JP2013231372A - 内燃機関の制御装置 - Google Patents

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淳一 村瀬
Daisuke Hayashi
大介 林
Akira Hasegawa
亮 長谷川
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Abstract

【課題】悪路走行時であっても内燃機関における失火を判定する。
【解決手段】内燃機関の制御装置(100)は、内燃機関(200)のクランク軸(204)の角速度を検出する角速度検出手段(110)と、クランク角速度における所定の周波数成分を抽出し失火指標(X)とする失火指標決定手段(120)と、失火していない場合の失火指標に相当する失火指標目標値(Xtrg)を記憶する記憶手段(130)と、失火指標と失火指標目標値との差が所定の閾値(ΔXthre)以上である場合に、失火が発生していると判定する失火判定手段(140)と、失火が発生していると判定された場合に、失火抑制制御を行う失火抑制手段(150)と、失火抑制制御後の失火指標と許容失火レベル(Xthre)との和を新たな失火目標値として、記憶手段を更新する失火目標値更新手段(160)とを備える。
【選択図】図3

Description

本発明は、例えば軽油を燃料として運転される内燃機関の制御装置の技術分野に関する。
この種の制御装置では、走行中の車両における各種パラメータを用いることで、車両が悪路を走行しているか否かが判定される。例えば特許文献1では、クランク軸の角速度変動量に基づいて、車両が悪路を走行しているか否かを判定するという技術が提案されている。
また、悪路の判定に加えて、内燃機関における失火を判定するもの知られている。例えば特許文献2では、車輪の回転速度から得る推定基準速度と車輪の回転速度との速度差が所定値以上となった場合に、車両が悪路を走行していると判定すると共に、クランク角速度に基づいて失火を判定するという技術が提案されている。特許文献3では、車速センサ信号の周波数解析結果とクランク角センサの周波数解析結果とを比較することにより、悪路を走行中であるか又は失火が発生しているかを判定するという技術が提案されている。
特開平09−324680号公報 特開2010−242558号公報 特開2006−347340号公報
上述した特許文献2及び3に係る技術では、車両が悪路を走行していると判定された場合には、失火の判定が禁止される。ただし、車両が悪路を走行している場合にも、失火が発生することは十分にあり得るため、内燃機関において適切な燃焼状態を常に実現するためには、悪路走行中であっても失火判定が行えることが好ましい。
しかしながら、特許文献2及び3に係る技術では、悪路と失火とを切り分けて検出することが困難であるため、悪路走行時に正確に失火を判定することができないという技術的問題点が生ずる。具体的には、失火を判定するためのパラメータに悪路の影響が及んでしまうため、悪路走行時においては、パラメータの変動が失火によるものか或いは悪路によるものかを判定できなくなってしまう。
本発明は、上述した問題点に鑑みなされたものであり、悪路を走行中であっても、内燃機関における失火の発生を適切に判定することが可能な内燃機関の制御装置を提供することを課題とする。
本発明の内燃機関の制御装置は上記課題を解決するために、内燃機関のクランク軸の角速度を検出する角速度検出手段と、前記クランク軸の角速度における所定の周波数成分を抽出し失火指標とする失火指標決定手段と、失火していない場合の前記失火指標に相当する失火指標目標値を記憶する記憶手段と、前記失火指標と前記失火指標目標値との差が所定の閾値以上である場合に、前記内燃機関において失火が発生していると判定する失火判定手段と、前記内燃機関において失火が発生していると判定された場合に、前記失火指標を小さくする失火抑制制御を行う失火抑制手段と、前記失火抑制制御後の前記失火指標と、許容し得る前記失火指標の変動幅である許容失火レベルとの和を新たな前記失火目標値として、前記記憶手段を更新する失火目標値更新手段とを備える。
本発明に係る内燃機関の制御装置は、例えば車両に搭載されたディーゼルエンジン等の内燃機関を制御する制御装置であって、例えば、一又は複数のCPU(Central Processing Unit)、MPU(Micro Processing Unit)、各種プロセッサ又は各種コントローラ、或いは更にROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)、バッファメモリ又はフラッシュメモリ等の各種記憶手段等を適宜に含み得る、単体の或いは複数のECU(Electronic Controlled Unit)等の各種処理ユニット、各種コントローラ或いはマイコン装置等各種コンピュータシステム等の形態を採り得る。
本発明に係る内燃機関の制御装置の動作時には、先ず角速度検出手段によって、内燃機関のクランク軸の角速度(以下、適宜「クランク角速度」と称する)が検出される。クランク角速度は、例えばクランクポジションセンサ等によって検出されるクランク角信号に基づいて検出できる。
クランク角速度が検出されると、失火指標決定手段によって、内燃機関における失火の発生を判定するための失火指標が決定される。失火指標決定手段は、クランク角速度における所定の周波数成分を抽出して失火指標とする。なお、ここでの「所定の周波数成分」とは、失火の発生に応じて何らかの変動が生ずる周波数成分であり、例えば0.5次振動成分等が挙げられる。
他方、本発明に係る内燃機関の制御装置が備える記憶手段には、失火していない場合の失火指標に相当する失火指標目標値が記憶されている。記憶手段には、例えば初期値として予め理論的或いは実験的に求められた失火指標目標値が記憶されている。ただし、失火指標目標値は、後述するように車両が走行する道路の影響等を考慮して更新される。
内燃機関の失火を判定する際には、失火判定手段によって、失火指標(即ち、失火指標決定手段によって決定された値)と失火指標目標値(記憶手段に記憶された値)との差が、所定の閾値と比較される。そして、失火指標と失火指標目標値との差が所定の閾値以上であるか場合には、内燃機関において失火が発生していると判定される。即ち、ここでの「所定の閾値」は、失火指標目標値に対する失火指標のずれを許容できる範囲(言い換えれば、失火と判定せずとも問題ない範囲)を示す値として設定されている。
内燃機関において失火が発生していると判定されると、失火抑制手段によって失火抑制制御が実行され、失火指標が小さくされる。これにより、失火指標と失火指標目標値との差は小さくなる。なお、失火抑制制御としては、例えば燃料の噴射量、噴射時期の調整や、EGR(Exhaust Gas Recirculation)カット等の制御が挙げられる。
失火抑制制御によって失火指標が小さくされた後には、失火目標値更新手段によって、失火抑制制御後の失火指標と許容失火レベルとの和が、新たな失火目標値とされる。なお、ここでの「許容失火レベル」とは、許容し得る失火指標の変動幅を示す値である。
ここで特に、失火抑制制御後の失火指標は、失火が発生していない(或いは、失火レベルが極めて低い)状態での失火指標であると考えられる。一方で、失火抑制制御後の失火指標は、例えば車両が悪路を走行することで発生する振動の影響を受けている。よって、失火抑制制御後の失火指標を基準として用いれば、悪路による影響を加味した失火目標値を設定できる。従って、悪路走行時に失火判定を行う場合であっても、悪路の影響による失火指標の変動に起因して、失火判定が正確に行えなくなるという事態を防止できる。
以上説明したように、本発明に係る内燃機関の制御装置によれば、失火抑制制御後の失火指標を用いて新たな失火目標値が設定されるため、悪路走行時であっても、適切に失火を判定することが可能である。
本発明の内燃機関の制御装置の一態様では、前記失火抑制手段は、前記失火指標を最小化するように前記失火抑制制御を行う。
この態様によれば、失火抑制制御後の失火指標は、失火レベルが可能な限り小さくされた状態での失火指標となる。よって、失火抑制制御後の失火指標と許容失火レベルの和として設定される新たな失火指標目標値は、より高い精度で悪路の影響を示す値となる。従って、新たな失火目標値を用いた判定において、より正確に失火が発生しているか否かを判定できる。
本発明の内燃機関の制御装置の他の態様では、前記所定の周波数成分は、0.5次振動成分である。
この態様によれば、悪路の走行及び失火の発生によってピークが発生する0.5次振動成分を用いるため、適切に失火指標を決定することができる。
本発明の作用及び他の利得は次に説明する発明を実施するための形態から明らかにされる。
エンジンシステムの構成を概念的に表してなる概略構成図である。 ECUの構成を示すブロック図である。 実施形態に係る内燃機関の制御装置の動作を示すフローチャートである 失火指標の変動を失火指標目標値と共に示すグラフである。
以下では、本発明の実施形態について図を参照しつつ説明する。
先ず、本実施形態に係るエンジンシステムの構成について、図1を参照して説明する。ここに、図1は、エンジンシステムの構成を概念的に表してなる概略構成図である。
図1において、エンジンシステム10は、図示せぬ車両に搭載され、ECU100及びエンジン200を備える。
ECU100は、CPU、ROM及びRAM等を備えたエンジン200の動作全体を制御する電子制御ユニットであり、本発明に係る「内燃機関の制御装置」の一例である。ECU100は、例えばROM等に格納された制御プログラムに従って各種制御を実行可能に構成されている。ECU100の具体的な構成については、後に詳述する。
エンジン200は、軽油を燃料とするディーゼルエンジンであり、本発明に係る「内燃機関」の一例である。エンジン200は、シリンダ201内において燃料を含む混合気が圧縮自着火した際に生じる爆発力に応じたピストン202の往復運動を、コネクションロッド203を介してクランクシャフト204の回転運動に変換することが可能に構成されている。
クランクシャフトは、本発明の「クランク軸」の一例であり、クランクシャフト204近傍には、クランクシャフト204の回転位置を検出するクランクポジションセンサ205が設置されている。クランクポジションセンサ205は、ECU100と電気的に接続されており、ECU100は、クランクポジションセンサ205によって検出されたクランクシャフト204の回転位置に基づいて、エンジン200の機関回転数NEを算出することが可能に構成されている。また、本実施形態に係るECU100は、後に詳述するように、クランクシャフト204の角速度に基づいて決定される失火指標を用いて、エンジン200における失火を判定することが可能とされている。
以下に、エンジン200の要部構成を、その動作の一部と共に説明する。
シリンダ201内における燃料の燃焼に際し、外部から吸入された空気は、図示せぬエアクリーナで浄化された後、吸気管206を通過し、吸気ポート209を介して吸気バルブ210の開弁時にシリンダ201内に吸入される。この際、シリンダ201内に吸入される吸入空気に係る吸入空気量は、図示せぬエアフローメータにより検出され、ECU100に電気信号として一定又は不定の出力タイミングで出力される構成となっている。
吸気管206には、吸入空気量を調節可能なスロットルバルブ207が配設されている。このスロットルバルブ207は、ECU100と電気的に接続されたスロットルバルブモータ208により、例えば、図示せぬアクセルペダルの操作量等に応じて電気的且つ機械的に駆動される構成となっている。尚、スロットルバルブ207の開閉状態を表すスロットル開度は、ECU100と電気的に接続された図示せぬスロットルポジションセンサにより検出され、ECU100に一定又は不定のタイミングで出力される構成となっている。
エンジン200の燃料は、燃料タンク212に貯留されている。この燃料タンク212には、燃料タンク212に貯留される燃料の量を表す燃料残量を検出可能なフロート式の燃料量センサ217が設置されている。燃料量センサ217は、ECU100と電気的に接続されており、検出された燃料量は、ECU100により、一定又は不定のタイミングで把握される構成となっている。
一方、燃料タンク212に貯留される燃料は、インジェクタ211によって、シリンダ201内の燃焼室に直接噴射される。インジェクタ211を介した燃料の噴射に際しては、先ず燃料タンク212に貯留された燃料が、フィードポンプ214の作用によりデリバリパイプ213を介して燃料タンク212から汲み出され、高圧ポンプ215へ供給される。
コモンレール216は、ECU100と電気的に接続され、上流側(即ち、高圧ポンプ215側)から供給される高圧燃料をECU100により設定される目標レール圧まで蓄積することが可能に構成された、高圧貯留手段である。尚、コモンレール216には、レール圧を検出することが可能なレール圧センサ及びレール圧が上限値を超えないように蓄積される燃料量を制限するプレッシャリミッタ等が配設されるが、ここではその図示を省略することとする。
エンジン200における上述したインジェクタ211は、シリンダ201毎に搭載されており、夫々が高圧デリバリを介してコモンレール216に接続されている。ここで、インジェクタ211の構成について補足すると、インジェクタ211は、ECU100の指令に基づいて作動する電磁弁と、この電磁弁への通電時に燃料を噴射するノズル(いずれも不図示)とを備える。当該電磁弁は、コモンレール216の高圧燃料が印加される圧力室と、当該圧力室に接続された低圧側の低圧通路との間の連通状態を制御することが可能に構成されており、通電時に当該加圧室と低圧通路とを連通させると共に、通電停止時に当該加圧室と低圧通路とを相互に遮断する。
一方、ノズルは、噴孔を開閉するニードルを内蔵し、圧力室の燃料圧力がニードルを閉弁方向(噴孔を閉じる方向)に付勢している。従って、電磁弁への通電により加圧室と低圧通路とが連通し、圧力室の燃料圧力が低下すると、ニードルがノズル内を上昇して開弁する(噴孔を開く)ことにより、コモンレール216より供給された高圧燃料を噴孔より噴射することが可能に構成される。また、電磁弁への通電停止により加圧室と低圧通路とが相互に遮断されて圧力室の燃料圧力が上昇すると、ニードルがノズル内を下降して閉弁することにより、噴射が終了する構成となっている。
このようにしてシリンダ201内に噴射された燃料は、吸気バルブ210を介して吸入された吸入空気と混合され、上述した混合気となる。この混合気は、圧縮工程において自着火して燃焼し、燃焼済みガスとして、或いは一部未燃の混合気として、吸気バルブ210の開閉に連動して開閉する排気バルブ218の開弁時に排気ポート219を介して排気管220に導かれる構成となっている。
また、排気管220には、DPF(Diesel Particulate Filter)221が設置されている。DPF221は、エンジン200から排出されるスート(煤)或いはスモーク、及びPM(Particulate Matter:粒子状物質)を捕集可能且つ浄化可能に構成されている。尚、説明の煩雑化を防ぐ目的から図示を省略するが、エンジン200には、上記したセンサ以外にも各種のセンサが配されており、例えば、エンジン200の冷却水温を検出する水温センサ、エンジン200のノッキングレベルを検出するノックセンサ、吸入空気の温度たる吸気温を検出する吸気温センサ及び吸入空気の圧力たる吸気圧を検出する吸気圧センサ等が夫々検出対象毎に最適な位置に設置されている。
次に、本実施形態に係る内燃機関の制御装置であるECU100の具体的な構成について、図2を参照して説明する。ここに図2は、ECUの構成を示すブロック図である。
図2において、ECU100は、クランク角速度検出部110と、失火指標決定部120と、失火指標目標値記憶部130と、失火判定部140と、失火抑制制御部150と、失火指標目標値更新部160とを備えて構成されている。
クランク角速度検出部110は、本発明の「角速度検出手段」の一例であり、クランクポジションセンサ205(図1参照)から出力されるクランク角信号に基づいて、クランクシャフト204の角速度を検出する。クランク角速度検出部110は、検出したクランク角速度を、失火指標決定部120に出力可能に構成されている。
失火指標決定部120は、本発明の「失火指標決定手段」の一例であり、クランク角速度検出部110において検出されたクランク角速度に基づいて失火指標を決定する。失火指標決定部120は、クランク角速度に対して周波数解析処理を行うことで、失火指標を決定する。失火指標決定部120は、決定した失火指標を、失火判定部140へと出力可能に構成されている。また、失火指標決定部120は、決定した失火指標を、失火抑制制御部150からの指示により、失火指標目標値更新部160にも出力可能に構成されている。
失火指標目標値記憶部130は、本発明の「記憶手段」の一例であり、失火していない場合の失火指標に相当する失火指標目標値を記憶している。失火指標目標値記憶部130は、記憶している失火指標目標値を、失火判定の際に失火判定部140へと出力可能に構成されている。なお、失火指標目標値記憶部130には、予め求められた理論値等が失火指標目標値の初期値として記憶されているが、後述するように、失火指標目標値は更新可能とされている。即ち、失火指標目標値記憶部130は、書き換え可能な記憶装置として構成されている。
失火判定部140は、本発明の「失火判定手段」の一例であり、失火指標決定部120において決定された失火指標と、失火指標目標値記憶部130に記憶されていた失火指標目標値とに基づいて、失火が発生しているか否かを判定する。失火判定部140は、失火の判定結果を、失火抑制制御部150へと出力可能に構成されている。
失火抑制制御部150は、本発明の「失火抑制手段」の一例であり、失火判定部140において失火が発生していると判定された場合に、失火指標を小さくするように(即ち、失火が抑制されるように)失火抑制制御を行う。なお、失火抑制制御としては、例えばインジェクタ211(図1参照)からの燃料噴射量、噴射時期の制御や、図示せぬEGRシステムにおけるEGRカット等の制御が挙げられる。ただし、失火指標を小さくし得るような制御であれば、上記制御以外の制御が失火抑制制御として行われても構わない。
失火指標目標値更新部160は、本発明の「失火目標値更新手段」の一例であり、失火抑制制御部150によって失火抑制制御が行われた後の失火指標に基づいて、失火指標目標値記憶部130に記憶されている失火指標目標値を更新する。
上述した各部位を含んで構成されたECU100は、一体的に構成された電子制御ユニットであり、上記各部位に係る動作は、全てECU100によって実行されるように構成されている。但し、本発明に係る上記部位の物理的、機械的及び電気的な構成はこれに限定されるものではなく、例えばこれら各部位は、複数のECU、各種処理ユニット、各種コントローラ或いはマイコン装置等各種コンピュータシステム等として構成されていてもよい。
次に、本実施形態に係る内燃機関の制御装置の動作について、図3を参照して説明する。ここに図3は、実施形態に係る内燃機関の制御装置の動作を示すフローチャートである。なお、以下では、本実施形態に係る内燃機関の制御装置であるECU100が行う処理のうち、本実施形態に特有の失火判定制御及び失火抑制制御に関する処理について詳細に説明し、その他の一般的な処理については適宜説明を省略するものとする。
図3において、本実施形態に係る内燃機関の制御装置の動作時には、先ずクランク角速度検出部110においてクランク角速度が検出される(ステップS101)。そして、失火指標決定部120では、クランク角速度検出部110で検出されたクランク角速度の0.5次振動成分が、失火を判定するための失火指標Xとして決定される(ステップS102)。決定された失火指標Xは、失火判定部140へと出力される。
失火指標Xが失火判定部140へ入力されると、失火指標目標値記憶部130からも、記憶されていた失火目標値Xtrgが失火判定部140へ入力される。失火判定部140では、先ず失火指標Xと失火指標目標値Xtrgとの差が算出される。そして、失火判定部140では、失火指標Xと失火指標目標値Xtrgとの差の絶対値が所定の閾値ΔXthre以上であるか否かが判定される(ステップS103)。なお、所定の閾値ΔXthreは、許容できる失火レベルXthreに対応する値として予め設定されている。
ここで、失火指標Xと失火指標目標値Xtrgとの差の絶対値が所定閾値ΔXthre以上でないと判定された場合(ステップS103:NO)、本実施形態に係る内燃機関の制御装置による一連の処理は終了する。一方で、失火指標Xと失火指標目標値Xtrgとの差の絶対値が所定閾値ΔXthre以上であると判定された場合(ステップS103:YES)、失火抑制制御部150による失火抑制制御が開始される(ステップS104)。
失火抑制制御では、例えば燃料を噴射するインジェクタ211における噴射量、噴射回数、噴射時期等が制御される。或いは、EGRシステムにおけるEGRバルブの開度が制御され、還流するEGRガスの量が調整される。これにより、エンジン200における失火が抑制され、その結果として失火指標Xが小さくなる。
失火抑制制御によって失火指標Xが最小値となると(ステップS105:YES)、失火指標目標値更新部160において失火指標目標値が更新される(ステップS106)。具体的には、失火指標目標値更新部160は、失火抑制制御が行われた後の失火指標Xroad(即ち、最小値となるまで小さくされた失火指標)と許容失火レベルXthreとの和を新たな失火指標目標値Xtrgとする。
ここで特に、失火抑制制御後の失火指標Xroadは、失火が発生していない(或いは、失火レベルが極めて低い)状態での失火指標であると考えられる。また、失火抑制制御後の失火指標Xroadは、例えば車両が悪路を走行することで発生する振動の影響を受けた値であると考えられる。よって、失火抑制制御後の失火指標Xroadを基準として用いれば、悪路による影響を加味した失火目標値Xtrgを設定できる。従って、悪路走行時に失火判定を行う場合であっても、悪路の影響による失火指標Xの変動に起因して、失火判定が正確に行えなくなるという事態を防止できる。
失火指標目標値Xtrgが更新されると、失火指標Xが新たな失火指標目標値Xtrgに近づくように、失火抑制制御部150によるフィードバック制御が実行される(ステップS107)。これにより、エンジン200では、適切な燃焼状態が実現される。
次に、上述した各種制御を行う場合の各パラメータの変動について、図4を参照して具体的に説明する。ここに図4は、失火指標の変動を失火指標目標値と共に示すグラフである。
図4において、例えば悪路による影響や失火の発生によって、時刻t0から失火指標Xが上昇したとする。この場合、失火指標Xと失火指標目標値Xtrgとの差が所定の閾値ΔXthre以上となる時刻t1において、エンジン200において失火が発生していると判定される。そして時刻t1からは、失火抑制制御が開始される。失火抑制制御が開始されると、失火が抑制されるため、失火指標Xの値が下降していく。
失火抑制制御によって失火指標Xが最小値となると、その時点(即ち、時刻t2)での失火指標Xroadと許容失火レベルXthreとの和が新たな失火指標目標値Xtrgとして更新される。なお、ここでは、新たな失火指標目標値Xtrgがより大きな値として更新されているが、失火指標目標値Xtrgはより小さな値として更新されることもある。
新たな失火指標目標値Xtrgが決定すると、フィードバック制御によって失火指標Xが失火指標目標値Xtrgに徐々に近づけられる。これにより、エンジン200の燃焼状態を安定させることができる。
なお、上述した失火判定及び失火指標目標値Xtrgの更新処理は、常時行われてもよいし、定期的に又は所定のタイミングで行われるようにしてもよい。或いは、失火指標が大きく変動した場合に行われるようにしてもよい。
以上説明したように、本実施形態に係る内燃機関の制御装置によれば、車両が走行する道路の影響を加味して失火指標目標値Xtrgが更新される。このため、車両が悪路を走行している場合であっても、エンジン200における失火の発生を好適に判定することが可能である。
本発明は、上述した実施形態に限られるものではなく、特許請求の範囲及び明細書全体から読み取れる発明の要旨或いは思想に反しない範囲で適宜変更可能であり、そのような変更を伴う内燃機関の制御装置もまた本発明の技術的範囲に含まれるものである。
100…ECU、110…クランク角速度検出部、120…失火指標決定部、130…失火指標目標値記憶部、140…失火判定部、150…失火抑制制御部、160…失火指標目標値更新部、200…エンジン、204…クランクシャフト、205…クランクポジションセンサ、207…スロットルバルブ、211…インジェクタ、212…燃料タンク。

Claims (3)

  1. 内燃機関のクランク軸の角速度を検出する角速度検出手段と、
    前記クランク軸の角速度における所定の周波数成分を抽出し失火指標とする失火指標決定手段と、
    失火していない場合の前記失火指標に相当する失火指標目標値を記憶する記憶手段と、
    前記失火指標と前記失火指標目標値との差が所定の閾値以上である場合に、前記内燃機関において失火が発生していると判定する失火判定手段と、
    前記内燃機関において失火が発生していると判定された場合に、前記失火指標を小さくする失火抑制制御を行う失火抑制手段と、
    前記失火抑制制御後の前記失火指標と、許容し得る前記失火指標の変動幅である許容失火レベルとの和を新たな前記失火目標値として、前記記憶手段を更新する失火目標値更新手段と
    を備えることを特徴とする内燃機関の制御装置。
  2. 前記失火抑制手段は、前記失火指標を最小化するように前記失火抑制制御を行うことを特徴とする請求項1に記載の内燃機関の制御装置。
  3. 前記所定の周波数成分は、0.5次振動成分であることを特徴とする請求項1又は2に記載の内燃機関の制御装置。
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