第1ガラス18の上方にはプラテン49が設けられている。プラテン49は、第1ガラス18と対向する面が第1ガラス18に沿ってスキャナ10の奥行き方向(図3における矢印39で示される方向)に延設されている。プラテン49は、ADF28を構成する部材(不図示)にコイルバネ35を介して取り付けられている。図には示されていないが、プラテン49の長手方向の両端には、第1ガラス18へ向けて突出する凸部が設けられている。この凸部により、原稿カバー17が閉じられた際に第1ガラス18とプラテン49とが所定の間隔を隔てて対向配置される(図2参照)。所定の間隔は、原稿の厚さよりも若干長く設定されている。このため、原稿は、その移動がプラテン49に規制されることなく第1ガラス18に沿って円滑に搬送される。
図1及び図2に示されるように、第1ガラス18を挟んで第2ガラス20の反対側には、基準部材37が設けられている。基準部材37は、上カバー16の裏面に設けられている。この基準部材37は、ラインセンサ40の明度基準としてラインセンサ40によりその画像が読み取られるものである。基準部材37は、図4に示される第1光量調整値101、第2光量調整値102、第1白基準データ90(本発明の白基準データの一例)、及び第2白基準データ91(本発明の白基準データの一例)の取得に用いられる。なお、第1光量調整値101、第2光量調整値102、第1白基準データ90、及び第2白基準データ91の取得については後に詳述される。
基準部材37は、ラインセンサ40の主走査方向にラインセンサ40と略同じ長さを有する薄膜帯状の部材であり、ラインセンサ40と対向する面が白色のものである。基準部材37は、上カバー16に形成された傾斜部48の裏面に貼設されている。傾斜部48は、移動面に対して第1ガラス18と同じ傾斜角で傾斜されている。このため、基準部材37における読取面27は、第1ガラス18における読取面25と略同じ角度で移動面に対して傾斜されている。ここでの読取面27は、基準部材37の裏面全体を指すものではなく、基準部材37においてラインセンサ40により読み取られる面を意味する。なお、図2に示されるように、第1ガラス18及び基準部材37は、スキャナ10の幅方向に対して線対称に傾斜されている。
制御部55は、CRモータ65を駆動させてラインセンサ40(キャリッジ41)を移動させることにより、基準部材37の読取面27とラインセンサ40との相対距離(以下、「第2相対距離」とも称される。)を変更する。ラインセンサ40の駆動源であるCRモータ65を利用して第2相対距離が変更されるので、簡易な構成で第2相対距離を変更することが可能である。すなわち、ラインセンサ40と基準部材37との第2相対距離を変更するための部材を新たに追加することなく第2相対距離が容易に変更される。第2相対距離が変更されることにより、ラインセンサ40のピントを変更して、読取面27を読み取ることができる。
図1に示されるように、スキャナ10の正面上部には、操作パネル13(本発明の第1表示部、第2表示部、第3表示部に相当する)が設けられている。操作パネル13は、各種情報を表示する液晶ディスプレイ、ユーザが情報を入力する入力キー、タッチパネル等から構成される。スキャナ10は、この操作パネル13からの操作入力に基づいて動作する。第2ガラス20に載置された原稿、或いは、原稿トレイ22に載置された原稿の読み取り開始を指示するユーザの操作入力は、この操作パネル13から行われる。なお、スキャナ10は、操作パネル13からの指示のほか、端末装置140(図4参照)に接続されて端末装置140からスキャナドライバ等を介して送信される指示によっても動作される。
図4は、スキャナ10の制御部55の構成例を示すブロック図である。
制御部55は、スキャナ10の全体動作を制御する。図4に示されるように、制御部55は、CPU(Central Processing Unit)56、ROM(Read Only Memory)57、RAM(Random Access Memory)58、及びEEPROM(Electrically Erasable and Programmable ROM)59を主とするマイクロコンピュータとして構成されている。この制御部55は、バス60を介してモータ制御回路124、モータ制御回路125、読取制御回路126、画像処理制御回路127、パネル制御回路128、センサ入力回路129、及びLAN I/F(Local Area Network Interface)61に接続されている。
ROM57は、CPU56によってスキャナ10の各種動作を制御する制御プログラム等を格納する。RAM58は、CPU56により制御プログラムを実行する際に用いる各種データを一時的に記憶する記憶領域又は作業領域である。図4に示されるように、RAM58は、第1光量調整値101、第2光量調整値102、第1白基準データ90、第2白基準データ91等のデータを記憶する。これらのデータについては、後に詳述される。
RAM58は、読取モード情報24(図4参照)を記憶する。読取モード情報24は、操作パネル13からの操作入力又は端末装置140からの指示に基づいて制御部55が設定した原稿の読取モードを示す情報である。ADF28により搬送される原稿の読み取りは、この読取モード情報24に基づいて行われる。本実施形態においては、制御部55は、通常モード、及びぼかしモードのいずれかを設定する。通常モードは、制御部55が第1相対距離をラインセンサ40の焦点距離に略一致させた状態でラインセンサ40により第1ガラス18を通して原稿を読み取る読取モードである。換言すれば、通常モードは、第1ガラス18における原稿の読取面25にラインセンサ40のピント(焦点)を合わせた状態で原稿を読み取る読取モードである。ぼかしモードは、ラインセンサ40のピントを読取面25に合わせた状態で原稿の一部の領域(後述の第1領域)を読み取り、ラインセンサ40のピントを読取面25から大きくずらした状態で原稿の残りの領域(後述の第2領域)を読み取る読取モードである。
EEPROM59は、電源オフ後も保持すべき各種設定やフラグ等を格納する。本実施形態においては、EEPROM59は、第1位置31及び第2位置32を格納する。これらの情報は、RAM58に設定される読取モード情報24に対してラインセンサ40が配置される副走査方向の読取位置を示す情報である。第1位置31は、読取面25に対してラインセンサ40のピントが合う読取位置である。第2位置32は、読取面25からラインセンサ40のピントが大きくずれた読取位置である。
図5は、ラインセンサ40の読取位置を例示した模式断面図であり、(A)は第1位置31に対応する読取位置、(B)は第2位置32に対応する読取位置を示す。
RAM58の読取モード情報24が通常モードに設定され、ADF28により搬送される原稿が読み取られる。通常モードでは、ラインセンサ40が第1位置31に対応する読取位置(図5(A)参照)に配置された状態で、搬送される原稿の画像が読取面25において読み取られる。第1位置31は、読取面25に対してラインセンサ40のピントが合う位置なので、解像度の高い鮮明な原稿の画像が得られる。すなわち、通常モードは、原稿を忠実に再現するのに適した読取モードである。
RAM58の読取モード情報24がぼかしモードに設定され、ADF28により搬送される原稿が読み取られる。ぼかしモードでは、ラインセンサ40が第1位置31に対応する読取位置(図5(A)参照)に配置された状態で、搬送される原稿における第1領域の画像が読み取られる。また、その原稿は、ラインセンサ40が第2位置32に対応する読取位置(図5(B)参照)に配置された状態で、第2領域の画像が読み取られる。これにより、第1領域が鮮明で第2領域が識別不能なまでにぼかされた原稿の画像が得られる。第1位置31、及び第2位置32の決定方法、各読取モードにおける原稿の読取動作については、後に詳述される。
図4に示されるように、モータ制御回路124には、駆動回路71が接続されている。モータ制御回路125には、駆動回路66が接続されている。読取制御回路126には、ラインセンサ40及びAFE(Analog Front End)回路78が接続されている。画像処理制御回路127には、画像処理回路79(本発明の補正部に相当)が接続されている。パネル制御回路128には、操作パネル13が接続されている。センサ入力回路129には、原稿検出センサ36が接続されている。LAN I/F61には、LAN(Local Area Network)108を介して端末装置140が接続されている。
駆動回路71は、モータ72を駆動させるものである。モータ72は、正逆双方向に回転可能に構成されている。駆動回路71は、モータ制御回路124からの出力信号を受けて、モータ72を回転させるパルス信号を生成する。このパルス信号に基づいて、モータ72が回転される。モータ72は、ローラ73に駆動力を付与するものであり、ADF28における駆動源である。制御部55は、駆動回路71により生成されたパルス信号のパルス数をカウントする。これにより、モータ72のステップ数がカウントされる。カウントされたステップ数は、RAM58に一時的に記憶される。このステップ数に基づいて、ADF28の搬送路12における原稿の位置が判断される。
画像読取ユニット14は、原稿の読取動作を実行して原稿の画像を画像信号として出力するものである。画像読取ユニット14は、ラインセンサ40、キャリッジ41、CRモータ65、及び駆動回路66を有する。駆動回路66は、モータ制御回路125から入力される相励磁信号等に基づいて、CRモータ65に駆動信号を通電する。CRモータ65は、例えばステッピングモータである。CRモータ65は、駆動信号を受けて回転する。これにより、キャリッジ41が往復動される。また、駆動回路66は、ラインセンサ40の光源を点灯させるための動作電流の調整等も行う。制御部55は、ROM57に格納されている制御プログラムに基づいて画像読取ユニット14を制御することにより、原稿の読取動作の他、第1光量調整値101、第2光量調整値102、第1白基準データ90、第2白基準データ91の取得等を行う。
ラインセンサ40は、第2ガラス20に載置された原稿、又はADF28により第1ガラス18上を搬送される原稿に光源から光を照射してその原稿画像を1ライン毎に読み取る。読み取られた画像は、画像信号(画像データ)としてラインセンサ40からAFE回路78へ出力される。
ラインセンサ40は、原稿が載置された第2ガラス20に対向してキャリッジ41により移動される。この過程において、ラインセンサ40は、光源から第2ガラス20を通して原稿へ光照射して原稿からの反射光を1ラインの画像信号として出力する動作を繰り返す。これにより、第2ガラス20に載置されている原稿全体の画像が得られる。
ラインセンサ40は、キャリッジ41により移動されて第1ガラス18と対向する位置に配置される。この状態で、原稿トレイ22に載置された原稿は、ADF28により搬送路12に沿って搬送される。この過程において、ラインセンサ40は、光源から第1ガラス18を通して原稿へ光照射して原稿からの反射光を1ラインの画像信号として出力する動作を繰り返す。これにより、第1ガラス18上を通過する原稿全体の画像が得られる。
AFE回路78は、ラインセンサ40から出力されたアナログの各画像信号をサンプルホールドし、サンプルホールドされた画像信号をデジタル変換するとともにシリアル化する。デジタル変換は、ラインセンサ40から出力されたアナログの画像信号を所定ビット数のデジタルコードからなるデジタル信号に変換する処理である。このデジタル変換は、アナログ/デジタル変換器により行われる。AFE回路78に入力されたアナログの画像信号は、例えば8ビット(256階調:0〜255)のデジタルの画像信号として画像処理回路79へ出力される。
画像処理回路79は、AFE回路78から出力された画像信号を画像処理するものである。画像処理回路79は、AFE回路78から出力された画像信号に対して、シェーディング補正、鮮鋭化(強調)処理、色空間変換、2値化処理等を行う。すなわち、画像処理回路79は、ADF28により搬送される原稿の本スキャンで得られた原稿の画像をシェーディング補正するものである。画像処理回路79によるシェーディング補正が行われることで、ラインセンサ40の受光素子間及び光源のばらつきが補正される。このシェーディング補正は、第1白基準データ90又は第2白基準データ91に基づいて行われる。ラインセンサ40が第1位置31に対応する読取位置に配置された状態(図5(A)参照)で読み取られた原稿の画像信号は、第1白基準データ90に基づいてシェーディング補正される。ラインセンサ40が第2位置32に対応する読取位置に配置された状態(図5(B)参照)で読み取られた原稿の画像信号は、第2白基準データ91に基づいてシェーディング補正される。なお、画像処理回路79によって行われる他の画像処理は本発明には直接関係しないため、詳細な説明は省略する。
パネル制御回路128は、制御部55からの指示をもとに、操作パネル13の液晶ディスプレイを制御する信号を生成する。また、パネル制御回路128は、操作パネル13から入力された情報を制御部55へ伝えるインターフェース回路を備える。
センサ入力回路129は、原稿検出センサ36(図4参照)からの出力信号(センサ信号)をノイズ除去して所定の出力先へ出力する。原稿検出センサ36は、原稿トレイ22(図1参照)における原稿の有無を検出するものであり、原稿トレイ22の所定位置に配置されている。原稿検出センサ36は、本実施形態においてはメカニカルセンサである。
原稿検出センサ36は、透過型の光センサ(フォトインタラプタ)及び回動可能に軸支された遮蔽部材を備える。フォトインタラプタは、光を出射する発光部、及び発光部から出射された光を受光する受光部が対向配置されたものである。原稿検出センサ36は、このフォトインタラプタの受光部に光が受光されたことに基づいてセンサ信号を出力する。遮蔽部材が発光部と受光部との間の光路を遮断する位置にある状態では、発光部から出射された光が遮蔽部材により遮蔽されて受光部により受光されない。遮蔽部材が検出されているので、原稿検出センサ36はOFF状態にある。原稿トレイ22に原稿が載置されると、原稿が遮蔽部材に当接して遮蔽部材が回動される。これにより、遮蔽部材がフォトインタラプタの光路を遮断する位置から離脱する。このため、発光部から出射した光が受光部により受光される。すなわち、原稿検出センサ36はON状態となる。このように、原稿トレイ22に原稿が載置されることで原稿検出センサ36の状態が変化する。このため、制御部55は、センサ入力回路129から出力されるセンサ信号に基づいて、原稿トレイ22における原稿の有無を判断することができる。
LAN I/F61は、LAN108とスキャナ10とを通信可能に接続するインターフェースである。LAN108には端末装置140が接続されている。端末装置140は、所謂パーソナルコンピュータである。この端末装置140は、ユーザが情報を入力するためのキーボードやマウス、各種情報が表示される液晶ディスプレイ等を備える。スキャナ10は、LAN108を介して端末装置140と通信可能に接続されている。
ラインセンサ40の読取位置(第1位置31と第2位置32)を設定する処理は、スキャナ10の電源投入時に行われるか、ユーザによって所定の操作入力が行われるなど、予め定められたタイミングで実行される。また、読取位置を設定する処理は、前回の読取位置の設定処理から所定の時間が経過するか、又は、所定の時間が経過した後に電源が投入された場合に実行されてもよい。
図6及び図7は、スキャナ10において電源投入時に行われる読取位置の設定処理の手順を示すフローチャートである。なお、以下のフローチャートに基づいて説明するスキャナ10の処理は、ROM57に格納されている制御プログラムに基づいて制御部55が発行する命令に従って行われる。
制御部55は、操作パネル13からユーザによって所定の操作入力が行われたか否かに基づいて、スキャナ10の電源が投入されたか否かを判断する(S1)。電源が投入されていないと制御部55が判断した場合、(S1:NO)、スキャナ10は待機状態となる。制御部55は、スキャナ10の電源が投入されたと判断した場合(S1:YES)、第1位置31及び第2位置32がEEPROM59に記憶されているか否かを判断する(S2)。第1位置31及び第2位置32が共に記憶されていると制御部55が判断した場合(S2:YES)、処理が終了される。
制御部55は、第1位置31及び第2位置32がどちらか一方でも記憶されていないと判断した場合(S2:NO)、第1位置31が記憶されているか否かを判断する(S3)。制御部55は、第1位置31が記憶されていないと判断した場合(S3:NO)、原稿トレイ22に対する第1テスト原稿98(本発明のテスト原稿の一例)の載置を促す旨を報知する(S4)。例えば、制御部55は、「原稿トレイに第1テスト原稿をセットしてください」などのメッセージを操作パネル13に表示させる。
図8は、第1テスト原稿98の一例を示す模式図である。図9は、ラインセンサ40の読取位置が変更される様子を示す模式断面図である。
図8に示されるように、第1テスト原稿98は、白と黒の縞パターン(本発明の所定のパターンの一例)が150lpi(line per inch)のピッチで記録されたものである。第1テスト原稿98は、パターンの配列方向(図8における左右方向)がスキャナ10の奥行き方向(矢印39で示される方向)と略一致するように原稿トレイ22に載置される。なお、白黒のパターンのピッチは150lpiに限定されるものではなく、ラインセンサ40の性能などに応じて適宜変更されてもよい。
制御部55は、第1テスト原稿98が原稿トレイ22に載置されたか否かを原稿検出センサ36(図4参照)から出力されるセンサ信号に基づいて判断する(S5)。第1テスト原稿98が原稿トレイ22に載置されていないと制御部55が判断した場合(S5:NO)、ステップS4の処理が継続される。制御部55は、原稿トレイ22に第1テスト原稿98が載置されたと判断した場合(S5:YES)、CRモータ65(図4参照)を制御してラインセンサ40を読取開始位置へ移動させる(S6)。読取開始位置は、第1ガラス18に対するラインセンサ40の読取可能範囲(図2参照)の左端である(図9(A)参照)。制御部55は、モータ72(図4参照)を制御して第1テスト原稿98を搬送路12に沿って所定量搬送する。これにより、第1テスト原稿98に記録されている白黒のパターンが第1ガラス18の上方に配置される。そして、制御部55は、ラインセンサ40により第1ガラス18を通して第1テスト原稿98を読み取る(S7)。このステップS7の処理では、第1テスト原稿98の画像が1ライン分或いは数ライン分読み取られる。制御部55は、ステップS7の処理で得られた第1テスト原稿98の画像信号、及び以下に示す式1の演算式に基づいてMTF値を求める(S8)。
式1の演算式において、Imaxは、入力画像の最高濃度である。換言すれば、Imaxは、第1テスト原稿98に記録された画像の最高濃度の理論値である。Iminは、入力画像の最低濃度である。換言すれば、Iminは、第1テスト原稿98に記録された画像の最低濃度の理論値である。Dmaxは、出力画像の最高濃度である。Dminは、出力画像の最低濃度である。
制御部55は、ステップS8の処理に続いて、第1設定数(本実施形態においては11個)のMTF値を取得したか否かを判断する(S9)。制御部55は、11個のMTF値を取得していないと判断した場合(S9:NO)、CRモータ65を制御してラインセンサ40を読取終了位置(図9(C)参照)側へ第1距離だけ移動させる(S10)。このステップS10の処理が行われることにより、ラインセンサ40の読取位置が変更される。換言すれば、ラインセンサ40と第1テスト原稿98の読取面25との第1相対距離が変更される。第1ガラス18における読取面25は、原稿の搬送方向上流側よりも下流側がラインセンサ40の移動面から離間されている。このため、ラインセンサ40が移動されるに伴って、第1相対距離が大きくなる。なお、図9(C)に示されるように、読取終了位置は、第1ガラス18に対するラインセンサ40の読取可能範囲(図2参照)の右端である。
ステップS10の処理によってラインセンサ40の読取位置が変更された後、ラインセンサ40がその読取位置に配置された状態でステップS7及びステップS8の処理が行われる。制御部55は、ステップS7、ステップS8、及びステップS10の処理を順に繰り返すことにより、第1相対距離が相異なる複数(本実施形態においては11箇所)の位置で第1テスト原稿98を第1ガラス18を通して読み取る動作をラインセンサ40に実行させる。そして、制御部55は、この動作で得られた第1テスト原稿98の画像信号に基づいて11箇所の位置毎にMTF値を求める。
図10は、第1テスト原稿98を読み取って得られたMTF特性を示す図である。
図10において、横軸は、CRモータ65を駆動させてラインセンサ40を移動させることにより変化する、第1ガラス18における第1テスト原稿98の読取面25とラインセンサ40との相対距離、すなわち第1相対距離を示している。縦軸は、MTF値を示している。図10には、第1相対距離が相異なる11箇所の読取位置に対応するMTF値が示されている。横軸の「1」は、ラインセンサ40が読取開始位置に配置された状態(図9(A)参照)におけるラインセンサ40と第1テスト原稿98の読取面25との第1相対距離に対応している。横軸の「6」は、ラインセンサ40が読取終了位置に配置された状態(図9(C)参照)におけるラインセンサ40と第1テスト原稿98の読取面25との第1相対距離に対応している。
図6に示されるように、制御部55は、11個のMTF値を取得したと判断した場合(S9:YES)、MTF値が最大となる読取位置を第1位置31(図4参照)に決定する(S11)。具体的には、制御部55は、ステップS7〜ステップS10の処理を繰り返して求めた11個のMTF値からMTF曲線68(図10参照)を求める。MTF値からMTF曲線68を求める方法は周知であるため、ここではその方法の説明は省略する。制御部55は、MTF曲線68からMTF値が最大となるラインセンサ40の位置を第1位置31に決定する。ここでは、図10のMTF特性において横軸が「3.5」で表される第1相対距離に対応するMTF値が最大である。したがって、制御部55は、横軸が「3.5」で表される第1相対距離D1(図5(A)参照)となるラインセンサ40の読取位置(図5(A)及び図9(B)参照)を第1位置31に決定する。第1位置31は、通常モードに対する読取位置を示す情報である。また、第1位置31は、ぼかしモードの本スキャンにおいて搬送される原稿の第1領域を読み取る際にラインセンサ40がCRモータ65により配置される読取位置を示す情報でもある。第1位置31は、EEPROM59に記憶される。このように、制御部55は、MTF値が最大となる位置を第1領域を読み取るラインセンサ40の読取位置に決定する。
なお、本実施形態においては、11個のMTF値を取得するために読取開始位置と読取終了位置との間でラインセンサ40の読取位置が11箇所に変更されるように、上記の第1距離が設定されている。第1距離は、読取開始位置から読取終了位置までの距離、及び第1設定数に基づいて設定される。なお、取得するMTF値の数は11個に限定されるものではなく、第1距離を変更して例えば5個のMTF値を取得するようにしてもよい。また、ステップ11で決定された第1位置31を仮読取位置に設定し、仮読取位置の前後でラインセンサ40を第1距離よりも細かく移動させてMTF値を求めるようにしてもよい。これにより、第1位置31をより正確に求めることができる。また、MTF曲線68を求めることなく第1位置31を決定してもよい。すなわち、制御部55は、11個のMTF値の中からその値が最大となるものを判断し、そのMTF値に対応するラインセンサ40の読取位置を第1位置31に決定してもよい。
制御部55は、第1位置31がEEPROM59に記憶されていると判断した場合(S3:YES)、又はステップS11の処理を行った場合、EEPROM59に第2位置32が記憶されているか否かを判断する(S13)。第2位置32が記憶されていると制御部55が判断した場合(S13:YES)、処理が終了される。制御部55は、第2位置32が記憶されていないと判断した場合(S13:NO)、原稿トレイ22に対する第2テスト原稿99(本発明のテスト原稿の一例)の載置を促す旨を報知する(S14)。例えば、制御部55は、「原稿トレイに第2テスト原稿をセットしてください」などのメッセージを操作パネル13に表示させる。
図11は、第2テスト原稿99の一例を示す模式図である。
図11に示されるように、第2テスト原稿99は、白と黒の縞パターンが50lpiのピッチで記録されたものである。第2テスト原稿99は、パターンの配列方向(図11における左右方向)がスキャナ10の奥行き方向(矢印39で示される方向)と略一致するように原稿トレイ22に載置される。なお、白黒の縞パターンのピッチは50lpiに限定されるものではなく、ラインセンサ40の性能などに応じて適宜変更されてもよい。
制御部55は、第2テスト原稿99が原稿トレイ22に載置されたか否かを原稿検出センサ36(図4参照)から出力されるセンサ信号に基づいて判断する(S15)。第2テスト原稿99が載置されていないと制御部55が判断した場合(S15:NO)、ステップS14の処理が継続される。制御部55は、原稿トレイ22に第2テスト原稿99が載置されていると判断した場合(S15:YES)、ステップS6の処理と同様に、ラインセンサ40を読取開始位置へ移動させる(S16)。制御部55は、モータ72を制御して第2テスト原稿99を搬送路12に沿って所定量搬送する。これにより、第2テスト原稿99に記録されている白黒のパターンが第1ガラス18の上方に配置される。そして、制御部55は、ラインセンサ40により第1ガラス18を通して第2テスト原稿99を読み取る(S17)。制御部55は、ステップS17の処理によって得られた第2テスト原稿99の画像信号、及び上記式1の演算式に基づいてMTF値を求める(S18)。
制御部55は、第2設定数(本実施形態においては11)のMTF値を取得したか否かを判断する(S19)。制御部55は、11個のMTF値を取得していないと判断した場合(S19:NO)、CRモータ65を制御してラインセンサ40を読取終了位置(図9(C)参照)側へ第2距離だけ移動させる(S20)。これにより、ラインセンサ40と第2テスト原稿99の読取面25との第1相対距離が変更される。なお、第2距離は、読取開始位置から読取終了位置までの距離、及び第2設定数に基づいて設定される距離である。したがって、例えば第2設定数が変更されれば、それに応じて変更される。
ステップS20の処理によってラインセンサ40の読取位置が変更された後、ラインセンサ40がその読取位置に配置された状態でステップS17及びステップS18の処理が行われる。制御部55は、ステップS17、ステップS18、及びステップS20の処理を繰り返すことにより、第1相対距離が相異なる複数(ここでは11箇所)の位置で第2テスト原稿99を第1ガラス18を通して読み取る動作をラインセンサ40に実行させる。そして、制御部55は、この動作で得られた第2テスト原稿99の画像信号に基づいて11箇所の位置毎にMTF値を求める。
図12は、第2テスト原稿99を読み取って得られたMTF特性を示す図である。
図12において、横軸は、CRモータ65を駆動させてラインセンサ40を移動させることにより変化する、第1ガラス18における第2テスト原稿99の読取面25とラインセンサ40との相対距離、すなわち第1相対距離を示している。縦軸は、MTF値を示している。図12には、第1相対距離が相異なる11箇所の読取位置に対応するMTF値が示されている。
制御部55は、11個のMTF値を取得したと判断した場合(S19:YES)、MTF値の最大値を求める(S21)。具体的には、制御部55は、ステップS17〜ステップS20の処理を繰り返して求めた11個のMTF値からMTF曲線63(図12参照)を求める。そして、制御部55は、MTF曲線63のピークを判断してMTF値の最大値を求める。ここでは、図12に示されるように、横軸が「3.5」で表される第1相対距離に対応するMTF値が最大値となる。
制御部55は、MTF値がステップS21の処理で求めた最大値の20%(本発明における所定%)以下となる位置を第2位置32に決定する(S22)。具体的には、制御部55は、ステップS21で求めた最大値の20%となるMTF値を求める。例えば、最大値が1である場合、MTF値は0.2となる。制御部55は、求めたMTF値(ここでは0.2)に対応するラインセンサ40の位置を判断して第2位置32と決定する。第2位置32は、ぼかしモードの本スキャンにおいて搬送される原稿の第2領域を読み取る際にラインセンサ40がCRモータ65により配置される読取位置を示す情報である。第2位置32は、EEPROM59に記憶される。このように、制御部55は、MTF値が最大値の20%以下となる位置を第2領域を読み取るラインセンサ40の読取位置に決定する。
なお、第1テスト原稿98、及び第2テスト原稿99の2枚のテスト原稿に代えて、第1位置31及び第2位置32の各位置を決定するための2つのパターンが記録された1枚のテスト原稿を用いて第1位置31及び第2位置32を決定してもよい。この場合、2つのパターンがスキャナ10の奥行き方向(矢印39で示される方向)に並んで記録されたテスト原稿を使用する。制御部55は、テスト原稿の主走査方向における読取範囲を変更して各パターンの画像を個別に読み取る。そして、制御部55は、得られたそれぞれの画像に基づいて第1位置31及び第2位置32を決定する。この場合、ユーザがテスト原稿を原稿トレイ22に載置する手間が軽減される。また、2つのパターンが原稿の搬送方向に並んで記録されたテスト原稿を使用してもよい。この場合、テスト原稿を搬送することにより、第1ガラス18上に配置されるパターンを変更して各パターンの画像を個別に読み取るようにすればよい。
また、本実施形態においては、第1位置31及び第2位置32を決定するために2つのパターンを使用する形態について説明したが、これらの読取位置を決定するために使用する所定のパターンは1つであってもよい。例えば、第2テスト原稿99を用いることなく第1テスト原稿98のみを用いて第1位置31及び第2位置32を決定してもよい。この場合、制御部55は、第1テスト原稿98のパターンを読み取って得られたMTF特性の最大値に対応する読取位置を第1位置31に決定する。そして、制御部55は、最大値の例えば20%となるMTF値に対応する読取位置を第2位置32に決定する。
図13は、通常モードに設定された状態で原稿の読取開始が指示された場合にスキャナ10において行われる処理の手順を示すフローチャートである。
制御部55は、RAM24に記憶されている読取モード情報24に基づいて、通常モードに設定されているか否かを判断する(S31)。通常モードに設定されていない、すなわちぼかしモードに設定されていると制御部55が判断した場合(S31:NO)、処理がステップS31へ戻される。制御部55は、通常モードに設定されていると判断した場合(S31:YES)、原稿トレイ22に原稿が載置されているか否かを判断する(S32)。このステップS32の判断は、原稿検出センサ36から出力されるセンサ信号に基づいて行われる。原稿トレイ22に原稿が載置されていないと制御部55が判断した場合(S32:NO)、処理がステップS32へ戻される。
制御部55は、原稿トレイ22に原稿が載置されていると判断した場合(S32:YES)、原稿の読取開始命令があったか否かを判断する(S33)。具体的には、制御部55は、原稿の読取開始を指示する所定の操作入力が操作パネル13において行われたか否か、又は原稿の読取開始を指示する読取開始命令を端末装置140から受信したか否かを判断する。原稿の読取開始命令がないと制御部55が判断した場合(S33:NO)、処理がステップS33へ戻される。
制御部55は、読取開始命令があったと判断した場合(S33:YES)、すなわち操作パネル13から所定の操作入力が行われるか又は端末装置140から読取開始命令を受信した場合、CRモータ65を駆動させて基準部材37(図2参照)に対してラインセンサ40を第1位置31に対応する読取位置へ移動させる(S34)。この読取位置は、基準部材37の下方へ移動されたラインセンサ40と基準部材37の読取面25との相対距離(第2相対距離)が、第1位置31に対応する読取位置に配置されたラインセンサ40と第1ガラス18における原稿の読取面25との相対距離(第1相対距離)と略等しくなる位置である。例えば、第1ガラス18に対するラインセンサ40の読取位置と、それに対応する基準部材37に対するラインセンサ40の読取位置とを対応付けて予め記憶しておくことにより、第1相対距離と第2相対距離とを略一致させることができる。すなわち、ラインセンサ40から読取面27までの距離と、ラインセンサ40から読取面25までの距離を略一致させることが可能となる。ラインセンサ40の光源から第1ガラス18における読取面25に照射された光と、ラインセンサ40の光源から基準部材37の読取面27に照射された光との光量差が生じることが防止される。
制御部55は、第1光量調整値101及び第1白基準データ90(図4参照)を取得する(S35)。制御部55は、ラインセンサ40の光源に最初は小さい光量で基準部材37の読取面27へ向けて光照射させる。そして、制御部55は、ラインセンサ40の受光素子からの出力が所定値となるまで光源の光量を段階的に増加させ、受光量が所定値となったときの光量を第1光量調整値101として取得する。すなわち、第1光量調整値101は、ラインセンサ40の受光素子の受光量が所定値となる光源の光量である。制御部55は、ラインセンサ40の光源から第1光量調整値101の光量で基準部材37の読取面27に光を照射する。そして、制御部55は、読取面27からの反射光をラインセンサ40の受光素子で電気信号に変換して第1白基準データ90を取得する。このステップS35の処理によって取得された第1光量調整値101及び第1白基準データ90は、RAM58に格納される。
制御部55は、モータ72の回転を制御して原稿トレイ22に載置されている原稿の搬送を開始する(S36)。制御部55は、搬送される原稿を第1位置31に対応する読取位置に配置されたラインセンサ40により読み取る(S37)。具体的には、制御部55は、ステップS34の処理によって基準部材37に対向配置されているラインセンサ40をCRモータ65を制御して第1位置31に対応する読取位置(図5(A)参照)へ移動させる。そして、制御部55は、第1位置31に対応する読取位置において第1ガラス18上を搬送される原稿を読み取る動作をラインセンサ40に実行させる。これにより、第1ガラス18における原稿の読取面25にラインセンサ40のピントをほぼ合わせた状態で原稿の画像が読み取られる。このため、ラインセンサ40が他の位置に配置されて原稿が読み取られる場合に比べて明瞭な原稿の画像が得られる。このようにして読み取られた原稿の画像(画像信号)は、AFE回路78に処理される。画像処理回路79は、AFE回路78で処理された原稿の画像をステップS35の処理で取得された第1白基準データ90に基づいてシェーディング補正する(S38)。
通常モードでは、ADF28により搬送される原稿は、その読取領域の全域が第1位置31に対応する読取位置に配置されたラインセンサ40により第1ガラス18を通して読み取られる。第1ガラス18における読取面25にラインセンサ40のピントがあった状態で原稿が読み取られるので、鮮明な原稿の画像が得られる。
図14は、原稿の読取領域47を例示する模式図である。
ぼかしモードでは、制御部55は、ADF28により搬送される原稿の読取領域を第1領域93,97及び第2領域95に区画する。この読取領域の区画は、第1ガラス18と対向配置されたラインセンサ40に搬送される原稿をプレスキャンさせて得られた原稿の画像、又はユーザ設定に基づいて行われる。制御部55は、搬送される原稿のラインセンサ40による本スキャンにおいて、区画された領域毎に第1相対距離をCRモータ65を駆動させて変更する。制御部55は、第1相対距離をラインセンサ40の焦点距離に略一致させた状態でラインセンサ40に第1領域93,97を読み取らせる。すなわち、制御部55は、ラインセンサ40を第1位置31に対応する読取位置に配置した状態で搬送される原稿の第1領域93,97をそのラインセンサ40により読み取らせる。制御部55は、第1相対距離をラインセンサ40の焦点距離と異ならせた状態でラインセンサ40に第2領域95を読み取らせる。すなわち、制御部55は、ラインセンサ40を第2位置32に対応する読取位置に配置した状態で搬送される原稿の第2領域95をそのラインセンサ40により読み取らせる。ADF28により搬送される原稿をぼかしモードで読み取ることにより、第1領域93,97が鮮明で第2領域95がぼかされた原稿の画像を得ることができる。このぼかしモードによる原稿の読み取りは、例えば個人情報や機密情報が記載された原稿を読み取るのに好適である。
なお、図14に示される例では、原稿の読取領域47が第1領域93,97と第2領域95の2つの領域に区画されているが、読取領域47は3つ以上の領域に区画されてもよい。この場合、第1位置31と第2位置32に加えて、新たな読取位置の情報を設定すればよい。
図15〜図18は、ぼかしモードに設定された状態で操作パネル13から原稿の読取開始が指示された場合にスキャナ10において行われる処理の手順を示すフローチャートである。図19は、操作パネル13に表示される設定画面の一例を示す模式図である。
図15に示されるように、制御部55は、RAM58に記憶されている読取モード情報24に基づいて、ぼかしモードに設定されているか否かを判断する(S41)。ぼかしモードに設定されていない、すなわち通常モードに設定されていると制御部55が判断した場合(S41:NO)、処理がステップS41へ戻される。制御部55は、ぼかしモードに設定されていると判断した場合(S41:YES)、第1モード又は第2モードの選択を促す旨を報知する(S42)。具体的には、制御部55は、例えば「プレスキャンを行いますか?」などのメッセージを操作パネル13に表示させる。ここで、第1モードは、プレスキャンの結果及びユーザの指定に基づいて読取領域を第1領域及び第2領域に区画するモードである。第2モードは、プレスキャンを行うことなく、ユーザ設定に基づいて読取領域を第1領域及び第2領域に区画するモードである。
制御部55は、操作パネル13からの操作入力に基づいて、第1モード又は第2モードが選択されたかを判断する(S43)。いずれのモードも選択されていないと制御部55が判断した場合(S43:NO)、ステップS42の処理が継続される。制御部55は、モードが選択されたと判断した場合(S43:YES)、選択されたモードが第1モードであるか又は第2モードであるかを判断する(S44)。
制御部55は、第2モードが選択されたと判断した場合(S44:第2モード)、第2モードの選択を受け付けてEEPROM59に指定情報が保存されているか否かを判断する(S45)。ここで、指定情報は、第1領域又は第2領域を指定する情報である。ADF28により搬送される原稿の読取領域は、この指定情報に基づいて第1領域及び第2領域に区画される。制御部55は、指定情報が保存されていると判断した場合(S45:YES)、指定情報を入力するか否かの選択を促す旨を報知する(S46)。制御部55は、例えば「指定情報が登録されていますが、指定情報を入力しますか?」などのメッセージを操作パネル13に表示させる。
制御部55は、操作パネル13からの所定の操作入力の有無に基づいて、ステップS46の報知に対する選択がなされたか否かを判断する(S47)。選択がなされていないと制御部55が判断した場合(S47:NO)、ステップS46の処理が継続される。制御部55は、選択がなされたと判断した場合(S47:YES)、選択が指定情報の入力であるか否かを判断する(S48)。
制御部55は、選択が指定情報の入力であると判断した場合(S48:YES)、又はEEPROM59に指定情報が保存されていないと判断した場合(S45:NO)、図19(A)に例示される領域設定画面132(本発明における第1設定画面の一例)を表示する(S49)。領域設定画面132は、ユーザが指定情報を入力するための表示画面である。
領域設定画面132には、原稿の読取領域141、カーソル123、開始位置セットボタン130、終了位置セットボタン131、チェックボックス117等が表示される。領域設定画面132が表示される操作パネル13はタッチパネル型のものである。ユーザは、領域設定画面132に表示されたカーソル123、開始位置セットボタン130、終了位置セットボタン131を操作することにより指定情報を入力することができる。
例えば第2領域95(図14参照)を指定する指定情報の入力は、以下の要領で行われる。開始位置セットボタン130及び終了位置セットボタン131は、カーソル123で指定された主走査方向のライン(図14中の一点鎖線)を指定するための入力キーである。ユーザがカーソル123、開始位置セットボタン130及び終了位置セットボタン131を操作することにより、第2領域95が指定される。この第2領域95を指定する指定情報は、チェックボックス117にチェックが付けられることによってその設定が受け付けられる。なお、図19(A)には、2つの第2領域が指定された読取領域141が例示されている。また、指定情報は、カーソル123の操作に代えて、ユーザが操作パネル13のテンキーを操作することにより数値で入力されてもよい。また、本実施形態では、指定情報により第2領域が指定されるが、指定情報により第1領域が指定されてもよい。
制御部55は、領域設定画面132に対して指定情報が入力されたか否かを判断する(S50)。具体的には、制御部55は、カーソル123、開始位置セットボタン130、及び終了位置セットボタン131の操作により指定情報が設定され、チェックボックス117にチェックが付けられたか否かを判断する。指定情報が入力されていないと制御部55が判断した場合(S50:NO)、ステップS49の処理が継続される。制御部55は、指定情報が入力されたと判断した場合(S50:YES)、指定情報の入力を受け付けてその指定情報に基づいて原稿の読取領域を第1領域及び第2領域に区画する(S51)。区画された第1領域及び第2領域を示す情報は、EEPROM59の所定領域に一時的に格納される。原稿の読取領域は、入力された指定情報に基づいて、第1領域及び第2領域に区画される。このため、ユーザがスキャナ10において第1領域又は第2領域を任意に指定して原稿の一部の領域をぼかして読み取らせることができる。
制御部55は、選択が指定情報の入力ではないと判断した場合(S48:NO)、EEPROM59に保存されている指定情報を操作パネル13に表示させる(S52)。制御部55は、操作パネル13からの所定操作の有無に基づいて、保存されている指定情報が選択されたか否かを判断する(S53)。指定情報が選択されていないと制御部55が判断した場合(S53:NO)、ステップS52の処理が継続される。制御部55は、保存されている指定情報が選択されたと判断した場合(S53:YES)、選択された指定情報に基づいて原稿の読取領域を第1領域及び第2領域に区画する(S54)。ステップS51の処理又はステップS54の処理が行われた後、制御部55は、第1処理(図20参照)を実行する(S55)。
図20は、第1処理の詳細フローチャートである。
図20に示されるように、制御部55は、原稿トレイ22に原稿が載置されているか否かを判断する(S551)。このステップS551の判断は、原稿検出センサ36から出力されるセンサ信号に基づいて行われる。原稿トレイ22に原稿が載置されていないと制御部55が判断した場合(S551:NO)、待機状態となる。制御部55は、原稿トレイ22に原稿が載置されていると判断した場合(S551:YES)、原稿の読取開始命令があったか否かを判断する(S552)。原稿の読取開始を指示する所定の操作入力が操作パネル13から行われた場合、又は原稿の読取開始を指示する所定の命令を端末装置140から受信した場合、ステップS552において制御部55によりYESと判断される。逆に、操作パネル13から所定の操作入力が行われず、端末装置140から所定の命令を受信していない場合、ステップS552において制御部55によりNOと判断される。読取開始命令がないと制御部55が判断した場合(S552:NO)、待機状態となる。
制御部55は、読取開始命令があったと判断した場合(S552:YES)、ステップS34の処理と同様に、CRモータ65を駆動させて基準部材37(図2参照)に対してラインセンサ40を第1位置31に対応する読取位置へ移動させる(S553)。制御部55は、ステップS35の処理と同様に、第1光量調整値101及び第1白基準データ90(図4参照)を取得する(S554)。このステップS554の処理によって取得された第1光量調整値101及び第1白基準データ90は、RAM58に格納される。
制御部55は、基準部材37(図2参照)に対してラインセンサ40を第2位置32に対応する読取位置へ移動させる(S555)。この読取位置は、CRモータ65の駆動により基準部材37の下方へ移動されたラインセンサ40と基準部材37の読取面25との第2相対距離が、第2位置32に対応する読取位置に配置されたラインセンサ40と第1ガラス18における原稿の読取面25との第1相対距離と略等しくなる位置である。
制御部55は、第2光量調整値102及び第2白基準データ91(図4参照)を取得する(S556)。このステップS556の処理は、基準部材37に対するラインセンサ40の読取位置が異なる点を除いて、ステップS35の処理と同様に行われる。ステップS556の処理によって取得された第2光量調整値102及び第2白基準データ91は、RAM58に格納される。
制御部55は、ADF28のモータ72を制御して、原稿トレイ22に載置されている原稿の搬送を開始する(S557)。制御部55は、ADF28により搬送される原稿を第1位置31に対応する読取位置(図5(A)参照)に配置されたラインセンサ40によりスキャン(本スキャン)する(S558)。具体的には、制御部55は、基準部材37に対向配置されたラインセンサ40をCRモータ65を制御して第1位置31に対応する読取位置(図5(A)参照)へ移動させる。そして、制御部55は、第1位置31に対応する読取位置において第1ガラス18上を搬送される原稿を1ライン読み取る動作をラインセンサ40に実行させる。これにより、第1ガラス18における原稿の読取面25にラインセンサ40のピントを合わせた状態で原稿の第1領域の画像が1ライン読み取られる。すなわち、原稿の第1領域が鮮明に読み取られる。
制御部55は、ADF28により搬送される原稿の第2領域が第1ガラス18における読取面25(図5(B)参照)に到達したか否かを判断する(S559)。このステップS559の判断は、EEPROM59に設定されている第1領域と第2領域の情報、及びADF28による原稿の搬送が開始されてからのモータ72(図4参照)のステップ数に基づいて判断される。第2領域が到達していないと制御部55が判断した場合(S559:NO)、制御部55は、原稿が第1ガラス18上を通過したか否かを判断する(S561)。原稿が第1ガラス18上を通過していないと制御部55が判断した場合(S561:NO)、処理がS558へ戻される。これにより、ステップS558の処理が繰り返されて原稿の第1領域全体の画像が読み取られる。
制御部55は、搬送される原稿の第2領域が到達したと判断した場合(S559:YES)、ADF28により搬送される原稿を第2位置32に対応する読取位置(図5(B)参照)に配置されたラインセンサ40によりスキャン(本スキャン)する(S560)。具体的には、制御部55は、第1位置31に対応する読取位置に配置されているラインセンサ40をCRモータ65を制御して第2位置32に対応する読取位置へ移動させる。そして、制御部55は、第2位置32に対応する読取位置において第1ガラス18上を搬送される原稿を1ライン読み取る動作をラインセンサ40に実行させる。これにより、第1ガラス18における原稿の読取面25からラインセンサ40のピントをずらした状態で原稿の第2領域が1ライン読み取られる。すなわち、原稿の第2領域がぼかして読み取られる。
制御部55は、搬送される原稿の第2領域が第2位置32に対応する第1ガラス18の読取面25(図5(B)参照)を通過したか否かを判断する(S562)。このステップS562の判断は、EEPROM59に設定されている第1領域と第2領域の情報、及びADF28による原稿の搬送が開始されてからのモータ72のステップ数に基づいて行われる。原稿の第2領域が通過していないと制御部55が判断した場合(S562:NO)、ステップS560の処理が継続される。これにより、ステップS560の処理が繰り返されて原稿の第2領域全体の画像が読み取られる。第2領域が通過したと制御部55が判断した場合(S562:YES)、処理がステップS561へ進められる。制御部55は、原稿が第1ガラス18上を通過したと判断した場合(S561:YES)、原稿の読み取りが完了したと判断し、処理がステップS563へ進められる。
本実施形態においては、ステップS558の処理によって原稿の第1領域が何ラインか読み取られてからステップS560の処理により原稿の第2領域が読み取られる。ただし、読み取られる領域の順序はこれに限定されるものではなく、原稿の第2領域から読み取りが開始されてもよい。また、原稿の読取領域における読取開始位置が第1領域であるか又は第2領域であるかを判断し、その判断結果に基づいてステップS558又はステップS560へ処理が進められてもよい。
ステップS558及びステップS560の処理によって読み取られた原稿の画像(画像信号)は、順次AFE回路78へ出力されてシリアルに処理される。ステップS561の処理で制御部55がYESと判断した場合、画像処理回路79は、第1領域の画像をステップS554の処理によって取得された第1白基準データ90に基づいてシェーディング補正する(S563)。また、画像処理回路79は、第2領域の画像をステップS556の処理によって所得された第2白基準データ91に基づいてシェーディング補正する(S564)。このように、制御部55は、画像処理回路79によりシェーディング補正される原稿の画像の読取領域に応じて白基準データを変更する。
原稿におけるラインセンサ40の読取領域は、第1領域及び第2領域に区画される。搬送される原稿の本スキャンにおいて、ラインセンサ40を移動させるCRモータ65の駆動により、第1ガラス18における原稿の読取面25とラインセンサ40との第1相対距離が区画された領域に応じて変更される。このため、CRモータ65とは別の駆動源を設けることなく、原稿の第2領域をぼかして読み取ることができる。すなわち、第1領域が鮮明で第2領域がぼかされた原稿の画像を得ることができる。
本スキャンで得られた原稿の画像は、画像処理回路79により読取領域毎にシェーディング補正される。搬送される原稿の本スキャンでは第1相対距離が変更されるため、原稿からラインセンサ40への反射光の光量が原稿の読取中に変化する。本実施形態においては、原稿の第1領域のシェーディング補正に第1白基準データ90が使用され、原稿の第2領域のシェーディング補正に第2白基準データ91が使用される。このように、原稿の読取領域に応じて白基準データが変更されることにより、相対距離の変化に対応して一定品質の原稿の画像を得ることができる。
なお、搬送される原稿の本スキャンにおいて、2回の読取動作を連続的に実行し、各読取動作で得られた原稿の画像を合成してもよい。すなわち、ADF28により搬送される原稿の本スキャンにおいて、ラインセンサ40が第1位置31に対応する読取位置に配置された状態で、搬送される原稿全体の画像を読み取る読取動作を実行する。この読取動作が完了した後に、ローラ73を逆回転させて搬送された原稿を読み取り前の位置へ戻す。そして、ラインセンサ40が第2位置32に対応する読取位置に配置された状態で、搬送される原稿全体の画像を読み取る。制御部55は、1回目の読取動作で得られた第1領域の画像と、2回目の読取動作で得られた第2領域の画像とを合成して原稿全体の画像を生成する。
また、ここでは、原稿の第1領域が第1位置31に対応する読取位置に配置されたラインセンサ40により読み取られる形態について説明したが、原稿の第1領域は、モアレの発生を抑制するために、第1位置31に対応する読取位置から若干ずらされた位置にラインセンサ40が配置された状態で読み取られてもよい。
図15及び図16に示されるように、制御部55は、第1モードが選択されたと判断した場合(S44:第1モード)、第1モードの選択を受け付けて第2処理を実行する(S58)。
図21は、第2処理の詳細フローチャートである。
制御部55は、ステップS551の処理と同様に、原稿トレイ22に原稿が載置されているか否かを判断する(S581)。原稿トレイ22に原稿が載置されていないと制御部55が判断した場合(S581:NO)、待機状態となる。制御部55は、原稿トレイ22に原稿が載置されていると判断した場合(S581:YES)、ステップS552の処理と同様に、原稿の読取開始命令があったか否かを判断する(S582)。読取開始命令がないと制御部55が判断した場合(S582:NO)、待機状態となる。
制御部55は、原稿の読取開始命令があったと判断した場合(S582:YES)、ステップ34の処理と同様に、基準部材37に対してラインセンサ40を第1位置31に対応する読取位置へ移動させる(S583)。そして、制御部55は、ステップS35の処理と同様に、第1光量調整値101及び第1白基準データ90を取得する(S584)。取得された第1光量調整値101及び第1白基準データ90は、RAM58の所定領域に格納される。
制御部55は、ステップS584の処理に続いて、ステップS557の処理と同様に、原稿の搬送を開始する(S585)。制御部55は、ADF28により搬送される原稿を第1位置31に対応する読取位置(図5(A)参照)に配置されたラインセンサ40によりプレスキャンする(S586)。制御部55は、ADF28により搬送される原稿が第1ガラス18上を通過したか否かを判断する(S587)。原稿が第1ガラス18上を通過していないと制御部55が判断した場合(S587:NO)、ステップS586の処理が継続される。制御部55は、原稿が第1ガラス18上を通過したと判断した場合(S587:YES)、ステップS586のプレスキャンで得られた原稿の画像を画像処理回路79により第1白基準データ90に基づいてシェーディング補正する(S588)。制御部55は、モータ72を逆回転させて、ADF28により搬送された原稿をS585の搬送開始前の位置へ戻す(S589)。
このように、第2処理が行われることにより、ラインセンサ40が第1位置31に対応する読取位置に配置された状態で、ADF28により搬送される原稿の画像がプレスキャンされる。このプレスキャンで得られた原稿の画像は、RAM58の所定領域に格納されて読取領域の区画に利用される。
図16に示されるように、制御部55は、第2処理を行った後、領域設定、文字設定、又は図形設定の選択を促す旨を報知する(S60)。例えば、制御部55は、「領域設定、文字設定、又は図形設定を選択してください」等のメッセージを操作パネル13に表示させる。領域設定は、プレスキャンで得られた原稿の画像に対してユーザが指定情報を入力し、入力された指定情報に基づいて読取領域が第1領域及び第2領域に区画される設定である。文字設定は、プレスキャンで得られた原稿の画像からユーザが指定した文字を検出し、検出された文字を含む領域が含まれる第2領域に区画すると共にその他の領域を第1領域に区画する設定である。図形設定は、プレスキャンで得られた原稿の画像からユーザが指定した図形を検出し、検出された図形が含まれる領域を第2領域に区画すると共にその他の領域を第1領域に区画する設定である。制御部55は、領域設定、文字設定、及び図形設定のいずれかが選択されたか否かを操作パネル13における所定操作の有無に基づいて判断する(S61)。いずれの設定も選択されていないと制御部55が判断した場合(S61:NO)、ステップS60の処理が継続される。
制御部55は、いずれかの設定が選択されたと判断した場合(S61:YES)、選択が領域設定であるか否かを判断する(S62)。制御部55は、選択が領域設定であると判断した場合(S62:YES)、第2処理で得られた原稿の画像を操作パネル13に表示するとともに、指定情報の入力を促す旨を報知する(S63)。具体的には、制御部55は、プレスキャンで得られた原稿の画像と、領域設定画面132と同様の表示画面を操作パネル13に表示させる。例えば、制御部55は、読取領域141(図19(A)参照)にプレスキャンで得られた画像が示された領域設定画面132を操作パネル13に表示させる。
制御部55は、操作パネル13における所定操作の有無に基づいて、プレスキャンで得られた原稿の画像に対して指定情報が入力されたか否かを判断する(S64)。指定情報が入力されていないと制御部55が判断した場合(S64:NO)、ステップS63の処理が継続される。制御部55は、指定情報が入力されたと判断した場合(S64:YES)、指定情報の入力を受け付けてその指定情報に基づいて読取領域を第1領域及び第2領域に区画する(S65)。区画された第1領域及び第2領域の情報は、EEPROM59の所定領域に格納される。ステップS65の処理が行われた後、この処理で設定された第1領域と第2領域の情報に基づいて、原稿の本スキャンである上述の第1処理が行われる。
スキャナ10では、プレスキャンされた原稿の画像が操作パネル13により表示される。表示された原稿の画像に対して、領域を指定する指定情報の入力が操作パネル13を介して制御部55により受け付けられる。本スキャンにおける原稿の読取領域は、この指定情報に基づいて第1領域及び第2領域に区画される。このため、ユーザは、スキャナ10において表示されたプレスキャンの画像を見て、原稿のぼかしたい領域を容易に指定することが可能である。
図16及び図17に示されるように、制御部55は、選択が領域設定ではないと判断した場合(S62:NO)、選択が文字設定であるか否かを判断する(S69)。すなわち、制御部55は、選択が文字設定であるか又は図形設定であるかを判断する。制御部55は、選択が文字設定であると判断した場合(S69:YES)、図19(B)に例示される文字設定画面134(本発明における第2設定画面の一例)を表示する(S70)。文字設定画面134は、ユーザが文字を入力するための表示画面である。
文字設定画面134には、テーブル122、参照ボタン137、編集ボタン138、保存ボタン139、チェックボックス133等が表示される。テーブル122には、設定可能な文字が表示される。参照ボタン137が押下されることにより、EEPROM59に保存されている文字が読み出されてテーブル122に表示される。編集ボタン138が押下されることにより、ユーザが操作パネル13を操作して文字を入力することができる。保存ボタン139が押下されることにより、入力された文字がEEPROM59に保存される。ユーザは、参照ボタン137、編集ボタン138、保存ボタン139等を操作して、ぼかして読み取りたい文字をテーブル122に表示させる。テーブル122に表示された文字は、チェックボックス133にチェックが付けられることによってその設定が受け付けられる。
制御部55は、保存ボタン139の操作の有無に基づいて、文字が入力されたか否かを判断する(S71)。制御部55は、文字設定画面134に対して文字が入力されたと判断した場合(S71:YES)、入力された文字をEEPROM59に保存する(S72)。制御部55は、ステップS72の処理を行った場合、又は文字が入力されていないと判断した場合(S71:NO)、文字が選択されたか否かを判断する(S73)。具体的には、テーブル122に文字が表示された状態でチェックボックス133にチェックが付けられたか否かを判断する。文字が選択されていないと制御部55が判断した場合(S73:NO)、処理がステップS70へ戻される。
制御部55は、文字が選択されたと判断した場合(S73:YES)、文字の選択を受け付けてその文字を第2処理で得られた原稿の画像から検出する(S74)。具体的には、制御部55は、第2処理のプレスキャンで得られた原稿の画像をOCR(Optical Character Recognition)処理する。すなわち、制御部55は、プレスキャンで得られた原稿の画像を解析して文字データに変換する。そして、制御部55は、ステップS73の処理で選択されたと判断した文字を文字データから検出する。
制御部55は、文字が検出されたか否かを判断する(S75)。制御部55は、文字が検出されたと判断した場合(S75:YES)、検出された文字が含まれる領域を第2領域に区画し、その他の領域の第1領域に区画する(S76)。例えば、プレスキャンで得られた原稿の画像から「氏名」の文字が検出された場合、原稿の読取領域47から「氏名」の文字を含む主走査方向のラインを第2領域95に区画する(図14参照)。これにより、氏名の横に記載された個人情報がぼかして読み取られることとなる。区画された第1領域及び第2領域の情報は、EEPROM59に格納される。
制御部55は、このステップS76の処理で区画された第1領域及び第2領域の情報に基づいて上述の第1処理を実行する(S77)。制御部55は、選択された文字が第2処理のプレスキャンで得られた原稿の画像から検出されなかったと判断した場合(S75:NO)、原稿の画像に選択された文字が含まれていないことを報知する(S78)。具体的には、制御部55は、「選択された文字は検出されませんでした」等のメッセージを操作パネル13に表示させる。
なお、第2処理(ステップS58)ではラインセンサ40のピントを合わせた状態で原稿のプレスキャンが行われるので、上述した一連の処理の一部が以下のように変更されてもよい。制御部55は、第2処理で得られた原稿の画像をRAM58に格納する。第1処理において、制御部55は、搬送される原稿全体の画像をラインセンサ40が第2位置32に対応する読取位置に配置された状態でラインセンサ40に読み取らせる。そして、制御部55は、第1処理で得られた第2領域の画像、及び第1処理で得られた第1領域の画像を合成して原稿全体の画像を生成する。その結果、第1処理におけるラインセンサ40の読取位置の変更や原稿全体を2回読み取る読取動作が不要となる。このため、第1処理にかかる時間を短縮し、画像読取ユニット14の負荷を軽減し、スキャナ10の構成を簡略化することが可能となる。
図17及び図18に示されるように、制御部55は、選択が文字設定ではないと判断した場合(S69:NO)、すなわち図形設定であると判断した場合、図19(C)に例示される図形設定画面136を操作パネル13に表示させる(S81)。図形設定画面136は、ユーザが図形を入力するための表示画面である。
図形設定画面136には、図形145、パターン編集ボタン146、一覧表示ボタン147、チェックボックス143等が表示される。ユーザは、パターン編集ボタン146を押下して所定操作を行うことにより、図形を入力することができる。入力された図形やEEPROM59に保存されている図形は、図形145として図形設定画面136に表示される。一覧表示ボタン147は、保存されている図形を読み出して図形145として表示させるためのキーである。図形設定画面136に表示された図形145は、チェックボックス143にチェックが付けられることによってその設定が受け付けられる。
制御部55は、操作パネル13からの所定操作の有無に基づいて、図形が入力されたか否かを判断する(S82)。制御部55は、図形が入力されたと判断した場合(S82:YES)、入力された図形をEEPROM59に保存する(S83)。制御部55は、ステップS83の処理を行った後、又は図形が入力されていないと判断した場合(S82:NO)、図形が選択されたか否かを判断する(S84)。具体的には、制御部55は、図形設定画面136に図形145が表示された状態でチェックボックス143にチェックが付けられたか否かを判断する。図形が選択されていないと制御部55が判断した場合(S84:NO)、処理がステップS81へ戻される。制御部55は、図形が選択されたと判断した場合(S84:YES)、選択された図形を第2処理で得られた原稿の画像から検出する(S85)。制御部55は、第2処理で得られた原稿の画像から図形が検出されたか否かを判断する(S86)。
制御部55は、第2処理で得られた原稿の画像から図形が検出されたと判断した場合(S86:YES)、検出された図形が含まれる領域を第2領域に区画し、その他の領域を第1領域に区画する(S87)。このステップS87の処理は、ステップS76の処理と同様に行われる。制御部55は、このステップS87の処理で区画された第1領域及び第2領域の情報に基づいて第1処理を実行する(S88)。
なお、第2処理(ステップS58)ではラインセンサ40のピントを合わせた状態で原稿のプレスキャンが行われるので、上述した一連の処理の一部が以下のように変更されてもよい。制御部55は、第2処理で得られた原稿の画像をRAM58に格納する。第1処理において、制御部55は、搬送される原稿全体の画像をラインセンサ40が第2位置32に対応する読取位置に配置された状態でラインセンサ40に読み取らせる。そして、制御部55は、第1処理で得られた第2領域の画像、及び第1処理で得られた第1領域の画像を合成して原稿全体の画像を生成する。その結果、第1処理におけるラインセンサ40の読取位置の変更や原稿全体を2回読み取る読取動作が不要となる。このため、第1処理にかかる時間を短縮し、画像読取ユニット14の負荷を軽減し、スキャナ10の構成を簡略化することが可能となる。
制御部55は、第2処理で得られた原稿の画像から図形が検出されなかったと判断した場合(S86:NO)、原稿の画像に選択された図形が含まれていないことを報知する(S89)。具体的には、制御部55は、「選択された図形は検出されませんでした」などのメッセージを操作パネル13に表示させる。
図22〜図24は、ぼかしモードを選択する情報を端末装置140から受信した場合にスキャナ10において行われる処理の手順を示すフローチャートである。
制御部55は、ぼかしモードを選択する情報を端末装置140から受信したか否かを判断する(S91)。ぼかしモードを選択する情報を受信していないと制御部55が判断した場合(S91:NO)、待機状態となる。制御部55は、ぼかしモードを選択する情報を受信したと判断した場合(S91:YES)、EEPROM59に保存されている指定情報、文字、及び図形を端末装置140へ転送する(S92)。
端末装置140は、スキャナ10から転送された指定情報、文字、及び図形を受信する。端末装置140は、受信したこれらの情報をモニタに表示し、第1モード又は第2モードの選択を受け付ける。キーボードやマウスの操作により第2モードが指定された場合、端末装置140は、ユーザの操作入力に基づいて指定情報を生成してスキャナ10へ送信する。キーボードやマウスの操作により第1モードが指定された場合、端末装置140は、スキャナ10へプレスキャン命令を送信する。
スキャナ10の制御部55は、端末装置140から指定情報を受信したか否かを判断する(S93)。制御部55は、指定情報を受信したと判断した場合(S93:YES)、受信された指定情報に基づいて原稿の読取領域を第1領域及び第2領域に区画する(S94)。このステップS94の処理は、ステップS51の処理と同様に行われる。制御部55は、ステップS94の処理で区画された第1領域及び第2領域の情報に基づいて第1処理を実行する(S95)。
端末装置140から送信された指定情報は、スキャナ10により受信される。本スキャンにおける原稿の読取領域は、この指定情報に基づいて第1領域及び第2領域に区画される。このため、ユーザが端末装置140において第1領域と第2領域を任意に指定して原稿の一部の領域をぼかして読み取らせることが可能となる。
制御部55は、指定情報を受信していないと判断した場合(S93:NO)、端末装置140からプレスキャン命令を受信したか否かを判断する(S96)。プレスキャン命令を受信していないと制御部55が判断した場合(S96:NO)、処理がステップS93へ戻される。制御部55は、プレスキャン命令を受信したと判断した場合(S96:YES)、第2処理を実行する(S100)。制御部55は、この第2処理で得られた原稿の画像を端末装置140へ転送する(S101)。
例えば、端末装置140では、原稿の画像がモニタに表示される。モニタに表示された原稿の画像を見たユーザの操作入力に基づいて、端末装置140で指定情報、文字、又は図形が生成される。指定情報、文字、又は図形は、スキャナ10へ送信される。
スキャナ10の制御部55は、端末装置140から送信された指定情報を受信したか否かを判断する(S102)。指定情報を受信したと制御部55が判断した場合に(S102:YES)、ステップS94へ処理が進められる。制御部55は、指定情報を受信していないと判断した場合(S102:NO)、端末装置140から文字又は図形を受信したか否かを判断する(S103)。文字又は図形を受信していないと制御部55が判断した場合(S103:NO)、処理がステップS102へ戻される。
制御部55は、文字又は図形を受信したと判断した場合(S103:YES)、受信した情報が文字であるか又は図形であるかを判断する(S104)。制御部55は、受信した情報が文字であると判断した場合(S104:文字)、受信した文字を第2処理で得られた原稿の画像から検出する(S105)。このステップS105の処理は、ステップS74の処理と同様に行われる。制御部55は、ステップS105の処理を行った結果、受信した文字がプレスキャンで得られた原稿の画像から検出されたか否かを判断する(S106)。制御部55は、文字が検出されたと判断した場合(S106:YES)、検出された文字が含まれる領域を第2領域に区画し、その他の領域を第1領域に区画する(S107)。このステップ107の処理は、ステップ76の処理と同様に行われる。制御部55は、このステップS107の処理で区画された第1領域及び第2領域の情報に基づいて第1処理を実行する(S108)。
制御部55は、文字が検出されなかったと判断した場合(S106:NO)、原稿の画像に受信した文字が含まれていないことを報知するための情報を端末装置140へ送信する(S109)。これにより、例えば「指定された文字は原稿に含まれていません」等のメッセージが端末装置140のモニタに表示される。
制御部55は、受信した情報が図形であると判断した場合(S104:図形)、受信した図形を第2処理で得られた原稿の画像から検出する(S111)。このステップS111の処理は、ステップS85の処理と同様に行われる。制御部55は、ステップS111の処理を行った結果、受信した図形が第2処理で得られた原稿の画像から検出されたか否かを判断する(S112)。制御部55は、図形が検出されたと判断した場合(S112:YES)、検出された図形が含まれる領域を第2領域に区画し、その他の領域を第1領域に区画する(S113)。このステップS113の処理は、ステップS87の処理と同様に行われる。制御部55は、ステップS113の処理で区画された第1領域及び第2領域の情報に基づいて第1処理を実行する(S114)。
制御部55は、図形が検出されなかったと判断した場合(S112:NO)、原稿の画像に受信した図形が含まれていないことを報知するための情報を端末装置140へ送信する(S115)。これにより、例えば「指定された図形は原稿に含まれていません」等のメッセージが端末装置140のモニタに表示される。
ADF28により搬送される原稿におけるラインセンサ40の読取領域は、第1領域及び第2領域に区画される。読取領域は、原稿のプレスキャン(第2処理)により得られた原稿の画像、又はユーザ設定に基づいて区画される。搬送される原稿の本スキャンにおいて、ラインセンサ40を移動させるCRモータ65の駆動により、第1ガラス18における原稿の読取面25とラインセンサ40との第1相対距離が、区画された領域に応じて変更される。すなわち、原稿の第1領域を読み取る場合、ラインセンサ40は第1位置31に対応する読取位置に配置される。原稿の第2領域を読み取る場合、ラインセンサ40は第2位置32に対応する読取位置に配置される。このため、CRモータ65とは別の駆動源を設けることなく、搬送される原稿の一部の領域をぼかして読み取ることができる。
ぼかしモードでは、スキャナ10が第1モード又は第2モードに設定される。第1モードは、プレスキャンの結果に基づいて読取領域を区画するものである。第2モードは、ユーザ設定に基づいて読取領域を区画するものである。第1モードの選択が受け付けられると、搬送される原稿のプレスキャンがラインセンサ40により実行される。そして、そのプレスキャンで得られた原稿の画像に基づいて、本スキャンで読み取られるその原稿の読取領域が区画される。これにより、例えば、プレスキャンで得られた原稿の画像を解析して読取領域を区画したり、或いはプレスキャンで得られた原稿の画像を表示してユーザの操作に基づいて読取領域を区画することができる。第2モードの選択が受け付けられると、本スキャンで読み取られる原稿の読取領域がユーザ設定に基づいて区画される。例えば、複数の原稿に対して同じ読取領域を設定することにより、複数の原稿が同じ条件で読み取られる。なお、第2モードでは原稿のプレスキャンは行われない。
本実施形態に係るスキャナ10では、操作パネル13から入力された、又は端末装置140から受信した指定情報、文字、又は図形がEEPROM59に記憶される。このため、ユーザは、指定情報、文字、又は図形を登録しておくことにより、これらの情報を入力することなく第2領域を指定することができる。すなわち、複数の原稿に対して同じ第1領域と第2領域を指定して原稿を読み取る場合に、原稿毎の文字又は図形の入力が不要となる。なお、EEPROM59に記憶される指定情報、文字、及び図形は、これらの情報に限定されるものではない。スキャナ10に保存される指定情報、文字、又は図形は、例えば、スキャナ10の出荷前に予めROM57に書き込まれたものであってもよい。
本実施形態に係る第2ガラス20は、スキャナ10の高さ方向に上下動可能に構成されたものでもよい。
図25は、第2ガラス20の昇降機構110を示す模式図である。
図25に示されるように、昇降機構110は、固定部材111と、スライド部材112と、支持部材113,114と、コイルバネ115,116,117,118とを備える。第2ガラス20は、スキャナ10の奥行き方向(矢印39で示される方向)の両端に支持部材113,114が固定されている。固定部材111は、コイルバネ115,116を介して支持部材113を支持する。この固定部材111は、筐体15に固定されている。スライド部材112は、コイルバネ117,118を介して支持部材114を支持する。このスライド部材112は、筐体15に対してスキャナ10の奥行き方向へスライド可能に設けられている。スライド部材112には、図外のモータからの駆動力が伝達される。スライド部材112は、この駆動力を受けてスライド移動する。固定部材111及びスライド部材112には、第2ガラス20へ向けて下る傾斜面118,119が設けられている。支持部材113には、傾斜面118と平行な当接面120が形成されている。支持部材114には、傾斜面119と平行な当接面121が形成されている。
スライド部材112は、モータからの駆動力を受けて固定部材111に近接する方向(図25の左方向)へスライド移動する。支持部材113が傾斜面118により押し上げられると共に支持部材114が傾斜面119により押し上げられ、第2ガラス20が上昇する。コイルバネ115,117は、第2ガラス20の上昇に伴って収縮され、第2ガラス20を下方へ押し下げるバネ力を蓄える。コイルバネ116,118は、第2ガラス20の上昇に伴って伸張され、第2ガラス20を下方へ引き下げるバネ力を蓄える。スライド部材112は、モータが逆回転されることにより固定部材111から離間する方向(図25の右方向)へスライド移動する。支持部材113,114がコイルバネ115〜118が蓄えたバネ力によって傾斜面118,119に沿って下方へ移動し、第2ガラス20が下降する。
上述のように、第1ガラス18における原稿の読取面25は、ラインセンサ40の移動面に対して傾斜されている。このため、ラインセンサ40の移動に伴ってラインセンサ40対応する読取面25の高さが変化する。第2ガラス20を上下動させて第2ガラス20の上面と読取面25の高さとを一致させることにより、FBSにおいても読取モードを変更して第2ガラス20に載置された原稿を読み取ることが可能である。すなわち、FBSにおいても、上述の通常モード及びぼかしモードによる原稿の読み取りが可能である。
[第2実施形態]
以下に、本発明の第2実施形態が説明される。第2実施形態は、第1ガラス18及びその周辺の構成、基準部材37及びその周辺の構成が異なるほかは、第1実施形態と同様の構成であるので、これら以外の構成の説明は省略される。
図26及び図27は、本発明の第2実施形態に係るスキャナ10における搬送路12の一部を示す模式断面図である。
本発明の第2の実施形態に係るスキャナ10においては、第1ガラス18及び基準部材37がラインセンサ40の移動面と平行に設けられている。また、ガイド部材34の裏面には、第1ガラス18に対して原稿の搬送方向上流側及び下流側に第1スペーサ94が設けられている。この第1スペーサ94は、ラインセンサ40が第1ガラス18と対向した状態でラインセンサ40と第1ガラス18との間に介在する。第1スペーサ94は、ラインセンサ40が移動する方向(図26の矢印38で示される方向)に厚みが階段状に変化するものである。第1スペーサ94は、ADF28により搬送される原稿の搬送方向上流側から下流側へ向けて段階的に厚みが増す段差部26が形成されている。一方、キャリッジ41は、ローラ30が設けられている長手方向の両端に段差部50を有する。段差部50は、段差部26に対応して、ADF28により搬送される原稿の搬送方向下流側から上流側へ向けて段階的に高くなるように形成されている。
ガイドシャフト42は、上方へ付勢された状態で筐体15に上下動可能に支持されている。キャリッジ41は、キャリッジ41の段差部50が段差部26を昇降するように矢印38で示される方向に移動する。例えば、キャリッジ41は、原稿の搬送方向下流側から上流側へ向けて移動する(図26及び図27参照)。これにより、キャリッジ41に搭載されているラインセンサ40の高さが変化する。その結果、ラインセンサ40と、第1ガラス18における原稿の読取面25との相対距離である第1相対距離がD5からD6へ変更される。このように、ラインセンサ40は、CRモータ65により移動されることで第1ガラス18に対して接近又は離間される。なお、図26及び図27には第1相対距離が2段階に変更されるように第1スペーサ94に2段の段差部26が設けられているが、段差部26の段数を増加させて第1相対距離が3段階以上に変更されるようにしてもよい。
第2スペーサ96は、スキャナ10の幅方向(矢印38で示される方向)における基準部材37の両側に設けられている。第2スペーサ96は、ラインセンサ40が基準部材37と対向した状態でラインセンサ40と基準部材37との間に介在する。第2スペーサ96は、第1スペーサ94と同形状のものである。すなわち、第2スペーサ96は、ラインセンサ40が移動する方向(矢印38で示される方向)に厚みが階段状に変化するものである。ラインセンサ40が基準部材37に対向して移動されることにより、ラインセンサ40と基準部材37における読取面との第2相対距離が段階的に変更される。
図28は、第1スペーサ104及び第2スペーサ106を示す模式断面図である。
本発明における第1スペーサ及び第2スペーサは、第1スペーサ94及び第2スペーサ96に限定されるものではない。すなわち、本発明における第1スペーサ及び第2スペーサは、図28に示されるように、ラインセンサ40が移動する方向にその厚みがくさび状に変化する第1スペーサ104及び第2スペーサ106であってもよい。