JP2008202670A - コイルエキスパンダ - Google Patents

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Abstract

【課題】本発明は、ピストンへの組み付け時の脱落等の不具合の発生を防止することができ、かつ、その周方向の張力分布が均一であるコイルエキスパンダを提供することを主目的とするものである。
【解決手段】上記目的を達成するために本発明は、少なくともピストンリング本体と、上記ピストンリング本体をその径方向外側に押圧付勢するコイルエキスパンダとから構成される組合せピストンリングに用いられるコイルエキスパンダであって、上記コイルエキスパンダは、自由状態において、重複部を有する略円形状であることを特徴とするコイルエキスパンダを提供する。
【選択図】図1

Description

本発明は、内燃機関の組合せピストンリングに用いられるコイルエキスパンダ、特には低フリクション化の要請に応えた組合せピストンリングに用いられるコイルエキスパンダに関する。
内燃機関に用いられるピストンリングには、燃焼室内の機密性を保つための圧力リングと、シリンダー内壁上の余分なオイルを掻き落とし、オイルコントロールをするためのオイルリングとの2種類のリングが用いられるのが一般的である。このようなピストンリングには、その内部にコイルエキスパンダが設けられているものがあり、このコイルエキスパンダはピストンリングを径方向外方に押圧付勢することにより、燃焼室内の機密性またはオイルの掻き落とし機能を向上させるものである。
例えば特許文献1には、コイルエキスパンダを用いた組合せピストンリングが開示されている。特許文献1においては、自由状態においてコイルエキスパンダがほぼ円形状となるように、上記コイルエキスパンダを円形にまるめた状態で加熱・冷却を行うことにより、使用時のコイルエキスパンダの残留応力の低減を図っている。
このような組合せピストンリングが用いられる内燃機関では、様々なフリクションロス(摩擦力ロス)が生じるため、このようなフリクションロスを小さくすることによって燃費の向上が可能である。特にピストンリングにおいては、シリンダライナとの摺動におけるフリクションを低減することによる燃費の向上が期待されており、上記フリクションを低減させるためには、組合せピストンリングの張力を下げることが有効である。
上記組合せピストンリングにおいては、ピストンリング本体の張力と、コイルエキスパンダの張力との和が組合せピストンリング全体の張力となる。例えば、ピストンリング(圧力リング+オイルリング)の張力を合計したリング合計張力をボア径で割った合計張力比についてみると、1984年においては0.6〜1.0N/mmであったが、低フリクション化が求められているため、徐々に低下し、現状は0.2〜0.6N/mmまで小さくなっている。このような張力の低下については、ピストンリングと、シリンダライナとの接触面積を小さくしていくことで対応しており、ピストンリングの軸方向および径方向の寸法を薄幅化すること等によって実現されている。
しかしながら、ピストンリングの薄幅化に伴い、従来のピストンリングにおいては発生していなかった種々の不具合が発生するようになった。例えば、図5に例示するような組合せピストンリングをピストンに組み付ける際は、通常はピストンリング本体51にコイルエキスパンダ52を装着し、コイルエキスパンダ52を拡げてピストンに組み付ける。しかしながら上記特許文献1に開示されているような、自由状態において中心角αを有するコイルエキスパンダが用いられる組合せピストンリング(図6参照)において、ピストンリング本体の径方向の長さ(図5における「a1」参照)を例えば1.95mmに縮小した場合、ピストンへの組み付けの際に、図7(a)のような、突き合わせ部4および4´が接触した状態のコイルエキスパンダ70を備えた組合せピストンリングの径を拡げると、上記コイルエキスパンダ70の突き合わせ部4および4´が図7(b)のように開いたまま元に戻らなくなり、その結果ピストンリング本体の径が大きくなり、組合せピストンリングがピストンのリング溝から脱落するという不具合が発生する可能性がある。従来の組合せピストンリングでは、図5に例示するピストンリング本体51の径方向の長さa1の寸法が2.5〜3.0mmと比較的大きく、その寸法に伴う剛性を有するものであったため、コイルエキスパンダを拡げてもピストンリング本体の上記剛性に由来する、元の径に戻ろうとする力が働き、コイルエキスパンダの突き合わせ部同士が拡がったまま戻らなくなるような不具合は発生しなかった。
また、図7(b)のように、コイルエキスパンダ70の突き合わせ部4および4´が拡がることによりコイルエキスパンダ70の突き合わせ部4および4´の内側に配置されるジョイント線71が露出したままになっている場合、ジョイント線71が座屈して曲率が極めて不均一な円となってしまい、コイルエキスパンダ70とジョイント線71とで構成される円の曲率が変形によって不均一なものとなってしまう可能性がある。このようなコイルエキスパンダ70はその張力が不均一であるため、ピストンリング本体の内部に配置されたとしてもピストンリング本体を押圧する力も不均一となり、シリンダーの内壁と全周において均一に摺動する組合せピストンリングを得ることはできない。
従来の組合せピストンリングにおいてはピストンリング本体がある程度の剛性を有していたため、コイルエキスパンダの突き合わせ部が開き、径が大きくなってもピストンリング本体の剛性によって組合せピストンリングの径は元に戻り、ジョイント線が露出したままとなったり、リング溝から脱落したりするという不具合は発生しなかった。しかしながら薄幅化された組合せピストンリングに用いられるピストンリング本体の剛性は従来のものよりも大幅に小さく、拡げられた組合せピストンリングの径を元に戻すためには不十分である場合が多い。また、ピストンリング本体の径方向の長さa1の寸法も小さいため、組合せピストンリングの径がわずかに増加しただけでもリング溝から外れやすく、上記不具合が発生しやすくなる。
特開昭54−125316号公報
本発明は上記問題点に鑑みてなされたものであり、ピストンへの組み付け時の脱落等の不具合の発生を防止することができ、かつ、その周方向の張力分布が均一であるコイルエキスパンダを提供することを主目的とするものである。
上記目的を達成するために、本発明は、少なくともピストンリング本体と、上記ピストンリング本体をその径方向外側に押圧付勢するコイルエキスパンダとから構成される組合せピストンリングに用いられるコイルエキスパンダであって、上記コイルエキスパンダは、自由状態において、重複部を有する略円形状であることを特徴とするコイルエキスパンダを提供する。
本発明のコイルエキスパンダは自由状態において上記形状を有するため、ピストンへの組み付けの際に組合せピストンリングの径が拡げられることによりコイルエキスパンダの突き合わせ部が開いた場合でも、コイルエキスパンダ自身が有する復元力および剛性によって上記突き合わせ部同士は元にもどり、これにより組合せピストンリングの径も元に戻る。従って、このような本発明のコイルエキスパンダを用いることにより、組合せピストンリングを脱落させることなくリング溝に格納することができる。また、ジョイント線が露出したままとなることもなくなるため、コイルエキスパンダは曲率が均一な円形状に維持され、当該コイルエキスパンダの張力分布は、その周方向において均一なものとすることができる。
上記発明においては、図1に例示する上記重複部の長さAと、上記略円形状の円周の長さBとの比率A/Bが、0.005〜0.50の範囲内であることが好ましい。比率A/Bを上記範囲にすることにより、所望の復元力を有するコイルエキスパンダを容易に製造することができるからである。
さらに、上記発明において上記コイルエキスパンダは、上記ピストンリング本体の外径d1と、上記ピストンリング本体の径方向の長さa1との比率d1/a1が30〜100の範囲内であるピストンリング本体と組み合せて用いられることが好ましい。このような寸法比率を有するピストンリング本体と組み合せて用いられた場合に上述した不具合が発生しやすいため、本発明のコイルエキスパンダを用いることの効果が大きいからである。
本発明のコイルエキスパンダは、ピストンへの組み付け時の脱落等の不具合の発生を防止することができ、かつ、その周方向の張力分布を均一化することができるといった効果を奏する。
本発明のコイルエキスパンダは、少なくともピストンリング本体と、上記ピストンリング本体をその径方向外側に押圧付勢するコイルエキスパンダとから構成される組合せピストンリングに用いられるコイルエキスパンダであって、上記コイルエキスパンダは、自由状態において、重複部を有する略円形状であることを特徴とするものである。なお、本発明においてコイルエキスパンダの自由状態とは、物質が静止状態において通常受ける力(重力、空気の圧力等)以外の外部応力を受けていない状態、すなわちコイルエキスパンダの突き合わせ部同士がジョイント線によって連結されていない状態のコイルエキスパンダを意味するものとする。
以下、本発明のコイルエキスパンダについて、図を用いて説明する。図1は、本発明のコイルエキスパンダの一例を示す概略構成図である。図1に例示するように本発明のコイルエキスパンダ1はその自由状態において、略円形を形成する円周部2と、上記円周部2と重なり合うように形成された重複部3とから構成される。上記円周部2においては、コイルエキスパンダ1の突き合わせ部4と、突き合わせ部4´とを相対させるのではなく、コイルエキスパンダ1を交差点5において交差させることにより略円形が形成されている。
通常コイルエキスパンダを構成する材料として用いられる金属等は、外部からある程度の応力が付加されて変形された場合、元の形状に戻ろうとする剛性を有する。しかしながら、薄幅化された組合せピストンリングに用いられるコイルエキスパンダも、上述したピストンリング本体と同様に、その寸法が小さくなっており、コイルエキスパンダの剛性に影響を与える、コイルエキスパンダを構成するコイルスプリングの径(図2に示すd7)やコイルスプリングを形成する線材の径(断面積)も小さくなっている。そこで、本発明においてはコイルエキスパンダを上述した形状に予め成形することとした。これにより、剛性が小さい薄幅化されたコイルエキスパンダが外部からの応力によって突き合わせ部が拡げられ、コイルエキスパンダの径が拡げられた場合でも、コイルエキスパンダ自身が有する復元力および剛性によってその形状を回復することができるコイルエキスパンダを得ることができる。
すなわち、上記形状に形成されたコイルエキスパンダにおいては、外部からの応力によってその径が拡げられた場合でも、コイルエキスパンダには上記応力に逆らって径を元に戻そうとする力が働く。そのため、組合せピストンリングのピストンへの組み付けの際にコイルエキスパンダの径が外部からの応力によって拡げられても、上記応力が除去されると自身の剛性によって上記コイルエキスパンダの径はリング溝に沿う径まで縮小する。このようなコイルエキスパンダの復元力および剛性により、組合せピストンリングのピストンへの組み付けの際の脱落等の不具合を防止することができる。
また、本発明のコイルエキスパンダは復元力および剛性を有するため、ピストンリング本体の内側に配置された状態で外部から応力を受け、コイルエキスパンダの突き合わせ部が開いてジョイント線が露出した場合でも、上記応力が除去されるとすぐに元の形状に戻り、上記図7(b)のようにジョイント線71が露出されたままの状態になることはない。従って本発明のコイルエキスパンダは、ピストンリング本体に配置されてピストンに組み付けられた状態では図7(a)のようにその突き合わせ部同士が相対した状態となり、曲率が均一、すなわち周方向の張力分布が均一なコイルエキスパンダを得ることができる。
以下、このような本発明のコイルエキスパンダ、当該コイルエキスパンダと共に用いられるピストンリング本体、および当該コイルエキスパンダが用いられる組合せピストンリングについて、それぞれ詳細に説明する。
A.コイルエキスパンダ
まず、本発明のコイルエキスパンダについて説明する。
本発明のコイルエキスパンダは、その自由状態において重複部を有する略円形状であることを特徴とするものである。本発明において重複部とは、コイルエキスパンダを構成するコイルスプリングのうち、略円形を形成する円周部以外の部分のことを意味するものとする。例えば図1に例示するコイルエキスパンダ1の場合、略円形を形成する部分が円周部2であり、重複部3はコイルエキスパンダ1の一方の突き合わせ部4から交差点5を通り、もう一方の突き合わせ部4´に達する部分である。
本発明においては、上記重複部の長さAと、略円形状の円周の長さBとの比率A/Bが0.005〜0.50の範囲内、中でも0.05〜0.40の範囲内、特には0.10〜0.30の範囲内であることが好ましい。ここで略円形状の円周の長さBとは、図1に示す円周部2の円周の長さである。また、重複部の長さAとは、図1に示す重複部3の長さ、すなわち、コイルエキスパンダ1の一方の突き合わせ部4から交差点5を通り、もう一方の突き合わせ部4´に達する部分の長さである(突き合わせ部4と、突き合わせ部4´との間の直線距離ではない)。比率A/Bが上記範囲に満たない場合はコイルエキスパンダの復元力が十分に得られない可能性がある。一方、上記比率が上記範囲を超える場合は、自由状態におけるコイルエキスパンダの曲率が小さくなりすぎ、ピストンリング本体に配置した際にコイルエキスパンダの曲率が不均一になる可能性があることに加え、このようなコイルエキスパンダはコイルスプリングを何重にも巻いた状態で熱処理を行ったり、熱処理を複数回行ったりする必要等があるため製造が非常に困難である。
本発明においてコイルエキスパンダの製造方法等は、このような形状を有するコイルエキスパンダを製造できる方法等であれば特に限定されるものではない。このようなコイルエキスパンダは、例えば直線状に巻かれたコイルスプリングを変形させ、特定の曲率(通常は自由状態の曲率よりも小さい曲率である。)の略円形状を形成し、この状態で熱処理を行うことなどにより得ることができる。
一般に、熱処理を行っていないコイルエキスパンダが組合せピストンリングに用いられた場合、エンジンの運転中の熱によってその張力が15%程度減退する。しかしながら、予めコイルエキスパンダの熱処理を行うことにより上記張力の減退を一般的には7%程度まで抑制することができる。そのため、上記形状において熱処理を行うことは、当該形状における残留応力を取り除き、コイルエキスパンダの張力の減退を抑制することができるという効果も有する。このような熱処理の条件等は特に限定されるものではなく、用いられる材料の組成やコイルの寸法等により適宜調整して行うことができる。
上記コイルエキスパンダに用いられる材料等は特に限定されるものではなく、通常のコイルエキスパンダに用いられる材料を用いることができる。例えば、ピアノ線、シリコンクロム鋼、ステンレス鋼等を用いることができ、中でもJIS規格で表されるSWP−A、SWOSC−V、SUS 304等が好適に用いられる。
本発明のコイルエキスパンダの寸法は特に限定されるものではなく、共に用いられるピストンリングの寸法等に合わせて適宜調整することができる。中でも、本発明のコイルエキスパンダは薄幅化された組合せピストンリングにおいて高い効果を発揮するものであるため、薄幅化された組合せピストンリングに用いられるものであることが好ましい。このような薄幅化された組合せピストンリングに好適に用いられるコイルエキスパンダの寸法としては、そのコイルエキスパンダを構成するコイルスプリングの径が0.80〜4.0mmの範囲内、中でも1.0〜3.0mmの範囲内であることが好ましい。コイルスプリングの径を上記範囲内にした場合、コイルエキスパンダのピッチは0.50〜3.0mmの範囲内、中でも1.0〜2.5mmの範囲内のものが一般的に用いられる。この際のピッチは、コイルエキスパンダ全体にわたって均一であることが好ましい。
なお、ここでいうコイルエキスパンダのコイルスプリングの径とは、コイルエキスパンダの径方向における長さのうち、最も外側の長さを意味しており、具体的には、図2に示すd7をいう。また、ピッチとは、コイルエキスパンダの線材一回転における、線材の中心から隣り合う線材の中心までの長さをいうものとする。具体的には、図2に示すように、LからMまでの一回転において、Lの位置における線材の中心からMの位置における線材の中心までの間隔pをいうものとする。
上記コイルエキスパンダを構成する線材の寸法や形状等は特に限定されるものではなく、一般的な線材を用いることができる。例えば、図3に例示する断面略異形線形状や、図4に例示する丸線形状の線材を用いることができる。特に、断面が略異形線形状(矩形状)の線材は、コイルエキスパンダを構成するコイルスプリングの径を小さくした場合でも所望の張力を得ることができる場合が多く、好適に用いられる。
また、薄幅化された組合せピストンリングに用いられるコイルエキスパンダを形成する線材の厚さとしては0.20mm〜0.50mmの範囲内、中でも0.25mm〜0.50mmの範囲内のものが好適に用いられる。厚さが上記範囲に満たないと、コイルエキスパンダとしてのバネの反力が弱くなり、充分な張力が得られない可能性があり、上記範囲を超えると、コイルエキスパンダを構成するコイルスプリングの径を所望の範囲内にできない可能性があるからである。
なお、ここでいうコイルエキスパンダを形成する線材の厚さとは、異形線の場合、線材がコイル状に巻かれた状態でのコイルエキスパンダの径方向における線材の長さをいうものとする。また、コイルエキスパンダを形成する線材の幅とは、コイルエキスパンダの軸方向における線材の長さをいうものとする。具体的には、本発明に用いられるコイルエキスパンダを長手方向に切断した概略断面図を例示する図3に示すように、線材の断面形状30において、コイルエキスパンダの径方向xにおける長さが線材の厚さ31であり、コイルエキスパンダの軸方向yにおける長さが線材の幅32である。
上記コイルエキスパンダを形成する線材の断面形状等は特に限定されるものではないが、断面形状における厚さと幅との比率が1:1〜1:4の範囲内、中でも1:2〜1:3.5の範囲内、特に1:2.5〜1:3の範囲内であることが好ましい。比率が上記範囲に満たない場合は、コイルエキスパンダを作製する際に、所望のピッチにおいて隣り合う線材同士間の空隙が狭くなり、所定の曲率で曲げることが困難となる可能性がある。一方、比率が上記範囲を超えると、所望のピッチにおいて隣り合う線材同士間に形成される空隙が広くなり、充分な張力を得ることができない可能性がある。なお、丸線形状については、線材の厚さは、図4に示す径40の値とし、線材のピッチは図4に示すPとする。
本発明においては、上述したコイルエキスパンダを形成する線材をコイル状に巻く方法としては、線材の断面形状における長辺側がコイルエキスパンダの周方向を形成するように巻くことが好ましい。このような巻き方が、コイルエキスパンダを構成するコイルスプリングの径を最も小さくし、かつバネとしての反力を十分に発現することができるため、所望の張力を得ることができるからである。
B.ピストンリング本体
次に、上述した本発明のコイルエキスパンダと共に用いられるピストンリング本体について説明する。
従来の組合せピストンリングに用いられているピストンリング本体は、それ自身がある程度の張力や剛性を有していた。しかしながら、現在用いられている薄幅化された組合せピストンリングに用いられる薄幅化されたピストンリング本体は張力が1〜6Nと弱く、ピストンへの組み付けの際に拡げられたコイルエキスパンダを元に戻すことができない。本発明のコイルエキスパンダはこのような薄幅化されたピストンリング本体と共に用いられた場合でも、コイルエキスパンダ自身の復元力および剛性によりリング溝からの脱落等の不具合を防止することができるため、薄幅化されたピストンリング本体と組み合せて用いられることが好ましい。
通常、このような薄幅化されたピストンリング本体は、その径方向の長さa1が1.0〜3.0mmの範囲内、好ましくは1.0〜2.0mmの範囲内であり、その軸方向の長さh1が1.0〜4.0mmの範囲内、好ましくは1.5〜3.0mmの範囲内のものである。ここで、径方向の長さa1および軸方向の長さh1とは図5に例示する部分の寸法を意味するものとする。図5は、本発明のコイルエキスパンダが用いられる組合せピストンリングの一例を示す、組合せピストンリングの径を含む断面の概略断面図である。図5に例示するように、組合せピストンリング50はピストンリング本体51と、上記ピストンリング本体51の内側に配置されたコイルエキスパンダ52とから構成される。上記コイルエキスパンダ52の突き合わせ部(図示せず)にはジョイント線53が配置されている。ピストンリング本体51の径方向の長さとは図中に「a1」として示されている左右方向の長さであり、軸方向の長さとは図中に「h1」として示されている上下方向の長さである。なお、図5においては、ピストンリング本体51の右側の面がピストンリング本体51の外周面であり、シリンダー内壁との摺動面である。
上記径方向の長さa1は、ピストンリング本体の外径d1等の寸法によって適宜調整されるものである。本発明においては、ピストンリング本体の外径d1と、ピストンリング本体の径方向の長さa1との比率d1/a1が30〜100の範囲内、中でも40〜75の範囲内であることが好ましい。上述した本発明のコイルエキスパンダの高い効果が期待できるからである。また、上記比率が30未満であるとピストンリング本体の径方向の長さa1が厚くなるので、追従性が悪くなる可能性がある。一方、上記比率が100を超えると、ピストンリング本体の径方向の長さa1が薄くなるので、ピストンリングがピストンのリング溝に接する面が小さくなり、オイルシール機能に悪影響を及ぼす可能性がある。このようなピストンリング本体を形成する材料等は特に限定されるものではなく、通常のピストンリング本体に用いられるものを用いることができる。これらの材料は、ピストンリングの用途(圧力リング用またはオイルリング用)や要求される機能等によって適宜組み合せて用いることができる。
C.組合せピストンリング
最後に、上述した本発明のコイルエキスパンダが用いられる組合せピストンリングについて説明する。
本発明のコイルエキスパンダが用いられる組合せピストンリングは、上述した本発明のコイルエキスパンダがピストンリング本体の内側に配置されたものである。組合せピストンリングに本発明のコイルエキスパンダを用いることにより、外部からの応力によってその径が拡げられた場合でも、上記応力の除去に際して自己の復元力および剛性によりその形状(径)を復元することができる組合せピストンリングを得ることができる。
また、上記復元力および剛性により、ピストンリングに装着された後のコイルエキスパンダの突き合わせ部は閉じた状態に維持されるため上記コイルエキスパンダは曲率が均一な円形状に維持され、ピストンリング本体を押圧する力も均一なものとなる。そのため、本発明のコイルエキスパンダを用いることにより、周方向の張力分布が均一な組合せピストンリングを得ることができる。
従来の組合せピストンリングに用いられていたピストンリング本体はそれ自身が張力を有する場合が多く、組合せピストンリングにおける、ピストンリング本体の張力:コイルエキスパンダの張力の比率は1:30程度であった。しかしながら現在多用されている薄幅化された組合せピストンリングに用いられる薄幅化されたピストンリング本体はほとんど張力を有しておらず、薄幅化された組合せピストンリングにおける、ピストンリング本体の張力:コイルエキスパンダの張力の比率は通常1:35〜1:600の範囲内、中でも1:45〜1:500の範囲内である。
上記張力比率の変化に加え、薄幅化された組合せピストンリングは、組合せピストンリング全体としての張力も小さくなっており、張力をボア径で割った張力比は0.40N/mm未満であり、具体的には0.20〜0.30N/mmである。従来の組合せピストンリング全体における、張力をボア径で割った張力比は0.40〜0.60N/mmであることを考慮すると、薄幅化されたピストンリング本体は、従来のピストンリング本体の半分程度の張力しか有していないこととなる。本発明のコイルエキスパンダは、このような張力が小さい薄幅化されたピストンリング本体と共に用いられた場合でも、組合せピストンリングとして高い性能を発揮することができる。
本発明のコイルエキスパンダは、任意のピストンリングと組み合せることが可能であり、例えば2ピース構成ピストンリング、3ピース構成ピストンリング、4ピース構成ピストンリングなどに用いることができ、中でも2ピース構成ピストンリングに用いられることが好ましい。
なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。上記実施形態は、例示であり、本発明の特許請求の範囲に記載された技術的思想と実質的に同一な構成を有し、同様な作用効果を奏するものは、いかなるものであっても本発明の技術的範囲に包含される。
以下に実施例および比較例を示して本発明をさらに具体的に説明する。
[評価方法1]
ピストンのリング溝に、ピストンリング本体とコイルエキスパンダからなる2ピース構成の組合せピストンリングを組み付ける試験を行った。各組合せピストンリングの内側からの応力付加により径を拡げた状態でリング溝に組み付け、上記応力が除去された際に組み合わせピストンリングの径が元に戻る(コイルエキスパンダの突き合わせ部同士が接触する)か否かを評価した。
各試験においては、以下の仕様のコイルエキスパンダおよびピストンリング本体を用いた。なお、下記のコイルエキスパンダの寸法は、ピストンリング本体の内側に配置された状態におけるものである。
*コイルエキスパンダ
・外径:1.8mm
・ピッチ:1.7mm、
・線材形状:丸線
・材質:Cを0.55質量%、Siを1.40質量%、Mnを0.62質量%、Pを0.01質量%、Sを0.01質量%、Crを0.70質量%含有し、残部がFeである(SWOSC−V材相当)材料
・熱処理条件:400℃で20分間保持
・張力:44N
*ピストンリング本体
・外径:103mm
・径方向の長さ:1.95mm
・材質:Cを0.65質量%、Siを0.40質量%、Mnを0.30質量%、Pを0.01質量%、Sを0.01質量%、Crを13.5質量%、Moを0.30質量%含有し、残部がFeである(SUS410J1材相当)材料
・張力:1N
各試験において用いられたコイルエキスパンダの自由状態における突き合わせ部の形態、内側からの応力付加により径を拡げてリング溝に組み付けた後に上記応力が除去された状態におけるコイルエキスパンダの突き合わせ部間の平均隙間およびその評価を下記表1に示す。この際の突き合わせ部の形態については、自由状態において重複部がある場合は図1に例示する重複部3の長さAと、略円形状の円周部2の長さBとの比率であるA/Bを示し、重複部がない場合は自由状態における図6に示す中心角αの角度を示す。また、上記応力が除去された状態で、コイルエキスパンダの突き合わせ部同士が接触している場合の隙間の長さを0mmとし、接触せずに両突き合わせ部間に隙間が生じた場合の隙間の長さを測定した。表1には、1仕様につき30本のオイルリングの組み付けを行い、その平均隙間を示す。30本の平均隙間が0〜1mmの場合を○、1〜5mmの場合を△、5mm以上の場合を×と評価した。
[評価方法2]
下記表1に自由状態における突き合わせ部の形態を有するコイルエキスパンダを製造する際に行った熱処理の回数および評価を示す。製造の際に1回の熱処理が必要であったものについては○と、2回以上の熱処理を行う必要があったものについては×と評価した。
[総合評価]
上記評価方法1および評価方法2の結果を踏まえて総合的に評価した総合評価を下記表1に示す。評価方法1において×と評価されたコイルエキスパンダについては、評価方法2が○であっても、機能上悪影響を及ぼすことから、総合評価は×とした。一方、評価方法1が○で、評価方法2が×の場合は製造上の問題のみで、機能については問題がないため、総合評価は△とした。表1から、自由状態において重複部を有するコイルエキスパンダを用いた場合、重複部を有しないものよりも平均隙間が大幅に小さいことが分かる。さらに、A/Bを0.005〜0.50としたものは、総合評価も○であり、良い結果が得られていることが分かる。
Figure 2008202670
本発明のコイルエキスパンダの自由状態の形状の一例を示す概略平面図である。 本発明のコイルエキスパンダの形状の一例を示す概略断面図である。 本発明のコイルエキスパンダに用いられる線材の形状の一例を示す概略断面図である。 本発明のコイルエキスパンダに用いられる線材の形状の他の例を示す概略伝面図である。 本発明のコイルエキスパンダがピストンリング本体に組み付けられた状態の一例を示す概略断面図である。 従来のコイルエキスパンダの自由状態の形状一例を示す概略平面図である。 従来のコイルエキスパンダの突き合わせ部の状態の一例を示す概略部分図である。
符号の説明
1 … コイルエキスパンダ
2 … 円周部
3 … 重複部
4、4´ … 突き合わせ部
5 … 交差点

Claims (3)

  1. 少なくともピストンリング本体と、前記ピストンリング本体をその径方向外側に押圧付勢するコイルエキスパンダとから構成される組合せピストンリングに用いられるコイルエキスパンダであって、
    前記コイルエキスパンダは、自由状態において、重複部を有する略円形状であることを特徴とするコイルエキスパンダ。
  2. 前記重複部の長さAと、前記略円形状の円周の長さBとの比率A/Bが、0.005〜0.50の範囲内であることを特徴とする請求項1に記載のコイルエキスパンダ。
  3. 前記コイルエキスパンダは、前記ピストンリング本体の外径d1と、前記ピストンリング本体の径方向の長さa1との比率d1/a1が30〜100の範囲内であるピストンリング本体と組み合せて用いられることを特徴とする請求項1または請求項2に記載のコイルエキスパンダ。
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