JP2008211762A - 検出装置及び検出方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】複数の検出コイルを配置する場合であっても、検出条件に応じた共振周波数の最適化を可能にする。
【解決手段】駆動順序が定められた複数の共振回路2A〜2D、3A〜3Dのうち、一の共振回路2A〜2D、3A〜3Dに対して駆動信号を出力すると共に、駆動信号出力停止後に共振回路2A〜2D、3A〜3Dから減衰状に出力される自由振動波の数をカウントする自由振動波カウント処理を行い、自由振動波カウント処理における自由振動波のカウント数が所定数に達したタイミングを基準として、次の共振回路2A〜2D、3A〜3Dをリレー式に駆動し、自由振動波カウント処理を繰り返させ、所定回数の自由振動波カウント処理に要した時間を測定し、測定した時間を所定の信号形式で出力する。
【選択図】図13
【解決手段】駆動順序が定められた複数の共振回路2A〜2D、3A〜3Dのうち、一の共振回路2A〜2D、3A〜3Dに対して駆動信号を出力すると共に、駆動信号出力停止後に共振回路2A〜2D、3A〜3Dから減衰状に出力される自由振動波の数をカウントする自由振動波カウント処理を行い、自由振動波カウント処理における自由振動波のカウント数が所定数に達したタイミングを基準として、次の共振回路2A〜2D、3A〜3Dをリレー式に駆動し、自由振動波カウント処理を繰り返させ、所定回数の自由振動波カウント処理に要した時間を測定し、測定した時間を所定の信号形式で出力する。
【選択図】図13
Description
本発明は、検出コイルとコンデンサとを接続してなる共振回路を駆動し、該共振回路から出力される振動波の位相ズレ成分にもとづいて検出を行う検出装置及び検出方法に関し、特に、磁気的な特性変化に基づいて金属の近接、変位、材質、応力、温度、疲労、損傷、欠陥などを検出する検出装置及び検出方法に関する。
検出コイルを備える検出装置が知られている。例えば、特許文献1に記載される近接センサは、検出コイルを含む高周波発振回路を備えた高周波発振型近接スイッチであり、金属が検出コイルに近接したとき、高周波発振回路の発振振幅や発振周波数が変化することを利用し、金属の近接や材質を判定するようになっている。すなわち、高周波発振回路の発振振幅や発振周波数は、金属との近接距離に応じて変化するだけでなく、金属の材質(透磁率、導電率などの違い)に応じて変化するのであり、例えば、振幅測定方式の近接スイッチでは、磁性金属(鉄など)の近接を良好に検出でき、周波数測定方式の近接スイッチでは、非磁性金属(アルミなど)の近接を良好に検出できる。また、両方式を兼ね備えた近接スイッチでは、磁性金属及び非磁性金属の近接を良好に検出でき、かつ、金属の材質判定も良好に行うことができる。
しかしながら、従来における周波数測定方式の検出装置は、高周波発振を継続しつつ、その僅かな位相ズレを測定しているため、同期検波回路などの複雑な回路が必要になり、振幅測定方式の検出装置に比べて、著しく高価になるという問題がある。また、僅かな位相ズレをデジタル回路で検出することも可能ではあるが、この場合には、極めて高速で動作するカウンタやCPUが必要になるため、却ってコスト高となる可能性がある。
そこで、本出願人は、検出コイルにコンデンサを接続してなる共振回路と、該共振回路に対して駆動信号を出力する駆動信号出力手段と、該駆動信号出力手段の信号出力停止後に前記共振回路から減衰状に出力される自由振動波にもとづいて、金属の近接に伴う振動波の位相ズレを測定する位相ズレ測定手段とを備える近接センサを過去に提案した(特許文献2参照)。そして、このような近接センサによれば、金属の近接に伴う振動波の位相ズレを簡単な回路構成で精度良く測定することが可能になる。すなわち、共振回路から減衰状に出力される自由振動波にあっては、金属の近接に伴う振動波の位相ズレが明確に現れるだけでなく、位相ズレが振動波の数だけ蓄積されるので、高速なカウンタを持たない安価なデジタル回路でも、位相ズレを高精度に測定することができる。
さらに、本出願人は、前記駆動信号出力手段の信号出力停止後に前記共振回路から出力される自由振動波の数をカウントし、所定数の自由振動波をカウントしたタイミングで、前記駆動信号出力手段に駆動信号を出力させる、という回帰動作を所定回数繰り返すことによって、自由振動波の位相ズレを増幅させる近接センサを提案した(特願2006−232267号)。
またさらに、本出願人は、自由振動波における位相ズレの蓄積作用や、自由振動波カウント処理の繰り返しによる位相ズレの増幅作用を利用して、金属に生じる圧縮、引張、捻りなどの応力を検出する応力センサを提案した(特願2007−19347号)。
特許第2550621号公報
特開2007−68082号公報
ところで、本出願人が過去に提案した検出装置や検出方法を実施する場合、一つの検出コイルでは、検出範囲を網羅できない場合がある。このような場合、検出範囲に複数の検出コイルを配置すると共に、これらの検出コイルを直列に接続し、一つの共振回路として広範囲な検出を行うことが可能であるが、このようにすると、検出コイルのインダクタンスと、コンデンサのキャパシタンスとの関係から、共振周波数(基準共振周波数)の設定範囲が制限されるという問題がある。例えば、金属に作用する応力を透磁率の変化として検出する場合、いわゆる表皮効果の影響を受けるため、共振周波数を最適化する必要があるが、上記のように共振周波数の設定範囲が制限されると、所望の検出精度が得られない惧れがある。
上記の如き実情に鑑み、これらの課題を解決することを目的として創作された本発明の検出装置は、検出コイルとコンデンサとを接続してなる共振回路を駆動し、該共振回路から出力される振動波の位相ズレ成分にもとづいて検出を行う検出装置であって、駆動順序が定められた複数の前記共振回路と、一の前記共振回路に対して駆動信号を出力すると共に、駆動信号出力停止後に前記共振回路から減衰状に出力される自由振動波の数をカウントする自由振動波カウント処理手段と、前記自由振動波カウント処理における自由振動波のカウント数が所定数に達したタイミングを基準として、次の前記共振回路をリレー式に駆動し、前記自由振動波カウント処理を繰り返させる繰り返し処理手段と、所定回数の前記自由振動波カウント処理に要した時間を測定し、測定した時間を所定の信号形式で出力する検出信号出力処理手段とを備えることを特徴とする。
このような検出装置によれば、自由振動波における位相ズレの蓄積作用や、自由振動波カウント処理の繰り返しによる位相ズレの増幅作用を利用して検出を行うものでありながら、検出範囲に複数の検出コイルを配置する場合であっても、これらの検出コイルを直列に接続して一つの共振回路とすることなく、それぞれの検出コイルについて共振回路を構成することができる。その結果、共振周波数の設定可能範囲を拡張し、検出条件に応じた共振周波数の最適化が可能となる。
このような検出装置によれば、自由振動波における位相ズレの蓄積作用や、自由振動波カウント処理の繰り返しによる位相ズレの増幅作用を利用して検出を行うものでありながら、検出範囲に複数の検出コイルを配置する場合であっても、これらの検出コイルを直列に接続して一つの共振回路とすることなく、それぞれの検出コイルについて共振回路を構成することができる。その結果、共振周波数の設定可能範囲を拡張し、検出条件に応じた共振周波数の最適化が可能となる。
また、本発明の検出装置は、一回の検出処理における前記自由振動波カウント処理の繰り返し回数が、前記共振回路の数よりも多い場合は、複数の前記共振回路を前記駆動順序に従って繰り返し駆動させることを特徴とする。
このような検出装置によれば、共振回路の数に拘わらず、自由振動波カウント処理の繰り返し回数を任意に増やし、検出精度を向上させることができる。
このような検出装置によれば、共振回路の数に拘わらず、自由振動波カウント処理の繰り返し回数を任意に増やし、検出精度を向上させることができる。
また、本発明の検出装置は、一回の検出処理における前記自由振動波カウント処理の繰り返し回数を、前記共振回路の数の倍数としたことを特徴とする。
このような検出装置によれば、一回の検出処理における各共振回路の自由振動波カウント処理回数が均等になるので、各共振回路間における位相ズレのバラツキを正確に平均化することができる。
このような検出装置によれば、一回の検出処理における各共振回路の自由振動波カウント処理回数が均等になるので、各共振回路間における位相ズレのバラツキを正確に平均化することができる。
また、本発明の検出方法は、検出コイルとコンデンサとを接続してなる共振回路を駆動し、該共振回路から出力される振動波の位相ズレ成分にもとづいて検出を行う検出方法であって、駆動順序が定められた複数の前記共振回路のうち、一の前記共振回路に対して駆動信号を出力すると共に、駆動信号出力停止後に前記共振回路から減衰状に出力される自由振動波の数をカウントする自由振動波カウント処理を行い、前記自由振動波カウント処理における自由振動波のカウント数が所定数に達したタイミングを基準として、次の前記共振回路をリレー式に駆動し、前記自由振動波カウント処理を繰り返させ、所定回数の前記自由振動波カウント処理に要した時間を測定し、測定した時間を所定の信号形式で出力することを特徴とする。
このような検出方法によれば、自由振動波における位相ズレの蓄積作用や、自由振動波カウント処理の繰り返しによる位相ズレの増幅作用を利用して検出を行うものでありながら、検出範囲に複数の検出コイルを配置する場合であっても、これらの検出コイルを直列に接続して一つの共振回路とすることなく、それぞれの検出コイルについて共振回路を構成することができる。その結果、共振周波数の設定可能範囲を拡張し、検出条件に応じた共振周波数の最適化が可能となる。
このような検出方法によれば、自由振動波における位相ズレの蓄積作用や、自由振動波カウント処理の繰り返しによる位相ズレの増幅作用を利用して検出を行うものでありながら、検出範囲に複数の検出コイルを配置する場合であっても、これらの検出コイルを直列に接続して一つの共振回路とすることなく、それぞれの検出コイルについて共振回路を構成することができる。その結果、共振周波数の設定可能範囲を拡張し、検出条件に応じた共振周波数の最適化が可能となる。
また、本発明の検出方法は、一回の検出処理における前記自由振動波カウント処理の繰り返し回数が、前記共振回路の数よりも多い場合は、複数の前記共振回路を前記駆動順序に従って繰り返し駆動させることを特徴とする。
このような検出方法によれば、共振回路の数に拘わらず、自由振動波カウント処理の繰り返し回数を任意に増やし、検出精度を向上させることができる。
このような検出方法によれば、共振回路の数に拘わらず、自由振動波カウント処理の繰り返し回数を任意に増やし、検出精度を向上させることができる。
また、本発明の検出方法は、一回の検出処理における前記自由振動波カウント処理の繰り返し回数を、前記共振回路の数の倍数としたことを特徴とする。
このような検出方法によれば、一回の検出処理における各共振回路の自由振動波カウント処理回数が均等になるので、各共振回路間における位相ズレのバラツキを正確に平均化することができる。
このような検出方法によれば、一回の検出処理における各共振回路の自由振動波カウント処理回数が均等になるので、各共振回路間における位相ズレのバラツキを正確に平均化することができる。
次に、本発明の実施形態について、図面に基づいて説明する。ただし、図面に示す波形には、実際の検出波形と、波形画像を合成したシミュレーション波形とが含まれる。
まず、本発明の実施形態に係る検出装置(磁歪式トルクセンサ)の基本的な構成及び検出原理について説明する。図1に示される磁歪式トルクセンサ1は、軸表面に生じる磁歪の逆効果を利用して回転軸Sのトルク(捻り応力)を検出する検出装置であり、第一方向検出用共振回路2、第二方向検出用共振回路3及び検出回路4を備えて構成されている。第一方向検出用共振回路2は、軸表面において第一方向(例えば、+45°方向)の透磁率変化を検出すべく配置される第一検出コイルL1に、第一コンデンサC1を直列又は並列に接続して構成され、検出回路4から出力される駆動信号により駆動される。第二方向検出用共振回路3は、軸表面において第二方向(例えば、−45°方向)の透磁率変化を検出すべく配置される第二検出コイルL2に、第二コンデンサC2を直列又は並列に接続して構成され、検出回路4から出力される駆動信号により駆動される。本実施形態の検出コイルL1、L2は、フェライトなどのU字コア2a、3aに巻かれたものであって、U字コア2a、3aの両端を軸表面に近接させることにより、軸表面に第一方向及び第二方向の磁路を形成し、該磁路における透磁率変化を検出することが可能になる。
検出回路4は、例えば、CPU、ROM、RAM、I/O、比較器(コンパレータ)などが内蔵されたマイコン(1チップマイコン)4a〜4cを複数用いて構成され、ROMに書き込まれたプログラムに従って後述する検出処理を行う。なお、検出回路4は、一つのマイコンで構成したり、一又は複数のICで構成することもできる。
検出回路4は、第一方向検出用共振回路2に対して駆動信号を出力し、該駆動信号の出力停止後に第一方向検出用共振回路2から減衰状に出力される自由振動波の位相ズレ成分にもとづいて、第一方向の透磁率変化を検出する第一方向透磁率検出手段(本実施形態ではマイコン4aに構成される。)と、第二方向検出用共振回路3に対して駆動信号を出力し、該駆動信号の出力停止後に第二方向検出用共振回路3から減衰状に出力される自由振動波の位相ズレ成分にもとづいて、第二方向の透磁率変化を検出する第二方向透磁率検出手段(本実施形態ではマイコン4bに構成される。)と、第一方向透磁率検出手段が検出した透磁率(位相ズレ)と第二方向透磁率検出手段が検出した透磁率(位相ズレ)との差分にもとづいて、回転軸Sのトルクを検出するトルク検出手段(本実施形態ではマイコン4cに構成される。)とを備えている。
このようにすると、磁歪式トルクセンサ1の検出精度を向上させることができる。つまり、上記のように構成された第一方向検出用共振回路2や第二方向検出用共振回路3から減衰状に出力される自由振動波においては、軸表面の透磁率変化が位相ズレとなって明確に現れ、しかも、自由振動波における位相ズレは、振動波の数だけ蓄積されるので、第一方向及び第二方向の透磁率変化を高精度に検出できるだけでなく、その差分から回転軸Sのトルクを高精度に検出することが可能になる。
また、第一方向透磁率検出手段及び第二方向透磁率検出手段は、共振回路2、3に対して所定数の駆動信号を出力すると共に、駆動信号出力停止後に共振回路2、3から減衰状に出力される自由振動波の数をカウントし、該カウント数が所定数に達したか否かを判断する自由振動波カウント処理を行い、該自由振動波カウント処理に要した時間測定にもとづいて自由振動波の位相ズレ成分を検出し、第一方向透磁率検出手段の測定時間と第二方向透磁率検出手段の測定時間との差分を演算するようになっている。このようにすると、第一方向検出用共振回路2の位相ズレと第二方向検出用共振回路3の位相ズレとの差分を検出するにあたり、ブリッジ回路などのアナログ回路を介さずに差分処理を行うことができるので、ノイズの影響を低減し、検出精度をさらに向上させることが可能になる。
また、第一方向透磁率検出手段及び第二方向透磁率検出手段は、自由振動波カウント処理における自由振動波のカウント数が所定数に達したタイミングを基準として、自由振動波カウント処理を所定回数だけ繰り返すことにより、自由振動波の位相ズレ成分を増幅させるようになっている。このようにすると、回路構成を複雑にすることなく、自由振動波カウント処理の繰り返し回数を増やすだけで、自由振動波の位相ズレ成分を任意に増幅させることができるので、磁歪式トルクセンサ1の検出精度を飛躍的に向上させることができる。
次に、磁歪式トルクセンサ1の具体的な構成について説明する。
共振回路2、3は、検出コイルL1、L2にコンデンサC1、C2を並列に接続した並列共振回路であってもよいが、検出コイルL1、L2にコンデンサC1、C2を直列に接続した直列共振回路であることが好ましい。このようにすると、直列共振回路の作用によって、最大でソース電圧(例えば5V)のQ倍(例えば8倍)の電圧を検出コイルL1、L2に印加できるので、共振回路2、3から振幅の大きい自由振動波を出力することができる。これにより、自由振動波カウント数を多くし、測定精度を更に高めることができるだけでなく、ノイズにも強いものとできる。しかも、振幅の大きい自由振動波は、増幅器を介さずに検出回路4に直接入力できるので、回路構成がよりシンプルになり、更なるコストダウンが可能になる。
なお、検出コイルL1、L2に印加される最大電圧VLMAXは、以下に示す式で求めることができる。ただし、ω0は共振角周波数、Lは検出コイルL1、L2のインダクタンス、Rは検出コイルL1、L2の抵抗、CはコンデンサC1、C2のキャパシタンス、VSはソース電圧、Qは共振回路の良好度である。
検出回路4は、駆動パルス信号によって共振回路2、3を強制振動させるにあたり、複数の駆動パルス信号により共振回路2、3を強制振動させた後、駆動信号出力を停止させることができる。このようにすると、単発の駆動パルス信号で共振回路2、3を強制振動させる場合に比べ、強制振動波の振幅を大きくできる。特に、強制振動波の振幅が最大になるように所定の共振周波数で数発(例えば6発)の駆動パルス信号を出力すれば、駆動信号出力停止後に共振回路2、3から出力される自由振動波の振幅をより大きくし、測定精度を更に高めることが可能になる。
ちなみに、共振回路2、3を強制振動させる共振周波数fは、以下に示す式で求めることができる。
ちなみに、共振回路2、3を強制振動させる共振周波数fは、以下に示す式で求めることができる。
次に、自由振動波における位相ズレの蓄積作用(増幅作用)について、図2〜図10を参照して説明する。
図2は、駆動パルス信号波形(a点)及び共振回路の振動波形(b点)を示す説明図である。この図に示すように、検出回路4は、所定電圧(例えば5V)の駆動パルス信号を出力し、共振回路2、3を強制振動させる。このとき、所定の共振周波数で数発(例えば6発)の駆動パルス信号を出力することにより、検出コイルL1、L2に最大電圧(例えば40V)を印加させることができる。そして、駆動パルス信号の出力を停止した後は、共振回路2、3から複数の自由振動波が減衰状に出力される。
図3は、十数個目の自由振動波を拡大した説明図、図4は、回転軸に大きなトルクを加えたときの位相ズレを示す説明図、図5は、回転軸に小さなトルクを加えたときの位相ズレを示す説明図である。これらの図に示すように、共振回路2、3から出力される自由振動波は、十数個目であっても検出に十分な振幅を保っている。ここで、回転軸Sにトルクを加えると、軸表面の透磁率変化に応じて、検出コイルL1、L2のインダクタンスが変化し、自由振動波に位相ズレが生じる。この自由振動波の位相ズレは、強制振動波に比べて明確に現れるだけでなく、自由振動波の個数分だけ蓄積されるので、低速なカウンタでも高精度に位相ズレを測定することが可能になる。また、図4及び図5に示すように、自由振動波の位相ズレは、回転軸Sに作用するトルクに比例して大きくなるので、自由振動波の位相ズレにもとづいて、回転軸Sに作用するトルクを高精度に測定することが可能になる。また、各共振回路2、3から出力される自由振動波の位相ズレは、背反方向(又はゲインの差)に現れるので、その差分にもとづいて回転軸Sのトルク量及びトルク極性を検出できるだけでなく、温度誤差や変位誤差が相殺された検出値を得ることができる。
図6は、自由振動波形(b点)と比較器出力(c点)の関係を示す説明図、図7は、回転軸にトルクが加えられていないときの比較器出力を示す拡大図、図8は、回転軸に小さなトルクが加えられたときの比較器出力を示す説明図、図9は、回転軸に大きなトルクが加えられたときの比較器出力を示す説明図である。これらの図に示すように、共振回路2、3から出力される自由振動波は、十数個目であっても検出に十分な振幅を保っているので、比較器によって明確な矩形波に変換することができる。ここで、回転軸Sにトルクを加えると、比較器出力波形の位相が進む。図8及び図9から明らかなように、この位相ズレは、自由振動波の個数が増えるほど蓄積され、測定が容易になる。
次に、自由振動波カウント処理の繰り返しによる位相ズレの増幅作用(蓄積作用)について、図10を参照して説明する。
図10は、自由振動波カウント数を5、その繰り返し回数を10とした場合における位相ズレの増幅作用を示す説明図である。この図に示す波形は、一回の検出処理における共振回路2、3の出力波形であって、2発の駆動パルス信号を出力して、共振回路2、3を強制振動させた後、共振回路2、3から減衰状に出力される自由振動波の数をカウントし、カウント数が所定数5に達したか否かを判断する自由振動波カウント処理を行い、該自由振動波カウント処理に要した時間測定にもとづいて自由振動波の位相ズレ成分を検出するにあたり、自由振動波カウント処理における自由振動波のカウント数が所定数5に達したタイミングを基準として、自由振動波カウント処理を10回繰り返した場合の波形であり、上側の波形は、下側の波形よりも大きなトルクを回転軸Sに加えた場合を示している。この図から明らかなように、自由振動波カウント処理における自由振動波のカウント数が所定数に達したタイミングを基準として、自由振動波カウント処理を所定回数繰り返すと、自由振動波の位相ズレが増幅される。これにより、回路構成を複雑にすることなく、自由振動波カウント処理の繰り返し回数を増やすだけで、位相ズレの測定精度を飛躍的に向上させることができる。
次に、自由振動波カウント数及びその繰り返し回数を変更した場合における位相ズレの増幅作用(蓄積作用)について、図11及び図12を参照して説明する。
図11は、自由振動波カウント数を1、その繰り返し回数を100とした場合における位相ズレの増幅作用(検出波形始端部を拡大)を示す説明図、図12は、自由振動波カウント数を1、その繰り返し回数を100とした場合における位相ズレの増幅作用(検出波形終端部を拡大)を示す説明図である。これらの図に示す波形は、一回の検出処理における共振回路2、3の出力波形であって、1発の駆動パルス信号を出力して、共振回路2、3を強制振動させた後、共振回路2、3から減衰状に出力される自由振動波の数をカウントし、カウント数が所定数1に達したか否かを判断する自由振動波カウント処理を行い、該自由振動波カウント処理に要した時間測定にもとづいて自由振動波の位相ズレ成分を検出するにあたり、自由振動波カウント処理における自由振動波のカウント数が所定数1に達したタイミングを基準として、自由振動波カウント処理を100回繰り返した場合の波形であり、上側の波形は、回転軸Sにトルクを加えない場合を示し、下側の波形は、回転軸Sにトルクを加えた場合を示している。これらの図から明らかなように、検出波形の始端部、つまり自由振動波カウント処理の繰り返し回数が少ない段階では、位相ズレがあまり増幅されていないが(図11参照)、自由振動波カウント処理の繰り返し回数が多くなると、自由振動波の位相ズレが増幅され、その検出が容易になることがわかる(図12参照)。
次に、磁歪式トルクセンサ1における本発明の特徴的な構成及び作用について、図13〜図15を参照して説明する。
図1に示す磁歪式トルクセンサ1では、第一方向検出用共振回路2及び第二方向検出用共振回路3がそれぞれ一つとなっているが、回転軸Sにおける円周方向の材質のバラツキ、温度分布、中心変動などを考慮すると、回転軸Sの円周方向に所定の間隔を存して複数(例えば、4つ)の検出コイルL1、L2を配置し、これらのインダクタンス変化を平均化して出力することが好ましい。そして、このような場合、複数の検出コイルL1、L2を直列に接続し、一つの共振回路2、3として検出を行うことが可能であるが、このようにすると、検出コイルL1、L2のインダクタンスと、コンデンサC1、C2のキャパシタンスとの関係から、共振周波数(基準共振周波数)の設定範囲が制限されるという問題がある。
そこで、本発明の実施形態に係る磁歪式トルクセンサ1では、図13に示すように、複数の検出コイルL1、L2にそれぞれコンデンサC1、C2を接続して、複数の第一方向検出用共振回路2A〜2D及び第二方向検出用共振回路3A〜3Dを構成すると共に、これらの第一方向検出用共振回路2A〜2D、第二方向検出用共振回路3A〜3Dについて、予め駆動順序を定めておく。そして、駆動順序が定められた複数の第一方向検出用共振回路2A〜2D、第二方向検出用共振回路3A〜3Dうち、一の第一方向検出用共振回路2A〜2D、第二方向検出用共振回路3A〜3Dに対して駆動信号を出力すると共に、駆動信号出力停止後に第一方向検出用共振回路2A〜2D、第二方向検出用共振回路3A〜3Dから減衰状に出力される自由振動波の数をカウントする自由振動波カウント処理を行い、該自由振動波カウント処理における自由振動波のカウント数が所定数に達したタイミングを基準として、次の第一方向検出用共振回路2A〜2D、第二方向検出用共振回路3A〜3Dをリレー式に駆動し、自由振動波カウント処理を繰り返させ、所定回数の自由振動波カウント処理に要した時間を測定し、測定した時間を所定の信号形式で出力する。
このような磁歪式トルクセンサ1によれば、自由振動波における位相ズレの蓄積作用や、自由振動波カウント処理の繰り返しによる位相ズレの増幅作用を利用してトルク検出を行うものでありながら、検出範囲に複数の検出コイルL1、L2を配置する場合であっても、これらの検出コイルL1、L2を直列に接続して一つの共振回路2、3とすることなく、それぞれの検出コイルL1、L2について共振回路2A〜2D、3A〜3Dを構成することができる。その結果、共振周波数の設定可能範囲を拡張し、検出条件に応じた共振周波数の最適化が可能となる。
一回の検出処理における自由振動波カウント処理の繰り返し回数が、共振回路2A〜2D、3A〜3Dの数よりも多い場合は、図14に示すように、複数の共振回路2A〜2D、3A〜3Dを駆動順序に従って繰り返し駆動させることができる。このようにすれば、共振回路2A〜2D、3A〜3Dの数に拘わらず、自由振動波カウント処理の繰り返し回数を任意に増やし、検出精度を向上させることができる。
一回の検出処理における自由振動波カウント処理の繰り返し回数が、共振回路2A〜2D、3A〜3Dの数よりも多い場合は、一回の検出処理における自由振動波カウント処理の繰り返し回数を、共振回路2A〜2D、3A〜3Dの数の倍数とすることが好ましい。例えば、第一方向検出用共振回路2A〜2Dの数が4つの場合、一回の検出処理における自由振動波カウント処理の繰り返し回数を4の倍数とする(例えば、40回)。このようにすると、一回の検出処理における各共振回路2A〜2D、3A〜3Dの自由振動波カウント処理回数が均等になるので、各共振回路2A〜2D、3A〜3D間における位相ズレのバラツキを正確に平均化することができる。
次に、検出回路4の具体的な検出処理手順について、図15を参照して説明する。ただし、第一方向透磁率検出処理と第二方向透磁率検出処理の処理内容は略同様なので、第一方向透磁率検出処理のフローチャートのみを図示し、その処理手順を説明する。また、以下に示すNは、自由振動波カウント処理における自由振動波のカウント数、Mは、自由振動波カウント処理の繰り返し回数、Kは、共振回路2A〜2D(検出コイルL1)の数であり、予め設定されるものであるが、これらの数は、検出条件に応じて適宜変更することができる。
図15は、検出回路における第一方向透磁率検出処理の処理手順を示すフローチャートである。この図に示す第一方向透磁率検出処理は、検出回路4のマイコン4aが行う検出処理であって、まず、比較器のREF電圧を設定した後(S1)、カウンタクリア処理(S2)と、第一方向検出用共振回路2A〜2Dに係る自由振動波カウント処理(S3〜S5)と、第一方向検出用共振回路2A〜2Dに係る自由振動波カウント処理の繰り返し処理(S6〜S10)と、検出信号出力処理(S11、S12)とからなる検出処理を繰り返し実行する。
カウンタクリア処理は、繰り返し回数カウンタ(初期値=0)、駆動順序カウンタ(初期値=1)及び時間計測カウンタ(初期値=0)をクリアする処理である(S2)。また、自由振動波カウント処理は、複数の第一方向検出用共振回路2A〜2Dのうち、駆動順序カウンタ値で駆動順序が特定される一の第一方向検出用共振回路2A〜2Dに対して一又は複数の駆動パルス信号を出力した後(S3)、自由振動波カウンタをクリアし(S4)、当該第一方向検出用共振回路2A〜2Dから減衰状に出力される自由振動波の数をカウントすると共に、カウント数が所定数Nに達したか否かを判断する処理である(S5)。
繰り返し処理は、自由振動波のカウント数が所定数Nに達したタイミングで、繰り返し回数カウンタ及び駆動順序カウンタをインクリメントすると共に(S6、S7)、駆動順序カウンタが(K+1)であるか否かを判断し(S8)、該判断結果がYESの場合は、駆動順序カウンタからKを引き、駆動順序カウンタを初期値である1に戻す(S9)。さらに、繰り返し回数カウンタが所定数Mに達したか否かを判断し(S10)、該判断結果がYESになるまで、自由振動波カウント処理(S3〜S9)を繰り返す。また、検出信号出力処理は、自由振動波カウント処理の繰り返し回数が所定数Mになったら、時間計測カウンタ値を読み込むと共に(S11)、読み込んだ時間計測カウンタ値(第一方向透磁率検出値)を所定の検出信号形式に変換して出力する処理である(S12)。
叙述の如く構成された本実施形態によれば、検出コイルL1、L2とコンデンサC1、C2とを接続してなる共振回路2、3を駆動し、該共振回路2、3から出力される振動波の位相ズレ成分にもとづいて検出を行う磁歪式トルクセンサ1であって、駆動順序が定められた複数の共振回路2A〜2D、3A〜3Dと、一の共振回路2A〜2D、3A〜3Dに対して駆動信号を出力すると共に、駆動信号出力停止後に共振回路2A〜2D、3A〜3Dから減衰状に出力される自由振動波の数をカウントする自由振動波カウント処理手段と、自由振動波カウント処理における自由振動波のカウント数が所定数に達したタイミングを基準として、次の共振回路2A〜2D、3A〜3Dをリレー式に駆動し、自由振動波カウント処理を繰り返させる繰り返し処理手段と、所定回数の自由振動波カウント処理に要した時間を測定し、測定した時間を所定の信号形式で出力する検出信号出力処理手段とを備えるので、自由振動波における位相ズレの蓄積作用や、自由振動波カウント処理の繰り返しによる位相ズレの増幅作用を利用して検出を行うものでありながら、検出範囲に複数の検出コイルL1、L2を配置する場合であっても、これらの検出コイルL1、L2を直列に接続して一つの共振回路2、3とすることなく、それぞれの検出コイルL1、L2について共振回路2A〜2D、3A〜3Dを構成することができる。その結果、共振周波数の設定可能範囲を拡張し、検出条件に応じた共振周波数の最適化が可能となる。
また、一回の検出処理における自由振動波カウント処理の繰り返し回数が、共振回路2A〜2D、3A〜3Dの数よりも多い場合は、複数の共振回路2A〜2D、3A〜3Dを前記駆動順序に従って繰り返し駆動させるので、共振回路2A〜2D、3A〜3Dの数に拘わらず、自由振動波カウント処理の繰り返し回数を任意に増やし、検出精度を向上させることができる。
さらに、一回の検出処理における自由振動波カウント処理の繰り返し回数を、共振回路2A〜2D、3A〜3Dの数の倍数とした場合は、一回の検出処理における各共振回路2A〜2D、3A〜3Dの自由振動波カウント処理回数が均等になるので、各共振回路2A〜2D、3A〜3D間における位相ズレのバラツキを正確に平均化することができる。
なお、本発明は、前記実施形態に限定されないことは勿論であって、トルクセンサ(捻り応力センサ)に限らず、圧縮応力、引張応力、変位、温度、材質、疲労、損傷、欠陥などを検出する検出装置や検出方法にも適用することができる。また、前記実施形態では、検出回路から出力される駆動信号で共振回路を直接駆動しているが、検出コイルとは別個に設けられる励磁コイルを介して、検出コイル(共振回路)を駆動させる検出装置にも好適に用いることができる。
1 磁歪式トルクセンサ
2A〜2D 第一方向検出用共振回路
3A〜3D 第二方向検出用共振回路
4 検出回路
L1 第一検出コイル
L2 第二検出コイル
C1 第一コンデンサ
C2 第二コンデンサ
S 回転軸
2A〜2D 第一方向検出用共振回路
3A〜3D 第二方向検出用共振回路
4 検出回路
L1 第一検出コイル
L2 第二検出コイル
C1 第一コンデンサ
C2 第二コンデンサ
S 回転軸
Claims (6)
- 検出コイルとコンデンサとを接続してなる共振回路を駆動し、該共振回路から出力される振動波の位相ズレ成分にもとづいて検出を行う検出装置であって、
駆動順序が定められた複数の前記共振回路と、
一の前記共振回路に対して駆動信号を出力すると共に、駆動信号出力停止後に前記共振回路から減衰状に出力される自由振動波の数をカウントする自由振動波カウント処理手段と、
前記自由振動波カウント処理における自由振動波のカウント数が所定数に達したタイミングを基準として、次の前記共振回路をリレー式に駆動し、前記自由振動波カウント処理を繰り返させる繰り返し処理手段と、
所定回数の前記自由振動波カウント処理に要した時間を測定し、測定した時間を所定の信号形式で出力する検出信号出力処理手段とを備える
ことを特徴とする検出装置。 - 一回の検出処理における前記自由振動波カウント処理の繰り返し回数が、前記共振回路の数よりも多い場合は、複数の前記共振回路を前記駆動順序に従って繰り返し駆動させることを特徴とする請求項1記載の検出装置。
- 一回の検出処理における前記自由振動波カウント処理の繰り返し回数を、前記共振回路の数の倍数としたことを特徴とする請求項2記載の検出装置。
- 検出コイルとコンデンサとを接続してなる共振回路を駆動し、該共振回路から出力される振動波の位相ズレ成分にもとづいて検出を行う検出方法であって、
駆動順序が定められた複数の前記共振回路のうち、一の前記共振回路に対して駆動信号を出力すると共に、駆動信号出力停止後に前記共振回路から減衰状に出力される自由振動波の数をカウントする自由振動波カウント処理を行い、
前記自由振動波カウント処理における自由振動波のカウント数が所定数に達したタイミングを基準として、次の前記共振回路をリレー式に駆動し、前記自由振動波カウント処理を繰り返させ、
所定回数の前記自由振動波カウント処理に要した時間を測定し、測定した時間を所定の信号形式で出力する
ことを特徴とする検出方法。 - 一回の検出処理における前記自由振動波カウント処理の繰り返し回数が、前記共振回路の数よりも多い場合は、複数の前記共振回路を前記駆動順序に従って繰り返し駆動させることを特徴とする請求項4記載の検出方法。
- 一回の検出処理における前記自由振動波カウント処理の繰り返し回数を、前記共振回路の数の倍数としたことを特徴とする請求項5記載の検出方法。
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