JP2008215469A - トルクリミッタ - Google Patents

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健 山本
Akihide Nagayama
彰英 永山
Kenji Ogimoto
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慎二 松榮
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Abstract

【課題】筒部材に対して軸部材が回転しているときの、軸部材と筒部材との動摩擦力を抑制できて、軸部材および筒部材の焼付きを抑制でき、使用回数が大きいトルクリミッタを提供すること。
【解決手段】動力伝達時に、第1筒部材10の内周面21に摩擦結合する軸部材1の外周面20に、動力の非伝達時に動圧を発生する動圧発生溝35を形成する。
【選択図】図1

Description

本発明は、トルクリミッタに関する。
従来、例えば鉄鋼用圧延機の原動機と被駆動部分との間に介装されるトルクリミッタとしては、軸部材の外周面に筒部材の内周面を外嵌し、筒部材の油圧通路に圧油を供給し、その油圧通路の圧油で筒部材の内周面を縮径してその内周面を軸部材の外周面に押し付けて、軸部材と筒部材とを摩擦結合してトルクを伝達するようになっており、シャーチューブで油圧通路内の圧油をシールする一方、上記軸部材には、シャーチューブの端部に係止する係止部材を固定しているものがある。
上記軸部材または筒部材に所定値以上の負荷がかかって、筒部材の内周面が軸部材の外周面に対してスリップして、上記軸部材が筒部材に対して軸回りの位置が変化したとき、上記係止部材でシャーチューブの端部が切断されて、油圧通路の圧油が外部に排出されるようになっている。これにより、筒部材の内周面が、軸部材の外周面に押し付けられなくなって、軸部材と筒部材の摩擦結合が解除されて、トルクの伝達が遮断するようになっている。
また、上記軸部材または筒部材に所定値以上の負荷がかかって、筒部材の内周面が、軸部材の外周面に対して摺動している際に、軸部材および筒部材が焼付くことを防止するために、軸部材と筒部材との間には、潤滑油が塗布されている。
ここで、一般的に、トルクリミッタにおいて、軸部材が、筒部材に対して相対回転しているときの、軸部材と筒部材との動摩擦力(軸部材が筒部材に対してすべっているときの摩擦力)を抑制して、軸部材および筒部材の焼付きを抑制し、トルクリミッタの使用回数を増大させることが所望されている。
特開 2004−211794号公報
そこで、本発明の課題は、筒部材に対して軸部材が回転しているときの、軸部材と筒部材との動摩擦力を抑制できて、軸部材および筒部材の焼付きを抑制でき、トルクリミッタの使用回数が大きいトルクリミッタを提供することにある。
上記課題を解決するため、この発明のトルクリミッタは、
軸部材と、
この軸部材に回転可能に外嵌した筒部材と
を備え、
上記筒部材の内部に、上記軸部材の外周面に上記筒部材の内周面を押し付けるための油圧通路を有し、
上記軸部材の上記外周面および上記筒部材の上記内周面のうちの少なくとも一方は、上記軸部材が上記筒部材に対して回転している状態で動圧を発生する動圧発生溝を有していることを特徴としている。
本発明によれば、上記軸部材の上記外周面および上記筒部材の上記内周面のうちの少なくとも一方が、上記軸部材が上記筒部材に対して回転している状態で動圧を発生する動圧発生溝を有しているから、軸部材の外周面および筒部材の内周面の両方が動圧発生溝を有していない構成と比較して、上記軸部材が上記筒部材に対して回転している状態で、軸部材と筒部材との間に発生する動圧によって、筒部材を軸部材からより速く浮上させることができて、このことに起因して、油圧通路内から圧油をより速く抜くことができて、筒部材と軸部材との間をより速く非接触な状態にすることができる。したがって、上記軸部材が上記筒部材に対して回転している状態において、軸部材の外周面および筒部材の内周面の摩耗を格段に抑制できて、トルクリミッタの使用回数を大きくすることができる。
また、本発明のトルクリミッタは、
軸部材と、
この軸部材に回転可能に外嵌した筒部材と
を備え、
上記軸部材の内部に、上記筒部材の内周面に上記軸部材の外周面を押し付けるための油圧通路を有し、
上記軸部材の上記外周面および上記筒部材の上記内周面のうちの少なくとも一方は、上記軸部材が上記筒部材に対して回転している状態で動圧を発生する動圧発生溝を有していることを特徴としている。
本発明によれば、上記軸部材の上記外周面および上記筒部材の上記内周面のうちの少なくとも一方が、上記軸部材が上記筒部材に対して回転している状態で動圧を発生する動圧発生溝を有しているから、軸部材の外周面および筒部材の内周面の両方が動圧発生溝を有していない構成と比較して、上記軸部材が上記筒部材に対して回転している状態で、軸部材と筒部材との間に発生する動圧によって、筒部材を軸部材からより速く浮上させることができて、このことに起因して、油圧通路内から圧油をより速く抜くことができて、筒部材と軸部材との間をより速く非接触な状態にすることができる。したがって、上記軸部材が上記筒部材に対して回転している状態において、軸部材の外周面および筒部材の内周面の摩耗を格段に抑制できて、トルクリミッタの使用回数を大きくすることができる。
また、一実施形態のトルクリミッタは、上記油圧通路が、略上記筒部材の軸方向に延在しており、上記動圧発生溝が、上記軸方向に関して、上記油圧通路の中央部に重なる箇所において、その箇所以外の箇所よりも大きな動圧を発生する。
トルクリミッタでは、筒部材と軸部材との動力伝達時に、油圧通路の内で最も径方向に膨張するのは、油圧通路の中央部であるから、トルクリミッタにおいて、筒部材と軸部材との間の動力伝達開放時に、筒部材の内で最も軸部材に対して押圧力が大きくて、筒部材の内で最も動摩擦力が大きいのは、筒部材の中央部であると考えられる。
上記実施形態によれば、上記動圧発生溝が、上記軸方向に関して、上記油圧通路の中央部に重なる箇所において、その箇所以外の箇所よりも大きな動圧を発生するから、筒部材の中央部と、この筒部材の中央部に径方向に対向する軸部材の一部分とを、より短い時間で非接触状態にすることができる。
したがって、最も焼付きが起こり易い、筒部材の中央部と、この筒部材の中央部に径方向に対向する軸部材の一部分と、の焼付きを抑制できるから、トルク伝達の遮断時におけるトルクリミッタの焼付きを更に抑制することができる。
本発明のトルクリミッタによれば、軸部材の外周面および筒部材の内周面のうちの少なくとも一方が、軸部材が筒部材に対して回転している状態で動圧を発生する動圧発生溝を有しているから、軸部材が筒部材に対して回転している状態で、軸部材と筒部材との間に発生する動圧によって、筒部材を軸部材からより速く浮上させることができて、油圧通路内から圧油をより速く抜くことができる。したがって、筒部材と軸部材との間をより速く非接触な状態にすることができて、筒部材および軸部材の焼付きを抑制でき、トルクリミッタの使用回数を大きくすることができる。
以下、本発明を図示の形態により詳細に説明する。
(第1実施形態)
図1は、本発明の第1実施形態のトルクリミッタの軸方向の断面図である。なお、軸部材1の一部については外周面を示している。
このトルクリミッタは、軸部材1、筒部材2、シャーバルブ6、第1玉軸受17、第2玉軸受18、第1シール部材52および第2シール部材53を備える。
上記軸部材1は、略円筒状の外周面20を有する本体部8と、本体部8の外面から突出する断面略L字形状の係止部9とを有する。上記軸部材1の外周面20は、動圧発生溝35を有している。この動圧発生溝35は、軸部材1が筒部材2に対して回転したときに略径方向の動圧を発生するようになっている。上記動圧発生溝35は、軸部材1の外周面20に、外周面20の全周に亘って周方向に一定間隔毎に略八字形状に複数形成された溝からなっている。上記動圧発生溝35は、好ましくは周方向に8本以上形成されている。上記動圧発生溝35は、転造(塑性加工)、切削加工、または、エッチングによって形成されている。動圧発生溝35の幅および深さは、軸部材1が、筒部材に対して回転したとき、安定的に大きな動圧を発生できる深さに設定されている。具体的には、上記動圧発生溝35の周方向の幅は、上記動圧発生溝35以外の外周面20である丘部のうち、周方向に隣り合った動圧発生溝35の間の丘部の周方向の幅よりも小さく設定されている。上記動圧発生溝の周方向の幅と周方向に隣り合った動圧発生溝35の間の丘部の周方向の幅とは1:1.5〜1:5に設定される。1:1.5より上記丘部の周方向の幅が小さいと筒部材2との接触面積が小さくなり、1:5よりも上記丘部の周方向の幅が大きいと動圧の発生能力が悪くなる。動圧の発生能力を良くするため、上記動圧発生溝35の周方向の幅と周方向に隣り合った動圧発生溝35の間の丘部の周方向の幅とは1:1.5〜1:3にすることがさらに好ましく、1:2程度にすることがさらに好ましい。動圧発生溝35の深さは、10μm以下、好ましくは、6μm以下、更に好ましくは、3μm以下に設定されている。動圧発生溝35の深さが、3μm以下の場合に、動圧の発生能力は特に高くなる。
上記筒部材2は、第1筒部材10と、第2筒部材11とからなっている。上記第1筒部材10は、略円筒状の内周面21を有し、この内周面21は、後述するように、軸部材1の外周面20に押し付けられるようになっている。
上記第2筒部材11は、第1筒部材10の略円筒状の外周面23に当接する略円筒状の内周面24を有している。また、上記第2筒部材11は、シャーバルブ取付穴30および油圧通路26を有している。油圧通路26は、第2筒部材11の内部に環状に形成され、第2筒部材11の内周面24の軸方向の所定の長さに亘って略軸部材1の軸方向に延在している。
上記シャーバルブ6は、シャーバルブ取付穴30に嵌入されている。上記シャーバルブ6がシャーバルブ取付穴30に嵌入されている状態で、シャーバルブ6の径方向の外方の一端部は、第2筒部材11の外周面よりも径方向の外方に突出している。上記断面略L字形状の係止部9は、径方向延在部50と、軸方向延在部51とを有している。上記径方向延在部50は、略径方向に延びている。また、上記軸方向延在部51は、径方向延在部50につながっていると共に、第2筒部材11の外周面に沿って軸方向に延在している。上記シャーバルブ6の上記径方向の外方の一端部は、係止部9の軸方向延在部51によって係止されている。
上記シャーバルブ6は、一端のみが開口したチューブ27を有している。このチューブ27は、シャーバルブ6がシャーバルブ取付穴30に嵌入されている状態で、略軸部材1の径方向に延在している。また、シャーバルブ6がシャーバルブ取付穴30に嵌入されている状態で、チューブ27の閉鎖側の一端部は、第2筒部材11の外周面よりも径方向の外方に突出している一方、チューブ27の閉鎖側とは反対側の開口は、油圧通路26の一端に連通している。このことから、上記油圧通路26のシャーバルブ6側は、密封空間になっている。
上記第1玉軸受17は、内輪40、外輪41および玉42を有している。上記内輪40は、軸部材1の外周面に外嵌されて固定されている一方、外輪41は、第2筒部材11の内周面に内嵌されて固定されている。上記玉42は、内輪40の軌道溝と、外輪41のアンギュラ型の軌道溝との間に保持器(図示せず)によって保持された状態で、周方向に所定の間隔を隔てられて複数配置されている。
一方、上記第2玉軸受18は、内輪44、外輪45および玉46を有している。上記内輪44は、軸部材1の外周面に外嵌されて固定されている一方、外輪45は、第1筒部材10の内周面に内嵌されて固定されている。上記玉46は、内輪44の軌道溝と、外輪45のアンギュラ型の軌道溝との間に保持器(図示せず)によって保持された状態で、周方向に所定の間隔を隔てられて複数配置されている。
上記第1玉軸受17および第2玉軸受18は、軸部材1が筒部材2に対して回転しているとき、軸部材1を筒部材2に対して回転自在に支持するようになっている。
上記第1シール部材52は、外輪41と内輪40との間の空間における油圧通路26側とは反対側の開口を密封している一方、第2シール部材53は、外輪45と内輪44との間の空間における油圧通路26側とは反対側の開口を密封している。
上記外輪41と内輪40との間の空間、外輪45と内輪44との間の空間、および、軸部材1の外周面20と第1筒部材10の内周面21との間は、互いに連通している。上記第1シール部材52および第2シール部材53は、外輪41と内輪40との間の空間、外輪45と内輪44との間の空間、および、軸部材1の外周面20と第1筒部材10の内周面21との間を密封している。
上記第1シール部材52および第2シール部材53によって密封された空間、すなわち、外輪41と内輪40との間の空間、外輪45と内輪44との間の空間、および、軸部材1の外周面20と第1筒部材10の内周面21との間には、第1玉軸受17、第2玉軸受18、軸部材1、および、第1筒部材10の焼付きを防止するために、潤滑油としてのトラクションオイルまたはタービンオイルが充填されている。
ここで、トラクションオイルとしては、例えば、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基などの脂環族の官能基や、これら官能基の一部を不飽和結合としたものや、上記官能基の一部の炭素原子を、酸素原子、硫黄原子、窒素原子で置き換えた官能基、さらには、これらの官能基を架橋して形成された官能基や、これらの官能基を縮合した縮合環を有する官能基や、または、これらの官能基を用いて形成された多環式の芳香族の官能基、を有するナフタレン系合成油やナフテン系鉱油がある。
また、上記トラクションオイルの他の例としては、例えば、分岐型アルキルベンゼンやアルキルナフタレンや、または、フェニル基やシクロヘキシル基を含むポリオルガノシロキサンがある。また、上記トラクションオイルの更なる例としては、例えば、α−アルキルスチレン二量体やα−アルキルスチレン二量体の水素化物があり、また、F−(CF(CF)CFO)n−Cの構造式で表されるパーフルオロポリエーテルやこのパーフルオロポリエーテルの誘導体がある。
また、これらのトラクションオイルをパラフィン系鉱油、ポリαオレフィン油など炭化水素系合成油、ジエステルやポリオールエステルなどエステル油、ポリアルキルグリコール油、アルキルジフェニルエーテル油、シリコーン油、パーフルオロアルキルポリエーテル油等公知の潤滑油と混合することもできる。
更には、実用性を更に向上する目的で、酸化防止剤、防錆剤、清浄分散剤、流動点降下剤、粘度指数向上剤、極圧剤、耐摩耗添加剤、腐食防止剤、消泡剤、金属不活性化剤、着色剤等の添加剤を適量添加しても良いことは勿論である。
ここで、これらのトラクションオイルのうちでも、圧力粘度指数が大きいトラクションオイルを使用することが好ましい。本用途では、18GPa−1(40℃)以上が好ましく、25GPa−1(40℃)以上が更に好ましく、32GPa−1(40℃)以上が更に好ましい。このようなトラクションオイルは、軸とスリーブとの間の接触面圧によってガラス化しやすく、駆動力を伝えやすく、また、軸とスリーブとの直接接触を減少させ、軸とスリーブの固着を防ぎ、油圧室の油圧が低下し液状になると、トルク開放を容易になすことができる。
上述のように、上記動圧発生溝35は、軸部材1の外周面20に、外周面20の全周に亘って周方向に一定間隔毎に略八字形状に複数形成された溝からなっている。この動圧発生溝35は軸部材1の軸方向両側でそれぞれの溝が上記第1シール部材52および第2シール部材53によって密封された空間内の軸部材1と筒部材2とが非接触に対向する空間に連通していることで、これらの空間に充填された潤滑油を動圧発生溝35に供給することが可能になっている。また、油圧通路26は、第2筒部材11の内周面24の軸方向の所定の長さで略全長に亘って略軸部材1の軸方向に延在している。ここで、上記八字状の複数の溝からなる動圧発生溝35は、軸部材1の軸方向に垂直で、かつ、油圧通路26を二等分する平面に対して、略面対称な形状をしている。上記油圧通路26の軸方向の中央部は、八字状の溝を形成する2つの溝の間の部分、すなわち、溝が形成されていない部分39に、径方向(筒部材2の径方向)に重なっている。このことから、上記動圧発生溝35は、軸部材1の外周面20と第1筒部材10の内周面21との間における油圧通路26の軸方向の中央部に径方向に重なる部分に最も大きな動圧を発生するようになっている。換言すると、動圧発生溝35は、軸方向に関して、油圧通路26の中央部に重なる箇所において、その箇所以外の箇所よりも大きな動圧を発生するようになっている。
トルクリミッタでは、第1筒部材10と軸部材1との動力伝達時に、油圧通路26の内で最も径方向に膨張するのは、油圧通路26の中央部であるから、トルクリミッタにおいて、第1筒部材10と軸部材1との間の動力伝達開放時に、第1筒部材10の内で最も軸部材1に対して押圧力が大きくて、第1筒部材10の内で最も動摩擦力が大きいのは、第1筒部材10の中央部であると考えられる。
第1実施形態のように、油圧通路26の軸方向の中央部に径方向に重なる部分に最も大きな動圧を発生するようにすると、第1筒部材10の内で最も軸部材1に対して押圧力が大きくて、第1筒部材10の内で最も動摩擦力が大きい第1筒部材10の中央部の焼付き、および、第1筒部材10の中央部に径方向に対向する軸部材1の外周面部分の焼付きを抑制できて、軸部材1および筒部材2の焼付きを効果的に抑制できる。
上記構成において、軸部材1または筒部材2に所定値以下の負荷(トルクの伝達を行う範囲の負荷)がかかっている場合には、図示しないカプラを介して油圧通路26に注入されたのち密封された油圧拡張用の油で、第1筒部材10の内周面21を縮径して、内周面21を軸部材1の外周面20に押し付けて、軸部材1と筒部材2とを摩擦結合して、軸部材1と筒部材2との間でトルクを伝達するようになっている。
一方、軸部材1または筒部材2に所定値以上の負荷(トルクの伝達を行う範囲よりも大きな負荷)がかかって、軸部材1の外周面20が、第1筒部材10の内周面に対してスリップして、軸部材1と第1筒部材10の軸回りの位置が変化した場合、係止部9がシャーバルブ6の上記一端部を切断して、油圧通路26内の油圧拡張用の油を、一端部が切断されたシャーバルブ6を介して外部に排出するようになっている。
このようにして、第1筒部材10の内周面21の軸部材1の外周面20に対する押圧力をなくして、軸部材1と筒部材2の摩擦結合を解いて、トルク(動力)の伝達を遮断するようになっている。このようにして、軸部材1または筒部材2に過負荷が生じた場合において、トルクの伝達を遮断して、トルクリミッタ装置に連結されている高価な機械を保護したり、人身災害を防止したりしている。
また、トルク(動力)の伝達の遮断時に、軸部材1が、第1筒部材10に対して図1にaで示す方向に回転したとき、動圧発生溝35に入り込んだトラクションオイルまたはタービンオイルによって、径方向の動圧を発生して、この動圧で第1筒部材10を径方向の外方に押圧して、筒部材の内周面および軸部材の外周面の両方に動圧発生溝を有していない構成と比較して、より速い時間で、第1筒部材10と軸部材1とが、非接触な状態になるようにしている。このようにして、第1筒部材10および軸部材1の動摩擦に起因する第1筒部材10および軸部材1の焼付きを抑制するようになっている。
上記第1実施形態のトルクリミッタによれば、軸部材1の外周面20が、軸部材1が筒部材2(正確には、第1筒部材10)に対して回転している状態で動圧を発生する動圧発生溝35を有しているから、軸部材の外周面および筒部材の内周面の両方が動圧発生溝を有していない構成と比較して、軸部材2が第1筒部材10に対して回転している状態で、軸部材1と第1筒部材10との間に発生する動圧によって、第1筒部材10を軸部材1からより速く浮上させることができて、油圧通路26内から圧油をより速く抜くことができて、第1筒部材10と軸部材1との間をより速く非接触な状態にすることができる。したがって、軸部材1が第1筒部材10に対して回転している状態において、軸部材1の外周面20および第1筒部材10の内周面21の摩耗を抑制できて、トルクリミッタの使用回数を大きくすることができる。
また、上記第1実施形態のトルクリミッタによれば、上記動圧発生溝35が、油圧通路26の軸方向の中央部に径方向に重なる部分に最も大きな動圧を発生するから、筒部材2のうちで径方向の内方に位置する第1筒部材10の中央部と、この第1筒部材10の中央部に径方向に対向する軸部材1の外周面部分とを、より短い時間で非接触な状態にすることができる。
したがって、第1筒部材10の中央部と、この第1筒部材10の中央部に径方向に対向する軸部材1の外周面部分の焼付きを抑制できて、トルク伝達の遮断時におけるトルクリミッタの焼付きを更に抑制することができる。
尚、上記第1実施形態のトルクリミッタでは、動圧発生溝35を、軸部材1の外周面のみに形成したが、この発明では、動力伝達時に、軸部材の外周面に摩擦結合する筒部材の内周面のみに、動圧発生溝を形成しても良い。また、動力伝達時に、筒部材の内周面に摩擦結合する軸部材の外周面に、動圧発生溝を形成すると共に、動力伝達時に、軸部材の外周面に摩擦結合する筒部材の内周面に、動圧発生溝を形成しても良い。
また、上記第1実施形態のトルクリミッタでは、筒部材2を、軸部材1の外周面20と接触する内周面21を有する第1筒部材10と、油圧拡張用の油を封入する油圧通路26を有する第2筒部材11とで構成したが、この発明では、筒部材として、軸部材の外周面と接触する内周面と、油圧拡張用の油を封入する油圧通路とを有する一体型の筒部材を使用しても良いことは勿論である。
(第2実施形態)
図2は、本発明の第2実施形態のトルクリミッタの軸方向の断面図である。なお。軸部材101の一部については外周面を示している。
第2実施形態のトルクリミッタは、軸部材101の外周面に、その外周面の全周に亘って、周方向に一定間隔毎に複数形成された略V字形状の溝からなる動圧発生溝135を形成した点が、第1実施形態のトルクリミッタ、すなわち、軸部材1の外周面に、その外周面の全周に亘って、周方向に一定間隔毎に略八字形状に複数形成された溝からなる動圧発生溝35を形成したトルクリミッタと異なる。
第2実施形態のトルクリミッタでは、第1実施形態のトルクリミッタの構成部と同一構成部には同一参照番号を付して説明を省略することにする。また、第2実施形態のトルクリミッタでは、第1実施形態のトルクリミッタと共通の作用効果および変形例については説明を省略することにし、第1実施形態のトルクリミッタと異なる構成についてのみ説明を行うことにする。尚、第2実施形態において、参照番号108は、略円筒状の外周面120を有する軸部材101の本体部を示し、109は、本体部108の外周面から突出する、軸部材101の断面略L字形状の係止部を示している。また、参照番号150は、係止部109の径方向延在部を示し、151は、係止部109の軸方向延在部を示している。
上述のように、第2実施形態のトルクリミッタでは、軸部材101の外周面に、その外周面の全周に亘って、周方向に一定間隔毎に複数形成された略V字形状の溝からなる動圧発生溝135を形成している。
この動圧発生溝135は軸部材101の軸方向両側でそれぞれの溝が上記第1シール部材52および第2シール部材53によって密封された空間内の軸部材1と筒部材2とが非接触に対向する空間に連通していることで、これらの空間に充填された潤滑油を動圧発生溝135に供給することが可能になっている。
上記V字状の複数の溝からなる動圧発生溝135は、軸部材101の軸方向に垂直で、かつ、油圧通路26を二等分する平面に対して、略面対称な形状をしている。別の言い方をすると、油圧通路26の軸方向の中央部は、V字状の溝の尖点(屈曲点)137の付近に径方向に対向するようになっている。
このことから、第2実施形態においても第1実施形態と同様に、動圧発生溝135は、油圧通路26の軸方向の中央部に径方向に重なる部分で最も大きな動圧を発生するようになっている。このことから、第2実施形態においても、軸部材101が第1筒部材10に対して空転している際に最も焼付きが起こり易い、第1筒部材10の中央部の焼付き、および、第1筒部材10の中央部に径方向に対向する軸部材1の外周面部分の焼付きを、特に抑制することができて、軸部材101および第1筒部材10の焼付きを抑制することができる。
(第3実施形態)
図3は、本発明の第3実施形態のトルクリミッタの軸方向の断面図である。なお、軸部材201の一部については、外周面を示している。
第3実施形態のトルクリミッタは、動力非伝達時において、軸部材201の第1筒部材10に対する回転方向が、図3にaで示す回転方向であっても、図3にbで示す回転方向であっても、どちらの回転方向であっても、動圧を発生できる点が、第1実施形態のトルクリミッタ、すなわち、軸部材1の第1筒部材10に対する回転方向が、図1にaで示す回転方向であるときだけ、動圧を発生できるトルクリミッタと異なる。
第3実施形態のトルクリミッタでは、第1実施形態のトルクリミッタの構成部と同一構成部には同一参照番号を付して説明を省略することにする。また、第3実施形態のトルクリミッタでは、第1実施形態のトルクリミッタと共通の作用効果および変形例については説明を省略することにし、第1実施形態のトルクリミッタと異なる構成、作用効果および変形例についてのみ説明を行うことにする。尚、第3実施形態において、参照番号208は、略円筒状の外周面220を有する軸部材201の本体部を示し、209は、本体部208の外周面から突出する、軸部材201の断面略L字形状の係止部を示している。また、参照番号250は、係止部209の径方向延在部を示し、251は、係止部209の軸方向延在部を示している。
第3実施形態のトルクリミッタは、軸部材201の外周面における油圧通路26に対向する部分(以下、油圧通路対向部という)であって、その油圧通路対向部の軸方向に垂直な方向に広がる垂直二等分面に対して第1玉軸受17側の部分に、第1筒部材10に対して軸部材201が図3に矢印bで示す方向に回転したときに、上記油圧通路対向部の軸方向の中央部に動圧を発生する動圧発生溝238を形成している。動圧発生溝238は、螺旋溝の一部からなる溝を、軸部材201の外周面の一部に、軸部材1の全周に亘って周方向に一定間隔毎に形成してなっている。この動圧発生溝238は軸部材201の軸方向他方側(図3では軸方向右)でそれぞれの溝が上記第1シール部材52によって密封された空間内の軸部材1と筒部材2とが非接触に対向する空間に連通していることで、これらの空間に充填された潤滑油を動圧発生溝238に供給することが可能になっている。上記各螺旋溝の一端の軸方向の位置は全て同一であり、上記各螺旋溝の他端の軸方向の位置は全て同一である。
また、上記油圧通路対向部における上記垂直二等分面に対して第2玉軸受18側の部分に、第1筒部材10に対して軸部材201が図3に矢印aで示す方向に回転したときに、上記油圧通路対向部の軸方向の中央部に動圧を発生する動圧発生溝235を形成している。動圧発生溝235は、螺旋溝の一部からなる溝を、軸部材201の外周面の一部に、軸部材201の全周に亘って周方向に一定間隔毎に形成してなっている。この動圧発生溝235は軸部材201の軸方向一方側(図3では軸方向左)でそれぞれの溝が上記第2シール部材53によって密封された空間内の軸部材1と筒部材2とが非接触に対向する空間に連通していることで、これらの空間に充填された潤滑油を動圧発生溝235に供給することが可能になっている。上記各螺旋溝の一端の軸方向の位置は全て同一であり、上記各螺旋溝の他端の軸方向の位置は全て同一である。
上記軸部材201の外周面は、動圧発生溝238を構成する螺旋溝の一部からなる溝と、動圧発生溝235を構成する螺旋溝の一部からなる溝との間に、溝が存在しない部分を有している。また、上記動圧発生溝238を構成する螺旋溝の一部からなる溝と、上記動圧発生溝235を構成する螺旋溝の一部からなる溝は、軸部材201の外周面上における螺旋の延在方向が同一になっている。
上記第3実施形態のトルクリミッタによれば、動力非伝達時において、軸部材201の第1筒部材10に対する回転方向が、図3にaで示す回転方向であっても、図3にbで示す回転方向であっても、どちらの回転方向であっても、動圧を発生させることができる。したがって、動力を伝える側の部材(軸部材または筒部材)が、双方向回転する仕様であっても、動力非伝達時に必ず動圧を発生させることができる。
尚、上記第3実施形態のトルクリミッタでは、上記垂直二等分面を境に、軸部材201の外周面220に、螺旋の一部からなる複数の溝からなる動圧発生溝235と、螺旋の一部からなる複数の溝からなる動圧発生溝238を、形成することによって、動力を伝える側の部分(軸部材または筒部材)が、双方向回転する仕様であっても、動力非伝達時に必ず動圧を発生させるようになっている。
しかしながら、この発明では、軸部材の外周面における油圧通路に対向する部分であって、その油圧通路対向部の軸方向に垂直な方向に広がる垂直二等分面を境にして一方の部分に、第1または第2実施形態で説明した八字またはV字状の複数の溝からなる動圧発生溝を形成すると共に、油圧通路対向部の軸方向に垂直な方向に広がる垂直二等分面を境にして他方の部分に、上記一方の部分との比較において、逆八字または逆V字状の複数の溝からなる動圧発生溝を形成して、動力を伝える側の部分(軸部材または筒部材)が、双方向回転する仕様であっても、動力非伝達時に必ず動圧を発生させるようにしても良い。
尚、動力を伝える側の部材(軸部材または筒部材)が、双方向回転する仕様で、動力非伝達時に必ず動圧を発生させる場合、動圧発生溝の形状は、動力非伝達時に必ず動圧を発生させることができる形状であれば、如何なる形状の溝であっても良いことは言うまでもない。
(第4実施形態)
図4は、本発明の第4実施形態のトルクリミッタの軸方向の断面図である。なお、筒部材302の一部について、理解を容易にするために、具体的に内周面324の様子を示すようにした。
第4実施形態のトルクリミッタは、油圧拡張用の油を封入する油圧通路326を軸部材301に設置し、油圧通路326が径方向外方に拡張することで筒部材302に摩擦係合することが第1実施形態と異なる。
第4実施形態のトルクリミッタは、軸部材301、筒部材302、シャーバブル306、第1玉軸受317、第2玉軸受318、第1シール部材352および第2シール部材353を備える。
上記筒部材302は略円筒状の内周面324を有するとともに、シャーバルブ306の軸方向の一端部を係止する係止部309を備えている。上記筒部材302の内周面324は、動圧発生溝335を備えている。この動圧発生溝は、軸部材301が筒部材302に対して回転したときに略径方向の動圧を発生するようになっている。上記動圧発生溝335は、筒部材302の内周面324に、内周面324の全周に亘って周方向に一定間隔毎に略八字形状に複数形成された溝からなっている。上記動圧発生溝335は、好ましくは周方向に8本以上形成されている。上記動圧発生溝335の形成方法、動圧発生溝335の周方向の幅と隣り合う動圧発生溝335の間の丘部の幅の関係、動圧発生溝の深さは第1実施形態と同様である。
上記軸部材301は、軸本体361と、環状部材310とからなっている。環状部材310の内周面321は軸本体361の外周面320と嵌めあわされ、端面をボルト345で係止され固定されている。環状部材310は、略円筒状の外周面323を有し、この外周面323は、後述するように筒部材302の内周面324に押し付けられるようになっている。
上記筒状部材310は、シャーバブル取付穴330および油圧通路326を有している。油圧通路326は、環状部材310の内部に環状に形成され、環状部材310の外周面323の軸方向の所定の長さに亘って略軸部材301の軸方向に延在している。
シャーバブル306は第1実施形態と同様に油圧通路326に連通し、油圧通路326とともに密封空間を形成している。
上記第1玉軸受317は、第1実施形態と同様アンギュラ玉軸受からなり、その内輪が軸部材301の軸本体361に外嵌され、その外輪が筒部材302に内嵌されている。また、上記第2玉軸受318は、第1実施形態と同様アンギュラ玉軸受からなり、その内輪は、軸部材301の環状部材310に外嵌され、その外輪が筒部材302に内嵌されている。
そして、第1シール部材352は、第1玉軸受317の油圧通路326とは反対側の軸体361と筒部材302との間を密封し、第2シール部材353は第2玉軸受318の油圧通路326とは反対側の環状部材310と筒部材302との間を密封している。
上記第1シール部材352および第2シール部材353によって密封された空間は、第1実施形態で述べた潤滑油が充填されている。
上記動圧発生溝335は、筒部材302の内周面324に、内周面324の全周に亘って周方向に一定間隔毎に略八字形状に複数形成された溝からなっている。この動圧発生溝335は筒部材302の軸方向両側でそれぞれの溝が上記第1シール部材352および第2シール部材353によって密封された空間内の軸部材301と筒部材302とが非接触に対向する空間に連通していることで、これらの空間に充填された潤滑油を動圧発生溝335に供給することが可能になっている。ここで、上記八字状の複数の溝からなる動圧発生溝335は、筒部材302の軸方向に垂直で、かつ、油圧通路326を二等分する平面に対して、略面対称な形状をしている。上記油圧通路326の軸方向の中央部は、八字状の溝を形成する2つの溝の間の部分、すなわち、溝が形成されていない部分339に、径方向(筒部材302の径方向)に重なっている。このことから、上記動圧発生溝335は、環状部材310の外周面323と筒部材302の内周面324との間における油圧通路326の軸方向の中央部に径方向に重なる部分に最も大きな動圧を発生するようになっている。換言すると、動圧発生溝335は、軸方向に関して、油圧通路326の中央部に重なる箇所において、その箇所以外の箇所よりも大きな動圧を発生するようになっている。
トルクリミッタでは、環状部材310と筒部材302との動力伝達時に、油圧通路326の内で最も径方向に膨張するのは、油圧通路326の中央部であるから、トルクリミッタにおいて、環状部材310と筒部材302との間の動力伝達開放時に、環状部材310の内で最も筒部材302に対して押圧力が大きくて、環状部材310の内で最も動摩擦力が大きいのは、環状部材310の中央部であると考えられる。
第4実施形態のように、油圧通路326の軸方向の中央部に径方向に重なる部分に最も大きな動圧を発生するようにすると、環状部材310の内で最も筒部材302に対して押圧力が大きくて、環状部材310の内で最も動摩擦力が大きい環状部材310の中央部の焼付き、および、環状部材310の中央部に径方向に対向する筒部材302の内周面部分の焼付きを抑制できて、軸部材301および筒部材302の焼付きを効果的に抑制できる。
上記構成において、軸部材301または筒部材302に所定値以下の負荷(トルクの伝達を行う範囲の負荷)がかかっている場合には、図示しないカプラを介して油圧通路326に注入されたのち密封された油圧拡張用の油で、環状部材310の外周面323を拡径して、外周面323を筒部材302の内周面324に押し付けて、軸部材301と筒部材302とを摩擦結合して、軸部材301と筒部材302との間でトルクを伝達するようになっている。
一方、軸部材301または筒部材302に所定値以上の負荷(トルクの伝達を行う範囲よりも大きな負荷)がかかって、環状部材310の外周面323が、筒部材302の内周面324に対してスリップして、環状部材310と筒部材302の軸回りの位置が変化した場合、係止部309がシャーバルブ306の一端部を切断して、油圧通路326内の油圧拡張用の油を、一端部が切断されたシャーバルブ306を介して外部に排出するようになっている。
このようにして、環状部材310の外周面323の筒部材302の内周面324に対する押圧力をなくして、軸部材301と筒部材302の摩擦結合を解いて、トルク(動力)の伝達を遮断するようになっている。このようにして、軸部材301または筒部材302に過負荷が生じた場合において、トルクの伝達を遮断して、トルクリミッタ装置に連結されている高価な機械を保護したり、人身災害を防止したりしている。
また、トルク(動力)の伝達の遮断時に、環状部材310が、筒部材302に対して図4にaで示す方向に回転したとき、動圧発生溝335に入り込んだトラクションオイルまたはタービンオイルによって、径方向の動圧を発生して、この動圧で環状部材310を径方向の内方に押圧して、筒部材の内周面および軸部材の外周面の両方が動圧発生溝を有していない構成と比較して、より速い時間で、環状部材310と筒部材302とが、非接触な状態になるようにしている。このようにして、環状部材310および筒部材302の動摩擦に起因する環状部材310および筒部材302の焼付きを抑制するようになっている。
上記第4実施形態のトルクリミッタによれば、筒部材302の内周面324が、軸部材301(正確には、環状部材310)が、筒部材302に対して回転している状態で動圧を発生する動圧発生溝335を有しているから、軸部材の外周面および筒部材の内周面の両方が動圧発生溝を有していない構成と比較して、環状部材310が筒部材302に対して回転している状態で、環状部材310と筒部材302との間に発生する動圧によって、筒部材302を軸部材301からより速く浮上させることができて、油圧通路226内から圧油をより速く抜くことができて、環状部材310と筒部材302との間をより速く非接触な状態にすることができる。したがって、環状部材310が筒部材302に対して回転している状態において、環状部材310の外周面323および筒部材302の内周面324の摩耗を抑制できて、トルクリミッタの使用回数を大きくすることができる。
また、上記第4実施形態のトルクリミッタによれば、上記動圧発生溝335が、油圧通路226の軸方向の中央部に径方向に重なる部分に最も大きな動圧を発生するから、軸部材301のうちで径方向の外方に位置する環状部材310の中央部と、この環状部材310の中央部に径方向に対向する筒部材302の外周面部分とを、より短い時間で非接触な状態にすることができる。
したがって、環状部材310の中央部と、この環状部材310の中央部に径方向に対向する筒部材302の外周面部分の焼付きを抑制できて、トルク伝達の遮断時におけるトルクリミッタの焼付きを更に抑制することができる。
尚、上記第4実施形態のトルクリミッタでは、動圧発生溝335を、筒部材302の内周面324のみに形成したが、この発明では、動力伝達時に、筒部材の内周面に摩擦結合する軸部材の外周面のみに、動圧発生溝を形成しても良い。また、動力伝達時に、筒部材の内周面に摩擦結合する軸部材の外周面に、動圧発生溝を形成すると共に、動力伝達時に、軸部材の外周面に摩擦結合する筒部材の内周面に、動圧発生溝を形成しても良い。
また、上記第4実施形態のトルクリミッタでは、軸部材301を、軸本体361と、軸本体361の外周面320と接触する内周面321を有すると共に、油圧拡張用の油を封入する油圧通路326を有する環状部材310とで構成したが、この発明では、軸部材として、筒部材の内周面と接触する外周面と、油圧拡張用の油を封入する油圧通路とを有する一体型の軸部材を使用しても良いことは勿論である。
(第5実施形態)
図5は、本発明の第5実施形態のトルクリミッタの軸方向の断面図である。なお、筒部材402の一部について、理解を容易にするために、具体的に内周面424の様子を示すようにした。
第5実施形態のトルクリミッタは、筒部材402の内周面424に、その内周面424の全周に亘って、周方向に一定間隔毎に複数形成された略V字形状の溝からなる動圧発生溝435を形成した点が、第4実施形態のトルクリミッタ、すなわち、筒部材302の内周面324に、その内周面324の全周に亘って、周方向に一定間隔毎に略八字形状に複数形成された溝からなる動圧発生溝335を形成したトルクリミッタと異なる。
第5実施形態のトルクリミッタでは、第4実施形態のトルクリミッタの構成部と同一構成部には同一参照番号を付して説明を省略することにする。また、第5実施形態のトルクリミッタでは、第4実施形態のトルクリミッタと共通の作用効果および変形例については説明を省略することにし、第4実施形態のトルクリミッタと異なる構成についてのみ説明を行うことにする。
上述のように、第5実施形態のトルクリミッタでは、筒部材402の内周面424に、その内周面424の全周に亘って、周方向に一定間隔毎に複数形成された略V字形状の溝からなる動圧発生溝435を形成している。上記動圧発生溝435の形成方法、動圧発生溝435の周方向の幅と隣り合う動圧発生溝435の間の丘部の幅の関係、動圧発生溝の深さは第2実施形態と同様である。
上記V字状の複数の溝からなる動圧発生溝435は、筒部材402の軸方向に垂直で、かつ、油圧通路326を二等分する平面に対して、略面対称な形状をしている。別の言い方をすると、油圧通路326の軸方向の中央部は、V字状の溝の尖点(屈曲点)437の付近に径方向に対向するようになっている。
このことから、第5実施形態においても第4実施形態と同様に、動圧発生溝435は、油圧通路326の軸方向の中央部に径方向に重なる部分で最も大きな動圧を発生するようになっている。このことから、第5実施形態においても、軸部材301が筒部材402に対して空転している際に最も焼付きが起こり易い、環状部材310の中央部の焼付き、および、環状部材310の中央部に径方向に対向する筒部材402の内周面部分の焼付きを、特に抑制することができて、環状部材310および筒部材402の焼付きを抑制することができる。
(第6実施形態)
図6は、本発明の第6実施形態のトルクリミッタの軸方向の断面図である。なお、筒部材502の一部について、理解を容易にするために、具体的に内周面524の様子を示すようにした。
第6実施形態のトルクリミッタは、動力非伝達時において、環状部材310の筒部材502に対する回転方向が、図6にaで示す回転方向であっても、図6にbで示す回転方向であっても、どちらの回転方向であっても、動圧を発生できる点が、第4実施形態のトルクリミッタ、すなわち、環状部材310の筒部材302に対する回転方向が、図4にaで示す回転方向であるときだけ、動圧を発生できるトルクリミッタと異なる。
第6実施形態のトルクリミッタでは、第4実施形態のトルクリミッタの構成部と同一構成部には同一参照番号を付して説明を省略することにする。また、第6実施形態のトルクリミッタでは、第4実施形態のトルクリミッタと共通の作用効果および変形例については説明を省略することにし、第4実施形態のトルクリミッタと異なる構成、作用効果および変形例についてのみ説明を行うことにする。
第6実施形態のトルクリミッタは、筒部材502の内周面における油圧通路326に対向する部分(以下、油圧通路対向部という)であって、その油圧通路対向部の軸方向に垂直な方向に広がる垂直二等分面に対して第1玉軸受317側の部分に、筒部材502に対して環状部材310が図6に矢印bで示す方向に回転したときに、上記油圧通路対向部の軸方向の中央部に動圧を発生する動圧発生溝538を形成している。動圧発生溝538は、螺旋溝の一部からなる溝を、筒部材502の内周面524の一部に、筒部材502の全周に亘って周方向に一定間隔毎に形成してなっている。この動圧発生溝538は筒部材502の軸方向他方側(図6では軸方向右)でそれぞれの溝が上記第1シール部材352によって密封された空間内の軸部材301と筒部材502とが非接触に対向する空間に連通していることで、これらの空間に充填された潤滑油を動圧発生溝538に供給することが可能になっている。上記各螺旋溝の一端の軸方向の位置は全て同一であり、上記各螺旋溝の他端の軸方向の位置は全て同一である。
また、上記油圧通路対向部における上記垂直二等分面に対して第2玉軸受318側の部分に、筒部材502に対して環状部材310が図6に矢印aで示す方向に回転したときに、上記油圧通路対向部の軸方向の中央部に動圧を発生する動圧発生溝539を形成している。動圧発生溝539は、螺旋溝の一部からなる溝を、筒部材502の内周面の一部に、筒部材502の全周に亘って周方向に一定間隔毎に形成してなっている。この動圧発生溝539は筒部材502の軸方向一方側(図6では軸方向左)でそれぞれの溝が上記第2シール部材353によって密封された空間内の軸部材301と筒部材502とが非接触に対向する空間に連通していることで、これらの空間に充填された潤滑油を動圧発生溝539に供給することが可能になっている。上記各螺旋溝の一端の軸方向の位置は全て同一であり、上記各螺旋溝の他端の軸方向の位置は全て同一である。
上記筒部材502の内周面は、動圧発生溝538を構成する螺旋溝の一部からなる溝と、動圧発生溝539を構成する螺旋溝の一部からなる溝との間に、溝が存在しない部分を有している。また、上記動圧発生溝538を構成する螺旋溝の一部からなる溝と、上記動圧発生溝539を構成する螺旋溝の一部からなる溝は、筒部材502の内周面上における螺旋の延在方向が同一になっている。
上記第3実施形態のトルクリミッタによれば、動力非伝達時において、環状部材310の筒部材502に対する回転方向が、図6にaで示す回転方向であっても、図6にbで示す回転方向であっても、どちらの回転方向であっても、動圧を発生させることができる。したがって、動力を伝える側の部材(軸部材または筒部材)が、双方向回転する仕様であっても、動力非伝達時に必ず動圧を発生させることができる。
尚、上記第6実施形態のトルクリミッタでは、上記垂直二等分面を境に、筒部材502の内周面524に、螺旋の一部からなる複数の溝からなる動圧発生溝538と、螺旋の一部からなる複数の溝からなる動圧発生溝539を、形成することによって、動力を伝える側の部分(軸部材または筒部材)が、双方向回転する仕様であっても、動力非伝達時に必ず動圧を発生させるようになっている。
しかしながら、この発明では、筒部材の内周面における油圧通路に対向する部分であって、その油圧通路対向部の軸方向に垂直な方向に広がる垂直二等分面を境にして一方の部分に、第4または第5実施形態で説明した八字またはV字状の複数の溝からなる動圧発生溝を形成すると共に、油圧通路対向部の軸方向に垂直な方向に広がる垂直二等分面を境にして他方の部分に、上記一方の部分との比較において、逆八字または逆V字状の複数の溝からなる動圧発生溝を形成して、動力を伝える側の部分(軸部材または筒部材)が、双方向回転する仕様であっても、動力非伝達時に必ず動圧を発生させるようにしても良い。
尚、動力を伝える側の部材(軸部材または筒部材)が、双方向回転する仕様で、動力非伝達時に必ず動圧を発生させる場合、動圧発生溝の形状は、動力非伝達時に必ず動圧を発生させることができる形状であれば、如何なる形状の溝であっても良いことは言うまでもない。
尚、上記第1乃至6実施形態では、摩擦結合する、軸部材の外周面または筒部材の内周面に、略八字状の複数の溝、略V字状の複数の溝、または、螺旋溝の一部からなる複数の溝からなる動圧発生溝を形成して、径方向に動圧を発生させた。しかしながら、この発明では、軸部材の外周面および筒部材の内周面のうちの少なくとも一方に形成される動圧発生溝の形状は、径方向に動圧を発生できる形状であれば、如何なる形状であっても良いことも、言うまでもない。
本発明の第1実施形態のトルクリミッタを表す断面図である。 本発明の第2実施形態のトルクリミッタを示す断面図である。 本発明の第3実施形態のトルクリミッタを示す断面図である。 本発明の第4実施形態のトルクリミッタを表す断面図である。 本発明の第5実施形態のトルクリミッタを表す断面図である。 本発明の第6実施形態のトルクリミッタを表す断面図である。
符号の説明
1,101,201,301 軸部材
2,302,402,502 筒部材
10 第1筒部材
11 第2筒部材
20,120,220 軸部材の外周面
21 第1筒部材の内周面
26,326 油圧通路
35,135,235,238,335,435,538,539 動圧発生溝
310 環状部材
323 環状部材の外周面
324,424,524 筒部材の内周面
361 軸本体

Claims (3)

  1. 軸部材と、
    この軸部材に回転可能に外嵌した筒部材と
    を備え、
    上記筒部材の内部に、上記軸部材の外周面に上記筒部材の内周面を押し付けるための油圧通路を有し、
    上記軸部材の上記外周面および上記筒部材の上記内周面のうちの少なくとも一方は、上記軸部材が上記筒部材に対して回転している状態で動圧を発生する動圧発生溝を有していることを特徴とするトルクリミッタ。
  2. 軸部材と、
    この軸部材に回転可能に外嵌した筒部材と
    を備え、
    上記軸部材の内部に、上記筒部材の内周面に上記軸部材の外周面を押し付けるための油圧通路を有し、
    上記軸部材の上記外周面および上記筒部材の上記内周面のうちの少なくとも一方は、上記軸部材が上記筒部材に対して回転している状態で動圧を発生する動圧発生溝を有していることを特徴とするトルクリミッタ。
  3. 請求項1または2に記載のトルクリミッタにおいて、
    上記油圧通路は、略上記筒部材の軸方向に延在しており、
    上記動圧発生溝は、上記軸方向に関して、上記油圧通路の中央部に重なる箇所において、その箇所以外の箇所よりも大きな動圧を発生することを特徴とするトルクリミッタ。
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JP2010133474A (ja) * 2008-12-03 2010-06-17 Jtekt Corp 軸連結装置およびトルクリミッタ

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JP2010133474A (ja) * 2008-12-03 2010-06-17 Jtekt Corp 軸連結装置およびトルクリミッタ

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