JP2008184375A - 光学ガラスの製造方法及び製造装置 - Google Patents
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Abstract
【課題】 脈理が少ない高品質の光学ガラスを高い歩留まりで効率よく提供する。
【解決手段】 鉛直に軸支される回転軸3を中心として回転する回転羽根1を用いて溶融ガラスGを撹拌した後に溶融ガラスを冷却固化する。撹拌において、溶融ガラスが収容される撹拌槽7の底面Bと回転羽根の下端Lとの間に間隔があって回転羽根の上端Uが溶融ガラスの液面以上に位置するように回転羽根が配置される。光学ガラスの製造装置は、溶融ガラスを収容するための撹拌槽と、鉛直に軸支される回転軸を中心として回転して溶融ガラスを撹拌するための回転羽根とを有する撹拌装置を具備し、撹拌槽の底面と前記回転羽根の下端部との間に間隔を有し且つ回転羽根の上端が溶融ガラスの液面以上に位置するように回転羽根を配置するための位置決め機構を有する。
【選択図】 図1
【解決手段】 鉛直に軸支される回転軸3を中心として回転する回転羽根1を用いて溶融ガラスGを撹拌した後に溶融ガラスを冷却固化する。撹拌において、溶融ガラスが収容される撹拌槽7の底面Bと回転羽根の下端Lとの間に間隔があって回転羽根の上端Uが溶融ガラスの液面以上に位置するように回転羽根が配置される。光学ガラスの製造装置は、溶融ガラスを収容するための撹拌槽と、鉛直に軸支される回転軸を中心として回転して溶融ガラスを撹拌するための回転羽根とを有する撹拌装置を具備し、撹拌槽の底面と前記回転羽根の下端部との間に間隔を有し且つ回転羽根の上端が溶融ガラスの液面以上に位置するように回転羽根を配置するための位置決め機構を有する。
【選択図】 図1
Description
本発明は、デジタルカメラ用レンズ等に好適な高品位の光学ガラスを提供可能な光学ガラスの製造方法及び製造装置に関する。
近年、ガラスレンズは、デジタルカメラ、携帯電話等にも広く使用されるようになってきている。ガラスレンズには、所定の屈折率、アッベ数などの光学特性が求められることは当然であるが、ガラスレンズ内に気泡等の目に見える欠陥がないことや、脈理等の光学特性の異なる部分がない、すなわち、高度の均質性を有することも要求される。
一般に、ガラスの製造においてガラス原料を溶融すると、溶融ガラスの液面から蒸気圧の高い成分が揮発するため、溶融ガラス液面付近と内部とには組成差を生じやすい。特に、ガラスレンズ等の光学用途のガラスの場合には、成分の揮発によって屈折率が大きく変動することが多く、屈折率の変動分布が脈理となって発生し易い。
このようなことから、下記特許文献1においては、スパイラル羽根とプロペラ羽根とを取り付けた回転軸を有するスターラーを備えたガラス成形用の撹拌装置が提案されている。この撹拌装置では、撹拌槽上部から供給される溶融ガラスは、上部のスパイラル羽根による上下方向の撹拌と下部のプロペラ羽根による水平面内での撹拌を経て下降し、撹拌槽下部のノズルから取り出される。
又、下記特許文献2においては、溶融ガラス内で水平方向に回転しつつ上下動する撹拌羽を有する溶融ガラスの撹拌装置が提案されている。この撹拌装置では、撹拌羽の上下動によって溶融ガラスの不均質な部分を連続的に分離し、脈理を除去することが記載されている。
特開平4―160018号公報
特開平9―255342号公報
上記特許文献1の撹拌装置は、溶融ガラス全体を混合するが、スパイラル羽根及びプロペラ羽根によって発生する上下流は、緩慢な流れであり、溶融ガラス上面の脈理を分断して上下に十分に混合できるほどの威力はないため、脈理を消失させるのは容易ではなく、長時間の撹拌が必要となる。又、脈理の消失が可能となる溶融ガラスの処理容量も制限され、溶融ガラスの液面から下方へ気泡を巻き込むのを防止することが難しい。
他方、特許文献2の撹拌装置では、溶融ガラス全体の流動を起こさず、脈理が多く発生する上部の溶融ガラスと脈理が少ない下部の溶融ガラスとの混合を避けて、脈理の少ない下部のみを効率的に撹拌して使用するので、撹拌時間を短くすることは可能である。しかし、溶融ガラスの上部には脈理が残るので、全処理する溶融ガラスの量に対して脈理が少ない溶融ガラスを得られる歩留まりが低くなる。又、脈理が少ない溶融ガラスを取り出す際に脈理の多い部分の混入を防止するために、溶融ガラスを取り出す形態が限定されるので、応用が難しい。
本発明は、このような点に着目してなされたものであり、全体的に均質で脈理が少ない溶融ガラスを高い歩留まりで供給可能な光学ガラスの製造方法及び製造装置、特に、ガラスの均質化技術の提供を目的とする。
上記課題を解決するために、本発明の一態様によれば、光学ガラスの製造方法は、鉛直に軸支される回転軸を中心として回転する回転羽根を用いて溶融ガラスを撹拌した後に溶融ガラスを冷却固化する光学ガラスの製造方法であって、前記撹拌において、溶融ガラスが収容される撹拌槽の底面と前記回転羽根の下端との間に間隔があって該回転羽根の上端が溶融ガラスの液面以上に位置するように該回転羽根が配置されることを要旨とする。
又、本発明の一態様によれば、光学ガラスの製造装置は、溶融ガラスを収容するための撹拌槽と、鉛直に軸支される回転軸を中心として回転して溶融ガラスを撹拌するための回転羽根とを有する撹拌装置を具備し、前記撹拌槽の底面と前記回転羽根の下端部との間に間隔を有し且つ該回転羽根の上端が溶融ガラスの液面以上に位置するように該回転羽根を配置するための位置決め機構を有することを要旨とする。
本発明によれば、溶融ガラスの撹拌において、高速撹拌による液面の効率的混合によって揮発性成分の気化による濃度差の発生が抑制されるので、全体的に均質な溶融ガラスが得られ、脈理が多い部分と少ない部分とを分離して使用する必要が無い光学ガラスの製造方法となる。又、効率的に全体を撹拌混合することができ、均質性の高い溶融ガラスを短時間で調製することができる光学ガラスの製造装置が提供され、高い歩留まりで効率よく高品質の光学ガラスを提供できる。
ガラスの製造には、ガラス原料を加熱溶解した溶融ガラスを撹拌して均質化する工程があり、一般的な溶融ガラスの撹拌においては、高粘性のガラスに対する抵抗によって回転羽根に高いトルクが生じるので、スターラーの破損等を回避するために制約があり、溶融ガラスを高速で流動させるような混合が困難なことが多い。このような場合、回転羽根を格子状や櫛歯状に形成して溶融ガラスが透過可能な部分を設けることによって抵抗を減らすと共に剪断効果を高めることができ、混合効率の向上が可能となる。
一方、光学ガラスのように溶融時に低粘性である場合が多いガラスの場合は、撹拌における剪断効果は低いことから、逆に、穴のないパドル羽根のような低速回転でも羽根面の圧力が高い回転羽根を用いて、溶融ガラスの流動速度を上昇させつつ撹拌の混合効率を高めることが脈理低減には重要と考えられる。
そこで、回転軸を鉛直に軸支したパドル羽根を有するスターラーを用いて、スターラーの破損や事故等の危険が及ばない範囲で回転数を高めた撹拌の混合効率について調査を行ったが、回転数を上げることで却って脈理品質が悪化する場合も見られ、撹拌速度を上げて脈理を低減することは困難であった。しかし、調査を更に深めて撹拌形態とその混合状態について解析を行ったところ、パドル羽根の軸方向両側(つまり羽根の上下方向)における溶融ガラスの流れ方によって混合効率が異なり、パドル羽根の上下における流れを適正化できれば撹拌速度の増加によって混合効率を上げて脈理を低減できることが判明した。以下に詳細に説明する。
図1を参照して、光学ガラスの製造における溶融ガラスの撹拌工程で適用される撹拌形態を説明する。この撹拌には、1対の長方形型のパドル羽根1からなる回転羽根が回転軸3に回転対称に取り付けられたスターラー5を用い、スターラー5の回転軸3が鉛直になるようにパドル羽根1が円筒形状の撹拌槽7内に軸支され、回転軸3を回転して撹拌槽7に収容される溶融ガラスGをパドル羽根1によって撹拌する。
図1(a)は、一般的な撹拌形態を示し、パドル羽根1は溶融ガラスGの中央部に配置される。この形態では、パドル羽根1の上端Uと溶融ガラスGの液面Sとの間及び下端Lと撹拌槽7の底面Bとの間に各々間隔があり、パドル羽根1の上下に溶融ガラスGが存在する。この状態でスターラー5を回転すると、パドル羽根1によって撹拌槽7の中心付近から周縁に向かって押し出される溶融ガラスGの流れは上下に分岐して、撹拌槽7の内径面に沿った上昇流及び下降流となり、パドル羽根1の上下において、各々、周縁から中心に向かって渦巻き状に流れてパドル羽根1の上下から回転軸3に沿って羽根の回転域に巻き込まれる。この際、溶融ガラスGの液面Sでは圧力変動に伴う液面の波立ちによって巻き込み泡が生じ易く、又、パドル羽根1の上端Uからの距離が長いほど、液面付近の流れは遅くなり、蒸気圧の高い成分の揮発によって溶融ガラスGの液面S付近に組成が変化した層が形成され易くなる。更に、溶融ガラスの流れがパドル羽根の上下両方に分岐する現象は、成分の揮散がある液面付近と揮散がない底部領域とで脈理の生成に明らかな差が生じる要因にもなる。又、回転速度を上げると、回転軸3付近の液面Sにおいて雰囲気の巻き込みにより気泡が生成され易くなり、液面で形成される濃度組成の異なる層が回転軸3付近で下方の溶融ガラスに巻き込まれると、却って微小な脈理が溶融ガラス全体に分散して、均質性の高いガラスが得られ難い。
他方、図1(b)は、本発明の光学ガラスの製造方法における撹拌形態を示し、パドル羽根1の上端Uが溶融ガラスGの液面より上に位置するようにスターラー5が配置される。この場合、パドル羽根1の下方には溶融ガラスGが存在するが、上方には溶融ガラスGは存在しない。この状態でスターラー5を回転すると、パドル羽根1によって撹拌槽7の中心付近から周縁に向かって押し出される溶融ガラスGは、撹拌槽7の内径面に沿って螺旋状に下方にのみ流れ、上下の分岐は防止される。下降した溶融ガラスは、パドル羽根1の下方において周縁から中心に向かって渦状に流れながらパドル羽根1の下から上方へ回転軸5に沿ってパドル羽根1の回転域に巻き込まれる。つまり、周縁から回転軸3の周囲への溶融ガラスGの巻き込みは、パドル羽根1の下端Lと撹拌槽7の底面Bとの間の間隔においてのみ生じ、液面S上での雰囲気の巻き込みによる気泡の生成は起こり難い。しかも、液面S付近の溶融ガラスGは、パドル羽根1の回転力を直接受けて勢いよく流動するので、即座に混合され、高揮発性成分が減少した層は形成され難い。又、液面S付近から撹拌槽7の内径面に沿って下方に流動してパドル羽根1の下方から回転軸3の周囲へ巻き込まれる循環流が形成され、パドル羽根1の下方において径方向に中心部へ集中する過程で非常に混合性が高まる。従って、流動抵抗によるエネルギー損失を少なく押さえることができ、撹拌の動作効率がよいので、溶融ガラスGを効率よく混合できる。故に、低速の撹拌でも液面付近の流動性及び全体の混合効率は高く、回転速度の上昇による混合効率の向上は顕著である。このため、回転速度を過度に上げる必要は無く、スターラー5にかかる負荷を必要最低限に留めて効率よく混合できる。故に、短時間で脈理を減少させて全体的に均質なガラスを得ることが容易になる。
上述のような効率的な撹拌となるには、1)パドル羽根1の上端Uが溶融ガラスGの液面S以上(つまり液面Sより上か、同じ水準)であること、2)パドル羽根1の下端Lと撹拌槽7の底面Bとの間に間隔があること、の2点が要点となる。換言すれば、パドル羽根1の回転域(パドル羽根が移動する空間)が、溶融ガラスGの液面Sに達し、且つ、撹拌槽7底面Bからある程度の距離だけ離れていることが肝要である。パドル羽根1の回転域にある溶融ガラスは、パドル羽根から直接エネルギーを受けられるので、回転域が溶融ガラスの液面Sに達することによって、パドル羽根1が液面付近の溶融ガラスGに直接運動エネルギーを伝達して押し出す。従って、液面における流動速度は高いので、揮発によって液面に層が形成される程長く雰囲気と接触せずに下方へ流動する。そして、パドル羽根1の下端Lと撹拌槽7の底面Bとの間を通って回転軸3に沿って上方へ流動することにより循環流が形成される。
図2は、図1(b)の撹拌形態の混合効率を更に高めるための応用例を示す。この場合、回転軸3の位置を撹拌槽7の中心軸の周りを旋回するように移動させながらスターラー5を回転させる。この場合、溶融ガラスの循環流は常に変形するが、上下に分岐することはない。回転軸の旋回により、液面付近の溶融ガラスの混合を更に促進でき、撹拌能力を溶融ガラス全体に渡って効率的に発揮できる。又、図1(b)の場合よりパドル羽根の回転直径が小さいスターラーで効率よく混合することができる。
図1(b)の撹拌形態において、撹拌槽の寸法及び収容する溶融ガラスの深さに応じて、パドル羽の直径及び高さを所定値以上に設定することによって、溶融ガラスの循環流が好適に形成されて混合効率が高まり、好適な撹拌混合性能を確実に得ることが可能である。具体的には、図3に示すように、撹拌槽の直径Rcに対するパドル羽根の回転直径Rsとの比(=Rs/Rc)をαとし、溶融ガラスの高さHとパドル羽根が溶融ガラスGに浸漬している部分の深さDとの比(=D/H)をβとした時に、αとβとの積γ(=α×β)が0.15以上、好ましくは0.2〜0.7となるように撹拌槽及びパドル羽根を設計すると好ましい。このしきい値は比較的小さな値であり、撹拌槽の容積に比べて小さな羽根面積で済むことを意味する。溶融ガラスを取り扱う設備は、ガラスとの反応を防止するために高価な貴金属である白金又は強化白金で被覆するので、羽根面積が小さいことは、貴金属の使用量を控えてコストを抑制できる点で有利である。
スターラーの耐久性や撹拌抵抗等の観点から、パドル羽根の回転直径Rsを大きくするには限度があり、αが0.9以下となることが好ましい。又、スターラーの回転速度は、回転機構の耐久性等の点から、通常、200rpm程度以下であることが好ましい。このようなことから、50〜200rpm程度の回転速度においてαが0.5〜0.9となる条件で撹拌するのが実用的である。この結果、積γが好適となるためには、β比を0.2〜0.9程度に設定するのが実用的に好ましい。上記では、1対のパドル羽根を例にとって説明したが、パドル羽根としては2〜4対等の複数対であっても良い。
上述のような溶融ガラスの撹拌能力が高いスターラーは、形状が長方形以外の矩形(平行四辺形、菱形、台形等)であるパドル羽根を用いた場合にも、上記の要点に合致すれば構成可能であり、図1(b)のような循環流を形成して脈理を減少させることができる。例えば、パドル羽根の形状が台形で上縁及び下縁が傾斜し水平でない場合でも、パドル羽根の最上部が溶融ガラスの液面に達し、最下部が撹拌槽の底面から離れていれば図1(b)と同様の循環流が形成される。但し、このように上下の縁部が傾斜する場合、最上部及び最下部と回転軸との距離(回転半径)は長い方が良く、蝶形のような径方向先端に最上部及び最下部が位置する形状が好ましいが、スターラーの耐久性を考慮すると、長方形のパドル羽根が最も好ましい。又、湾曲したパドル羽根も使用可能であるが、耐久性及び撹拌効率を考慮すると、平面状である方が好ましい。
本発明の撹拌形態は、円筒形の撹拌槽において好適に実施できるが、これに限定されるものではなく、例えば、円錐台、樽形等の形状や、球又は楕円球の一部を切り欠いた形状などの撹拌槽でも実施可能である。
上述のような本発明に係る撹拌形態は、比較的低粘度の溶融ガラスの撹拌において好適に実施することができ、具体的には、撹拌する際の粘度が20×10−2[Kgm−1s−1]程度以下、好ましくは0.04〜0.15[Kgm−1s−1]程度の溶融ガラスに適用すると良好である。このようなガラスには、B2O3−La2O3−ZnO系ガラス、P2O5−TiO2−WO3系ガラス、TeO2−ZnO系ガラス及びBi2O3−B2O3系ガラス等のような種類があり、種類に応じて配合されるガラス原料を加熱溶解して調製される溶融ガラスを、液相温度以上、好ましくは液相温度より50〜400℃程度高い温度に調整して撹拌均質化を行う。
上述のようにして撹拌を行った溶融ガラスは、予熱したカーボン型枠等に流し出し、固まってガラス化した後に高温のまま速やかに電気炉の中に型枠ごと移動させて十分に時間を掛けて徐冷を施せば、ガラス製品用プリフォームとして成形使用が可能となる。本発明に従って均質化したガラスは、プリズム、光学機器用レンズ、光学フィルター、光ファイバー等のような高い均質性が要求される部品を構成する光学ガラスとして使用可能である。
上述のような形態の撹拌工程を実施する撹拌装置について、図面を参照して以下に例示する。
図4及び図5は、本発明に係るガラス製造装置を構成する撹拌装置の好適な実施形態を例示する側面からの概略構成図である。これらの撹拌装置は、スターラーの位置が軸方向(鉛直方向)に上下に変更・調節可能な機構を備え、パドル羽根が適正位置になるように位置決めして撹拌を行う。
詳細には、図4の撹拌装置10は、回転モーター11を上方に配設した電気炉13(内部を記すために電気炉のみ断面で示す)を有する。電気炉13内の水平な床面に円筒形の撹拌槽15が設置され、撹拌槽15に収容されるガラス原料を加熱により熔解した後、溶融ガラスG内の泡を十分に抜いてから撹拌作業に移行する。回転モーター11に具備されたチャック17でスターラー19の回転軸21を鉛直になるように回転モーター1の軸に固定し、回転軸21に溶接された1対の長方形のパドル羽根23の上端が溶融ガラスGの液面よりも上又は同じになるように電気炉13上の昇降装置25で高さ調整を行う。昇降装置25は、回転モーター11を載置する支持板の端部に設けられたネジ穴に嵌合するネジ軸を回転することによって支持板を昇降させる構造を有するが、これに限定されず、一般に使用される昇降機構から適宜選択して利用すればよい。
撹拌槽15とスターラーの回転軸17及びパドル羽根23は、溶融ガラスGと反応しないように白金又はロジウムが添加された強化白金で形成されており、撹拌槽15の中心軸がスターラーの回転軸21の中心軸と一致するように配置される。パドル羽根23は、溶融ガラスの流速を高めるために、格子状や櫛歯状ではなく、回転時の羽根面上の圧力を高められる中実な板形状で、回転軸19から径方向に延伸するように回転軸と平行に固着されている。
溶融ガラスの混合効率を高めるために、撹拌槽の直径Rcとパドル羽根の回転直径Rsとの比α(=Rs/Rc)と、溶融ガラスGの高さHとパドル羽根23の浸漬部分の深さDとの比β(=D/H)との積γ(=α×β)が所定通りの値となるように羽根の直径Rs及び浸漬深さDは設定される。
図5は、スターラーの回転軸を撹拌槽の中心軸から外して中心軸の周囲を旋回するような公転動作を加えることが可能な機構を備える撹拌装置を示し、図4の実施形態と同様の昇降装置を有している。尚、この図では、電気炉及び撹拌槽は省略されているが、図4と同様にこれらを具備することができる。
この撹拌装置30は、図5に示すように、自転用モーター31と公転用回転モーター33とが回転ギア35,37及びこれらを接続するチェーン39を介して接続され、回転ギア35の軸41の周囲を自転用モーター31が旋回する構造になっている。自転用モーター31には、スターラー43を保持するためのチャック45が具備され、スターラー43の回転軸47が鉛直な状態で回転するように固定されている。自転用モーター31の駆動によって回転軸47に固着されるパドル羽根49による撹拌が実施され、公転用回転モーター33を駆動しなければ、図4の撹拌装置10と同様の自転のみの撹拌が実施できる。
図5の公転動作機構は、チェーン39を介した回転ギア35,37間のエネルギー伝達によって公転動作を行うが、これに限定されるものではなく、例えば、内歯歯車の内側に太陽歯車及び衛星歯車が咬み合い配置される衛星歯車機構などを利用しても良い。
以下、本発明に係る光学ガラスの製造方法について実施例を参照して説明する。
(比較例)
厚さが1mm、1辺の長さが16mmの正方形の強化白金製パドル羽根1対と、直径が9mmの強化白金製回転シャフトとを用意し、回転シャフトを対称に挟むように1パドル羽根を固着して強化白金製のスターラーを作成した。又、撹拌槽として、直径60mm、高さ100mmの強化白金製の溶融坩堝を準備し、溶融時のガラスの深さが50mmとなるようにLa系ガラス原料を投入して熔解炉内で1200℃に加熱してガラス原料を熔解した。これらを用いて、下記に従って溶融ガラスの撹拌を行った。
厚さが1mm、1辺の長さが16mmの正方形の強化白金製パドル羽根1対と、直径が9mmの強化白金製回転シャフトとを用意し、回転シャフトを対称に挟むように1パドル羽根を固着して強化白金製のスターラーを作成した。又、撹拌槽として、直径60mm、高さ100mmの強化白金製の溶融坩堝を準備し、溶融時のガラスの深さが50mmとなるようにLa系ガラス原料を投入して熔解炉内で1200℃に加熱してガラス原料を熔解した。これらを用いて、下記に従って溶融ガラスの撹拌を行った。
撹拌前に、予め溶融ガラスを1200℃で5時間静置して泡抜きを行って、1200℃での溶融ガラスの粘性を測定したところ、5.5×10−2[Kgm−1s−1]であった。スターラーの高さを調節して、パドル羽根の上端が溶融ガラスの液面より20mm下に位置するようにパドル羽根を浸漬し、1200℃を維持したまま、スターラーを回転数50rpmで回転して3時間撹拌した。
撹拌終了後、冶具を用いて速やかに熔解炉から溶融坩堝を取り出し、溶融坩堝を傾けてで、予めガラスの転移温度に予熱したカーボン型枠へほぼ全ての溶融ガラスを流し出し、ガラス化した後に十分に徐冷を行なった。その後、表面を鏡面研磨加工してガラス試料を作製した。
更に、回転数を0rpm(撹拌なし)、100rpm又は200rpmに変更したこと以外は上記と同じ条件で溶融ガラスの調製及び撹拌を行ない、同様の手順でガラス試料を作製した。
上記の4個のガラス試料について、脈理の目視観察及び屈折率差の測定を行った。目視観察及び測定は、光学式干渉計(ZYGO社製、商品名:MARC-GPI-xps)を用いて、脈理の存在を目視確認しながら脈理と脈理周辺との屈折率差を測定した。表1に屈折率差の測定結果を示す。
表1によれば、スターラーの回転数を上げることで屈折率差が減少し、撹拌によって脈理が減少することを示すが、100rpmの場合と200rpmの場合とで屈折率差にあまり差が無く、回転数を上げる効果が小さいことを示すことから、200rpm以上に回転数を上げてもこれ以上の改善は期待できないことが解る。
(表1)
撹拌による脈理の減少
回転数[rpm] 屈折率差[×10 −6 ]
0 212
50 38
100 20
200 19
撹拌による脈理の減少
回転数[rpm] 屈折率差[×10 −6 ]
0 212
50 38
100 20
200 19
(実施例1)
比較例1と同じスターラー、溶融坩堝及び熔解炉を用いて、同じ種類及び容量の溶融ガラスの撹拌を以下のように行った。
比較例1と同じスターラー、溶融坩堝及び熔解炉を用いて、同じ種類及び容量の溶融ガラスの撹拌を以下のように行った。
撹拌前に、予め溶融ガラスを1200℃で5時間静置して泡抜きを行った。スターラーの高さを調節して、パドル羽根の上端が溶融ガラスの液面より3mm上に位置するようにパドル羽根を13mmの深さまで浸漬し、1200℃を維持したまま、スターラーを回転数50rpmで回転して3時間撹拌した。
撹拌終了後、冶具を用いて速やかに熔解炉から溶融坩堝を取り出し、溶融坩堝を傾けてで、予めガラスの転移温度に予熱したカーボン型枠へほぼ全ての溶融ガラスを流し出し、ガラス化した後に十分に徐冷を行なった。その後、表面を鏡面研磨加工してガラス試料を作製した。
更に、回転数を100rpm又は200rpmに変更したこと以外は上記と同じ条件で溶融ガラスの調製及び撹拌を行ない、同様の手順でガラス試料を作製した。
上記の3個のガラス試料について、比較例1と同様にして脈理の目視観察及び屈折率差の測定を行った。表2に屈折率差の測定結果を示す。
表2の結果を表1の比較例と比べると、屈折率差が非常に小さく、撹拌形態が異なることによる効果が現れていることが判る。又、比較例とは異なり、回転数が100rpmの場合と200rpmの場合とで屈折率差は明らかに変化しており、200rpm以上に回転数を上げることによって更に屈折率差を低減可能であることを示している。
(表2)
撹拌による脈理の減少
回転数[rpm] 屈折率差[×10 −6 ]
50 16
100 7.8
200 3.4
撹拌による脈理の減少
回転数[rpm] 屈折率差[×10 −6 ]
50 16
100 7.8
200 3.4
(実施例2)回転径比α及び浸漬深さ比βの影響
パドル羽根の寸法を表3に示す値に変更した以外は実施例1と同様のスターラーを各々用意した。用意したスターラーと、実施例1と同様の溶融坩堝及び溶解炉とを用いて、実施例1と同じ種類及び容量の溶融ガラスを溶融坩堝内で調製し、その撹拌を以下のように行った。
パドル羽根の寸法を表3に示す値に変更した以外は実施例1と同様のスターラーを各々用意した。用意したスターラーと、実施例1と同様の溶融坩堝及び溶解炉とを用いて、実施例1と同じ種類及び容量の溶融ガラスを溶融坩堝内で調製し、その撹拌を以下のように行った。
撹拌前に、予め溶融ガラスを1200℃で5時間静置して泡抜きを行った。表3に示す羽根寸法のスターラーを取り付けて、パドル羽根が表3に示す深さDまで溶融ガラスに浸漬するように高さを調節し、溶融ガラスを1200℃を維持したまま、スターラーを回転数200rpmで回転して3時間撹拌した。
撹拌終了後、冶具を用いて速やかに熔解炉から溶融坩堝を取り出し、溶融坩堝を傾けてで、予めガラスの転移温度に予熱したカーボン型枠へほぼ全ての溶融ガラスを流し出し、ガラス化した後に十分に徐冷を行なった。その後、表面を鏡面研磨加工してガラス試料を作製した。
更に、表3に従って使用するスターラー及びパドル羽根の浸漬深さDを変更したこと以外は上記と同じ条件で撹拌を行ない、同様の手順でガラス試料を作製した。
上記で作製した7個のガラス試料及び実施例1の200回転の場合のガラス試料について、同様にして脈理の目視観察及び屈折率差の測定を行った。表3に屈折率差の測定結果を示す。
表3の結果は、γ値(=αβ)の撹拌効率への影響を示す。表3において、例えば、羽根寸法が幅12mm×長さ32mmであると、シャフト径が9mmであるので、パドル羽根の回転径Rsは33mm(=12mm×2+9mm)となり、溶融坩堝の直径Rc:60mmに対する比αは、33mm/60mm=0.55である。又、浸漬深さDが10mmであると、溶融ガラスの深さ:50mmに対する比βは、10mm/50mm=0.20である。この場合、αとβの積γは、0.55×0.20=0.11となる。
表3の結果から、積γとガラス試料の屈折率差との相関関係をグラフ化すると、図6のようになる。これによれば、γが0.18未満に減少すると屈折率差が急峻に増大するが、γが0.18以上であると屈折率差が低く維持され、品質変化の少ないガラスが得られることが解る。
(表3)
積γの屈折率差への影響
羽根寸法 Rs α D β γ 屈折率差
[mm×mm] [mm] [mm] [×10 −6 ]
12×32 33 0.55 10 0.20 0.11 5.7
12×32 33 0.55 15 0.30 0.17 4.4
16×16 41 0.68 13 0.26 0.18 3.4
16×32 41 0.68 15 0.30 0.21 3.2
20×42 49 0.82 15 0.30 0.25 3.0
12×32 33 0.55 27 0.54 0.29 2.3
16×32 41 0.68 27 0.54 0.36 3.2
20×42 49 0.82 38 0.76 0.61 2.8
積γの屈折率差への影響
羽根寸法 Rs α D β γ 屈折率差
[mm×mm] [mm] [mm] [×10 −6 ]
12×32 33 0.55 10 0.20 0.11 5.7
12×32 33 0.55 15 0.30 0.17 4.4
16×16 41 0.68 13 0.26 0.18 3.4
16×32 41 0.68 15 0.30 0.21 3.2
20×42 49 0.82 15 0.30 0.25 3.0
12×32 33 0.55 27 0.54 0.29 2.3
16×32 41 0.68 27 0.54 0.36 3.2
20×42 49 0.82 38 0.76 0.61 2.8
(実施例3)旋回撹拌の効果
厚さ1mmで、幅16mm×長さ32mmの長方形の強化白金製パドル羽根1対と、直径が9mmの強化白金製回転シャフトとを用意し、回転シャフトを対称に挟むように1パドル羽根を固着して強化白金製のスターラーを作成した。又、撹拌槽として、直径90mm、高さ130mmの強化白金製溶融坩堝を用意し、溶融時の深さが60mmとなるようにLa系ガラス原料を投入して熔解炉内で1200℃に3時間加熱してガラス原料を熔解した。
厚さ1mmで、幅16mm×長さ32mmの長方形の強化白金製パドル羽根1対と、直径が9mmの強化白金製回転シャフトとを用意し、回転シャフトを対称に挟むように1パドル羽根を固着して強化白金製のスターラーを作成した。又、撹拌槽として、直径90mm、高さ130mmの強化白金製溶融坩堝を用意し、溶融時の深さが60mmとなるようにLa系ガラス原料を投入して熔解炉内で1200℃に3時間加熱してガラス原料を熔解した。
パドル羽根の浸漬深さが25mmになるようにスターラーの高さを調整し、スターラーの自転回転数を200rpmとし、公転半径を10mmに設定して、自転のみの場合と、公転回転数25rpmで旋回運動を加える場合の2条件について、3時間の撹拌を行なった。
撹拌終了後の溶融ガラスは、各々、冶具を用いて速やかに熔解炉から溶融坩堝を取り出し、溶融坩堝を傾けて、予めガラスの転移温度に予熱したカーボン型枠へほぼ全ての溶融ガラスを流し出し、ガラス化した後に十分に徐冷を行なった。その後、表面を鏡面研磨加工してガラス試料を作製した。
上記で作製した2個のガラス試料について、実施例1と同様にして脈理の目視観察及び屈折率差の測定を行った。表4に屈折率差の測定結果を示す。
上記撹拌におけるγの値は0.19と比較的小さい値であるが、スターラーに公転動作を加えることによって屈折率差が小さくなり、脈理を減少するのに有効であることが解る。
(表4)
スターラーの旋回効果
浸漬深さD γ 公転半径 屈折率差
[mm] [mm] [×10 −6 ]
25 0.19 − 2.9
25 0.19 10 1.5
スターラーの旋回効果
浸漬深さD γ 公転半径 屈折率差
[mm] [mm] [×10 −6 ]
25 0.19 − 2.9
25 0.19 10 1.5
脈理が少ない均質性の高いガラスを高い歩留まりで効率よく提供でき、光学ガラスの製造に寄与できる。
1,23,49:パドル羽根、U:上端、L:下端、G:溶融ガラス、S:液面、
3,21,47:回転軸、5,19,43:スターラー、7,15:撹拌槽、
10,30:撹拌装置、11:回転モーター、13:電気炉、25:昇降装置、
31:自転用モーター、33:公転用回転モーター、35,37:回転ギア、
39:チェーン、41:軸、45:チャック、
Rc:直径、Rs:回転直径、H:溶融ガラスGの高さ、D:浸漬深さ、
3,21,47:回転軸、5,19,43:スターラー、7,15:撹拌槽、
10,30:撹拌装置、11:回転モーター、13:電気炉、25:昇降装置、
31:自転用モーター、33:公転用回転モーター、35,37:回転ギア、
39:チェーン、41:軸、45:チャック、
Rc:直径、Rs:回転直径、H:溶融ガラスGの高さ、D:浸漬深さ、
Claims (7)
- 鉛直に軸支される回転軸を中心として回転する回転羽根を用いて溶融ガラスを撹拌した後に溶融ガラスを冷却固化する光学ガラスの製造方法であって、前記撹拌において、溶融ガラスが収容される撹拌槽の底面と前記回転羽根の下端との間に間隔があって該回転羽根の上端が溶融ガラスの液面以上に位置するように該回転羽根が配置されることを特徴とする光学ガラスの製造方法。
- 前記撹拌槽は円筒形状であり、前記回転羽根は前記撹拌槽の中心軸を中心として回転するパドル羽根であり、前記撹拌槽の直径に対するパドル羽根の回転直径の比をα、前記撹拌層内の溶融ガラスの深さに対する前記パドル羽根の浸漬深さの比をβとしたとき、αとβとの積γが0.15以上となるように設定する請求項1記載の光学ガラスの製造方法。
- 前記回転羽根の回転軸は、前記撹拌槽内を旋回移動する請求項1又は2に記載の光学ガラスの製造方法。
- 溶融ガラスを収容するための撹拌槽と、鉛直に軸支される回転軸を中心として回転して溶融ガラスを撹拌するための回転羽根とを有する撹拌装置を具備し、
前記撹拌槽の底面と前記回転羽根の下端部との間に間隔を有し且つ該回転羽根の上端が溶融ガラスの液面以上に位置するように該回転羽根を配置するための位置決め機構を有することを特徴とする光学ガラスの製造装置。 - 前記撹拌槽は円筒形状であり、前記回転羽根は、回転軸に対称に固定される長方形のパドル羽根である請求項4記載の光学ガラスの製造装置。
- 前記撹拌槽の直径に対するパドル羽の回転直径の比をα、撹拌層内の溶融ガラスの深さに対するパドル羽の浸漬深さの比をβとしたとき、αとβとの積γが0.15以上であることを特徴とする請求項5記載の光学ガラスの製造装置。
- 前記回転軸は、前記撹拌槽内を旋回移動可能である請求項4〜6の何れかに記載の光学ガラスの製造装置。
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JP2007021369A JP2008184375A (ja) | 2007-01-31 | 2007-01-31 | 光学ガラスの製造方法及び製造装置 |
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Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
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KR20180126506A (ko) * | 2016-03-29 | 2018-11-27 | 니폰 덴키 가라스 가부시키가이샤 | 용융 유리용 교반 장치, 및 유리 물품의 제조 방법 |
JP2021066631A (ja) * | 2019-10-24 | 2021-04-30 | 日本電気硝子株式会社 | 撹拌装置及びガラスの製造方法 |
CN115521045A (zh) * | 2022-10-29 | 2022-12-27 | 刘益友 | 光学镜头的自动化生产线 |
-
2007
- 2007-01-31 JP JP2007021369A patent/JP2008184375A/ja not_active Withdrawn
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US10974983B2 (en) | 2016-03-29 | 2021-04-13 | Nippon Electric Glass Co., Ltd. | Molten glass stirring device and method for manufacturing glass article |
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