JP2008215360A - 自在動弁系と可変圧縮機構を備えた内燃機関を制御する装置 - Google Patents
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Abstract
【課題】バルブとピストンの接触を回避する。
【解決手段】バルブのリフト量を変更することができる可変リフト機構と燃焼室内の圧縮比を変更することができる可変圧縮比機構を備える内燃機関のための制御装置は、要求されるエンジン出力が増加している時は、リフト量の増加レートよりも圧縮比の減少レートが速くなるように、要求されるエンジン出力が減少している時は、圧縮比の増加レートよりもリフト量の減少レートが速くなるように、可変圧縮比機構および可変リフト機構を制御する。バルブの位相を変更することができる可変位相機構を備える場合には、制御装置は、要求されるエンジン出力が増加している時は、位相の遅角側への変化レートよりも圧縮比の減少レートが速くなるように、要求されるエンジン出力が減少している時は、圧縮比の増加レートよりも位相の進角側への変化レートが速くなるように、可変圧縮比機構および可変位相機構を制御する。
【選択図】図8
【解決手段】バルブのリフト量を変更することができる可変リフト機構と燃焼室内の圧縮比を変更することができる可変圧縮比機構を備える内燃機関のための制御装置は、要求されるエンジン出力が増加している時は、リフト量の増加レートよりも圧縮比の減少レートが速くなるように、要求されるエンジン出力が減少している時は、圧縮比の増加レートよりもリフト量の減少レートが速くなるように、可変圧縮比機構および可変リフト機構を制御する。バルブの位相を変更することができる可変位相機構を備える場合には、制御装置は、要求されるエンジン出力が増加している時は、位相の遅角側への変化レートよりも圧縮比の減少レートが速くなるように、要求されるエンジン出力が減少している時は、圧縮比の増加レートよりも位相の進角側への変化レートが速くなるように、可変圧縮比機構および可変位相機構を制御する。
【選択図】図8
Description
この発明は、自在動弁系と可変圧縮機構を備えた内燃機関を制御する装置に関する。
内燃機関の動弁系には、吸排気バルブのリフト量を可変に制御することができるものがある。吸排気バルブのこのような制御により、所望のエンジン出力を生成することができる。一方、エンジンの燃焼室内の圧縮比を可変に制御する可変圧縮比機構が提案されている。
下記の特許文献1には、ピストンの上死点位置を変更することにより圧縮比を変更する可変圧縮比機構を用いた場合における、ピストンと吸気弁との干渉を解決する手法が記載されている。この手法によると、ピストンの上死点位置が高くなる高圧縮比状態では、吸気弁を開く時期を遅角し、または吸気弁のリフト量を減らす。
特開平2001−263099号公報
バルブのリフト量によってエンジン出力を制御することにより、ポンピングロスを低減し、燃費向上を図ることができる。また、圧縮比を運転状態に基づいて変更することにより、低負荷では燃焼安定性を向上させ、高負荷では、ノッキングを抑制するのに点火時期をリタードする量を低減することができる。
圧縮比が高いほど、ピストンの上死点の位置は、シリンダヘッドに近づく。図24の(a)および(c)に示されるように、圧縮比が低い時は、ピストンの上死点の位置が低いので、バルブのリフト量にかかわらず、バルブとピストンが接触するおそれはない。図24の(b)に示されるように、圧縮比が高い時、バルブのリフト量が小さければ、バルブとピストンが接触するおそれはない。しかしながら、図24の(d)に示されるように、圧縮比が高い時にバルブのリフト量が大きい状態が、たとえば動弁系および(または)圧縮比機構の過渡状態において生じるおそれがある。高圧縮比における高リフトの状態では、バルブとピストンが衝突するおそれがあり、このような衝突は、エンジンを損傷させるおそれがある。
このような衝突を回避するには、ピストンに“逃げ(いわゆる、リセス)”を大きく設けることが考えられる。しかしながら、このような“逃げ”をピストンに設けると、ピストン上部の形状が複雑になり、燃焼状態を悪化させるおそれがある。
したがって、バルブのリフト量を変化させることのできる動弁系と圧縮比を変化させることのできる可変圧縮機構を備えるエンジンにおいて、バルブとピストンの衝突を回避することのできる制御装置が必要とされている。
さらに、動弁系の中には、バルブの位相を可変に制御することができるものがある。このような動弁系と可変圧縮機構を備えるエンジンには、以下のような問題が生じる。図25の(a)を参照すると、符号101はバルブのリフト量を示し、符号102はピストンの位置を示す。ピストンが上死点にほぼ達したとき、バルブが開き始める(時刻t1)。このような、通常の位相または遅角された位相でバルブが開く場合には、バルブとピストンが衝突するおそれはない。しかしながら、図25の(b)を参照すると、バルブの位相が進角されており、よってピストンが上死点に達する前にバルブが開き始める。このような場合には、バルブとピストンが衝突するおそれがある(時刻t2)。
したがって、バルブの位相を変化させることのできる動弁系をさらに備えるエンジンにおいて、バルブとピストンの衝突を回避することのできる制御装置が必要とされている。
この発明の一つの側面によると、バルブのリフト量を変更することができる可変リフト機構と燃焼室内の圧縮比を変更することができる可変圧縮比機構を備える内燃機関のための制御装置が提供される。該制御装置は、要求されるエンジン出力が増加している時は、リフト量の増加レート(増加速度)よりも、圧縮比の減少レート(減少速度)が速くなるように、可変圧縮比機構および可変リフト機構を制御する。また、要求されるエンジン出力が減少している時は、圧縮比の増加レートよりも、リフト量の減少レートが速くなるように、可変圧縮比機構および可変リフト機構を制御する。この発明によれば、要求されるエンジン出力に応じた吸気量を実現しつつ、バルブとピストンの接触を回避することができる。
この発明の一実施形態では、バルブの位相を変更することができる可変位相機構をさらに備える。制御装置は、要求されるエンジン出力が増加している時は、位相の遅角側への変化レート(変化速度)よりも、圧縮比の減少レートが速くなるように、可変圧縮比機構および可変位相機構を制御する。要求されるエンジン出力が減少している時は、圧縮比の増加レートよりも、位相の進角側への変化レートが速くなるように、可変圧縮比機構および可変位相機構を制御する。この発明によれば、要求されるエンジン出力に応じた吸気量を実現しつつ、バルブとピストンの接触を回避することができる。
この発明の他の側面によると、内燃機関の燃焼室内の圧縮比を制御する圧縮比コントローラと、内燃機関のバルブのリフト量を制御するリフトコントローラと、を備える。さらに、要求されるエンジン出力に基づいて、圧縮比およびリフト量のうちの1つをマスターパラメータとして選択し、他をスレーブパラメータとして選択するマスタースレーブ切換部を備える。マスタースレーブ切換部は、圧縮比コントローラおよびリフトコントローラのうち、該マスターパラメータを制御するコントローラをマスターコントローラに指定し、該スレーブパラメータを制御するコントローラをスレーブコントローラに指定する。マスターコントローラは、要求されるエンジン出力に基づいて、該マスターパラメータについての目標値を算出し、該目標値に収束するようマスターパラメータを制御する。スレーブコントローラは、マスターパラメータが制御された結果としての該マスターパラメータの実測値に基づいて、スレーブパラメータについての目標値を算出し、該目標値に収束するようスレーブパラメータを制御する。こうして、マスターパラメータの変化レート(変化速度)が、スレーブパラメータの変化レート(変化速度)よりも速くなるようにする。
この発明によれば、スレーブパラメータがマスターパラメータに追従するように、マスターおよびスレーブパラメータが制御されるので、要求されるエンジン出力に応じた吸気量を実現しつつ、バルブとピストンが接触することを回避することができる。
この発明の一実施形態によれば、内燃機関のバルブの位相を制御する位相コントローラをさらに備える。マスタースレーブ切換部は、さらに、要求されるエンジン出力に基づいて、圧縮比、リフト量および位相のうちの1つをマスターパラメータとして選択し、他をスレーブパラメータとして選択する。マスタースレーブ切換部は、圧縮比コントローラ、リフトコントローラおよび位相コントローラのうち、該マスターパラメータを制御するコントローラをマスターコントローラに指定し、該スレーブパラメータを制御するコントローラをスレーブコントローラに指定する。
この発明の一実施形態では、マスタースレーブ切換部は、要求されるエンジン出力が増加している時は、圧縮比をマスターパラメータに選択し、リフト量をスレーブパラメータに選択する。マスタースレーブ切換部は、要求されるエンジン出力が減少している時は、リフト量をマスターパラメータに選択し、圧縮比をスレーブパラメータに選択する。この発明によれば、要求されるエンジン出力の増減に従って、マスターおよびスレーブパラメータが切り換えられるので、要求されるエンジン出力に応じた吸気量を実現しつつ、バルブとピストンの接触を回避することができる。
この発明の一実施形態では、マスタースレーブ切換部は、内燃機関が極低負荷であって、要求されるエンジン出力が増加している時は、圧縮比をマスターパラメータに選択し、リフト量および位相をスレーブパラメータに選択する。また、マスタースレーブ切換部は、内燃機関が極低負荷であって、要求されるエンジン出力が減少している時は、位相をマスターパラメータに選択し、リフト量および圧縮比をスレーブパラメータに選択する。この発明によれば、エンジンが極低負荷にあることに応じて、マスターおよびスレーブパラメータが切り換えられるので、要求されるエンジン出力に応じた吸気量を実現しつつ、バルブとピストンの接触を回避することができる。
この発明の他の実施形態によると、内燃機関が極低負荷であるときは、リフトコントローラは、位相コントローラにより制御された結果としての位相の実測値に基づいて、リフト量の目標値を設定する。この発明によれば、エンジンが極低負荷にあるときは、位相コントローラによって微小の吸気量を制御することができる。
この発明の他の実施形態によると、マスターコントローラは、マスターパラメータの目標値への応答速度を指定可能な応答指定型制御を実施するよう構成され、スレーブコントローラは、スレーブパラメータの目標値への応答速度を指定可能な応答指定型制御を実施するよう構成される。マスターパラメータについての応答速度は、スレーブパラメータについての応答速度よりも速くなるように設定される。この発明によれば、マスターパラメータをスレーブパラメータよりも速く収束させることができるので、スレーブパラメータがマスターパラメータを追い越すことを、より確実に回避することができる。
この発明の他の側面によれば、内燃機関への吸気量を、要求されるエンジン出力を実現する目標吸気量に収束させるための吸気量補正値を算出する吸気量コントローラをさらに備える。マスターコントローラは、該吸気量補正値に基づいて、マスターパラメータの目標値を算出する。この発明によれば、実際の吸気量が目標吸気量に追従する精度を向上させることができる。
この発明の一実施形態によれば、吸気量コントローラは、吸気量の目標吸気量への応答速度を指定可能な応答指定型制御を実施する。該吸気量コントローラは、該応答速度を、要求されるエンジン出力の増減に従って設定する。この発明によれば、要求駆動力が増加している時は、吸気量の応答性を速くして、ドライバビリティを向上させることができる。また、一実施形態では、該応答速度を、エンジン負荷に従って設定する。この発明によれば、エンジン負荷に従って、必要なエンジン出力を早期に達成することができる。
この発明の一実施形態によると、吸気量コントローラによる吸気量補正値の演算周期は、マスターおよびスレーブコントローラによるマスターパラメータおよびスレーブパラメータの演算周期よりも長く設定される。この発明によれば、マスターおよびスレーブパラメータの目標値が、比較的遅い応答特性を持つ吸気量の変化に適合した周期で設定されるので、該吸気量に良好な精度で追従するようマスターパラメータおよびスレーブパラメータを制御することができる。また、可変圧縮比機構、可変リフト機構および可変位相機構の挙動には、フリクション等に起因する非線形性が現れることがある。マスターおよびスレーブパラメータの制御を、比較的短い周期で実行することで、このような非線形性の影響がマスターおよびスレーブパラメータに現れるのを抑制することができる。
内燃機関および制御装置の構成
次に図面を参照してこの発明の実施の形態を説明する。図1は、この発明の実施形態に従う、内燃機関(以下、エンジンと呼ぶ)およびその制御装置の全体的な構成図である。
次に図面を参照してこの発明の実施の形態を説明する。図1は、この発明の実施形態に従う、内燃機関(以下、エンジンと呼ぶ)およびその制御装置の全体的な構成図である。
電子制御ユニット(以下、「ECU」)という)1は、車両の各部から送られてくるデータを受け入れる入力インターフェース1a、車両の各部の制御を行うための演算を実行するCPU1b、読み取り専用メモリ(ROM)およびランダムアクセスメモリ(RAM)を有するメモリ1c、および車両の各部に制御信号を送る出力インターフェース1dを備えている。メモリ1cのROMには、車両の各部の制御を行うためのプログラムおよび各種のデータが格納されている。この発明に従う制御のためのプログラムは、該ROMに格納される。ROMは、EPROMのような書き換え可能なROMでもよい。RAMには、CPU1bによる演算のための作業領域が設けられる。車両の各部から送られてくるデータおよび車両の各部に送り出す制御信号は、RAMに一時的に記憶される。
エンジン2は、たとえば4サイクルのエンジンである。エンジン2は、吸気バルブ3を介して吸気管4に連結され、排気バルブ5を介して排気管6に連結されている。ECU1からの制御信号に従って、燃料を噴射する燃料噴射弁7が、吸気管4に設けられている。
エンジン2は、吸気管3から吸入される空気と、燃料噴射弁7から噴射される燃料との混合気を、燃焼室8に吸入する。燃料室8には、ECU1からの点火時期信号に従って火花を飛ばす点火プラグ9が設けられている。点火プラグ9による火花により、混合気は燃焼する。燃焼により混合気の体積は増大し、これによりピストン10を下方に押し下げる。ピストン10の往復運動は、クランク軸11の回転運動に変換される。
エンジン2には、クランク角センサ17が設けられている。クランク角センサ17は、クランクシャフトの回転に伴い、パルス信号であるCRK信号およびTDC信号をECU1に出力する。
CRK信号は、所定のクランク角(たとえば、30度)で出力されるパルス信号である。ECU1は、該CRK信号に応じ、エンジン2の回転数NEを算出する。TDC信号は、ピストン10のTDC位置に関連したクランク角度で出力されるパルス信号である。
吸気管4の上流には、エアフローメータ(AFM)20が設けられている。エアフローメータ20は、吸気管4を介して燃焼室8に吸入される空気量を検出し、それをECU1に送る。
カム角センサ21が、ECU1に接続されている。カム角センサ21は、吸気カムを介して吸気バルブ3に連結されたカムシャフト(図示せず)の回転に伴い、所定のカム角(たとえば、1度)ごとに、パルス信号であるCAM信号をECU1に出力する。ECU1は、CRK信号とCAM信号に基づいて、吸気カムのクランク軸11に対する実際の位相Cainを算出する。
アクセルペダル開度センサ22が、ECU1に接続されている。アクセルペダル開度センサ22は、アクセルペダルの開度を検出し、それをECU1に送る。
車速センサ23およびシフトセンサ24が、ECU1に接続されており、それぞれ、車速および選択されている変速比を検出し、それをECU1に送る。
可変圧縮比機構25は、ECU1からの制御信号に従って、燃焼室内の圧縮比を変更することができる機構である。可変圧縮比機構25は、任意の既知の手法により実現することができる。たとえば、油圧を利用してピストンの位置を変更することにより、運転状態に応じて圧縮比を変更する手法が提案されている(特開平08−284702号公報など)。
可変圧縮比機構25は、燃焼室の容積変化を検出するためのセンサを備える。燃焼室の容積変化はECU1に送られ、ECU1は、燃焼室の容積変化に基づいて実際の圧縮比Crを演算する。代替的に、実圧縮比Crを他の手法で測定するようにしてもよい。たとえば、クランク軸の回転角を検出し、該回転角に基づいて圧縮比を求めるようにしてもよい。
可変リフト機構26は、ECU1からの制御信号に従って、吸気バルブ3のリフト量を変更することができる機構である。可変リフト機構26は、任意の既知の手法により実現することができる。たとえば、いわゆるVTECと呼ばれる機構は、複数の異なる形状のカムを設け、運転状態に応じてカムを切り換える。選択されたカムに従い、吸排気バルブのリフト量を異なる(たとえば、特開平7−197846号公報など)。当然ながら、排気バルブ5のリフト量をも変更することができるように可変リフト機構26を構成することができる。
可変リフト機構26は、吸気バルブの実際のリフト量Liftを検出するための機構を備える。たとえば、吸気バルブを駆動するアクチュエータの変位を検出するセンサを備え、ECU1は、該検出された変位に基づいて実リフト量Liftを求めることができる。
可変位相機構(VTCと呼ばれる)27は、ECU1からの制御信号に従って、吸気バルブ3の開閉タイミングを変更することができる機構である。可変位相機構27は、任意の既知の手法により実現することができる。たとえば、油圧を利用することにより、吸気バルブの位相を進角または遅角に制御する手法が提案されている(特開2000−227033号公報など)。当然ながら、排気バルブ5の位相をも変更することができるように可変位相機構27を構成することができる。
代替的に、可変リフト機構と可変位相機構を一体的に構成してもよい。以下の説明では、可変リフト機構と可変位相機構をまとめて指すときには、自在動弁系と呼ぶことがある。
ECU1に向けて送られた信号は入力インターフェース1aに渡され、アナログ−デジタル変換される。CPU1bは、変換されたデジタル信号を、メモリ1cに格納されているプログラムに従って処理し、車両のアクチュエータに送るための制御信号を作り出す。出力インターフェース1dは、これらの制御信号を、燃料噴射弁7、点火プラグ9、およびその他の機械要素のアクチュエータに送る。
本願発明の原理
本発明の理解を助けるため、図2および図3を参照して、本願発明の原理を説明する。
本発明の理解を助けるため、図2および図3を参照して、本願発明の原理を説明する。
図2の(a)は、エンジンの運転状態に応じて設定すべき圧縮比のマップである。吸気量が大きいほど、圧縮比は低くなるよう制御される必要がある。
図2の(b)は、エンジンの運転状態に応じて設定すべき吸気バルブのリフト量のマップである。吸気量が大きいほど、リフト量は大きくなるよう制御される必要がある。
吸気量は、典型的に、運転手によって要求される駆動力(エンジン出力とも呼ばれ、典型的には、アクセルペダル開度APにより表される)に従って変化する。図2の(a)および(b)から、吸気バルブとピストンの接触は、以下のような場合に生じることがわかる。
1)要求駆動力が減少している場合において、リフト量の減少速度よりも圧縮比の増加速度の方が速い場合。
2)要求駆動力が増加している場合において、圧縮比の減少速度よりもリフト量の増加速度の方が速い場合。
図3の(a)は、バルブとピストンが衝突する場合を示す。バルブのリフト量は符号31により表され、ピストンの位置は符号32により表されている。符号35は上記1)の場合の衝突を示し、符号36は上記2)の場合の衝突を示す。
図3の(b)は、バルブとピストンが衝突しない場合を示す。要求駆動力が減少している領域37では、リフト量の減少速度の方が、圧縮比の増加速度よりも速いので、バルブとピストンが衝突するおそれはない。要求駆動力が増加している領域38では、圧縮比の減少速度の方が、リフト量の増加速度よりも速いので、バルブとピストンが衝突するおそれはない。
本願発明では、図3の(b)のように、バルブのリフト量および圧縮比を制御し、バルブとピストンの衝突を回避する。
本願発明の一実施形態では、この制御を実現するため、マスタースレーブ機構を構築する。エンジンの運転状態に基づいて、圧縮比、リフト量および位相のうちの1つをマスターパラメータとして選択する。その他のパラメータは、スレーブパラメータと呼ばれる。マスターパラメータは、吸気量が目標吸気量に収束するように制御される。スレーブパラメータは、マスターパラメータの制御が行われた結果としての該マスターパラメータの実測値に基づいて、制御される。このようなマスタースレーブ式の制御により、マスターパラメータの変化レートが、スレーブパラメータの変化レートよりも速くなるようにする。
図3の(b)のような制御を実現するには、以下のa)およびb)のようにマスター/スレーブパラメータを決定すればよい。
a)要求される駆動力が増加している場合において、圧縮比をマスターパラメータとし、リフト量をスレーブパラメータとする。
b)要求される駆動力が減少している場合において、リフト量をマスターパラメータとし、圧縮比をスレーブパラメータとする。
リフト量の変化に対する吸気量の応答性は、位相の変化に対する吸気量の応答性よりも良好である。したがって、エンジンが極低負荷にない時は、位相は、リフト量の実測値に基づいて制御される。マスタースレーブ制御により、リフト量が、ピストンとバルブの衝突を回避するよう制御されるので、このような位相の制御によってピストンとバルブが衝突するおそれはない。
一方、エンジンが極低負荷のとき、微少の吸気量を制御する必要がある。微少の吸気量を制御するには、高精度(たとえば、マイクロメートルのオーダー)でリフト量を変化させる必要がある。このような高精度のリフト量の制御を可変リフト機構により実現することは、困難な場合がある。可変位相機構は、位相を微少に(たとえば、1度等)変化させることができ、よって吸気量を微少に変化させることができる。したがって、エンジンが極低負荷にある場合には、リフト量を、位相の実測値に基づいて制御する。
図4を参照して、マスターおよびスレーブパラメータを決定するためのルールについて具体的に説明する。ここで、実線は実測値を示し、点線は目標値を示す。
Mode1は、エンジンが極低負荷であり、要求駆動力が増加しているモードを示す。圧縮比は低くなるよう制御され、リフト量は増加するよう制御され、位相は遅角側へと制御される。要求駆動力が増加している状態では、圧縮比をマスターパラメータに選択し、リフト量の増加レートよりも圧縮比の減少レートの方が速くなるようにする。吸気量が目標吸気量に収束するように、目標圧縮比Cr_cmdが設定される。可変圧縮比機構25は、実圧縮比Crが目標圧縮比Cr_cmdに達するよう動作する。エンジンが極低負荷にあるので、前述したように、リフト量に先だって位相が制御される。目標位相Cain_cmdが、可変圧縮比機構25により達成された実圧縮比Crに基づいて設定される。可変位相機構27は、実位相Cainが目標位相Cain_cmdに達するよう動作する。次に、目標リフト量Lift_cmdが、可変位相機構27により達成された実位相Cainに基づいて設定される。可変リフト機構26は、リフト量Liftが目標リフト量Lift_cmdに達するよう動作する。
Mode3は、エンジンが低負荷から高負荷に変化し、要求駆動力が増加しているモードを示す。圧縮比は低くなるよう制御され、リフト量は増加するよう制御され、位相は遅角側へと制御される。Mode3では、Mode1と同様に、圧縮比がマスターパラメータとして選択され、リフト量の増加レートよりも圧縮比Crの減少レートの方が速くなるようにする。吸気量が目標吸気量に収束するように、目標圧縮比Cr_cmdが設定される。可変圧縮比機構25は、実圧縮比Crが目標圧縮比Cr_cmdに達するよう動作する。エンジンが極低負荷ではないので、リフト量が、位相よりも先に制御される。目標リフト量Lift_cmdが、可変圧縮比機構25により達成された実圧縮比Crに基づいて設定される。可変リフト機構26は、実リフト量Liftが目標リフト量Lift_cmdに達するよう動作する。次に、目標位相Cain_cmdが、可変リフト機構26により達成された実リフト量Liftに基づいて設定される。可変位相機構27は、実位相Cainが目標位相Cain_cmdに達するよう動作する。
Mode4は、エンジンが高負荷から低負荷に変化し、要求駆動力が減少しているモードを示す。圧縮比は高くなるよう制御され、リフト量は減少するよう制御され、位相は進角側へと制御される。要求駆動力が減少している状態では、リフト量Liftをマスターパラメータとして選択し、圧縮比Crの増加レートよりもリフト量の減少レートの方が速くなるようにする。吸気量が目標吸気量に収束するように、目標リフト量Lift_cmdが設定される。可変リフト機構26は、実リフト量Liftが目標リフト量Lift_cmdに達するよう動作する。目標位相Cain_cmdと目標圧縮比Cr_cmdが、可変リフト機構26により達成された実リフト量Liftに基づいて設定される。可変位相機構27は、実位相Cainが目標位相Cain_cmdに達するよう動作し、可変圧縮比機構25は、実圧縮比Crが目標圧縮比Cr_cmdに達するよう動作する。
Mode2は、エンジンが極低負荷であり、要求駆動力が減少しているモードを示す。圧縮比は高くなるよう制御され、リフト量は減少するよう制御され、位相は進角側へと制御される。エンジンが極低負荷にあるので、位相がマスターパラメータとして選択される。リフト量は位相に追従するよう制御され、圧縮比はリフト量に追従するよう制御される。こうして、圧縮比の増加レートよりもリフト量の減少レートの方が速くなるようにする。吸気量が目標吸気量に収束するように、目標位相Cain_cmdが設定される。可変位相機構27は、実位相Cainが目標位相Cain_cmdに達するよう動作する。目標リフト量Lift_cmdが、可変位相機構27により達成された実位相Cainに基づいて設定される。可変リフト機構26は、実リフト量Liftが目標リフト量Lift_cmdに達するよう動作する。次に、目標圧縮比Cr_cmdが、可変リフト機構26により達成された実リフト量Liftに基づいて設定される。可変圧縮比機構25は、実圧縮比Crが目標圧縮比Cr_cmdに達するよう動作する。
図5は、上記の、Mode1〜Mode4におけるマスターおよびスレーブパラメータの決定手法をまとめて一覧にしたものである。
スレーブパラメータの目標値が、マスターパラメータの実測値に基づいて決定されており、マスターパラメータの目標値に基づいては決定されない点に注意されたい。この効果を、図6および図7を参照して説明する。図において、実測値は実線で示され、目標値は点線で示されている。
図6は、スレーブパラメータの目標値を、マスターパラメータの目標値に基づいて決定する場合を示す。この例では、マスターパラメータは圧縮比であり、リフト量および位相はスレーブパラメータである。目標圧縮比Cr_cmdは、所望の要求駆動力を達成するよう算出される。目標リフト量Lift_cmdは、目標圧縮比Cr_cmdに基づいて算出される。
時間t1〜t2にわたり、外乱が印加されている。外乱の印加により、実圧縮比Crが目標値Cr_cmdに追従することができない状態が生じている(領域41)。実圧縮比Crは、目標値Cr_cmdよりも高い状態に至っている。
目標リフト量Lift_cmdは、目標圧縮比Cain_cmdに基づいて決定される。目標リフト量Lift_cmdに収束するように、実リフト量Liftが制御される。その結果、領域42に示されるように、高圧縮比において高リフトの状態に至り、バルブとピストンが衝突する。このように、マスターパラメータの目標値に基づいてスレーブパラメータの目標値を決定すると、外乱等が印加された場合に、ピストンとバルブが衝突するおそれがある。
図7は、スレーブパラメータの目標値を、マスターパラメータの実測値に基づいて決定する場合を示す。時間t1〜t2にわたり、外乱が印加されている。目標圧縮比Cr_cmdは、所望の要求駆動力を達成するよう算出される。目標リフト量Lift_cmdは、実際に検出された圧縮比Crに基づいて算出される。
外乱の印加により、実圧縮比Crが目標値Cr_cmdよりも高い状態が生じている(領域45)。目標リフト量Lift_cmdは、検出された実圧縮比Crに基づいて決定されているので、高圧縮比において低リフトの状態に至り、よってバルブとピストンが衝突するおそれはない(領域46)。
このように、スレーブパラメータの目標値を、マスターパラメータの実測値に基づいて算出することにより、マスターパラメータの実測値と目標値との間に偏差が生じても、バルブとピストンの衝突を回避することができる。
マスタースレーブ制御装置
図8は、本願発明の一実施形態に従う、マスタースレーブ制御装置の機能ブロック図である。各機能ブロックは、典型的には、メモリ1cに格納されたプログラムにより実施される。
図8は、本願発明の一実施形態に従う、マスタースレーブ制御装置の機能ブロック図である。各機能ブロックは、典型的には、メモリ1cに格納されたプログラムにより実施される。
目標吸気量算出部51は、エンジンの現在の運転状態に基づいて、目標吸気量Gcyl_cmdを算出する。たとえば、車速VP、アクセルペダルの開度AP、変速比SFT等に基づいて、目標吸気量Gcyl_cmdを決定することができる。
マスタースレーブ切換部52は、要求駆動力の増減と、エンジン負荷の大きさとに基づいて、図5に示されるようなルールに従い、Mode1〜4のうちの1つを選択する。マスタースレーブ切換部52は、選択されたモードを示すモード信号Mode_stateを出力する。
この実施例では、マスタースレーブ切換部52は、目標吸気量Gcyl_cmdの変化から、要求駆動力が増大しているのか、それとも減少しているのかを判断する。また、この実施例では、エンジン負荷の大きさを判断するのに、実際の位相と実際のリフト量を用いる。代替的に、要求駆動力の増減およびエンジン負荷の大きさを判断するのに、他の運転状態パラメータを用いてもよい。
選択されたモードに従って、マスターパラメータおよびスレーブパラメータが決まる。以下の説明では、圧縮比コントローラ54、リフトコントローラ55および位相コントローラ56のうち、マスターパラメータを制御するコントローラをマスターコントローラと呼び、スレーブパラメータを制御するコントローラをスレーブコントローラと呼ぶことがある。
吸気量コントローラ53は、エンジンに実際に吸入される空気量Gcylを、目標吸気量Gcyl_cmdに収束させるための補正値Gcyl_cmd_cpを算出する。この補正値が、マスターコントローラへの制御入力となる。
図に示されるように、モード信号Mode_stateは、吸気量コントローラ53に渡されるのが好ましい。吸気量コントローラ53は、どのモードが選択されたかに従い、実吸気量Gcylの目標吸気量Gcyl_cmdへの収束速度を変更することができる。
モード信号Mode_stateは、また、各コントローラ54〜56にも送られる。値1を持つ信号Mode_stateがマスタースレーブ切り換え部52から配信された場合を説明する。Mode1におけるマスターパラメータは圧縮比である。圧縮比コントローラ54は、補正値Gcyl_cmd_cpに基づいてGcyl−Crマスターテーブルを参照し、目標圧縮比Cr_cmdを求める。Gcyl−Crマスターテーブルの一例が、図9の(a)に示されている。圧縮比コントローラ54は、実圧縮比Crが目標圧縮比Cr_cmdに収束するように、可変圧縮比機構25を駆動するための指令値U_Crを算出する。
位相コントローラ56は、指令値U_Crに従って可変圧縮比機構25が駆動された時の結果としての圧縮比Crを受け取る。位相コントローラ56は、実圧縮比Crに基づいてCr−Cainテーブルを参照し、目標位相Cian_cmdを求める。Cr−Cainテーブルの一例が、図11の(b)に示されている。位相コントローラ56は、実位相Cainが目標位相Cain_cmdに収束するように、可変位相機構27を駆動するための指令値U_Cainを算出する。
リフトコントローラ55は、指令値U_Cainに従って可変位相機構27が駆動された時の結果としての位相Cainを受け取る。リフトコントローラ55は、実位相Cainに基づいてCain−Liftテーブルを参照し、目標リフト量Lift_cmdを求める。Cain−Liftテーブルの一例が、図10の(c)に示されている。リフトコントローラ55は、実リフト量Liftが目標リフト量Lift_cmdに収束するように、可変リフト機構26を駆動するための指令値U_Liftを算出する。
こうして、図4および図5のMode1に示される制御が達成される。
次に、値2を持つMode_state信号がマスタースレーブ切り換え部52から配信された場合を説明する。Mode2におけるマスターパラメータは位相である。位相コントローラ56は、補正値Gcyl_cmd_cpに基づいてGcyl−Cainマスターテーブルを参照し、目標位相Cain_cmdを求める。Gcyl−Cainマスターテーブルの一例が、図11の(a)に示されている。位相コントローラ56は、実位相Cainが目標位相Cain_cmdに収束するように、可変位相機構27を駆動するための指令値U_Cainを算出する。
リフトコントローラ55は、指令値U_Cainに従って可変位相機構27が駆動された時の結果としての位相Cainを受け取る。リフトコントローラ55は、実位相Cainに基づいてCain−Liftテーブルを参照し、目標リフト量Lift_cmdを求める。Cain−Liftテーブルの一例が、図10の(c)に示されている。リフトコントローラ55は、実リフト量Liftが目標リフト量Lift_cmdに収束するように、可変リフト機構26を駆動するための指令値U_Liftを算出する。
圧縮比コントローラ54は、指令値U_Liftに従って可変リフト機構26が駆動された時の結果としてのリフト量Liftを受け取る。圧縮比コントローラ54は、実リフト量Liftに基づいてLift−Crテーブルを参照し、目標圧縮比Cr_cmdを求める。Lift−Crテーブルの一例が、図9の(b)に示されている。圧縮比コントローラ64は、実圧縮比Crが目標圧縮比Cr_cmdに収束するように、可変圧縮比機構25を駆動するための指令値U_Crを算出する。
こうして、図4および図5のMode2に示される制御が達成される。
次に、値3を持つMode_state信号がマスタースレーブ切り換え部52から配信された場合を説明する。Mode3におけるマスターパラメータは圧縮比である。圧縮比コントローラ54は、補正値Gcyl_cmd_cpに基づいてGcyl−Crマスターテーブルを参照し、目標圧縮比Cr_cmdを求める。Gcyl−Crマスターテーブルの一例が、図9の(a)に示されている。圧縮比コントローラ54は、実圧縮比Crが目標圧縮比Cr_cmdに収束するように、可変圧縮比機構25を駆動するための指令値U_Crを算出する。
リフトコントローラ55は、指令値U_Crに従って可変圧縮比機構25が駆動された時の結果としての圧縮比Crを受け取る。リフトコントローラ55は、実圧縮比Crに基づいてCr−Liftテーブルを参照し、目標リフト量Lift_cmdを求める。Cr−Liftテーブルの一例が、図10の(b)に示されている。リフトコントローラ55は、実リフト量Liftが目標リフト量Lift_cmdに収束するように、可変リフト機構26を駆動するための指令値U_Liftを算出する。
位相コントローラ56は、指令値U_Liftに従って可変リフト機構26が駆動された時の結果としてのリフト量Liftを受け取る。位相コントローラ56は、実リフト量Liftに基づいてLift−Cainテーブルを参照し、目標位相Cain_cmdを求める。Lift−Cainテーブルの一例が、図11の(c)に示されている。位相コントローラ56は、実位相Cainが目標位相Cain_cmdに収束するように、可変位相機構27を駆動するための指令値U_Cainを算出する。
こうして、図4および図5のMode3に示される制御が達成される。
次に、値4を持つMode_state信号がマスタースレーブ切り換え部52から配信された場合を説明する。Mode4におけるマスターパラメータはリフト量である。
リフトコントローラ55は、補正値Gcyl_cmd_cpに基づいてGcyl−Liftマスターテーブルを参照し、目標リフト量Lift_cmdを求める。Gcyl−Liftマスターテーブルの一例が、図10の(a)に示されている。リフトコントローラ55は、実リフト量Liftが目標リフト量Lift_cmdに収束するように、可変リフト機構26を駆動するための指令値U_Liftを算出する。
位相コントローラ56は、指令値U_Liftに従って可変リフト機構26が駆動された時の結果としてのリフト量Liftを受け取る。位相コントローラ56は、実リフト量Liftに基づいてLift−Cainテーブルを参照し、目標位相Cain_cmdを求める。Lift−Cainテーブルの一例が、図11の(c)に示されている。位相コントローラ56は、実位相Cainが目標位相Cain_cmdに収束するように、可変位相機構27を駆動するための指令値U_Cainを算出する。
圧縮比コントローラ54は、指令値U_Liftに従って可変リフト機構26が駆動された時の結果としてのリフト量Liftを受け取る。圧縮比コントローラ54は、実リフト量Liftに基づいてLift−Crテーブルを参照し、目標圧縮比Cr_cmdを求める。Lift−Crテーブルの一例が、図9の(b)に示されている。圧縮比コントローラ54は、実圧縮比Crが目標圧縮比Cr_cmdに収束するように、可変圧縮比機構25を駆動するための指令値U_Crを算出する。
こうして、図4および図5のMode4に示される制御が達成される。
次に、図8に示される各機能ブロックについて説明する。
吸気量コントローラ
吸気量コントローラ53は、実際の吸気量を目標吸気量に収束させるために、マスタースレーブ切換部52により選択されたマスターコントローラへの制御入力、すなわち上記の補正値Gcyl_cmd_cpを算出する。この制御入力の算出手法について説明する。
吸気量コントローラ53は、実際の吸気量を目標吸気量に収束させるために、マスタースレーブ切換部52により選択されたマスターコントローラへの制御入力、すなわち上記の補正値Gcyl_cmd_cpを算出する。この制御入力の算出手法について説明する。
エンジンの吸気量についての動特性について考えると、今回のサイクルにおける吸気量Gcyl(n)は、吸気量の過去値Gcyl(n-1)およびGcyl(n-2)に依存して決まり、式(1)のように表すことができる。nは、吸気量コントローラ53によって実施される演算サイクルを識別する識別子である。
Gcylは、エアフローメータ20(図1)により検出された吸気量を示す。dgiは、補正値Gcyl_cmd_cpがマスターコントローラに入力されてから、該補正値を反映した吸気量が実際にエンジンに吸入されるまでのむだ時間を示す。Ag1i、Ag2iおよびBg1iは、モデルパラメータである。
どのコントローラがマスターとして選択されるかに従い、吸気量コントローラ53の制御対象についての伝達関数が異なりうる。したがって、むだ時間およびモデルパラメータの値は、選択されたモードに従って決定されるのが好ましい。この実施例では、dgi、Ag1i、Ag2iおよびBg1iの表記中の“i”は、選択されたモードの番号を表す。たとえば、dg1、Ag11、Ag21、およびBg11は、Mode1についてのむだ時間およびモデルパラメータを表す。
吸気量コントローラ53の詳細な機能ブロック図を図12に示す。状態予測器71は、検出された吸気量Gcylに基づいて、上記のむだ時間dgiを補償するように、吸気量の予測値Pre_Gcylを算出する。2自由度スライディングモードコントローラ72は、応答指定型制御を実施し、予測値Pre_Gcylが目標値Gcyl_cmd(正確には、後述するように、Gcyl_cmd_fである)に収束するように、制御入力Gcyl_cmd_cpを算出する。同定器73は、式(1)に示されるモデルパラメータAg1i、Ag2iおよびBg1i(正確には、後述するように、モデルパラメータAg1i、Ag2iおよびBg1iに基づくパラメータαg1i、αg2i、βg1i、...γg1i)を逐次的に同定する。モデルパラメータAg1i、Ag2iおよびBg1iを同定するのに、基準値を用いる。この基準値は、モード毎に、予めメモリ1cに記憶されている。スケジューラ74は、モード信号Mode_stateが示す値に基づいて、選択されたモードについての基準値を抽出し、それを同定器73に渡す。
以下、それぞれの機能ブロックについて詳細を説明する。まず、状態予測器71について説明する。
式(2)は、観測不可能な未来値Gcyl(n+dgi-2)およびGcyl(n+dgi-3)を含んでいるので、これらの未来値を消去する。消去は、以下に示すような再帰的な計算によって求めることができる。式(3)は、吸気量Gcylの予測式を表す。
予測式(3)に、モデル化誤差および予測誤差を補償するための外乱推定値γg1iを含める。式(4)が、状態予測器71によって実行される、予測値Pre_Gcylを求めるための式である。モデルパラメータαg1i、αg2i、βg1i、...γg1iの表記中の“i”も、モード番号を表すことに注意されたい。
次に、2自由度スライディングモードコントローラ72について説明する。
2自由度スライディングモードコントローラ72は、2自由度スライディングモード制御を用いて、制御入力Gcyl_cmd_cpを算出する。スライディングモード制御は、制御量の収束速度を指定することができる応答指定型制御である。2自由度スライディングモード制御は、スライディングモード制御を発展させた形態を持ち、制御量の目標値に対する追従速度と、外乱が印加された時の制御量の収束速度とを、個別に指定することができる。前者を、目標値応答指定パラメータPOLEgc_fiと呼び、後者を、外乱抑制のための応答指定パラメータPOLEgciと呼ぶ。
式(5)に従い、目標値応答指定パラメータPOLEgc_fiを用いて、目標値Gcyl_cmdに一次遅れフィルタ(ローパスフィルタ)を適用する。目標値応答指定パラメータPOLEgc_fiは、−1<POLEgc_fi<0を満たすよう設定される。
式(5)に示されるように、目標値応答指定パラメータPOLEgc_fiの値により、目標値Gcyl_cmdの軌道が修正され、新たな目標値Gcyl_cmd_fが設定される。この新たな目標値Gcyl_cmd_fに予測値Pre_Gcylが収束するように、制御入力Gcyl_cmd_cpが算出される。応答指定パラメータPOLEgc_fiによって目標値Gcyl_cmdの軌道をどのように修正するかに従い、予測値Pre_Gcylの目標値Gcyl_cmd_cpへの追従速度を制御することが可能となる。
2自由度スライディングモード制御を実施するため、切り換え関数σgcを定義する。切り換え関数σgcにより、予測値Pre_Gcylの目標値Gcyl_cmd_fに対する偏差の収束挙動が規定される。E_gcは、予測値Pre_Gcylと目標値Gcyl_cmd_fの偏差である。後述する等価制御入力の演算のため、偏差E_gcは、目標値の前回値Gcyl_cmd_f(n-1)を用いて算出される。外乱抑制のための応答指定パラメータPOLEgciは、−1<POLEgci<0を満たすよう設定される。
式(7)は、入力の無い一次遅れ系を示す。すなわち、スライディングモードコントローラ72は、制御量E_gcを、式(7)に示される一次遅れ系に拘束するよう制御する。
図13は、縦軸にE_gc(n)および横軸にE_gc(n-1)を有する位相平面を示す。位相平面には、式(7)によって表現される切り換え線81が示されている。点82を状態量(E_gc(n-1), E_gc(n))の初期値と仮定すると、スライディングモードコントローラ72は、該状態量を、切り換え線81上に載せて該切り換え線81上に拘束させる。状態量が入力の無い一次遅れ系に拘束されるので、状態量は、時間の経過とともに位相平面の原点(すなわち、E_gc(n), E_gc(n-1)=0)に自動的に収束する。状態量を切り換え線81上に拘束することにより、外乱の影響を受けることなく、状態量を原点に収束させることができる。
図14の符号83、84および85は、外乱抑制のための応答指定パラメータPOLEgciが、それぞれ、−1、−0.8、−0.5の場合の偏差E_gcの収束速度を示す。応答指定パラメータPOLEgciの絶対値が小さくなるにつれ、偏差E_gcの収束速度は速くなる。
スライディングモードコントローラ72は、制御入力Gcyl_cmd_cpを、式(8)に従って算出する。Ueq_gcは等価制御入力であり、状態量を切り換え線上に拘束するための入力である。Urch_gcは到達則入力であり、状態量を切り換え線上に載せるための入力である。
次に、式(11)に従って到達則入力Urch_gcを算出する。Krchgciは、フィードバックゲインを示す。フィードバックゲインKrchgciの値は、制御量の安定性および速応性等を考慮して、シミュレーション等を介して予め同定される。
こうして、等価制御入力Ueq_gcと到達則入力Urch_gcとの和である制御入力Gcyl_cmd_cpが、吸気量コントローラ53から出力される。
目標値応答指定パラメータPOLEgc_fi、外乱抑制のための応答指定パラメータPOLEgci、フィードバックゲインKrchgciにおける表記中の“i”がモード番号を表す。各モードにおけるこれらのパラメータの値し、これらの値が、選択されたモードに従って設定されるのが好ましい。
この実施例では、目標値応答指定パラメータPOLEgc_fi、外乱抑制のための応答指定パラメータPOLEgciおよびフィードバックゲインKrchgciの各モードにおける値は、以下のような関係にある。
−1<POLEgc_f2<POLEgc_f1<POLEgc_f4<POLEgc_f3<0
−1<POLEgc2<POLEgc1<POLEgc4<POLEgc3<0
0<Krchgc2<Krchgc1<Krchgc4<Krchgc3
上記の関係から明らかなように、Mode3、4、1および2の順に、制御量の収束速度が速くなるように設定される。すなわち、要求駆動力が増加する時は、要求駆動力が減少する時に比べ、収束速度を速くする。こうして、要求駆動力が増加している時は、吸気量の応答性を速くして、ドライバビリティを向上させることができる。また、エンジンが低負荷〜高負荷にあるときは、極低負荷にあるときに比べ、収束速度を速くする。これにより、エンジンが通常の運転状態にあるときは、早期に所望のエンジン出力を生成して、ドライバビリティを向上させることができる。
−1<POLEgc2<POLEgc1<POLEgc4<POLEgc3<0
0<Krchgc2<Krchgc1<Krchgc4<Krchgc3
上記の関係から明らかなように、Mode3、4、1および2の順に、制御量の収束速度が速くなるように設定される。すなわち、要求駆動力が増加する時は、要求駆動力が減少する時に比べ、収束速度を速くする。こうして、要求駆動力が増加している時は、吸気量の応答性を速くして、ドライバビリティを向上させることができる。また、エンジンが低負荷〜高負荷にあるときは、極低負荷にあるときに比べ、収束速度を速くする。これにより、エンジンが通常の運転状態にあるときは、早期に所望のエンジン出力を生成して、ドライバビリティを向上させることができる。
むだ時間dgiの大きさは、マスターコントローラの種類に応じて適切な値に決定される。この実施例では、以下のような関係を満たすように、各モードのむだ時間は設定される。
dg4<dg2<dg3<dg1
次に、同定器73について説明する。同定器73は、式(4)パラメータαg1i、αg2i、βg1i、βg2i、…βgdgi-1i、γg1iを同定する。これらのパラメータは、式(3)から明らかなように、モデル式(1)のモデルパラメータAg1i、Ag2i、およびBg1iに基づいており、よってこれらのパラメータを同定することにより、式(1)のモデルパラメータが同定される。
次に、同定器73について説明する。同定器73は、式(4)パラメータαg1i、αg2i、βg1i、βg2i、…βgdgi-1i、γg1iを同定する。これらのパラメータは、式(3)から明らかなように、モデル式(1)のモデルパラメータAg1i、Ag2i、およびBg1iに基づいており、よってこれらのパラメータを同定することにより、式(1)のモデルパラメータが同定される。
同定には、最小2乗法および最尤法などの既知の手法を用いることができる。この発明の一実施形態では、より効率的な手法であるδ修正法を用いる。δ修正法については、本願の出願人による、特許第3304845号公報に詳細が記載されている。ここでは、簡単に、δ修正法を用いてこれらのパラメータを同定する手法について説明する。
δ修正法に従う逐次型同定アルゴリズムは、式(12)のように表される。同定すべきパラメータのベクトルθgc(n)の基準値θgc_baseは、モード毎に予め設定され(基準値の各要素の“i”が、モード番号を表している)、メモリ1cに記憶されている。スケジューラ74は、モード信号Mode_stateの値に従って、対応する基準値θgc_base(n)をメモリ1cから抽出し、同定器73に渡す。同定器73は、基準値θgc_base(n)と、その更新成分dθgc(n)とを加算することにより、パラメータベクトルθgc(n)を算出する。
δは、式(17)で表される忘却係数ベクトルである。忘却係数ベクトルδの各要素δ1、δ2、…は、ゼロより大きく1より小さい値に設定される。ただし、制御量の目標値に対する定常偏差をゼロとするために、δ1、δ2、…のうちのいずれか1つを値1に設定するのが好ましい。
δ修正法において、式(13)に含まれる同定誤差ide_gc(n)は、式(18)により表される。Gcyl_hatは、予測式(4)と、パラメータベクトルの前回値θgc(n-1)とに基づいて算出される。同定器73は、予測式に基づいて算出された吸気量Gcyl_hatと、実吸気量Gcylとの差、すなわち同定誤差ide_gcがゼロになるように、パラメータベクトルθgcを決定する。
δ修正法では、上記の式(12)に示されるように、パラメータベクトルθgc(n)は、その基準値θgc_base(n)と、その更新分dθgc(n)との和で表される。制御対象の定常状態が継続したとき、モデルパラメータベクトルθgcが基準値θgc_baseに収束するので、パラメータベクトルのドリフトを回避することができる。
式(20)の係数λ1およびλ2の設定により、同定アルゴリズムの種類が、以下のように決まる。
λ1=1、λ2=0:固定ゲインアルゴリズム
λ1=1、λ2=1:最小2乗法アルゴリズム
λ1=1、λ2=λ:漸減ゲインアルゴリズム(λは、0、1以外の所定値)
λ1==λ、λ2=1:重み付き最小2乗法アルゴリズム(λは、0、1以外の所定値)
各コントローラの構成
圧縮比コントローラ54、リフトコントローラ55および位相コントローラ56は、吸気量コントローラ53の構成と非常に似ているので、簡単に説明する。
λ1=1、λ2=1:最小2乗法アルゴリズム
λ1=1、λ2=λ:漸減ゲインアルゴリズム(λは、0、1以外の所定値)
λ1==λ、λ2=1:重み付き最小2乗法アルゴリズム(λは、0、1以外の所定値)
各コントローラの構成
圧縮比コントローラ54、リフトコントローラ55および位相コントローラ56は、吸気量コントローラ53の構成と非常に似ているので、簡単に説明する。
圧縮比コントローラ54は、圧縮比Crを目標圧縮比Cr_cmdに収束させるために、可変圧縮比機構25を駆動するための指令値U_Crを算出する。圧縮比コントローラ54は、前述したように、圧縮比がマスターパラメータとして選択されるMode1およびMode3の場合には、吸気量コントローラ53から受け取った補正値Gcyl_cmd_cpに基づいて目標圧縮比Cr_cmdを算出する。Mode2および4の場合には、圧縮比コントローラ54は、実リフト量Liftに基づいて、目標圧縮比Cr_cmdを算出する。
dcrは、圧縮比コントローラ54からの指令値U_Crが可変圧縮比機構25に入力されてから、該指令値に基づく圧縮比が実際に出力されるまでのむだ時間を示す。A1cr、A2crおよびB1crは、モデルパラメータである。
圧縮比コントローラ54の詳細な機能ブロック図を図15に示す。状態予測器91は、検出された圧縮比Crに基づいて、上記のむだ時間dcrを補償するように、圧縮比の予測値Pre_Crを算出する。
メモリ1cには、モード毎に、目標値応答指定パラメータPOLEcr_fi、外乱抑制のための応答指定パラメータPOLEcriおよびフィードバックゲインKrchcriが記憶されている。これらのパラメータの表記中の“i”は、モード番号を示す。コントローラパラメータスケジューラ95は、選択されたモードを示す信号Mode_stateを受け取り、該モード信号の値に従って、対応するパラメータをメモリ1cからを抽出し、2自由度スライディングモードコントローラ92に渡す。
2自由度スライディングモードコントローラ92は、図8を参照して説明したように、受け取ったモード信号Mode_stateに従って、所定のマップ(図9の(a)または(b))を参照することにより、目標値Cr_cmdを決定する。2自由度スライディングモードコントローラ92は、コントローラパラメータスケジューラ95から受け取った目標値応答指定パラメータPOLEcr_fi、外乱抑制のための応答指定パラメータPOLEcriおよびフィードバックゲインKrchcriを用いて、前述した応答指定型制御を実施する。2自由度スライディングモードコントローラ92は、予測値Pre_Crが目標値Cr_cmd(正確には、後述するように、Cr_cmd_fである)に収束するように、制御入力U_Crを算出する。
同定器93は、吸気量コントローラ53の同定器73と同様の手法で、式(22)に示されるモデルパラメータA1cr、A2crおよびB1cr(正確には、後述するように、モデルパラメータA1cr、A2crおよびB1crに基づくパラメータα1cr、α2cr、β1cr,,,γ1cr)を逐次的に同定する。パラメータA1cr、A2crおよびB1crを同定するのに、基準値を用いる。この基準値は、予めマップとしてメモリ1cに記憶されている。モデルパラメータスケジューラ94は、これらの基準値を抽出して、同定器93に渡す。
2自由度スライディングモードコントローラ92は、式(24)に従い、スケジューラ95から受け取った目標値応答指定パラメータPOLEcr_fiを用いて、目標値Cr_cmdに一次遅れフィルタ(ローパスフィルタ)を適用する。目標値応答指定パラメータPOLEcr_fiは、−1<POLEcr_fi<0を満たすよう設定される。
2自由度スライディングモードコントローラ92は、式(25)に示すように、切り換え関数σcrを定義する。E_crは、予測値Pre_Crと目標値Cr_cmdの偏差である。外乱抑制のための応答指定パラメータPOLEcriは、−1<POLEcri<0を満たすよう設定される。
2自由度スライディングモードコントローラ92は、切り換え関数σcrがゼロとなるように制御入力U_Crを決定する。制御入力U_Crは、式(26)に従って算出される。Ueq_crは等価制御入力であり、状態量を切り換え線上に拘束するための入力である。Urch_crは到達則入力であり、状態量を切り換え線上に載せるための入力である。
次に、式(28)に従って到達則入力Urch_crを算出する。Krchcriは、フィードバックゲインを示す。フィードバックゲインKrchcriの値は、制御量の安定性および速応性等を考慮して、シミュレーション等を介して予め同定される。
こうして、等価制御入力Ueq_crと到達則入力Urch_crとの和である制御入力U_Crが圧縮比コントローラ54から出力され、可変圧縮比機構25に送られる。
好ましくは、目標値応答指定パラメータPOLEcr_fi、外乱抑制のための応答指定パラメータPOLEcri、およびフィードバックゲインKrchcriのモード毎の値は、以下の関係を有する。
−1<POLEcr_f2、POLEcr_f4<POLEcr_f1、POLEcr_f3<0
−1<POLEcr2、POLEcr4<POLEcr1、POLEcr3<0
0<Krchcr2、Krchcr4<Krchcr1、Krchcr3
これらの関係に示されるように、圧縮比がマスターパラメータとして選択されるMode1およびMode3では、圧縮比がスレーブパラメータとして選択されるMode2およびMode4に比べて、制御量E_crの収束速度が速くなるように、これらのパラメータ値は規定される。このようにパラメータ値を規定することにより、マスターパラメータをスレーブパラメータよりも早く収束させることができる。
−1<POLEcr2、POLEcr4<POLEcr1、POLEcr3<0
0<Krchcr2、Krchcr4<Krchcr1、Krchcr3
これらの関係に示されるように、圧縮比がマスターパラメータとして選択されるMode1およびMode3では、圧縮比がスレーブパラメータとして選択されるMode2およびMode4に比べて、制御量E_crの収束速度が速くなるように、これらのパラメータ値は規定される。このようにパラメータ値を規定することにより、マスターパラメータをスレーブパラメータよりも早く収束させることができる。
前述したように、スレーブパラメータを、マスターパラメータの実測値に追従させることにより、マスターパラメータの変化レートをスレーブパラメータの変化レートよりも速くさせることができる。このようなマスタースレーブ制御に加え、目標値応答指定パラメータ、外乱抑制のための応答指定パラメータ、およびフィードバックゲインにより、マスターパラメータの収束速度を、スレーブパラメータの収束速度よりも速くし、より確実に、スレーブパラメータがマスターパラメータを追い越すことを回避する。
次に、同定について説明する。モデルパラメータスケジューラ94は、同定すべきパラメータベクトルθcr(k)の基準値θcr_base(k)をメモリ1cから抽出して、同定器93に渡す。同定器93は、吸気量コントローラ53の同定器73と同様の手法で、パラメータベクトルθcrを同定する。同定するための式(29)〜(38)を、以下に示す。
忘却係数ベクトルδの各要素δ1、δ2、…は、ゼロより大きく1より小さい値に設定される。しかしながら、前述したように、δ1、δ2、…のうちのいずれか1つを値1に設定するのが好ましい
式(30)に含まれる同定誤差ide_cr(k)は、式(35)により表される。Cr_hatは、予測式(23)と、パラメータベクトルの前回値θcr(k-1)とに基づいて算出される。同定器93は、予測式に基づいて算出された圧縮比Cr_hatと、実圧縮比Crとの差、すなわち同定誤差ide_crがゼロになるように、パラメータベクトルθcrを決定する。
式(30)に含まれる同定誤差ide_cr(k)は、式(35)により表される。Cr_hatは、予測式(23)と、パラメータベクトルの前回値θcr(k-1)とに基づいて算出される。同定器93は、予測式に基づいて算出された圧縮比Cr_hatと、実圧縮比Crとの差、すなわち同定誤差ide_crがゼロになるように、パラメータベクトルθcrを決定する。
リフト量Liftについての動特性は、圧縮比についての式(22)と同様にモデル化されることができる。リフトコントローラ55は、図15に示される可変圧縮比コントローラと同様の構成を有し、同様の手法で、可変リフト機構26に入力すべき指令値U_Liftを算出する。
リフト量についての目標値応答指定パラメータ、外乱抑制のための応答指定パラメータ、およびフィードバックゲインは、以下の関係を有する。
−1<POLElift_f1、POLElift_f2、POLElift_f3<POLElift_f4<0
−1<POLElift1、POLElift2、POLElift3<POLElift4<0
0<Krchlift1、Krchlift2、Krchlift3<Krchlift4
−1<POLElift1、POLElift2、POLElift3<POLElift4<0
0<Krchlift1、Krchlift2、Krchlift3<Krchlift4
これらの関係に示されるように、リフト量がマスターパラメータとして選択されるMode4では、リフト量がスレーブパラメータとして選択されるMode1、2および3に比べて、制御量E_lift(=予測値Pre_Lift(k)―目標値Lift_cmd_f(k))の収束速度が速くなるように、これらのパラメータ値は規定される。こうして、Mode4では、マスターパラメータであるリフト量を、スレーブパラメータよりも早く収束させる。
位相Cainについての動特性は、圧縮比についての式(22)と同様にモデル化されることができる。位相コントローラ56は、図15に示される可変圧縮比コントローラと同様の構成を有し、同様の手法で、可変位相機構27に入力すべき指令値U_Cainを算出する。
位相についての目標値応答指定パラメータ、外乱抑制のための応答指定パラメータ、およびフィードバックゲインは、以下の関係を有する。
−1<POLEcain_f1、POLEcain_f3、POLEcain_f4<POLEcain_f2<0
−1<POLEcain1、POLEcain3、POLEcain4<POLEcain2<0
0<Krchcain1、Krchcain3、Krchcain4<Krchcain2
−1<POLEcain1、POLEcain3、POLEcain4<POLEcain2<0
0<Krchcain1、Krchcain3、Krchcain4<Krchcain2
これらの関係に示されるように、位相がマスターパラメータとして選択されるMode2では、位相がスレーブパラメータとして選択されるMode1、3および4に比べて、制御量E_cain(=予測値Pre_Cain(k)―目標値Cain_cmd_f(k))の収束速度が速くなるように、これらのパラメータ値は規定される。こうして、Mode2では、マスターパラメータである位相を、スレーブパラメータよりも早く収束させる。
制御フロー
図16は、吸気量制御を実施するプロセスのフローチャートを示す。このプロセスは、所定の時間間隔(たとえば、10ミリ秒)で実施される。
図16は、吸気量制御を実施するプロセスのフローチャートを示す。このプロセスは、所定の時間間隔(たとえば、10ミリ秒)で実施される。
ステップS1において、可変圧縮機構、可変リフト機構および可変位相機構のいずれかに何らかの故障が検知されたかどうかを判断する。故障が検知されたならば、これらの機構によってエンジン出力を制御することができない。ステップS2において、これらの機構への制御入力に、フェイルセーフ用に予め設定された値を設定し、このプロセスを終了する。可変圧縮機構への制御入力U_Crに設定される値U_Cr_fsは、最小の圧縮比を実現するための値である。可変リフト機構への制御入力U_Liftに設定される値U_Lift_fsは、非常に低速な走行(クリープ走行)を可能にする、たとえば約0.5ミリメートルのリフトを実現するための値である。可変位相機構への制御入力U_Cainに設定される値U_Cain_fsは、位相を遅角側に制御するための値である。
ステップS1の判断がNoならば、ステップS3において、エンジンが始動中かどうかを判断する。エンジンが始動中ならば、検出されたエンジン水温TWに応じた値Gcyl_cmd_crkを、目標吸気量Gcyl_cmdに設定する(S4)。図21の(a)に、エンジン水温TWに応じて設定される吸気量Gcyl_cmd_crkを示す。このマップは、メモリ1c(図1)に記憶されることができる。
ステップS3の判断がNoならば、ステップS5において、アクセルペダルが全閉かどうかを判断する。アクセルペダルが全閉ならば、エンジンはアイドル状態にあることを示す。ステップS6に進み、触媒昇温制御を実施するために設定された所定時間が経過したかどうかを判断する。該所定時間が経過していなければ、触媒昇温制御が実行中であることを示す。触媒昇温制御は、吸気量を一時的に増大させて触媒を活性化させる制御である。ステップS7において、エンジンが始動してからの経過時間に応じた値Gcyl_cmd_astを、目標吸気量Gcyl_cmdに設定する。図21の(b)に、該経過時間に応じて設定される吸気量Gcyl_cmd_astを示す。このマップは、メモリ1c(図1)に記憶されることができる。
ステップS6において触媒昇温制御が終了したならば、エンジンが暖機状態に至ったことを示す。ステップS8において、検出されたエンジン回転数NEおよびアクセルペダル開度APに応じた値Gcyl_cmd_drvを、目標吸気量Gcyl_cmdに設定する。図21の(c)に、エンジン回転数NEおよびアクセルペダル開度APに応じて設定される吸気量Gcyl_cmd_drvを示す。このマップは、メモリ1c(図1)に記憶されることができる。
ステップS9において、マスタースレーブ切換のサブルーチン(図17)を実施し、圧縮比、リフトおよび位相から、マスターパラメータを選択する。ステップS10において、吸気量コントローラ53による演算を実行し、実吸気量を目標吸気量に収束させるための補正値Gcyl_cmd_cpを算出する(図18)。ステップS11において、圧縮比コントローラ、リフトコントローラおよび位相コントローラによる演算を実行し、圧縮比、リフトおよび位相を、それぞれ、目標圧縮比、目標リフトおよび目標位相に収束させる(図19)。
図17は、図16のステップS9で実施されるマスタースレーブ切換のサブルーチンを示す。
ステップS21において、目標吸気量の変化ΔGcyl_cmdを、式(39)に従い算出する。
ΔGcyl_cmd=Gcyl_cmd(n)−Gcyl_cmd(n−1)
(39)
ステップS22において、目標吸気量の変化ΔGcyl_cmdがゼロより大きければ、要求される駆動力が増加していることを示す。目標吸気量の変化ΔGcyl_cmdがゼロ以下ならば、要求される駆動力が減少していることを示す。
(39)
ステップS22において、目標吸気量の変化ΔGcyl_cmdがゼロより大きければ、要求される駆動力が増加していることを示す。目標吸気量の変化ΔGcyl_cmdがゼロ以下ならば、要求される駆動力が減少していることを示す。
要求駆動力が増加しているならば、実際に検出された位相Cainと、所定値Cain_sswを比較する(S23)。所定値Cain_sswの一例が、図4に示されている。Cain≦Cain_sswならば、エンジン負荷が極低負荷であるMode1であることを示す。モード信号Mode_stateに、Mode1であることを示す値1が設定される(S24)。
Cain>Cain_sswならば、図4に示されるように、エンジン負荷が低負荷から高負荷の間にあるMode3であることを示す。モード信号Mode_stateに、Mode3であることを示す値3が設定される(S25)。
ステップS22において要求駆動力が減少しているならば、実際に検出されたリフトLiftと、所定値Lift_sswを比較する(S26)。所定値Lift_sswの一例が、図4に示されている。Lift≧Lift_sswならば、エンジンが低負荷から高負荷の間にあるMode4であることを示す。モード信号Mode_stateに、Mode4であることを示す値4が設定される(S27)。
Lift<Lift_sswならば、図4に示されるように、エンジンが極低負荷にあるMode2であることを示す。モード信号Mode_stateに、Mode2であることを示す値2が設定される(S28)。
図18は、図16のステップS10で実施される、吸気量補正値Gcyl_cmd_cpを算出するプロセスのフローチャートである。
ステップS31において、モード信号Mode_stateの値が1かどうかを調べる。Mode_state=1ならば、Mode1を実現するため、目標値応答指定パラメータPOLEgc_fiにモード1用の値POLEgc_f1を設定し(S32)、これを用いて式(5)に従い目標吸気量Gcyl_cmd_fを算出する(S33)。
ステップS34において、むだ時間dgiに、Mode1用のむだ時間dg1を設定する。ステップS35において、目標吸気量Gcyl_cmd_fに基づいて図22(a)に示されるようなマップを参照し、Mode1用のモデルパラメータの基準値を求める。ステップS36において、外乱抑制のための応答指定パラメータPOLEgciに、Mode1用の値Polegc1を設定し、フィードバックゲインKrchgciに、Mode1用の値Krchgc1を設定する。
ステップS37において、上記の式(8)を演算し、補正値Gcyl_cmd_cpを算出する。
ステップS38において、モード信号Mode_stateの値が2ならば、ステップS39〜S43において、Mode2用の処理が、Mode1の処理(S32〜S36)と同様に行われる。
ステップS44において、モード信号Mode_stateの値が4ならば、ステップS50〜S54において、Mode4用の処理が、Mode1の処理(S32〜S36)と同様に行われる。
ステップS44において、モード信号Mode_stateの値が4でなければ、モード信号Mode_stateの値は3であることを示す。ステップS45〜S49において、Mode3用の処理が、Mode1の処理(S32〜S36)と同様に行われる。
図19は、図16のステップS11で実施される、圧縮比、リフトおよび位相を制御するプロセスのフローチャートである。
ステップS61において、モード信号Mode_stateの値に従って所定のテーブルを検索し、目標圧縮比Cr_cmdを求める。該所定のテーブルは、図9に示されている。図8を参照して説明したように、たとえばMode_state=1ならば、図9の(a)に示されるテーブルが参照される。
同様に、ステップS62において、モード信号Mode_stateの値に従って所定のテーブルを検索し、目標リフト量Lift_cmdを求める。該所定のテーブルは、図10に示されている。同様に、ステップS63において、モード信号Mode_stateの値に従って所定のテーブルを検索し、目標位相Cain_cmdを求める。該所定のテーブルは、図11に示されている。
ステップS64において、式(26)に従い、可変圧縮比機構25への指定値U_Crを算出する。ステップS65において、圧縮比についての指令値U_Crの算出と同様の手法で、可変リフト機構26への指令値U_Liftを算出する。ステップS66において、圧縮比についての指令値U_Crの算出と同様の手法で、可変位相機構27への指令値U_Cainを算出する。こうして、選択されたモードに従い、圧縮比、リフト量および位相が、それぞれ、目標値に収束するよう制御される。
好ましくは、ステップS64〜S66の演算サイクルは、吸気量補正値の算出および該吸気量補正値に基づく目標値の算出についての演算サイクルよりも短く設定される。すなわち、上記の式に示されるように、吸気量コントローラ53による演算サイクルnの周期(たとえば、10ミリ秒)よりも、圧縮比、リフトおよび位相コントローラ54〜56の演算サイクルkの周期(たとえば、2ミリ秒)の方が短い。
吸気量や燃焼状態は、比較的遅い応答特性を有する。このような応答が遅い特性に適合するように圧縮比、リフト量および位相の目標値が設定されるので、吸気量および燃焼状態の過渡的変化に良好な精度で追従するように、圧縮比、リフトおよび位相を制御することができる。
また、可変圧縮比機構、可変リフト機構および可変位相機構の挙動には、フリクション等に起因する非線形特性が現れることがある。各コントローラによる演算サイクルの周期を短くすることにより、このような非線形性の影響が、圧縮比、リフト量および位相に現れるのを抑制することができる。
図20は、点火時期制御のメインルーチンを示す。このルーチンは、TDC信号の検出に同期して実施される。
ステップS71において、可変圧縮機構、可変リフト機構および可変位相機構のいずれかに何らかの故障が検知されたかどうかを判断する。故障が検知されたならば、これらの機構によってエンジン出力を制御することができない。したがって、エンジン回転数を一定に保つように点火時期を算出するフェイルセーフ制御を実施する。
フェイルセーフ制御は、たとえば、簡易型の応答指定型制御により実現することができる。エンジン回転数が所定の目標値(たとえば、2000rpm)に収束するように、点火時期Ig_fsを算出する。簡易型の応答指定型制御を実現する算出式を、以下に示す。
簡易型の応答指定型制御は、前述した2自由度スライディングモード制御を簡略化したものである。簡易型の応答指定型制御では、式(40)に示されるように、制御入力は、切換関数の比例項により表される到達則入力と、切換関数の積算項で表される適応則入力を含む。モデル式が規定されないので、等価制御入力は含まれない。適応則入力は、定常偏差を抑制して、状態量を切換線に載せるための入力である。Krch’およびKadp’は、シミュレーション等によって予め定められる。状態量を切換線上に載せることにより、状態量を収束させる点、および、応答指定パラメータPOLE’により、制御量Enfsの目標値への収束速度を規定する点は、前述の2自由度スライディングモード制御と同じである。
ステップS73において、算出されたIg_fsが、点火時期IGLOGに設定される。
フェイルセーフ時は、圧縮比、リフト量および位相を適切に制御することができない。しかしながら、応答指定型制御により点火時期を制御すれば、該応答指定型制御のロバスト性により、エンジンの安定性を確保しながら、最小限の車両の走行能力を維持することができる。
ステップS71において故障が検知されなければ、エンジンが始動中かどうかを判断する(S74)。始動中ならば、点火時期IGLOGは、所定値(たとえば、+10度)に設定される(S75)。
エンジンが始動中でなければ、ステップS76において、アクセルペダルが全閉かどうかを判断する。アクセルペダルが全閉ならば、エンジンはアイドル状態にあることを示す。ステップS77に進み、触媒昇温制御を実施するために設定された所定時間が経過したかどうかを判断する。該所定時間が経過していなければ、触媒昇温制御が実行中であることを示す。触媒昇温制御では、エンジン回転数が目標値に収束するように、点火時期をリタードさせる。この制御を、ステップS72と同様に、応答指定型制御で実現することができる。以下に、触媒昇温制御を実現するための算出式を示す。
ステップS79において、算出されたIg_astが、点火時期IGLOGに設定される。
ステップS77において触媒昇温制御が終了したならば、エンジン回転数NEおよびエンジン負荷(たとえば、エアフローメータにより検出された吸気量Gcylにより表される)に基づいて所定のマップを参照し、点火時期Ig_drvを求める(S80)。該マップの一例を、図23に示す。エンジン負荷が低くなるほど、点火時期は進角側に設定される。ステップS81において、求められたIg_drvが、点火時期IGLOGに設定される。
本発明は、汎用の(例えば、船外機等の)内燃機関に適用可能である。
1 ECU
2 エンジン
3 吸気バルブ
10 ピストン
25 可変圧縮機構
26 可変リフト機構
27 可変位相機構
2 エンジン
3 吸気バルブ
10 ピストン
25 可変圧縮機構
26 可変リフト機構
27 可変位相機構
Claims (17)
- バルブのリフト量を変更することができる可変リフト機構と燃焼室内の圧縮比を変更することができる可変圧縮比機構を備えるエンジンのための制御装置であって、
要求されるエンジン出力が増加している時は、前記リフト量の増加速度よりも、前記圧縮比の減少速度が速くなるように、前記可変圧縮比機構および前記可変リフト機構を制御する、制御装置。 - 前記エンジンは、さらに、バルブの位相を変更することができる可変位相機構を備え、
要求されるエンジン出力が増加している時は、前記位相の遅角側への変化速度よりも、前記圧縮比の減少速度が速くなるように、前記可変圧縮比機構および前記可変位相機構を制御する、請求項1に記載の制御装置。 - バルブのリフト量を変更することができる可変リフト機構と燃焼室内の圧縮比を変更することができる可変圧縮比機構を備えるエンジンのための制御装置であって、
要求されるエンジン出力が減少している時は、前記圧縮比の増加速度よりも、前記リフト量の減少速度が速くなるように、前記可変圧縮比機構および前記可変リフト機構を制御する、制御装置。 - 前記エンジンは、さらに、バルブの位相を変更することができる可変位相機構を備え、
要求されるエンジン出力が減少している時は、前記圧縮比の増加速度よりも、前記位相の進角側への変化速度が速くなるように、前記可変圧縮比機構および前記可変位相機構を制御する、請求項3に記載の制御装置。 - エンジンの燃焼室内の圧縮比を目標圧縮比に収束するよう制御する圧縮比コントローラと、
前記エンジンのバルブのリフト量を目標リフト量に収束するよう制御するリフトコントローラと、
要求されるエンジン出力に基づいて、前記圧縮比および前記リフト量のうちの1つをマスターパラメータとして選択し、他をスレーブパラメータとして選択するマスタースレーブ切換部であって、前記圧縮比コントローラおよびリフトコントローラのうち、該マスターパラメータを制御するコントローラをマスターコントローラに指定し、該スレーブパラメータを制御するコントローラをスレーブコントローラに指定するマスタースレーブ切換部と、を備え、
前記マスターコントローラは、前記要求されるエンジン出力に基づいて、該マスターパラメータについての目標値を算出し、該目標値に収束するよう該マスターパラメータを制御し、
前記スレーブコントローラは、前記マスターパラメータが制御された結果としての該マスターパラメータの実測値に基づいて、該スレーブパラメータについての目標値を算出し、該目標値に収束するよう該スレーブパラメータを制御し、
前記マスターパラメータの変化速度が、前記スレーブパラメータの変化速度よりも速くなるようにする、エンジンの制御装置。 - さらに、前記エンジンのバルブの位相を目標位相に収束するよう制御する位相コントローラを備え、
前記マスタースレーブ切換部は、さらに、前記要求されるエンジン出力に基づいて、前記圧縮比、リフト量および位相のうちの1つをマスターパラメータとして選択し、他をスレーブパラメータとして選択し、
前記圧縮比コントローラ、リフトコントローラおよび位相コントローラのうち、該マスターパラメータを制御するコントローラをマスターコントローラに指定し、該スレーブパラメータを制御するコントローラをスレーブコントローラに指定する、請求項5に記載の制御装置。 - 前記マスタースレーブ切換部は、前記要求されるエンジン出力が増加している時は、前記圧縮比を前記マスターパラメータに選択し、前記リフト量を前記スレーブパラメータに選択する、請求項5に記載の制御装置。
- 前記マスタースレーブ切換部は、前記要求されるエンジン出力が減少している時は、前記リフト量を前記マスターパラメータに選択し、前記圧縮比を前記スレーブパラメータに選択する、請求項5に記載の制御装置。
- 前記マスタースレーブ切換部は、前記エンジンが極低負荷であって、前記要求されるエンジン出力が増加している時は、前記圧縮比を前記マスターパラメータに選択し、前記リフト量および位相を前記スレーブパラメータに選択する、請求項6に記載の制御装置。
- 前記マスタースレーブ切換部は、前記エンジンが極低負荷であって、前記要求されるエンジン出力が減少している時は、前記位相を前記マスターパラメータに選択し、前記リフト量および圧縮比を前記スレーブパラメータに選択する、請求項6に記載の制御装置。
- 前記エンジンが極低負荷であるときは、前記リフトコントローラは、前記位相コントローラにより制御された結果としての前記位相の実測値に基づいて、前記リフト量の目標値を設定する、請求項6に記載の制御装置。
- 前記マスターコントローラは、前記マスターパラメータの目標値への応答速度を指定可能な応答指定型制御を実施するよう構成され、
前記スレーブコントローラは、前記スレーブパラメータの目標値への応答速度を指定可能な応答指定型制御を実施するよう構成されており、
前記マスターコントローラは、前記マスターパラメータについての応答速度が、前記スレーブパラメータについての応答速度よりも速くなるように、該マスターパラメータの応答速度を設定する、請求項5または6に記載の制御装置。 - さらに、前記エンジンへの吸気量を、前記要求されるエンジン出力を実現する目標吸気量に収束させるための吸気量補正値を算出する吸気量コントローラを備え、
前記マスターコントローラは、前記吸気量補正値に基づいて、前記マスターパラメータの目標値を算出する、請求項5または6に記載の制御装置。 - 前記吸気量コントローラは、前記吸気量の前記目標吸気量への応答速度を指定可能な応答指定型制御を実施するよう構成されており、
該吸気量コントローラは、前記応答速度を、前記要求されるエンジン出力の増減に従って設定する、請求項13に記載の制御装置。 - 前記吸気量コントローラは、前記応答速度を、前記エンジンの負荷に従って設定する、請求項13に記載の制御装置。
- 前記吸気量コントローラによる吸気量補正値の演算周期は、前記マスターコントローラおよびスレーブコントローラによるマスターパラメータおよびスレーブパラメータの演算周期よりも長く設定される、請求項13に記載の制御装置。
- さらに、前記圧縮比コントローラによって制御される可変圧縮比機構、前記リフトコントローラによって制御される可変リフト機構、および前記位相コントローラによって制御される可変位相機構のうちのいずれかに何らかの故障が検出された時には、該圧縮比コントローラ、リフトコントローラおよび位相コントローラによる制御を停止し、エンジン回転数を所定値に維持するように点火時期を応答指定型制御によって操作するフェイルセーフ手段を備える、請求項5または6に記載の制御装置。
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Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A02 Effective date: 20101116 |