JP2008209356A - 超音波探傷の校正方法及び管体の品質管理方法及び製造方法 - Google Patents

超音波探傷の校正方法及び管体の品質管理方法及び製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】ペネトレータを的確に欠陥判定できるようにする。
【解決手段】管体1の溶接部2を少なくとも管軸方向に超音波探傷し、溶接面における超音波ビームの領域内に存在する欠陥の合計面積と人工欠陥との信号強度差に基づき欠陥判定閾値を定めて、該欠陥判定閾値によって管体の品質管理を行なう。前記欠陥判定閾値を、所望の品質レベルから決定される管体の管軸方向溶接部の溶接面における欠陥密度と、溶接面における超音波ビームの面積から、該超音波ビームの領域内に存在する欠陥の合計面積に基づき等価欠陥径を決定し、該等価欠陥径と人工欠陥との信号強度差に基づいて定める。
【選択図】図17

Description

本発明は、溶接鋼管の溶接部に発生する微小な欠陥を超音波探傷で精度良く検出するための超音波探傷の校正方法、管体の品質管理方法及び製造方法に関するものである。
溶接鋼管では溶接部の品質が非常に重要であり、製造工程においては一般に超音波斜角探傷によって溶接部のオンライン探傷が行われている。この方法は、被検材の検査面に対して斜めに超音波を入射させ、欠陥で反射した反射波から被検材の内外表面欠陥および内部欠陥を検出するものである。通常、例えば電縫管では5MHzで45゜の屈折角を持つ超音波ビームによる反射法が適用され、mmオーダーの大きさの欠陥、例えば溶込不良、溶け落ち、介在物による割れなどの欠陥が検出される。
一方、最近では溶接鋼管に対する品質要求が厳しくなり、従来よりも小さい欠陥の検出が求められるようになってきている。例えば、電縫管では冷接欠陥や微小ペネトレータ、レーザー溶接管ではブローホールなどで、これらの欠陥の大きさは数10μm〜数100μmと非常に微小である。また、発生位置は溶接線に沿って内面から外面までのいずれの場所でも発生する可能性があり、欠陥の位置によっては超音波ビームの入射点と帰点が異なってしまう。これらの影響のため、従来実用されている超音波探傷法では検出できない場合が多く、より精度良く検出できる技術が求められている。
溶接鋼管の微小欠陥を検出する方法として、これまで以下のような従来技術が開示されている。特許文献1では、斜角探傷において周波数8MHz以上のポイントフォーカス型探触子を用いるようにし、ペネトレータに対する検出能を向上させるようにしている。また、特許文献2では、アレイ探触子によりフォーカスビームを形成して検出能を向上させ、セクタスキャンによって溶接部の内面側から外面側までをスキャンするようにしてブローホールを検出できるようにしている。
また、特許文献3では、超音波の周波数を25MHz以上500MHz以下として入射角0゜以上20゜以下で管外面側から溶接部に入射させることで、数μm以下の微細なFeOが群をなして夾雑している冷接欠陥を検出できるようにしている。さらに、特許文献4では、周波数20MHz〜80MHzのポイントフォーカス型探触子を複数用い、シーム直上から集束位置が3mm以下のピッチとなるように配置することで、0.1mm以上のブローホールを検出できるようにしている。
なお、[発明の開示]において、下記の特許文献5及び非特許文献1を引用するので、ここにあわせて記載しておく。
特開昭60−205356号公報 特開平11−183446号公報 特開昭61−111461号公報 特開平7−35729号公報 特開平4−274756号公報 日本鉄鋼協会編「超音波探傷シリーズ(II) 溶接鋼管の超音波探傷法」1988年、28〜31頁
しかしながら、上述の開示技術においても、以下に述べるような問題が残されていた。先ず特許文献1の方法では、集束した超音波のビーム幅が狭いため、溶接部の深さ方向(鋼管の肉厚方向)の全域を見逃しがないように探傷するためには、数多くのチャンネルが必要で設備コストが高くなる上、管のサイズが変わった際の位置調整などが非常に面倒であるという問題がある。また、欠陥形状がブローホール状ではなくペネトレータや冷接のように面状で、かつ位置が肉厚内部にある場合は、反射波が入射方向とは異なる方向に行ってしまうため検出が困難である。
また特許文献2の方法では、アレイ探触子が1個で済み、サイズ替わりの際の設定も電子的に行えるので、特許文献1で示した前者の問題はないものの、後者の問題については依然として未解決のままである。
さらに欠陥形状が上記のように面状の場合、例えば電縫管ではシーム部にアプセットがかかっているためにシーム直上から見た欠陥の幅は100μm以下と非常に細く、特許文献3および特許文献4の方法であっても、実際には欠陥からの反射波は非常に弱くて検出困難な場合が多い。また、表面エコー近傍の1〜2mm程度は表面エコーの残響によって不感帯となるため、欠陥の位置が外面近傍にある場合は検出できないという問題がある。
このように、溶接鋼管の管軸方向の溶接部に発生する数100μm程度以下の微小欠陥を検出する技術では、検出性能が不十分などの問題のために、近年要求される厳しい品質管理に対応するのは困難であり、それらの課題を解決する技術開発が望まれていた。
本発明は、前記事情に鑑みてなされたもので、厳しい品質管理が必要とされる電縫溶接鋼管であっても、その溶接部の肉厚内部に位置する微小欠陥を精度よく検出して、その検出結果にもとづいて品質管理を確実に行うことができるようにすることを目的とする。
本発明者等は、鋭意研究の結果、電縫溶接鋼管の管軸方向溶接面の機械的特性には、溶接部に残留するペネトレータなどの欠陥の存在が影響を及ぼしているが、単体の欠陥サイズは問題にならないほど小さいが、その存在量(ある面積内に存在する欠陥数)が溶接部の機械的特性に大きく関与しているという新規で、有用な知見を突き止めた。
当初、発明者等は電縫管溶接部の機械的特性に大きく影響を及ぼすのはペネトレータのサイズであり、溶接部に存在するペネトレータのサイズがある程度小さければ、機械的特性が優れていると考えた。そして、これらの欠陥を検出すべく探傷法を検討した結果、従来の超音波探傷法に比べ、送受波の超音波ビーム幅をより小さくして、これらの欠陥を検出するための技術に想到した。しかしながら、このビーム幅を小さくした超音波探傷技術を用いて、ペネトレータ有無を評価し、その結果と機械的特性とを比較したが、想定した結果とは全く異なっていた。つまり、ペネトレータが検出された場合でも機械的特性が良好であったり、逆にペネトレータが検出されない場合でも機械的特性が悪いという結果が得られた。その後、発明者等は、更なる詳細検討を行った結果、数μmの微小欠陥が広い範囲に分散した形態のペネトレータが機械的特性と相関があるという、従来知られていなかった、非常に有益な知見を見出した。そして、それらを検出するための超音波探傷技術を開発したのである。
ここで、図1を用いて、ペネトレータの形態を説明する。当初、機械的特性に影響を与えるペネトレータなどの微小欠陥の形態は、鋼管1の溶接部2において、3aに示すような、元々、数μmの酸化物(主にSi−Mn系)が数10〜数100μmの大きさの領域に密集(凝集)したもので、見かけ上、1個の欠陥に認識されるもの、と考えていた。(本明細書では、凝集型ペネトレータとも呼ぶ。)しかしながら、発明者らの調査によって、3bに示すような、数μmの酸化物が広い領域に多数分布(散在)したような形態を示すペネトレータ(本明細書では、散在型ペネトレータとも呼ぶ。)の存在が、分かった。この散在型ペネトレータは、従来の検出方法では明瞭には検出されず、密度が薄く断面観察が極めて難しいため、明らかになっていなかったが、発明者等が詳細調査した結果、機械的特性の評価、特に特性の優れたレベル(厳しい品質管理が要求されるレベル)の評価にあたっては、これが重要な検出対象であることが初めて判明した。そして、この知見に基づいて、電縫鋼管の溶接部の品質管理を行う発明に想到した。
図2は、サンプル管からシャルピー試験片を切り出してシャルピー衝撃試験を行なった結果である。シャルピー衝撃試験の結果では、サンプルA(サンプル数は3個)は吸収エネルギーは400J以上の良好な機械的特性を示し、サンプルB(サンプル数は3個)は吸収エネルギーが200J程度のものであった。
そして、これらのシャルピー試験片を切り出した近傍で、図3に示すように、電縫管1の管軸方向溶接面の溶接部2を、溶接面から周方向に4mmの位置で切り出した(スライスした)サンプルSを用いて、切り出した面に対して集束型超音波探触子50を用いたCスキャン法により溶接部の探傷を行ない、シャルピー衝撃試験の結果と比較した。まず、発明者等は、上述の数10〜数100μmの領域に密集した凝集ペネトレータの存在が溶接部の機械的特性に影響を及ぼすと考え、それらを検出するように、周波数50MHzの集束型超音波探触子50を用いて、ビーム幅100μmに絞って探傷した。その結果を図4に示す。図4(a)は、サンプルAのCスキャンデータで、横軸は管軸方向、縦軸は厚み方向であり、信号強度を濃淡(信号強度大ほど白色)で示している。図4(b)は、(a)のデータについて、管軸方向が同じ位置で厚み方向について信号強度最大値をとったもので、横軸を管軸方向位置とし、縦軸に信号強度最大値をプロットしたものである。同様に、図4(c)、(d)はサンプルBについての超音波探傷結果である。なお、(b)、(d)の結果には、厚み方向の信号強度最大値から推定した欠陥径の値を縦軸に示している。サンプルAでは欠陥径50μm以上に相当する信号強度の欠陥指示(上述の凝集ペネトレータに対応)が点在して多く見られ、サンプルBでは、そのような点在する欠陥指示はほとんど見られなかった。この結果は、凝集ペネトレータがあっても機械的特性が良好であり、逆にペネトレータがほとんど検出されないサンプルで吸収エネルギーが低いと言うことを示しており、発明者等が当初、想定した結果と全く逆の結果であった。
次に、発明者等は、測定条件を種々変更し、測定した。そのうち、ビーム幅を広げてみたところ(具体的には、100μmから、250μmに広げた)、これまで確認できなかった信号が得られることがわかった。その結果を図5に示す。シャルピー衝撃試験で機械的特性が良好であったサンプルAについては、図4と同様に、欠陥径40μmを大きく下回る、欠陥径25μm程度に相当する信号レベルをベースとして、欠陥径100μm程度の信号レベルが高い欠陥信号が所々に確認された。一方、サンプルBについては、図4と同様に、信号レベルが高い欠陥信号はないものの、欠陥径40μm程度に相当する信号強度を示す信号(図中の画像において淡く薄い指示)が管軸方向の全長に亘って確認された。以上の結果に基づき、発明者等は、信号レベルは欠陥径40μm程度とさほど高くないが、それが広く分布している欠陥が、溶接部の機械的特性に大きく影響しているとの知見に至った。
さらに、このサンプルBの断面を電子顕微鏡でも調査したところ、サンプルBに見られる欠陥指示部には、1個当たりの大きさが5μm〜20μmの微小な酸化物(微小ペネトレータ)がまばらに存在していることが確認され、Cスキャンの結果が裏付けられた。
ここで、超音波ビーム幅を広げたことで淡いエコー帯が検出されるようになった理由を考察する。図6に示すように、広い範囲に微小反射源が一様に散在している状態を考えると、ビーム幅が狭い場合、微小反射源がビーム内に少数しか含まれないので、ビーム面積に対する欠陥の合計面積の比率が低く、結果として反射エコーが弱くなる。一方、ビーム幅を広くすると、微小反射源がビーム内に数多く含まれるようになり、ビーム面積に対する欠陥の合計面積の比率が高くなるため、個々のエコーが弱くても、それが積算されて強まることになり、検出信号レベルが高くなる。
以上の結果から、このように個々の欠陥径は非常に小さいが、広い領域に分布した状態を示すペネトレータ(散在型ペネトレータ)も溶接部の機械的特性に影響し、その評価を精度良く行うためには、ビーム幅に好適な範囲があり、そのような条件で検出された結果にもとづいて、品質管理を行うことが可能であるという、新たな知見が導き出された。
このような発明者の知見や解析に基づき、電縫鋼管の溶接部の散在ペネトレータを検出するには従来技術レベルのビーム集束度では感度不足であるものの、集束させすぎても検出ができないことがわかった。本願発明の骨子は、溶接部の品質に大きく影響を与えるペネトレータを超音波探傷で検出するためには、超音波ビーム幅には好適な範囲があり、そのビーム幅により検出した結果から、電縫鋼管の溶接部の品質を評価するための判定レベル(閾値)の校正方法を導出し、それに基づいて確実に品質管理を行うことが可能な発明に想到したところにある。
なお、本発明において、アレイ探触子を用いているため、ビーム形状は矩形状となるので、本明細書でいうビーム幅は、ビーム面積の平方根をとった実効的な値と考えればよい。しかし、ペネトレータが管軸方向に連続している場合など管軸方向の集束が不要な場合も有り得るので、その場合は管厚方向のビーム幅と考えても良い。
上記課題を解決するために、具体的には以下のような手段が提供される。
本発明の請求項1に係る発明は、管体の溶接部の超音波探傷するに際して、溶接面における超音波ビームの領域内に存在する欠陥の合計面積と人工欠陥との信号強度差に基づき欠陥判定閾値を定めることを特徴とする超音波探傷の校正方法である。
本発明の請求項2に係る発明は、前記欠陥の合計面積を、所望の品質レベルから決定される管体の管軸方向溶接部の溶接面における欠陥密度と、溶接面における超音波ビームの面積とから決定することを特徴とする請求項1に記載の超音波探傷の校正方法である。
本発明の請求項3に係る発明は、前記欠陥密度と品質レベルの関係はシャルピー衝撃試験によって予め求めておくことを特徴とする請求項2に記載の超音波探傷の校正方法である。
本発明の請求項4に係る発明は、前記人工欠陥と等価欠陥との信号強度差は、音圧反射率の相対関係に基づいて求めることを特徴とする請求項2に記載の超音波探傷の校正方法である。
本発明の請求項5に係る発明は、管体の溶接部を少なくとも管軸方向に超音波探傷し、管体溶接部の品質管理を行う方法であって、請求項1乃至4のいずれか1項に記載の校正方法により欠陥判定閾値を定めるステップを有することを特徴とする管体の品質管理方法である。
本発明の請求項6に係る発明は、前記超音波探傷を、管体の管軸方向溶接部の溶接面に対し超音波を送波する送波部と、前記溶接面における反射波の一部又は全部を受波する受波部とを有し、前記送波部及び前記受波部が、管体周方向に配置された一又は二以上のアレイ探触子上の異なる振動子群からなる送受信部を備えた超音波探傷装置を用いて行なうことを特徴とする請求項5に記載の管体の品質管理方法である。
本発明の請求項7に係る発明は、前記送波部が、管体の管軸方向溶接部の溶接面と前記管体の内面に対し、それぞれ33.2°から56.8°の範囲内の角度で入射するように超音波を送波し、前記受波部が、溶接面における正反射方向に対して−12°から16°の範囲内の方向に反射した一部又は全部の反射波を受波するようにしたことを特徴とする請求項6に記載の管体の品質管理方法である。
本発明の請求項8に係る発明は、超音波の溶接面におけるビーム幅が0.5mmから2.5mmの範囲となるようにしたことを特徴とする請求項7に記載の管体の品質管理方法である。
本発明の請求項9に係る発明は、管体を製造する製造ステップと、該製造ステップで製造された管体を、請求項5乃至8のいずれかに記載の管体の品質管理方法により品質管理する品質管理ステップと、を有することを特徴とする管体の製造方法である。
本発明により、ペネトレータを的確に欠陥判定できるようになるため、溶接鋼管の溶接部の機械的特性に影響を及ぼす微小欠陥が発生しないように溶接プロセスを改善したり、欠陥が流出しないように製造工程で選別できるようになり、溶接鋼管の品質を飛躍的に高めることができ、従来以上に過酷な使用条件で使用できるようになる。
まず、Cスキャン法を用いて、溶接部の機械的特性に影響を及ぼす、微小欠陥が広い範囲に分布した形態の散在型ペネトレータを検出できるような条件に設定して、探傷し、その探傷結果と比較評価した。その評価するための構成の一例を図7に示す。切り出した溶接面に対して、超音波を送受信して超音波探傷を行なうための探触子50と、探触子50での超音波の送受信を制御する超音波送受信手段52と、切り出したサンプルの溶接面に対してCスキャンするために、探触子50を管軸方向と管厚方向に順次走査させるための探触子走査手段54と、Cスキャンデータを記憶する受信信号記憶手段56と、Cスキャンデータを演算処理する信号処理手段58と、演算処理に必要なパラメータを入力するためのパラメータ入力手段60と、結果出力手段62で構成される。
ここで、受信信号記憶手段56は、超音波探触子50の受信信号を、探触子走査手段54で溶接面を走査した位置とを対応付けて、記憶するようになっており、例えば、管軸方向と管厚方向に対して、受信信号強度を記憶することができるメモリ(2次元メモリ)であり、いわゆるCスキャンデータを記憶する機能を有するCスキャンデータ記憶手段である。
信号処理手段58は、このメモリのデータに対して、後述する演算に必要なパラメータをパラメータ入力手段60より入力して、機械的特性と相関のある指標値を算出するようになっており、CRT、液晶モニタやプリンタなどの結果出力手段62に画面表示や印字がされる。
この構成を用いて、具体的には、図3に示すように溶接面(シーム)から8mmの位置で切り出した(スライスした)サンプルを作成し、端面から周波数20MHzの点集束型探触子50を用いて、溶接面におけるビーム幅を440μmとした。ビーム幅440μmは、後述するように、Cスキャンにおいて、微小欠陥が広い領域(例えば、1.5×1.5mmや、2×2mmの範囲)に分布した散在ペネトレータを検出するにあたって、好適な範囲内であるので、その値を選定した。また、Cスキャンは、溶接面を厚み方向と管軸方向に対して計測した。なお、このときの、Cスキャンの感度は、φ125μmの平底穴のエコー高さが100%となるように調整した。
次に、Cスキャンを行った場所と同じ場所について、機械的特性を求めた。具体的には、長手方向10mm×厚み方向約10mmでサンプルを切り出し、ノッチ部に熱影響が入らないように継手を圧接してシャルピー試験片とし、−40℃にてシャルピー衝撃試験を実施し、その部位のシャルピー吸収エネルギーを計測した。
そして、超音波で検出した測定データ(超音波エコー高さ)から、機械的特性の指標値となる値を演算して、その値とシャルピー吸収エネルギーとの間に相関が見られるかどうかを、評価した。
図8に機械的特性と比較する指標値の演算処理方法の一例を示した。
図8(a)は、Cスキャンにより、得られた画像であり、縦軸が肉厚方向、横軸が管軸方向である。濃淡が明るい部位は超音波エコーが高く、欠陥密度が高いことを示し、暗い部位は超音波エコーが低く、欠陥密度が低いことを示している。このデータの場合、肉厚11mmの内、中央付近6mmの範囲に微小欠陥が多く分布していることがわかる。
そして、このデータに対して、以下の処理を行って、指標値を求めた。
i)各データを中心にして、所定領域(ここでは、例えば、1mm×1mmとした)の範囲について平均値を算出し、平均値データを作成する。
ii)平均データに対して、管軸方向が同じ位置で、肉厚方向に対して最大値を求めた、最大値分布データを算出する。この最大値分布データは、図8(b)に対応する。
iii)最大値分布データについて、シャルピー試験片を切り出した範囲の平均値を算出し、その値をシャルピー試験結果と比較する指標とする。
なお、上記処理については、欠陥の分布状態が、肉厚部中央付近に集中していることから、肉厚方向については中央部の6mmの範囲について行った。
これらの処理を、複数位置の、多数のサンプルについて、行って、Cスキャンから求めた指標値とシャルピー試験との結果との関係を示したものが、図9である。図9は、横軸に上記指標値(エコー高さと表記)をとり、縦軸にシャルピー試験の結果をプロットしたデータである。
これから分かるように、指標値(エコー高さ)が小さいほど、機械的特性がよくなる傾向を示していることから、この指標値(エコー高さ)により、溶接部の品質を評価することが可能であることがわかった。
一般的には、エコー高さは欠陥の面積に起因すると考えられるが、本発明が検出対象とするのは、微小欠陥が広い範囲に分布した散在ペネトレータであり、そのままの考え方を適用することができない。
そこで、発明者等は、散在ペネトレータで検出されるエコー高さは、図6に模式図を示したように、1個の微小欠陥からの反射でなく、超音波ビーム内(ここでは、ビーム幅440μm)に存在する欠陥全てからの反射を積算した信号であるとの知見に至った。つまり、エコー高さは、超音波ビーム内に存在する欠陥の面積を合計した合計面積に相関があり、例えば、一個一個の欠陥面積が同じであれば、欠陥密度が高いほどエコー高さが高くなると考えた。そこで、発明者等は、超音波ビーム内に存在する欠陥の合計面積を、見かけ上、1つの欠陥の面積として扱うことができる、等価欠陥径という値を導出した。
例えば、上述のCスキャンの測定条件において、エコー高さは欠陥面積に比例するので、エコー高さと等価欠陥との関係を算出すれば、図10のようになり、等価欠陥と機械的特性値との対応付けが可能となる。これから、図9と図10を組み合わせれば、散在ペネトレータにおいても、予めサイズの分かっている人工欠陥を用いて、感度校正ができるようになる。例えば、人工欠陥のエコー高さを基準値となるように感度調整し、要求される機械的特性に対応する等価欠陥径と人工欠陥との相対関係から、人工欠陥で定めた基準値を基準として等価欠陥径のエコー高さが求められ、そのエコー高さを、溶接部の機械的特性を評価するための閾値として決定することができる。
以上、シームスライスサンプルをCスキャンにより調査した結果について説明したが、同様な調査は鋼管のままの状態でも可能であるので、以下に説明する。
図11は、鋼管のままで散在ペネトレータを検出するための一つであるタンデム探傷の原理を説明する図である。図中、1は被検体である鋼管、2は溶接部、3は肉厚内部の欠陥、4は超音波を伝達させるための水、5はリニアアレイ探触子、6は送波用の振動子群、7は受波用の振動子群、8は送波ビーム、9は欠陥から受波用の振動子群に向かう超音波を示す部分(以下、受波ビームとも呼ぶ)をそれぞれ表す。また、送波ビーム8および受波ビーム9の中間に引いてある線はそれぞれの走査線を示す。
リニアアレイ探触子5は、溶接部2に近い側(図11における左側方向)に位置する振動子群から送波される超音波が溶接部の鋼管外面から直接入射し、溶接部から遠い側に位置する振動子群から送波される超音波が溶接部の鋼管外面に鋼管内面で1回反射したのち入射するような大きさを持たせている。そして、中心から垂直に出る送波ビームが屈折角45゜の横波で鋼管の外面側から入り、溶接部の鋼管内面側の端部に入射する(0.5スキップという)ように、鋼管の外周面に対して入射角を持たせて配置している。
送波用の振動子群6からの超音波ビームは屈折角45゜となるように鋼管の外径に合わせてわずかにアレイ探触子の中心軸側に偏向させると共に、溶接部2を横切る位置で集束するように、各振動子の遅延時間が設定されている。同様に、受波用の振動子群7については、欠陥3からの反射エコーを内面側の1回反射波として受波できるように選択されており、屈折角が45゜となるように指向性を鋼管の外径に合わせてわずかにアレイ探触子の中心軸側に偏向させると共に、溶接部2を横切る位置で集束するように、各振動子の遅延時間が設定されている。ここで、屈折角は45゜に限らず、横波での探傷が可能なおよそ30゜〜70゜の範囲で適用できるが、横波が欠陥および内面で反射する際の音圧反射率の角度依存性を考慮すると、全反射となるおよそ35゜〜55゜の範囲が望ましい。さらに、安定性を考慮して40゜〜50゜の範囲にしてもよい。
上記のように、送波ビームと受波ビームの振動子群の位置・数や屈折角が溶接部の位置に合わせて集束するように設定され、欠陥からの反射波を受波できるような位置関係になっているため、肉厚内部の微小欠陥からの反射を検出することができるようになる。
次に、図12にて、鋼管内面から外面にわたる溶接部を走査するための手順例を示す。まず、走査の開始を示すステップ1では、リニアアレイ探触子の中央近傍の振動子群を用いて、溶接部の鋼管内面側に集束位置(焦点位置)を合わせて、0.5スキップの反射法で探傷を行う。この時は送波と受波は同一の振動子群で行う。次に、ステップ2では、送波の振動子群を溶接部側にずらすとともに、受波の振動子群を溶接部から遠い側にずらし、焦点位置を溶接部の鋼管内面側から少し上(鋼管外面側)に設定することで、タンデム探傷によって溶接部の鋼管内面側から少し上(鋼管外面側)の肉厚内部を探傷する。
引き続き、ステップ3では送波の振動子群を溶接部側に、受波の振動子群を溶接部とは反対側にずらしていき、溶接部における探傷位置を鋼管外面側へと移動させて探傷を行う。図ではステップ2と3のみ図示しているが、実際には超音波の焦点サイズ(焦点位置におけるビームサイズ)を考慮して、探傷の抜け(漏れ)と重複のない効率的な探傷となるように、超音波ビームの一部が重なり合うように振動子群のずらす個数を決定する。最後にステップ4は走査の終了を示しており、溶接部から遠い側の振動子群を用いて、溶接部の外面側を1.0スキップの反射法で探傷を行う。このステップ1〜4を繰り返すとともに、鋼管とリニアアレイ探触子の相対位置を管軸方向に機械的に走査させることで、溶接部の全面全長(鋼管の外面側から内面側まで)にわたって探傷を行うことができる。
なお、送波用の振動子群6からは、管体1の管軸方向溶接部2の溶接面に対し送波ビーム8の径が0.5mmから2.5mmの範囲となるように設定され、送波される。同様に受波用の振動子群7も、受波ビームのビーム幅が0.5mmから2.5mmの範囲になるように設定される。
このようなタンデム探傷においても、Cスキャンの実験と同様に、様々な条件で溶接したサンプル管を作成し、図11に示す方法で鋼管のままで探傷を行なった後、探傷を行なった部分でシャルピー試験片を作成して−40℃でシャルピー衝撃試験を行ない、信号強度と吸収エネルギーとを比較した。この実験では、超音波のビームサイズは1.4mm×1.4mmとし、シーム部の肉厚方向に貫通させたφ1.6mmドリルホールのエコーを80%の感度に設定した後、20dB感度を高めて探傷を行なった。
図13に実験結果を示す。同図から分かるように、信号強度と吸収エネルギーにはCスキャンの場合と同様に相関があり、エコー高さが34%以下であれば400J、エコー高さが50%で200J、エコー高さが65%以上で20Jであった。また、この感度設定の際の信号強度(エコー高さ)と欠陥径の関係は図14に示すようになるので、エコー高さ34%は直径230μm、エコー高さ50%は直径280μm、エコー高さ65%は直径320μmの欠陥径に相当する。なお、図14において、等価欠陥径を欠陥密度に変換し、図13に対応付けると、図15に示すような微小ペネトレータ密度(欠陥密度)と吸収エネルギーとの対応付けが可能となる。
このように、鋼管のままで溶接部を探傷できるタンデム探傷でも、散在ペネトレータを検出して品質管理を行うに際し、検出した結果から算出される等価欠陥径と機械的特性値との対応付けが可能であることがわかった。この知見に基づいて、予めサイズの分かっている人工欠陥を測定し、その欠陥径と等価欠陥径とを比較することによって、感度校正が可能となる。
この感度校正は、例えば、図16のような手順で実施すればよく、図17に示す感度調整の模式図と合わせて説明する。
まず、ステップS1で入力される要求仕様の機械的特性値に応じて、ステップS2で、図15に示したような関係を用いて、対応する欠陥密度を決定する。
次いでステップS3で、ビームサイズa、bに応じて、次式によりビーム内合計面積Sを計算する。なお、タンデム探傷では、アレイ探触子を用いているため、ビーム形状が矩形となるので、ビームサイズa、bとあるのは、矩形の各辺の長さである。
S=a・b・dp …(1)
ここで、a、bは、ビームサイズの厚み方向と長手方向の寸法、dpは欠陥密度である。ここで、a・bはビーム面積となるが、Cスキャンの場合はビーム形状が円形または楕円形状となるので、その形状に合わせたビーム面積になるように式(1)を定めればよい。
次いでステップS4で、感度校正に用いる人工欠陥との強度差を計算する。具体的には、例えば円形平面疵の音圧反射率R1は次式で表わすことができる。この式は、散在ペネトレータにおける音圧反射率を求める際に、等価欠陥径を用いて算出するものである。
R1=(2πr2)/(λx)=(2S)/(λx) …(2)
ここで、rは等価欠陥(ビーム内合計面積の円形の欠陥)の半径、λは波長、xは欠陥からの距離である。
又、人工欠陥に一般的に使用されるドリルホールは、円柱疵と考えれば良く、その円柱疵の音圧反射率R2は次式で表わすことができる。
R2=√{r/(r+x)} …(3)
従って、R1、R2より、等価欠陥とドリルホールの信号強度差ΔGは次式で求められる。
ΔG=20*log(R1/R2)(dB) …(4)
次いでステップS5では、エコー高さが、信号処理を行う際に、精度良く処理し判定可能なレンジとなるように、感度補正を行なって、欠陥判定のための閾値を決定する。例えばステップS4で信号強度差ΔG=−30dBと求められた場合、ドリルホールDHの強度をチャートで100%に設定する(信号処理でのダイナミックレンジの最大値に設定する)時、−30dBはダイナミックレンジの最大値の3.1%となるので、チャート上(信号処理上)では低すぎて認識できない。つまり、判定するための分解能が低くなり、信号での判定には不十分なレベルとなる。そこで、例えば20dB(10倍)等の感度補正を行なうとすれば、閾値は31%になり、チャート上でも、信号処理の演算でも精度良く判定できるようになる。閾値は20〜60%の範囲とするのがよく、この範囲にあるように、感度補正量を、信号強度差ΔGに基づいて決定すればよい。
次いでステップS6に進み、人工欠陥(例えば、ドリルホールφ1.6mm)がある校正用の鋼管を測定し、その受信した信号レベルが所定レベルになるよう受信した信号を増幅する受信信号用増幅器の感度調整(ゲイン調整)を行なう。なお、所定レベルは、チャート上の100%に対応する値や信号処理装置ではダイナミックレンジの最大値とするのがよい。これは、図17のゲイン設定1に対応する。
次いでステップS7に進み、さらに、受信信号用増幅器に対して、ステップS5で設定した感度補正量に対応して、感度調整(ゲイン調整)を行なう。これは、図17のゲイン設定2に対応する。
次いでステップS8でステップS5で決定した閾値で、探傷を行なう。
このように、例えば、人工欠陥のエコー高さを基準値になるように感度調整し、その基準値に対するエコー高さによって、溶接部の機械的特性を評価するための閾値を決定することができる。
以上が、本発明に係わる校正方法の説明であるが、上述のタンデム探傷法を電縫溶接鋼管の溶接部に適用するために種々検討をしているので、その具体的な詳細について以下に説明をする。
まず、アレイ探触子1における開口幅の決定については、以下のように考えればよい。
図18(a)はビーム幅(四角の一辺に対応するビームサイズ、図18ではビームサイズと表記)と等価欠陥径(ビーム内の欠陥合計面積)との関係を示した図である。欠陥密度が0.03mmの場合と、0.02mmの場合について、超音波ビーム内に存在する欠陥合計面積を等価欠陥径として、ビーム幅(ビームサイズ)を変化させたときの、等価欠陥径を理論的に算出したものである。ビーム幅が大きくなるにつれて、等価欠陥径が大きくなるが、ビーム幅1.5mm以上で飽和して、一定値となる。このように飽和するのは、ここの解析において、散在型ペネトレータの分布範囲を1.5mm×1.5mmと仮定したためである。
図18(b)は、タンデム探傷において、上述の図18(a)に示した等価欠陥径に対応する音圧反射率から、そのときの信号強度を計算し、dBで表わした図である。ノイズレベルの−40dBはタンデム探傷で実際に得られるレベルをおよそで描いたものである。ビーム幅(ビームサイズ)が大きい側でノイズレベルが大きくなるのは、ビームサイズが大きくなると、内外面の表面粗さに起因するノイズを検出してしまいノイズレベルが増えるためである。タンデム探傷で、ノイズレベルが信号レベルより小さい範囲となる、ビーム幅0.5〜2.5mmの範囲が適用可能な範囲であることがわかる。また、欠陥密度0.02mmでは、やや信号強度が低くなるので、ビーム幅0.7mm超えから2.5mmが適用範囲となり、さらには、良好のS/N比とするためには、信号レベルとノイズレベルとの差が5dB以上であるのが望ましいので、1〜2mmがより好適な範囲である。
一方、図18(c)は、タンデム探傷とCスキャンの違いを比較するべく、上の等価欠陥径の信号強度を計算し、dBで表わした図である。図18(c)では、信号レベルを欠陥密度0.03mmのみの場合について示している。Cスキャンの場合は、ビーム幅が0.2〜1mmの範囲で、信号強度がノイズレベルを上回っているので、この範囲が散在ペネトレータを検出するための適用範囲である。上述、図7でのCスキャンを用いた実施形態で、ビーム幅を440μmとしたのは、このときに、信号強度とノイズレベルとの差が最も大きく、S/Nが良好となる範囲となるためである。なお、Cスキャンとタンデム探傷と、適用範囲が異なる理由は、シングルプローブであること、水距離が近いこと、表面が研磨面であることなどの好条件のため、タンデム法に比べてノイズレベルが低くなる。一方、ビームサイズが1mmを越えると、サンプル側面の影響(ビーム伝播経路が遮られたり、サンプル側面での乱反射が発生し、そのノイズ信号を拾う)でS/Nが悪化するからである。
従って、タンデム法を用いた場合には、Cスキャンとは異なるビーム幅(ビームサイズ)となるように開口幅を設定する。
なお、タンデム探傷において、ビーム幅dを得るための振動子の開口幅Dは、次式により求められる。
ここで、dは、図19に示す如く、探傷位置におけるビームサイズ、Fは焦点距離、λは波長、θは屈折角、θwは入射角である。
例えば、水距離30mm、鋼中の路程を24mmとすると、焦点距離Fは30+24/1480×3230=82mm、周波数を10MHzとすると波長λは1480/10MHz=0.148mmである。従って、ビーム幅d=1.5mmを得るための開口幅Dは、式(5)から、D=15mmと求められる。
以上のようにして求められた開口幅より振動子群の振動子数は求められる。ここで各走査線の振動子群の振動子数は一定でも良いが、感度をより均一にするためには、各走査線毎に振動子数を変化させても良い。すなわち、アレイ探触子を用いたタンデム探傷においては、振動子群の内、溶接部に近い側ほど焦点距離が短く、溶接部から遠い側ほど焦点距離が長いので、振動子の位置に応じた焦点距離Fを考慮し、ビーム幅が上述の範囲に収まるように、あるいは、ビーム幅が一定となるように、開口幅を求め、同時励震する振動子数を決定する。そして、この開口幅に対応する振動子数を同時励振するように制御をおこなう。なお、ここで同時励振する振動子数とは、1回の送波や受波に用いる振動子群の振動子数をいう。そして、この振動子群のなかで、集束や偏向の制御のために、各素子に対して遅延時間が設定される。
次に、溶接面への入射角、反射角については、以下に示すように決定すればよい。図20に、欠陥の大きさと反射指向性の関係を理論的に検討した結果を示す。ここで、図20に示した結果は、図21に示すように、超音波を−45°方向から入射し、周波数10MHz、15MHz、20MHzにおいて、それぞれ管肉厚方向に対応する(図21では横方向に対応する)欠陥サイズ(等価欠陥サイズ)0.1mm、0.2mm、0.4mm、0.8mmの条件で、各反射角度における信号強度を理論的に計算して求めたものである。なお、図20の縦軸は正反射角度である45°の信号強度を基準値1として、規格化した相対値で示している。いずれの場合も超音波を入射した−45゜方向に反射する反射波の信号強度は非常に低く、正反射方向45゜のおよそ0.2以下である。いずれの場合も正反射方向である45゜方向が最も強いことがわかる。
この計算条件で指向性が最も鋭い欠陥サイズ0.8mmの20MHzでは、正反射角度の信号強度に対して、信号強度が半分(図20で値が0.5)になる角度は40゜〜50゜の範囲である。このように、欠陥サイズによって指向性は異なるため、検出したい欠陥の大きさによって受波ビームの溶接部に対する入射角の範囲を決定すればよい。例えば、より大きな欠陥も感度の低下なく検出するためには受波ビームの溶接部に対する入射角は45゜に近い角度が望ましく、例えば15MHzで0.8mmの欠陥の信号強度低下を半分に抑えるには39゜〜52゜以内の範囲が好ましい。反対に例えば15MHzで0.4mm以下のみの小さな欠陥を対象とする場合は33゜〜61゜の範囲でも好ましい。
上記解析により、欠陥における超音波の反射信号は、正反射方向をピークとして信号強度が高くなるので、その正反射方向の超音波を受波することが最も好ましいが、反射強度がピークの50%であれば十分に検出できるので、その範囲に対応する角度範囲に反射した超音波を受波すればよい。
図20に示される、周波数15MHzで欠陥サイズ0.4mmの反射指向性の結果からすれば、反射強度がピークの50%以上となる反射角度が33°〜61°であるから、正反射角度である45°を基準として、−12°〜+16°の範囲が好ましい範囲である。また、周波数20MHzで欠陥サイズ0.8mmまでを対象とすれば、正反射角度に対して、−5°〜+5°の範囲が好ましい範囲となる。また、上述の例は、欠陥への入射角45°で反射角度特性を示したが、逆の反射角度を45°としたときの入射角特性も同様の結果が得られるし、45°以外の入射角度であってもよいし、モード変換ロスの条件をクリアできる入射角度範囲であれば、ほぼ同様な特性が得られることになる。
なお、モード変換ロスを考慮すると、横波での探傷に適した屈折角は、およそ30゜〜70゜の範囲で適用できるが、横波が欠陥および内面で反射する際の音圧反射率の角度依存性を考慮すると、全反射となるおよそ35゜〜55゜の範囲がより望ましい。さらに、安定性を考慮して40゜〜50゜の範囲にしてもよい。また、送波と受波の屈折角は同一であることが最も望ましいが、欠陥の反射指向性はブロードであることから、反射指向性の範囲内で異なっていても適用できる。
以下に、図22を参照して、モード変換ロスが発生しない屈折角度範囲に設定する手順について説明する。
1)屈折角を決め、アレイ探触子の位置および角度を定める。
1)−1:溶接面への入射角θaを考慮して、屈折角θを決定する。モード変換ロスが発生しない理論的な溶接面への入射角は、33.2°≦θa≦56.8°であり、この範囲内であれば溶接面を管肉厚み方向の内面外面にかけて走査する際に、溶接面への入射角が一定でなく、変化しても構わない。よって、ここでは計算を容易にするために、屈折角θが一定になるようにする例で示す。ここで、溶接面への入射角度θaは、θa=90°−θ−θ1であり、また、θ1は、0〜θ2の範囲で溶接部肉厚方向位置により変化する(例えば、内面側ではθ1=θ2、外面側でθ1=0となる。)。例えば、θ2=4°、屈折角45°のときは、θa=41°〜45°。また、溶接部の管肉厚中心近傍に入射するときに屈折角を47°とすれば、溶接部の肉厚方向中心部でθa=約45°となり、内外面での走査では、θa=43°〜47°の範囲となる。
1)−2:アレイ探触子の中心に位置する振動子から、その探触子面に対して垂直方向に送波されるビームが、所定の屈折角度(例えば、45°)で、横波超音波が鋼管外面側から入射し、溶接面の内面側端(または外面側端)の位置に所定の入射角(例えば、上述の例では41°)で入射するように、アレイ探触子の位置および角度を定める。
2)アレイ探触子の各振動子から送受波される走査線が管の外面上に入射する位置を決める。
2)−1:決め方は色々あるが、例えば、対象となる振動子(又は振動子の間の位置)について、管外面上を走査して、振動子位置と外面走査位置と外面接線とで決まる屈折角θを算出し、θが1)−1で決めた値になる外面上の入射位置を決定する。具体的には、各振動子から外面上の各点(例えば、各点は外周上に等間隔や任意間隔に配置)とを直線で結んで走査線を定め、それら各走査線について屈折角θを計算し、θが所定の屈折角と同じ、あるいは、最も近い値となる走査線を選択し、その走査線の入射位置とする。
2)−2:振動子位置と上記2)−1で決めた外面上の入射位置と管形状(径と厚さ)から管入射後の伝播経路を幾何学的に求め、溶接面への入射位置を割り出す。
3)上記1)でアレイ探触子の中心で位置決めし、かつ屈折角一定で上記処理をしているので、アレイ探触子中心の走査線を基準として対称的に、溶接面上に2)−2で求めた伝播経路(走査線)のルートの組合せ(ペア)ができる。このペアを送波・受波の走査線とし、送波部・受波部それぞれの中心振動子とする(この振動子を中心に送波部・受波部の振動子群が形成される)。なお、振動子群の数が偶数の場合は、中心位置が振動子の境界に修正されて、上記処理を行う。さらに、ここでは屈折角θ一定として計算したが、溶接面への入射角θaを一定として計算してもよいし、θおよびθaの双方を変化させることも可能である。
この超音波探傷装置を用いて、溶接面の厚み方向にビームを走査するための、振動子群の制御手順を以下に説明する。具体的には、送波・受波の振動子群、振動子の数、偏向角、焦点距離を、以下の手順で決定すればよい。ここでは、屈折角が一定となるように、送波部と受波部に使用する振動子群の幅は、必要な感度が得られるための集束係数から求めることとして、図11または図23を適宜参照して説明する。なお、以下に示すa)、b)、g)の内容は、前述した1)、2)、3)に対応するので、ここでは簡潔に説明を行う。
a)リニアアレイ探触子の中心に位置する振動子から、その探触子面に対して垂直に送波されるビームが所定の屈折角度(例えば、屈折角45゜)の横波で鋼管に入り、溶接部の鋼管内面側または鋼管外面側に入射するように、リニアアレイ探触子の位置を定める。
b)各振動子からの鋼管外面への入射角が常に一定、または、所定の範囲になるように、幾何学的に入射点を決め、さらに屈折角45゜で鋼管内を通る線(走査線)を決定する。
ここでいう、各振動子とは送波部の中心位置に対応する振動子であり、送波部の振動子群と鋼管外面の入射点との位置関係が決定される。また、屈折角に対応して鋼管入射後の伝播経路、すなわち、内面での反射点、外面での反射点、溶接面での反射点が定まることとなる。
c)上記入射点と各振動子の位置関係から、各走査線の偏向角を計算する。
d)各走査線の水距離と、溶接部までの鋼中路程を計算し、音速と水距離で換算して水中焦点距離Fを求める。
e)必要なビーム幅dに合せて、式(5)を用いて、各走査線の開口幅Dを計算し、その開口幅Dを振動子ピッチで割って四捨五入することにより、各走査線の振動子群の振動子数n(「同時励振する振動子数」に対応)を求める。なお、必要なビーム幅dとは、上述のように、微小欠陥が広い範囲に分布した形態を示す散在ペネトレータを検出するために適用されるビーム径の範囲であり、0.5〜2.5mm、好ましくは0.7mm超えから2.5mm、より好ましくは、1.0〜2.0mmである。
f)各走査線の振動子位置と振動子数nから、送波部を構成する各振動子群の位置を決定する。
g)各走査線の溶接部で交わる位置関係から、探傷に使用する走査線を決定するとともに、送波の振動子群とペアとなる受波の振動子群を決定する。送波部と受波部のペアの選択は、逆方向から伝播してきて、溶接部で交わる走査線同士をペアとすればよい。また、溶接部の同じ箇所を要求される空間分解能に対して必要以上に重複している場合には、間引くようにしてもよい。
h)探傷に使用する全ての走査線について、振動子群の数、焦点距離と偏向角が決定されるので、各振動子に与える遅延時間をそれぞれ計算する。この計算方法については、本発明者により以前に出願された特許文献5に開示されている公知技術を利用すればよい。
計算の基本的な考え方を、以下に図24および数式を参照して説明する。まず、振動子群の中心位置を座標の原点とし、焦点距離をF、偏向角をθとして、焦点位置の座標{Xf,Yf}を以下のように求める。
Xf=F・sinθ、Yf=−F・cosθ
次に振動子ピッチをP、振動子群の振動子数をn(ただし、nは偶数)として、各振動子の座標{Xp(i),Yp(i)}を求める。
Xp(i)=−n・p/2−p/2+p・i、Yp(i)=0 (i=1〜n)
さらに、焦点位置と各振動子との距離Z(i)およびその最大値Zmを次のように求める。
Z(i)=SQRT{(Xf−Xp(i))+(Yf−Yp(i))} (i=1〜n)
Zm=max{Z(i)} (i=1〜n)
最後に、次式で遅延時間Δt(i)を求める。なお、Cは音速である。
Δt(i)=(Zm−Z(i))/C (i=1〜n)
なお、上記は計算の基本的な考え方を示したものであって、各走査線のそれぞれについて振動子群の中心位置を座標の原点とする必要は必ずしもない。また、振動子数nは偶数として説明したが、奇数であってもよい。奇数の場合には、上記式を一部変更すれば適用可能であることはいうまでもない。実際の計算においては、予めアレイ探触子の素子それぞれの座標を決めておき、焦点距離と偏向角に応じて焦点位置の座標を求め、上記焦点位置と各振動子との距離Z(i)を求めるようにすれば良い。
図23は、このように決定された走査線と、その走査線のうちの代表的な点の探傷条件計算結果の一例を示す図である。外径φ558.8mm、肉厚25.4mmの鋼管を、超音波周波数15MHz、振動子の間隔を0.5mmピッチ、160素子(振動子)のリニアアレイ探触子で、中心の水距離20mm、屈折角45゜で探傷する例を示している。ここで振動子番号は、溶接部に近い側を1、遠い側を160とした。
図25は、図23に示される走査線Aについて遅延時間を計算した結果と送波の原理を示した図である。図中、10は、上記1)〜8)までを計算する探傷条件計算部、11はそれに基づいて送波パルスの送波タイミングを決定する遅延時間設定部、12はパルサー、13はリニアアレイ探触子5の各振動子である。図では、振動子番号17〜22のみが選択され、振動子番号17が一番先に励振され、徐々に時間遅れをもって振動子番号18〜22までが励振されることが示されている。これによって、走査線Aに相当する送波ビームが形成される。
図26は、図23に示される走査線Cについて遅延時間を計算した結果と受波の原理を示した図である。図中、13はリニアアレイ探触子の各振動子、14は受信アンプ、15は遅延時間設定部、16は合成処理部、17はゲート評価部である。図では、振動子番号124〜155のみが選択され、欠陥からのエコーが振動子番号124に一番先に入射し、徐々に時間遅れを持って振動子番号125〜155まで受信され、遅延時間設定部15にてこの時間遅れが補正されて位相が一致し、合成処理部16にて合成され、集束効果によってエコーが大きくなることが示されている。
これによって、走査線Cに相当する受波が行われる。この後、ゲート評価部17にて、送波パルス(図中のTパルス)からビーム路程に応じた距離に設定された時間域(ゲート)にて欠陥エコー(図中のFエコー)の有無が判定され、探傷が行われる。なお、遅延時間設定部15、合成処理部16、ゲート評価部17については、受信アンプ14を出てすぐにA/D変換し、信号をメモリに記憶してからソフト的に処理を行っても実施できる。
上記説明では探傷条件の計算は、まず各走査線の入射点を決めてから、順次計算を行っていったが、これに限られることなく、例えば、焦点位置を決めてから、その焦点位置に至る伝播時間が最も短い経路を各振動子について探索的に求めるようにしても良い。
なお、タンデム探傷において、電縫溶接鋼管溶接部の機械的特性を評価するためには、送受信する超音波のビーム幅を0.5〜2.5mmとする必要があるが、ビームの集束度を表現するパラメータの一つである集束係数も、その適用範囲がある。集束係数Jとは、集束位置での音圧上昇を示した値である。
ここで、Dは振動子の開口幅、Fは焦点距離、λは波長である。なお、式(6)において、焦点距離Fと波長λは水中換算の値を用いる。
図27に、周波数5MHz〜15MHz、焦点距離F=60mm〜80mm(鋼管の肉厚10mm〜16mmの範囲にほぼ相当)の条件で、式(6)を用いて、理論的に集束係数とビーム幅(ビームサイズ、図27ではビームサイズと表記)の関係を計算した結果を示す。これからわかるようにビーム幅(ビームサイズ)が小さいと、集束係数が大きくなり、ビーム幅が大きいと、集束係数が小さくなる。集束係数は音圧上昇を示す値であるので、大きな値ほど良いが、上述のように、微小欠陥が広い範囲に分布している形態の散在ペネトレータの検出においては、集束係数を大きくすると、ビームサイズが最適な範囲より小さくなってしまうので、ビーム幅が最適な範囲となることも考慮する必要がある。例えば、散在ペネトレータを検出するために適用可能な、超音波のビーム幅が0.5〜2.5mm程度に対しては、、集束係数は、−13dB〜28dBがそのまま対応する範囲となるが、ビーム幅との兼ね合いを考えれば、集束係数は−5〜20dB程度が適用範囲であり、ビーム幅の好適範囲である、1.0〜2.0mm程度に対しては、集束係数は−10〜5dB未満程度となり、集束係数の適用可能な範囲である。
本発明の実施例を以下に図面を参照しながら説明していく。
図28は、タンデム探傷に係る超音波探傷装置の機能構成例を示す図である。被検体サイズ入力部30では、オペレータあるいはプロセスコンピュータから、探傷を行う鋼管の外径、肉厚の値が入力される。アレイ探触子記憶部31には、アレイ探触子5の周波数、振動子ピッチ、振動子数が記憶されている。
開口幅制御部32では、送受信において、ビーム幅(ビームサイズ)に対応した開口幅を制御するとともに鋼管のサイズ及びアレイ探触子の仕様に応じて、送波用アレイ探触子の位置、送波用走査線の数、各走査線の送波用ビームの経路を計算する。次に、各経路において、焦点距離、偏向角を求める。その焦点距離、超音波周波数を、式(5)に代入して、ビーム幅が所定の範囲になるように開口幅を求める。なお、ビーム幅の所定の範囲は、上述したように、0.5〜2.5mmが適用範囲であり、好ましくは0.7mm超えから2.5mm、より好ましくは1.0〜2.0mmである。
開口幅を振動子ピッチで除算して、各走査線の送波用振動子群の振動子数を求める。そして、走査線位置と振動子数から送波用振動子群の位置を決定し、さらに走査線毎に各振動子の遅延時間を計算する。このように決定された上記の各値をここではアレイ送信則と呼ぶ。
開口幅制御部32では、又、鋼管のサイズ及びアレイ探触子の仕様に応じて、アレイ探触子の位置、受波用走査線の数、各走査線の受波用ビームの経路を計算する。次に、各経路における焦点距離、偏向角を求める。その商店距離、超音波周波数を、式(5)に代入して、ビーム幅が所定の範囲になるように開口幅を求める。なお、受波においても、送波同様に、ビーム幅の所定の範囲は、上述したように、0.5〜2.5mmが適用可能範囲であり、好ましくは0.7超えから2.5mm、より好ましくは1.0〜2.0mmである。
開口幅を振動子ピッチで除算して、各走査線の受波用振動子群の振動子数を求める。そして、走査線位置と振動子数から受波用振動子群の位置を決定し、さらに走査線毎に各振動子の遅延時間を計算する。このように決定された上記の各値をここではアレイ受信則と呼ぶ。さらに、開口幅制御部32にて計算されたビームの経路に基づき欠陥検出用のゲート位置を決定してゲート位置記憶部33に記憶する。
なお、ここで、アレイ受信則は先に求めたアレイ送信則に基づいて決定しても良いし、反対にアレイ受信則を先に求めてそれに基づいてアレイ送信則を決定しても良い。このようにして決定されたアレイ送信則とアレイ受信則はそれぞれアレイ送信則記憶部34とアレイ受信則記憶部35にて記憶され、以下の送受信制御に用いられる。
アレイ送信部36では、アレイ送信則記憶部34に記憶されたアレイ送信則に基づいて、送波用の振動子群を選択し、各素子に遅延時間を付けて送信パルスを発生する。アレイ受信部37では、アレイ受信則記憶部35に記憶されたアレイ受信則に基づいて、受波用の振動子群を選択し、各素子に遅延時間を付けて信号を加算し、探傷波形を得る。ゲート部38では、ゲート部記憶部33に記憶されたゲート位置の信号を抽出する。
このようにして1走査線の探傷が終了したら、アレイ送信則記憶部34に記憶されたアレイ送信則に基づいて、次の送波用の振動子群を選択し、以下上記と同様に探傷を繰り返し行う。
なお、管軸方向については、アレイ探触子と溶接鋼管が相対的に移動する条件を設定できればよい。例えば、製造工程に組みこむのであれば、溶接鋼管が管軸方向に移動するので、アレイ探触子を固定して、管厚方向に走査すれば、その管軸方向に走査することになるし、溶接鋼管が静止した状態であれば、アレイ探触子を機械的な機構を用いて移動させればよい。
欠陥判定部40では、判定しきい値入力部39に入力された欠陥判定閾値(しきい値)と、ゲート内の信号強度とを比較し、信号強度が閾値以上であれば欠陥と判定する。ここで、比較する信号強度は、ゲート内のそのままの信号でなくとも、例えば図8に示したような、平均化処理や最大値処理された後の、計算値(指標値)であってもよい。このようにして1走査線の探傷が終了したら、アレイ送信則記憶部34に記憶されたアレイ送信則に基づいて、次の送波用の振動子群を選択し、以下上記と同様に探傷を繰り返し行う。なお、欠陥の判定については、信号強度が閾値以上となる場合が複数回あった時に欠陥と判定するようにしても良い。
感度校正部では、本願発明の感度校正をおこなう。以下に、感度校正の手順について、実施形態で説明した、図16と合わせて説明する。
まず、感度校正部70は、プロセスコンピュータとの間で、製造条件や製品仕様を入力できるようになっており、データ検査開始前に、プロセスコンピュータから、これから製造され検査される電縫溶接鋼管の機械的特性に係わる要求仕様(溶接部の機械的特性、例えば、シャルピー衝撃試験における吸収エネルギーの許容値)を入力する(ステップS1)。
そして、入力される要求仕様の機械的特性値に応じて、図15に示したような関係を用いて、欠陥密度を決定する。なお、図15に示すデータは、予め多数のサンプルとの対比によって求めておき、機械的特性から欠陥密度を算出する式やテーブルデータとして、記憶しておけばよい(ステップS2)。
開口幅制御部32から、設定するビームサイズを入力し、ビームサイズa、bと、ステップ2から参照した欠陥密度に基づいて、次式によりビーム内合計面積であるSを計算する(ステップS3)。ここでは、アレイ探触子を用いているため、ビーム形状が矩形となるので、ビームサイズa,bは、矩形の各辺の長さである。
S=a・b・dp …(1)
ここで、a、bは、ビームサイズの厚み方向と長手方向の寸法、dpは欠陥密度である。
次いで、感度校正に用いる人工欠陥のサイズを、プロセスコンピュータや入力端末などから入力し(あるいは、人工欠陥が常に同じのものであれば、入力せず、感度校正部70で記憶しておいてもよい。)、その人工欠陥のサイズとステップS3で求めたビーム内合計面積Sに対応する等価欠陥径とのエコー高さの強度差(比率)を計算する。
具体的には、例えば円形平面疵の音圧反射率R1は次式で表わすことができる。この式は、散在ペネトレータにおける音圧反射率を求める際に、等価欠陥径を用いて算出するものである。
R1=(2πr)/(λx)=(2S)/(λx) …(2)
ここで、rは等価欠陥(ビーム内合計面積の円形の欠陥)の半径、λは波長、xは欠陥からの距離である。
又、人工欠陥に一般的に使用されるドリルホールは、円柱疵と考えれば良く、その円柱疵の音圧反射率R2は次式で表わすことができる。
R2=√{r/(r+x)} …(3)
従って、R1、R2より、等価欠陥とドリルホールの信号強度差ΔGは次式で求められる。
ΔG=20*log(R1/R2)(dB) …(4)
そして、ステップS4で求めたΔGに基づいて、得られるエコー高さが、信号処理を行う際に、精度良く処理し判定可能なレンジとなるように、感度補正を行なうとともに、欠陥判定のための閾値を決定する。例えば、信号強度差ΔG=−30dBと求められた場合、ドリルホールDHの強度をチャートで100%に設定する(信号処理でのダイナミックレンジの最大値に設定する)時、−30dBはダイナミックレンジの最大値の3.1%となるので、チャート上(信号処理上)では低すぎて認識できない。つまり、判定するための分解能が低くなり、信号での判定には不十分なレベルとなる。そこで、例えば20dB(10倍)等の感度補正を行なうとすれば、閾値は31%になり、チャート上でも、信号処理の演算でも精度良く判定できるようになる。閾値は20〜60%の範囲とするのがよく、この範囲にあるように、感度補正量を、信号強度差ΔGに基づいて決定すればよい。
また、自動的に決定する場合には、閾値(例えば、50%などに)を予め設定しておき、ΔGの値が閾値になるように、ΔGの値と閾値との比率から感度補正値を決定してもよい。
その後、人工欠陥(例えば、ドリルホールφ1.6mm)がある校正用の鋼管を測定し、その受信した信号レベルが所定レベルになるよう受信信号部の増幅器(図示せず)の感度調整を行なう(ステップS6)。また、ここで使用する信号レベルは、通常の探傷時に欠陥判定のために用いられる指標値と同様の信号処理が施されたものである。なお、所定レベルは、チャート上の100%に対応する値や信号処理装置ではダイナミックレンジの最大値とするのがよい。なお、校正用の人工欠陥の測定は、超音波探傷装置をオフラインに移動できる機構を備えて、オフラインで測定できるようにしてもよいし、校正用の鋼管を、製造ラインにおいて通常の測定と同じようにしてもよい。
更に、ステップS5で設定した感度補正量を増幅器に設定するとともに(ステップS7)、ステップS5で決定した閾値を、判定閾値入力部にて設定する(ステップS8)。その後は、この閾値が欠陥判定部に設定されて、その閾値により要求仕様を満足するか否かの判定を行う。
なお、この校正は、検査条件が変わるタイミング以外に、増幅器の経時変化などに対応する定期的な校正にも適用可能である。
以上の、校正方法によって、散在ペネトレータであっても、品質管理を精度良く行うことが可能となる。
次に、実施例1に示した超音波探傷法を、電報鋼管の製造工程に適用するための構成例を図29を用いて説明する。図29において、帯板を供給するアンコイラー151、形状を矯正するレベラー152、ロール成形機154、フィンパス成形機155、誘導加熱装置156、スクイズロール157、サイザー158を有する装置で、例えば、板幅1920mm×板厚19.1mmの帯板を電縫溶接し、サイザー158を通してφ600の鋼管を製造する。図において、159は、管切断機である。
ここで、タンデム探傷用のアレイ探触子5を、例えば、溶接完了後のサイザー158の入側又は出側、又は、管切断機159の出側に配置して、その結果に基づいて機械的特性を評価することで、品質管理を行なうことができる。構成としては、アレイ探触子5の送受信を行うアレイ送受信手段160と、アレイ探触子5の送受信にあたりビーム幅、開口幅、鋼管への入射角度などの各条件を制御する制御手段162と、アレイ探触子5の受信信号に基づいて溶接部における欠陥判定や機械的特性を評価するための、感度校正部を含む品質判定手段164と、該品質判定手段164での判定結果を表示や印字などする結果出力部166と、から構成される。なお、図28の各機能部と対応づけると、アレイ送受信手段160は、アレイ送信部36と、アレイ受信部37と、アレイ送信則記憶部34と、アレイ受信則記憶部35とを含み、制御手段162は、開口幅制御部32と、ゲート位置記憶部33と、ゲート部38と、被検体サイズ入力部30と、アレイ探触子記憶部31とを含み、品質判定手段164は、受信信号記憶部56と、信号処理部58と、感度校正部70と、パラメータ入力手段60と、判定閾値入力部39と、指標値−機械的特性対応付け用データ64とを含んだ機能をそれぞれ有している。
従って、製造ラインにおいて、タンデム法を用いた超音波探傷によって電縫溶接管の品質管理を行うにあたり、要求仕様が変わる毎や定期的なタイミングにおいて、製造管理用コンピュータから校正の指示を受けて、校正用サンプルを測定するようにすれば、校正が可能となる。また、校正方法は、実施例1に示した手順と同じように行えばよい。
なお、図28に示した受信信号記憶部に受信信号データを記憶するに当たっては、管厚方向の探傷位置は、アレイ探触子の振動子を制御して走査するので、制御手段162からデータを入力し、管軸方向については、製造ラインにおける鋼管の移動距離を検出するセンサ等から入力すればよい。又、鋼管のサイズ等の条件は製造管理用コンピュータ170と品質判定手段164(又は制御手段162)とが接続されて、データ入力可能なようにすればよい。また、その他の検査条件を鋼管の種類によって変更する必要が有る場合には、適宜、製造管理用コンピュータ170から入力すればよい。
実施例1、実施例2は、鋼管のままで、感度校正を行うための実施例を説明したが、鋼管のままではないが、Cスキャン法を用いた場合でも、同様の校正方法が適用できるので以下に説明する。
Cスキャン法にて実施するための構成の一例を図30に示す。切り出した溶接面に対して、超音波を送受信して超音波探傷を行なうための探触子50と、探触子50での超音波の送受信を制御する超音波送受信手段52と、切り出したサンプルの溶接面に対してCスキャンするために、探触子を管軸方向と管厚方向に順次走査させるための探触子走査手段54と、Cスキャンデータを記憶する受信信号記憶手段56と、Cスキャンデータを演算処理する信号処理手段58と、演算処理に必要なパラメータを入力するためのパラメータ入力手段60と、結果出力手段62と、感度校正部70と、から構成される。
ここで、受信信号記憶手段56は、超音波探触子50の受信信号を、探触子走査手段54で溶接面を走査した位置と対応付けて、記憶するようになっており、例えば、管軸方向と管厚方向に対して、受信信号強度を記憶することができるメモリ(2次元メモリ)であり、いわゆるCスキャンデータを記憶する機能を有するCスキャンデータ記憶手段である。
信号処理手段58は、このメモリのデータに対して、後述する演算に必要なパラメータをパラメータ入力手段60より入力して、機械的特性と相関のある指標値を算出するようになっており、CRT、液晶モニタやプリンタ等の結果出力手段62に画面表示や印字がされる。
感度校正部70は、演算処理部と、要求仕様に対応した欠陥密度を導出するためのテーブルデータとを有する。超音波送受信手段52から人工欠陥信号を入力できるように接続され、要求仕様や人工欠陥サイズや超音波ビームサイズを設定または入力できるようになっている。更に、感度校正部70で演算した感度補正値を超音波送受信手段に、欠陥判定閾値を信号処理部に設定できるようになっている。
この構成を用いて、溶接面(シーム)から例えば、8mmの位置で切り出した(スライスした)サンプルを作成し、端面から周波数20MHzの点集束型探触子50を用いて、散在ペネトレータを検出可能なように、溶接面におけるビーム幅を440μmとして、計測する。
感度校正部70における本発明による校正は、実施例1のタンデム探傷と同様に、図16の手順で行なえばよいので、詳細説明は省略する。なお、タンデム探傷では、図15に示すデータに基づいて、要求仕様から欠陥密度、欠陥径を算出するようにしたが、Cスキャン法では、タンデム探傷と測定条件が異なるため、図15と結果が異なるので、図15に対応するデータを、前述の図9、図10から算出しておけばよい。又、ビーム形状も円形や楕円形状になるので、それに合わせて等価欠陥径を算出する。
なお、Cスキャンの場合は、ビームを溶接面に対して垂直に入射するので、ビーム幅dを得るための振動子の開口幅Dは、たとえば、次式により求めればよい。
D=λ(F/d) …(6)
ここで図19に示す如く、dは探傷位置におけるビームサイズ、Fは焦点距離、λは波長である。
発明者の調査で判明した微小ペネトレータの種類を示す斜視図 シャルピー衝撃試験を行ったサンプル結果を示す図 本発明の原理を説明するためのシームスライス材のCスキャン方法を示す斜視図 同じく50MHzビーム径100μmでのCスキャン結果を示す図 同じく50MHzビーム径250μmでのCスキャン結果を示す図 同じく反射源が散在している場合の検出イメージ図 Cスキャンとシャルピー衝撃試験との対比実験を行う機能構成例を示す図 同じくCスキャンデータ処理を示す図 同じくエコー高さと吸収エネルギーの関係を示す図 同じく欠陥径とエコー高さとの相関を示す図 タンデム法の原理を説明する図 タンデム法における走査の手順例を示す図 同じくエコー高さと吸収エネルギーの関係を示す図 同じく欠陥径とエコー高さとの相関を示す図 同じく微小ペネトレータ密度と吸収エネルギーとの相関を示す図 本発明による感度校正手順を示す流れ図 本発明の閾値の設定を説明する図 ビームサイズと信号強度の関係を示す図 開口幅とビームサイズの関係を示す図 欠陥の大きさと反射指向性の関係を説明する図 反射特性を説明する図 鋼管でのモード変換ロスを説明する図 走査線と、代表点の探傷条件計算結果の一例を示す図 各振動子に与える遅延時間の計算を説明する図 走査線Aについて遅延時間を計算した結果と送波の原理を示した図 走査線Cについて遅延時間を計算した結果と受波の原理を示した図 集束係数とビームサイズの関係を示す図 タンデム法を適用した超音波探傷装置の実施例1を示す図 本発明の実施例2を説明する図 本発明の実施例3を説明する図
符号の説明
1…鋼管
2…溶接部
3…欠陥
4…水
5…リニアアレイ探触子
6…送波用の振動子群
7…受波用の振動子群
8…送波ビーム
9…受波ビーム
10…探傷条件計算部
11…遅延時間設定部
12…パルサー
13…リニアアレイ探触子の振動子
14…受信アンプ
15…遅延時間設定部
16…合成処理部
17…ゲート評価部
30…被検体サイズ入力部
31…アレイ探触子記憶部
32…開口幅制御部
33…ゲート位置記憶部
34…アレイ送信則記憶部
35…アレイ受信則記憶部
36…アレイ送信部
37…アレイ受信部
38…ゲート部
39…判定閾値入力部
40…欠陥判定部
70…感度校正部

Claims (9)

  1. 管体の溶接部の超音波探傷するに際して、
    溶接面における超音波ビームの領域内に存在する欠陥の合計面積と人工欠陥との信号強度差に基づき欠陥判定閾値を定めることを特徴とする超音波探傷の校正方法。
  2. 前記欠陥の合計面積を、所望の品質レベルから決定される管体の管軸方向溶接部の溶接面における欠陥密度と、溶接面における超音波ビームの面積とから決定することを特徴とする請求項1に記載の超音波探傷の校正方法。
  3. 前記欠陥密度と品質レベルの関係はシャルピー衝撃試験によって予め求めておくことを特徴とする請求項2に記載の超音波探傷の校正方法。
  4. 前記人工欠陥と等価欠陥との信号強度差は、音圧反射率の相対関係に基づいて求めることを特徴とする請求項2に記載の超音波探傷の校正方法。
  5. 管体の溶接部を少なくとも管軸方向に超音波探傷し、管体溶接部の品質管理を行う方法であって、
    請求項1乃至4のいずれか1項に記載の校正方法により欠陥判定閾値を定めるステップを有することを特徴とする管体の品質管理方法。
  6. 前記超音波探傷を、
    管体の管軸方向溶接部の溶接面に対し超音波を送波する送波部と、
    前記溶接面における反射波の一部又は全部を受波する受波部とを有し、
    前記送波部及び前記受波部が、管体周方向に配置された一又は二以上のアレイ探触子上の異なる振動子群からなる送受信部を備えた超音波探傷装置を用いて行なうことを特徴とする請求項5に記載の管体の品質管理方法。
  7. 前記送波部が、管体の管軸方向溶接部の溶接面と前記管体の内面に対し、それぞれ33.2°から56.8°の範囲内の角度で入射するように超音波を送波し、
    前記受波部が、溶接面における正反射方向に対して−12°から16°の範囲内の方向に反射した一部又は全部の反射波を受波するようにしたことを特徴とする請求項6に記載の管体の品質管理方法。
  8. 超音波の溶接面におけるビーム幅が0.5mmから2.5mmの範囲となるようにしたことを特徴とする請求項7に記載の管体の品質管理方法。
  9. 管体を製造する製造ステップと、
    該製造ステップで製造された管体を、請求項5乃至8のいずれかに記載の管体の品質管理方法により品質管理する品質管理ステップと、
    を有することを特徴とする管体の製造方法。
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