JP2008181794A - 酸化物超電導線材の製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】バインダの熱分解による問題点の解決を図り、交流損失を低減することができる酸化物超電導線材の製造方法を提供する。
【解決手段】この酸化物超電導線材120の製造方法は、セラミックス体112の原料となるバインダとセラミックス粉末とを準備する工程と、バインダとセラミックス粉末とを、押出加工を施すことにより複数の酸化物超電導体117の周囲に被覆する工程とを備える。バインダは無機バインダを含む。無機バインダは熱分解しないので、熱処理を行なうときに酸化物超電導線材120の内部に空隙が生じることがなく、セラミックス体112の密度が低下して不均一になることがないため、交流損失が低減される。セラミックス体112の密度低下がないので、酸化物超電導体117も均一に加工され、臨界電流の低下が起こらない。
【選択図】図1
【解決手段】この酸化物超電導線材120の製造方法は、セラミックス体112の原料となるバインダとセラミックス粉末とを準備する工程と、バインダとセラミックス粉末とを、押出加工を施すことにより複数の酸化物超電導体117の周囲に被覆する工程とを備える。バインダは無機バインダを含む。無機バインダは熱分解しないので、熱処理を行なうときに酸化物超電導線材120の内部に空隙が生じることがなく、セラミックス体112の密度が低下して不均一になることがないため、交流損失が低減される。セラミックス体112の密度低下がないので、酸化物超電導体117も均一に加工され、臨界電流の低下が起こらない。
【選択図】図1
Description
この発明は、酸化物超電導線材の製造方法に関し、特に、電力、輸送、高エネルギー、医療などの分野で用いられる酸化物超電導線材の製造方法に関する。
高い臨界温度をもつ酸化物超電導体を利用した超電導技術の実用化が促進されている。イットリウム系の酸化物は温度90Kで、ビスマス系の酸化物は温度110Kで超電導現象を示す。これらの酸化物超電導体は、比較的安価で入手できる液体窒素中で超電導特性を示すため、実用化が期待されている。
このような超電導体に、たとえば電力供給用の交流電流を流すためには、超電導体を銀シースで被覆し、その銀シースを高抵抗体で被覆し、その高抵抗体をさらに金属で被覆するような超電導線材が用いられている(たとえば特許文献1参照)。
特許文献1では、複数の酸化物超電導体の間に介在するセラミックス体を、バインダとセラミックス粉末に押出加工を施した後バインダを熱分解することにより形成する、酸化物超電導線材の製造方法が提案されている。
特開2002−75080号公報
特許文献1で提案されている酸化物超電導線材の製造方法では、バインダを熱分解するときに、バインダが完全に熱分解しないでバインダの成分の一部が残留する場合がある。バインダの成分の一部が残留すると、超電導体を生成または焼結する熱処理を行なうときにバインダの残留成分が気化して、線材の内部に空隙が生じるという問題があった。
また、バインダを熱分解するときに、セラミックス体の密度が低下して不均一になる。その後の加工で、セラミックス体に破れが生じて、交流損失の低減効果が下がる場合がある。また、セラミックス体の密度低下によって、超電導体が加工の際に影響を受けると、臨界電流などの超電導体の性能が低下する。また、超電導体とセラミックス体、または、バインダの残留成分が反応すると、臨界電流などの超電導体の性能が低下する。
さらに、バインダを熱分解する際には、環境の負荷となる二酸化炭素、炭化水素系ガスなどの分解ガスを放出するという問題があった。
それゆえに、この発明の主たる目的は、上述のようなバインダの熱分解による問題点の解決を図り、交流損失を低減することができる酸化物超電導線材の製造方法を提供することである。
この発明に係る酸化物超電導線材の製造方法は、複数の銀被覆された酸化物超電導体と、複数の酸化物超電導体の間に介在するセラミックス体とを備えた酸化物超電導線材の製造方法である。セラミックス体の原料となるバインダとセラミックス粉末とを準備する工程と、バインダとセラミックス粉末とを、押出加工を施すことにより酸化物超電導体の周囲に被覆する工程とを備える。そして、バインダは無機バインダを含む。
この場合は、無機バインダは熱分解しないので、酸化物超電導体を生成または焼結する熱処理を行なうときに、バインダの残留成分が気化して酸化物超電導線材の内部に空隙が生じることがない。また、セラミックス体の密度が低下して不均一になることがなく、その後の加工でも、セラミックス体の均一な組織が保持され、交流損失が低減される。セラミックス体の密度低下がないので、酸化物超電導体も均一に加工されるため、臨界電流の低下が起こらない。また、無機バインダは熱分解しないので、環境の負荷となる二酸化炭素、炭化水素系ガスなどの分解ガスを放出しない。
好ましくは、セラミックス粉末は、酸化物超電導体に含まれる金属元素の少なくともいずれか一つの化合物を含む。たとえば酸化物超電導体が(BiPb)2Sr2Ca2Cu3OXで構成されている場合には、セラミックス粉末としてSrCO3単体を用いることができる。
また好ましくは、セラミックス粉末は、酸化物超電導体に含まれるすべての金属元素の酸化物によって形成されるセラミックスの複合体を含む。たとえば酸化物超電導体が(BiPb)2Sr2Ca2Cu3OXで構成されている場合には、セラミックスの複合体はBi、Pb、Sr、Ca、Cuのすべてを含み、他の陽イオンは含まない。かつ、セラミックスの複合体は、Bi、Pb、Sr、CaおよびCuの酸化物またはその中間体である。
また好ましくは、セラミックスの複合体の各構成元素の構成比率は、酸化物超電導体の対応する各構成元素の構成比率の±20%以内である。たとえば酸化物超電導体が(BiPb)2Sr2Ca2Cu3OXで構成されている場合には、セラミックスの複合体は、(Bi、Pb):Sr:Ca:Cuの比率が2±0.4:2±0.4:2±0.4:3±0.6である、酸化物の複合体である。
また好ましくは、セラミックスの複合体の各構成元素の構成比率は、酸化物超電導体の対応する各構成元素の構成比率と同一である。たとえば酸化物超電導体が(BiPb)2Sr2Ca2Cu3OXで構成されている場合には、セラミックスの複合体にも(BiPb)2Sr2Ca2Cu3OXを用いることができる。
この場合は、セラミックス体と酸化物超電導体との間に反応が起こっても、酸化物超電導体の組織が破壊されることがないため、臨界電流の低下が起こらない。セラミックス体に酸化物超電導体を用いても、無機バインダが非超電導のセラミックスとして酸化物超電導体の粒子間に残留して超電導粒子が電気的に分離されるため、セラミックス体が全体として高抵抗体として機能する。したがって、交流損失が低減する。
この発明の酸化物超電導線材の製造方法によると、バインダの熱分解による問題点を解決でき、さらに交流損失を低減することができる。
以下、図面に基づいてこの発明の実施の形態を説明する。なお、以下の図面において、同一または相当する部分には同一の参照番号を付し、その説明は繰返さない。
(実施の形態1)
図1は、この発明の実施の形態1に従った酸化物超電導線材の断面図である。図1に示すように、酸化物超電導線材120は、酸化物超電導体としてのフィラメント117と、フィラメント117を被覆し、押出し法により形成され、フィラメント117の運転温度において非電導体となるセラミックス体としてのセラミックス被覆層112と、セラミックス被覆層112を被覆する金属管としての銀シース114とを有する。フィラメント117とセラミックス被覆層112との間には銀からなるシース体110が設けられている。酸化物超電導線材120はテープ状であり、紙面の手前側から奥側に向かって延びる。
図1は、この発明の実施の形態1に従った酸化物超電導線材の断面図である。図1に示すように、酸化物超電導線材120は、酸化物超電導体としてのフィラメント117と、フィラメント117を被覆し、押出し法により形成され、フィラメント117の運転温度において非電導体となるセラミックス体としてのセラミックス被覆層112と、セラミックス被覆層112を被覆する金属管としての銀シース114とを有する。フィラメント117とセラミックス被覆層112との間には銀からなるシース体110が設けられている。酸化物超電導線材120はテープ状であり、紙面の手前側から奥側に向かって延びる。
フィラメント117、シース体110、セラミックス被覆層112および銀シース114は横方向に延びるように偏平形状に形成されている。フィラメント117は、たとえば(BiPb)2Sr2Ca2Cu3OXで構成する。酸化物超電導線材120内には複数本のフィラメント117が配置され、複数本のフィラメント117の間に介在するようにシース体110およびセラミックス被覆層112が形成されている。なお、酸化物超電導線材120は偏平形状に成形される前にツイストされていてもよく、その場合、複数本のフィラメント117は酸化物超電導線材120の中心軸に対して螺旋状に延びるように形成されている。
次に、図1で示す酸化物超電導線材の製造方法について説明する。図2〜図8は、図1で示す酸化物超電導線材の製造方法を説明するための図である。まず、図2に示すように、銀からなるシース体110に、酸化物超電導フィラメントの原料となる(BiPb)2Sr2Ca2Cu3OXの原料粉末100を充填する。これを伸線して単芯線としての銀被覆ロッド101を得る。酸化物超電導フィラメントの原料粉末を成形してロッドを形成し、ロッドをシース体110に挿入し、これを伸線して銀被覆ロッド101としてもよい。銀被覆ロッド101の形状は、たとえば六角形状でもよい。シース体110には、たとえばAg−Mg合金、Ag−Mn合金、Ag−Cu合金パイプのような銀合金パイプを用いてもよい。
図3および図4に示すように、押出し加工装置301aに銀被覆ロッド101を挿入する。押出し加工装置301aは、ベース体302と、ベース体302に取付けられたホッパー311と、脱気孔304とクロスヘッドマンドレル305とスクリュー303とを備える。ホッパー311は上方に向いて開口しており、矢印311aで示す方向から、混合材料310が投入される。混合材料310は、平均粒径約1μmに粉砕したセラミックス粉末にバインダを添加してよく混合し、加水して混練し、粘土状にしたものである。脱気孔304はベース体302を貫通しており、ベース体302内に充填される混合材料310を圧縮した際に発生するガスを矢印304aで示す方向に排出する。ベース体302は中空形状であり、その内部にはスクリュー303が設けられ、スクリュー303を覆うように混合材料310が充填されている。スクリュー303が回転することにより混合材料310が矢印で示す方向に移動する。なお、スクリュー303はプランジャに取替えることも可能である。
銀被覆ロッド101をクロスヘッドマンドレル305へ矢印101aで示す方向から挿入する。またスクリュー303を回転させる。これにより、スクリュー303で圧縮された混合材料310は、銀被覆ロッド101に沿うように流れて銀被覆ロッド101に接触して被覆する。これにより、図6に示すように、シース体110の外側にセラミックス被覆層112を備えた、セラミックス/銀被覆ロッド113を形成する。
図5は、図3および図4に示す押出加工後の、セラミックス被覆層の断面図である。バインダ112aとセラミックス粉末112bとを混合させた混合材料310を、押出加工を施すことにより、単芯線としての銀被覆ロッド101の周囲(すなわち、酸化物超電導フィラメントの原料となる原料粉末100の周囲)に被覆する。混合材料310にバインダ112aが含まれることで、バインダ112aが固体潤滑剤の役割を果たし、押出時の流動性を高めるため、スムーズな押出加工を実現することができる。さらに、図5に示すように、押出加工後において、複数のセラミックス粉末112bはバインダ112aにより結合されて保持されるため、型崩れの恐れがない。
このとき、バインダ112aは、無機バインダを含むものとする。無機バインダとして、たとえば、アルカリ金属珪酸塩、珪酸アルミニウム、アルカリ土類金属、アルミ酸塩、金属アルコキシド、白土などの天然の粘土、アモルファスシリカなどを、用いることができる。
また、セラミックス粉末112bは、酸化物超電導体に含まれる金属元素の少なくともいずれか一つの化合物を含むものとする。たとえば、酸化物超電導体としてのフィラメント117が(BiPb)2Sr2Ca2Cu3OXで構成されている場合には、セラミックス粉末112bとして、たとえばSrCO3などの、ビスマス、鉛、ストロンチウム、カルシウムおよび銅の化合物を用いることができる。好ましくは、カルシウム、ストロンチウムおよび銅の酸化物を用いることができる。
次に、図7に示すように、複数本のセラミックス/銀被覆ロッド113を十分に乾燥させてから束ねて、銀シース114内に挿入して嵌合し、多芯ビレット115を形成する。多芯ビレット115は真空中で200℃に加熱され、内部の水分を除去して真空下で端末が封止される。次に図8に示すように、多芯ビレット115を塑性加工で伸線して、多芯丸線116とする。多芯丸線116を圧延して矩形断面成形を行ないテープ状にする。また熱処理を加えて、フィラメント117に酸化物超電導体を生成する。さらに二次圧延を加え、高圧雰囲気で熱処理を加えて最終焼結を行なう。このようにして、図1に示すように、複数の酸化物超電導体のフィラメント117がセラミックス被覆層112に埋め込まれ、その外側に銀シース114が配置された酸化物超電導線材120を得ることができる。なお、銀シース114には、たとえばAg−Mg合金、Ag−Mn合金、Ag−Cu合金パイプのような銀合金パイプを用いることも可能である。
以上説明した実施の形態1の酸化物超電導線材の製造方法においては、バインダ112aは無機バインダを含む。無機バインダは熱分解しないので、酸化物超電導体を生成または焼結する熱処理を行なうときに、バインダの残留成分が気化して酸化物超電導線材の内部に空隙が生じることがない。また、バインダの熱分解によってセラミックス体の密度が低下して不均一になることがないため、その後の加工でも、セラミックス体の均一な組織が保持され、交流損失が低減される。セラミックス体の密度低下がないので、酸化物超電導体も均一に加工されるため、臨界電流の低下が起こらない。また、無機バインダは熱分解しないので、環境の負荷となる二酸化炭素、炭化水素系ガスなどの分解ガスを放出しない。
また、実施の形態1の酸化物超電導線材の製造方法においては、セラミックス粉末112bは、酸化物超電導体に含まれる金属元素の少なくともいずれか一つの化合物を含む。よって、セラミックス体と酸化物超電導体との間に反応が起こっても、酸化物超電導体の組織が破壊されることがないため、臨界電流の低下が起こらない。したがって、交流損失を低減することができる。
なお、有機バインダを使用する場合と異なり無機バインダは熱分解せず残留するので、多量に入れると酸化物超電導体の焼結時にセラミックス体と反応し、分解反応によってガスが発生することがある。よって、無機バインダの含有量は、セラミックス体全体に対し15質量%以下が好ましい。
また、有機バインダと無機バインダを組み合わせて使用することもできる。この場合は、多芯ビレット115に熱処理を加えてセラミックス被覆層112に含まれる有機バインダを熱分解する熱分解処理が必要になるが、無機バインダの含有量をセラミックス体全体に対し5質量%以下に低減することができる。そして、有機バインダの熱分解処理後も、無機バインダの結合力によってセラミックス体の形状を維持することができる。
有機バインダと無機バインダを混合して使用する場合には、セラミックス/銀被覆ロッド113を束ねて多芯ビレット115にする前に600℃程度に加熱して、有機バインダの熱分解処理を行なう。このとき、有機バインダが分解しても無機バインダがセラミックスの結合を保持するため、セラミックス被覆層112が型崩れしない。このため、セラミックス/銀被覆ロッド113を束ねて多芯ビレット115の状態で熱分解処理を行なう必要がないので、セラミックス被覆層112に十分な熱処理を加えることができ、完全に有機バインダを分解して除去することができる。従来の有機バインダのみを使用した場合には、熱分解後にセラミックス被覆層112が型崩れするため、セラミックス/銀被覆ロッド113を束ねて銀シース114内に挿入した後にバインダの熱分解処理を行なう必要があった。銀シース114に挿入した状態で熱分解処理を行なうため、バインダが残留した。また、バインダを完全に分解するために長時間の熱処理を行なうと、銀シース114の結晶組織が変化して(結晶粒の肥大化、合金パイプを使用した場合には添加元素の酸化析出が起こる)、その後の伸線加工で割れが発生するという問題があった。有機バインダと無機バインダを混合して使用すると、無機バインダのみを使用したときよりも、押出成形性が優れており、密度、厚さが均一なセラミックス被覆層112を形成することができる。
(実施の形態2)
実施の形態2の酸化物超電導線材の製造方法は、上述した実施の形態1の酸化物超電導線材の製造方法と基本的に同様の工程を備えている。しかし、実施の形態2では、セラミックス粉末112bが、酸化物超電導体に含まれるすべての金属元素の酸化物によって構成されるセラミックスの複合体を含むものとする点で実施の形態1とは異なっている。そして、セラミックスの複合体の各構成元素の構成比率は、酸化物超電導体の対応する各構成元素の構成比率の±20%以内である。セラミックスの複合体と酸化物超電導体との間に接触があっても、その構成比率の差が20%以内であれば濃度差が小さいため、セラミックスの複合体と酸化物超電導体間の各構成元素の移動は起こりにくく、酸化物超電導体の最終目的生成物への反応に影響がほとんどない。より好ましくは、酸化物超電導体とセラミックスの複合体とが同一の構成比率をもつことである。
実施の形態2の酸化物超電導線材の製造方法は、上述した実施の形態1の酸化物超電導線材の製造方法と基本的に同様の工程を備えている。しかし、実施の形態2では、セラミックス粉末112bが、酸化物超電導体に含まれるすべての金属元素の酸化物によって構成されるセラミックスの複合体を含むものとする点で実施の形態1とは異なっている。そして、セラミックスの複合体の各構成元素の構成比率は、酸化物超電導体の対応する各構成元素の構成比率の±20%以内である。セラミックスの複合体と酸化物超電導体との間に接触があっても、その構成比率の差が20%以内であれば濃度差が小さいため、セラミックスの複合体と酸化物超電導体間の各構成元素の移動は起こりにくく、酸化物超電導体の最終目的生成物への反応に影響がほとんどない。より好ましくは、酸化物超電導体とセラミックスの複合体とが同一の構成比率をもつことである。
具体的には、たとえば酸化物超電導体としてのフィラメント117が(BiPb)2Sr2Ca2Cu3OXで構成されている場合には、セラミックス粉末112bは、(Bi、Pb):Sr:Ca:Cuの構成比率が2±0.4:2±0.4:2±0.4:3±0.6の、酸化物の複合体である。またたとえば、フィラメント117が(BiPb)2Sr2CaCu2OXで構成されている場合には、セラミックス粉末112bは、(Bi、Pb):Sr:Ca:Cuの比率が2±0.4:2±0.4:1±0.2:2±0.4の、酸化物の複合体である。なお、Pbは含まれなくてもよい。
また、フィラメント117が(BiPb)2Sr2Ca2Cu3OXで構成される場合には、セラミックス粉末112bにも(BiPb)2Sr2Ca2Cu3OXを用いることができる。このとき、セラミックス粉末112bはセラミックス被覆層112を形成する段階で(BiPb)2Sr2Ca2Cu3OXが既に形成された微細粉末を用いると良い。フィラメント117内に(BiPb)2Sr2Ca2Cu3OXを形成する焼成プロセスにおいて、セラミックス被覆層112内では(BiPb)2Sr2Ca2Cu3OXの反応がほぼ終了しているため、フィラメント117内の(BiPb)2Sr2Ca2Cu3OXの前駆体(たとえば、Bi2Sr2CaCu2、(CaSr)2PbO4、(CaSr)−Cu−Oなど)と反応が起こりにくい。また、セラミックス被覆層112内は(BiPb)2Sr2Ca2Cu3OXの反応がほぼ終了しており、(BiPb)2Sr2Ca2Cu3OX結晶同士が接合されないため、臨界電流密度が低くなり高抵抗体として機能する。
実施の形態2の酸化物超電導線材の製造方法において、セラミックス体と酸化物超電導体との間に反応が起こっても、酸化物超電導体の組織が破壊されることがないため、臨界電流の低下が起こらない。セラミックス体に酸化物超電導体を用いても、無機バインダが非超電導のセラミックスとして酸化物超電導体の粒子間に残留して超電導粒子が電気的に分離されるため、セラミックス体が全体として高抵抗体として機能する。したがって、交流損失を低減することができる。
以下、この発明の実施例について説明する。この発明の酸化物超電導線材の製造方法によって試料を作製し、各試料の超電導特性を明らかにする実験を行なった。
試料Aは、比較例として、従来の有機バインダを用いる酸化物超電導線材とした。実施の形態1で示す製造方法と基本的に同様の工程に従って試料Aを作製した。フィラメントの原料粉末は、(BiPb)2Sr2Ca2Cu3OXとした。セラミックス体は、セラミックス粉末としてのSrCO3粉末に、バインダとしてのセルロース系有機バインダを添加したものを用いた。また、多芯ビレット115を形成した後、真空加熱する前に、大気中で600℃に加熱して、バインダを熱分解した。
試料Bについては、フィラメントの原料粉末は(BiPb)2Sr2Ca2Cu3OXとし、セラミックス体は、セラミックス粉末としてのSrCO3粉末に、無機バインダとしてのアモルファスシリカを添加したものを用いた。この材料を用いて、実施の形態1で示す製造方法に従い酸化物超電導線材を作成した。また試料Cについては、フィラメントの原料粉末は(BiPb)2Sr2Ca2Cu3OXとし、セラミックス体は、セラミックス粉末としての(Bi、Pb):Sr:Ca:Cuの構成比率が2:2:2:3である酸化物の複合体に、無機バインダとしてのアモルファスシリカを添加したものを用いた。この材料を用いて、実施の形態2で示す製造方法に従い酸化物超電導線材を作成した。なお、試料A〜Cの寸法は、幅2.6mm、厚み0.18mmとした。また、酸化物超電導線材が37本のフィラメントを含むように、試料A〜Cを作成した。
試料A〜Cについて、温度が77Kの液体窒素中で自己磁場下での臨界電流値Icの測定を実施した。また試料A〜Cについて、外部磁場(磁界:0.1T、周波数:50Hz)を線材の長さ方向に垂直でテープ面に平行な方向に印加することにより磁化法で交流損失を測定した。さらに試料A〜Cについて、試料に発生した欠陥を調査し、1km当りの欠陥の発生個数を求めた。
測定した試料の長さと臨界電流値からそれぞれの試料についての交流損失Wiを以下の式に従って求めた。
Wi=(試料iの交流損失)/{(試料iの臨界電流値)・(試料iの長さ)}
なお、Wiの単位はW/A・mである。
なお、Wiの単位はW/A・mである。
この交流損失値を試料Aの交流損失値で除した値を以下の式に従い規格化した交流損失とした。
規格化した交流損失<Wi>=Wi/WA
試料A〜Cについての、臨界電流値、欠陥の発生個数および規格化した交流損失を表1に示す。
試料A〜Cについての、臨界電流値、欠陥の発生個数および規格化した交流損失を表1に示す。
表1より、比較例である試料Aに対し、本願発明品である試料Bおよび試料Cでは、臨界電流値は増大しており、欠陥の発生個数は減少しており、交流損失は極めて小さくなっていることがわかる。したがって、この発明によって、より優れた超電導特性を有し、かつ欠陥の発生も少ない酸化物超電導線材を得ることができることが示された。
今回開示された実施の形態および実施例はすべての点で例示であって、制限的なものではないと考えられるべきである。この発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味、および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
100 酸化物超電導体原料粉末、101 銀被覆ロッド、110 シース体、112 セラミックス被覆層、112a バインダ、112b セラミックス粉末、113 セラミックス/銀被覆ロッド、114 銀シース、115 多芯ビレット、116 多芯丸線、117 フィラメント、120 酸化物超電導線材、301a 押出し加工装置、302 ベース体、303 スクリュー、304 脱気孔、305 クロスヘッドマンドレル、310 混合材料、311 ホッパー。
Claims (5)
- 複数の銀被覆された酸化物超電導体と、
複数の前記酸化物超電導体の間に介在するセラミックス体とを備えた酸化物超電導線材の製造方法であって、
前記セラミックス体の原料となるバインダとセラミックス粉末とを準備する工程と、
前記バインダとセラミックス粉末とを、押出加工を施すことにより前記酸化物超電導体の周囲に被覆する工程とを備え、
前記バインダは無機バインダを含む、酸化物超電導線材の製造方法。 - 前記セラミックス粉末は、前記酸化物超電導体に含まれる金属元素の少なくともいずれか一つの化合物を含む、請求項1に記載の酸化物超電導線材の製造方法。
- 前記セラミックス粉末は、前記酸化物超電導体に含まれるすべての金属元素の酸化物によって形成されるセラミックスの複合体を含む、請求項2に記載の酸化物超電導線材の製造方法。
- 前記複合体の各構成元素の構成比率は、前記酸化物超電導体の対応する各構成元素の構成比率の±20%以内である、請求項3に記載の酸化物超電導線材の製造方法。
- 前記複合体の各構成元素の構成比率は、前記酸化物超電導体の対応する各構成元素の構成比率と同一である、請求項4に記載の酸化物超電導線材の製造方法。
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JP2007015113A Pending JP2008181794A (ja) | 2007-01-25 | 2007-01-25 | 酸化物超電導線材の製造方法 |
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---|---|---|---|---|
JPH04292808A (ja) * | 1991-03-20 | 1992-10-16 | Sumitomo Electric Ind Ltd | 多芯超電導線とその加工方法 |
JP2002506275A (ja) * | 1998-03-03 | 2002-02-26 | フォルシュングスツェントルム カールスルーエ ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング | マルチコアbscoo常温超伝導体 |
JP2002075080A (ja) * | 2000-08-29 | 2002-03-15 | Sumitomo Electric Ind Ltd | 酸化物超電導線材およびその製造方法 |
-
2007
- 2007-01-25 JP JP2007015113A patent/JP2008181794A/ja active Pending
Patent Citations (3)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
JPH04292808A (ja) * | 1991-03-20 | 1992-10-16 | Sumitomo Electric Ind Ltd | 多芯超電導線とその加工方法 |
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JP2002075080A (ja) * | 2000-08-29 | 2002-03-15 | Sumitomo Electric Ind Ltd | 酸化物超電導線材およびその製造方法 |
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