JP2008198445A - 絶縁電線 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】導体4a,6aと前記導体を被覆する少なくとも1層の絶縁層4b,4c,4d,6b,6c,6dを有してなる絶縁電線であって、前記絶縁層の少なくとも1層を構成する樹脂組成物として液晶ポリマー以外のポリエステル系樹脂75〜95質量部に対し、液晶ポリマーを5〜25質量部を含有するポリエステル系樹脂(A)を含んでなるポリエステル系樹脂組成物を用いた絶縁電線。
【選択図】図1
Description
このような規格のもとで、従来、主流の座を占めている変圧器としては、図2の断面図に例示するような構造が採用されてきた。この変圧器は、フェライトコア1上のボビン2の周面両側端に沿面距離を確保するための絶縁バリヤ3が配置された状態でエナメル被覆された一次巻線4が巻回されたのち、この一次巻線4の上に、絶縁テープ5を少なくとも3層巻回し、更にこの絶縁テープの上に沿面距離を確保するための絶縁バリヤ3を配置したのち、同じくエナメル被覆された二次巻線6が巻回された構造である。
図1で示した変圧器を製造する場合、用いる1次巻線4及び2次巻線6では、いずれか一方もしくは両方の導体4a(6a)の外周に少なくとも3層の絶縁層4b(6b),4c(6c),4d(6d)が形成されていることが前記したIEC規格との関係で必要になる。
また、前記のフッ素樹脂押出しの場合では、絶縁層はフッ素系樹脂で形成されているので、耐熱性は良好であるという利点を備えているが、樹脂のコストが高く、さらに高剪断速度で引っ張ると外観状態が悪化するという性質があるために製造スピードを上げることも困難で、絶縁テープ巻と同様に電線コストが高いものになってしまうという問題点がある。
しかしながら、巻線加工後の変圧器を機器に取り付け回路を形成する際には、変圧器から引き出した電線の先端で導体が露出されはんだ付け処理後が行われる為、はんだ付け性の良好な多層絶縁電線が求められている。
またその後ワニス等で処理されることから、耐溶剤性の性能が求められるものの、いまだすべてを満足するものはないのが現状であった。
すなわち本発明は、以下の多層絶縁電線を提供するものである。
(1)導体と前記導体を被覆する少なくとも1層の絶縁層を有してなる絶縁電線であって、前記絶縁層の少なくとも1層を構成する樹脂組成物として液晶ポリマー以外のポリエステル系樹脂75〜95質量部に対し、液晶ポリマーを5〜25質量部を含有するポリエステル系樹脂(A)を含んでなるポリエステル系樹脂組成物を用いたことを特徴とする絶縁電線、
(2)前記ポリエステル系樹脂組成物が、熱可塑性エラストマー(B)を含み、前記ポリエステル系樹脂(A)を連続層とし、前記熱可塑性エラストマー(B)を分散相とする樹脂分散体であることを特徴とする(1)項記載の絶縁電線、
(3)前記ポリエステル系樹脂組成物が、前記ポリエステル系樹脂(A)100質量部に対し、前記熱可塑性エラストマー(B)を15質量部以下含有することを特徴とする(2)記載の絶縁電線、
(4)前記熱可塑性エラストマー(B)としてエポキシ基、オキサゾリル基、アミノ基及び無水マレイン酸残基からなる群から選択される少なくとも1種類の官能基を含有する樹脂(B−1)を用いたことを特徴とする(2)または(3)項記載の絶縁電線、
(5)前記熱可塑性エラストマー(B)としてアクリレートもしくはメタクリレートまたはそれらの混合物から得られるゴム状コアとビニル系単独重合体もしくは共重合体よりなる外側シェルとを有するコア−シェル重合体(B−2)を用いたことを特徴とする(2)または(3)項記載の絶縁電線、および
(6)前記熱可塑性エラストマー(B)として側鎖にカルボン酸またはカルボン酸の金属塩を有するエチレン系共重合体(B−3)を用いたことを特徴とする(2)または(3)項記載の絶縁電線、
を提供する。
(A)ポリエステル系樹脂
本発明においては、絶縁層の少なくとも1層を構成する樹脂組成物として液晶ポリマー以外のポリエステル系樹脂と液晶ポリマーを所定量配合されるポリエステル系樹脂(A)を含んでなるポリエステル系組成物を用いたものである。
本発明に用いられる液晶ポリマー以外のポリエステル系樹脂としては、芳香族ジカルボン酸またはその一部が脂肪族ジカルボン酸で置換されているジカルボン酸と脂肪族ジオールとのエステル反応で得られたものが好ましく用いられる。例えば、ポリエチレンテレフタレート樹脂(PET)、ポリブチレンテレフタレート樹脂(PBT)、ポリエチレンナフレート樹脂(PEN)などを代表例としてあげることができる。
本発明におけるポリエステル系樹脂(A)には、液晶ポリマーを含有するものである。用いられる液晶ポリマーは、その分子構造、密度、分子量等は特に限定されるものではなく、溶融したときに液晶を形成する溶融液晶性ポリマー(サーモトロピック液晶ポリマー)が好ましく、その溶融液晶性ポリマーとしては、溶融液晶性ポリエステル系共重合体が好ましい。
このような溶融液晶性ポリエステルとしては、(I)長さの異なる剛直な直線性のポリエステル2種をブロック共重合して得られる剛直さ成分同士の共重合型のポリエステル、(II)剛直な直線性のポリエステルと剛直な非直線性のポリエステルをブロック共重合して得られる非直線性構造導入型のポリエステル、(III)剛直な直線性のポリエステルと屈曲性のあるポリエステルの共重合による屈曲鎖導入型のポリエステル、(IV)剛直鎖で直線性のポリエステルの芳香族環上へ置換基を導入した核置換芳香族導入型ポリエステルがある。
これらの中で、(I)、(II)、(V)に示す組み合わせのものが好ましく、さらに好ましくは(V)に示す組み合わせのものが挙げられる。
本発明において、上記ポリエステル系樹脂組成物は、熱可塑性エラストマー(B)を含み、ポリエステル系樹脂(A)を連続層とし、熱可塑性エラストマー(B)を分散相とする樹脂分散体であることが好ましい。本発明における熱可塑性エラストマー(B)の含有量は、ポリエステル系樹脂(A)100質量部に対し、15質量部以下であることが好ましく、4〜13質量部であることがさらに好ましい。
熱可塑性エラストマーが15質量部より多いと耐熱性がやや低くなる。液晶ポリマーや液晶ポリマー以外のポリエステル系樹脂に比べてエラストマー成分の耐熱性が低いためと推定される。
このような樹脂(B−1)としては、オレフィン成分とエポキシ基含有化合物成分からなる共重合体であることが好ましい。また、アクリル成分又はビニル成分の中、少なくとも1種類以上の成分とオレフィン成分及びエポキシ基含有化合物成分からなる共重合体であってもよい。
樹脂(B−1)の上記の反応性を有する官能基は、絶縁電線においては、実質的に全ての基が反応したものとなる。
本発明に用いられるコア−シェル重合体樹脂(B−2)とは、アクリレートもしくはメタクリレートまたはそれらの混合物から得られるゴム状コア(好ましくは、アルキルアクリレート重合体からなるゴム状コア)と、ビニル系重合体もしくは共重合体外側シェル(好ましくは、アルキルメタクリレート重合体からなる外側シェル)とを有するコア−シェル重合体を意味するものである。本発明に用いられるコア−シェル重合体樹脂(B−2)において、コアは炭素数1〜6のアルキル基を有するアルキルアクリレートから重合され、約10℃より低いTgを有し、加えて、上記のアルキルアクリレートに対し、架橋性単量体および/またはグラフト用単量体を含むアクリルゴムコアとなることが好ましい。特に好ましい上記アルキルアクリレートは、アクリル酸n−ブチルである。
本発明に好ましく用いられる架橋性単量体には、ブチレンジアクリレートおよびジメタクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレート等のポリオールのポリ(アクリル酸エステル)およびポリ(メタクリル酸エステル)、ジ−およびトリ−ビニルベンゼン、アクリル酸およびメタクリル酸ビニル等がある。特に好ましい架橋性単量体はブチレンジアクリレートである。
本発明において好ましく用いられるグラフト用単量体は、アクリル酸アリル、メタクリル酸アリル、マレイン酸ジアリル、フマル酸ジアリル、イタコン酸ジアリル、酸性マレイン酸アリル、酸性フマル酸アリルおよび酸性イタコン酸アリル等のエチレン系不飽和二塩基酸のアリルエステルのアルキル基含有単量体類が挙げられる。特に好ましいグラフト用単量体はメタクリル酸アリルおよびマレイン酸ジアリルである。
上述したように、2段であるコア−シェル重合体の市販品として、呉羽化学工業社製のパラロイド(PARALOID)EXL−2313、EXL−2314及びEXL−2315(いずれも商品名)が挙げられるが、本発明はこれらに限定するものではない。
導体として線径0.75mmの軟銅線を用意した。表1に示した各層の押出被覆用樹脂の配合(組成の数値は質量部を示す)及び厚さで、単層の場合は1層を、多層の場合は導体上に順次押出し被覆して絶縁電線を製造した。
得られた絶縁電線につき、下記の仕様で各種の特性を試験した。また、肉眼により外観を観察した。
電線自身の周囲に線と線が接触するように緊密に10回巻きつけ、顕微鏡にて観察を行い皮膜にクラックやクレージングなどの異常が見られなければ合格(表1において○で示す)とした。
B.電気的耐熱性
長さ約50cmの絶縁電線を二つに折り合わせ1.5kgの張力を加えながら約12cmの長さの部分を9回よりあわせたあと張力を取り去り、折り目部分を切ってツイスト状サンプルを作成した。このツイスト状サンプルを235℃で168時間加熱後、絶縁破壊電圧を測定し加熱前の絶縁破壊電圧に対し残率40%以上をF種合格(表1において○で示す)と判定した。また特に残率50%以上で耐熱性が特に良好なものを◎で示した。
C.耐溶剤性
巻線加工として20D巻き付けを行った電線をエタノール又はイソプロピルアルコール溶媒に30秒間浸漬し、乾燥後試料表面の観察を行い、クレージング発生の有無判定を行った。表1において、クレージングの発生が無いものを○、クレージングが発生したものを×で示した。
D.半田付け性
巻線加工後のはんだ付け性を評価するための加工性に関する特性試験である。押出被覆することによって作製した絶縁電線をフラックスに浸漬させた後、先端部40mmを450℃×10秒間はんだ槽に入れた。はんだが付いた箇所が30mm以上であれば合格(表1において○で示す)と判定した。
また、表中で略号で示される各樹脂は以下のものを使用した。
PET:ポリエチレンテレフタレート樹脂、帝人PET(帝人社製、商品名)
エチレン系共重合体:アイオノマー、ハイミラン1855(三井デュポン社製、商品名)
コアシェル共重合体:アクリル系樹脂から得られたゴム状コアとビニル系単独重合体よりなる外側シェルとを有するコア−シェル重合体、パラロイドEXL2313(呉羽化学製)
LCP:液晶ポリマー、ロッドランLC5000(ユニチカ社製、商品名)
PES:ポリエーテルスルホン、スミカエクセルPES4100(住友化学工業社製、商品名)
Ny66:ナイロン66、FDK-1(ユニチカ社製、商品名)
また、導体から順に第1層、第2層、第3層が被覆されたものであり、3層構造である場合には第3層が最外層である。
すなわち、LCPを含まないPESのみを絶縁層に用いた3層電線である比較例1では、耐溶剤性、および、はんだ付け性が劣るものとなった。LCPを含まない、PET/アイオノマーおよびナイロン66を絶縁層に用いた比較例2では、電気耐熱性に劣るものとなった。また、LCPが多すぎる比較例3では可とう性に劣るものであった。
これに対し、実施例1〜9ではいずれも、外観、可とう性、電気的耐熱性、耐溶剤性、はんだ付け性のいずれにも優れるものとなった。またポリエステル系樹脂100質量部に対して熱可塑性エラストマーを17質量部含有するポリエステル系樹脂組成物で被覆された絶縁電線である、実施例10は実施例1〜9より耐熱性は劣るものの、F種合格品として十分使用できるものであった。
2 ボビン
3 絶縁バリヤ
4 一次巻線
4a 導体
4b,4c,4d 絶縁層
5 絶縁テープ
6 二次巻線
6a 導体
6b,6c,6d 絶縁層
Claims (6)
- 導体と前記導体を被覆する少なくとも1層の絶縁層を有してなる絶縁電線であって、前記絶縁層の少なくとも1層を構成する樹脂組成物として液晶ポリマー以外のポリエステル系樹脂75〜95質量部に対し、液晶ポリマーを5〜25質量部を含有するポリエステル系樹脂(A)を含んでなるポリエステル系樹脂組成物を用いたことを特徴とする絶縁電線。
- 前記ポリエステル系樹脂組成物が、熱可塑性エラストマー(B)を含み、前記ポリエステル系樹脂(A)を連続層とし、前記熱可塑性エラストマー(B)を分散相とする樹脂分散体であることを特徴とする請求項1記載の絶縁電線。
- 前記ポリエステル系樹脂組成物が、前記ポリエステル系樹脂(A)100質量部に対し、前記熱可塑性エラストマー(B)を15質量部以下含有することを特徴とする請求項2記載の絶縁電線。
- 前記熱可塑性エラストマー(B)としてエポキシ基、オキサゾリル基、アミノ基及び無水マレイン酸残基からなる群から選択される少なくとも1種類の官能基を含有する樹脂(B−1)を用いたことを特徴とする請求項2または3記載の絶縁電線。
- 前記熱可塑性エラストマー(B)としてアクリレートもしくはメタクリレートまたはそれらの混合物から得られるゴム状コアとビニル系単独重合体もしくは共重合体よりなる外側シェルとを有するコア−シェル重合体(B−2)を用いたことを特徴とする請求項2または3記載の絶縁電線。
- 前記熱可塑性エラストマー(B)として側鎖にカルボン酸またはカルボン酸の金属塩を有するエチレン系共重合体(B−3)を用いたことを特徴とする請求項2または3記載の絶縁電線。
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