JP2008121765A - アイドラプーリ用軸受 - Google Patents
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Abstract
【課題】高温でのグリース劣化を防止すると共に、低温での潤滑性を確保して低温ノイズの発生を防止することができる、低コストなアイドラプーリ用軸受を提供する。
【解決手段】外周面に巻き掛けられたベルトに所望の張力を付与するプーリ部材2に取り付け可能なアイドラプーリ用軸受10では、冠型保持器14のポケット部16は、球面部分16a,16cと円筒面部分16bによって構成される。玉13が配置される空間内には、40℃において基油の動粘度が30〜60mm2/secのウレア−合成油系グリースが封入される。
【選択図】図2
【解決手段】外周面に巻き掛けられたベルトに所望の張力を付与するプーリ部材2に取り付け可能なアイドラプーリ用軸受10では、冠型保持器14のポケット部16は、球面部分16a,16cと円筒面部分16bによって構成される。玉13が配置される空間内には、40℃において基油の動粘度が30〜60mm2/secのウレア−合成油系グリースが封入される。
【選択図】図2
Description
本発明は、アイドラプーリ用軸受に関し、より詳細には、自動車用エンジンの補機或はカムシャフトを駆動するためのベルト或はタイミングベルト(以下、単に「ベルト」とする。)に、所望の張力を付与するためのアイドラプーリに組み込まれるアイドラプーリ用軸受に関する。
例えば、オルタネータ等の自動車用補機は、エンジンを駆動源とし、エンジンのクランク軸に固定された駆動プーリ、自動車用補機の回転軸に固定された従動プーリ、及びアイドラプーリにベルトが巻き掛けられて駆動される。アイドラプーリは、支持軸に転がり軸受を介して支持されており、ベルトに所望の張力を付与しながらベルトと共に回転する。
また、自動車は近年の小型軽量化や居住空間拡大等の要望により、自動車用補機の小型軽量化、高速化がより一層進められており、それに伴ってアイドラプーリも小型化、高速化することになる。更に、静粛性向上の要望によりエンジンルームの密閉化が進み、エンジンルーム内の高温化が促進されるため、アイドラプーリも高温で使用される。加えて、これらの部品はエンジンルームの下部に取り付けられていることが多いため、路面からの水、泥水、塵埃、などの異物が周囲に飛散する劣悪な環境で用いられる場合が多い。従って、アイドラプーリ用軸受には、耐環境、耐高温、長寿命、静粛性等の特性が要求される。
このようなアイドラプーリに用いられる従来の転がり軸受としては、フッ素系グリースと、フッ素系グリース以外のグリースとの混合グリースを封入したものが知られており、180℃を越える高温での焼付き寿命、低温流動性及び防錆性の改善を図っている(例えば、特許文献1参照。)。
特開2003−239997号公報
ところで、アイドラプーリ用軸受では、長期間の使用によりグリースが熱劣化して硬化すると、低温環境下での潤滑性不足の原因となり、低温ノイズが発生する問題があった。特許文献1に記載の転がり軸受では、180℃を越える高温での焼付き寿命、低温流動性を向上するためフッ素系グリースを使用しているが、フッ素系グリースはコストアップの要因となり、また、低温ノイズの低減について軸受全体としての改善が求められる。
本発明は、上記のような事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、高温でのグリース劣化を防止すると共に、低温での潤滑性を確保して低温ノイズの発生を防止することができる、低コストなアイドラプーリ用軸受を提供することにある。
本発明の上記目的は、下記の構成により達成される。
(1) 内周面に外輪軌道面を有する外輪と、外周面に内輪軌道面を有する内輪と、前記外輪軌道面及び前記内輪軌道面間に転動自在に配置される複数の転動体と、該複数の転動体を保持するポケット部を有する冠型保持器と、前記外輪の両端部内周面に取り付けられて、前記転動体が設けられた空間内を密封する一対のシール部材と、を備え、外周面に巻き掛けられるベルトに所望の張力を付与するプーリ部材に取り付け可能なアイドラプーリ用軸受であって、
前記冠型保持器のポケット部は、球面部分と円筒面部分によって構成され、
前記空間内には、40℃において基油の動粘度が30〜60mm2/secのウレア−合成油系グリースが封入されることを特徴とするアイドラプーリ用軸受。
(1) 内周面に外輪軌道面を有する外輪と、外周面に内輪軌道面を有する内輪と、前記外輪軌道面及び前記内輪軌道面間に転動自在に配置される複数の転動体と、該複数の転動体を保持するポケット部を有する冠型保持器と、前記外輪の両端部内周面に取り付けられて、前記転動体が設けられた空間内を密封する一対のシール部材と、を備え、外周面に巻き掛けられるベルトに所望の張力を付与するプーリ部材に取り付け可能なアイドラプーリ用軸受であって、
前記冠型保持器のポケット部は、球面部分と円筒面部分によって構成され、
前記空間内には、40℃において基油の動粘度が30〜60mm2/secのウレア−合成油系グリースが封入されることを特徴とするアイドラプーリ用軸受。
本発明のアイドラプーリ用軸受によれば、転動体が設けられた空間内に40℃において基油の動粘度が30〜60mm2/secのウレア−合成油系グリースが封入され、流動性が良く、且つ熱劣化の少ないグリースが使用される。また、冠型保持器のポケット部が球面部分と円筒面部分によって構成されるので、ポケット部にグリース溜りを形成して転動体の潤滑性を向上させることができる。これにより、本発明のアイドラプーリ用軸受は、高温でのグリース劣化を防止すると共に、低温での潤滑性を確保して低温ノイズの発生を防止することができる、低コストなものとなる。
以下、本発明の一実施形態に係るアイドラプーリ用軸受を図面に基づいて詳細に説明する。
図1は本発明のアイドラプーリ用軸受が組み込まれたアイドラプーリの要部縦断面図である。アイドラプーリ1は、図示しない支持軸に外嵌される玉軸受10と、玉軸受10に射出成形により固設された合成樹脂製のプーリ部材2とを備える。プーリ部材2には、外周面にベルト溝3が形成され、図示しないベルトが巻き掛けられており、アイドラプーリ1は、自動車の補機等を駆動するベルトに所望の張力を付与している。
図2に示すように、玉軸受10は、内周面に外輪軌道面11aを有する外輪11と、外周面に内輪軌道面12aを有する内輪12と、外輪軌道面11aと内輪軌道面12a間に転動自在に配置される転動体である複数の玉13と、を備えており、プーリ部材2は、玉軸受10を介して支持軸に回転可能に支持される。
また、玉軸受10は、各玉13を回転自在に保持するポケット部16を有する冠型保持器14と、外輪11の両端部内周面に形成された係止溝11bに取り付けられ、玉13が設けられた環状空間S内を密封する一対のシール部材15と、をさらに備える。なお、符号11cは、プーリ部材2と外輪11との滑りを防止するための偏心溝である。
冠型保持器14は、樹脂製で、図3に示すように、軸方向一端側に設けられる円環部17と、円環部17から円周方向に所定の間隔を持って軸方向に延びる複数の柱部18と、を有し、各柱部18の先端部には一対の爪部19が形成されている。ポケット部16は、隣接する柱部18間に設けられ、円環部17の軸方向内側面から各柱部18の対向面に向けて形成される球面部分16aと、各柱部18の対向面に形成される一対の円筒部分16bと、各爪部19の対向面に形成される一対の球面部分16cと、で構成される。
各球面部分16a、16cは、それぞれ曲率中心をポケット中心Oから離れた位置とし、曲率半径を玉13の半径より大きくした球面によって形成されており、これにより、球面部分16aと円筒部分16bとの境界部分、及び球面部分16cと円筒部分16bとの境界部分にグリース溜りCが構成される。なお、ポケット部16は、球面部分と円筒部分との境界部分にグリース溜りが形成されるものであればよく、円環部17の軸方向側面を円筒部分とし、各柱部18の対向面を球面部分としてもよい。また、図3(b)中、符号20は、各柱部18の径方向中間部分に形成され、円環部17の軸方向一端側に開口する肉抜き部である。
この玉軸受13に使用されるグリースとしては、熱安定性、低温流動性に優れた、基油の動粘度が40℃において30〜60mm2/secのウレア−合成油系グリースが選択されている。これにより、高温での熱劣化が防止され、且つ低温での潤滑性が確保される。
合成油系潤滑油としては、炭化水素系油、芳香族系油、エステル系油、エーテル系油等が挙げられる。炭化水素系油としては、ノルマルパラフィン、イソパラフィン、ポリブテン、ポリイソブチレン、1−デセンオリゴマー、1−デセンとエチレンコオリゴマーなどのポリ−α−オレフィンまたはこれらの水素化物等が挙げられる。芳香族系油としては、モノアルキルベンゼン、ジアルキルベンゼンなどのアルキルベンゼン、あるいはモノアルキルナフタレン、ジアルキルナフタレン、ポリアルキルナフタレン等のアルキルナフタレン等が挙げられる。エステル系油としては、ジブチルセバケート、ジ−2−エチルヘキシルセバケート、ジオクチルアジペート、ジイソデシルアジペート、ジトリデシルアジペート、ジトリデシルグルタレート、メチル・アセチルシノレートなどのジエステル油、あるいはトリオクチルトリメリテート、トリデシルトリメリテート、テトラオクチルピロメリテート等の芳香族エステル油、更にはトリメチロールプロパンカプリレート、トリメチロールプロパンペラルゴネート、ペンタエリスリトール−2−エチルヘキサノエート、ペンタエリスリトールベラルゴネート等のポリオールエステル油、更にはまた、多価アルコールと二塩基酸・一塩基酸の混合脂肪酸とのオリゴエステルであるコンプレックスエステル油等が挙げられる。エーテル系油としては、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリエチレングリコールモノエーテル、ポリプロピレングリコールモノエーテル等のポリグリコール、あるいはモノアルキルトリフェニルエーテル、アルキルジフェニルエーテル、ジアルキルジフェニルエーテル、ペンタフェニルエーテル、テトラフェニルエーテル、モノアルキルテトラフェニルエーテル、ジアルキルテトラフェニルエーテル等のフェニルエーテル油等が挙げられる。これらの基油は、単独または混合物として用いることができ、上述した動粘度に調整される。また、基油は、合成油系潤滑油を部分的に含んだものであってもよい。
ウレア系グリースの増ちょう剤としては、ジウレア化合物、トリウレア化合物、テトラウレア化合物、ポリウレア化合物、またはこれらの混合物が挙げられる。これらの増ちょう剤は、単独または混合物として用いることができる。
このように構成された玉軸受10では、環状空間S内に、基油の動粘度が40℃において30〜60mm2/secのウレア−合成油系グリースが封入されるので、長期の高温使用においても熱劣化の少ないものとなる。また、上記ウレア−合成油系グリースが低温流動性に優れると共に、保持器14のポケット部16が球面部分16a,16cと円筒部分16bによってグリース溜りCを有するので、低温環境下における転動体周りの潤滑性が向上され、低温ノイズの発生を抑制することができる。
尚、本発明は、前述した実施形態に限定されるものではなく、適宜、変形、改良等が可能である。
本実施形態では、本発明のアイドラプーリ用軸受である玉軸受10は、樹脂製のプーリ部材に取り付けられているが、鉄製のプーリ部材に圧入固定されるものであってもよい。例えば、図4の変形例に示すように、プレス成形されたプーリ部材2aに取り付けられてもよく、図5の他の変形例に示すように、削り加工によって幅広に形成されたプーリ部材2bに一対の玉軸受10が取り付けられてもよい。但し、これら鉄製のプーリ部材2a,2bに玉軸受10が取り付けられる場合には、図2に示した外輪11の偏心溝11cは不要である。
本実施形態では、本発明のアイドラプーリ用軸受である玉軸受10は、樹脂製のプーリ部材に取り付けられているが、鉄製のプーリ部材に圧入固定されるものであってもよい。例えば、図4の変形例に示すように、プレス成形されたプーリ部材2aに取り付けられてもよく、図5の他の変形例に示すように、削り加工によって幅広に形成されたプーリ部材2bに一対の玉軸受10が取り付けられてもよい。但し、これら鉄製のプーリ部材2a,2bに玉軸受10が取り付けられる場合には、図2に示した外輪11の偏心溝11cは不要である。
以下、本発明の効果を確認するため、耐久試験、低温ノイズ試験について、本発明の玉軸受と従来構造の玉軸受とで比較試験を行った。
(耐久試験)
本試験は、図2に示す単列深溝玉軸受(呼び番号6203、外径40mm、内径17mm、幅12mm)を使用し、本発明のウレア−合成油系グリースを用いた実施例1と、現行グリースを用いた比較例1とで行なわれた。その他の試験条件は、以下のものとした。
・回転数:12000rpm×20h
0rpm×4h
・ラジアル荷重:1911N
・温度:135℃
本試験は、図2に示す単列深溝玉軸受(呼び番号6203、外径40mm、内径17mm、幅12mm)を使用し、本発明のウレア−合成油系グリースを用いた実施例1と、現行グリースを用いた比較例1とで行なわれた。その他の試験条件は、以下のものとした。
・回転数:12000rpm×20h
0rpm×4h
・ラジアル荷重:1911N
・温度:135℃
図6に示す試験結果から、本発明のウレア−合成油系グリースを使用することで、略1.5〜2倍軸受寿命が延びていることが分かる。
(低温ノイズ試験)
本試験では、いずれも呼び番号6203の単列深溝玉軸受を使用し、図3に示す保持器14を備えたものを実施例2とし、図7に示すポケット部16が球面部分のみからなる保持器14´を有するものを比較例2とした。その他の試験条件は、以下のものとする。
・回転数:1600rpm
・ラジアル荷重:88N
・ベルトの巻き角:10deg
・温度:−40℃
・グリース:現行グリース
・グリース量:0.2g
尚、現行グリースはウレア−合成油系グリースであり、40℃における動粘度が80mm2/sec程度である。
本試験では、いずれも呼び番号6203の単列深溝玉軸受を使用し、図3に示す保持器14を備えたものを実施例2とし、図7に示すポケット部16が球面部分のみからなる保持器14´を有するものを比較例2とした。その他の試験条件は、以下のものとする。
・回転数:1600rpm
・ラジアル荷重:88N
・ベルトの巻き角:10deg
・温度:−40℃
・グリース:現行グリース
・グリース量:0.2g
尚、現行グリースはウレア−合成油系グリースであり、40℃における動粘度が80mm2/sec程度である。
試験は、実施例4及び比較例4に係る玉軸受をそれぞれ5個を使用し、上記条件にて5回の音圧レベルを測定した。比較例2では3個の玉軸受においてフートノイズが発生したが、実施例2ではいずれの玉軸受もフートノイズを発生せず、図8の試験結果から分かるように、本発明の保持器14を用いることで低温時の音圧レベルが低減されることが確認された。
10 玉軸受(アイドラプーリ用軸受)
11 外輪
11a 外輪軌道面
12 内輪
12a 内輪軌道面
12b シール溝
12c 内側壁面
12d 外周面
13 玉(転動体)
14 冠型保持器
15 シール部材
16 ポケット部
16a,16c 球面部分
16b 円筒部分
S 環状空間(空間)
11 外輪
11a 外輪軌道面
12 内輪
12a 内輪軌道面
12b シール溝
12c 内側壁面
12d 外周面
13 玉(転動体)
14 冠型保持器
15 シール部材
16 ポケット部
16a,16c 球面部分
16b 円筒部分
S 環状空間(空間)
Claims (1)
- 内周面に外輪軌道面を有する外輪と、外周面に内輪軌道面を有する内輪と、前記外輪軌道面及び前記内輪軌道面間に転動自在に配置される複数の転動体と、該複数の転動体を保持するポケット部を有する冠型保持器と、前記外輪の両端部内周面に取り付けられて、前記転動体が設けられた空間内を密封する一対のシール部材と、を備え、外周面に巻き掛けられるベルトに所望の張力を付与するプーリ部材に取り付け可能なアイドラプーリ用軸受であって、
前記冠型保持器のポケット部は、球面部分と円筒面部分によって構成され、
前記空間内には、40℃において基油の動粘度が30〜60mm2/secのウレア−合成油系グリースが封入されることを特徴とするアイドラプーリ用軸受。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2006305290A JP2008121765A (ja) | 2006-11-10 | 2006-11-10 | アイドラプーリ用軸受 |
Applications Claiming Priority (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
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Publication Number | Publication Date |
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JP2008121765A true JP2008121765A (ja) | 2008-05-29 |
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JP (1) | JP2008121765A (ja) |
Cited By (2)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
CN111664178A (zh) * | 2020-07-01 | 2020-09-15 | 成都奇门科技有限公司 | 一种球冠轴承及其应用 |
WO2023048046A1 (ja) * | 2021-09-21 | 2023-03-30 | Ntn株式会社 | 転がり軸受 |
-
2006
- 2006-11-10 JP JP2006305290A patent/JP2008121765A/ja active Pending
Cited By (2)
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