1.代表的な実施の形態
先ず、本願において開示される発明の代表的な実施の形態について概要を説明する。代表的な実施の形態についての概要説明で括弧を付して参照する図面の参照符号はそれが付された構成要素の概念に含まれるものを例示するに過ぎない。
〔1〕本発明の代表的な実施の形態に係る半導体集積回路装置は、電源供給もしくは電源遮断が制御される回路単位とされる回路ブロック(12,13,14)と、電源配線から回路を介して接地配線に流れる電流経路に設けられ、上記回路ブロックへの電源供給もしくは電源遮断を可能とする電源スイッチ(22,23,24)と、上記電源スイッチの動作を制御可能な電源スイッチコントローラ(32,33,34)とが設けられる。そして上記電源スイッチが非導通状態から導通状態に切り替えられたときに一斉に流れる電流(突入電流)をモニタ可能な突入電流モニタ回路(15)と、上記突入電流モニタ回路による突入電流モニタ結果に基づく、上記電源スイッチの駆動タイミング設定を可能とする設定部(17)とが設けられる。
上記の構成によれば、突入電流モニタ回路によって突入電流モニタが行われ、そのモニタ結果に基づいて、上記設定部に、上記電源スイッチの駆動タイミングが設定される。これにより、回路ブロック毎の突入電流の実測結果に基づく、電源スイッチ駆動タイミング調整が可能とされるので、電源スイッチ駆動タイミングの最適化を図ることができる。従って必要以上のマージン設定に起因して電源復帰が遅延されるのを回避することができる。
〔2〕このとき、上記電源スイッチコントローラ(32,33,34)は、上記電源スイッチを駆動可能な第1ドライバ(323)と、上記第1ドライバよりも高い駆動能力によって上記電源スイッチを駆動可能な第2ドライバ(324)とを含んで構成することができる。そして上記設定部(17)には、上記突入電流モニタ回路による突入電流モニタ結果に基づく、上記第2ドライバによる上記電源スイッチの駆動タイミング設定を行うことができる。
〔3〕電源供給もしくは電源遮断が制御される回路単位とされる回路ブロック(12,13,14)と、電源配線から回路を介して接地配線に流れる電流経路に設けられ、上記回路ブロックへの電源供給もしくは電源遮断を可能とする電源スイッチ(22,23,24)と、上記電源スイッチの動作を制御可能な電源スイッチコントローラ(32,33,34)とが設けられる。そして、上記電源スイッチが非導通状態から導通状態に切り替えられたときに一斉に流れる電流(突入電流)をモニタ可能な突入電流モニタ回路(15)と、上記突入電流モニタ回路による突入電流モニタ結果に基づく、上記電源スイッチコントローラの電源スイッチ駆動能力設定を可能とする設定部(17)とが設けられる。
上記の構成によれば、突入電流モニタ回路によって突入電流モニタが行われ、そのモニタ結果に基づいて、上記設定部に、上記電源スイッチコントローラの電源スイッチ駆動能力が設定される。これにより、回路ブロック毎の突入電流の実測結果に基づく、上記電源スイッチコントローラの電源スイッチ駆動能力調整が可能とされるので、電源スイッチ駆動能力の最適化を図ることができる。従って必要以上のマージン設定に起因して電源復帰が遅延されるのを回避することができる。
〔4〕上記〔1〕又は〔3〕において、消費電流の低減を図るには、上記回路ブロック毎に流れる突入電流のモニタが行われる場合にのみ、上記突入電流モニタ回路に動作用電源を供給可能なトランジスタ(701)を設けると良い。
〔5〕上記〔1〕又は〔3〕において、上記半導体集積回路装置には、外部から上記回路ブロックに電源を供給するための第1電源パッド(P1)と、上記第1電源パッドとは別に設けられ、突入電流モニタ時の電源電圧供給を可能とする第2電源パッド(P2)とを設けることができる。上記突入電流モニタ回路(15)は、供給される電源電圧に応じた周波数で発振可能なリングオシレータ(201)と、上記リングオシレータの発振周波数を測定可能なカウンタ(202)とを含んで構成することができる。このとき、上記第1電源パッドと上記第2電源パッドとが抵抗素子(R1又はR2)によって結合された状態で、上記第2電源パッドから電源供給が行われた場合の上記カウンタの出力値に基づいて、上記回路ブロックの突入電流モニタを行うことができる。
〔6〕上記〔1〕又は〔3〕において、上記突入電流モニタ回路は、上記第1電源パッドと上記第2パッドとの間の電位差を増幅可能なアンプ(301)を含んで構成することができる。このとき、上記第1電源パッドと上記第2電源パッドとが抵抗素子(R1又はR2)によって結合された状態で、上記第2電源パッドから上記抵抗素子を介して上記回路ブロックに電源電圧の供給が行われた場合の上記アンプの出力電位に基いて、上記回路ブロックの突入電流モニタを行うことができる。
〔7〕上記〔1〕又は〔3〕において、上記突入電流モニタ回路は、上記電源パッドと上記回路ブロックの電源端子とに結合された第1コイル(L1)と、上記第1コイルに対して磁気的に結合可能な第2コイル(L2)と、上記第1コイルに流れる電流に応じて上記第2コイルに誘起された電圧を増幅可能なアンプ(401)とを含んで構成することができる。このとき、上記電源パッドから上記第1コイルを介して電源供給が行われた場合の上記アンプの出力電位に基づいて、上記回路ブロックの突入電流モニタを行うことができる。
〔8〕上記〔1〕又は〔3〕において、突入電流モニタを効率よく行うには、シミュレーション解析により、電源電圧の低下により弊害を生ずるとされた箇所に上記突入電流モニタ回路を配置することができる。
〔9〕上記〔1〕において、上記設定部(17)は、上記電源スイッチの駆動タイミングを調整するための情報を保持可能な保持部を含んで構成することができる。そしてこの保持部の保持情報に従って、上記電源スイッチの駆動タイミング制御が行われる。
〔10〕上記〔3〕において、上記設定部(17)は、上記電源スイッチコントローラの上記電源スイッチ駆動能力の調整情報を保持可能な保持部を含んで構成することができる。そしてこの保持部の保持情報に従って、上記電源スイッチコントローラの上記電源スイッチ駆動能力が制御される。
〔11〕電源供給もしくは電源遮断が制御される回路単位とされる回路ブロック(12,13,14)と、電源配線から回路を介して接地配線に流れる電流経路に設けられ、上記回路ブロックへの電源供給もしくは電源遮断を可能とする電源スイッチ(22,23,24)と、上記電源スイッチの動作を制御可能な電源スイッチコントローラ(32,33,34)とが設けられる。そして、上記電源スイッチが非導通状態から導通状態に切り替えられたときに一斉に流れる電流をモニタ可能な突入電流観測回路(200)が設けられる。上記電源スイッチコントローラは、上記電源スイッチを駆動可能な第1ドライバ(323)と、上記第1ドライバよりも高い駆動能力によって上記電源スイッチを駆動可能な第2ドライバ(324)と、上記第1ドライバによって上記電源スイッチの駆動が開始された後、上記突入電流観測回路での観測結果が予め設定された値に達した時点で上記第2ドライバを導通させるための制御論理(322)とを含んで成る。
〔12〕上記〔11〕において、上記突入電流観測回路は、上記回路ブロック毎の突入電流を検出するとともに、その検出結果を積分して出力する機能を含んで構成することができる。
〔13〕上記〔11〕において、上記電流観測回路は、上記回路ブロック毎の突入電流を検出するとともに、その検出結果を微分して出力する機能を含んで構成することができる。
〔14〕電源供給もしくは電源遮断が制御される回路単位とされる回路ブロック(12,13,14)と、電源配線から回路を介して接地配線に流れる電流経路に設けられ、上記回路ブロックへの電源供給もしくは電源遮断を可能とする電源スイッチ(22,23,24)と、上記電源スイッチの動作を制御可能な電源スイッチコントローラ(32,33,34)とが設けられる。そして、上記電源スイッチの上記回路ブロック側の電位レベルを検出する検出回路(230)が設けられる。上記電源スイッチコントローラは、上記電源スイッチを駆動可能な第1ドライバ(323)と、上記第1ドライバよりも高い駆動能力によって上記電源スイッチを駆動可能な第2ドライバ(324)と、上記第1ドライバによって上記電源スイッチの駆動が開始された後、上記検出回路の検出結果が予め定められた値に達した時点で上記第2ドライバを導通させるための制御論理(322)とを含んで成る。
上記の構成によれば、上記制御論理は、上記第1ドライバによって上記電源スイッチの駆動が開始された後、上記検出回路の検出結果が予め定められた値に達した時点で上記第2ドライバを導通させる。これにより、電源スイッチ駆動タイミングの最適化を図ることができる。また、突入電流の低減を検出して電源スイッチの駆動制御を動的に行うことができるので、回路ブロックの駆動順番の変更等に容易に対応することができる。
〔15〕上記〔14〕において、上記検出回路は、上記電源スイッチの上記回路ブロック側の電位レベルを検出するとともに、それを微分して出力する機能を含んで構成することができる。
〔16〕上記〔1〕、〔3〕、又は〔11〕において、上記電源電圧を形成する電源回路を設けることができる、この電源回路には、上記電源電圧に応じた周波数で発振可能なリングオシレータ(605)と、上記リングオシレータの発振周波数を測定可能なカウンタ(606)とが設けられる。さらに上記回路ブロックの動作時における上記カウンタの出力値と、上記回路ブロックの非動作時における上記カウンタの出力値とが互いに等しくなるように上記電源電圧のレベルを制御可能な制御回路(602)が設けられる。
〔17〕上記〔14〕において、上記検出回路は、上記回路ブロックの近傍に配置され、上記回路ブロックと共通の電源電圧が供給されることにより、上記電源電圧に応じた周波数で発振可能なリングオシレータ(201)と、上記リングオシレータの発振周波数を測定可能なカウンタ(202)とを含んで構成することができる。このとき、上記第1ドライバにより上記電源スイッチが導通された後の上記カウンタの出力値が、上記電源スイッチが導通される前の状態に戻った時点で上記第2ドライバによる上記電源スイッチの駆動が開始される。
2.実施の形態の説明
次に、実施の形態について更に詳述する。
尚、実施の形態を説明するための全図において同一の部材には原則として同一の符号を付すことにより、その説明を省略する。
図1には、本発明にかかる半導体集積回路装置の一例とされるSoC(System On a Chip)が示される。SoCは、マイクロコンピュータの主要機能を搭載した半導体チップとされ、特に制限されないが、公知の半導体集積回路製造技術により、単結晶シリコン基板などの一つの半導体基板に形成される。図1に示されるSoC10は、特に制限されないが、複数の回路ブロック(CBLK)11,12,13,14、突入電流モニタ回路(MTR)15、電源スイッチ22,23,24、電源スイッチコントローラ(VSWC)32,33,34、及びシステムコントローラ(SCNT)16を含む。
上記回路ブロック11,12,13,14は、それぞれ複数の回路素子の組み合わせによって形成される。ここで、回路ブロック11には、中央処理装置(CPU)などが含まれ、この回路ブロック11については常時電源が供給される。電源スイッチ22,23,24は、電源配線(Vddライン)から回路を介して接地配線(Vssライン)に流れる電流経路に設けられ、回路ブロック12,13,14への電源供給もしくは電源遮断を行うことができる。電源スイッチ22,23,24が導通されることによって、対応する回路ブロック12,13,14への電源供給が行われる。また、電源スイッチ22,23,24が非導通状態にされると、回路ブロック12,13,14への電源供給は行われない。この状態を「電源遮断」という。SoC10が適用されるユーザシステムの動作において、現在必要な回路ブロックのみに電源給電が行われ、他の回路ブロックについては電源が遮断されることで、消費電力の低減が図られる。電源スイッチ22,23,24は、nチャンネル型MOSトランジスタとされ、それぞれ対応する電源スイッチコントローラ32,33,34からのゲート信号GATEによってオン・オフ動作が制御される。複数の回路ブロック11,12,13,14の動作用電源は、高電位側電源Vdd、低電位側電源Vssとされる。高電位側電源Vddは、第1VddパッドP1を介して行われる。ウェーハプロービングなどの検査時の高電位側電源Vdd供給は第2VddパッドP2を介して行われる。低電位側電源Vssはグランドレベルとされ、図示されないVssパッドを介して供給される。
電源遮断状態の回路ブロックに対して電源供給を開始して回路を活性化することを電源復帰という。この電源復帰に際して、上記システムコントローラ16は、上記電源スイッチコントローラ32,33,34に対してリクエスト信号REQを出力する。上記電源スイッチコントローラ32,33,34は、このリクエスト信号REQに基づいて対応する電源スイッチ22,23,24の動作を制御する。この制御状態はアクノリッジ信号ACKによってシステムコントローラ34に伝達される。上記突入電流モニタ回路15は、ウェーハプロービングなどの検査時に第2VddパッドP2を介して高電位側電源Vddの供給が行われた場合において、各回路ブロック12,13,14に流れる突入電流のモニタを可能とする。この突入電流モニタ結果に基づいて、上記電源スイッチ22,23,24の駆動タイミング設定や、上記電源スイッチコントローラ32,33,34の電源スイッチ駆動能力設定を行うことができる。この駆動タイミング設定や電源スイッチ駆動能力設定は、システムコントローラ16内に設けられた設定部17に対して行うことができる。この設定部17は、特に制限されないが、ヒューズ回路やレジスタによって形成することができる。ヒューズ回路への情報設定は、対応するヒューズを溶断するか否かによって可能とされる。レジスタへの情報設定は、回路ブロック11に含まれる中央処理装置(CPU)を介して行うことができる。システムコントローラ16は、このタイミング設定部や能力設定部の設定内容に従って制御信号CNTLを生成して、対応する電源スイッチコントローラ32,33,34の動作を制御する。
次に、各部の詳細な構成及び動作について説明する。
図11には、回路ブロック12と電源スイッチ22との関係が示される。
電源スイッチ22は、複数のnチャネル型MOSトランジスタが並列接続されて成る。この電源スイッチ22を形成する複数のnチャネル型MOSトランジスタは、電源コントローラ32によってゲート信号GATEがハイレベルにされることでオン(導通状態)される。これによって、回路ブロック12におけるユーザ論理の仮想接地(Vssm)ラインの電荷が引き抜かれて電位側電源Vssレベルに等しくされる。これによって回路ブロック12が活性化される。このとき、回路には突入電流iddが流れる。突入電流iddが流れることで、低電位側電源Vssレベルが一時的に上昇され、これがノイズや誤動作の主要因とされる。
図2には、突入電流モニタ回路15の構成例が示される。
突入電流モニタ回路15は、図2に示されるように、供給される電源電圧に応じた周波数で発振可能なリングオシレータ201と、このリングオシレータ201の発振周波数を測定可能なカウンタ202とを含んで成る。リングオシレータ201には、その動作用電源として、高電位側電源Vdd及び低電位側電源Vssが供給される。このリングオシレータ201は、イネーブル信号enがハイレベルとされることで発振する。突入電流モニタを行わない期間には、イネーブル信号enをローレベルにネゲートしてリングオシレータ201の動作を停止させることにより、無駄な電流消費を回避することができる。尚、突入電流モニタ回路15への電源供給を停止可能なスイッチを追加することにより、突入電流モニタを行わない期間には突入電流モニタ回路15への電源供給を停止するように構成しても良い。
高電位側電源Vddは、第1VddパッドP1又は第2VddパッドP2を介して供給される。低電位側電源Vssは、VssパッドP3を介して供給される。第1VddパッドP1と、第2VddパッドP2とを結合するように抵抗素子R1又はR2が設けられる。抵抗素子R1は、外付け抵抗であり、チップ境界203の外側に配置される。抵抗素子R2は、内部抵抗であり、チップ境界203の内側に配置される。抵抗素子R2がチップに内蔵されている場合には、外付けの抵抗素子R1を省略することができる。抵抗素子R2がチップに内蔵されていない場合には、突入電流測定のためのウェーハプロービングの際に、外付けの抵抗素子R1を設ければ良い。突入電流モニタのためのプロービングにおいて、第2VddパッドP2に高電位側電源Vddが供給される。このとき、抵抗素子R1,R2で電圧降下を生じ、リングオシレータ201に供給される電源電圧が低下される。リングオシレータ201での発振周波数は、供給される電源電圧レベルに応じて変化する。つまり、電源電圧レベルが低くなればリングオシレータ201の発振周波数も低くなる。そこで、リングオシレータ201の発振周波数をカウンタ202で測定することにより、そのときの電源電圧レベルを把握することができ、それを電流に変換することで電流モニタが可能とされる。電源スイッチ22が導通されたとき、回路ブロック12には瞬間的に突入電流が流れる。従って、電源スイッチ22が導通された際のリングオシレータ201の発振周波数には、電源スイッチ22が導通された際の突入電流が反映されており、そのときの発振周波数をカウンタ202で測定すれば、それに基づいて突入電流のモニタが可能となる。リングオシレータ201の発振周波数をカウンタ202で測定し、その測定結果に基づいてそのときの電源電圧レベルを把握するには、カウント数(発振周波数)と電源電圧レベルとの関係に基づいて予め作成された変換テーブルを用いるのが便利である。変換テーブルは読み出し専用テーブルに形成することができる。電源電圧レベルが把握できれば、I=V/Rの関係から電流モニタが可能となる。
ここで、抵抗素子R2は、チップに内蔵されるため、チップ占有面積の観点で、あまり大きな抵抗値とすることができない。それに対して外付けの抵抗素子R1には、大きな抵抗値を有するものを用いることができる。抵抗値が大きい場合、そこでの電圧降下が大きくなるため、突入電流モニタの感度が高くなるので、比較的小さな突入電流でも容易にモニタできるという利点がある。
図3及び図4には、突入電流モニタ回路15の別の構成例が示される。
図3に示される突入電流モニタ回路15は、図3に示されるように、第1VddパッドP1と上記第2VddパッドP2との間の電位差を増幅する差動アンプ301を含んで構成される。差動アンプ301の出力信号を電流に変換することで突入電流モニタが可能となる。
図4に示される突入電流モニタ回路15は、VddパッドP1と回路ブロック12の電源端子とに結合された第1コイルL1と、それに対して磁気的に結合可能な第2コイルL2と、上記第1コイルL1に流れる電流に応じて上記第2コイルL2に誘起された電圧を増幅するアンプ401とを含んで構成される。アンプ401の出力信号を電流に変換することで、第1コイルL1に流れる電流(Δi/Δt)の観測、すなわち突入電流モニタが可能となる。
図5には、電源スイッチコントローラ32の構成例が示される。
電源スイッチコントローラ32は、図5に示されるように、バイアス回路(BIS)321、pチャネル型MOSトランジスタ323(第1ドライバ)、nチャネル型MOSトランジスタ329、pチャネル型MOSトランジスタ324(第2ドライバ)、制御論理(LOG)322、シュミット回路325、分圧抵抗素子R11,R12及び比較回路326を含んで成る。pチャネル型MOSトランジスタ323,324は、高電位側電源Vccに結合される。バイアス回路321はリクエスト信号REQがローレベルにされることで活性化されて、pチャネル型MOSトランジスタ323に所定のバイアス電圧を供給する。これによりpチャネル型MOSトランジスタ323には定電流I0が流れる。nチャネル型MOSトランジスタ329は、リクエスト信号REQがハイレベルにされ、インバータ327の出力信号がローレベルにされることでオフされる。この状態で、ゲート信号GATEがハイレベルにされ、それによって電源スイッチ22が導通される。pチャネル型MOSトランジスタ324は制御論理322によって制御される。pチャネル型MOSトランジスタ324が導通されると、ゲート信号GATEがハイレベルにされることで電源スイッチ22が導通される。pチャネル型MOSトランジスタ324の負荷駆動能力は、pチャネル型MOSトランジスタ323の負荷駆動能力よりも大きく設定される。pチャネル型MOSトランジスタ323による電源スイッチ22の駆動タイミングがリクエスト信号REQのアサートタイミングで決定されるのに対して、pチャネル型MOSトランジスタ324による電源スイッチ22の駆動タイミングは、制御論理322の出力信号によって決定される。制御論理322は、リクエスト信号REQ、シュミット回路325の出力信号、及びシステムコントローラ16からの制御信号CNTLの論理和を得ることで、pチャネル型MOSトランジスタ324を制御するための信号を形成する。電源スイッチ22を駆動するためのゲート信号GATEは、モニタ信号MONIとしてシュミット回路325に伝達され、そこで波形整形された後に制御論理322に伝達される。また、シュミット回路325の出力信号は比較器326に伝達され、そこで高電位側電源Vccの電位を分圧するための分圧抵抗素子R11,R12で決定される参照電圧と比較されることによってアクノリッジ信号ACKが形成される。尚、リクエスト信号REQがローレベルになると、nチャネル型MOSトランジスタ329がオンされ、pチャネル型MOSトランジスタ323,324がオフされるため、ゲート信号GATEがローレベルになり、電源スイッチ22は非導通状態にされる。このとき、回路ブロック12は電源遮断状態とされる。
尚、他の電源スイッチコントローラ33,34も上記電源スイッチコントローラ32と同様に構成される。
上記SoCが多数形成されたウェーハのウェーハプロービングにおいて、第2VddパッドP2を介して電源電圧の供給が行われ、電源スイッチコントローラ32,33,34によってゲート信号GATEがハイレベルにされた場合の各回路ブロック毎の突入電流iddが突入電流モニタ回路15を介してモニタされる。このモニタ結果に基づいて、pチャネル型MOSトランジスタ324の導通タイミング、すなわち、pチャネル型MOSトランジスタ324による電源スイッチ22,23,24の駆動タイミングが決定され、その情報が設定部17に設定される。ここで、pチャネル型MOSトランジスタ324による電源スイッチ22,23,24の駆動タイミングは、リクエスト信号REQがハイレベルにアサートされてから突入電流が減少されるまでの期間だけ遅延される。つまり、突入電流の影響を回避するため、リクエスト信号REQがハイレベルにアサートされて突入電流が流れてしまうのを待ってからpチャネル型MOSトランジスタ324による電源スイッチ22,23,24の駆動が開始される。
SoC10が適用されるユーザシステムにおいてSoC10への電源供給は第1VddパッドP1を介して行われる。このユーザシステム動作では、必要な回路ブロックのみに電源給電が行われ、他の回路ブロックについては電源が遮断されることで、消費電力の低減が図られる。
図6には、図1に示される回路における主要部の動作タイミングが示される。図6に示される動作タイミング例において、a,b,cは、回路ブロック22,23,24に対応している。電源遮断された回路ブロックについての電源復帰は、リクエスト信号REQによって指示される。リクエスト信号REQがハイレベルにアサートされることによって、対応する電源スイッチコントローラ32,33,34におけるpチャネル型MOSトランジスタ323(第1ドライバ)により、対応する電源スイッチ22,23,24が駆動される(SDRIVE_ON)。そして、設定部17に設定された情報に従って、対応する電源スイッチコントローラ32,33,34におけるpチャネル型MOSトランジスタ324(第2ドライバ)によって対応する電源スイッチ22,23,24が駆動される(BDRIVE_ON)。このタイミング例では、電源スイッチコントローラ32,33,34におけるpチャネル型MOSトランジスタ323(第1ドライバ)により、対応する電源スイッチ22,23,24がほぼ同時に駆動され、各回路ブロック22,23,24に流れる突入電流iddが減少した直後に、電源スイッチコントローラ32,33,34におけるpチャネル型MOSトランジスタ324(第2ドライバ)によって対応する電源スイッチ22,23,24の駆動が開始される。これにより、各回路ブロック22,23,24毎の仮想接地(Vssm)ラインの電位が、低電位側電源Vssレベルにされることで電源復帰が完了される。
上記例によれば、以下の作用効果を得ることができる。
(1)各回路ブロック22,23,24に流れる突入電流iddが減少した直後に、電源スイッチコントローラ32,33,34におけるpチャネル型MOSトランジスタ324(第2ドライバ)によって、対応する電源スイッチ22,23,24の駆動が開始されるため、突入電流iddに起因して、低電位側電源Vssラインの電位が上昇することによってノイズが発生されるのが回避される。
また、ウェーハプロービングにおいて、回路ブロック毎の突入電流が実測され、それに基づいて、pチャンネル型MOSトランジスタ324(第2ドライバ)の電源スイッチ駆動タイミングが調整されるため、突入電流iddが減少した直後に、pチャネル型MOSトランジスタ324(第2ドライバ)によって、対応する電源スイッチ22,23,24の駆動を開始することができ、電源スイッチ22,23,24の駆動タイミングが最適化される。従って必要以上のマージン設定に起因して電源復帰が遅延されるのを回避することができる。
(2)回路ブロック毎に流れる突入電流のモニタが行われる場合にのみ、突入電流モニタ回路15に動作用電源を供給可能なpチャネル型MOSトランジスタ701が設けられることで、突入電流モニタ回路15での無駄な電流消費を回避することができる。
(3)リングオシレータ201と、その発振周波数を測定可能なカウンタ202とが設けられることにより、ウェーハプロービングにおいて、回路ブロック毎の突入電流の実測を容易に行うことができる。
(4)差動アンプ301を設けるようにしても、ウェーハプロービングにおいて、回路ブロック毎の突入電流の実測を容易に行うことができる。
(5)上記電源パッドと上記回路ブロックの電源端子とに結合された第1コイルL1、この第1コイルに対して磁気的に結合可能な第2コイルL2、上記第1コイルL1に流れる電流に応じて上記第2コイルL2に誘起された電圧を増幅可能なアンプ401を設けるようにしても、ウェーハプロービングにおいて、回路ブロック毎の突入電流の実測を容易に行うことができる。
(6)電源スイッチ22,23,24の駆動タイミングを調整するための情報は、ヒューズ回路やレジスタなどの保持部によって的確に保持することができ、この保持部に保持された情報に従って、電源スイッチ22,23,24の駆動タイミングを調整することができる。
図7には、SoC10の別の構成例が示される。
図7に示されるSoC10では、図3に示されるように、第1VddパッドP1と上記第2VddパッドP2との間の電位差を増幅する差動アンプ301が設けられ、この差動アンプ301の出力信号を電流に変換することで突入電流モニタを行うようにしている。図7に示されるSoC10が、図1などに示されるのと大きく異なるのは、ウェーハプロービングによる検査後に、第1VddパッドP1及び第2VddパッドP2がインナーリード801に共通にボンディングされることにより、差動アンプ301の差動入力端子が短絡されている点である。つまり、ウェーハプロービングによる検査後には、突入電流モニタが行われないため、差動アンプ301の差動入力端子が短絡されることで、差動アンプ301の出力端子から所望な信号が出力されないようにする。
上記のように差動アンプ301の差動入力端子が短絡された場合でも差動アンプ301の出力端子にはオフセットレベルが出力される。これを排除するには、図8に示されるように、電源スイッチを形成するpチャネル型MOSトランジスタ701を介して差動アンプ301に動作用電源を供給するようにする。かかる構成において突入電流モニタを行わない期間には、pチャネル型MOSトランジスタ701を非導通状態にすることで、差動アンプ301への電源供を停止する。
突入電流モニタを円滑に行えるようにするには、特に電圧降下の大きな箇所に突入電流モニタ回路15を配置すると良い。電圧降下の大きな箇所は、システム構成によって異なるので、シミュレーション解析により把握すると良い。尚、一般的には、図9に示されるように、第1VddパッドP1の近傍域901や、各回路ブロック(CBLK)における縁辺部域902、各回路ブロック(CBLK)における中央部域903などは、特に電圧降下の大きな箇所と考えられ、突入電流モニタ回路15を配置するのに好適と考えられる。
例えば図18に示されるように、複数の回路ブロックM1,M2,M3,M4の突入電流は、時間の経過に伴って減少する。図18において横軸は時間、縦軸は電流である。また、複数の回路ブロックM1,M2,M3,M4の電源電圧は、図19に示されるように、上記突入電流に対応して変動され、その変動幅は時間の経過に伴って減少される。図19において横軸は時間、縦軸は電圧である。複数の回路ブロックM1,M2,M3,M4の電源復帰が同時に行われた場合には、突入電流によって他の回路ブロックが誤動作する場合がある。これに対して、図18、図19に示されるように、複数の回路ブロックM1,M2,M3,M4の電源復帰のタイミングがずれている場合には、突入電流の発生タイミングがずれるため、他の回路ブロックの突入電流に起因して他の回路ブロックが誤動作するのを回避することができる。例えば図10に示されるように複数の回路ブロック12,13,14を含んでSoC10が構成される場合において、回路ブロック12の電源復帰時の突入電流によって、回路ブロック13,14が誤動作するものとする。かかる場合には、回路ブロック12の電源復帰時の突入電流が減少された後に回路ブロック13,14の電源復帰を行うようにすると良い。このような電源復帰制御は、回路ブロック12,13,14毎の電源復帰時の突入電流を予め測定し、回路ブロック12,13,14の電源復帰の順番等を勘案して、各回路ブロック間の電源復帰の待ち時間を決定し、この各回路ブロック間の電源復帰の待ち時間を設定部17へ設定することによって、回路ブロック12,13,14間の電源復帰のタイミングを調整すると良い。この回路ブロック12,13,14間の電源復帰のタイミング調整により、上記の誤動作を回避することができる。
また、回路ブロック12,13,14の電源復帰制御において、回路ブロック毎の電流状態をリアルタイムでモニタし、回路ブロックの電源復帰時によって突入電流が発生した場合に、他の回路ブロックの電源復帰を動的に遅延させるようにしてもよい。この場合の遅延時間は、各回路ブロック毎の突入電流に基づいて決定され、設定部17に予め設定される。これにより、回路ブロックの電源復帰時によって突入電流が発生した場合には、当該回路ブロックについて予め設定されている遅延時間だけ、他の回路ブロックについての電源復帰が遅延されるので、上記の誤動作を回避することができる。
図12には、電源スイッチコントローラ32の別の構成例が示される。
図12に示される電源スイッチコントローラ32が、図5に示されるのと大きく相違するのは、第1ドライバを形成するpチャネル型MOSトランジスタ323として、互いに並列接続可能な複数のpチャネル型MOSトランジスタが設けられ、このpチャネル型MOSトランジスタの並列接続個数が切り替えられることによって、第1ドライバの駆動能力の調整が可能となっている点である。上記pチャネル型MOSトランジスタの並列接続個数の切り替えは、切り替え制御信号SCNに応じてセレクタ(SEL)121によって制御される。上記切り替え制御信号SCNは、図1に示されるシステムコントローラ16によって形成される。すなわち、突入電流モニタ回路15による突入電流モニタ結果に基づいて、上記電源スイッチコントローラ16の電源スイッチ駆動能力設定情報が設定部17に設定され、上記電源スイッチコントローラ32は、この電源スイッチ駆動能力設定情報に基づいて、上記切り替え制御信号SCNを形成する。例えば回路ブロックの電源復帰時の突入電流が流れ過ぎることが、ウェーハプロービング時の突入電流モニタ回路15の出力に基づいて判明した場合には、電源スイッチ駆動能力設定情報を設定部17に設定することで、第1ドライバを形成するpチャネル型MOSトランジスタ323の並列接続個数を減少させ、第1ドライバの駆動能力を低減することができる。これにより当該回路ブロックの電源復帰時の突入電流を低減することができる。また、回路ブロックの電源復帰時の突入電流が少ないことが、ウェーハプロービング時の突入電流モニタ回路15の出力に基づいて判明した場合には、上記の場合とは逆に、第1ドライバを形成するpチャネル型MOSトランジスタ323の並列接続個数を増大少させ、第1ドライバの駆動能力を上げることができる。それにより、仮想接地(Vssm)ラインの電荷を高速に引き抜くことができる。このようにウェーハプロービングによる突入電流の実測結果に基づいてpチャネル型MOSトランジスタ323(第1ドライバ)の駆動能力を調整することにより、pチャネル型MOSトランジスタ323(第1ドライバ)による電源スイッチ駆動の最適化を図ることができる。
図13には、電源スイッチコントローラ32(33,34)の別の構成例が示される。
電源スイッチコントローラ32(33,34)が、図13(A)に示されるように、pチャネル型MOSトランジスタ323,324とnチャネル型MOSトランジスタ329を含み、pチャネル型MOSトランジスタ323によって第1ドライバが形成され、pチャネル型MOSトランジスタ324によって第2ドライバが形成される場合において、図13(B)に示されるように、pチャネル型MOSトランジスタ323(第1ドライバ)を駆動するためのゲート電圧レベル(バイアスレベル)を制御可能なゲートレベル制御回路131を設け、このゲートレベル制御回路131によりゲート電圧レベルを制御することで、電源スイッチ22の駆動状態を調整することができる。このとき、突入電流モニタ回路15による突入電流モニタ結果に基づいて、ゲートレベル制御回路131によりゲート電圧レベルを制御することで、電源スイッチ22の駆動の際の定電流量I0を調整することができる。また、図13(C)に示されるように、第1ドライバとして、pチャンネル型MOSトランジスタ323の他に、pチャネル型MOSトランジスタ133,134の直列回路、pチャネル型MOSトランジスタ135〜138の直列回路を設け、それらをセレクタ132で選択可能とすることで、電源スイッチ22の駆動に関与する第1ドライバの切り替えを行うようにしても良い。pチャネル型MOSトランジスタ323,133〜138のゲートサイズ(ゲート幅/ゲート長)が、互いに等しくされた場合、pチャンネル型MOSトランジスタ323、pチャネル型MOSトランジスタ133,134の直列回路、pチャネル型MOSトランジスタ135〜138の直列回路の順に駆動能力が低下される。上記ゲートレベル制御回路131やセレクタ132は、切り替え制御信号SCNによって制御される。
図14には、電源スイッチコントローラ32(33,34)の動作タイミングが示される。
時間T0はスリープ状態(Sleep)、時間T1〜T4は復帰制御状態(Wake−up)、時間T5はアクティブ状態(Active)を示している。リクエスト信号REQがハイレベルにアサートされることで、pチャネル型MOSトランジスタ323(第1ドライバ)により電源スイッチ22の駆動が開始され、時間T2でゲート信号GATEが平衡状態となる。この間に突入電流が流れ、仮想接地(Vssm)ラインのレベルが低電位側電源Vssレベルに近づく。時間T4でpチャネル型MOSトランジスタ324(第2ドライバ)が導通されると、仮想接地(Vssm)ラインのレベルが低電位側電源Vssレベルに等しくなる。ゲート信号GATEのレベルが高電位側電源Vddの90%に到達した時点でアクノリッジ信号ACKがローレベルからハイレベルに遷移される。また、リクエスト信号REQがローレベルにネゲートされることで、電源スイッチ22の駆動が停止され、スリープ状態に遷移される。
図15には、SoC10の別の構成例が示される。
図15に示されるSoC10が、図1に示されるのと大きく相違するのは、複数のモジュール12〜14のそれぞれに専用の突入電流モニタ回路152〜154が配置されている点である。個々の突入電流モニタ回路152〜154は、基本的には図2、図3、図4に示される構成をすることができる。また複数のモジュール12〜14のそれぞれに専用の突入電流モニタ回路152〜154が配置されていることから、図1に示される場合に比べて突入電流モニタ回路152〜154での電力消費が大きくなる。そこで、図15に示される構成では、対応する電源スイッチコントローラ32〜34からの制御信号CONTにより、未使用時の突入電流モニタ回路152〜154への電源供給を遮断するようにしている。このようにすることで、複数のモジュール12〜14のそれぞれに専用の突入電流モニタ回路152〜154を配置する場合の消費電力の低減を図ることができる。また、突入電流モニタ回路152〜154と、電源スイッチコントローラ32〜34との間のモニタ信号CONTラインなどを双方向とすることにより、ライン数の低減を図ることができる。
図16には、SoC10の別の構成例が示される。
図16に示されるSoC10が、図1に示されるのと大きく相違するのは、チップがベースバンド処理領域10Aと、アプリケーション処理領域10Bとに分けられ、それぞれの領域毎に電源復帰制御が行われる点である。ベースバンド処理領域10Aは、回路ブロック12A,13Aを有し、回路ブロック12A,13A毎に、突入電流モニタ回路152A,153Aが設けられ、それに対応して、システムコントローラ16A、及び電源スイッチコントローラ32A,33Aが配置される。同様に、アプリケーション処理領域10Bは、回路ブロック12B,13Bを有し、回路ブロック12B,13B毎に、突入電流モニタ回路152B,153Bが設けられ、それに対応して、システムコントローラ16B、及び電源スイッチコントローラ32B,33Bが配置される。
チップの中央部はチップ縁辺部の電源パッドからの配線長が長いため、チップ縁辺部の近傍域に比べて電源電圧降下が大きくなる。このため、チップ縁辺部の電源パッドからの配線長に応じて電源復帰制御内容を異ならせるのが良い。すなわち、チップ中央部は、電源電圧降下が大きいため、電源遮断や電源復帰が穏やかに行われる。これに対して、チップ縁辺部近傍域は、チップ中央部に比べて電源電圧降下が小さいため、電源遮断や電源復帰を高速に行うことができる。
また、ベースバンド処理領域10Aにおける大きな回路ブロック13Aと、アプリケーション処理領域10Bにおける大きな回路ブロック13Bとが同時に電源復帰されない場合には、ベースバンド処理領域10Aとアプリケーション処理領域10Bとで別個に突入電流モニタを行い、それに基づいて電源スイッチの駆動タイミング設定を行うことができる。これに対して、ベースバンド処理領域10Aにおける大きな回路ブロック13Aと、アプリケーション処理領域10Bにおける大きな回路ブロック13Bとが同時に電源復帰される場合には、電流量が多くなるため、上記突入電流モニタに加えて、チップ縁辺部近傍域とチップ中央部との電源電圧降下を考慮して電源スイッチの駆動タイミング設定を行うようにすると良い。つまり、回路ブロック12Aと回路ブロック13Aとの間での誤動作防止のため、図10に示される場合と同様に、回路ブロック12Aと回路ブロック13Aとの間で電源復帰の待ち時間を設定すると良い。また、回路ブロック12B回路ブロック13Bとの間での誤動作防止のため、図10に示される場合と同様に、回路ブロック12Bと回路ブロック13Bとの間で電源復帰の待ち時間を設定すると良い。
図17には、SoC10の別の構成例が示される。
図17に示されるSoC10が図1に示されるのと大きく相違するのは、複数種類の突入電流モニタ回路が設けられている点である。図17に示される例では、差動アンプ301を用いた突入電流モニタ回路(図3参照)と、回路ブロック12内の突入電流モニタ回路152(図15参照)とが配置されている。回路ブロック12内の突入電流モニタ回路152は、リングオシレータ201とカウンタ202とを含んで成る(図2参照)。
次に、突入電流の低減を検出して電源スイッチの駆動制御を動的に行う構成例について説明する。
上記のように突入電流は時間の経過に伴って徐々に減少されるので、回路ブロック毎の突入電流をリアルタイムで観測することにより、回路ブロック毎の電源スイッチを動的に制御することができる。
図20には、上記SoC10における主要部の別の構成例が示される。
図20に示される構成が、図1や図5に示されるのと大きく相違するのは、突入電流観測結果に基づく電源スイッチ駆動制御を動的に行うようにした点である。このような制御は、回路ブロック12に流れる突入電流を観測可能な電流観測回路(COC)200と、その突入電流観測結果に基づいて電源スイッチ22を動作制御する電源スイッチコントローラ32とによって行われる。
上記突入電流観測回路200での突入電流の検出には、図2に示されるようにリングオシレータ201やカウンタ202などを使用する方式や、図3や図4に示されるようにアンプなどを使用する方式を採用することができる。リングオシレータ201やカウンタ202などを使用する方式の場合、上記カウンタの出力を電圧に変換するための変換テーブルを設けることができる。この変換テーブルは、上記カウンタのカウント数(発振周波数)と電源電圧レベルとの関係に基づいて予め作成されたもので、読み出し専用メモリなどに形成される。上記リングオシレータ201は、例えば図31に示されるように、測定対象とされる回路ブロック12の近傍に配置され、高電位側電源Vdd及び低電位側電源Vssが供給されることにより、その電源電圧に応じた周波数で発振する。リングオシレータ(OSC)201が測定対象とされる回路ブロック12の近傍に配置されているため、電源スイッチ22が導通された直後の突入電流によって低電位側電源Vssレベルが上昇され、それは上記リングオシレータ201の電源端子間電圧レベルに反映される。つまり、低電位側電源Vssレベルの上昇によって上記リングオシレータ201の電源端子間電圧レベルが低下され、それによって上記リングオシレータ201の発振周波数は、図22に示されるように一時的に低下される。尚、図22において、横軸は時間(t)、縦軸は周波数(f)を示している。上記リングオシレータの発振周波数がカウンタ(CNTR)202で測定され、そのカウンタでの周波数測定結果が上記変換テーブルで電圧信号に変換され、それが電源スイッチコントローラ32に伝達される。尚、仮想接地(Vssm)ラインを高電位側電源Vddレベルにプリチャージ可能なpチャネル型MOSトランジスタ310を必要に応じて設けることができる。
図20に示される電源スイッチコントローラ32は、制御部(CTL_LOG)400と、それによって動作制御されるpチャネル型MOSトランジスタ323,324、nチャネル型MOSトランジスタ329を含んで成る。制御部400は、図5に示されるようなバイアス回路(BIS)321や、制御論理(LOG)322を含む。バイアス回路321はリクエスト信号REQがローレベルにされることで活性化されて、pチャネル型MOSトランジスタ323(第1ドライバ)に所定のバイアス電圧を供給する。これによりpチャネル型MOSトランジスタ323には定電流I0が流れる。pチャネル型MOSトランジスタ324は、制御論理322によって動作制御される。上記制御論理322は、上記pチャネル型MOSトランジスタ323(第1ドライバ)によって上記電源スイッチ22の駆動が開始された後、上記突入電流観測回路200での電流観測結果が予め設定された値に達した時点でpチャネル型MOSトランジスタ324(第2ドライバ)を導通させる。
図21には、図20に示される構成における主要部の動作タイミングが示される。
リクエスト信号REQがハイレベルにアサートされることで、pチャネル型MOSトランジスタ323(第1ドライバ)により電源スイッチ22の駆動が開始される。ゲート信号GATEが、電源スイッチ22を形成するnチャネル型MOSトランジスタのしきい値(VTH)を越えると、電源スイッチ22が導通され、仮想接地(Vssm)ラインの蓄積電荷が電源スイッチ22を介して低電位側電源Vssラインに流れる。これによって突入電流iddが流れる。時間T2でゲート信号GATEが平衡状態となる。この間に仮想接地(Vssm)ラインのレベルが低電位側電源Vssレベルに近づく。突入電流観測回路200によって突入電流iddの観測が行われる。突入電流iddが流れた場合、突入電流観測回路200を形成するリングオシレータの発振周波数が、図22に示されるように、一時的に低下される。そして、上記リングオシレータの発振周波数が再び元の周波数に戻った時点(222で示される箇所)、換言すれば、突入電流iddが減少されて、その値が所定値に達したとき、制御論理322によりpチャネル型MOSトランジスタ324が導通され、時間T4において仮想接地(Vssm)ラインのレベルが低電位側電源Vssレベルに等しくなる。このように、突入電流iddが減少されて、その値が所定値に達したとき、制御論理322によりpチャネル型MOSトランジスタ324が導通され、時間T4において仮想接地(Vssm)ラインのレベルが低電位側電源Vssレベルに等しくされるため、時間T3を十分に短くすることができ、必要以上のマージン設定を回避できる。従って、図1などに示されるSoC10と同様の作用効果を得ることができる。しかも、突入電流に応じて電源スイッチの駆動制御が動的に行われるため、回路ブロックの駆動順番の変更等に容易に対応することができる。
尚、上記の例では、リングオシレータと、このリングオシレータの発振周波数を測定可能なカウンタと、そのカウンタの出力を電圧に変換するための変換テーブルを含んで突入電流観測回路200を形成したが、これに代えて、回路ブロック12近傍の高電位側電源Vddラインと、低電位側電源Vssラインとの間の電位を分圧抵抗素子等により検出し、その検出結果を差動アンプ等で増幅するようにしても良い。
図23には、上記SoC10における主要部の別の構成例が示される。
図23に示される構成が、図20に示されるのと大きく相違するのは、突入電流観測回路200での検出結果を積分して出力する点である。すなわち、突入電流観測回路200は、突入電流の検出結果を積分してから制御論理322に出力する積分回路210を含む。突入電流の検出は、図2に示されるようにリングオシレータ201やカウンタ202などを使用する方式や、図3や図4に示されるようにアンプなどを使用する方式を採用することができる。突入電流の原因となる電荷(Q)の移動量は一定なので、次式に示されるような電流(i)を時間(t)で積分することにより、任意時間の残留電荷や、仮想接地(Vssm)ラインの電位の算出が可能とされる。
Q=∫i・dt
図24には、図23に示される構成における主要部の動作タイミングが示される。
図23に示される制御論理322では、上記積分回路201の出力信号OUT1を、予め設定された値と比較することにより、電荷Qが規定値に達した状態でpチャネル型MOSトランジスタ324(第2ドライバ)を導通するようにする。このようにしても上記と同様の作用効果を得ることができる。
図25には、上記SoC10における主要部の別の構成例が示される。
図25に示される構成が、図20に示されるのと大きく相違するのは、突入電流観測回路200での検出結果を微分して出力する点である。すなわち、突入電流観測回路200は、突入電流の検出結果を微分してから制御論理322に出力する微分回路220を含む。
図26には、図25に示される構成における主要部の動作タイミングが示される。
突入電流iddを微分すると、突入電流iddの変化点が強調されるので、制御論理322において、微分回路220の出力信号OUT2に基づいて、突入電流iddが減少する点を容易に判定することができる。
図27には、上記SoC10における主要部の別の構成例が示される。
図27に示される構成が、図20に示されるのと大きく相違するのは、突入電流観測回路200に代えて、電源スイッチ22の回路ブロック12側の電位レベルを検出する検出回路(VDC)230を設けた点である。すなわち、図27に示される構成では、仮想接地(Vssm)ラインのレベルが検出回路230で検出され、その検出結果が制御論理322に伝達されるようになっている。仮想接地(Vssm)ラインのレベル検出には、図2に示されるようにリングオシレータ201やカウンタ202などを使用する方式や、図3や図4に示されるようにアンプなどを使用する方式を採用することができる。
図28には、図25に示される構成における主要部の動作タイミングが示される。
スリープ状態(Sleep)では、仮想接地(Vssm)ラインのレベルは、高電位側電源Vddレベルに等しくなっており、pチャネル型MOSトランジスタ323(第1ドライバ)によって電源スイッチ22が駆動されることで、仮想接地(Vssm)ラインの蓄積電荷が低電位側電源Vssラインに放出されることで、低電位側電源Vssレベルに近づく。そこで、仮想接地(Vssm)ラインのレベルを検出回路230で検出し、その検出結果を制御論理322に伝達する。制御論理322では、上記検出回路230での検出結果が、予め設定された値に達した時点でpチャネル型MOSトランジスタ323(第1ドライバ)を導通させる。ここで、予め設定された値は、低電位側電源Vssレベルよりも若干高めの値とされる。これにより、突入電流が低減された直後にpチャネル型MOSトランジスタ323(第1ドライバ)を導通させることができ、時間T3を減少させることができるので、上記と同様の作用効果を得ることができる。
図29には、上記SoC10における主要部の別の構成例が示される。
図29に示される構成が、図27に示されるのと大きく相違するのは、検出回路230において、仮想接地(Vssm)ラインのレベル検出結果を微分して出力する微分回路240を含む点である。
図30には、図29に示される構成における主要部の動作タイミングが示される。
検出回路230において、仮想接地(Vssm)ラインのレベル検出結果が微分してから制御論理322に出力されるため、仮想接地(Vssm)ラインのレベル変化が強調されて制御論理322に伝達される。このため、制御論理322において、微分回路240の出力信号OUT3に基づいて、突入電流iddが減少する点を容易に判定することができる。
次に、SoC10において各回路ブロックに電源を供給するための電源回路について説明する。
リングオシレータとカウンタとを用いることにより、回路ブロックの動作状態における電源電圧降下を見積もることができる。
例えば図32に示されるように、この高電位側電源Vddが、回路ブロック12、リングオシレータ605、及びカウンタ606に供給されるものとする。リングオシレータ605の発振周波数は、高電位側電源Vddレベルに応じて、図33に示されるように変動する。尚、図33において横軸は高電位側電源(Vdd)レベル、縦軸は発振周波数(f)を示している。先ず、回路ブロック12が非動作状態(スタンバイ状態)でのリングオシレータ605の発振周波数をカウンタ606で測定する。ここで計測された周波数をf1とする。次に、動作復帰により回路ブロック12が動作状態にされた場合のリングオシレータ605の発振周波数をカウンタ606で測定する。ここで計測された周波数をf2とする。ここで、f1=f2が成立するように、高電位側電源Vddの電圧レベルを調整する。この調整幅αが、回路ブロックの動作状態における電源電圧降下分に相当する。
図34には、上記SoC10に内蔵可能な電源回路が示される。
上記SoC10に含まれる各論理回路には、この電源回路を介して電源供給を行うことができる。
図34において、例えば回路ブロック12に電源供給を行う電源回路700は、レギュレータ600、リングオシレータ605、及びカウンタ606を含んで成る。レギュレータ600は、演算増幅器601と制御回路602とを含み、チップ外部から供給される高電位側電源Vccを降圧して高電位側電源Vddを形成する。上記制御回路602は、上記回路ブロックの動作時における上記カウンタの出力値と、上記回路ブロックの非動作時における上記カウンタの出力値とが互いに等しくなるように上記電源電圧のレベルを制御する。高電位側電源Vddは、回路ブロック12の他に、リングオシレータ605、及びカウンタ606にも供給される。上記レギュレータ600は、特に制限されないが、演算増幅器601と、第1基準電圧Vref1と第2基準電圧Vref2とを選択的に上記演算増幅器601に伝達するためのスイッチ608とを含んで成る。上記第1基準電圧Vref1のレベルは固定されているが、上記第2基準電圧Vref2は、基準電圧発生回路607で発生され、そのレベルは、レジスタなどの設定により変更可能とされる。
上記の構成において、回路ブロック12の非動作状態(スタンバイ状態)には、スイッチ608によって第1基準電圧Vref1が選択的に演算増幅器601に伝達され、この第1基準電圧Vref1のレベルに応じて高電位側電源Vddのレベルが決定される。この場合のリングオシレータ605の発信周波数がカウンタ606で計測される。ここで計測された周波数をf1とする。次に、回路ブロック12が非動作状態から動作状態に遷移され、それに連動してスイッチ608により基準電圧Vref2が選択的に演算増幅器601に伝達される。今度はこの第1基準電圧Vref2のレベルに応じて高電位側電源Vddのレベルが決定される。ここで計測された周波数をf2とする。この状態で、f1=f2が成立するように、基準電圧発生回路607から出力される基準電圧Vref2のレベルを変更する。この基準電圧Vref2のレベル変更は、上記レジスタの書き換えによって行うことができる。このような設定が行われた後、回路ブロック12が非動作状態の場合には、スイッチ608により第1基準電圧Vref1が選択され、電源復帰により回路ブロック12が動作状態とされた場合には、スイッチ608により第2基準電圧Vref2が選択されるものとすると、回路ブロック12の電源電圧レベルは、当該回路ブロック12の状態にかかわらず、安定に保つことができる。
以上本発明者によってなされた発明を具体的に説明したが、本発明はそれに限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能であることはいうまでもない。
例えば突入電流モニタ結果に基づく電源スイッチの駆動タイミング設定と、突入電流モニタ結果に基づく電源スイッチコントローラの電源スイッチ駆動能力設定とを併用することにより、電源スイッチ駆動の最適化を図るようにしても良い。
以上の説明では主として本発明者によってなされた発明をその背景となった利用分野であるSoCに的よした場合について説明したが、本発明はそれに限定されるものではなく、各種半導体集積回路装置に広く適用することができる。