JP2012515888A - シーリングスリーブ - Google Patents
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Abstract
内燃エンジンにおけるピストンとシリンダ壁部との間を密封するため、ピストンの運動方向における高さが、シリンダの半径方向の幅の少なくとも3倍の大きさであるシーリングスリーブであって、加圧された円環状の切り込み(図2における6)を持ち、その外面がシリンダの壁部に接している。
Description
本発明は、ピストンシールとシリンダ壁部の間の摩擦を低減することに関する。
シリンダの内部で作動する往復ピストンを有する内燃エンジンにおいて、ピストンとシリンダ壁部の間が良好に密封されていることが基本である。密封は、通常、ピストンの周縁部の溝内に置かれている所謂ピストンリングによって達成される。シリンダ内部のガス圧力が、シリンダ壁部およびピストン溝の一側面の両方にピストンリングを押しつける。こうして、ピストンリングとシリンダ壁部の間、およびピストンリングとピストン溝側面の隙間が、共に小さくなる。これが封印として作用し、ガス漏れを防ぐ。
シリンダ内のガス圧はかなり高く、コンプレッサやターボチャージャによって達成される加圧された流入空気の圧力で作動するエンジンにおいては特に高い。高いガス圧は、それに応じて、ピストンリングとピストンおよびシリンダ壁部それぞれとの間に高い接触圧をもたらす。ピストンリングとシリンダ壁部の間の接触圧は、シリンダ中のピストンの運動を妨害する摩擦となって現れる。この摩擦は、例え、潤滑油を適用して低減しても極めて大きなもので、エンジンのエネルギー効率を低減する。この摩擦はまた、局部的に熱を発生させ、この熱発生が潤滑を損ない、摩耗を生じさせ、オーバーホールとオーバーホールの間の稼働時間を大きく限定し、エンジンの合計の寿命予測値を短縮する可能性がある。摩擦は接触力に依存し、それ故、シリンダのガス圧および幾何学的サイズの両方に依存するので、この局部的加熱効果は大型エンジンにおいてはより顕著な問題である。
本発明によれば、ピストンシールとシリンダ壁部との摩擦を低下できる。このことは、エンジンのエネルギー効率を増加させ、摩耗を減少させ、オーバーホール間の時間を増加させ、エンジンの寿命予測値を伸ばす。本発明の重点は、ピストンシールとシリンダ壁部の間の密封はそこに働く接触圧力に依存し、一方摩擦は接触力に依存することを認識することである。接触面積の低下は、例え接触圧力が一定に保たれても、摩擦を低下させる。
図1に、従来のピストンリングが示され、幾つかの関連する幾何学的尺度を図示していす。シリンダとそのピストンの中間部分の一部を示すこの図において、1はピストン、2はシリンダ壁部、3はピストンリング、4はピストンリングとピストン溝の密封エリア、5はピストンリングとシリンダ壁部の密封エリアである。
曲がりのない本体を仮定し、ピストンリングを横切るガス圧力差がPである理想化され単純化された解析において、次が得られる。(図1に示す尺度)
a) ピストンリングとピストン溝(エリア4)の間の固体と固体の接触圧力は、
P・(w−(w−c)/2)/(w−c)>P/2
に等しく、これにより良好な接触および良好な密封がもたらされる。
b) ピストンリングとシリンダ壁部(エリア5)間の固体と固体の接触圧力は、
P/2
に等しく、これよっても良好な密封がもたらされる。
c) ピストンリングとシリンダ壁部間の摩擦:
P・h・l・u/2(ここで、uは摩擦係数、lはシリンダ壁部の円周長さ)
a) ピストンリングとピストン溝(エリア4)の間の固体と固体の接触圧力は、
P・(w−(w−c)/2)/(w−c)>P/2
に等しく、これにより良好な接触および良好な密封がもたらされる。
b) ピストンリングとシリンダ壁部(エリア5)間の固体と固体の接触圧力は、
P/2
に等しく、これよっても良好な密封がもたらされる。
c) ピストンリングとシリンダ壁部間の摩擦:
P・h・l・u/2(ここで、uは摩擦係数、lはシリンダ壁部の円周長さ)
シーリングスロットでのガス油混合物の圧力は、一端から他端に向かって直線的に変化すると考えられる。ピストンリングの弾力性による力は無視している。
上記c)式から、摩擦、およびピストンリングの円周長さ当たりの摩擦は、ピストンリングの高さhに依存することは明らかである。高さhを小さくできるほど、摩擦は小さくなる。例えば、往復するピストンリングの弾力性や曲がりを含むより複雑なモデルの計算においても、この結論は否定されない。
従来のピストンリングにおいて、高さhは、ピストンリングが圧力や摩擦力による曲がりに抵抗する必要性により決まる。ピストン本体とシリンダ壁部との間の隙間(図1のc)は、シリンダ穴寸法に比例して増加する傾向にある。過剰な曲がりを防止するために、例え圧力Pが増加しなくとも、従来、ピストンリングはより大きなシリンダ穴に対してはより大きくされている。リングの高さhは従来、シリンダ穴の内径に比例して定められている。
大型船のエンジンにおいては、摩擦熱のために潤滑システムおよび潤滑油の品質に対する要求が高い。このようなエンジンにとって珍しくない不具合は、ピストンリングとシリンダ壁部との間の潤滑が機能していない、所謂「スカッフィング」である。これは、エンジンに激しい損傷を引き起こす可能性がある。
本発明は、ピストンシールとシリンダ壁部の間の摩擦を低減することに関する。一つの目的は、そうしてエンジンのエネルギー効率を増加させることである。第二の目的は、ピストンシールとシリンダ壁部との間の摩擦によって引き起こされる局部加熱を減少させ、それによって潤滑と寿命を改善することである。
この新規な発明は、シーリングリングに変えて、シーリングスリーブを採用している。図2に、本発明によるそのようなシーリングスリーブの一例を示し、関連する幾何学的尺度のいくつかを図示している。図1に示したシリンダとピストンの同様な中間部を図示する図2において、1はピストン、2はシリンダ壁部、3はシーリングスリーブ、4はピストン溝に対するシーリングスリーブのシーリングエリア、そして、5はシリンダ壁部に対するシーリングスリーブのシーリングエリアである。高い圧力は、ピストンの上方とシーリングスリーブの上方にあるはずである。シーリングスリーブ3の外側部には、円環状の切り取られたスペース6がある。このスペースは、円環状に切り取られたスペース6とシーリングスリーブの背面のエリア9との間でガス圧力を均等にさせることができる、スリーブ円環の円周上で互いに離間したいくつかの穴7を通じてシーリングスリーブの背面と接続している。このエリア9はピストン上部の高圧部とスロット10を通して接続されている。
図1の従来のピストンリングについて上で行われたと同様の簡単な解析において、図2の新たなシーリングスリーブについての解析結果を得た。
a) シーリングスリーブとピストン溝の間(エリア4)の固体と固体の接触圧力は、
P・(w−(w−c)/2)/(w−c)>P/2
に等しく、これにより良好な接触および良好な密封がもたらされる。
b) シーリングスリーブとシリンダ壁部(エリア5)の間の固体と固体の接触圧力は、
P/2
に等しく、これによっても良好な密封がもたらされる。
c) ピストシールとシリンダ壁部の間の摩擦:
P・heff・l・u/2(ここで、uは摩擦係数、lはシリンダ壁部の円周長さ)
a) シーリングスリーブとピストン溝の間(エリア4)の固体と固体の接触圧力は、
P・(w−(w−c)/2)/(w−c)>P/2
に等しく、これにより良好な接触および良好な密封がもたらされる。
b) シーリングスリーブとシリンダ壁部(エリア5)の間の固体と固体の接触圧力は、
P/2
に等しく、これによっても良好な密封がもたらされる。
c) ピストシールとシリンダ壁部の間の摩擦:
P・heff・l・u/2(ここで、uは摩擦係数、lはシリンダ壁部の円周長さ)
heffは、図1に示す従来のピストンリングのhよりはるかに小さくできるため、このシーリングスリーブの摩擦ははるかに小さい可能性がある。円環状の切り込みスペース6内の圧力は、シーリングスリーブの裏側およびピストン上部の圧力と同じである。スロット8内の圧力も同じと考えることができる。従って、圧力差Pはシーリングスリーブの合計高さの一部のみに働いている。或いは、円環状の切り込みスペース6内のガスは、シーリングスリーブの内側の圧力によって引き起こされた力の大部分を均衡させるガスクッションとして機能していると考えることができる。
摩擦力およびガス圧力による曲がりに対する十分な抵抗を獲得するものの、シリンダ壁部に対して過剰な摩擦は与えないために、従来のピストンリングは、リング幅wがリングの高さhより大きくする、あるいは、これとほぼ同じサイズとなるよう作成されている。本発明によるシーリングスリーブは、その幅wよりはるかに高い高さhを有するよう作成することができる。円環状切り込みスペース6内のガスクッションのため、これは、シリンダ壁部に余分な摩擦を引き起こすことなく行なうことができる。合計高さが高いため、幅wが小さくとも、スリーブは曲がりに対して抵抗力がある。
本発明の第3の目的は、過剰な曲がりに抵抗できる一方、半径方向においては柔軟でありシリンダ壁部の凹凸に追随することができるピストンシールを作成することである。不完全なシリンダ壁部に順応するこのような能力は、漏洩を減少させる。またこうした順応能力によって、シリンダ壁部の凸部での異常に高い接触圧力や危険な摩擦状態のリスクが減らされる。そのような場所でしばしば、スカッフィングが始まる。本発明のシーリングスリーブが柔軟であるために、潤滑状況はより寛大にできる。新しい潤滑油の連続的な供給による潤滑が行なわれるエンジンでは、これにより潤滑油の供給量を減少でき、作業コストを節減できる。
直線状のビームを曲げるために力をかけた時、結果としての曲げ(1/r、ここでrは曲げ半径)は、ビーム断面の慣性モーメントに反比例する。一方、このことは曲げ方向の断面高さの3乗に比例する。最初から既に曲がった対象物に対しては、その元の形状からの変形に対して相当する関係が適用される。本発明のシーリングスリーブは、高さhの3分の1未満の幅wとすることができる利点がある。その他の条件を一定に保ちながら幅wを3分の1に減少させると、断面の慣性モーメントを元の値の1/27に変化させる。こうして、シーリングスリーブをシリンダ壁部の凹凸に対して順応させる力は、1/27に減少する。これは、従来から実績のある構成材料を変える必要が無いということである。
本発明によって作られたピストンシールは、従来のピストンリングより狭い幅で作ることが好ましい。古いエンジンにおける後付けのためには、もし古いピストンリング溝を幅の狭い新たなシーリングスリーブとともにでも使用できれば、有利なことがあるだろう。このことは、シーリングスリーブの内側の空いたスペースを満たすように、もはや役立たないリングを置き、役立つスリーブを正しい位置に保つことによって達成される。その他の場合、ピストン溝の外側部の高さを上下方向に増加させて、本発明によって作られた新しいより高いシールを、増加された高い外側溝に嵌合する。こうして、シーリングスリーブは新しい溝表面によって所定の位置に保持され、一方、古いより深い溝の残存部分はスリーブの中央部背後において何の障害にもならない。
新しいピストンシールの重要な特徴は、スリーブの外面の円環状の切り込み(6)がピストンの高圧側とガスが流通する状態で接していることである。このことにより、円環状の切り込みが、スリーブとシリンダ壁部の間のガスのクッションとして機能する。このガスクッションが、スリーブの裏側に働くガス圧力による力を均衡させる。図2に示す設計において、スリーブを貫通する穴7によって、スリーブの裏側のスペース9に対するガスの接続が行なわれる。このことは、スリーブとスリーブの高圧側の溝側面との間に形成されているスロット10を通じてピストンの高圧側と接している。それに代えて、通常の場合のように、高圧が常にピストンシールの同じ側にあるとき、そのようなガス搬送接続は、スリーブの上部(高圧が垂直作動するピストンの上部にあると仮定して)の垂直穴または垂直溝(11)を通るより直接的な通路によって達成可能である。2個の代替案を図3および図4に示した。
従来のピストンリングは、その上部および下部においてより磨耗する傾向にあるので、シーリング面が幾分凸形面となっている。事実、そうした凸型または樽型外面は、意図された設計形状であることもある。いずれにせよ、こうした凸型面は、摩擦、ピストンとシリンダの間のガス圧および隙間からのリングの曲がりの防止の支えにはほとんどならない。曲がりに抵抗するために、リングは内部の剛性と幅(w)の広さに頼らなければならない。本発明のシーリングスリーブにおいては事情が異なる。転がりを生む凸型の接触面は無く、互いにある距離を置いた異なる別々の2つの接触面があるのみである。このことは磨耗したスリーブにも当てはまる。
シーリングスリーブとシリンダ壁部の間の図2に示す接触エリア8は、シーリング機能を持たない。しかし、そこに接触が存在する限り、それはピストンスリーブが適正な向きにあることを意味している。従来のピストンリングは、曲がりが発生しないように内部の剛性に頼らねばならないが、本発明のピストンシールは曲がりがなく維持され、かつシリンダ壁部に支持されている。8に於ける接触力は、上方からの圧力とピストンとシリンダ壁部との隙間によってスリーブが傾く傾向とによるスリーブの弾力性によって与えられる。図2の5に於ける接触力は、シールの背後の圧力の作用に直接依存する。それ故、圧力が両接触面をシリンダ壁部に対して保持し、スリーブは曲がりの危険なく極めて薄くかつ弾力性を持たせる(図2の幅wを小さく)ことができる。傾斜傾向は、スリーブの底部(低圧部)の外側部から材料を取り除くことによって、強化されかつピストンとシリンダの間の隙間に依存しなくなり、このことによって、傾斜の回転中心を溝の端部から移動させる。これは、ピストン溝側面にシールすることによってピストン溝側面との接触面がピストン溝内部で終わるように、シーリングスリーブの低圧部の外側の端部を面取り加工するか丸め加工することにより達成される。図5を見ると、1はピストン、2はシリンダ壁部、3はシーリングスリーブで、12においてスリーブの底部から材料が除去されている。その結果、傾斜の回転中心13は、シリンダ壁部2から離れている。この回転中心の移動はまた、溝の端部14での材料の疲労による損傷のリスクを低減する。これに代えて、図5に点線で示すように、14において溝の外側部から材料を除去しても対応する効果が得られる。従来のピストンリングの場合と対照的に、このように回転中心をシリンダ壁部から離す移動は、シールが曲がる傾向を強めることはない。
単純化のために、上記記述において、唯一つのシーリング装置が用いられ、シリンダ中の高圧が上部から働いている場合について述べた。本発明はこのような特殊な場合に限定されず、その他の配列や、従来のピストンリングにおいてよく用いられたように、幾つかのシーリング装置が直列に用いられる場合にも同様に適用可能である。上方からの圧力、あるいは、ピストン上方あるいはシーリングスリーブ上方の圧力については、装置の高圧側からまたは高圧側の圧力と読み替えられたい。
Claims (4)
- 内燃エンジンにおけるピストンとシリンダ壁部の間をシールするため、シリンダ壁部に対面してピストンの表面の溝内に設置され、従来のピストンリングと同じように、シリンダ壁部とピストン溝の一側面をシールするためのシーリングスリーブ(3)であって、曲がりへの抵抗とシリンダ壁部に追随する柔軟性および能力を同時に獲得するために、その高さ(h)はその幅(w)の少なくとも少なくとも3倍あること、ならびに、シリンダ壁部に対面するその表面は、シーリングスリーブ(3)中に、穴または溝の形の接続部(7、11)を通じて加圧されるよう構成されている円環状の切り込みを有することを特徴とするシーリングスリーブ。
- 前記接続部(7、11)は、切り込み(6)からシリンダ壁部(2)とは反対側へ対面しているシーリングスリーブ(3)の側面へシーリングスリーブ(3)を貫通する穴(7)の形状であることを特徴とする請求項1に記載のシーリングスリーブ(3)。
- 前記接続部(7、11)は、シリンダ壁部(2)に対面しているシーリングスリーブ(3)の上部の溝または穴(11)の形状であることを特徴とする請求項1に記載のシーリングスリーブ(3)。
- シリンダ壁部(2)に対面しているシーリングスリーブ(3)の下部(12)が丸められるか面取りされていることを特徴とする請求項1、2または3に記載のシーリングスリーブ。
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