JP2008201110A - インクジェット記録媒体 - Google Patents

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和美 児玉
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Abstract

【課題】インク吸収性に優れ、印字にじみの発生を有効に防止することができ、しかも、優れた表面光沢を有するインクジェット記録媒体を提供すること。
【解決手段】基材上に、インク受容層と、前記インク受容層上に設けられた光沢層と、を有するインクジェット記録媒体であって、前記光沢層が、無機層状化合物の層間に、重合性アンモニウムイオン含有単量体の重合体がインターカレートした有機高分子化無機層状化合物を含む顔料と、バインダと、を含有し、前記光沢層における前記バインダの含有量が、前記有機高分子化無機層状化合物100重量部に対して、3〜70重量部であるインクジェット記録媒体。
【選択図】なし

Description

本発明は、インクジェット記録媒体に係り、さらに詳しくは、インク吸収性に優れ、印字にじみの発生を有効に防止することができ、しかも、優れた表面光沢を有するインクジェット記録媒体に関する。
インクジェット記録方式は水性インクを極細いノズルより噴出させて、シート状の記録媒体に付着させることにより、画像や文字などを記録する方式である。この方式は記録時の騒音が少なく、高速印字が可能であり、しかも複数のノズルによるカラー化が容易であることから各種端末用のプリンターやコピー機などに広く利用されている。
近年においては、デジタルカメラの高性能化等により、このようなインクジェット記録方式においても、高精細化や、銀塩写真に匹敵する画質、表面光沢および保存性等が強く求められている。
このような要求に応えるために、インクジェット記録媒体の高画質化や、高光沢を付与する方法として、従来より種々の試みが行われている。たとえば、特許文献1では、高光沢を有するインクジェット記録媒体として、所定の感温性高分子化合物および顔料を含有する塗液を用いて得られるインクジェット記録媒体が開示されている。なお、この特許文献1では、感温性高分子化合物として、ポリビニルアルコールまたはその誘導体の共存下で、N−アルキルまたはN−アルキレン置換(メタ)アクリルアミド誘導体や、ビニルメチルエーテルを重合して得られる高分子等が開示されている。
しかしながら、この特許文献1においては、光沢性に優れたインクジェット記録媒体が得られるものの、インク吸収性が不十分であり、そのため、印字むらが発生し易いという問題があった。
特開2006−103315号公報
本発明は、このような実状に鑑みてなされ、インク吸収性に優れ、印字にじみの発生を有効に防止することができ、しかも、優れた表面光沢を有するインクジェット記録媒体を提供することを目的とする。
本発明者は、上記目的を達成すべく鋭意研究を進めた結果、基材上に、インク受容層および光沢層が形成されたインクジェット記録媒体において、光沢層に含有させる顔料として、無機層状化合物の層間に、重合性アンモニウムイオン含有単量体を重合することにより得られる重合体がインターカレートした有機高分子化無機層状化合物を含む顔料を用いることにより、上記目的を達成できることを見出し、この知見に基づいて本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明によれば、基材上に、インク受容層と、前記インク受容層上に設けられた光沢層と、を有するインクジェット記録媒体であって、
前記光沢層が、無機層状化合物の層間に、重合性アンモニウムイオン含有単量体の重合体がインターカレートした有機高分子化無機層状化合物を含む顔料と、バインダと、を含有し、
前記光沢層における前記バインダの含有量が、前記有機高分子化無機層状化合物100重量部に対して、3〜70重量部であるインクジェット記録媒体が提供される。
好ましくは、前記インク受容層が、無機層状化合物の層間に、RNH 、RNH 、R(CH、およびR(CHから選択される少なくとも一種のアンモニウムイオンがインターカレートした有機化無機層状化合物を含む顔料と、バインダと、を含有し、
前記インク受容層における前記バインダの含有量が、前記有機化無機層状化合物100重量部に対して、1〜100重量部である。
(ただし、Rは炭素数8〜20の飽和炭化水素、R、Rは炭素数6〜12の飽和炭化水素、Rは炭素数8〜20の飽和炭化水素、R、Rは炭素数8〜20の飽和炭化水素である。)
好ましくは、前記有機高分子化無機層状化合物および/または有機化無機層状化合物を構成する前記無機層状化合物が、モンモリロナイト、サポナイト、ヘクトライト、バイデライト、スティブンサイト、ノントロナイト、バーミキュライト、ハロイサイト、マイカおよびベントナイトから選択される少なくとも一種である。
好ましくは、前記有機高分子化無機層状化合物を構成する前記アンモニウムイオン含有単量体が、下記式(1)で表される第4級アンモニウムイオンを含有する化合物である。
〔CH=C(R)CH(R …(1)
(ただし、上記式(1)中、Rは、水素原子、−CHまたは−C、Rは、それぞれ、−CH、−C、−Cまたは−Cである。)
本発明のインクジェット記録媒体によれば、インク吸収性、印画濃度およびインクドット真円性に優れ、印字にじみの発生を有効に防止しながら、高い光沢性を実現することができる。そのため、高精細な印字が可能で、さらには顔料インクに対しても優れた記録適性を有する、極めて実用性の高いインクジェット記録用シートなどの記録媒体を提供することができる。
以下、本発明のインクジェット記録媒体について詳細に説明する。
本発明のインクジェット記録媒体は、基材と、インク受容層と、光沢層と、を少なくとも有し、これら基材、インク受容層および光沢層は、この順序で積層されてなる。
基材
本発明で用いる基材としては、基材としての適当な機械物性を有するものであればよく、特に限定されないが、たとえば、セルロースパルプを主成分とする紙類の他、合成紙なども用いることができる。
基材を紙類とする場合における、原料パルプとしては、たとえば、針葉樹晒クラフトパルプ、広葉樹晒クラフトパルプ等の化学パルプ;砕木パルプ(GP)、さらしケミカルサーモメカニカルパルプ(BCTMP)、メカニカルパルプ(MP)等の機械パルプ;ケナフ等の非木材原料から得られるパルプ等の抄紙用パルプ;古紙から再生した古紙パルプ;等が挙げられる。これらは単独で、または組み合わせて用いることができる。
また、基材に内添される填料としては、種々の無機顔料を用いることができ、たとえば、シリカ、焼成カオリン、タルク、カオリン、炭酸カルシウム、ホワイトカーボン、酸化チタン、活性白土、ゼオライト、珪藻土、硫酸バリウム等が挙げられる。これらのなかでも、シリカ、焼成カオリン、炭酸カルシウムまたはゼオライトが好ましく用いられる。填料の配合量は、全パルプに対して、通常1〜30重量%である。1重量%未満とすると、印字にじみが悪化する場合がある。一方、30重量%を越えると、印字濃度が低下する場合がある。
本発明で用いる基材は、たとえば、上記した各種パルプに填料を加えて、長網抄紙機、円網抄紙機、ツインワイヤー抄紙機などの各種装置を用い、酸性抄紙または中性抄紙で抄造することにより調製することができる。
なお、本発明で用いる基材には、必要に応じて、たとえば、硫酸バンドなどの歩留まり向上剤;ロジン系、アルケニルコハク酸無水物、アルキルケテンダイマー等のサイズ剤;酸化澱粉、酵素変性澱粉、カチオン変性澱粉、エステル化澱粉、エーテル化澱粉等の澱粉類、メチルセルロース、エチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、メトキシセルロース、ヒドロキシセルロース、完全鹸化または部分鹸化ポリビニルアルコール、カルボキシ変性ポリビニルアルコール、珪素変性ポリビニルアルコール等のポリビニルアルコール類、ポリアクリルアミド、ポリビニルピロリドン、アクリル酸アミド・アクリル酸エステル共重合体、アクリル酸アミド・アクリル酸エステル・メタクリル酸共重合体、スチレン・無水マレイン酸共重合体のアルカリ塩、イソブチレン・無水マレイン酸共重合体アルカリ塩、カゼイン等の水溶性高分子;ポリ酢酸ビニル、ポリウレタン、ポリアクリル酸、ポリアクリル酸エステル、ポリブチルメタクリレート、スチレン・ブタジエン共重合体、塩化ビニル・酢酸ビニル共重合体、スチレン・ブタジエン・アクリル系共重合体等の接着剤;等を含有していてもよい。
インク受容層
本発明に係るインク受容層は、特に限定されないが、顔料と、バインダと、を少なくとも含有していることが好ましい。
インク受容層に用いられる顔料としては、一般的に使用されている顔料であれば良く、特に限定されないが、非晶質シリカ、アルミナ、ゼオライトなどのキセロゲル系多孔質顔料;炭酸カルシウム、カオリン、タルク、硫酸カルシウム、硫酸バリウム、二酸化チタン、酸化亜鉛、炭酸亜鉛、サチンホワイト、珪酸アルミニウム、珪藻土、珪酸カルシウム、珪酸マグネシウム、ホワイトカーボン、アルミナ、水酸化アルミニウム等の無機顔料;スチレン系、アクリル系、尿素樹脂系、メラミン樹脂系、ベンゾグアナミン樹脂系の有機顔料;などが挙げられる。これらは単独で、または組み合わせて用いることができる。
本発明においては、インク受容層に用いられる顔料として、上記の一般的に使用されている顔料に代えて、次のような構成を有する有機化無機層状化合物を用いることが好ましい。インク受容層に用いられる顔料として、有機化無機層状化合物を用いることにより、本発明のインクジェット記録媒体の特性(特に光沢性、印字にじみ、インク吸収性)の更なる向上を図ることができる。
インク受容層の顔料として好ましく用いられる有機化無機層状化合物は、無機層状化合物の層間に、長鎖炭化水素置換アンモニウムイオン、すなわち、RNH 、RNH 、R(CH、およびR(CHから選択される少なくとも一種のアンモニウムイオンが、インターカレートしてなる化合物である。ここにおいて、Rは炭素数8〜20の飽和炭化水素、R、Rは炭素数6〜12の飽和炭化水素、Rは炭素数8〜20の飽和炭化水素、R、Rは炭素数8〜20の飽和炭化水素である。
無機層状化合物としては、特に限定されないが、たとえば、スメクタイト属に属する層状ケイ酸塩鉱物が挙げられ、より具体的には、モンモリロナイト、サポナイト、ヘクトライト、バイデライト、スティブンサイト、ノントロナイト、バーミキュライト、ハロイサイト、マイカおよびベントナイト等が例示される。
これら無機層状化合物は、天然、合成品、加工処理品のいずれであってもよい。たとえば、天然スメクタイトとしては、ヘクトライト、サポナイト、モンモリロナイトおよびベントナイト等が挙げられる。合成スメクタイトとしては、組成式:(Naおよび/またはLi)0.1〜1.0Mg2.4〜2.9Li0.0〜0.6Si3.5〜4.09.0〜10.6(OHおよび/またはF)1.5〜2.5で示されるものが挙げられる。合成マイカとしては、膨潤性フッ素マイカが挙げられる。
このような無機層状化合物としては、市販されている粘土鉱物、たとえば、一般にナトリウムベンナイトと呼ばれる天然のベントナイトや、市販品のクニピア、スメクトン(クニミネ工業社製)、ビーガム(バンダービルト社製)、ラポナイト(ラポルテ社製)、DMクリーンA、DMA−350、Na−Ts(トピー工業)、ベンゲル(豊順洋行社製)等を用いても良い。
本発明で用いる無機層状化合物は、長鎖炭化水素置換アンモニウムイオン(RNH 、RNH 、R(CH、R(CH)との接触面が大きく、これにより、層間を十分に膨潤できるものであることが好ましい。具体的には、無機層状化合物としては、陽イオン交換容量が好ましくは10〜200ミリ等量/100g、より好ましくは50〜180ミリ等量/100gの範囲であるものが好ましい。陽イオン交換容量が低すぎると、無機層状化合物の層間への長鎖炭化水素置換アンモニウムイオン(RNH 、RNH 、R(CH、R(CH)のインターカレーションが不十分となる傾向にある。一方、陽イオン交換容量が高すぎると、無機層状化合物の結合力が強固となり、層間への長鎖炭化水素置換アンモニウムイオンのインターカレーションが困難となる。なお、無機層状化合物の陽イオン交換容量は、たとえば、メチレンブルー吸着量を測定することにより求めることができる。
また、無機層状化合物としては、そのアスペクト比(Z)が、好ましくは50〜5000、より好ましくは100〜5000である。アスペクト比(Z)は、層状に分散された無機層状化合物の長さをL、単位厚みをaとした場合に、式:Z=L/aに従い求めることができる。なお、長さLおよび単位厚みaは、電子顕微鏡写真より測定することができる。
上記無機層状化合物にインターカレートさせる長鎖炭化水素置換アンモニウムイオンは、RNH 、RNH 、R(CH、およびR(CHから選択される少なくとも一種である。ここにおいて、Rは炭素数8〜20、好ましくは炭素数10〜18の飽和炭化水素、R、Rは炭素数6〜12、好ましくは炭素数8〜12の飽和炭化水素、Rは炭素数8〜20、好ましくは炭素数10〜18の飽和炭化水素、R、Rは炭素数8〜20、好ましくは炭素数10〜18の飽和炭化水素である。
各アンモニウムイオンにおける、飽和炭化水素基(R、R、R、R、R、R)の炭素数が少なすぎると、インターカレートするアンモニウムイオン容積が小さく層間距離が不十分となり無機層状化合物の分散性が劣り、一方、炭素数が多すぎると、アンモニウムイオンの疎水性が高くなりすぎ、溶媒への溶解性が低下し、無機層状化合物へのインターカレートがしにくくなる。
NH またはRNH で表されるアンモニウムイオンとしては、たとえば、RNHまたはRNHで表されるアミンを、塩酸、硫酸、硝酸などの酸を用いてアンモニウムイオンとし、これらの塩の形態で用いることができる。RNHまたはRNHで表されるアミンとしては、たとえば、オクチルアミン、2─エチルヘキシルアミン、ドデシルアミン、オクタデシルアミン、ジヘキシルアミン、ジオクチルアミン、ジデシルアミン、ジドデシルアミンなどが挙げられる。なお、RNH において、R、Rは、同じ炭素数の飽和炭化水素としても良いし、互いに異なる炭素数の飽和炭化水素としても良い。
(CHまたはR(CHで表されるアンモニウムイオンとしては、たとえば、これらの塩化物塩、臭化物塩、硫酸塩などの各種塩の形態で用いることができる。このような塩としては、オクチルトリメチルアンモニウム塩、デシルトリメチルアンモニウム塩、ドデシルトリメチルアンモニウム塩、オクタデシルトリメチルアンモニウム塩、ジオクチルジメチルアンモニウム塩、ジデシルジメチルアンモニウム塩、ジドデシルジメチルアンモニウム塩、ジオクタデシルジメチルアンモニウム塩などが挙げられる。なお、R(CHおいて、R、Rは、同じ炭素数の飽和炭化水素としても良いし、互いに異なる炭素数の飽和炭化水素としても良い。
長鎖炭化水素置換アンモニウムイオン(RNH 、RNH 、R(CH、R(CH)の使用量は、無機層状化合物を十分に膨潤させることができる量であれば良く、特に限定されないが、アンモニウムイオンの使用量の下限は、好ましくは無機層状化合物の陽イオン交換容量の0.5当量、より好ましくは0.7当量である。また、アンモニウムイオンの使用量の上限は、陽イオンの交換効率の点から、2当量が好ましく、より好ましくは1.5当量である。アンモニウムイオンの使用量を、0.5当量未満とすると、陽イオンの交換が不十分となり、有機化無機層状化合物の生成が不十分になる傾向にある。また、2当量を超えると、陽イオン交換に関与しないアンモニウムイオンの量が多くなり、経済的に不利となる傾向にある。
有機化無機層状化合物の大きさは、特に限定されないが、平均厚みが1〜50nm、平均直径が50〜1000nmであることが好ましい。
有機化無機層状化合物は、たとえば、(1)RNHまたはRNHで表されるアミンと酸との化合物や、R(CHまたはR(CHの塩を、溶解した溶媒中に、無機層状化合物を添加することにより反応させる方法、(2)上記化合物や塩を軟化または溶融させ、次いで、これらの中に、無機層状化合物を添加することにより反応させる方法、により得ることができる。
上記(1)の方法によれば、室温下で、無機層状化合物の層間に、アンモニウムイオンをインターカレートさせることができる。この方法においては、溶媒としては、たとえば、水の他、各種有機溶媒を用いることができる。また、上記(2)の方法においては、上記化合物や塩の軟化温度または溶融温度以上の高温に加熱する必要がある。この加熱は、上記化合物や塩、さらには無機層状化合物が分解しない温度で、かつこれらが安定に存在する温度において行うことが望ましく、たとえば、加熱温度は250℃以下である。
インク受容層に用いられるバインダとしては、各種樹脂を用いることができ、特に限定されないが、デンプンおよびその誘導体、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、カゼイン、ゼラチン、大豆タンパク等の天然または半合成高分子類、ポリビニルアルコールおよびその誘導体、ポリビニルブチラール樹脂、ポリエチレンイミン系樹脂、ポリビニルピロリドン系樹脂、ポリ(メタ)アクリル酸系樹脂、アクリル酸エステル系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリアクリルアミド系樹脂、ポリエステル樹脂、尿素樹脂、メラミン樹脂、スチレン・ブタジエン共重合体、酸変性アクリロニトリル・ブタジエン共重合体、メタクリル酸メチル・ブタジエン共重合体、エチレン・酢酸ビニル共重合体等のビニル系共重合体樹脂の水溶液または水分散体、あるいは上記の樹脂類にアニオン性またはカチオン性残基を導入した変性重合体等を用いることができる。
インク受容層の顔料として、上記有機化無機層状化合物を用いる場合における、インク受容層のバインダの含有量は、有機化無機層状化合物100重量部に対して、好ましくは1〜100重量部であり、より好ましくは2〜90重量部である。バインダの含有量が少なすぎると、印字濃度および印字耐水性に劣る傾向にある。一方、多すぎると、印字濃度が低下したり、インク吸収性が劣り、画像のにじみが発生するおそれがある。
インク受容層には、水性インクでの印字画像の耐水性を向上させる目的で、カチオン性樹脂をさらに併用しても良い。このようなカチオン性樹脂としては、たとえば、ポリエチレンイミン系樹脂、ポリアミン系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリアミドエピクロルヒドリン系樹脂、ポリアミンエピクロルヒドリン系樹脂、ポリアミドポリアミンエピクロルヒドリン系樹脂、ポリジアリルアミン系樹脂、ジシアンジアミド縮合物が挙げられる。これらカチオン性樹脂の含有量は、顔料100重量部に対して、通常1〜30重量部である。
また、インク受容層には、必要に応じて、さらに、顔料分散剤、増粘剤、消泡剤、抑泡剤、発泡剤、離型剤、浸透剤、湿潤剤、熱ゲル化剤、滑剤、染料、蛍光増白剤、その他通常用いられる公知の各種助剤を使用することができる。
インク受容層は、基材上に、インク受容層を形成することとなる各種成分を含有するインク受容層用塗料を塗工することにより形成することができる。インク受容層用塗料は、たとえば、上記した各成分を、水または有機溶剤に均一に溶解・分散することにより調製することができる。この様にして調製されるインク受容層用塗料は一般に固形分濃度が3〜20質量%程度の水分散体である。
インク受容層を塗工する方法としては、特に限定されないが、従来公知のエアーナイフコーター、カーテンコーター、ダイコーター、ブレードコーター、ゲートロールコーター、バーコーター、ロッドコーター、ロールコーター、ビルブレードコーター、ショートドエルブレードコーター、サイズプレスなどの各種装置を用いて行えば良い。あるいは、鏡面を有する加熱した光沢ロールに湿潤塗工層を圧着させ、乾燥することにより、その鏡面を写しとることによって得られる、いわゆるキャスト塗工法で塗工しても良い。
インク受容層の乾燥後の塗工量は、求める記録品質に応じて適宜決定すれば良いが、好ましくは2g/m以上、15g/m以下、より好ましくは4g/m以上、13g/m以下である。塗工量が少なすぎると、インクジェット記録品質が不十分となる場合があり、一方、多すぎると、印字濃度が不足する場合がある。
光沢層
本発明に係る光沢層は、少なくとも、有機高分子化無機層状化合物を含む顔料と、バインダと、を含有する。
顔料としての有機高分子化無機層状化合物は、無機層状化合物の層間に、重合性アンモニウムイオン含有単量体を重合させることにより得られる重合体が、インターカレートしてなる化合物である。
無機層状化合物としては、特に限定されないが、たとえば、上述のインク受容層に用いられる有機化無機層状化合物の原料と同様のものが使用できる。また、無機層状化合物としては、重合性アンモニウムイオン含有単量体との接触面が大きく、これにより、これらがインターカレートすることができ、層間を十分に膨潤できるものであることが好ましいという観点より、陽イオン交換容量が上記と同様の範囲にあるものを用いることが好ましい。
本発明において、有機高分子化無機層状化合物を得る方法としては、まず、重合性アンモニウムイオン含有単量体を、重合させることなく無機層状化合物にインターカレートさせ、次いで、無機層状化合物にインターカレートさせた状態で重合性アンモニウムイオン含有単量体を重合させる方法が好ましい。
重合性アンモニウムイオン含有単量体としては、重合性の置換基を有するアンモニウムイオンを含有する化合物であれば特に限定されないが、好ましくは、下記式(1)で表される第4級アンモニウムイオンを含有する化合物が挙げられる。
〔CH=C(R)CH(R …(1)
上記式(1)において、Rは、水素原子、−CHまたは−Cであり、Rは、それぞれ、−CH、−C、−Cまたは−Cであり、Rは互いに同じであっても良いし、また異なっていても良い。上記式(1)で表される化合物のなかでも、ジアリルジメチルアンモニウムイオン〔(CH=CHCH(CH〕を含有する化合物が好ましい。重合性アンモニウムイオン含有単量体としての、第4級アンモニウムイオンを含有する化合物は、通常、塩化物塩、臭化物塩、硫酸塩などの各種塩の形態で用いることができる。
重合性アンモニウムイオン含有単量体の使用量は、無機層状化合物を十分に膨潤させることができる量であれば良く、特に限定されないが、重合性アンモニウムイオン含有単量体の使用量の下限は、好ましくは無機層状化合物の陽イオン交換容量の0.5当量、より好ましくは0.7当量である。また、重合性アンモニウムイオン含有単量体の使用量の上限は、陽イオンの交換効率の点から、2当量が好ましく、より好ましくは1.5当量である。重合性アンモニウムイオン含有単量体の使用量が少なすぎると、陽イオンの交換が不十分となり、有機高分子化無機層状化合物の生成が不十分になる傾向にある。また、多すぎると、陽イオン交換に関与しない重合性アンモニウムイオンの量が多くなり、経済的に不利となる傾向にある。
本発明においては、重合性アンモニウムイオン含有単量体以外にインクの顔料や染料の定着性を損なわない範囲で、重合性アンモニウムイオン含有単量体と共重合するその他の単量体を用いることができる。このような単量体としては、N−ジメチルアミノエチルアクリレート、N,N−ジエチルアミノエチルアクリレート、N,N−ジメチルアミノエチルメタクリレート、N,N−ジエチルアミノエチルメタクリレート、N,N−ジメチルアクリルアミド、N,N−ジメチルアミノメチルアクリルアミド、N,N−ジメチルアミノエチルアクリルアミド、N,N−ジメチルアミノプロピルアクリルアミド、N,N−ジメチルメタクリルアミド、N,N−ジメチルアミノメチルメタクリルアミド、N,N−ジメチルアミノエチルメタクリルアミド、N,N−ジメチルアミノプロピルメタクリルアミド等が挙げられる。これらは単独で、または組み合わせて用いることができる。
本発明においては、無機層状化合物に重合性アンモニウムイオン含有単量体をインターカレートさせる前に、予め無機層状化合物に所定の長鎖炭化水素置換アンモニウムイオンをインターカレートさせておき、長鎖炭化水素置換アンモニウムイオンをインターカレートさせた状態にて、重合性アンモニウムイオン含有単量体をインターカレートさせることが好ましい。予め無機層状化合物に長鎖炭化水素置換アンモニウムイオンをインターカレートさせ、長鎖炭化水素置換アンモニウムイオンにより無機層状化合物を膨潤させた状態とすることにより、無機層状化合物への重合性アンモニウムイオン含有単量体のインターカレートを効率的に行うことができる。
このような長鎖炭化水素置換アンモニウムイオンとしては、上述のRNH 、RNH 、R(CH、およびR(CHから選択される少なくとも一種のアンモニウムイオンが好ましく用いられる。また、各長鎖炭化水素置換アンモニウムイオンにおける、飽和炭化水素基(R、R、R、R、R、R)の炭素数も、上記と同様の範囲とすれば良い。
無機層状化合物に予めインターカレートさせるアンモニウムイオンとして、飽和炭化水素基(R、R、R、R、R、R)の炭素数が小さいものを用いると、無機層状化合物の膨潤が不十分になり、そして、その結果として、その後、重合性アンモニウムイオン含有単量体を添加した際における、無機層状化合物への重合性アンモニウムイオン含有単量体のインターカレートが不十分となり、本発明所定の有機高分子化無機層状化合物が得られ難くなる。一方、炭素数が多すぎると、アンモニウムイオンの疎水性が高くなりすぎ、溶媒への溶解性が低下し、同様に、無機層状化合物にインターカレートし難くなり、結果として、本発明所定の有機高分子化無機層状化合物が得られ難くなる。
長鎖炭化水素置換アンモニウムイオンは、上記と同様に各種塩の形態で用いられる。長鎖炭化水素置換アンモニウムイオンを予めインターカレートさせる場合における使用量は、無機層状化合物を十分に膨潤させることができる量であれば良く、特に限定されないが、上述した重合性アンモニウムイオン含有単量体の使用量と同等とすればよい。
有機高分子化無機層状化合物の大きさは特に限定されないが、平均厚みが1〜50nm、平均直径が50〜1000nmであることが好ましい。
本発明に係る有機高分子化無機層状化合物は、上記長鎖炭化水素置換アンモニウムイオンの塩を用いて、次の方法により製造することが好ましい。
すなわち、まず、長鎖炭化水素置換アンモニウムイオンの塩と、無機層状化合物と、を反応させる。
これらを反応させる方法としては、たとえば、上述のインク受容層に含有させる有機化無機層状化合物と同様とすれば良い。
そして、上記にて得られた反応物に、重合性アンモニウムイオン含有単量体を添加し、温度20〜95℃、0.5〜24時間にて撹拌することにより、無機層状化合物の層間に、重合性アンモニウムイオン含有単量体を、イオンの形態でインターカレートさせる。
次いで、無機層状化合物の層間に、重合性アンモニウムイオン含有単量体をイオンの形態でインターカレートさせた状態で、重合性アンモニウムイオン含有単量体を重合させる。重合性アンモニウムイオン含有単量体の重合方法としては、特に限定されないが、たとえば、開始剤として、過硫酸アンモニウム、過硫酸カリウム、ターシャリーブチルハイドロパーオキシドなどを用いて、温度10〜100℃、1〜24時間にて反応させることにより重合させることができる。開始剤の添加方法は、一括式、分割式、連続式のいずれでもよい。このようにして、有機高分子化無機層状化合物を製造することができる。
有機高分子化無機層状化合物における、重合性アンモニウムイオン含有単量体の重合体の分子量(Mw)は、好ましくは2,000〜1,000,000であり、より好ましくは5,000〜500,000である。また、有機高分子化無機層状化合物中において、重合性アンモニウムイオン含有単量体を重合させることにより得られる重合体は、通常、イオンの形態で、無機層状化合物の層間にインターカレートすることとなる。
有機高分子化無機層状化合物を製造する際に、上述の長鎖炭化水素置換アンモニウムイオンの塩を使用する場合には、有機高分子化無機層状化合物中には、重合性アンモニウムイオン含有単量体の重合体に加えて、長鎖炭化水素置換アンモニウムイオンやその塩が残存していても良い。この場合における長鎖炭化水素置換アンモニウムイオンやその塩の残存量は、重合性アンモニウムイオン含有単量体の重合体100重量部に対して、好ましくは50重量部以下、より好ましくは30重量部以下である。
本発明においては、無機層状化合物の層間に、上記重合性アンモニウムイオン含有単量体の重合体をインターカレートさせて、無機層状化合物に有機高分子を導入することにより、無機層状化合物の層間を十分に膨潤させることができ、これらにより層間距離を大きくすることができ、無機層状化合物の分散性を向上させることができる。そして、その結果として、有機高分子化無機層状化合物の形態で、光沢層中に微分散させることができ、これにより、得られるインクジェット記録媒体を、インク吸収性に優れ、印字にじみの発生を有効に防止可能で、しかも優れた表面光沢を有するものとすることができる。なお、本発明に係る有機高分子化無機層状化合物は、無機層状化合物中に含有されているカチオンが、上記重合性アンモニウムイオン含有単量体の重合体によりイオン交換されてなるものである。
なお、本発明においては、光沢層に用いられる顔料として、上記有機高分子化無機層状化合物以外の顔料を併用しても良い。このような顔料としては、たとえば、シリカ、コロイダルシリカ、カチオン化コロイダルシリカ、カチオン化気相法シリカ、アルミナ、気相法アルミナ、カオリン、クレー、焼成クレー、酸化亜鉛、酸化アルミニウム、水酸化アルミニウム、炭酸カルシウム、サチンホワイト、珪酸アルミニウム、ゼオライト、合成ゼオライト、セピオライト、スメクタイト、合成スメクタイト、珪酸マグネシウム、炭酸マグネシウム、酸化マグネシウム、珪藻土、スチレン系プラスチックピグメント、ハイドロタルサイトなどが挙げられる。これらは単独で、または組み合わせて用いることができる。これらを用いる場合における使用量は、顔料全体100重量%に対して、10重量%以下とすることが好ましい。これらの顔料の使用量が多すぎると、顔料として有機高分子化無機層状化合物を用いることによる効果が小さくなってしまう。
光沢層に用いられるバインダとしては、各種樹脂を用いることができ、特に限定されないが、たとえば、上述のインク受容層と同様のものを用いることができる。
光沢層における、バインダの含有量は、上記有機高分子化無機層状化合物100重量部に対して、3〜70重量部であり、好ましくは5〜60重量部、より好ましくは10〜50重量部である。バインダの含有量が少なすぎると、印字にじみ、ドット真円性およびインク吸収性が悪化してしまう。一方、多すぎると光沢性や印字濃度が低下してしまう。
光沢層には、必要に応じて、さらに一般のインクジェット記録媒体に使用されている蛍光増白剤、帯電防止剤、防腐剤などの各種助剤を用いても良い。
光沢層は、基材上に形成したインク受容層に、光沢層を形成することとなる各種成分を含有する光沢層用塗料を塗工し、必要に応じて乾燥することにより形成することができる。光沢層用塗料は、たとえば、上記した各成分を、水または有機溶剤に均一に溶解・分散することにより調製することができる。
光沢層を塗工する方法としては、特に限定されないが、上述のインク受容層と同様の方法とすれば良い。また光沢層の乾燥後の塗工量は、求める記録品質に応じて適宜決定すれば良いが、好ましくは1g/m以上、12g/m以下、より好ましくは2g/m以上、10g/m以下である。塗工量が少なすぎると、インクジェット記録品質が不十分となる場合があり、一方、多すぎると、印字濃度が不足する場合がある。
そして、インク受容層上に光沢層を塗工した後に、マシンカレンダー、TGカレンダー、スーパーカレンダー、ソフトカレンダーなどのカレンダー装置を用いることにより、平滑化処理を行うことが好ましい。
なお、本発明においては、必要に応じて、上記基材とインク受容層との間に、溶媒吸収層を設けても良い。溶媒吸収層は、インク中の溶媒をいち早く吸収し保持する役割を有する層であり、顔料とバインダを含有する層である。溶媒吸収層を構成する顔料およびバインダとしては、特に限定されず、従来公知のものを用いれば良い。溶媒吸収層を形成する場合には、基材上に溶媒吸収層を形成した後に、溶媒吸収層上に、上述の方法によりインク受容層を形成すれば良い。
こうして得られる本発明のインクジェット記録媒体は、インク吸収性、印画濃度およびインクドット真円性に優れ、印字にじみの発生を有効に防止しながら、高い光沢性を有するものである。そのため、高精細な印字が可能で、さらには顔料インクに対しても優れた記録適性を有し、インクジェット記録用シートなどとして好適に使用される。
以下に実施例、比較例を挙げて、本発明を具体的に説明する。これらの例中の〔部〕および〔%〕は、特に断わりのない限り重量基準である。ただし本発明は、これらの実施例のみに限定されるものではない。なお、各特性の評価は下記の方法により行う。
光沢性
インクジェット記録媒体の光沢性は、シート状の記録媒体表面に対して横方向からの光沢感、平滑感を目視により評価する。本実施例では、光沢性は、以下の基準で評価する。
◎:極めて高い光沢感がある。
○:高い光沢感がある。
△:光沢感がある。
×:光沢感がやや劣る。
印字にじみ
印字にじみは、プリンターA(セイコーエプソン社製、品番PM−870C、染料インクタイプ)を用いて、ブラック、シアン、マゼンダ、イエロー、レッド、グリーン、ブルーの各色ベタを、互いに境界を接するようにマス目状に配置した印字を行ない、各色間の境界部でのインクのにじみを目視にて評価する。本実施例では、印字にじみは、以下の基準で評価する。
◎:印字のにじみがほとんど認められず、優れたレベル。
○:印字のにじみがわずかに認められるが実用上問題の無いレベル。
△:印字のにじみがややあり、実用上やや問題となるレベル。
×:印字のにじみが著しく、実用上重大な問題となるレベル。
印字濃度
印字濃度は、プリンターA(染料インクタイプ)を用いて黒のベタ印字を行ない、その印字濃度をマクベス反射濃度計(Macbeth RD−914)で測定する。本実施例では、印字濃度は、以下の基準で評価する。
○:2.10以上
×:2.10未満
インクドット真円性
インクドット真円性は、プリンターA(染料インクタイプ)を用いて、各インク滴が重ならないような、インク密度の低いハーフトーンの印字を行ない、ハーフトーン(10%階調)印字部分を光学顕微鏡にて200倍に拡大して観察し、それぞれのインクドットの形状が真円を示しているかどうかを目視にて評価する。本実施例では、インクドット真円性は、以下の基準で評価する。
○:インクドットの形状が円形であり、良好なレベル。
△:インクドットの形状はほぼ円形であるものの一部に形状の乱れが見られ、やや不良なレベル。
×:インクドットの形状が不安定であり、不良なレベル。
顔料インクの記録適性(インク吸収性)
顔料インクの記録適性は、プリンターB(セイコーエプソン社製、品番PM−4000PX、顔料インクタイプ)を用いて、写真画像(JIS X 9204準拠「高精細カラーディジタル標準画像(XYZ/SCID)データ」、画像の識別記号:N1、画像の名称:グラスと女性)の印字を行ない、印字部の均一性を目視にて評価する。本実施例では、顔料インクの記録適性は、以下の基準で評価する。
◎:印字ムラがほとんど認められず、優れたレベル。
○:印字ムラがわずかに認められるが実用上問題の無いレベル。
△:印字ムラがややあり、実用上やや問題となるレベル。
×:印字ムラがあり、実用上重大な問題となるレベル。
実施例1
基材の製造
LBKP60部(フリーネス450ml/csf)、NBKP40部(フリーネス450ml/csf)からなるパルプスラリー中に、パルプ固形分に対して、填料としての軽質炭酸カルシウムを紙灰分で10%となるように添加し、さらに内添サイズ剤としてAKDサイズ剤(荒川化学工業社製、サイズパインK−902)0.05%、硫酸アルミニウム0.5%、内添紙力剤(王子コーンスターチ社製、エースK)0.6%をそれぞれ添加して紙料を調製する。そして、このように調製された紙料を用いて、長網抄紙機にて坪量165g/mの紙基材を得て、150kg/cmの線圧でスーパーカレンダー処理を施して紙基材を得る。
インク受容層用塗料の調製
合成非晶質シリカ(トクヤマ社製、ファインシールX−60:平均二次粒子径6.0μm)100部およびポリジアリルジメチルアンモニウムクロライド(センカ社製、ユニセンスCP103)20部に、バインダとしてのポリビニルアルコール(クラレ社製、クラレポバール PVA−135H)30部および水1500部からなる組成物を混合、攪拌することにより、インク受容層用塗料を調製する。
光沢層用塗料の調製
まず、次の方法により、無機層状化合物に、長鎖炭化水素置換アンモニウムイオンをインターカレートさせた化合物を調製する。
すなわち、無機層状化合物としてのNaモンモリロナイト(陽イオン容量115meq./100g)を準備し、Naモンモリロナイト160gを80℃の水10リットルに分散させて、1時間攪拌してモンモリロナイト分散液を得る。次いで、ドデシルアミン42.20gおよび濃度10%の塩酸83.2gを含有する水溶液3リットルを、モンモリナイト分散液に加えさらに同温度(80℃)で1時間撹拌する。そして、室温に冷却後に析出物を濾過、洗浄し、固形分濃度が10%になるように再度水を加え、80℃昇温して1時間攪拌することにより、モンモリロナイトを十分に膨潤させ、無機層状化合物に、長鎖炭化水素置換アンモニウム塩が、イオンの形態でインターカレートした化合物(以下、「アンモニウム膨潤モンモリロナイト」とする。)を得る。なお、本実施例では、ドデシルアミンの添加量は、Naモンモリロナイトの陽イオン交換容量に対して、1.24当量である。
次いで、上記にて得られたアンモニウム膨潤モンモリロナイトを用いて、有機高分子化無機層状化合物を調製する。
すなわち、上記のアンモニウム膨潤モンモリロナイトの水分散液1000gを、80℃で1時間撹拌する。そして、撹拌後の溶液にジアリルジメチルアンモニウムクロライドの60%溶液を133g加え、さらに80℃で1時間撹拌を行い、反応液の温度を70℃とし、反応液に25%の過硫酸アンモニウム水溶液5gを1時間にわたり滴下する。そして、滴下終了後、2時間反応を続けることにより、有機高分子化無機層状化合物を得る。
そして、系内を室温に冷却後に析出物を濾過、洗浄し、固形分濃度が10%となるように再度水を加える。そして、得られる有機高分子化無機層状化合物の水分散液を1000部(固形分換算で100部となる)、分散剤としてのポリアクリル酸ソーダ(東亜合成社製、アロンT−40)0.5部およびバインダとしてのポリアクリル酸エステル(日本ゼオン株式会社製、Nipol Lx814、固形分濃度46%)50部(固形分換算で23部となる)を水中で混合、攪拌することにより、光沢層用塗料を調製する。
インクジェット記録媒体の製造
上記により得られる基材に、上記にて調製されるインク受容層用塗料を、乾燥重量で12g/mになるように、エアーナイフコーターで塗工して乾燥することにより、インク受容層を形成する。そして、インク受容層の上に、上記にて調製される光沢層用塗料を、ロールコーターを用いて塗工し、未乾燥下に直ちに表面温度が75℃の鏡面ドラムで圧着、乾燥させてインクジェット記録媒体(インクジェット記録用シート)を得る。本実施例では、光沢層の塗工量は乾燥重量で約4g/mである。
そして、得られるインクジェット記録媒体について、上記した方法により、光沢性、印字にじみ、印字濃度、インクドット真円性および顔料インクの記録適性(インク吸収性)の各評価を行う。結果を表2に示す。
実施例2〜6、比較例1,2
光沢層用塗料に含有させる有機高分子化無機層状化合物を調製する際に、長鎖炭化水素置換アンモニウムイオンを構成する化合物として、ドデシルアミン42.20部の代わりに、表1に示す各アミン化合物を表1に示す添加量にて用いる以外は実施例1と同様にして、インクジェット記録媒体を製造し、実施例1と同様に評価する。結果を表2に示す。各実施例、比較例における光沢層の塗工量は、乾燥重量で、それぞれ、約3g/m(実施例2)、約4g/m(実施例3)、約4g/m(実施例4)、約4g/m(実施例5)、約5g/m(実施例6)、約3g/m(比較例1)、約4g/m(比較例2)である。
なお、実施例2〜6においては、光沢層に含有される顔料は、無機層状化合物中に本発明所定の重合性アンモニウムイオン含有単量体の重合体がインターカレートする構成となる。その一方で、比較例1,2においては、無機層状化合物への重合性アンモニウムイオン含有単量体の重合体のインターカレーションは、ほとんど起こらない結果となる。
実施例7〜11、比較例3,4
光沢層用塗料に含有させる有機高分子化無機層状化合物を調製する際に、長鎖炭化水素置換アンモニウムイオンを構成する化合物として、ドデシルアミン42.20部および濃度10%の塩酸83.2部の代わりに、表1に示す各アンモニウム塩を表1に示す添加量にて用いる以外は実施例1と同様にして、インクジェット記録媒体を製造し、実施例1と同様に評価する。結果を表2に示す。各実施例、比較例における光沢層の塗工量は、乾燥重量で、それぞれ、約4g/m(実施例7)、約5g/m(実施例8)、約5g/m(実施例9)、約6g/m(実施例10)、約7g/m(実施例11)、約5g/m(比較例3)、約7g/m(比較例4)である。
なお、実施例7〜11においては、光沢層に含有される顔料は、無機層状化合物中に本発明所定の重合性アンモニウムイオン含有単量体の重合体がインターカレートする構成となる。その一方で、比較例3,4においては、無機層状化合物への重合性アンモニウムイオン含有単量体の重合体のインターカレーションは、ほとんど起こらない結果となる。
比較例5
光沢層用塗料を調製する際に、有機高分子化無機層状化合物に代えて、合成非晶質シリカ(トクヤマ社製、ファインシールX−60:平均二次粒子径6.0μm)を用いる以外は、実施例1と同様にして、インクジェット記録媒体を製造し、実施例1と同様に評価する。結果を表2に示す。比較例5における光沢層の塗工量は、乾燥重量で約4g/mである。
実施例12,13、比較例6,7
光沢層用塗料を調製する際における、バインダとしてのポリアクリル酸エステルの使用量を50部(固形分換算では23部となる)から表2に示す各量に変更する以外は、実施例1と同様にして、インクジェット記録媒体を製造し、実施例1と同様に評価する。結果を表2に示す。なお、表2におけるバインダ量は、固形分換算での添加量である。また、各実施例、比較例における光沢層の塗工量は、約2g/m(実施例12)、約8g/m(実施例13)、約2g/m(比較例6)、約10g/m(比較例7)である。
Figure 2008201110
Figure 2008201110
なお、表2には、光沢層中において、無機層状化合物が、その層間に本発明所定の重合性アンモニウムイオン含有単量体の重合体がインターカレートした状態で存在しているか否か、すなわち、光沢層中における、有機高分子化無機層状化合物の有無についても併せて示す。本実施例においては、有機高分子化無機層状化合物の存在が、はっきりと確認できるものを「有り」と評価し、一方で、ほとんど確認できないものを「無し」と評価する。結果を表2に示す。
表2に示すように、本発明所定の有機高分子化無機層状化合物を用いて光沢層を形成することにより、光沢性、印字にじみ、印字濃度、インクドット真円性および顔料インクの記録適性(インク吸収性)の全てにおいて良好なインクジェット記録媒体を得ることができる(実施例1〜11,12,13)。
一方、無機層状化合物および重合性アンモニウムイオン含有単量体を用いているものの、有機高分子化無機層状化合物が形成されない場合には、各特性に劣る結果となる(比較例1〜4)。なお、これら比較例1〜4において、有機高分子化無機層状化合物が形成されない理由としては、重合性アンモニウムイオン含有単量体を添加する前に用いるアミンまたはアンモニウム塩の無機層状化合物への膨潤が不十分であることに起因すると考えられる。
また、有機高分子化無機層状化合物の代わりに、合成非晶質シリカを用いると、光沢性に劣る結果となる(比較例5)。さらに、光沢層中に含有させるバインダ量が少なすぎる場合には、印字にじみ、ドット真円性、顔料インクの記録適性(インク吸収性)に劣る結果となり、一方、多すぎる場合には、光沢性に劣るとともに、印字濃度が低下する結果となる(比較例6,7)。

Claims (4)

  1. 基材上に、インク受容層と、前記インク受容層上に設けられた光沢層と、を有するインクジェット記録媒体であって、
    前記光沢層が、無機層状化合物の層間に、重合性アンモニウムイオン含有単量体の重合体がインターカレートした有機高分子化無機層状化合物を含む顔料と、バインダと、を含有し、
    前記光沢層における前記バインダの含有量が、前記有機高分子化無機層状化合物100重量部に対して、3〜70重量部であるインクジェット記録媒体。
  2. 前記インク受容層が、無機層状化合物の層間に、RNH 、RNH 、R(CH、およびR(CHから選択される少なくとも一種のアンモニウムイオンがインターカレートした有機化無機層状化合物を含む顔料と、バインダと、を含有し、
    前記インク受容層における前記バインダの含有量が、前記有機化無機層状化合物100重量部に対して、1〜100重量部である請求項1に記載のインクジェット記録媒体。
    (ただし、Rは炭素数8〜20の飽和炭化水素、R、Rは炭素数6〜12の飽和炭化水素、Rは炭素数8〜20の飽和炭化水素、R、Rは炭素数8〜20の飽和炭化水素である。)
  3. 前記無機層状化合物が、モンモリロナイト、サポナイト、ヘクトライト、バイデライト、スティブンサイト、ノントロナイト、バーミキュライト、ハロイサイト、マイカおよびベントナイトから選択される少なくとも一種である請求項1または2に記載のインクジェット記録媒体。
  4. 前記有機高分子化無機層状化合物を構成する前記アンモニウムイオン含有単量体が、下記式(1)で表される第4級アンモニウムイオンを含有する化合物である請求項1〜3のいずれかに記載のインクジェット記録媒体。
    〔CH=C(R)CH(R …(1)
    (ただし、上記式(1)中、Rは、水素原子、−CHまたは−C、Rは、それぞれ、−CH、−C、−Cまたは−Cである。)
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