ところで、このようにフューエルカットがなされる減速期間にセタン価検出用の燃料噴射を実行し、セタン価の検出を図る場合、減速時にしか行い得ない、少なくとも減速時に顕著に効果的に行われ得る他の処理、例えば微小の燃料噴射を行って燃料噴射装置の噴射量を補正する処理や、フューエルカット時の出力電圧(即ち、排気が大気である場合の出力電圧)に基づいて空燃比センサの特性を補正する処理等を行うことができなくなる。ところが、従来の技術には、セタン価の検出を如何なる頻度で行うかについては何ら規定されておらず、実践上、上述した他の処理が阻害される可能性がある。また、逆に、上述した他の処理に阻害されてセタン価検出のための処理を行い得ない場合がある。更に、セタン価を検出するために噴射される燃料は、内燃機関の出力に寄与しないから、セタン価の検出を頻繁に行うと、燃料が無駄に消費され燃費が悪化する可能性がある。即ち、従来の技術には、セタン価の検出が効率的且つ効果的に実行され難いという技術的な問題点がある。
本発明は上述した問題点に鑑みてなされたものであり、燃料のセタン価を効率的且つ効果的に検出し得るセタン価検出装置を提供することを課題とする。
上述した課題を解決するため、本発明に係るセタン価検出制御装置は、燃料を貯留する貯留手段を有する内燃機関、及び所定のフューエルカット状態において該燃料の噴射を伴うセタン価検出処理を実行することにより該燃料のセタン価を検出可能なセタン価検出装置を備えた車両において、該セタン価検出装置を制御するセタン価検出制御装置であって、前記貯留される燃料に係る燃料量が増加したか否かを判別する第1の判別手段と、前記燃料量が増加した旨が判別された場合に前記セタン価検出処理が実行されるように前記セタン価検出装置を制御する制御手段とを具備することを特徴とする。
本発明における「内燃機関」とは、例えば複数の気筒を有し、当該各々の燃焼室において、例えば軽油等の、少なくともセタン価が規定され得る各種燃料を含む混合気が燃焼した際に発生する爆発力を、例えばピストン、コネクティングロッド及びクランク軸等を適宜介して動力として取り出すことが可能に構成された機関を包括する概念であり、例えば2サイクル或いは4サイクル型のディーゼルエンジン等を指す。本発明に係る内燃機関には、このような燃料を貯留する、例えば燃料タンク等の貯留手段が備わる。
また、本発明に係る内燃機関を搭載する本発明に係る車両には、セタン価検出装置が備わる。このセタン価検出装置は、所定のフューエルカット状態においてセタン価検出処理を実行することによって、燃料のセタン価を検出することが可能に構成される。ここで、「所定のフューエルカット状態」とは、車両が走行状態にあって、且つ内燃機関における動力の発生に供すべき燃料の噴射が停止された状態を包括する概念であり、典型的な一例としては車両が減速期間にある状態を指す。
このようなフューエルカット状態においてなされるセタン価検出処理とは、予め実験的に、経験的に、理論的に又はシミュレーション等に基づいて、少なくとも実践上不具合が生じない程度の精度でセタン価を検出し得るものとして定められてなるプロセス、アルゴリズム又は演算式等に従った、物理的、機械的、電気的若しくは化学的な制御又は論理演算若しくは数値演算を包括する概念であって、特にセタン価の検出に供し得る燃料の噴射、好適には微小量の燃料噴射を伴う処理を包括する概念である。例えば、好適な一形態として、セタン価検出装置は、フューエルカット状態における微小量の燃料噴射、及び機関回転数の変動又は燃焼圧の変動等に基づいた、当該噴射された燃料においてセタン価の差が顕著に現れ得る着火遅れ期間の検出等の各種プロセスを含むセタン価検出処理を実行し、例えばこの着火遅れ期間に基づいてセタン価を検出する。
従って、「セタン価検出装置」とは、例えば燃料噴射装置、着火遅れの検出に供し得る燃焼圧センサ、機関回転数の特定に供し得る機関回転数センサ又はクランクポジションセンサ、及びそれらを然るべきアルゴリズムや動作プロセスに従って物理的に、機械的に又は電気的に制御可能なECU(Electronic Control Unit:電子制御ユニット)の各種処理ユニット、各種コントローラ或いはマイコン装置等各種コンピュータシステム等を適宜に含み得るシステム全体として規定されてもよいし、セタン価の検出に特化して設けられる訳ではないこれら噴射装置等既存のユニットを然るべき制御プログラムに従って電気的に制御するECUや各種コントローラのみとして規定されてもよい。
ここで特に、このようなセタン価検出処理を、車両がフューエルカット状態となる毎に、典型的な一形態として車両の減速時毎に、常に実行した場合、第1にセタン価の検出に供すべく噴射される燃料が無駄になり易く、且つ第2に同じくフューエルカット時に好適に行い得る各種の処理、例えば、燃料を高温高圧の燃焼室に噴射すべく昇圧する際に使用され得る高圧ポンプにおける調量弁の機械的な動作のばらつきを補正すべく、或いはそのようなばらつきとは別に、噴射手段に経時的に生じ得る、例えばニードルやシール等各種部品の磨耗や損傷等を補償すべく、インジェクタ等の噴射装置の噴射量を補正する、所謂微小噴射量学習処理や、フューエルカット状態において理想的には大気となる排気の出力電圧に基づいて空燃比センサの補正を行う処理等の実行が阻害され易い。
即ち、このようなセタン価検出処理を、実践的にみて車両の総合的な性能(例えば、燃料噴射量の精度、空燃比の検出精度或いは燃料消費量等に影響され得る内燃機関の動力性能及び経済性能或いは車両のドライバビリティ等を包括する概念としての性能)の低下を招くことなく実行するためには、適切な実行頻度(例えば、実行回数、実行時期及び実行期間等といった定量的な頻度、並びに、一の期間について他の期間よりも多く実行する等、定性的な意味での頻度を含む趣旨である)が設定されている必要がある。即ち、言い換えれば、このような適切な実行頻度が規定されていない場合には、セタン価検出処理は実質的にみて数多の弊害を招き得る。
そこで、本発明に係るセタン価検出制御装置は、以下の如くにしてセタン価検出処理の実行頻度に関する明確な指針を与え、セタン価の検出による、燃費、動力性能及びドライバビリティの低下抑制といった実践上の利益を担保しつつ、車両の総合的な性能の低下をも抑制することが可能となっている。
即ち、本発明に係るセタン価検出制御装置によれば、その動作時には、例えばECU等の各種処理ユニット、各種コントローラ或いはマイコン装置等各種コンピュータシステム等として構成される第1の判別手段によって、貯留手段に貯留された燃料に係る燃料量が増加したか否かが判別される。
ここで、「増加したか否か」に係る判別とは、少なくとも増加したか否かの二値的な状態を判別し得る限りにおいて、例えば、どの程度増加したのかといった、定量的な増加の状態(即ち、典型的には増加量)の特定をも含む概念である。即ち、第1の判別手段は、理想的な動作態様の一として、例えば貯留手段内部或いは外部に設置される、当該燃料量を検出可能な、例えば燃料量センサ等の検出手段から、直接的に又は間接的に当該燃料量に対応する情報を取得し、当該取得した燃料量に対応する情報に基づいて、貯留される燃料の増加減少の傾向並びに増加量及び減少量を具体的に特定し、当該燃料量が増加したか否かを、その増加量及び減少量に基づいた具体的な裏付けの下に判別してもよい。
一方、本発明に係るセタン価検出制御装置には、例えばECU等の各種処理ユニット、各種コントローラ或いはマイコン装置等各種コンピュータシステム等として構成される制御手段が備わり、第1の判別手段によって前述した燃料量が増加した旨が判別された場合に前述したセタン価検出処理が実行されるように(無論、フューエルカット状態である旨の条件は満たした上で実行されるように)、セタン価検出装置を例えば物理的に、機械的に又は電気的に制御する。尚、セタン価検出装置が、即ちECU等の電子制御ユニットや各種のコントローラ等として構成される場合には、第1の判別手段及び制御手段は、係る電子制御ユニットやコントローラ等と、ハードウェア上は一体に構成されていてもよい。
ここで、セタン価検出処理によって得られる利益に鑑みれば、即ち、セタン価検出処理は、燃料のセタン価が変化した場合、或いは変化したとみなし得る場合等に実行されるのが好適であり、別言すれば、セタン価が変化していないにもかかわらず行われるセタン価検出処理は、燃料の無駄な消費や他の処理の実行阻害等、各種のデメリットの方が大きくなり易い。ここで特に、燃料のセタン価は、燃料が、燃料タンク等、貯留手段に貯留された状態では、外的な要因がない限り、少なくとも経時的には顕著な変化を示し難い。言い換えれば、貯留される燃料のセタン価が変化するのは、典型的には、例えば給油時等、貯留された燃料とセタン価の異なる燃料が新規に貯留手段に導かれ、既存の燃料と混合された場合である。従って、セタン価の変化は、高い確率で当該燃料量の増加と一義的な関係を有する。即ち、実質的には、当該燃料量が増加した時点とは、セタン価の検出を行うべき時点と一致する。
翻って、制御手段は、第1の判別手段により燃料量が増加した旨が判別された場合にセタン価検出処理が実行されるようにセタン価検出装置を制御する。従って、本発明に係るセタン価検出制御装置によれば、セタン価検出処理を実行する必要がある場合、或いはあるとみなし得る場合、言い換えればセタン価が変化した場合、或いは少なくともセタン価が変化した可能性が排除し得ない場合に優先的に、好適な一形態としてはそのような場合に限って、セタン価検出処理が実行されることとなる。即ち、セタン価検出処理の実行頻度が、少なくとも実践上の不具合(例えば、実際にはセタン価が変化したにもかかわらずセタン価検出処理が実行されない等の不具合)を顕在化させることなく、且つ燃料を可及的に効率良く使用し得るように、或いは、他の処理が幾らかなり効率的且つ効果的に実行されるように設定され得、燃料のセタン価を効率的且つ効果的に検出することが可能となるのである。尚、制御手段は、例えば、セタン価検出装置をしてセタン価検出処理を行わしめるか否かを規定するフラグ等の状態制御(即ち、オンオフ制御)等をもって、セタン価検出装置を制御してもよい。
本発明に係るセタン価検出制御装置の一の態様では、前記燃料量が増加した旨が判別された場合に、該貯留される燃料が均一化されたか否かを判別する第2の判別手段を更に具備し、前記制御手段は、少なくとも前記貯留される燃料が均一化された旨が判別されるまでの期間において前記セタン価検出処理が実行されるように前記セタン価検出装置を制御する。
この態様によれば、燃料量が増加した旨が判別された場合に、例えばECU等の各種処理ユニット、各種コントローラ或いはマイコン装置等各種コンピュータシステム等の態様を採り得る第2の判別手段によって、貯留される燃料が均一化されたか否かが判別される。制御手段は、燃料量が増加した旨が判別され、且つ貯留される燃料が均一化された旨の判別がなされるまでの期間においてセタン価検出処理が実行されるようにセタン価検出装置を制御する。
この際、第2の判別手段に係る判別の態様は、少なくとも実践上の不具合(例えば、未だセタン価の変化を伴う程度に燃料の混合状態が不均一であるにもかかわらず均一化がなされた旨の判別がなされることによって生じる、車両の総合的な性能の低下)を顕在化させない程度に燃料が均一化された旨を判別し得る限りにおいて何ら限定されない。例えば、第2の判別手段は、予め実験的に、経験的に、理論的に、或いはシミュレーション等に基づいて、燃料が均一化されたか否かを上述した不具合を顕在化させない程度の精度を有しつつ判別し得るものとして定められた、燃料量が増加した旨が判別されてからの経過時間、燃料の消費量又は車両の走行距離等を基準として、或いは更に、外気温、湿度又は大気圧等の環境条件等を加味しつつ、燃料が均一化されたか否かに係る判別を行ってもよい。
第2の判別手段を具備する本発明に係るセタン価検出制御装置の一の態様では、前記第2の判別手段は、前記燃料量が増加した旨が判別された時点以降における前記燃料の消費量が第1の基準値以上である場合に、前記貯留される燃料が均一化された旨を判別する。
この態様によれば、燃料量が増加した旨が判別された時点以降における燃料の消費量が、例えば予め実験的に、経験的に、理論的に又はシミュレーション等に基づいて、燃料が十分に混合され均一化されたと判断し得るもの等として設定され得る第1の基準値以上である場合に、燃料が均一化された旨の判別がなされる。従って、簡便に且つ正確に燃料の均一化に係る判別がなされ得、より効率的且つ効果的なセタン価の検出が実現される。
第2の判別手段を具備する本発明に係るセタン価検出制御装置の他の態様では、前記第2の判別手段は、前記燃料量が増加した旨が判別された時点以降における前記車両の走行距離が第2の基準値以上である場合に、前記貯留される燃料が均一化された旨を判別する。
この態様によれば、燃料量が増加した旨が判別された時点以降における車両の走行距離が、例えば予め実験的に、経験的に、理論的に又はシミュレーション等に基づいて、燃料が十分に混合され均一化されたと判断し得るもの等として設定され得る第2の基準値以上である場合に、燃料が均一化された旨の判別がなされる。従って、簡便に且つ正確に燃料の均一化に係る判別がなされ得、より効率的且つ効果的なセタン価の検出が実現される。
尚、このように基準値との比較に基づいて均一化に係る判別がなされる態様では、前記燃料量が増加した旨が判別された場合に、前記貯留される燃料の増加量に応じて前記第1及び第2の基準値のうち少なくとも一方を設定する設定手段を更に具備してもよい。
元々貯留されている燃料の量に対し新規に貯留手段に導かれる燃料量が多ければ、均一化に要する時間は長くなり、少なければ、反対に均一化に要する時間は短くなり得る。従って、燃料の増加量に応じて前述した第1の基準値又は第2の基準値或いはその両方を設定する、好適な一形態としては、当該増加量が多い場合に各基準値を相対的に大きく設定することにより、燃料の均一化に要する時間をより正確に推定することが可能となり、効率的且つ効果的なセタン価の検出が促進される。
第2の判別手段を具備する本発明に係るセタン価検出制御装置の他の態様では、前記第2の判別手段は、前記検出されたセタン価の変化量が所定値未満である場合に、前記貯留される燃料が均一化された旨を判別する。
この態様によれば、第2の判別手段は、実際にセタン価検出装置により検出されるセタン価を、例えば、セタン価が検出される毎に、或いは一定の周期で取得して、例えば好適な一形態としては前回取得された値と比較することにより、例えば、その差分等として変化量を算出する。第2の判別手段は、このようなセタン価の変化量が、例えば予め燃料が十分に均一化されたとみなし得るものとして設定された所定値未満である場合に、燃料が均一化された旨の判別を行う。
このように、この態様によれば、セタン価の変化量に基づいて燃料の均一化に係る判別が行なされるため、内燃機関の状態、車両の状態或いは環境条件等に起因してその都度微妙に、或いは顕著に異なり得る均一化に要する時間による影響が相対的に低減され、相対的にみてより正確に燃料が均一化された旨の判別を行うことが可能となる。従って、効率的且つ効果的にセタン価の検出が実行され得る。
尚、本発明において、「以上」とは、比較基準の設定態様如何により容易に「より大きい」と置換し得る概念であり、また「未満」とは同様に比較基準の設定如何により容易に「以下」と置換し得る概念である。
本発明のこのような作用及び他の利得は次に説明する実施形態から明らかにされる。
<発明の実施形態>
以下、図面を参照して、本発明の好適な各種実施形態について説明する。
<第1実施形態>
<実施形態の構成>
始めに、図1を参照して、本発明の第1実施形態に係るエンジンシステム10の構成について説明する。ここに、図1は、エンジンシステム10の構成を概念的に表してなる概略構成図である。
図1において、エンジンシステム10は、図示せぬ車両に搭載され、ECU100及びエンジン200を備える。
ECU100は、CPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)及びRAM(Random Access Memory)等を備え、エンジン200の動作全体を制御する電子制御ユニットであり、本発明に係る「セタン価検出装置」及び「セタン価検出制御装置」の夫々一例である。
エンジン200は、軽油を燃料とするディーゼルエンジンであり、本発明に係る「内燃機関」の一例である。エンジン200は、シリンダ201内において燃料を含む混合気が圧縮自着火した際に生じる爆発力に応じたピストン202の往復運動を、コネクションロッド203を介してクランクシャフト204の回転運動に変換することが可能に構成されている。また、クランクシャフト204近傍には、クランクシャフト204の回転位置を検出するクランクポジションセンサ205が設置されている。クランクポジションセンサ205は、ECU100と電気的に接続されており、ECU100は、クランクポジションセンサ205によって検出されたクランクシャフト204の回転位置に基づいて、エンジン200の機関回転数NEを算出することが可能に構成されている。以下に、エンジン200の要部構成を、その動作の一部と共に説明する。
シリンダ201内における燃料の燃焼に際し、外部から吸入された空気は、図示せぬエアクリーナで浄化された後、吸気管206を通過し、吸気ポート209を介して吸気バルブ210の開弁時にシリンダ201内に吸入される。この際、シリンダ201内に吸入される吸入空気に係る吸入空気量は、図示せぬエアフローメータにより検出され、ECU100に電気信号として一定又は不定の出力タイミングで出力される構成となっている。吸気管206には、吸入空気量を調節可能なスロットルバルブ207が配設されている。このスロットルバルブ207は、ECU100と電気的に接続されたスロットルバルブモータ208により、例えば、図示せぬアクセルペダルの操作量等に応じて電気的且つ機械的に駆動される構成となっている。尚、スロットルバルブ207の開閉状態を表すスロットル開度は、ECU100と電気的に接続された図示せぬスロットルポジションセンサにより検出され、ECU100に一定又は不定のタイミングで出力される構成となっている。
ここで特に、燃料は、燃料タンク212(即ち、本発明に係る「貯留手段」の一例である)に貯留されている。この燃料タンク212には、燃料タンク212に貯留される燃料の量を表す燃料残量Qを検出可能なフロート式の燃料量センサ217が設置されている。燃料量センサ217は、ECU100と電気的に接続されており、検出された燃料量は、ECU100により、一定又は不定のタイミングで把握される構成となっている。一方、燃料タンク212に貯留される燃料は、インジェクタ211によって、シリンダ201内の燃焼室に直接噴射される。インジェクタ211を介した燃料の噴射に際しては、先ず燃料タンク212に貯留された燃料が、フィードポンプ214の作用により低圧配管213を介して燃料タンク212から汲み出され、高圧ポンプ215へ供給される。
ここで、図2を参照して、高圧ポンプ215の構成について説明する。ここに、図2は、高圧ポンプ215の構成を概念的に表してなる概略構成図である。尚、同図において、図1と重複する箇所には同一の符号を付してその説明を適宜省略することとする。
図2において、高圧ポンプ215は、電磁調量弁215A、吸入弁215B、シリンダ215C、プランジャ215D、カム215E、加圧室215F、吐出弁215G及び高圧配管215Hを備える。
電磁調量弁215Aは、フィードポンプ214へと繋がる低圧配管213上に設けられ、フィードポンプ214により送出された燃料の流量を調節する電磁開閉弁である。フィードポンプ214により燃料タンク212から汲み上げられた燃料は、この電磁調量弁323によりその流量が調節され、低圧配管213の一端部が接続された加圧室215Fへ供給される。
一方、プランジャ215Dは、シリンダ215C内に設置された加圧部材であり、下端部分に接続されたロッド部材が、エンジン200の吸気カムシャフト11(図1では省略される)に固定され且つ吸気カムシャフト11に同期して回転する、楕円形状を有するカム215Eのカムプロフィールに従って図中上下方向に往復運動するのに伴い、その上端部が図示TDC(Top Death Center:上死点)と図示BDC(Bottom Death Center:下死点)との間で往復運動することが可能に構成されている。加圧室215Fは、シリンダ215Cの内壁部分と、プランジャ215Dの上端部分とによって規定される空間であり、即ち、プランジャ215Dの前述した往復運動に伴ってその容積が変化する空間である。
他方、電磁調量弁215Aにより調量された燃料は、プランジャ215Dがシリンダ215C内をTDCからBDCへ向かって移動する際に、吸入弁215Bを押し開いて加圧室に吸入される。その後、プランジャ215Dがシリンダ215C内をBDCからTDCへ向かって移動する際に、プランジャ215Dによって加圧室215F内部の燃料が圧縮(即ち、加圧)され、吐出弁215Gを押し開いて高圧配管215Hに供給され、高圧配管215Hに接続されたコモンレール216(図2では不図示)へと圧送される構成となっている。
図1に戻り、コモンレール216は、ECU100と電気的に接続され、上流側(即ち、高圧ポンプ215側)から供給される高圧燃料をECU100により設定される目標レール圧まで蓄積することが可能に構成された、高圧貯留手段である。尚、コモンレール216には、レール圧を検出することが可能なレール圧センサ及びレール圧が上限値を超えないように蓄積される燃料量を制限するプレッシャリミッタ等が配設されるが、ここではその図示を省略することとする。
エンジン200における上述したインジェクタ211は、シリンダ201毎に搭載されており、夫々が高圧デリバリを介してコモンレール216に接続されている。ここで、インジェクタ211の構成について補足すると、インジェクタ211は、ECU100の指令に基づいて作動する電磁弁と、この電磁弁への通電時に燃料を噴射するノズル(いずれも不図示)とを備える。当該電磁弁は、コモンレール216の高圧燃料が印加される圧力室と、当該圧力室に接続された低圧側の低圧通路との間の連通状態を制御することが可能に構成されており、通電時に当該加圧室と低圧通路とを連通させると共に、通電停止時に当該加圧室と低圧通路とを相互に遮断する。
一方、ノズルは、噴孔を開閉するニードルを内蔵し、圧力室の燃料圧力がニードルを閉弁方向(噴孔を閉じる方向)に付勢している。従って、電磁弁への通電により加圧室と低圧通路とが連通し、圧力室の燃料圧力が低下すると、ニードルがノズル内を上昇して開弁する(噴孔を開く)ことにより、コモンレール216より供給された高圧燃料を噴孔より噴射することが可能に構成される。また、電磁弁への通電停止により加圧室と低圧通路とが相互に遮断されて圧力室の燃料圧力が上昇すると、ニードルがノズル内を下降して閉弁することにより、噴射が終了する構成となっている。
このようにしてシリンダ201内に噴射された燃料は、吸気バルブ210を介して吸入された吸入空気と混合され、上述した混合気となる。この混合気は、圧縮工程において自着火して燃焼し、燃焼済みガスとして、或いは一部未燃の混合気として、吸気バルブ210の開閉に連動して開閉する排気バルブ218の開弁時に排気ポート219を介して排気管220に導かれる構成となっている。
また、排気管220には、DPF(Diesel Particulate Filter)221が設置されている。DPF221は、エンジン200から排出されるスート(煤)或いはスモーク、及びPM(Particulate Matter:粒子状物質)を捕集可能且つ浄化可能に構成されている。尚、説明の煩雑化を防ぐ目的から図示を省略するが、エンジン200には、上記したセンサ以外にも各種のセンサが配されており、例えば、エンジン200の冷却水温を検出する水温センサ、エンジン200のノッキングレベルを検出するノックセンサ、吸入空気の温度たる吸気温を検出する吸気温センサ及び吸入空気の圧力たる吸気圧を検出する吸気圧センサ等が夫々検出対象毎に最適な位置に設置されている。
<実施形態の動作>
<セタン価検出処理の詳細>
エンジンシステム10では、ECU100によって、燃料のセタン価を検出するためのセタン価検出処理が実行される。ここで、図3を参照し、セタン価検出処理の詳細について説明する。ここに、図3は、セタン価検出処理のフローチャートである。
図3において、ECU100は、セタン価検出フラグがオン状態であるか否かを判別する(ステップS101)。ここで、ECU100は、セタン価検出フラグがオン状態である場合に限って、後段の処理を実行し、燃料のセタン価を検出する構成となっており、セタン価検出フラグがオフ状態である場合(ステップS101:NO)、ECU100は、ステップS101に係る処理を繰り返し実行して、実質的に処理を待機状態に制御する。このセタン価検出フラグは、後述するフラグ設定処理によってその状態が設定される。
セタン価検出フラグがオン状態である場合(ステップS101:YES)、ECU100は、燃料の噴射条件が満たされるか否かを判別する(ステップS102)。ここで、噴射条件とは、セタン価の学習精度が、実践上問題が生じない程度に担保され得るものとして定められてなる条件であり、例えば、本実施形態では、フューエルカット制御の実行中であること、フューエルカット制御の実行が開始されてから所定の時間が経過していること、及びエンジン200の機関回転数NEが所定範囲(例えば、1500rpm以上3000rpm未満)であることを指す。尚、フューエルカット制御の実行に係る所定の時間とは、通常の燃料噴射が実行されていた時のエンジン200の運転状態が燃焼室に対し与える影響が実践上無視し得る程度に小さくなり得る時間として、予め実験的に、経験的に、理論的に或いはシミュレーション等に基づいて適切に定められている。尚、ステップS102に係る噴射条件としては更に、エンジン200の吸気温、冷却水温又は燃料温度、或いは大気圧等が夫々個別具体的に定められる判断基準を満たすこと等が含まれていてもよい。
噴射条件が満たされない場合(ステップS102:NO)、ECU100は、ステップS102に係る処理を繰り返し実行して、処理を実質的に待機状態に制御すると共に、噴射条件が満たされた場合(ステップS102:YES)、ECU100は、吸入空気量が予め設定された上限値G0以下となるように、スロットルバルブ207の開度を制御する(ステップS103)。
吸入空気量をG0に制御すると、ECU100は、燃料が予めセタン価学習用として設定された規定量噴射されるように、インジェクタ211を制御する(ステップS104)。燃料の噴射が行われると、ECU100は、シリンダ201内における燃料の着火時期を検出し、燃料の噴射時期との差分に基づいて着火遅れ期間Δtdを算出する(ステップS105)。尚、着火遅れ期間の算出に際しては、公知の各種手法が採用されてよい。例えば、着火遅れ期間は、エンジン200の燃焼室の容積Vと燃焼室の圧力との積Pを、例えば酸素の比熱比等として定義される定数kでべき乗してなる、熱発生量パラメータPVkの上昇度合いに基づいて検出される着火時期から算出されてもよい。
着火遅れ期間Δtdを算出すると、ECU100は、予めROMに記憶された、着火遅れ期間Δtdとセタン価CTNとの関係を規定するマップに従って燃料のセタン価CTNを取得する(ステップS106)。この取得されたセタン価CTNは、セタン価の学習値として、これ以降更新の対象となる。尚、この際、算出された着火遅れ期間Δtdは、機関回転数、冷却水温、吸気温、吸入空気量、大気圧或いは燃料温度等に応じて適宜の補正が行われてもよく、その場合は、補正がなされた着火遅れ期間の値に応じてマップからセタン価CTNが取得されてもよい。
セタン価CTNが取得されると、即ちセタン価の学習値が取得されると、ECU100は、取得されたセタン価CTNを最新の学習値としてRAMに更新可能に記憶することにより、学習値を更新する(ステップS107)。セタン価の学習値の更新が終了すると、処理はステップS101に戻され、一連の処理が繰り返される。
<フラグ設定処理の詳細>
上述したように、セタン価検出処理では、セタン価検出フラグがオン状態であれば、セタン価検出用の燃料噴射条件が満たされる限り、燃料の噴射が実行される。ここで、燃料の噴射条件は、セタン価の検出を行うに適した条件を規定するのみであり、実際にセタン価の検出をおこなうべきか否かについて指針を与えるものではないから、燃料の無駄な使用による燃費の悪化や、セタン価検出処理の他にフューエルカット時に行われ得る処理の実行阻害等、各種の弊害の発生を防止し、セタン価検出を適切な頻度で実行するためには、セタン価検出フラグを適切にオン状態に設定する必要がある。そこで、本実施形態では、以下に説明するフラグ設定処理によって、セタン価検出フラグを適切に設定し、もって上述したセタン価検出処理の実行頻度を適切に制御することが可能となっている。
ここで、図4を参照して、フラグ設定処理の詳細について説明する。ここに、図4は、フラグ設定処理のフローチャートである。
図4において、ECU100は、燃料量センサ217を介して燃料残量Q(i)を取得する(ステップS201)。ここで「i」とは、燃料残量の検出時刻を時系列に沿って表すために便宜的に付与される識別番号であり、Q(i)とは、即ち、その時点で最新の燃料残量を指し、例えばQ(i−1)とは、前回の検出タイミングにおいて検出された燃料残量を指す。
燃料残量Q(i)を取得すると、ECU100は、取得された燃料残量Q(i)が前回検出された燃料残量Q(i−1)よりも大きいか否かを判別する(ステップS202)。燃料残量が前回の検出値以下である場合(ステップS202:NO)、ECU100は、ステップS202に係る処理を繰り返し実行して、実質的に処理を待機状態に制御する。一方、燃料残量が前回の検出値よりも大きい場合(ステップS202:YES)、ECU100は、セタン価検出フラグをオン状態に制御する(ステップS203)。
ここで、補足すると、燃料残量が前回検出された値よりも大きい場合とは、燃料タンク212内に少なくとも何らかの理由で、典型的には給油等によって、新規にセタン価が不明な燃料が導かれた場合を指し、即ち、貯留される燃料のセタン価が従前の値から少なくとも有意に変化した可能性が高い場合を指す。従って、このように、燃料タンク212内の燃料残量に基づいてセタン価検出フラグを設定することにより、適切なタイミングで前述したセタン価検出処理を行わしめることが可能となる。
一方、セタン価検出フラグがオン状態に制御されれば、上述したように燃料の噴射条件が満たされる度にセタン価検出用の燃料噴射が実行されるから、セタン価検出フラグをオン状態に制御するタイミングと同様に、セタン価検出フラグをオフに制御するタイミングもまた、セタン価検出処理の実行頻度を最適化する上で重要となる。
そこで、ECU100は、先ず、燃料消費量カウンタCTQをクリアする(ステップS204)と共に、燃料消費量のカウントを開始する(ステップS205)。ここで、燃料消費量カウンタCTQは、文字通り燃料の消費量の積算値を記憶するカウンタである。ECU100は、燃料を噴射させるべくインジェクタ211へ供給する制御信号に対応する噴射量指令値、コモンレール216の燃圧を維持するためのレール圧のフィードバック制御値(即ち、レール圧は、インジェクタ211からの噴射量に応じて変化するため、噴射量と一義的な関係となり得る)、或いは燃料量センサ217によって検出される燃料残量Qの変化量等に基づいて、セタン価検出フラグがオン状態に制御された時点以降の燃料消費量を算出し、一定の周期で燃料消費量カウンタCTQを更新することによって燃料消費量を監視する。
燃料消費量の計測を開始すると、ECU100は、燃料消費量カウンタCTQが、予め設定された閾値CTQth以上であるか否かを判別する(ステップS206)。その結果、燃料消費量カウンタCTQが閾値CTQth未満である場合(ステップS206:NO)、ECU100は、ステップS206に係る処理を繰り返し実行して、実質的に処理を待機状態に制御する。即ち、燃料消費量の監視が継続される。一方、燃料消費量カウンタCTQが閾値CTQth以上である場合(ステップS206:YES)、ECU100は、セタン価検出フラグをオフに制御する(ステップS207)。セタン価検出フラグがオフに制御されると、処理はステップS201に戻され、一連の処理が繰り返される。尚、閾値CTQthは、本発明に係る「第1の基準値」の一例であり、その値は、予め、実験的に、経験的に、理論的に又はシミュレーション等に基づいて、新規に燃料タンク212に導かれた燃料が、既存の燃料と十分に、即ち、顕著なセタン価の変化が生じない程度に混合されたものと判断し得る、即ち、十分に均一化されたものと判断し得る値に設定されている。
ここで、図5を参照し、このようなフラグ設定処理が実行される過程について視覚的に説明する。ここに、図5は、フラグ設定処理の実行過程における燃料残量Q、燃料消費量カウンタCTQ、セタン価CTN及びセタン価検出フラグの推移を表してなるタイミングチャートである。
図5において、横軸には共通に時刻が採られており、縦軸の系列には、上段から順に燃料残量Q、燃料消費量カウンタCTQ、セタン価CTN及びセタン価検出フラグが表されている。時刻T0において、セタン価検出フラグはオフ状態に制御されており、セタン価CTNはCTN1で安定した状態にある。この状態では、燃料の消費に伴って燃料残量Qが概ね時間経過と共に減少し、反対に燃料消費量カウンタCTQは上昇する。
一方、燃料残量Qが、図示Q1まで減少した時刻T1において例えば給油等が行われた結果、燃料残量QがQ2まで上昇したとする。この場合、上述したようにQ(i)>Q(i−1)なる判別がなされ、セタン価検出フラグがオン状態に制御される。同時に、燃料消費量カウンタCTQがゼロにリセット(即ち、クリア)される。
例えば、図5において、既存の燃料よりもセタン価の低い燃料が新規に燃料タンク212に導かれたとする。この場合、セタン価CTNは、この時刻T1を境に減少し始める。尚、実際には、セタン価の検出は、例えばフューエルカットの実行時等に限定的に行われるから、図示する如き連続的な変化は示さない場合もあるが、ここでは説明の煩雑化を防ぐ目的から、セタン価CTNが時間経過と共に連続的に減少するものとする。
時刻T1以降、燃料が消費され続けた結果、時刻T2において燃料消費量カウンタCTQが閾値CTQthを超えたとする。その結果、セタン価検出フラグは上述したようにオフに制御される。この時点で、実際のセタン価CTNは、既にCTN0(CTN0<CTN1)で十分に安定した状態となっており、実際にセタン価検出処理を実行する意味合いは実践上無視し得る程度に小さくなっている。
図4及び図5に示す通り、本実施形態に係るフラグ設定処理によれば、典型的には給油時等、燃料タンク212内に貯留される燃料が増量した場合に、セタン価検出フラグがオン状態に制御され、その時点以降の燃料消費量が閾値を超える時点まで、当該オン状態が継続される。従って、セタン価CTNが車両10の動力性能やドライバビリティに対して影響し得る程度に変化している場合に限って、セタン価検出処理が実行され、セタン価を検出する必然性が低い場合に、無駄なセタン価検出処理が実行されるといった事態は発生し難くなっている。即ち、セタン価検出処理の適切な実行頻度を設定することが可能となり、セタン価検出を効率的且つ効果的に実行することが可能となるのである。
<第2実施形態>
フラグ設定処理の態様は、第1実施形態のものに限定されない。そのような趣旨に基づいた本発明の第2実施形態について図6を参照して説明する。ここに、図6は、本発明の第2実施形態に係るフラグ設定処理のフローチャートである。尚、同図において、図4と重複する箇所には同一の符号を付してその説明を適宜省略することとする。
図6において、ステップS203に係る処理によってセタン価検出フラグがオン状態に制御されると、ECU100は、車両10の走行距離を表す走行距離カウンタCTDをクリアする(ステップS301)と共に、車両10の走行距離のカウントを開始する(ステップS302)。ECU100は、走行距離のカウントを開始すると、走行距離カウンタCTDが、閾値CTDth以上であるか否かを判別する(ステップS303)。走行距離カウンタCTDが閾値CTDth未満である場合(ステップS303:NO)、ステップS303に係る処理は繰り返し実行され、走行距離カウンタCTDが閾値CTDth以上となった場合(ステップS303:YES)、セタン価検出フラグはオフ状態に制御される。尚、閾値CTDthは、本発明に係る「第2の基準値」の一例であり、その値は、第1実施形態に係る燃料消費量カウンタの閾値CTQthと同様に、予め、実験的に、経験的に、理論的に又はシミュレーション等に基づいて、新規に燃料タンク212に導かれた燃料が、既存の燃料と十分に、即ち、顕著なセタン価の変化が生じない程度に混合されたものと判断し得る値に設定されている。
第2実施形態によれば、既存の燃料と新規に導かれた燃料との混合状態と相関し得る車両の走行距離に基づいて、第1実施形態に係る燃料消費量と同様、簡便に且つ正確に燃料が均一化された旨を判別し得る。
<第3実施形態>
フラグ設定処理の態様は、更に他の態様を採ることもできる。そのような趣旨に基づいた本発明の第3実施形態について図7を参照して説明する。ここに、図7は、本発明の第3実施形態に係るフラグ設定処理のフローチャートである。尚、同図において、図4と重複する箇所には同一の符号を付してその説明を適宜省略することとする。
図7において、ステップS203に係る処理によってセタン価検出フラグがオン状態に制御されると、ECU100は、燃料のセタン価CTNをクリアする(ステップS401)。尚、ここでクリアされるセタン価CTNは、無論セタン価検出処理によって検出されるセタン価であるが、フラグ設定処理の実行期間中であっても、燃料噴射量の制御等にセタン価は必要であるから、ここでクリアされるのは、あくまでセタン価検出フラグの状態設定に係るセタン価である。即ち、ステップS401に係る処理では、検出され記憶されるセタン価CTNがバッファ領域に複製され、フラグ設定処理のために一時的に記憶された状態となる。
セタン価CTNがクリアされると、ECU100は、それ以降、セタン価検出処理が実行される毎に、最新のセタン価CTN(i)を取得する(ステップS402)。そして、ECU100は、この最新のセタン価CTN(i)と、前回検出されたセタン価CTN(i−1)(尚、クリア後最初に取得されるセタン価については初期値としてゼロである)とを比較し、それらの差分たるセタン価変化量ΔCTN(即ち、本発明に係る「変化量」の一例)が閾値ΔCTNth(即ち、本発明に係る「所定値」の一例)未満であるか否かを判別する(ステップS403)。尚、閾値ΔCTNthの値は、第1実施形態に係る燃料消費量カウンタの閾値CTQthと同様に、予め、実験的に、経験的に、理論的に又はシミュレーション等に基づいて、新規に燃料タンク212に導かれた燃料が、既存の燃料と十分に(即ち、セタン価の検出を行わずともエンジン200の動力性能や車両10のドライバビリティに実践上考慮すべき影響を与えない程度に)混合された状態を規定し得る値に設定されている。
ここで、ECU100は、セタン価変化量ΔCTNが閾値ΔCTNth以上であれば(ステップS403:NO)、ステップS403に係る処理を繰り返し実行すると共に、セタン価変化量ΔCTNが閾値ΔCTNth未満となった場合に(ステップS403:YES)、セタン価検出フラグをオフに制御する。尚、閾値ΔCTNthは、無論セタン価変化量ΔCTNがゼロである、或いはゼロとみなし得る程度に小さい場合にセタン価検出フラグがオフ状態に制御されるように設定されていてもよい。或いはステップS403に係る処理では、セタン価変化量ΔCTNがゼロであるか又はゼロとみなし得る程度に小さい値であるか否かが判別されてもよい。
このように本実施形態に係るフラグ設定処理によれば、実際のセタン価の変化量に基づいて、燃料が均一化されたか否かに係る判別を行うことができるため、セタン価検出処理を行うべき期間であるか否かを、より正確に推定することが可能となる。従って、セタン価の検出を効率的且つ効果的に実行することが可能となるのである。
<第4実施形態>
上述した各種実施形態に係るフラグ設定処理では、燃料の均一化を判断する要素が一に限定されない旨が示されたが、燃料が均一化されたか否かを規定する閾値は、予め設定された固定値である。そこで、係る閾値を可変とした本発明の第4実施形態について、図8を参照して説明する。ここに、図8は、本発明の第4実施形態に係るフラグ設定処理のフローチャートである。尚、同図において、図4と重複する箇所には同一の符号を付してその説明を適宜省略することとする。
図8において、燃料消費量カウンタCTQがクリアされると(ステップS204)、ECU100は、燃料タンク212に新規に導かれた燃料の量たる燃料増加量Qincを取得する(ステップS501)。ここで、燃料増加量Qincは、燃料残量Qが増加する直前の燃料量センサ217の出力値と、増加後に燃料量が安定した状態における燃料量センサ217の出力値との差分として取得される。
燃料増加量Qincを取得すると、ECU100は、この取得した燃料増加量Qincに応じて閾値CTQthを設定する(ステップS502)。ここで、ECU100は、燃料増加量Qincが大きい程、閾値CTQthが大きくなるように、即ち定性的に言えば、燃料が均一化された旨の判別がなされ難くなるように、閾値CTQthを設定する。ステップS205以降の処理においては、このステップS502に係る処理において設定された閾値CTQthに基づいてセタン価検出フラグがオフ状態に制御される。
このように、第4実施形態によれば、燃料が相対的にみて早期に均一化され得る、例えば少量の給油時等には、相対的に早期にセタン価検出フラグをオフ状態に制御し、また燃料の均一化に係る時間が相対的にみて長くなり易い例えば大量の給油時等には、セタン価検出フラグを相対的に長期にわたってオン状態に維持することが可能となり、より燃料の均一化に係る判別を正確に行うことが可能となる。従って、セタン価検出フラグを、より実情に即しつつ設定することが可能となり、最終的にセタン価の検出を効率的且つ効果的に実行することが可能となる。尚、ここでは燃料消費量について述べられているが、同様の概念を、第2実施形態に示した車両10の走行距離に適用することも可能である。
尚、このように、閾値を可変とする態様は、このように、燃料増加量Qincに応じたリニアな態様を採らずともよい。例えば、燃料増加量Qincと既存の燃料量Qとの比率に基づいて、例えば当該比率が1:1である場合に最大となるように閾値が可変とされてもよい。この場合、燃料増加量Qincが最大となり得る、既存燃料がゼロに近い状態からの全量給油時には、当該閾値は相対的に小さくなるが、燃料の均一化に限って言えば、セタン価が相互に異なる燃料同士が混合された場合に燃料が不均一となるのであり、セタン価が不明であるとは言え既存の燃料との混合がほとんど生じないこのような場合には、少なくとも均一化に係る判断を長期にわたって行う必要は生じ難いのである。但し、セタン価が不明である(即ち、既存燃料がある程度存在する場合のようにセタン価を推定するに際しての拠り所が存在しない)状況では、セタン価検出に要する時間も相対的に長くなるから、図8に示すように、燃料増加量Qincに応じて閾値CTQthを大きく設定してもよい。
本発明は、上述した実施形態に限られるものではなく、請求の範囲及び明細書全体から読み取れる発明の要旨或いは思想に反しない範囲で適宜変更可能であり、そのような変更を伴うセタン価検出制御装置もまた本発明の技術的範囲に含まれるものである。
10…エンジンシステム、100…ECU、200…エンジン、211…インジェクタ、212…燃料タンク、215…高圧ポンプ、216…コモンレール、217…燃料量センサ。