以下、本発明を具体化した一実施形態を図1〜図9に従って説明する。
図1は、外装ケースを取り外した状態のインクジェット式記録装置の平面図を示す。
流体噴射装置としてのインクジェット式記録装置(以下、単にプリンタ11という)は、上側(図1では紙面手前側)が開口する略直方体形状の箱体からなる本体ケース12内を有する。本体ケース12内には、プラテン13が主走査方向(図1における左右方向)に沿って延びるように架設されている。ターゲットとしての記録媒体(図示しない)は、プラテン13に支持された状態で、紙送り手段(図示しない)を介して副走査方向(図1における上下方向)に搬送される。
また、本体ケース12内には、棒状のガイド軸14が、その軸方向を主走査方向に一致させた状態でプラテン13と平行に延びるように架設されている。キャリッジ15はその後部(図1における上側部分)にガイド軸14が貫挿されるとともに、ガイド軸14に対しその軸方向に沿って往復移動可能な状態に支持されている。本体ケース12の後部において主走査方向に所定距離離れた二位置にそれぞれ軸支された一対のプーリ16a,16bには、タイミングベルト17が巻き掛けられており、キャリッジ15はその背面側(図1では上側)部分にてタイミングベルト17に固定されている。図1において、右側のプーリ16aは、本体ケース12の背面右端寄り位置に配設されたキャリッジモータ18の駆動軸に連結されており、キャリッジモータ18が正逆転駆動されることにより、タイミングベルト17を介してキャリッジ15はガイド軸14に沿って往復移動する。
キャリッジ15の下部には、流体としてのインクを噴射する流体噴射手段としての記録ヘッド20が設けられている。また、キャリッジ15上には、複数のバルブユニット21が搭載されている。本実施形態では、バルブユニット21はインク色毎に1つずつ計4つ設けられており、各バルブユニット21により、それぞれブラック、イエロー、マゼンタ及びシアンの各インクが圧力調整されて記録ヘッド20へ供給される。
本体ケース12の一端部(図1における右端部)に設けられたカートリッジホルダ22には、インク色に対応した4個の流体供給源(流体貯留手段)としてのインクカートリッジ23が着脱可能に装填されている。各カートリッジホルダ22は、それぞれインク供給流路24を通じて各バルブユニット21に接続されている。
図1に示すように、インクカートリッジ23の装填位置の上側には、加圧ポンプ装置25が本体ケース12に支持された状態で設けられている。加圧ポンプ装置25は、大気を吸引して加圧空気として排出することが可能であり、その排出された加圧空気は、加圧チューブ27を通じて大気開放弁28に供給される。
大気開放弁28は、4本の空気供給チューブ29を通じてカートリッジホルダ22に接続されており、インクカートリッジ23内に加圧空気が導入される。なお、大気開放弁28は、内部の室を大気に開放する開弁状態と、該室の大気との連通を遮断する閉弁状態に切り換えられる弁であり、加圧ポンプ装置25が駆動されるときには閉弁される。
また、キャリッジ15が非印刷時の待機位置であるホームポジション(図1における右寄りの位置)に位置したときの直下に相当する位置には、メンテナンス装置31が設けられている。メンテナンス装置31は、キャップ32とワイパ33を備える。キャップ32とワイパ33は、それぞれ昇降可能に構成されている。キャップ32は、記録ヘッド20のノズル内のインクの乾燥を防止するために非印刷時に上昇して記録ヘッド20をキャッピングする。また、記録ヘッド20のノズルからインクを吸引して行われるクリーニング(チョーククリーニングを含む)を行うときにも、キャップ32は上昇して記録ヘッド20をキャッピングする。また、ワイパ33は、上昇した状態でキャリッジ15が移動することで、記録ヘッド20のノズル開口面を払拭する。ワイパ33は、記録ヘッド20のクリーニング終了後の所定時期に上昇して払拭が行われ、ノズル開口面に付着したインクを拭き取ったりノズル内のインクメニスカスを整えたりする。また、加圧チューブ27から分岐した加圧チューブ34がキャップ32に接続されており、加圧空気がキャップ32内に導入可能に構成されている。加圧チューブ34の途中には電磁開閉弁35が設けられている。
図3は、記録装置におけるインク供給システム及びクリーニングシステム(クリーニング装置)の基本構成を示す。ここで、図3に示したインク供給システムは、空気加圧供給タイプを示している。なお、図3では、1色分のインク供給システムのみを示している。
加圧ポンプ装置25は、加圧ポンプモータ41と加圧ポンプ42とを備える。加圧ポンプモータ41が正転駆動されることにより加圧ポンプ42は駆動される。加圧ポンプ42の吐出口とインクカートリッジ23とを接続する加圧チューブ27の途中に設けられた大気開放弁28は、不図示のバネの付勢により常には閉弁し、加圧ポンプモータ41が逆転駆動されると、不図示の押圧部が、大気開放弁28のレバーをバネの付勢に抗して押すことで、開弁される。
インクカートリッジ23は、気密状態に形成されたケース23aを有し、このケース23a内には、袋状に形成された可撓性フィルムよりなるインクパック23bが収容されている。インクカートリッジ23が装填された状態では、加圧チューブ27がケース23aとインクパック23bとの間の空気室43と連通するように接続され、加圧ポンプ装置25から送られた加圧空気は、空気室43に導入される。なお、4つのインクカートリッジ23内の各インクパック23bには、互いに異なる色のインクがそれぞれ封入されている。
また、図3に示すように、インクカートリッジ23がカートリッジホルダ22に装填された状態では、インクパック23bのインク導出部23cがインク供給流路24と接続される。加圧ポンプから圧送された空気がケース23a内の空気室43に導入されてインクパック23bが押し潰されることでインクパック23b内から所定圧に加圧されたインクがバルブユニット21に供給される。バルブユニット21は、閉塞弁としてのチョーク弁45(差圧弁)および減圧弁46を内蔵し、バルブユニット21内に供給されたインクは、チョーク弁45を通って減圧弁46に送られ、減圧弁46によって大気圧より若干低い所定インク圧(負圧)に減圧され、その減圧されたインクが記録ヘッド20に供給される。チョーク弁45は、上流側のインクの圧力と、下流側のインクの圧力との差圧によって開閉される差圧弁により構成される。チョーク弁45及び減圧弁46は、各インク色のインク流路ごとにそれぞれ設けられている。
バルブユニット21と記録ヘッド20とを接続するインク供給流路47の途中には、インク中の異物を除去するフィルタ49を有するフィルタ装置48が設けられている。インクカートリッジ交換時にインク供給流路24に混入した気泡や、インク供給流路24等を構成する樹脂製部品(チューブ等)をガス透過した空気(酸素や窒素)に起因してインク中に析出し成長した気泡は、フィルタ49に捕捉される。
記録ヘッド20は、ノズル開口面20aに開口するノズル20bと、ノズル20bに連通するインク室20cとを有する。インク室20cは、記録ヘッド20内に一部形成されたインク供給流路47と連通している。また、記録ヘッド20は、インク室20cと対応する位置に吐出駆動素子51を内蔵し、吐出駆動素子51が駆動された際の吐出力(吐出圧)がインク室20c内のインクに加わることで、ノズル20bからインクが吐出される。なお、吐出駆動素子51としては、振動による吐出圧でインク滴を吐出させる圧電振動素子又は静電駆動素子、あるいはインクに熱を与えて局所的に膜沸騰させて発生した気泡の成長・収縮を利用してインク滴を噴射させる電気熱変換素子などを採用できる。
また、図3に示すように、メンテナンス装置31は、キャップ32と、キャップ32を昇降させる昇降機構52と、キャップ32の底部から延びる排出チューブ54の途中に設けられた吸引ポンプ55と、吸引ポンプ55を駆動するための吸引ポンプモータ56とを備える。キャップ32は、昇降機構52に連結され、電動モータ53の動力により昇降機構52を介して昇降する。キャップ32が図3に示すキャッピング位置(上昇位置)に配置された状態では、キャップ32は記録ヘッド20のノズル開口面20aにノズル20bを囲む状態で当接する。また、排出チューブ54はキャップ32内と連通状態に接続されており、その一端部は廃液タンク57内に挿入されている。なお、昇降機構として、キャリッジ15がホームポジションまで移動する途中で、昇降機構側のレバーを押し込んでスライダを斜め上方へ移動させることで、スライダ上に支持されたキャップ32がキャッピング位置まで上昇する機械的駆動式の昇降機構を採用してもよい。
吸引ポンプ55は、吸引ポンプモータ56の動力により駆動される。記録ヘッド20のノズル開口面20aにキャップ32が当接したキャッピング状態の下で、吸引ポンプ55が駆動されることで、ノズル20b内の増粘したインク等が吸引されて廃液タンク57内に排出されるようになっている。なお、吸引ポンプモータ56は、吸引ポンプ専用モータを用いる構成の他、記録媒体を搬送するための搬送機構を構成する搬送ローラを駆動する紙送りモータ(図示せず)を流用した構成とし、紙送りモータの動力を利用して吸引ポンプ55を駆動する構成も採用できる。この場合、紙送りモータが用紙搬送方向と逆方向に逆転駆動されるときに、吸引ポンプ55が駆動され、紙送りモータが正転駆動されるときに吸引ポンプ55はレリース状態とされるように構成する。
ここで、チョーククリーニングは、インクカートリッジ23からのインクの加圧供給が停止された状態で、吸引ポンプ55が駆動されて、記録ヘッド20に当接したキャップ32内に負圧が導入することにより行われる。キャップ32内に負圧が導入されてノズル20bに吸引力が及ぶと、ノズル20bからインクが吸引されてインク供給流路47,78内のインクが減圧し、チョーク弁45はその上流側と下流側との差圧により閉弁する。チョーク弁45よりも下流側領域が十分減圧された状態で、加圧ポンプ42が駆動されてインクの加圧供給が開始されると、チョーク弁45が開弁し、インクが強い流速で一気に流れてノズル20bから吸引排出される。この強力なクリーニングにより、フィルタ49等に捕捉された気泡等も排出される。よって、本実施形態では、吸引手段は、キャップ32、排出チューブ54、吸引ポンプ55、吸引ポンプモータ56等により構成される。
また、減圧弁46は、記録ヘッド20のノズル20bからインクが噴射されて内部の圧力室のインク量が減少すると開弁する弁であり、加圧供給されたインクを減圧して記録ヘッド20に所定インク圧(負圧)のインクを供給する。減圧弁46は、下流側が減圧したときに開弁し、上流側からの加圧によっては開弁しない。なお、チョーク弁45及び減圧弁46の具体的な構成については後述する。
本実施形態におけるクリーニングシステムは、上記のチョーククリーニング機能の他、チョーククリーニング時の減圧によってインク中に発生した微小な気泡を、インクを加圧保持することで消失させる加圧処理機能を備えている。加圧ポンプ装置25に接続された加圧チューブ27の途中から分岐した加圧チューブ34は、キャップ32にその内部と連通する状態に接続されている。加圧チューブ34の途中には、電磁開閉弁35が設けられている。電磁開閉弁35が開弁すると加圧ポンプ装置25の吐出口とキャップ32内部とが連通状態になり、電磁開閉弁35が閉弁すると加圧ポンプ装置25の吐出口とキャップ32内部とが連通が遮断されるようになっている。よって、加圧ポンプ装置25が駆動された状態で電磁開閉弁35が開弁されると、加圧空気がキャップ32内に供給されるように構成されている。電磁開閉弁35は、インクシーケンスの中で、チョーククリーニング時に閉弁され、加圧処理時に開弁されるようになっている。また、加圧処理時には、チョーククリーニング時に減圧した領域、すなわちチョーク弁45よりも下流側全域を加圧するようにしている。減圧弁46は、上流側・下流側を問わず加圧によっては開弁しないので、インク供給流路の一端側から加圧した場合、減圧弁46を挟んで反対側の流路領域へは加圧力が及ばない。そのため、加圧処理では、キャップ32内への加圧空気の導入によるノズル20b側からの加圧(下流側からの加圧)と、加圧ポンプ42の駆動による上流側からの加圧とを行う。よって、本実施形態では、加圧手段は、加圧ポンプ装置25(加圧ポンプモータ41、加圧ポンプ)、加圧チューブ34、電磁開閉弁35、キャップ32、加圧チューブ27及び空気室43等により構成される。
また、図3に示すように、インクカートリッジ23には、不揮発性メモリ59及び端子60が取り付けられている。カートリッジホルダ22には、インクカートリッジ23側の端子60と対応する位置に端子61が設けられており、インクカートリッジ23をカートリッジホルダ22に装填した状態で、端子60と端子61が互いに接触する構成となっている。
プリンタ11は、装置全体を制御するコントローラ62を備えている。コントローラ62は、出力系として、加圧ポンプモータ41、電動モータ53、吸引ポンプモータ56及び電磁弁開閉弁58と電気的に接続されている。コントローラ62は、所定シーケンスに基づいて、加圧ポンプモータ41、電動モータ53、吸引ポンプモータ56及び電磁弁開閉弁58を制御する。また、コントローラ62は、インクカートリッジ23がカートリッジホルダ22に装填された状態において端子60,61の接続を介して不揮発性メモリ59から情報を読み取ることが可能になっている。なお、コントローラ62は、記録ヘッド20のノズルから吐出するインク滴の質量(重量)を色別に計数して、その各計数値から色別のインク消費量を取得しており、インク残量からインク消費量を減算して求めた新規のインク残量を、例えばプリンタ11の電源遮断時に不揮発性メモリ59に書き込む構成となっている。また、プリンタ11には、吸引ポンプ55の回転位置を検出する回転位置センサ63を備え、コントローラ62は回転位置センサ63から入力される検出信号に基づき吸引ポンプ55の回転位置を把握する。また、コントローラ62は、加圧ポンプモータ41を駆動して空気室43をインク供給圧に応じた目標の空気圧(目標値)になるよう加圧する場合、まずインク残量から空気室43の容積(空気室容積)を演算し、空気室容積と目標空気圧とから決まる空気供給量に応じた回転数だけ加圧ポンプモータ41を駆動させることで、インク供給圧を調整している。
図2は、キャップと吸引ポンプとを示す側面図である。キャップ32は、上面が開口した四角箱状のキャップホルダ32aと、キャップホルダ32aの上部周縁部に形成されたエラストマ等の弾性材料よりなる環状のシール部32b(封止壁)とを有している。キャップホルダ32aとシール部32bは、例えば二色成形で形成されている。キャップ32がキャッピング位置にある図2に示す状態では、キャップ32は記録ヘッド20のノズル開口面20aにノズル20bを囲む状態で当接する。
図2に示すように、キャップ32の底部に接続された排出チューブ54の途中には、吸引ポンプ55が設けられている。吸引ポンプ55は、本実施形態では、チューブポンプにより構成されている。吸引ポンプ55は、円筒状のポンプケース65を有しており、ポンプケース65内にはポンプホイール66が駆動軸67を中心に回動可能に収容されている。そして、このポンプケース65内に、排出チューブ54の途中の中間部54aがポンプケース65の内周壁65aに沿うよう引き回されて収容されている。排出チューブ54は、図2に示すようにポンプケース65の内周壁65aに沿って「Ω」字形状を描くように引き回しされている。
ポンプホイール66の周縁寄りの箇所には、円弧状のローラ案内溝66aが形成されている。ローラ案内溝66aは、その一端から他端に向かうほど、駆動軸67から径方向へ遠ざかる円弧状に延びている。ローラ案内溝66a内には、ローラ69(プーリ)の回動軸69aが挿通支持されている。なお、回動軸69aは、ローラ案内溝66a内を摺動自在になっている。
そして、ポンプホイール66を、正転方向(図2の矢印方向)に回転させると、ローラ69がローラ案内溝66aの一端側(ポンプホイール66の外周側)に移動して、ローラ69が排出チューブ54の一部を押圧する状態になる。したがって、ポンプホイール66を正転方向に回転させた場合には、ローラ69が排出チューブ54の中間部54aをキャップ32側から排出側へ順次押し潰しながら(押圧しながら)回転移動し、この回転移動により、吸引ポンプ55よりもキャップ32側の排出チューブ54の内部が減圧されるようになっている。
ここで、本実施形態の吸引ポンプ55は、チューブ取り回し形状が「Ω」形であるため、チューブが二本並んでポンプケース65から外方へ延出する部分の内側(駆動軸67側)には、それら二本のチューブの間に括れ(凹状部)ができている。この括れ部分はローラ69によりチューブを押し潰すことができないリークポイントLPとなる。そして、コントローラ62は、前述の回転位置センサ63の検出信号に基づき取得した吸引ポンプ77の回転位置情報から、ローラ69がリークポイントLPを避けた位置で吸引ポンプ55の回転を停止させることが可能となっている。ローラ69がリークポイントLPを避けた回転位置で吸引ポンプ55が停止することにより、排出チューブ54の中間部54aがローラ69に押圧されて閉塞される。
次に、チョーク弁45の構造について説明する。
図4(a)、(b)に示すように、チョーク弁45は、合成樹脂からなる基材70を有し、この基材70の一側面には凹部71が形成されている。この凹部71の底面には、基材70に貫通形成された導入路72が開口している。この導入路72は、インクカートリッジ23に接続されたインク供給流路24と連通している。また、凹部71の底面には、突部73が形成され、該突部73の先端面には導出路74が開口している。この導出路74は、基材70に貫通形成されているとともに、減圧弁46側(記録ヘッド20側)に延びるインク供給流路78(図3を参照)と連通している。
基材70の一側面には、可撓性のフィルム75が凹部71側に弛みを持たせた状態で固着されて、該フィルム75により凹部71が密閉状態で封止されている。これにより、凹部71の内面とフィルム75とで密閉状態に囲まれた弁室76が形成されている。そして、チョーク弁45は、導入路72側からインクで加圧されているときは、その差圧によりフィルム75が、図4(a)に示すように、突部73の先端面から離間した開弁状態となる。また、チョーク弁45は、導入路72側からインクの加圧が停止された状態で、吸引ポンプ55が駆動されて導出路74側のインクが減圧されると、その差圧によりフィルム75が、図4(b)に示すように、突部73の先端面に当接した閉弁状態となる。また、吸引中でも、導入路72側からインクで加圧されていると、開弁状態になる。
次に、減圧弁46の構成について詳述する。
図5(a)、(b)に示すように、減圧弁46は、合成樹脂からなる基材80を備えている。基材80の一側面には凹部81が形成され、その他側面には凹部82が形成されている。凹部82の側面には、基材80に貫通形成された導入路83が開口している。この導入路83は、インク供給流路78(図3を参照)を通じてチョーク弁45の導出路84と連通している。また、凹部81の底面には、基材80に貫通形成された導出路84が開口している。この導出路84は、記録ヘッド20側に延びるインク供給流路47(図3を参照)と連通している。
凹部82の開口には、該開口を塞ぐように、ばね受け座として機能する蓋体85が嵌着されている。そして、基材80の他側面には、蓋体85の上から凹部82を覆うようにフィルム86が固着されている。これにより、凹部82の内面とフィルム86とで密閉状態に囲まれたインク供給室87が形成されている。
基材80の一側面には、可撓性のフィルム88が、凹部81側に弛みを持たせた状態で固着されているとともに、該フィルム88により凹部81が密閉状態に封止されている。これにより、凹部81の内面とフィルム88とで密閉状態に囲まれた弁室としての圧力室89が形成されている。フィルム88における凹部81側と反対の面の中央部には、該凹部81の開口よりも幅狭の受圧板90が固着されている。
圧力室89とインク供給室87との間には、両室87,89を区画する隔壁91が設けられているとともに、該隔壁91には、圧力室89とインク供給室87とを連通する連通孔92が貫通形成されている。インク供給室87には、弁体94が、その板状のベース部94aと蓋体85との間に圧縮バネ93が介装された状態で、かつそのベース部94aから延設された棒状のロッド部94bを連通孔92に挿通する状態で収容されている。この弁体94のロッド部94bの先端は、圧力室89内におけるフィルム88の近接位置まで達している。
弁体94のベース部94aにおける隔壁91側の面には、ロッド部94bを囲むように環状のシール部材95が、該ベース部94aと一体に形成されている。弁体94は、圧縮バネ93により付勢されて隔壁91のシール部材95に圧接されると、減圧弁46は閉弁する。
そして、減圧弁46は、圧力室89内のインクが導出路84から記録ヘッド20側へ供給されて、該圧力室89内のインク量が減少すると、該圧力室89内に負圧が発生する。この負圧により、受圧板90がフィルム88とともに凹部81側に変位動作して弁体94のロッド部94bの先端に当接して、さらに圧縮バネ93の付勢力に抗して受圧板90によりロッド部94b(弁体94)がフィルム88を介して蓋体85側に押圧されると、シール部材95と隔壁91とが離間した開弁状態になる。すると、インク供給室87内のインクが連通孔92を介して圧力室89内に流入し、これにより圧力室89内の負圧が少し小さくなると、圧縮バネ93の付勢力が打ち勝って弁体94が閉弁方向へ移動し、再び該弁体94によって連通孔92が閉塞された状態(閉弁状態)となる。このように減圧弁46は、閉弁状態と開弁状態とを繰り返すことにより、圧力室89内の圧力が一定に保たれるようになっている。なお、減圧弁46は、減圧弁機能を有する限りにおいて、逆止弁、差圧弁など他の公知の弁構造を有する弁を用いてもよい。
次に、プリンタ11の電気的構成を説明する。図6は、プリンタ11の電気的構成を示すブロック図である。プリンタ11はコントローラ62を備え、そのコントローラ62はマイクロコンピュータ100、ヘッド駆動回路101、モータ駆動回路102〜104及び弁駆動回路105を有している。マイクロコンピュータ100には、出力系として上記各駆動回路101〜105が接続されるとともに、入力系として、回転位置センサ63が接続されている。
マイクロコンピュータ100は、ハードウェアとしては、基板上にCPU、ASIC、ROM、RAM及び不揮発性メモリ、クロック回路、各種カウンタ等が実装された構成となっている。そして、マイクロコンピュータ100は、ハードウェアとソフトウェアとの少なくとも一方によりそれぞれ実現される機能部分として、制御部110、演算部111、タイマ112、クリーニングタイマ113、クリーニング条件設定部114(条件取得手段、クリーニング条件設定手段)、加圧条件設定部115、インク残量取得部116及び計時手段117を備えている。本実施形態では、制御部110はASIC及びCPUにより構成され、演算部111はCPUにより構成されている。タイマ112及びクリーニングタイマ113は、クロック回路からのクロック信号等に基づき計数処理を行うカウンタ、又はタイマ処理用のプログラムを実行するCPUにより構築される。クリーニング条件設定部114及び加圧条件設定部115は、RAM又は不揮発性メモリ等のメモリの所定記憶領域に記憶された条件設定データ(例えばテーブルデータ)を参照して設定条件を演算するCPUにより実現される。計時手段117は、プリンタ11に内蔵されたリアルタイムクロック、又はプリンタ11と通信ケーブルで接続されたホストコンピュータ(図示せず)から計時情報を取得するCPUにより構成される。
制御部110は、プリンタ11がホストコンピュータから受信した印刷データ(ビットマップデータ)をヘッド駆動回路101へ転送して、ヘッド駆動回路101に印刷データに基づき吐出駆動素子51を駆動させて、記録ヘッド20のノズル20bからインク滴を噴射させる。また、制御部110は、ヘッド駆動回路101に印刷とは関係のないインク滴を噴射するフラッシングのための駆動データを送信する。
また、制御部110はモータ駆動回路102を介して加圧ポンプモータ41を駆動制御する。加圧ポンプモータ41が正転駆動されると、加圧ポンプ42がポンプ駆動され、加圧チューブ27を通じてインクカートリッジ23内の空気室43に空気が供給される。制御部110は、インク残量取得部116が取得したインク残量に基づき空気室43の容積を演算し、その演算した容積から空気室43を目標圧にするために必要なポンプ回転数を演算し、その演算したポンプ回転数に応じた回転数だけ加圧ポンプモータ41を駆動させる。
また、制御部110は、クリーニングスイッチ(図示せず)の操作指令信号と、クリーニングタイマ113からの経過時間信号とのうちいずれか一方を受け付けたとき、あるいは未使用のインクカートリッジ23を検出したときに、キャリッジ15をホームポジションに配置して、メンテナンス装置31にクリーニングを行わせる。制御部110は、モータ駆動回路103を介して吸引ポンプモータ56を駆動制御する。
さらに、制御部110は、弁駆動回路105を介して電磁開閉弁35を励消磁制御して開弁又は閉弁させる。電磁開閉弁35は、少なくともチョーククリーニング時には閉弁され、クリーニングシーケンスにおいてチョーククリーニング直後に実施される加圧処理の際に開弁される。
クリーニングタイマ113は、前回のクリーニング時からの経過時間を計時しており、制御部110はプリンタ11の電源投入時にクリーニングタイマ113から取得した経過時間に応じたクリーニング条件の設定を、クリーニング条件設定部114に指令する。
クリーニング条件設定部114は、制御部110から指令を受けると、クリーニングタイマ113が計時した経過時間に基づき、RAMの所定記憶領域から読み出したクリーニング条件設定テーブルを参照して、その経過時間に対応するクリーニング条件を設定する。クリーニング条件設定テーブルには、経過時間が長いほど強力なクリーニングを実施するように、経過時間に応じたクリーニングのランク(強度)に分けられ、そのランクに応じた強度のクリーニングが設定される。クリーニングの強度が決まると、その強度に応じて吸引ポンプ55の回転速度と回転時間が設定される。
加圧条件設定部115は、クリーニングシーケンスの一工程として、チョーククリーニング終了後に実施する加圧処理(インク加圧処理)における加圧条件を設定する。加圧条件を設定する際に用いるパラメータとしては、クリーニング条件、インクカートリッジ交換時からの放置時間(累積経過時間)、インク種、インク流路形状、温度などがある。加圧処理は、チョーククリーニング時の減圧によりインク中に発生した微小気泡を加圧によりインク圧を上昇させてインク中に吸収(再溶解)させる処理である。
制御部110は、端子60,61の接続を介して不揮発性メモリ59にアクセス可能である。不揮発性メモリ59には、インク残量、インクカートリッジ交換時からの放置時間及びインク種などの情報が記憶されている。インク種には、染料系インクと顔料系とがあるが、その他に、同じ染料系でも、インクの泡立ち易さに応じて種類分けされている。例えば水系インクに比べ有機溶剤系インクの方が泡立ち易い。また、インク中に添加されている界面活性剤等の添加剤の種類や量による泡立ち易さでも種類分けされている。
インク残量取得部116は、印刷データ(ビットマップデータ)に基づいて記録ヘッド20のノズル20bからインク滴を噴射したインク噴射回数(インク滴数)をインク色別に計数するインク消費カウンタと、インク消費カウンタで計数された計数値を用いて、インク消費量を演算するインク消費量演算処理を実行する。インク消費量は、インク噴射回数に所定の係数を乗じて重量(質量)として求めている。また、本実施形態では、ノズルから噴射されるインク滴には大中小の3種類のサイズがあり、サイズ別にインク噴射回数をカウンタで計数し、計数されたインク噴射回数にインク滴サイズに応じた係数を乗じてサイズ別にインク消費量を求め、さらにサイズ別のインク消費量を加算して色別のインク消費量を演算する。なお、インク消費カウンタは、フラッシング時のインク噴射回数も計数する。
また、クリーニングによるインク消費量を、吸引ポンプ55の駆動回転数や駆動時間などから求める。クリーニングによるインク消費量は、クリーニング条件とインク消費量の関係を示すテーブルデータを参照して取得してもよい。インク残量取得部116は、インク噴射回数の計数値から求めたインク消費量と、クリーニングのインク消費量とを加算して、総インク消費量を求める。そして、プリンタ11の電源投入時にインクカートリッジ23の不揮発性メモリ59から読み込んだインク残量に、演算した総インク消費量を逐次減算することにより、現在のインク残量を求めている。そして、プリンタ11の電源遮断時に、RAMに一時記憶していた現在のインク残量を、インクカートリッジ23側の不揮発性メモリ59に書き込む。インク残量取得部116が演算等したインク残量は、前述のとおり、加圧ポンプモータ41の目標回転数(目標駆動量)を決定するために使用される。
計時手段117は、プリンタ11の電源投入されているときの経過時間と、プリンタ11の電源が遮断されている間の経過時間とを計時する。そして、プリンタ11の電源投入時に、電源遮断中に計時した経過時間を、不揮発性メモリ59から読み出した前回の電源遮断時のインクカートリッジ交換時からの放置時間に加算して、現時点における放置時間を求める。そして、電源投入されているときは、所定時間を計時する度にその計時時間を放置時間に加算して現在の放置時間を逐次更新する。そして、電源遮断時には、現在の放置時間を不揮発性メモリに59に書き込む。
また、コントローラ62内のメモリには、加圧条件設定部115が、加圧条件を決めるためのパラメータの一つであるインク流路形状のデータも記憶されている。インク流路形状はプリンタ11の機種等に応じて異なる。インク供給流路が、例えばストレート形状より屈曲形状(例えばL字形状)の方が、インクが流路壁面に衝突するなど泡立ちの要因が多く、この種の流路形状因子に応じてインク流路形状データは、インクの泡立ち易さに応じて種類分けされている。また、プリンタ11には、温度センサ(図示せず)が設けられ、制御部110は、温度センサから入力した温度検出値に基づいてインク供給流路内等のインク温度を把握する。仮に温度センサが環境温度を検出するためのものであっても、その環境温度はインク温度とみなしてよい。また、モータの発熱を検出する温度センサである場合でも、プリンタ11の電源投入時であれば、その検出温度は環境温度とみなせるので、インク温度として使用できる。この温度も、加圧条件を決めるパラメータの一つであり、例えば低温・中温・高温を含む3段階以上の複数段階に分けられている。この温度のパラメータに基づき、高温なほどインクは泡立ち易いと判断される。
次にコントローラ62が実行するクリーニングシーケンスについて説明する。
クリーニングシーケンスは、コントローラ62内のマイクロコンピュータ100が、メモリに記憶された図9にフローチャートで示すクリーニングシーケンスプログラムを実行することにより行われる。図7は、クリーニングシーケンス実行過程におけるインク圧と経過時間との関係を示すグラフである。また、図8は、クリーニングシーケンスが行われる過程におけるフィルタ室48a内の気泡の変化の様子を示す。
図7に示すように、クリーニングシーケンスでは、まず「本吸引」が行われてチョーククリーニングが実施される。次にチョーククリーニング終了後、インクカートリッジ23と記録ヘッド20との間のインク供給流路24,47,78内のインク圧を加圧する「加圧処理」が行われる。そして、最後にノズル20bからインクを少量吸引する「微量吸引」が行われる。このようなクリーニングシーケンスは、コントローラ62による以下の制御により行われる。なお、クリーニングシーケンスとともに、図7、図8を用いて、インク圧変化、及びインク供給流路(例えばフィルタ室48a)内の気泡の変化の様子についても説明する。なお、図7のグラフにおけるインク圧は、例えば図8におけるフィルタ室48aのインク圧を示す。
例えばプリンタ11の電源投入時にクリーニングタイマ113が計時した経過時間が、チョーククリーニングが必要な所定時間を超えていると、制御部110はクリーニング条件設定部114に指令して、クリーニング条件を設定させる。クリーニング条件設定部114は、クリーニングタイマ113の計時時間に基づきクリーニング条件テーブルを参照して、その時の経過時間に応じたクリーニング条件を設定する。クリーニング条件の設定により吸引ポンプ55の回転速度と回転時間が設定される。なお、ユーザによりクリーニングスイッチが操作されたときにも、制御部110からの指令に基づきクリーニング条件設定部114はクリーニング条件を設定する。いずれの場合も設定されたクリーニング条件は、チョーククリーニングが設定される(ステップS1)。
次にチョーククリーニングの前準備として、インクカートリッジ23の空気室43を大気開放して、インクカートリッジ23からのインク加圧供給を停止させる。すなわち、制御部110は、加圧ポンプモータ41を逆転駆動させて大気開放弁28を閉弁状態から開弁状態へ切り換えて、空気室43を大気に開放する(ステップS2)。空気室43が大気開放されることによりインクパック23bが加圧されなくなり、インクカートリッジ23からのインク加圧供給が停止される。もっとも、プリンタ11の電源投入時に加圧ポンプ装置25がまだ駆動される前で、空気室43が大気解放状態にあれば、この処理は省略される。
次に、制御部110は電動モータ53を正転駆動し、昇降機構52を介してキャップ32を上昇させる。この結果、キャップ32は、記録ヘッド20のノズル開口面20aにノズル20bを囲む状態で当接するキャッピング状態(図2、図3に示す状態)に配置される(ステップS3)。なお、キャッピングに当たり、キャリッジ15がホームポジションから離れた位置にあるときは、制御部110はキャリッジモータ18を駆動制御して、キャリッジ15をホームポジションに配置した後、このキャッピングが行われる。もっとも、電源投入時や印刷休止状態のときであって、既にキャッピング状態にあるときはこの処理は省略される。
この状態では、電磁開閉弁35は閉弁状態にある。また、メンテナンス装置31にキャップ32内を大気に開放させるための大気開放弁を備える場合、大気開放弁は閉弁状態にある。そして、この状態でチョーククリーニングを実施する(ステップS4)。チョーククリーニングは以下のように実施される。制御部110は、クリーニング条件設定部114が設定した条件に応じた回転速度及び回転時間で吸引ポンプ55を駆動すべく、それに応じた駆動速度及び駆動時間で吸引ポンプモータ56を駆動させる。吸引ポンプ55は図2における矢印方向に回転し、ローラ69が排出チューブ54の中間部54aを押し潰しながら回転することで、キャップ32内に負圧が導入される。
この結果、記録ヘッド20のノズル20bからインクが吸引され、減圧弁46の圧力室89内のインクが減少し始める。そして、減圧弁46の圧力室89の圧力が所定圧以下となることにより、減圧弁46が開弁する。この結果、減圧弁46の圧力室89へインクが流入し、その流入した分のインクがその上流側に位置するチョーク弁45の弁室76内から流出する。このチョーク吸引時は、インク供給流路24(チューブ)から導入されるインクが非加圧状態にあるとともに弁室76内のインクが減少し始める。
そして、図4(a)に示す開弁状態にあったチョーク弁45は、弁室76内のインク減少に伴う減圧によってフィルム75が弁室76の内側へ撓んで突部73に密接することで閉弁する。この閉弁後も、ノズル20bからインクが吸引され続けることにより、チョーク弁45の閉弁箇所から記録ヘッド20のノズル20bに至るまでのインク供給流路47内に負圧が十分蓄積される(減圧段階)。そして、負圧が十分蓄積された減圧状態の下で、制御部110は加圧ポンプモータ41の駆動を開始させて加圧ポンプ42の駆動を開始する。
この結果、加圧ポンプ42から加圧空気の送出が再開され、インクカートリッジ23からバルブユニット21へインクが加圧供給される。そして、チョーク弁45の導入路72を通じて弁室76にインクが加圧供給されると、フィルム75が突部73から離間してチョーク弁45は開弁する。
このチョーク弁45の開弁によって、弁室76及びその下流側の流路に蓄積されていた負圧を解消しようとして、上流側から一気にインクが流れ込み、瞬間的に流速の高められたインクが流れる。この結果、弁室76およびその下流のインク供給流路47,78内に滞留していた気泡や異物が、インクとともに一気に記録ヘッド20のノズル20bから排出される(排出段階)。その後、吸引ポンプ55の駆動時間が予め設定された総駆動時間に達すると、吸引ポンプモータ56の駆動が停止される。こうして図7のグラフに示す「本吸引」(チョーククリーニング)が終了する。
このチョーククリーニングにより、図8(a)に示すように、クリーニング前において、フィルタ室48aにおけるフィルタ49に捕捉されていた気泡B1は、図8(b)に示すように、チョーク吸引時のインク50の減圧により大きく膨張しつつフィルタ49を透過しようとする。このとき、インク50中にはその減圧により微小気泡B2が析出する。
そして、気泡B1が大きく膨張した状態で、加圧ポンプ42が再駆動されて上流側から送出された加圧インクの加圧力によりチョーク弁45が開弁すると、図8(c)に示すように、一気に下流へ流れてきたインクによって、気泡B1はフィルタ49から除去されるとともに下流へ押し流され、ノズル20bから一気に排出される。このとき減圧により膨張していた気泡B1は、インクから大きな抵抗力を受けるため、フィルタ49から確実に除去される。
そして、図8(d)に示すように、チョーククリーニング終了直後は、インク50中に微小気泡B2が残存する。微小気泡B2は、時間経過とともに消失するが、印刷できる程度に消失するためには、例えば5分以上の待機時間が必要である。この微小気泡B2を速やかに消失させるため、本実施形態では、クリーニングシーケンスにおいてチョーククリーニング終了後に、図7に示す「加圧処理」を行う。
吸引ポンプ55を、設定されたクリーニング条件に応じた回転速度及び回転時間で駆動すると、制御部110は、吸引ポンプモータ56の駆動を停止させて、チョーククリーニングを終了する。吸引ポンプ55の駆動が停止すると、キャップ32内が大気開放され、減圧弁46は閉弁する。
その後、図9におけるステップS5の空吸引を行う。すなわち、制御部110は、キャップ32内を大気開放した後、吸引ポンプモータ56の駆動を再開させ、ノズル20bからインクを吸引することなく、キャップ32内に滞留したインクをキャップ32外へ排出させる。なお、キャップ32内の大気開放は、キャップ32を退避位置へ移動させてノズル開口面20aから離間させるか、大気開放弁を有するメンテナンス装置31であれば、その大気開放弁を開弁させることにより行う。
吸引ポンプ55の駆動開始から所定の空吸引時間が経過するか、又は所定回転数の回転を終えると、制御部110は吸引ポンプ55の駆動を停止する。このとき制御部110は、回転位置センサ63からの検出信号を基に吸引ポンプ55の回転位置を把握し、ローラ69がリークポイントLPを避けた位置で吸引ポンプ55が停止するように吸引ポンプモータ56を駆動停止させる(ステップS7)。この結果、図2に示すように、吸引ポンプ55は、ローラ69が排出チューブ54の中間部54aを押し潰した状態で停止し、キャップ32内の排出チューブ54を通じた大気との連通が遮断される。空吸引後、ワイパ33でノズル開口面20aを払拭し、付着インクを拭き取るとともに、ノズル20b内のインクメニスカスが整えられる。そして、ワイピング終了後、ワイピング又は空吸引のために下降していたキャップ32を上昇させてキャッピング位置に配置する。
この状態で加圧処理が開始される。まず図9におけるステップS7において、加圧処理における加圧条件を設定する。すなわち、加圧条件設定部115が加圧条件を設定する。加圧条件を決めるパラメータは、前述のように、クリーニング条件、インクカートリッジ交換時からの放置時間(累積経過時間)、インク種、インク流路形状、温度などがある。これらはいずれも、微小気泡B2の析出に影響を与えるパラメータであり、そのパラメータの値が微小気泡B2の析出を助長する傾向の強いものであるほど(つまり泡立ちし易いものであるほど)、強力な加圧処理を施す加圧条件を設定する。
これらパラメータに応じて決まる加圧処理の強度に応じて、図7のグラフに示すように、加圧処理における加圧力Px(目標圧)と加圧保持時間Txとを設定する。例えば微小気泡B2が析出しにくい条件(パラメータ値)であれば、弱い加圧条件が設定され、例えば加圧力Pxが通常値で、加圧保持時間Txが通常より短く設定される。一方、微小気泡B2が析出しやすい条件であれば、強い加圧条件が設定され、例えば加圧力Pxが通常値で、加圧保持時間Txを通常より長く設定される。
ここで、各パラメータと、加圧条件の関係を説明する。まずクリーニング条件のパラメータについては、クリーニング条件設定部114が設定したクリーニング条件に応じて、チョーククリーニング時の最高到達圧力が低い(負圧値の絶対値が大きい)クリーニング条件ほど、加圧保持時間Txを長く、加圧力Pxを強く設定する。クリーニング条件では、クリーニング時間(吸引ポンプ回転時間)とクリーニング強度(吸引ポンプ回転速度)とが設定されるが、クリーニング時間が長いほど加圧保持時間Txを長くし、クリーニングが強力であるほど加圧保持時間Txを長く設定する。また、クリーニング時間が長いほど加圧力Pxを強くし、クリーニングが強力であるほど加圧力Pxを強くする。
インク種のパラメータについては、インク種が、気泡が発生し易い種類であるものほど、加圧保持時間Txを長く、加圧力Pxを強く設定する。例えば水系インクよりも有機溶剤系インクの方が泡立ち易い傾向があり、界面活性剤の添加量が多いほど泡立ち易い傾向があり、さらに顔料系インクと染料系インクの種別によっても泡立ちし易さで種類を分けている。
インク流路形状のパラメータについては、インク流路形状が複雑である条件のものほど、加圧保持時間Txを長く、加圧力Pxを強く設定する。
また、放置時間のパラメータについては、新品のインクカートリッジ23に交換されてから(インクパック23bが開封されてから)の放置時間が長いほど、加圧保持時間Txを長く、加圧力Pxを強く設定する。ここで、インクカートリッジ23内のインクパック23bには脱気処理が施された脱気インクが封入されている。脱気インクは気泡を吸収する働きがあるが、インクパック23bが開封された時(インクカートリッジ交換時)から時間の経過とともに脱気度が低下し、気泡吸収能力が低下する。脱気度が高いうちは気泡吸収能力も高いので、微小気泡B2を消失させるために必要な加圧保持時間Txを短く済ませられる。このため、脱気度の低下度合をインクカートリッジ交換時からの放置時間で管理し、放置時間が長く脱気度が低いほど、加圧保持時間Txを長く、加圧力Pxを強く設定する。
さらに温度のパラメータについては、温度が高いほど、加圧保持時間Txを長く、加圧力Pxを強く設定する。
加圧条件設定部115は、クリーニング条件はクリーニング条件設定部114から、インク種は不揮発性メモリ59から、放置時間は計時手段117から、温度は温度センサの検出値から取得する。そして、各パラメータに基づいて、メモリから読み出した加圧条件設定テーブルを参照して、加圧処理のための加圧条件を設定する。加圧条件設定テーブルは、気泡を発生し易い傾向の強い値のパラメータほど、加圧保持時間Txが長く、加圧力Pxが強く設定するように作成されたものである。
本実施形態では、パラメータに応じて決まる圧力条件の強度(ランク)に応じて加圧力Pxと加圧保持時間Txの両方を変化させている。もちろん、加圧力Pxは常に一定にして加圧保持時間Txのみを変化させてもよいし、その逆に、加圧保持時間Txは常に一定にして加圧力Pxのみを変化させてもよい。加圧条件設定部115が複数のパラメータに基づき加圧条件設定テーブルを参照して加圧条件を設定する方法としては、例えばパラメータごとに加圧条件の強度(ランク)を調べ、そのうち最も強度の高い加圧条件を選択する設定方法が挙げられる。また、各パラメータにパラメータごとの重み付け係数を乗じた値を合計した値に基づいて、加圧条件設定テーブルを参照して、加圧条件を設定する方法でもよい。このように、クリーニング条件、放置時間、インク種、インク流路形状、温度などのパラメータの値に基づき加圧処理の加圧条件を設定する。
こうして加圧条件が設定されると、次にその設定された加圧条件で加圧処理を行うべく、加圧ポンプモータ41を駆動させることで加圧ポンプ42を駆動し(ステップS8)、次いで電磁開閉弁35を開弁させる(ステップS9)。そして、目標の加圧力Pxまで加圧されたか否かを判断し(ステップS10)、目標の加圧力Pxまで加圧されていなければ、目標の加圧力Pxまで加圧されるまで加圧ポンプ42の駆動を継続する。そして、目標の加圧力Pxまで加圧されると、加圧ポンプモータ41を駆動停止させ、加圧ポンプ42の駆動を停止させる(ステップS11)。
そして、図7に示すように目標の加圧力Pxに達すると、タイマ112により加圧保持時間Txの計時が開始される。そして、加圧保持時間Txを経過したか否かを判断する(ステップS12)。加圧保持時間Txを経過していなければ、タイマ112が加圧保持時間Txの計時を終えるまで加圧状態を保持して待機する。そして、タイマ112が加圧保持時間Txの計時を終えると、電磁開閉弁35を閉弁するとともにキャップ32内を大気開放する(ステップS13)。この結果、減圧弁46より下流側のインク加圧状態が解除される。このようにキャップ32内のみ大気開放することで、空気室43の加圧空気圧は、その後の印刷時におけるインク加圧供給に利用される。もちろん、加圧処理終了時の大気開放は、大気開放弁28を開弁することで行ってもよく、その場合、電磁開閉弁35は少なくともキャップ32内の大気開放が完了するまで開弁状態とされる。なお、加圧処理が開始され、目標圧Pxに加圧保持された後、大気開放されるまで段階(S8〜S13)が、加圧段階に相当する。
この加圧処理により、図8(d)に示すように、チョーククリーニング終了直後にインク50内に存在した微小気泡B2が、図8(e)に示すように、加圧処理によるインク圧の上昇によってインク50中に速やかに再溶解され消滅する。例えば微小気泡B2を自然消滅するまで待機する場合、クリーニング開始時から印刷開始可能な状態になるまでのクリーニング所要時間は、例えば5分以上要していた。これに対し、加圧処理を行った場合、クリーニング以外でインクを加圧供給するときと同じ空気圧の付与でも、微小気泡B2が消滅して印刷開始可能な状態になるまでのクリーニング所要時間は、例えば30秒程度に短くなる。このため、比較的強力なチョーククリーニングを実施して微小気泡B2が多数析出しても、その後、速やかに印刷を開始できる。
そして、加圧処理を終了すると、次に微量吸引を行う(ステップS14)。この微量吸引は、チョーククリーニングで排出されたインクがキャップ32で跳ねてノズル開口に付着したためにノズル内で混色したインクを廃棄するために行われる。従来は、微小気泡B2を排出させることを主目的で微量吸引は行われていたので、微量吸引は廃止することもできる。但し、加圧処理時にノズル内のインクのメニスカスが加圧により破壊されるような加圧力を付与する場合は、インクメニスカスを整え直すために、微量吸引は行うことが好ましい。
そして、微量吸引終了後、再度、空吸引を行って、その後、ワイパ33でノズル開口面20aを払拭し、付着インクを拭き取るとともに、ノズル20b内のインクメニスカスが整えられる。
以上、詳述したように、本実施形態によれば、以下の効果を得ることができる。
(1)チョーククリーニング終了後、インク供給流路24,47,78内のインクを加圧するので、チョーククリーニング時の減圧により析出した微小気泡B2をインクに吸収(再溶解)させることができる。このため、チョーククリーニング終了後に微小気泡が自然消滅するまでの待機時間を設けることなく、速やかに印刷を開始できる。また、微小気泡B2が析出する強力なチョーククリーニングを実施してクリーニング効果を高めることができる。さらに、微小気泡B2を除去するために再度吸引する微量吸引の廃止も可能となる。よって、チョーククリーニング時に析出した微小気泡B2を、インクの消費を極力抑えつつ早期に解消できる。この結果、気泡排出性と印字安定性とを両立させることができる。
(2)ノズル20bに正圧を及ぼして、減圧弁46より下流側のインク供給流路47内のインク圧を上昇させるので、正圧によりノズル20bからのインクの漏出を抑えつつ、インク中の微小気泡B2を速やかに消失させることができる。このため、加圧処理時のインク消費を少なく抑えられる。
(3)減圧弁46は、上流側・下流側を問わず加圧によっては開弁しない自己封止式の構成であるが、減圧弁46を間に挟んだ上流側と下流側の両方向からインク供給流路24,47,78内のインクを加圧する構成なので、チョーククリーニング時に減圧したチョーク弁45よりも下流側の領域を全域加圧して、微小気泡B2を効果的に消失させることができる。このノズル20b側からの加圧によって、減圧弁46の下流に位置するフィルタ室48aなど気泡の滞留しやすい場所に存在する微小気泡B2を速やかに消失させることができる。
(4)加圧ポンプ装置25からキャップ32内に供給される加圧空気によって、ノズル開口を通じてインク流路内のインクを加圧できる。このように減圧弁46の下流側のインク供給流路47を加圧するために加圧空気の圧力印加部位としてノズル20bを利用する。このため、この種の圧力印加部位を記録ヘッド20やキャリッジ15等に設ける必要がない。また、吸引手段の構成部品であるキャップ32等を加圧手段の一部として利用する。よって、加圧手段を設ける際に追加・変更すべき構成が少なく済む。
(5)加圧ポンプ42から加圧空気をキャップ32に供給する加圧チューブ34を設け、この加圧チューブ34の途中に電磁開閉弁35を設けた。この結果、チョーククリーニング時には電磁開閉弁35を閉弁させることで、ノズル20bから吸引したインクがキャップ32から加圧チューブ34側(さらには加圧ポンプ42側)へ逆流することを阻止できる。また、加圧処理時には、電磁開閉弁35を開弁させることにより、ノズル20b側からインク供給流路47内のインクを加圧して微小気泡B2を消失させることができる。
(6)加圧処理時に、吸引ポンプ55のローラ69により排出チューブ54の中間部54aを押圧して閉塞するので、吸引ポンプ55の機能を利用して、キャップ32へ供給した加圧空気が排出チューブ54を経由してリークすることを回避できる。このため、この種の加圧空気のリークを回避するために電磁弁などの閉塞手段を別途設ける必要がない。
(7)また、吸引ポンプ55は排出チューブ54の中間部54aがΩ字形状に引き回された構造であるが、回転位置センサ63により吸引ポンプ55の回転位置を検出して、ローラ96がリークポイントLPを避けた位置で停止させるように吸引ポンプ55を停止制御する構成とした。よって、リークポイントLPが存在する吸引ポンプ55であっても、加圧空気の排出チューブ54を通じたリークを確実に抑え、加圧処理を確実に実施できる。
(8)微小気泡の析出に影響する条件を取得して、その取得した条件に応じて加圧処理時の加圧条件を設定するので、チョーククリーニング時にインク中に析出した微小気泡B2をより確実に消失させることができる。
(9)特にクリーニング条件設定部114が設定したクリーニング条件に応じて、チョーククリーニング時の最高到達圧力が低いクリーニング条件ほど、加圧条件をきつく設定するので、チョーククリーニング時にインク中に析出した微小気泡B2をより確実にしかも短時間で消失させることができる。
(10)インク種(流体の種類)が、気泡が発生し易い種類であるものほど、加圧保持時間Txを長く設定するので、チョーククリーニング時にインク流路内のインク中に発生した微小気泡B2をより確実にしかも短時間で消失させることができる。
(11)インク流路形状が複雑(L字形状等)である条件のものほど、加圧条件をきつく設定するので、チョーククリーニング時にインク中に析出した微小気泡B2をより確実にしかも短時間で消失させることができる。
(12)インクカートリッジ交換時からの放置時間の条件(パラメータ)に基づいて放置時間が長いほど、加圧条件をきつく設定するので、チョーククリーニング時にインク中に析出した微小気泡B2をより確実にしかも短時間で消失させることができる。
(13)温度の条件(パラメータ)に基づいて温度が高いほど、加圧条件をきつく設定するので、チョーククリーニング時にインク中に析出した微小気泡B2をより確実にしかも短時間で消失させることができる。
尚、発明の実施の形態は、上記実施形態に限定されるものではなく、以下のように変更してもよい。
(変形例1)上記実施形態では、インク供給流路の途中に設けられる減圧弁として、自己封止式の減圧弁46を用いたが、例えば上流側から加圧されると開弁する構造の減圧弁を用いてもよい。この場合、上流側と下流側の両方向から加圧する点については、前記実施形態と同様であり、加圧源である加圧ポンプ42も同じであるが、減圧弁の開弁によりインクパック23bのインク導出部23cからノズル20bまでの流路が連通状態となる。このため、流路内のインクに対して、インクパック23b側からの働く力と、ノズル20b側から働く力を均衡させるように、空気室43の空気圧と、ノズル20bに及ぶキャップ32内の空気圧とを調整するようにする。流路内のインクに働く力は、空気圧と受圧面積との積で決まるので、インクパック23bの受圧面積と空気室43の空気圧との積と、全ノズル20bの総面積とキャップ内の空気圧との積とが等しくなるように、空気室43とキャップ32内の各空気圧を調整する。例えば、加圧ポンプ42とインクカートリッジ23との間の流路上に電磁圧力調整弁を設け、電磁圧力調整弁を制御して上流側から加えられる圧力を減圧して調整し、上流側と下流側からの加圧によりインクに働く力を均衡させるようにする。こうすれば、ノズル20bからインクが漏れず、しかもノズル20b内に加圧空気に起因する気泡が侵入することはない。しかし、下流側からの加圧がタイミング的に先に加えられると、ノズル20bから加圧空気が流入してインク内に気泡を流入させる原因となる。そこで、ノズル20bへの加圧タイミングが少し遅れるように電磁開閉弁35の開弁タイミングを制御することが好ましい。また、上流側からの力を下流側からの力よりも若干強くなるように両圧力を調整して、ノズル20bからの加圧空気の流入を抑えてもよい。これらの場合、ノズル20bからインクが多少漏出することにはなるが、ノズル20bから加圧空気に起因する気泡の流入は抑えられる。
(変形例2)ローラ69で中間部54aを押圧して排出チューブ54を閉塞することで、吸引ポンプ55の機能を利用して加圧空気のリークを防止する構成としたが、これに替え、排出チューブ54の途中に電磁開閉弁を設け、電磁開閉弁を閉弁させることで加圧空気の排出チューブ54を通じてのリークを防止する構成も採用できる。
(変形例3)前記実施形態では、上流側と下流側との両方向から加圧する構成としたが、インク流路上に自己封止型の減圧弁46がある構成においては、下流側からだけ加圧する構成も採用できる。下流側からだけの加圧であっても、減圧弁46より上流側へはインクが流れないので、減圧弁46とノズル20bとの間のインクを加圧でき、減圧弁46とノズル20bとの間のインク供給流路47上に位置するフィルタ室48a内のインク中に残存する微小気泡B2を消失させることはできる。また、上流側と下流側との両方向から加圧する場合、減圧弁46がある構成では、両方向でそれぞれの加圧力を異ならせてもよい。例えばノズル20b側については加圧空気のノズル20bへの流入を確実に回避できる圧力に設定するとよい。このように減圧弁46とノズル20bの間の下流側だけを加圧する構成であっても、例えばノズル20b及びインク室20cの近傍のインクは、その後、印刷が開始されると比較的短時間の内に噴射されるため、噴射されるまでに微小気泡が残存する可能性がある。しかし、噴射されるまでに時間の余裕のある上流側のインク中の微小気泡はその後噴射までの所要時間のうちに自然消失する可能性が高い。そのため、ノズル20bに連通する下流側部分のみの加圧であっても、印刷品質は良好に維持される。
(変形例4)下流側からの加圧は、キャップ32内に加圧空気(加圧気体)を供給してノズル20bを通じてインクを加圧する構成に限定されない。例えば記録ヘッド20のノズル開口面20aにシール部材を密接させてノズル開口を全てシールし、このシール状態の下でノズル20b以外の部分を加圧印加部位として、インク供給流路内のインクを加圧する構成を採用できる。例えば減圧弁46のフィルム88(ダイヤフラム)の外側に加圧室を設け、通常は加圧室を弁の開弁により大気開放し、加圧処理時にはその弁を閉弁させて大気との連通を遮断したうえで、加圧室に接続された加圧用の弁を開弁させて加圧ポンプ42からの加圧空気を加圧室に送り、減圧弁46のフィルム88及び受圧板90を外側から加圧してインク供給流路47内のインクを加圧する構成も採用できる。さらにこの構成で、フィルム88及び受圧板90を加圧する方法は加圧空気に限定されない。例えば押圧部材で受圧板を押圧することにより加圧してもよい。押圧部材としては、小型のピストンやソレノイド等のアクチュエータを使用して機械的に押圧する構成、バネで受圧板90を押圧する構成などが挙げられる。また、減圧弁のフィルム88を外側から加圧する構成としては、キャリッジの移動に追従可能なフレキシブルチューブを通じて加圧空気を供給する構成、キャリッジがホームポジションに到達すると、各バルブユニットの外側の室と連通する連結口が、当接部材に当接してフィルム88の外側の室が密閉されるとともに当接部材を介して各室へ加圧空気が供給される構成などを採用できる。さらにキャリッジが印刷領域外の所定位置に到達すると、各ダイヤフラムがそれぞれ対応する押圧部材により押圧されてインク供給流路47内のインクを加圧する構成も採用できる。これらのいずれの構成も、バルブユニット21とノズル20bとの間のインク供給流路47内のインクを加圧できるので、例えばバルブユニット21より下流側に位置するフィルタ室48a内のインクを加圧できる。さらに減圧弁のダイヤフラム以外の箇所に同様のダイヤフラム構造を設け、減圧弁以外のインク供給流路47上の所定箇所に設けたダイヤフラムを押圧してインクを加圧することもできる。例えば記録ヘッド20の側面やキャリッジ15の側面においてそれぞれの内部を通るインク供給流路47を加圧できる箇所にダイヤフラムを設け、ダイヤフラムを加圧空気で加圧することによりインク供給流路47内のインクを加圧する構成も採用できる。
(変形例5)前記実施形態では、空気室43の圧力を、インク残量(インクパック体積)から求まる空気室43の容積に応じた回転数だけ加圧ポンプを駆動して調整したが、例えば空気室の圧力を検出可能な圧力センサを設けてもよい。この場合、圧力センサが所定の圧力値に到達するまで加圧ポンプ42を駆動させる。圧力センサは例えば加圧ポンプ42と大気開放弁28との間の流路の途中に設ければよい。また、チョーククリーニングで適用される条件であって気泡の析出し易さを示す条件(パラメータ)に応じて加圧条件(加圧保持時間と加圧力)を設定する場合、設定された加圧力への到達は加圧センサの検出値に基づき判断すればよい。
(変形例6)チョーク弁45は差圧弁に限定されない。チョーク弁45として電磁開閉弁を用いても構わない。チョーク吸引過程(負圧蓄積段階)で電磁開閉弁を閉弁させ、加圧排出過程で電磁開閉弁を開弁させれば、同様にチョーククリーニングを実施できる。
(変形例7)吸引手段は、キャップを用いた構成に限定されない。例えば記録ヘッドが室(チャンバ)内に設けられ、該室を室外の大気と連通させる連通路上の弁を閉弁させて、該室を大気と遮断された密閉状態としたうえで、該室と吸引路を通じて接続された吸引ポンプを駆動して該室内に負圧を導入することで、記録ヘッドのノズルに吸引力を及ばせる構成も採用できる。このように、吸引手段は、ノズルに吸引力を及ぼすことができる限りにおいて適宜な構成を採用できる。
(変形例8)インク供給システムは、水頭差によりインクカートリッジ23からインクを供給する水頭差タイプのものも採用できる。すなわち、インクカートリッジ23のインク導出部23cが、バルブユニット21に対して重力方向上側に配置され、これにより発生する水頭差に基づく正圧により、インクパック23b内のインクがインク供給流路24を通じてバルブユニット21に供給される構成である。この構成でも、インクカートリッジ内のインクを空気圧で加圧する構成とすれば、加圧処理時にインクカートリッジ内に加圧空気を供給することで上流側からインク供給流路内のインクを加圧することができる。さらにインクカートリッジ内を加圧する構成ではなく、インクカートリッジより下流側の所定箇所でインクを加圧してもよい。例えばインクカートリッジと差圧弁との間の流路の途中に電磁開閉弁を設け、この電磁開閉弁を閉弁した状態で、差圧弁のダイヤフラムを外側から加圧又は押圧してインク供給流路内のインクを加圧する構成が挙げられる。
(変形例9)キャリッジ15を有するシリアル式のプリンタ11であったが、キャリッジを有さず、流体噴射ヘッドが、印刷媒体の最大幅に渡って列状に複数個あるいは長尺状のものが1個設けられた構成のフルラインヘッドを有する流体噴射装置(例えばラインプリンタ)に、本発明のクリーニング装置を採用することもできる。
(変形例10)前記実施形態では、流体噴射装置をインクジェット式記録装置に具体化したが、この限りではなく、インク以外の他の流体(液体や、機能材料の粒子が液体に分散又は混合されてなる液状体、ゲルのような流状体を含む)を噴射したり吐出したりする流体噴射装置に具体化することもできる。例えば、液晶ディスプレイ、EL(エレクトロルミネッセンス)ディスプレイ及び面発光ディスプレイの製造などに用いられる電極材や色材(画素材料)などの材料を分散または溶解のかたちで含む液状体を噴射する液状体噴射装置、バイオチップ製造に用いられる生体有機物を噴射する液体噴射装置、精密ピペットとして用いられ試料となる液体を噴射する液体噴射装置であってもよい。さらに、時計やカメラ等の精密機械にピンポイントで潤滑油を噴射する液体噴射装置、光通信素子等に用いられる微小半球レンズ(光学レンズ)などを形成するために紫外線硬化樹脂等の透明樹脂液を基板上に噴射する液体噴射装置、基板などをエッチングするために酸又はアルカリ等のエッチング液を噴射する液体噴射装置、ゲル(例えば物理ゲル)などの流状体を噴射する流状体噴射装置、であってもよい。そして、これらのうちいずれか一種の流体噴射装置のメンテナンス装置に本発明を適用することができる。なお、本明細書において「流体」とは、例えば液体(無機溶剤、有機溶剤、溶液、液状樹脂、液状金属(金属融液)等を含む)、液状体、流状体などが含まれる。
(変形例11)さらに流体は気体でもよい。例えば流体供給流路内に液体が付着していたり溜まったりしていても、流体中の異物(例えば液体)を吸引排出するためにチョーククリーニングで減圧したときにその液体が気化して発生したガス状異物を、加圧手段により流体供給流路内の流体が加圧されることにより液化させて消失させることができる。このため、速やかに流体噴射ヘッドから流体を噴射しても、その噴射された流体にガス状異物が混在することを効果的に回避できる。
以下、前記実施形態および各変形例から把握される技術的思想を記載する。
(1)前記負圧発生手段はチューブポンプであり、該チューブポンプにおいてチューブ(54a)を押し潰しながら回転可能な回転体(69)を有し、該回転体が、チューブを押圧可能な押圧位置と、チューブを押圧しない退避位置とに変位可能に設けられ、前記閉塞手段は、前記加圧手段が加圧するときに、前記回転体を押圧位置に配置することを特徴とする請求項3に記載の流体噴射装置におけるクリーニング装置。
これによれば、加圧手段による加圧時に、チューブポンプの回転体によりチューブを押圧して閉塞することにより、チョーククリーニングのための負圧を発生させるチューブポンプの機能を利用し、キャップ32へ供給した加圧流体がチューブポンプ側の排出流路を経由してリークすることを回避できる。このため、閉塞手段を別途設ける必要がない。
(2)請求項1乃至8のいずれか一項に記載の発明において、少なくとも、前記吸引手段、前記加圧手段及び加圧源を制御する制御手段を備え、前記制御手段は、前記加圧手段を、前記流体供給源からの流体の加圧と、前記ノズルからの流体の加圧とを同時期に行うように制御することを特徴とする。
(3)請求項1乃至8のいずれか一項に記載の発明において、少なくとも、前記吸引手段、前記加圧手段及び加圧源を制御する制御手段を備え、前記制御手段は、前記加圧手段を、前記流体供給源からの流体の加圧に遅れて、前記ノズルからの流体の加圧を開始するように制御することを特徴とする。これによれば、ノズルから加圧のための流体(例えば気体)の流入を防止できる。
(4)前記条件取得手段は、クリーニング条件を設定するクリーニング条件設定手段であり、前記加圧手段は、前記クリーニング条件に応じて、クリーニング時間が長いほど前記加圧保持時間を長くし、クリーニングが強力であるほど前記加圧保持時間を長く設定することを特徴とする請求項8に記載の流体噴射装置におけるクリーニング装置。これによれば、クリーニング時間が長いほど前記加圧保持時間を長くし、クリーニングが強力であるほど前記加圧保持時間を長く設定するので、クリーニング時に流体供給流路内の流体中に発生した気泡をより確実に消失させることができる。
(5)前記条件取得手段が取得する条件は、前記流体噴射手段に供給される流体の種類であり、前記加圧手段は、前記流体の種類に応じて、気泡が発生し易いと予め設定された流体の種類であるときには、前記加圧保持時間を長く設定することを特徴とする請求項7に記載の流体噴射装置におけるクリーニング装置。これによれば、流体の種類が、気泡が発生し易い種類であるほど、前記加圧保持時間を長く設定するので、クリーニング時に流体供給流路内の流体中に発生した気泡をより確実に消失させることができる。
(6)前記条件取得手段が取得する条件は、前記流体供給源と前記流体噴射手段とを接続する流路形状の条件であり、前記加圧手段は、前記流路形状が複雑である条件のものほど、加圧保持時間を長く設定することを特徴とする請求項7に記載の流体噴射装置におけるクリーニング装置。これによれば、流路形状が複雑である条件のものほど、加圧保持時間を長く設定するので、クリーニング時に流体供給流路内の流体中に発生した気泡をより確実に消失させることができる。
(7)前記条件取得手段が取得する条件は、前記流体供給源が開封されてからの放置時間の条件であり、前記加圧手段は、前記放置時間の条件に基づいて放置時間が長いほど、前記加圧保持時間を長く設定することを特徴とする請求項7に記載の流体噴射装置におけるクリーニング装置。これによれば、放置時間の条件に基づいて放置時間が長いほど、加圧保持時間を長く設定するので、クリーニング時に流体供給流路内の流体中に発生した気泡をより確実に消失させることができる。
(8)前記条件取得手段が取得する条件は、温度の条件であり、前記加圧手段は、前記温度の条件に基づいて温度が高いほど、前記加圧保持時間を長く設定することを特徴とする請求項7に記載の流体噴射装置におけるクリーニング装置。これによれば、温度の条件に基づいて温度が高いほど、加圧保持時間を長く設定するので、クリーニング時に流体供給流路内の流体中に発生した気泡をより確実に消失させることができる。
(9)前記流体噴射ヘッドがノズルから噴射する流体は、液体、液状体、流状体(ゲル等)のいずれかであり、前記加圧手段が加圧のために供給する加圧流体は、加圧気体であることを特徴とする請求項1乃至8、前記技術的思想(1)乃至8のいずれか一項に記載の流体噴射装置におけるクリーニング装置。
11…流体噴射装置としての記録装置、15…キャリッジ、18…キャリッジモータ、20…流体噴射手段としての記録ヘッド、20a…ノズル開口面、20b…ノズル、21…バルブユニット、23…インクカートリッジ、24…流体供給流路を構成するインク供給流路、25…加圧ポンプ装置、27…加圧チューブ、29…空気供給チューブ、32…吸引手段及び加圧手段を構成するキャップ、34…加圧手段を構成するとともに加圧流体供給流路としての加圧チューブ、35…加圧手段を構成するとともに開閉弁としての電磁開閉弁、41…加圧手段を構成する加圧ポンプモータ、42…加圧手段を構成する加圧ポンプ、45…閉塞弁としてのチョーク弁、46…減圧弁、47…流体供給流路を構成するインク供給流路、48…フィルタ装置、48a…フィルタ室、49…フィルタ、51…吐出駆動素子、53…電動モータ、54…排出流路としての排出チューブ、55…吸引手段及び負圧発生手段を構成する吸引ポンプ、56…吸引手段及び負圧発生手段を構成する吸引ポンプモータ、59…条件取得手段を構成する不揮発性メモリ、62…制御手段としてのコントローラ、63…回転位置センサ、69…回転体としてのローラ、78…流体供給流路を構成するインク供給流路、89…弁室としての圧力室、100…マイクロコンピュータ、102〜104…モータ駆動回路、105…弁駆動回路、110…制御手段及び条件取得手段を構成する制御部、111…演算部、112…タイマ、113…クリーニングタイマ、114…条件取得手段及びクリーニング条件設定手段としてクリーニング条件設定部、115…加圧条件設定手段としての加圧条件設定部、116…インク残量取得部、117…条件取得手段を構成する計時手段、LP…リークポイント、Px…加圧力(目標圧)、Tx…加圧保持時間、B1…気泡、B2…ガス状異物としての微小気泡。