JP2008205278A - 半導体レーザ素子およびその製造方法 - Google Patents

半導体レーザ素子およびその製造方法 Download PDF

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秀樹 松原
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Abstract

【課題】電気的特性を向上することのできる半導体レーザ素子およびその製造方法を提供する。
【解決手段】半導体レーザ素子1は、GaNを含むp型クラッド層6と、p型クラッド層6に隣接して形成されたフォトニック結晶層7とを備えている。フォトニック結晶層7は、GaNを含むエピタキシャル層2aと、AlOxよりなる低屈折率層2bとを有している。エピタキシャル層2aは複数の孔2cを有しており、複数の孔2c内に回折格子点となる低屈折率層2bが埋め込まれている。
【選択図】図2

Description

本発明は半導体レーザ素子およびその製造方法に関し、より特定的には、GaN(窒化ガリウム)のエピタキシャル層を含む2次元回折格子を備えた半導体レーザ素子およびその製造方法に関する。
DFB(Distributed feedback)レーザは、内部に設けられた1次元の回折格子によって前進波と後進波との結合を誘起し、その結果生じる定在波を利用したレーザである。この現象は、1次元の回折格子に対しブラック条件を満たす特定の波長の光でのみ生じる。したがって、DFBレーザによれば、縦モード(発振される光の光軸方向の共振モード)が単一モードである光を安定して発振することができる。
一方、DFBレーザにおいて、発振される光の光軸方向(言い換えれば回折格子に対して垂直な方向)以外の方向の光は、回折格子により回折されても定在波とはならず、フィードバックされない。つまり、DFBレーザでは、発振される光の光軸方向以外の方向の光は発振に関与せずにロスになるので、その分だけ発光効率が悪いという欠点があった。
そこで、近年、2次元の屈折率分布を持った2次元フォトニック結晶レーザが開発されつつある。2次元フォトニック結晶レーザによれば、発振される光の光軸方向以外の光であっても、フォトニック結晶面内に存在するさまざまな方向の光を回折して定在波を生じさせることで、発光効率を向上することができる。また、2次元フォトニック結晶レーザは、フォトニック結晶の主面に対して垂直な方向に面発光するという特徴を有しているので、レーザ光の出力を増加することができる。
従来の2次元フォトニック結晶レーザは、たとえば国際公開第2006/062084号パンフレット(特許文献1)に開示されている。特許文献1の2次元フォトニック結晶レーザは、基板と、基板上に形成された2次元回折格子(フォトニック結晶)と、基板上に形成されたn型クラッド層と、基板上に形成されたp型クラッド層と、n型クラッド層およびp型クラッド層に挟まれた活性層と、2次元回折格子の真上を覆うGaN層とを備えている。
2次元回折格子は、GaNよりなるエピタキシャル層と低屈折率材料とによって構成されている。エピタキシャル層および低屈折率材料のうちいずれか一方が回折格子点を占めるように形成されており、いずれか他方が回折格子点の周囲を埋めるように形成されている。
低屈折率材料が回折格子点を占める場合、2次元回折格子は以下の方法によって形成される。まず、レジストを基板上に形成し、レジストにおける回折格子点となる位置に孔を形成する。次に、これらの孔内に低屈折率材料を蒸着する。次に、レジスト上に形成された余分な低屈折率材料をレジストとともに除去(リフトオフ)する。その後、下地層の表面からGaNをエピタキシャル成長させ、低屈折率材料の周囲にエピタキシャル層を形成する。
2次元回折格子は、回折格子点において光を反射させ、各回折格子点間において定在波を発生させる役割を果たす。このため、2次元回折格子の低屈折率材料としてはGaNよりも低い屈折率を有する材料が用いられる。従来においては、低屈折率材料としてSiO2、MgF2、CaF2、BaF2、またはLiFなどが用いられていた。
国際公開第2006/062084号パンフレット
従来の2次元フォトニック結晶レーザにおいては、高品質な2次元回折格子を形成することができないために、十分な電気的特性を得ることができなかった。すなわち、上述の形成方法においてリフトオフを行なう際に、レジストを含む残渣が十分に除去されず、下地層の表面に残渣が残っていた。また、低屈折率材料の蒸着およびリフトオフの際に、レジストと低屈折率材料とに由来する残渣が生じていた。その結果、典型的には以下の3つの問題が生じる。第1の問題としては、下地層に残渣が存在していると、2次元回折格子の構造が理想的な屈折率の周期構造からずれ、2次元回折格子自体の品質が低下する。この結果、設計した波長の光が定在波として効率的に立たなくなり、半導体レーザ素子の発光効率の低下を招く。第2の問題としては、下地層に残渣が存在していると、下地層表面が清浄な表面でなくなり、GaNエピタキシャル層の良好な再成長の妨げになる。これにより、エピタキシャル層が成長せず下地層表面が露出したり、モフォロジーが悪化したりする。第3の問題としては、残渣が電気的な障壁となったり、残渣の影響を受けて2次元回折格子より上に形成される層の品質が低下したりすることにより、半導体レーザ素子の動作電圧が上昇するなどの電気的特性の悪化が起こる。
ここで、残渣を十分に除去するために、リフトオフに用いる薬液として溶解能力のより高いものを使用することが考えられる。しかし、溶解能力の高い薬液を使用した場合には、下地層から低屈折率材料が剥離したり、低屈折率材料の形状が劣化したりするので、低屈折率材料の品質が低下し、2次元回折格子の対称性が劣化する。
したがって、本発明の目的は、電気的特性を向上することのできる半導体レーザ素子およびその製造方法を提供することである。
本発明の半導体レーザ素子は、GaNを含む下地層と、下地層に隣接して形成された2次元回折格子とを備えている。2次元回折格子は、GaNを含むエピタキシャル層と、AlOx(酸化アルミニウム)よりなる低屈折率層とを有している。
本発明の半導体レーザ素子の製造方法は、GaNを含む下地層上に2次元回折格子を形成する回折格子工程を備えている。回折格子工程は、下地層上に溝を有するレジストを形成する工程と、AlOXよりなる低屈折率層を溝内およびレジスト上に形成する工程と、レジスト上の低屈折率層をレジストとともに除去する工程と、GaNを含むエピタキシャル層を下地層上に形成する工程とを含んでいる。
本願発明者らは、低屈折率層としてAlOXを用いることにより、溶解能力の高い薬液を用いてレジストを含む残渣を十分に除去しつつ、レジストを除去する際の、下地層からの低屈折率層の剥離および低屈折率層の形状の劣化を抑止することができることを見出した。これは、AlOXがGaNを含む下地層との間で高い接合性を有しているためであると考えられる。したがって、本発明の半導体レーザ素子およびその製造方法によれば、電気的特性を向上することができる。
なお、本発明のAlOXにおいて、アルミニウム(Al)と酸素(O)との組成比は任意である。また、本願発明において「溝」とは、ある層の一部に形成された窪みを意味しており、線状のものに限定されない。
本発明の半導体レーザ素子において好ましくは、エピタキシャル層は複数の孔を有しており、複数の孔内に回折格子点となる低屈折率層が埋め込まれている。
本発明の半導体レーザ素子の製造方法において好ましくは、レジストは複数の孔を有している。
これにより、2次元回折格子の回折格子点が低屈折率層で形成されるので、TEモードの光に対して定在波を立たせて光を発振する半導体レーザ素子となる。
本発明の半導体レーザにおいて好ましくは、低屈折率層は複数の孔を有しており、複数の孔内に回折格子点となるエピタキシャル層が埋め込まれている。
本発明の半導体レーザ素子の製造方法において好ましくは、レジストは複数の柱形状を有している。
これにより、2次元回折格子の回折格子点がGaNよりなるエピタキシャル層で形成されるので、TMモードの光に対して定在波を立たせて光を発振する半導体レーザ素子となる。
本発明の半導体レーザ素子およびその製造方法によれば、電気的特性を向上することができる。
以下、本発明の実施の形態について図面に基づいて説明する。
(実施の形態1)
図1は、本発明の実施の形態1における半導体レーザ素子の構成を示す斜視図である。図2は、図1のII−II線に沿った断面図である。図1および図2に示すように、半導体レーザ素子1は、基板3と、n型クラッド層4と、活性層5と、下地層としてのp型クラッド層6と、2次元回折格子としてのフォトニック結晶層7と、GaN層12と、p型クラッド層8と、コンタクト層9と、電極10および11とを備えている。基板3は主面3aおよび3bを有しており、基板3の主面3a上には、n型クラッド層4、活性層5、p型クラッド層6、フォトニック結晶層7、GaN層12、p型クラッド層8、およびコンタクト層9が、この順序で積層されている。コンタクト層9の上には円形状の電極10が設けられており、基板3の主面3aとは反対側の主面3bには、一面に電極11が設けられている。電極10および11は、たとえばAu(金)などよりなっている。
フォトニック結晶層7はp型クラッド層6上に形成されており、エピタキシャル層2aと、低屈折率層2bとを含んでいる。エピタキシャル層2aには複数の孔2cが形成されており、複数の孔2cの内部に低屈折率層2bが埋め込まれている。つまり、低屈折率層2bがフォトニック結晶層7の回折格子点となっている。エピタキシャル層2aはGaNを含んでいる。また、低屈折率層2bはAlOxよりなっている。
活性層5はGaNを含んでおり、たとえばAlxGa1-x-yInyN(0≦x,y≦1,0≦x+y≦1)からなる多重量子井戸により構成されている。活性層5はフォトニック結晶層7に沿って設けられ、所定の方向に伸びる複数の量子細線として形成されていてもよい。また、フォトニック結晶層7に沿って設けられ複数の量子箱として形成されていてもよい。各量子細線は、その長手方向と直交する2方向に関して電子のエネルギ準位が離散的になるような寸法(たとえば数十nm程度)を有する。各量子箱は、互いに直交する3方向に関して電子のエネルギ準位が離散的になるような寸法(たとえば数十nm程度)を有する。このような量子構造を備えると状態密度が大きくなるので、発光効率が高められると共に、発光スペクトルが先鋭化される。
フォトニック結晶層7上にはGaN層12が形成されている。フォトニック結晶層7のエピタキシャル層2aと、GaN層12とは、共にGaNを含む材料よりなっており、たとえばGaNよりなっている。そして、エピタキシャル層2aとGaN層12とは同一の層である(境界がない)。なお、本発明においてGaN層12は必須の層ではなく、フォトニック結晶層7の真上にたとえばAlGaNからなるp型クラッド層8が形成されていてもよい。
基板3は、たとえば導電性GaNまたは導電性SiCのいずれかよりなっている。n型クラッド層4はたとえばn型AlGaNよりなっており、p型クラッド層6はたとえばp型AlGaNよりなっている。n型クラッド層4およびp型クラッド層6は、活性層5に与えられるべきキャリアが伝導する導電層として機能する。このため、n型クラッド層4およびp型クラッド層6は、活性層5を挟むように設けられている。また、n型クラッド層4およびp型クラッド層6は、共に、活性層5にキャリア(電子および正孔)と光とを閉じ込める閉じ込め層として機能する。つまり、n型クラッド層4、活性層5、およびp型クラッド層6は、ダブルヘテロ接合を形成している。このため、発光に寄与するキャリアを活性層5に集中させることができる。
また、p型クラッド層6は、フォトニック結晶層7への電子の進入をブロックするブロック層としても機能する。これにより、フォトニック結晶層7内で電子と正孔とが非発光再結合するのを抑止することができる。
p型クラッド層8はたとえばp型のAlGaNよりなっている。p型クラッド層8は、活性層5に与えられるべきキャリアが伝導する導電層として機能する。また、p型クラッド層8は、フォトニック結晶層7より下の層にキャリア(電子)と光とを閉じ込める閉じ込め層として機能する。また、コンタクト層9は、電極10との接触をオーミック接触にするために形成される。
なお、本実施の形態における半導体レーザ素子1の各部分の寸法を例示的に以下に列挙すると、基板3の厚さはたとえば100μmであり、フォトニック結晶層7の厚さはたとえば0.1μmであり、n型クラッド層4およびp型クラッド層8の各々の厚みはたとえば0.5μmであり、活性層5およびp型クラッド層6の厚みはたとえば0.1μmである。
図3は、本発明の実施の形態1におけるフォトニック結晶層の構成を示す斜視図である。図3に示すように、フォトニック結晶層7において、エピタキシャル層2aの表面17に複数の低屈折率層(回折格子点)2bが3角格子を形成するように設けられている。各回折格子点2bの中心と、これと最も近い隣接の6個の回折格子点2bの中心との距離は等しい値であり、回折格子点2bの中心の間隔はたとえば0.19μmであり、回折格子点2bの直径はたとえば0.09μmである。
エピタキシャル層2aは第1の屈折率(GaNの場合2.54)を有し、周期的に形成された低屈折率層2bは第1の屈折率より小さい第2の屈折率を有する。低屈折率層2bの屈折率は、蒸着条件からAlOxの組成を制御することで調整可能であり、好ましくは1.60以下である。第1の屈折率と第2の屈折率との差を大きくとると、所望のフォトニック結晶の特性を得ることができる。
フォトニック結晶層7は、第1の方向と、この方向と所定の角度をなす第2の方向とに対して、等しい周期(格子定数に対応する値)を有する回折格子である。フォトニック結晶層7には、上記の2方向およびそれらの方向の周期に関して様々な選択が可能である。また、フォトニック結晶層7における電極10(図1)の真下の領域Aは、電極10から高電流密度の電流が注入される領域であるので、光を放出する領域として機能する。半導体レーザ素子1の発光方法については、後ほど説明する。
次に、半導体レーザ素子1の発光方法について、図1〜図3を用いて説明する。
電極10に正電圧を印加すると、p型クラッド層6および8から活性層5へ正孔が注入され、n型クラッド層4から活性層5へ電子が注入される。活性層5へ正孔および電子(キャリア)が注入されると、キャリアの再結合が起こり、光が発生される。発生される光の波長は、活性層5が備える半導体層のバンドギャップによって規定される。
活性層5において発生された光は、n型クラッド層4およびp型クラッド層6によって活性層5内に閉じ込められるが、一部の光はエバネッセント光としてフォトニック結晶層7に到達する。フォトニック結晶層7に到達したエバネッセント光の波長と、フォトニック結晶層7が有する所定の周期とが一致する場合には、その周期に対応する波長において定在波が誘起される。
このような現象は、活性層5およびフォトニック結晶層7が2次元的に広がりをもって形成されているので、電極10を中心にした領域Aおよびその付近において生じうる。定在波によるフィードバック効果により、レーザ発振を起こすことが可能となる。
続いて、2次元回折格子(フォトニック結晶層)7について具体例を掲げながら説明する。2次元回折格子は、少なくとも2方向に同一の周期で並進させたときに重なり合うような性質を有する。このような2次元格子は、正三角形、正方形、または正六角形を一面に敷き詰めて配置し、その各頂点に格子点を設けることによって形成される。ここでは、正三角形を用いて形成される格子を3角格子、正方形を用いて形成される格子を正方格子、正六角形を用いて形成される格子を6角格子とそれぞれ呼ぶ。
図4は、2次元回折格子として、格子間隔がaである3角格子を描いた図面である。3角格子は、一辺の長さがaである正三角形によって埋め尽くされている。図4において、任意に選択された格子点Aに着目し、格子点Aから格子点Bに向かう方向をX−Γ方向と呼び、また格子点Aから格子点Cへ向かう方向をX−J方向と呼ぶ。本実施の形態では、活性層5において発生される光の波長がX−Γ方向に関する格子周期に対応している場合について説明する。
2次元回折格子7は、以下に説明する3個の1次元回折格子群L、M、Nを含むと考えることができる。1次元回折格子群Lは、Y軸方向に向けて設けられた1次元格子L1、L2、L3などからなっている。1次元回折格子群Mは、X軸方向に対して120度の角度を方向に向けて設けられた1次元格子M1、M2、M3などからなっている。1次元回折格子群Nは、X軸方向に対して60度の方向に向けて設けられた1次元格子N1、N2、N3などからなっている。これら3つの1次元回折格子群L,N,およびMは、任意の格子点を中心に120度の角度で回転すると重なりあう。各1次元回折格子群L,N,およびMにおいて、1次元格子間の間隔はdであり、1次元格子内の間隔はaである。
まず、格子群Lに関して考える。格子点Aから格子点Bの方向に進む光は、格子点Bにおいて回折現象を生じる。回折方向は、ブラッグ条件2d・sinθ=mλ(m=0、±1、・・)によって規定される。ここで、λはエピタキシャル層2a内における光の波長である。2次のブラッグ反射(m=±2)を満足するように回折格子が形成されている場合には、θ=±60゜、±120゜の角度に別の格子点D,E,F,およびGが存在する。また、m=0に対応する角度θ=0、180゜にも格子点AおよびKが存在する。
格子点Bにおいて、たとえば格子点Dの方向に向けて回折された光は、格子点Dにおいて格子群Mに従って回折される。この回折は、格子群Lに従う回折現象と同様に考えることができる。次いで、格子点Dにおいて格子点Hに向けて回折される光は、格子群Nに従って回折される。このようにして順次、格子点H、格子点I、格子点Jと回折されていく。格子点Jから格子点Aに向けて回折される光は、格子群Nに従って回折される。
以上、説明したように、格子点Aから格子点Bに進む光は、複数回の回折を経て、最初の格子点Aに到達する。このため、半導体レーザ素子1においては、ある方向に進む光が複数回の回折を介して元の格子点の位置に戻るので、各格子点間には定在波が立つ。したがって、2次元回折格子7は光共振器、つまり波長選択器および反射器として作用する。また、上記ブラッグ条件2d・sinθ=mλ(m=0、±1、・・)において、mが奇数である条件でのブラッグ反射の方向は、θ=±90゜となる。これは、2次元回折格子7の主面に対して垂直方向(図4中紙面に垂直な方向)にも回折が強くなることを意味している。これにより、2次元回折格子7の主面に対して垂直方向、すなわち光放出面9a(図1)から光を放出(面発光)させることができる。
さらに、2次元回折格子7では、上記の説明が任意の格子点Aにおいて行なわれたことを考慮すると、上記のような光の回折は2次元的に配置されたすべての格子点において生じ得る。このため、各X−Γ方向に伝搬する光が、ブラッグ回折によって2次元的に相互に結合していると考えられる。2次元回折格子7では、この2次元的結合によって3つのX−Γ方向が結合しあってコヒーレントな状態が形成されると考えられる。
図5は、図4に示された3角格子が有する逆格子空間を示した図面である。逆格子空間におけるブリリアンゾーンの中心Γ点、このΓ点と隣接ブリリアンゾーンのΓ点とを結んだ直線がブリリアンゾーンの境界と交差するX点、互いに隣接する3ブリリアンゾーンが一点において接するJ点が示されている。図5におけるΓ点、X点、J点から規定される方向は、図4に説明において参照したΓ−X方向およびΓ−J方向に対応する。
図6(a)は、図4に示された3角格子について、InPよりなるフォトニック結晶層に関して、平面波展開法を用いてバンド計算を行なった結果を示したフォトニックバンド図であり、特にTEモードに対する計算結果である。図6(b)は、図6(a)におけるS点近傍における拡大図である。図1のフォトニック結晶層7は、図6(a)に示された分散関係、つまりフォトニックバンド構造を有する。本明細書において、フォトニックバンド構造とは、媒質内に設けられた少なくとも2次元の周期的な屈折率分布に基づき光子のエネルギに対して規定された分散関係をいう。
図6(a)および(b)を参照して、Γ点およびその付近の波数範囲では、Sで示す部分およびPで示す部分において、フォトニックバンドギャップが存在している。ここでは、Sで示す部分を「第1フォトニックバンドギャップ」と呼び、Pで示す部分を「第2フォトニックバンドギャップ」と呼ぶ。第1フォトニックバンドギャップの規格化周波数ω1は約0.35となっており、第2フォトニックバンドギャップの規格化周波数ω2は約0.61となっている。ここで、Γ点は波数ベクトルk=0の点であるので、光の規格化周波数ωが規格化周波数ω1およびω2の場合には、結晶方向に関わらず定在波が立つことになる。同様の計算を本願のGaNよりなるフォトニック結晶(3角格子)に対して行なうと、第1フォトニックバンドギャップの規格化周波数ω1は約0.47となり、第2フォトニックバンドギャップの規格化周波数ω2は約0.82となる。
次に、本実施の形態における半導体レーザ素子1の製造方法について、図7〜図13を用いて説明する。
始めに、図7を参照して、たとえば導電性GaNまたは導電性SiCよりなる基板3を準備する。そして、たとえばMOCVD(Metal-organic chemical vapor deposition)法を用いて、n型クラッド層4、活性層5、およびp型クラッド層6をこの順序で基板3上にエピタキシャル成長させる。なお、図示しないが、基板3の直上にバッファ層を形成し、バッファ層の上にn型クラッド層4を形成してもよい。
次に、図8を参照して、電子ビームリソグラフィ技術によって所定のパターンを有するレジスト20(パターン層)をp型クラッド層6上に形成する。図8では、3角格子状に配列した複数の孔20a(溝)のパターンをレジスト20は有している。
続いて、図9を参照して、たとえば蒸着法を用いて、複数の孔20aの内部およびレジスト20上に、AlOxよりなる低屈折率層24を形成する。
続いて、図10を参照して、レジスト20を含む残渣を溶解するための薬液21に基板3を浸漬する。これにより、レジスト20上に形成された低屈折率層24がレジスト20とともに除去(リフトオフ)される。
このリフトオフの工程では、p型クラッド層6の表面からレジスト20および余分な不要な低屈折率層24を完全に除去することが求められる。これは、レジスト20を溶解しやすい条件に薬液21の種類および温度条件を調節することによって達成される。また、薬液21に超音波振動を加えてもよい。一方で、リフトオフの条件を上記のように厳しくしても、AlOxよりなる低屈折率層24を形成することにより、p型クラッド層6から低屈折率層24が剥離したり、低屈折率層24の形状が劣化したりすることを抑止することができる。
リフトオフの結果、図11に示すように、p型クラッド層6上には3角格子状に配列した柱形状を有する複数の低屈折率層2bが残る。
次に、p型クラッド層6の表面をクリーニングした後、MOCVD法を用いて、GaNよりなるエピタキシャル層2aおよびGaN層12をp型クラッド層6上に形成する。図12(a)〜(f)は、本発明の実施の形態1におけるエピタキシャル層の成長の様子を順に示す模式図である。なお、図12(a)は図11におけるB部を拡大した図である。
図12(a)〜(f)を参照して、V族原料ガス/III族原料ガスの比や圧力などを制御して、GaNをエピタキシャル成長させる。すると、低屈折率層2bの上部や側面からはGaNはエピタキシャル成長せず、露出しているp型クラッド層6の表面からのみGaN(エピタキシャル層2a)が選択的にエピタキシャル成長する((a)→(b))。GaNは図中上方向に成長し、低屈折率層2bの上端に達する((b)→(c))。これにより、エピタキシャル層2aにおける複数の孔2cの内部を低屈折率層2bで埋めた構成のフォトニック結晶層7(図1)が得られる。
低屈折率層2bの上端に達すると、GaN(GaN層12)は低屈折率層2bの真上の領域18で図中横方向に成長する((c)→(d))。GaNの成長方向は、基板3の主面3a(図1)に沿う方向である。その後、GaNが低屈折率層2bの真上の領域18を完全に覆うと、GaN層12は再び図中上方向に成長する((d)→(e)→(f))。これにより、GaN層12が形成される。フォトニック結晶層7およびGaN層12をp型クラッド層6上に形成した後の状態を図13に示す。
なお、本実施の形態では、エピタキシャル層2aが低屈折率層2bの真上の領域を覆っている構成について示したが、本発明はこのような場合に限定されるものではなく、たとえばエピタキシャル層2aが低屈折率層2bの上端に達した時点(図12(c)の時点)でエピタキシャル成長の条件を変えて、GaNを含む(たとえばAlGaNなどの)p型クラッド層8を引き続き成長させてもよい。この場合には低屈折率層2bの真上の領域18がp型クラッド層8で覆われる。後述する実施の形態2についても同様である。
次に、図2を参照して、たとえばMOCVD法を用いて、p型クラッド層8およびコンタクト層9をこの順序でGaN層12上にエピタキシャル成長させる。その後、コンタクト層9の光放出面9aに電極10を形成し、基板3の主面3bに電極11を形成し、半導体レーザ素子1が完成する。
本実施の形態における半導体レーザ素子1は、GaNを含むp型クラッド層6と、p型クラッド層6に隣接して形成されたフォトニック結晶層7とを備えている。フォトニック結晶層7は、GaNを含むエピタキシャル層2aと、AlOxよりなる低屈折率層2bとを有している。
本実施の形態における半導体レーザ素子1の製造方法は、GaNを含むp型クラッド層6上にフォトニック結晶層7を形成する回折格子工程を備えている。回折格子工程は、p型クラッド層6上に複数の孔20aを有するレジスト20を形成する工程と、AlOXよりなる低屈折率層2bを複数の孔20a内およびレジスト20上に形成する工程と、レジスト20上の低屈折率層2bをレジスト20とともに除去する工程と、GaNを含むエピタキシャル層2aをp型クラッド層6上に形成する工程とを含んでいる。
本実施の形態における半導体レーザ素子1およびその製造方法によれば、溶解能力の高い薬液を用いてレジスト20を含む残渣を十分に除去しつつ、p型クラッド層6からの低屈折率層2bの剥離および低屈折率層2bの形状の劣化を抑止することができる。加えて、レジスト20および低屈折率層2bに由来する残渣が生じにくくなる。
ここで、残渣がフォトニック結晶層7に与える影響は大きいと考えられる。一つには、残渣があることにより、フォトニック結晶層7の構造が理想的な屈折率の周期構造からずれ、フォトニック結晶自体の品質が低下する。この結果、設計した波長の光が定在波として効率的に立たなくなり、半導体レーザ素子の発光効率の低下を招く。また、残渣があるとp型クラッド層6の表面が清浄な表面でなくなり、エピタキシャル層2aの良好な再成長の妨げになる。その結果、エピタキシャル層2aが成長せずp型クラッド層6の表面の露出や、モフォロジーの悪化などが生じる。さらに、残渣が電気的な障壁となったり、残渣の影響を受けてフォトニック結晶層7より上に形成される層の品質が低下したりすることにより、半導体レーザ素子の動作電圧が上昇するなどの電気的特性の悪化が起こる。本実施の形態における半導体レーザ素子1によれば、上記の残渣の問題を解決し、電気的特性を向上することができる。
本実施の形態の半導体レーザ素子1において、エピタキシャル層2aは複数の孔2cを有しており、複数の孔2c内に回折格子点となる低屈折率層2bが埋め込まれている。
上記製造方法において好ましくは、レジスト20は複数の孔20aのパターンを有している。
これにより、回折格子点が低屈折率層2bによって構成されているフォトニック結晶層7が得られ、TEモードの光に対して定在波を立たせて光を発振する半導体レーザ素子が得られる。
(実施の形態2)
図14は、本発明の実施の形態2における半導体レーザ素子の構成を示す断面図である。図14に示すように、本実施の形態の半導体レーザ素子1aにおいては、フォトニック結晶層7の構成が、実施の形態1における半導体レーザ素子1の場合と異なっている。すなわち、低屈折率層2bは複数の孔2cを有しており、複数の孔2cの各々の内部にGaNを含むエピタキシャル層2aが埋め込まれている。言い換えれば、実施の形態1の半導体レーザ素子1では、回折格子点が低屈折率層2bによって構成されていたが、本実施の形態の半導体レーザ素子1aでは、回折格子点がエピタキシャル層2aによって構成されている。
なお、これ以外の半導体レーザ素子1aの構成は、実施の形態1における半導体レーザ素子1と同様であるので、同一の部材には同一の符号を付し、その説明を省略する。
続いて、本実施の形態における半導体レーザ素子1aの製造方法について、図15〜図19を用いて説明する。
本実施の形態では、始めに、図7に示す実施の形態1と同様の製造工程を経る。次に、図15を参照して、電子ビームリソグラフィ技術によって所定のパターンを有するレジスト20をp型クラッド層6上に形成する。レジスト20は、3角格子状に配列した複数の柱状部20bのパターンを有している。
続いて、図16を参照して、複数の柱状部20bの各々の間を埋めるように、低屈折率層24をたとえば蒸着法を用いてレジスト20上に形成する。続いて、図10に示す実施の形態1と同様の方法を用いて、レジスト20上に形成された低屈折率層24をレジスト20とともに除去(リフトオフ)する。これにより、図17に示すように、p型クラッド層6上には3角格子状に配列した複数の孔2cを有する複数の低屈折率層2bが形成される。
次に、p型クラッド層6の表面をクリーニングした後、MOCVD法を用いて、GaNよりなるエピタキシャル層2aおよびGaN層12をp型クラッド層6上に形成する。図18(a)〜(f)は、本発明の実施の形態2におけるエピタキシャル層の成長の様子を順に示す模式図である。なお、図18(a)は図17におけるC部を拡大した図である。
図18(a)〜(f)を参照して、V族原料ガス/III族原料ガスの比や圧力などを制御して、GaNをエピタキシャル成長させる。すると、低屈折率層2bの上部や側面からはGaNはエピタキシャル成長せず、孔2cの底部に露出しているp型クラッド層6の表面からのみGaN(エピタキシャル層2a)がエピタキシャル成長する((a)→(b))。GaNは図中上方向に成長し、低屈折率層2bの上端に達する((b)→(c))。これにより、低屈折率層2bにおける複数の孔2cの内部をエピタキシャルで埋めた構成のフォトニック結晶層7が得られる。
低屈折率層2bの上端に達すると、GaN(GaN層12)は低屈折率層2bの真上の領域18で図中横方向に成長する((c)→(d)→(e))。GaN層12の成長方向は、基板3の主面3a(図1)に沿う方向である。その後、GaN層12が低屈折率層2bの真上の領域18を完全に覆うと、GaN層12は再び図中上方向に成長する((e)→(f))。これにより、GaN層12が形成される。フォトニック結晶層7およびGaN層12をp型クラッド層6上に形成した後の状態を図19に示す。
次に、図14を参照して、たとえばMOCVD法を用いて、p型クラッド層8およびコンタクト層9をこの順序でGaN層12上にエピタキシャル成長させる。その後、コンタクト層9の光放出面9aに電極10を形成し、基板3の主面3bに電極11を形成し、半導体レーザ素子1aが完成する。
本実施の形態の半導体レーザ素子1aによれば、実施の形態1の半導体レーザ素子1と同様の効果を得ることができる。
本実施の形態の半導体レーザ素子1aにおいて、低屈折率層2bは複数の孔2cを有しており、複数の孔2c内に回折格子点となるエピタキシャル層2aが埋め込まれている。
本実施の形態の半導体レーザ素子1aの製造方法において、レジスト20は複数の柱状部20bのパターンを有している。
これにより、エピタキシャル層2aによって回折格子点が構成されているフォトニック結晶層7が得られ、TMモードの光に対して定在波を立たせて光を発振する半導体レーザ素子が得られる。
(実施の形態3)
実施の形態1および2においては、フォトニック結晶層7の回折格子点2bが図3に示すような3角格子を形成している場合について示した。しかしながら、フォトニック結晶層7の回折格子点の配列は、たとえば以下のようなものであってもよい。
図20は、本発明の実施の形態3におけるフォトニック結晶層の構成を示す斜視図である。図20に示すように、本実施の形態のフォトニック結晶層7aにおいて、エピタキシャル層2aの一表面に複数の回折格子点2bが正方格子を形成するように設けられている。
図21は、2次元回折格子として、格子間隔がdである正方格子を描いた図である。正方格子は、一辺の長さがdである正方形で埋め尽くされている。図21において、任意に選択された格子点Wに着目し、格子点Wから格子点Pに向かう方向をX−Γ方向と呼び、また格子点Wから格子点Qへ向かう方向X−J方向と呼ぶ。ここでは、活性層5において発生される光の波長がX−Γ方向に関する格子周期に対応している場合について説明する。
2次元回折格子(フォトニック結晶層)7aは、以下に説明する2個の1次元回折格子群U、Vを含むと考えることができる。1次元回折格子群Uは、Y軸方向に向けて設けられた1次元格子U1、U2、U3などからなっている。1次元回折格子群Vは、X軸方向に向けて設けられた1次元格子V1、V2、V3などからなっている。これら2つの1次元回折格子群UおよびVは、任意の格子点を中心に90゜の角度で回転すると重なりあう。各1次元回折格子群UおよびVにおいて、1次元格子間の間隔はdであり、1次元格子内の間隔もdである。
まず、格子群Uに関して考える。格子点Wから格子点Pの方向に進む光は、格子点Pにおいて回折現象を生じる。回折方向は、3角格子の場合と同様に、ブラッグ条件2d・sinθ=mλ(m=0、±1、・・)によって規定される。2次のブラッグ反射(m=±2)を満足するように回折格子が形成されている場合には、θ=±90゜の角度に別の格子点Q、Rが存在し、m=0に対応する角度θ=0、180゜にも格子点W、Sが存在する。
格子点Pにおいて格子点Qの方向に向けて回折された光は、格子点Qにおいて格子群Vに従って回折される。この回折は、格子群Uに従う回折現象と同様に考えることができる。次いで、格子点Qにおいて格子点Tに向けて回折される光は、格子群Uに従って回折される。このようにして順次に回折されていく。格子点Tから格子点Wに向けて回折される光は、格子群Vに従って回折される。
以上、説明したように、格子点Wから格子点Pに進む光は、複数回の回折を経て、最初の格子点Wに到達する。このため、本実施の形態の半導体レーザ素子においては、ある方向に進む光が複数回の回折を介して元の格子点の位置の戻るので、各格子点間には定在波が立つ。したがって、2次元回折格子7aは光共振器、つまり波長選択器および反射器として作用する。
また、上記ブラッグ条件2d・sinθ=mλ(m=0、±1、・・)において、mが奇数である条件でのブラッグ反射の方向は、θ=±90゜となる。これは、2次元回折格子7aの主面に対して垂直方向(図21中紙面に垂直な方向)にも回折が強くなることを意味している。これにより、2次元回折格子7aの主面に対して垂直方向、すなわち光放出面9a(図1)から光を放出(面発光)させることができる。
さらに、2次元回折格子7aでは、上記の説明が任意の格子点Wにおいて行なわれたことを考慮すると、上記のような光の回折は2次元的に配置されたすべての格子点において生じ得る。このため、各X−Γ方向に伝搬する光が、ブラッグ回折によって2次元的に相互に結合していると考えられる。2次元回折格子7aでは、この2次元的結合によって3つのX−Γ方向が結合しあってコヒーレントな状態が形成されると考えられる。
なお、これ以外の半導体レーザ素子の構成およびその製造方法は、実施の形態1および2における半導体レーザ素子1,1aの構成およびその製造方法とほぼ同様であるので、同一の部材には同一の符号を付し、その説明を省略する。
本実施の形態の半導体レーザ素子によれば、実施の形態1および2の半導体レーザ素子1,1aと同様の効果を得ることができる。
(実施の形態4)
実施の形態1および2においては、図1に示すように、活性層5の上に形成されたp型クラッド層6に接するようにフォトニック結晶層7が形成されている場合について示した。しかし、本発明の半導体レーザ素子はこのような場合の他、たとえば図22に示す構成であってもよい。
図22は、本発明の実施の形態4における半導体レーザ素子の構成を示す斜視図である。図22に示すように、本実施の形態の半導体レーザ素子1bにおいては、活性層5の下に形成されたn型クラッド層4(下地層)に接するようにフォトニック結晶層7が形成されている。すなわち、本実施の形態の半導体レーザ素子1bにおいては、n型クラッド層8a、フォトニック結晶層7、n型クラッド層4、活性層5、p型クラッド層6、およびコンタクト層9が、この順序で基板3上に形成されている。半導体レーザ素子1bから光を発振する際には、電極10に正電圧を印加することで活性層5にキャリアを注入する。
なお、これ以外の半導体レーザ素子1bの構成およびその製造方法は、実施の形態1および2における半導体レーザ素子1,1aの構成およびその製造方法とほぼ同様であるので、同一の部材には同一の符号を付し、その説明を省略する。
本実施の形態の半導体レーザ素子においても、実施の形態1および2の半導体レーザ素子1,1aと同様の効果を得ることができる。
本実施例においては、AlOxよりなる低屈折率層2bを形成することの効果を調べた。具体的には、本発明例として実施の形態1の方法で半導体レーザ素子を製造した。複数の孔20aについては、EB露光装置を用いてレジスト20に形成した。低屈折率層2bについては、蒸着法により形成した。リフトオフ後のp型クラッド層6の表面をSEM(電子走査顕微鏡)にて観察したところ、レジスト20を含む残渣は完全に除去されており、また低屈折率層2bの劣化は見られなかった。リフトオフ後にエピタキシャル層2aをp型クラッド層6上に形成すると、低屈折率層2bが完全に埋め込まれ、この後にp型クラッド層8などの層を積層して形成することができた。こうして得られた半導体レーザ素子において、ダイオードとしての電気的特性を調べると、立ち上がり電圧が3Vであった。
一方、比較例として、低屈折率層を酸化シリコン(SiOx)にて形成した半導体レーザ素子を、実施の形態1とほぼ同様の方法で製造した。リフトオフ後のp型クラッド層の表面をSEMにて観察したところ、レジストを含む残渣が残っていた。こうして得られた半導体レーザ素子において、ダイオードとしての電気的特性を調べると、立ち上がり電圧が4.5Vであった。
以上の結果により、本発明の半導体レーザ素子によれば、良好な電気的特性が得られることが分かった。
以上に開示された実施の形態および実施例はすべての点で例示であって制限的なものではないと考慮されるべきである。本発明の範囲は、以上の実施の形態および実施例ではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての修正や変形を含むものと意図される。
本発明の実施の形態1における半導体レーザ素子の構成を示す斜視図である。 図1のII−II線に沿った断面図である。 本発明の実施の形態1におけるフォトニック結晶層の構成を示す斜視図である。 2次元回折格子として、格子間隔がaである3角格子を描いた図面である。 図4に示された3角格子が有する逆格子空間を示した図面である。 (a)は、図4に示された3角格子について、InPよりなるフォトニック結晶層に関して、平面波展開法を用いてバンド計算を行なった結果を示したフォトニックバンド図であり、特にTEモードに対する計算結果である。(b)は、図6(a)におけるS点近傍における拡大図である。 本発明の実施の形態1における半導体レーザ素子の製造方法の第1工程を示す断面図である。 本発明の実施の形態1における半導体レーザ素子の製造方法の第2工程を示す断面図である。 本発明の実施の形態1における半導体レーザ素子の製造方法の第3工程を示す断面図である。 本発明の実施の形態1における半導体レーザ素子の製造方法の第4工程を示す断面図である。 本発明の実施の形態1における半導体レーザ素子の製造方法の第5工程を示す断面図である。 本発明の実施の形態1における半導体レーザ素子の製造方法の第6工程におけるエピタキシャル層の成長の様子を示す模式図である。(a)は第1状態、(b)は第2状態、(c)は第3状態、(d)は第4状態、(e)は第5状態、(f)は第6状態を示している。 本発明の実施の形態1における半導体レーザ素子の製造方法の第7工程を示す断面図である。 本発明の実施の形態2における半導体レーザ素子の構成を示す断面図である。 本発明の実施の形態2における半導体レーザ素子の製造方法の第1工程を示す断面図である。 本発明の実施の形態2における半導体レーザ素子の製造方法の第2工程を示す断面図である。 本発明の実施の形態2における半導体レーザ素子の製造方法の第3工程を示す断面図である。 本発明の実施の形態2における半導体レーザ素子の製造方法の第4工程におけるエピタキシャル層の成長の様子を示す模式図である。(a)は第1状態、(b)は第2状態、(c)は第3状態、(d)は第4状態、(e)は第5状態、(f)は第6状態を示している。 本発明の実施の形態2における半導体レーザ素子の製造方法の第5工程を示す断面図である。 本発明の実施の形態3におけるフォトニック結晶層の構成を示す斜視図である。 2次元回折格子として、格子間隔がdである正方格子を描いた図である。 本発明の実施の形態4における半導体レーザ素子の構成を示す斜視図である。
符号の説明
1,1a,1b 半導体レーザ素子、2a エピタキシャル層、2b,24 低屈折率層(回折格子点)、2c,20a 孔、3 基板、3a,3b 基板主面、4,8a n型クラッド層、5 活性層、6,8 p型クラッド層、7,7a フォトニック結晶層(2次元回折格子)、9 コンタクト層、9a 光放出面、10,11 電極、12 GaN層、17 フォトニック結晶表面、18 低屈折率層の真上の領域、20 レジスト、20a レジストの孔、20b レジストの柱状部、21 薬液。

Claims (6)

  1. 窒化ガリウムを含む下地層と、
    前記下地層に隣接して形成された2次元回折格子とを備え、
    前記2次元回折格子は、窒化ガリウムを含むエピタキシャル層と、酸化アルミニウムよりなる低屈折率層とを有する、半導体レーザ素子。
  2. 前記エピタキシャル層は複数の孔を有し、前記複数の孔内に回折格子点となる前記低屈折率層が埋め込まれている、請求項1に記載の半導体レーザ素子。
  3. 前記低屈折率層は複数の孔を有し、前記複数の孔内に回折格子点となる前記エピタキシャル層が埋め込まれている、請求項1に記載の半導体レーザ素子。
  4. 窒化ガリウムを含む下地層上に2次元回折格子を形成する回折格子工程を備え、
    前記回折格子工程は、
    前記下地層上に溝を有するレジストを形成する工程と、
    酸化アルミニウムよりなる低屈折率層を前記溝内および前記レジスト上に形成する工程と、
    前記レジスト上の前記低屈折率層を前記レジストとともに除去する工程と、
    窒化ガリウムを含むエピタキシャル層を前記下地層上に形成する工程とを含む、半導体レーザ素子の製造方法。
  5. 前記レジストは複数の孔を有する、請求項4に記載の半導体レーザ素子の製造方法。
  6. 前記レジストは複数の柱形状を有する、請求項4に記載の半導体レーザ素子の製造方法。
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