JP2008207791A - Cfrp製パネル構造体 - Google Patents

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Abstract

【課題】軽量かつ高剛性で、外観上の歪みの少ない美しい表面を有し、その上接着強さも安定して強いパネル構造体を提供することにある。
【解決手段】少なくとも一部にフランジ部と立ち壁部を有するハット型形状の内側パネル部材と外側パネル部材とが接着されてなるパネル構造体であって、外側パネル部材の内側パネル部材のフランジ部に相対する領域の外縁部 または/および 内側パネル部材のフランジ部に隣接した部分に離型層を有することを特徴とする炭素繊維強化プラスチック製パネル構造体。
【選択図】図3

Description

本発明は、内側パネル部材と外側パネル部材を接着してなるCFRP製パネル構造体に関し、特に、自動車用のボンネットフードやドア、屋根などの自動車外板パネルとして好適なCFRP製パネル構造体に関する。

自動車のボンネットフードなど内側パネル部材と外側パネル部材を接合し、かつ外側パネル部材に歪みのない外観を要求されるパネル構造体は、これまで鋼やアルミなどの金属材料が主として用いられてきた。これに対して、近年軽量化の要求が高まってきたことから、軽量で強度、剛性に優れる炭素繊維強化プラスチック(以下、「CFRP」と称する場合もある)が、最も軽量化にふさわしい材料として用いられるようになってきた。
金属製のパネル構造体は内側パネルの外周部を挟み込むように外側パネルの外周部を曲げ加工(ヘム加工)することにより接合する構造が用いられているが、CFRP製パネル構造体では同じ構造を採用することは出来ない。これはCFRPが脆性材料であり、折り曲げ加工しようとすると曲げた部分が折れてしまうためである。従ってCFRP製パネル構造体を製造する場合には、内側パネル部材と外側パネル部材を接着接合する構造が一般的に用いられてきた。
しかしながら、接着構造を用いたパネル構造部材の外側パネル部材表面には歪みが生じ、美しい表面を得ることが難しいという問題があった。
図1の様に、少なくとも一部にフランジ部と立ち壁部を有するハット型形状の内側パネル部材と外側パネル部材を接着した場合、互いが相対している部分3aと、内側パネル部材のR部分に接着剤がはみ出した部分3bでは接着剤の厚みが大きく異なる。一般的に接着剤は硬化する際の化学反応により体積が数パーセント収縮するが、ハット型形状を有する内側パネル部材に比べて曲率の小さい外側パネル部材は剛性が低いため、内側パネル部材に引っ張られることになる。このとき、接着剤の厚みが大きく異なった場合、接着剤の収縮する絶対量に差が生じ、図2の如く外側パネル部材が変形し、外観に歪みが生じるのである。
これに対して、内側パネル部材のR部にはみ出した接着剤を掻き取ることにより外観の歪みを抑制することも考えられるが、R部の奥まで掻き取ることは難しい。また、フランジ部の内側には手が入らない場合が多く現実的ではない。
さらに、接着剤の掻き取り作業を軽減させる目的で、特許文献1に開示されているような接着剤のはみ出しを防止する方法が提案されている。しかしながら、接着剤を安定的にはみ出させないようにするためには、接着剤の塗布量を両面テープと被接着部材で構成されるスペースの体積より少なくしておく必要がある。この場合、接着剤は重力で下方向に溜まるため上側の被接着部材と触れあわない部分が生じることから、接着強さを安定して確保することが出来ないという問題が生じる。
特開昭62−135584号公報
そこで本発明の課題は、上述する従来のパネル構造体の問題点を克服し、軽量かつ高剛性で、外観上の歪みの少ない美しい表面を有し、その上接着強さも安定して強いパネル構造体を提供することにあり、特に、かかる特徴を有する自動車用外板パネル構造体を提供することにある。
上記課題を達成するために本発明は、以下の構成を採用する。すなわち、
(1)少なくとも一部にフランジ部と立ち壁部を有するハット型形状の内側パネル部材と外側パネル部材とが接着されてなるパネル構造体であって、外側パネル部材の内側パネル部材のフランジ部に相対する領域の外縁部 または/および 内側パネル部材のフランジ部に隣接した部分に離型層を有することを特徴とするCFRP製パネル構造体。
(2)前記離型層がフィルムを接着したものであることを特徴とする、前記(1)に記載のCFRP製パネル構造体。
(3)内側パネルと外側パネルとの接着層の厚みをt1、離型層の厚みをt2とすると、t1とt2の関係が以下の式を満足することを特徴とする、前記(1)または(2)に記載の炭素繊維強化プラスチック製パネル構造体。
t2/t1≦0.6・・・(式)。
(4)前記フィルムの水との接触角が75°以上であることを特徴とする、前記(2)に記載のCFRP製パネル構造体。
(5)前記フィルムと外側パネル部材との間引き剥がし力 または/および 前記フィルムと内側パネル部材との間引き剥がし力がフィルム幅25mm当たり4N以下であることを特徴とする、前記(2)〜(4)いずれかに記載のCFRP製パネル構造体。
(6)前記離型層が離型剤であることを特徴とする、前記(1)に記載のCFRP製パネル構造体。
(7)前記離型層が塗膜であり、前記塗膜の水との接触角が75°以上であることを特徴とする、前記(1)に記載のCFRP製パネル構造体。
本発明によれば、内側パネル部材のR部分にはみ出した接着剤が外側パネル部材 または/および 内側パネル部材と接着していないため、接着剤が収縮しても外側パネル部材が内側パネル部材側に引っ張られる力が著しく軽減される。また、必要とされる量以上に接着剤を塗布し、積極的にはみ出させるために接着剤の不足による強度不足を生じる恐れが少ない。従って、従来のパネル構造体では困難であった、軽量かつ高剛性で、外観上の歪みの少ない美しい表面を有し、その上接着強さも安定して強いパネル構造体が得られるのである。
以下、本発明の望ましい実施の形態について、詳細に説明する。
本発明は、少なくとも一部にフランジ部と立ち壁部を有するハット型形状の内側パネル部材と外側パネル部材とが接着されてなるパネル構造体であって、外側パネル部材の内側パネル部材のフランジ部に相対する領域の外縁部 または/および 内側パネル部材のフランジ部に隣接した部分に離型層を有することを特徴とするCFRP製パネル構造体である。
本発明の内側パネル部材は、図1に示す通りハット型形状をしており、少なくとも一部にフランジ部と立ち壁部を有し、本発明に係るCFRP製パネル構造体は、当該内側パネル部材のフランジ部の一部と外側パネル部材とが接着されて構成される。
ここで、本発明に係るCFRP製パネル構造体は、離型層を有することを特徴とする。離型層は、外側パネル部材の内側パネル部材のフランジ部に相対する領域の外縁部(図3,4の3a:点線部の内側)、内側パネル部材のフランジ部に隣接した部分(図3,4の3c:点線部の外側)のいずれか、もしくは両方に設けられていれば良い。接着面積に十分な安全率が設定されていれば、離型層の位置はバラツキを考慮して、図3,4の4の様にフランジ領域にかかる位置に離型層が配置されていることが、歪みの抑制の点ではより好ましい。
なお、本発明の効果、すなわち、接着剤が収縮しても外側パネル部材が内側パネル部材側に引っ張られる力が軽減され、また、必要とされる量以上に接着剤を塗布し、積極的にはみ出させるために接着剤の不足による強度不足を生じにくくなるという効果を奏する限りにおいて、前記外縁部、もしくは前記内側パネル部材のフランジ部に隣接した部分のいずれかの箇所に離型層を有さない部分があっても差し支えはない。
本発明に係るCFRP製パネル構造体は、特に用途を限定するものではないが、特に自動車外板パネルに好適である。具体的な使用例を挙げると、ボンネットフードや屋根、ドア、トランクリッド、フェンダーなどである。
本発明におけるパネル構造体はCFRPからなる。CFRPとは、炭素繊維により強化されている樹脂(すなわち、炭素繊維強化プラスチック)を指す。CFRPは鋼やアルミなどの金属材料に比べて軽量で、強度、剛性の面でも優れるため、軽量で強度、剛性の高いパネル構造体、特に自動車外板パネルの材料として好適である。
本発明に用いられる炭素繊維の種類としては何ら限定されるものではない。アクリル繊維を原料とし強度面で優れた特性を持つPAN系炭素繊維でも、石油ピッチなど原料とし弾性率の面で優れた特性を持つピッチ系炭素繊維の何れであってもよい。炭素繊維の形態も特に制限されるものではない。高い強度が必要であれば連続繊維が好ましく、安価であることを求める場合には炭素繊維を短くカットしたSMC(シートモールディングコンパウンド)や、ペレット材料を選択することも出来る。連続繊維を用いる場合には炭素繊維を一方向に引き揃えた一方向材(UD材)でも織布材でもよいが、成形する上では織布材の方が容易である。織布の種類としては平織りや朱子織り、綾織り、ノンクリンプクロスなどが適宜選択できるが、クリア塗装で織り目を製品表面に見せる場合には平織りを用いると意匠性が高くなる。また、朱子織りや綾織りはドレープ性が良いため、深さの深い3次元形状を成形する場合に使用すると良い。
また、炭素繊維以外にも表面意匠性や成形性、樹脂含浸性を向上させることを目的に、マットや不織布、充填材など他の補強繊維や補助材料を用いることもできる。例えば、ガラスサーフェースマットなどを用いることにより、表面が平滑性や樹脂の含浸性を向上できることがある。また、かかる炭素繊維以外の他の補強繊維として、例えば、ガラス繊維、アラミド繊維、PBO(ポリパラフェニレンベンゾビスオキサゾール)繊維、チラノ(チタンアルミナ)繊維、ナイロン繊維などが挙げられるが、炭素繊維以外の他の補強繊維が、強化繊維全体の50質量%未満の含有量であれば、本発明で言うCFRPに含まれるものとする。
さらに、CFRPの積層構成は特に制限されることはなく、パネル構造体に加わる力の方向や大きさに合わせて適宜配向させることができる。自動車外板パネルの場合は0°、90°、+45°、−45°の各方向に繊維を均等に配した疑似等方積層を基本に配向させることが一般的である。自動車外板パネルは大きく浅い板状の形状が多く、働く荷重も曲げ荷重とねじり等の剪断荷重が共に想定されるためである。しかしながら、車両の種類や適応される部位に応じて適宜異方性を持たせることは好ましい。
本発明のCFRPを構成するマトリックス樹脂としては、繊維との接着性が良く高い強度が得られることからエポキシ樹脂が好ましい。エポキシ樹脂以外にもビニルエステル樹脂や不飽和ポリエステル樹脂などを選択できる。また、ナイロン樹脂やABS(アクリルニトリルブタジエンストレン)樹脂、PPS(ポリフェニレンスルホン)樹脂などの熱可塑性樹脂を選択することもできる。高温に晒される場所で使用する場合には、ビスマレイミド樹脂やポリイミド樹脂などを利用してもよい。その他、各種添加剤を用いることもでき、例えばマトリックス樹脂に紫外線吸収剤を混合すると、紫外線によるマトリックス樹脂の劣化を防止する効果も得ることができる。
本発明の内側パネル部材および外側パネル部材を成形する方法としては、一般に知られたCFRPの成形法を適用することができる。中でもRTM成形(レジン・トランスファー・モールディング)は大型で軽量、高剛性の製品を短い成形サイクルで生産することができるため、自動車外板パネルの成形に適している。より大量生産される用途に対してはSMCを用いたプレス成形や熱可塑性樹脂をマトリックス樹脂とした材料での射出成形が適している。もちろん一般的なプリプレグ材料を使用してオートクレーブ成形やプレス成形、バキュームバッグ成形することもできるし、ハンドレイアップや、VaRTM法(バッグ材内を真空吸引して樹脂注入する成形法)などを適用することもできる。
次に、本発明に用いられる接着剤の種類についても、何ら制限されるものではない。具体的には接着強度に優れ種類も豊富なエポキシ系接着剤や、耐衝撃に優れ短時間硬化できるウレタン系、被接着物の油汚れに強いアクリル系接着剤などが挙げられる。接着剤の強度は一般的に厚み依存性があり、また軽量性の点からも、接着層厚みは薄く設定することが好ましい。
本発明に用いられる離型層としては、用いられる接着剤に対して離型性を有するものであれば機能を満足することが出来る。平面や浅い3次元曲面に設けるには離型性のあるフィルムを貼り付けると作業性もよい。フィルムの片面に粘着剤を予め塗布した離型性ある粘着テープが市販されているので、これを用いるとさらに簡単に作業することができ、剥離紙ライナー付きフィルムであれば自動裁断機などで事前にカットしておくことで量産にも対応できる。
深い3次元曲面や広い面積に離型層を設けるには離型剤を塗布するか、あるいは離型性を有する塗料を塗布して、乾燥させることにより塗膜を構成する方が作業性がよい。離型剤や塗料を使用する場合には、塗布前に接着部分を予めマスキングしておき、離型剤や塗料が付着しないように注意する必要がある。離型剤や離型性のある塗料が接着部分に付着すると接着強度が著しく低下するためである。また、離型剤や塗料は熱風乾燥機や赤外線ヒータ、または自然乾燥などの方法を用いて充分に乾燥させておく必要がある。乾燥が不充分であると、後から塗布された接着剤に溶け込み接着剤の強度を低下させてしまう恐れがあるためである。
フィルムや塗料を使用する場合、充分な離型性を有するものを選択する必要がある。離型性の指標としては水との接触角を用いることが簡便である。一般的な接着剤に対する必要な離型性は水との接触角が75°以上である。水との接触角が75°以下であると接着剤と接着する場合が生じてしまい、外観の歪みを防止することができなくなることがある。具体的な材料の例として、フィルムの場合はPTFE(ポリテトラフルオロエチレン)やFEP(テトラフロオロエチレン−ヘキサフロオロプロピレン共重合体)、PFA(テトラフロオロエチレン−パーフロオロアルキルビニルエーテル共重合体),ETFE(テトラフロオロエチレン−エチレン共重合体)などのフッ素樹脂、ポリエチレンやポリプロピレンなどのポリオレフィンなどが挙げられ、塗料の場合はシリコン系、フッ素系、無機系などの塗料が挙げられる。また、フィルムを用いる場合にはフィルムと外側パネル部材または内側パネル部材との間の粘着剤を調整し、フィルム幅25mm当たり4N以下の力で剥がれる様にしてもよい。接着剤の収縮によりフィルムが剥がれてしまい、外側パネル部材の歪みが発生しないためである。離型剤は元々樹脂成型品と成形型との離型を目的としているものであり、熱硬化性樹脂成型用の離型剤であれば特に制限されるものではない。特にフッ素系離型剤は、接着剤への溶け込みも殆どないため好ましい。
特に離型層にフィルムを採用する場合、内側パネルと外側パネルとの接着層の厚みをt1、離型層の厚みをt2とすると、t1とt2の関係が以下の式を満足することが好ましい。なお、内側パネルと外側パネルとの接着層、離型層の厚みに分布が存在する場合は、理想的には、接着層、離型層の全面において以下の式を満足することが望ましいが、少なくとも接着層、離型層の平均厚みが以下の式を満足することが望ましい。また、より好ましくは、さらに、全接着層、全離型層の50%以上の領域が以下の式を満足すること、さらに好ましくは、さらに、全接着層、全離型層の80%以上の領域が以下の式を満足することである。
t2/t1≦0.6・・・(式)。
接着層厚みにおけるフィルム厚みの割合が高いと、フィルム自体が封止効果を有し、接着剤が必要範囲に延伸されることを阻害するとともに、フィルム層端面が壁となり接着剤が3次元的に周囲を引張り、応力が集中するためである。これはフィルムが基材層部分と粘着層部分の2層からなり、基材は離型効果を有するが、粘着剤と接着剤とは接着されるためである。接着層厚みを薄くすることが強度面、軽量性より好ましいと前述したが、前式を満たす範囲で接着層厚み/フィルム層厚みを選定することで、より歪みを抑えられる。
以下、実施例に基づいてさらに詳細に説明する。なお、各物性については以下の通りに測定を行った。
[水との接触角]
接触角はθ/2法で測定した。水平に保持したサンプル上に少量の水滴を滴下し、これを真横からCCDカメラで拡大撮影した。この画像から水滴の半径rと高さhを測定し、次式により接触角θを求めた。
θ=2tan−1(h/r)。
[フィルム幅25mm当たりの引き剥がし力]
引き剥がし力はJIS Z 0237(2000)に規定の180°引き剥がし法に準じて測定した。テープ幅は25mmとし、CFRPの板にこのテープを貼り付け、試験片を準備した。試験には万能試験機を用い、テープの先端とCFRPをそれぞれチャックして、テープが180°折り返えされる方向に300mm/分の速度で引き剥がしたときの力を測定した。
各実施例、比較例においては、図5に示す形状の外側パネル部材と図6に示す形状の内側パネル部材を接着接合してなるCFRP製自動車ボンネットフードを成形し、このボンネットフードの表面に写り込む蛍光灯の像の歪みの具合を目視で観察して比較した。また、このボンネットフードの一部分を10mm幅に切り出し、接着部分に引き剥がし力を加えて破壊の様子を比較した。
実施例および比較例には、材料として、炭素繊維としては引張強さ4.9GPaのPAN系炭素繊維を目付200g/m、300g/mに平織りした2種類の織物、マトリックス樹脂としてはRTM成形用に調合された低粘度エポキシ樹脂、接着剤は加熱硬化型の2液混合ウレタン接着剤を用いた。
また、外側パネル部材および内側パネル部材は以下の方法で成型した。
まず炭素繊維織物を外側パネル部材の形状に切り出し、離型剤を塗布した雌型の上に車体の前後方向に対して0°/90°、±45°、±45°、0°/90°の順に4枚積層した。この上に、ピールプライとしてポリエステルタフタを置き、さらにポリプロピレン製のネットを置いた。さらに、概略の製品形状にあわせたカウルプレートを置き、内部の空気を抜くためのホースと樹脂を注入するためのホースをセットした後、全体をナイロン製バッグフィルムで覆った。
次に、内部の空気を抜いて真空状態とした後、樹脂注入用ホースからエポキシ樹脂を吸引させ、樹脂が行き渡った状態で真空用、樹脂注入用それぞれのホースを折り曲げて樹脂を封入し、樹脂が硬化するまで1時間放置した。なお、このとき金型の温度は85℃になるよう温水を循環させることにより加熱しておいた。樹脂が硬化後、バッグフィルムをはぎ取り、さらにカウルプレート、ネット、ピールプライをはぎ取った後、成形品を型から取り外し、外側パネル部材を得た。次に内側パネル部材パネル部材も同様の方法で成型した。得られた外側パネルは平均厚みが1.3mm、内側パネルは1.1mmであった。
(実施例1)
成型した外側パネル部材の接着位置に隣接してPTFE製フィルムの片面に粘着剤と塗布した粘着テープを貼り付けた。この粘着テープの水に対する接触角は108°であり、該部材との引き剥がし力は25mmのテープ幅で9.1Nであった。この外側パネルの接着位置に専用の混合吐出装置を用いて接着剤を塗布した。このとき、接着剤の吐出量は毎分250gに設定し、吐出ガンを1m当たり8秒の速さで動かした。この外側パネル部材を成型に使用した型に載せ、さらに内側パネル部材を被せ、これらをフィルムで覆ったあと、砂袋を350kg分載せた。5分後一旦砂袋とフィルムをおろし、内側パネル部材の外側にはみ出した接着剤を掻き取った後、もう一度フィルムと砂袋を載せ、1時間硬化させた。このとき、金型の温度は60℃に調整しておいた。
得られた自動車用ボンネットフードの外観は美しい仕上がりであり、表面に蛍光灯を写し込んでも像が歪むことはなかった。さらに、この自動車用ボンネットフードの端部付近から接着部分をダイヤモンドカッターで幅25mmに切り出し、万能試験機で引き剥がし試験を行ったところ、荷重530Nにおいて接着剤ではなく内側パネル部材が破壊した。
(実施例2〜6、比較例1〜3)
実施例1と同様に、表1に示す様に離型層の種類を変更して実施例2から比較例3を製作し、観察、試験を行った。
実施例2ではPE(ポリエチレン)製フィルムに粘着剤を貼り合わせた粘着テープを用いたが、実施例1と同様に表面に写り込んだ蛍光灯の像は歪むことはなかった。PEテープの水との接触角も94°であり接着剤と離型する硬化が充分に確保できるためである。
実施例3ではPET(ポリエステル)製フィルムの片面に低粘着力の粘着剤を貼り合わせた粘着テープを使用したが、実施例1と同様に表面に写り込んだ蛍光灯の像は歪むことはなかった。このフィルムの水との接触角は70°であったが、粘着力は25mm幅で3.1Nと低かったため、接着剤の収縮による力のために粘着剤が外側パネル部材と剥がれ、実質的に接着剤と外側パネル部材が接着していなかったためである。
実施例4では成型した外側パネル部材の接着位置に隣接して、フッ素系離型剤を塗布した。離型剤を塗布する前には接着する箇所に離型剤が付着しないようマスキングテープで養生しておき、離型剤を塗布した後にこのマスキングテープを剥がした。さらに乾燥のため85℃に加熱された金型の上にのせ、1時間放置した。この後実施例1と同様の手順で内側パネル部材を接着し外観を観察したところ、表面に写り込んだ蛍光灯の像は歪むことはなかった。
実施例5では成型した外側パネル部材の接着位置に隣接して、フッ素系塗料を塗布した。塗料を塗布する前には接着する箇所に塗料が付着しないようマスキングテープで養生しておき、塗料を刷毛で塗布した後にこのマスキングテープを剥がした。さらに常温で3時間乾燥したあと、85℃に加熱された金型の上にのせ、3時間放置した。この後実施例1と同様の手順で内側パネル部材を接着し外観を観察したところ、表面に写り込んだ蛍光灯の像は歪むことはなかった。
実施例6では実施例2と同じPE(ポリエチレン)製フィルムに粘着剤を貼り合わせた粘着テープを用いた。ただし、粘着テープを貼る位置は外側パネル部材ではなく、内側パネル部材接着位置に隣接して貼り付けたが、実施例1と同様に表面に写り込んだ蛍光灯の像は歪むことはなかった。
比較例1ではフィルムなどの離型層を設けなかった。製作した自動車用ボンネットフードに写り込んだ蛍光灯の光は、接着部の境界部で曲がって見えた。
比較例2はPET製フィルムの片面に粘着剤を塗布した粘着テープを用いたところ、製作した自動車用ボンネットフードに写り込んだ蛍光灯の光が、接着部の境界部で曲がって見える部分と、曲がらない部分が混在していた。
比較例3では実施例5と同様の手順でウレタン系塗料を使用いたが、やはり写り込んだ蛍光灯の光は曲がって見える部分が散見された。
(比較例4)
図4に示すように成型した外側パネル部材の接着位置の両端に厚さ0.75mmの両面テープを貼り付けた。このとき、接着位置の幅は25mmであり、その両端に幅5mmの両面テープを貼り付けたため実質的な接着幅は15mmになった。この外側パネルの接着位置に専用の混合吐出装置を用いて、接着剤の吐出量を毎分125gに設定し、吐出ガンを1m当たり6秒の速さで接着剤を塗布した。接着剤の塗布量は、実質的な接着幅15mmと両面テープの厚さ0.75mmで作る空間を完全に埋めるためには、接着長さ1m当たり15gの接着剤が必要になるが、塗布量のバラツキがあっても接着剤をはみ出させないために、接着剤塗布量を接着長さ1m当たり12.5gとした。この外側パネル部材を成型に使用した型に載せ、さらに内側パネル部材を被せ、これらをフィルムで覆ったあと、砂袋を350kg分載せた。5分後一旦砂袋とフィルムをおろし、接着剤のはみ出しを確認したが接着剤ははみ出していなかった。さらに、もう一度フィルムと砂袋を載せ、1時間硬化させた。このとき、金型の温度は60℃に調整しておいた。得られた自動車用ボンネットフードの表面に蛍光灯を写し込んでも像が歪むことはなかったが、実施例1と同様に接着部分を切り出し、万能試験機で引き剥がし試験を行ったところ、荷重250Nにおいて接着剤部分が破壊した。破壊した面を観察すると接着剤にCFRPが黒く付着した部分と、CFRPが付着せず光沢を有した部分がおよそ半分ずつ見られた。光沢のある部分はCFRPと接着されず、空気に触れた状態で固まったものである。実施例では接着幅25mmが全て接着していたのに対し、比較例4では実質的な接着幅15mmの半分程度しか接着していなかったため、7.5mm分しか有効に接着されていなかった。
Figure 2008207791
(実施例7)
成型した外側パネル部材の接着位置に隣接してPE(ポリエチレン)製フィルムの片面に粘着剤を塗布した粘着テープを貼り付けた。テープ厚みは約0.3mmであった。外側パネル、内側パネルともに接着位置はサンディングを行った。この外側パネルの接着位置に専用の混合吐出装置を用いて接着剤を塗布した。このとき、接着剤の吐出量は毎分250gに設定し、吐出ガンを1m当たり8秒の速さで動かした。
接着はプレス装置に上下型構造からなる接着型を組み付け、外側パネル部材と内側パネル部材とを接着型にセットしプレスさせることで接着させた。この時、接着層厚みは上下型間のクリアランスで任意で設定できたため接着層厚み0.5mm、1.0mmを狙った2水準で接着した。
接着5分後一旦内側パネル部材の外側にはみ出した接着剤を掻き取った後、もう一度接着型に戻し、1時間硬化させた。この時、金型の温度は60℃に調整しておいた。脱型後100℃程度でアフターキュアを行い、接着剤を完全硬化させた。
得られた接着層厚みを0.5mmに設定したフードは、外側パネルと内側パネルとの接着位置に対応する表面部分に写り込んだ蛍光灯に歪みが発生していた。しかし、接着層厚み1.0mmに設定したフードには、外側パネルと内側パネルとの接着位置に対応する表面部分に写り込んだ蛍光灯に歪みは見受けられなかった。
歪み部周辺の断面を観察したところ、接着層を0.5mmに設定したフードは、実測で接着層厚みが0.3〜0.5mmで、広範囲においてPEテープと内側パネルとの距離が極めて近い/接触している箇所が見受けられ部分的に接着剤はみ出し量が不足していた。また、蛍光灯の歪みが発生していた位置に対応する断面位置は、接着位置側のPEテープ端部周辺であった。接着層を1.0mmに設定したフードは実測で接着層厚みが0.7〜0.9mm程度であった。
Figure 2008207791
本発明に係るは、CFRP製パネル構造体は、自動車用のボンネットフードやドア、屋根などの自動車外板パネルに適用して特に好適な物であるが、本発明の適用範囲はこれらに限られるものではない。
従来のCFRP製パネル構造体の横断面の一例。 従来のCFRP製パネル構造体の横断面の変形の一例を示す模式図。 本発明に係るCFRP製パネル構造体(離型層を外側パネル部材の内側パネル部材のフランジ部に相対する領域の外縁部に設けた場合)の横断面の一例。 本発明に係るCFRP製パネル構造体(離型層を内側パネル部材のフランジ部に隣接した部分に設けた場合)の横断面の一例。 実施例に係る外側パネル部材の斜視図。 実施例に係る内側パネル部材の斜視図。
符号の説明
1:外側パネル部材
2:内側パネル部材
3:接着剤
3a:内側パネル部材のフランジ部と外側パネル部材が互いに相対した部分
3b:内側パネル部材のR部分に接着剤がはみ出した部分
3c:外側パネル部材の内側パネル部材のフランジ部に相対する領域の外縁部
3d:内側パネル部材のフランジ部に隣接した部分
4:離型層

Claims (7)

  1. 少なくとも一部にフランジ部と立ち壁部を有するハット型形状の内側パネル部材と外側パネル部材とが接着されてなるパネル構造体であって、外側パネル部材の内側パネル部材のフランジ部に相対する領域の外縁部 または/および 内側パネル部材のフランジ部に隣接した部分に離型層を有することを特徴とする炭素繊維強化プラスチック製パネル構造体。
  2. 前記離型層がフィルムを接着したものであることを特徴とする、請求項1に記載の炭素繊維強化プラスチック製パネル構造体。
  3. 内側パネルと外側パネルとの接着層の厚みをt1、離型層の厚みをt2とすると、t1とt2の関係が以下の式を満足することを特徴とする、請求項1または2に記載の炭素繊維強化プラスチック製パネル構造体。
    t2/t1≦0.6・・・(式)。
  4. 前記フィルムの水との接触角が75°以上であることを特徴とする、請求項2に記載の炭素繊維強化プラスチック製パネル構造体。
  5. 前記フィルムと外側パネル部材との間引き剥がし力 または/および 前記フィルムと内側パネル部材との間引き剥がし力がフィルム幅25mm当たり4N以下であることを特徴とする、請求項2〜4のいずれかに記載の炭素繊維強化プラスチック製パネル構造体。
  6. 前記離型層が離型剤であることを特徴とする、請求項1に記載の炭素繊維強化プラスチック製パネル構造体。
  7. 前記離型層が塗膜であり、前記塗膜の水との接触角が75°以上であることを特徴とする、請求項1に記載の炭素繊維強化プラスチック製パネル構造体。
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