JP2008178388A - ニンニクの増殖方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】 増殖率が高く、かつウイルスフリーのニンニクを増殖するための方法を提供すること。
【解決手段】 (1)ニンニクの茎頂切片(好ましくは珠芽から調製されたもの)からウイルスフリーの小鱗茎を培養する茎頂培養工程、(2)前記小鱗茎を0℃〜10℃の温度範囲で経過させる低温処理工程、(3)前記低温処理を経た小鱗茎の鱗茎肥大部を、小鱗茎の中心部にある成長点を通る切断面に沿って縦方向に1/2〜1/8に分割した後、培養し、シュート鱗茎を形成させる分割継代培養工程、(4)前記シュート鱗茎から各シュートを分離し、液体培地において培養し小鱗茎を培養する液体振盪培養工程を備える増殖方法によって達成される。
【選択図】 なし

Description

本発明は、ニンニクの増殖方法に関するものである。
一般的には、ニンニクはリン片を用いて栽培が行われている。ニンニクの1球には、約4片〜8片にリン片があり、このリン片の1個を種子として使用する。こうして、約10ヶ月間の栽培を経て1個のリン片から1球のニンニクが得られる。すなわち、ニンニクの増殖率としては、約4〜8倍程度という低いものとならざるを得ない。また、種子として用いる親のリン片にウイルスが感染していると、その子にもウイルスが伝搬することになり、病気の拡大・蓄積を招くことになる。
このような状況に鑑みて、増殖率が高く、かつウイルスフリーのニンニクを栽培する方法の開発が行われている。このような試みの例として、いくつかのものが知られている。例えば、特許文献1の方法では、冬に暖かい施設が必要であること、及び北半球と南半球とを縦断する地球規模の方法であるため大掛かりであり、コスト高となる。特許文献2の方法では、ニンニクの葉基部からドーム状組織を増殖させた後、培養を行うことから手間が掛かり、煩雑なものとなってしまう。
特許文献3及び特許文献4の方法では、カルスから増殖を行うため、変異が発生しやすく、最終的なニンニク球の大きさにバラツキが出てしまう。加えて、カルスから種苗を得るまでに、約12ヶ月以上の期間が必要となるため、迅速性に欠ける。
また、非特許文献1に記載の方法(マルチプルシュート法)は、カルスを経由しないことから変異発生率は低いと考えられる。しかし、6回の継代培養と1回の低温処理を必要とし、1茎頂から18か月をかけて640個しか小球が得られず、増殖効率の点で問題がある。
また、非特許文献2に開示された鱗茎底盤部を外植体とした増殖法は、カルスを経由せず、低温処理(4℃)した鱗茎を材料とすることで、一つの母球から2か月で約100個の小球が得られるので、現在のところ最も効率的な方法とされている。しかし、この手法では材料となる母球は予めウイルスフリー化され、数年かけて肥大させる必要があり、普通葉の基部にあたる部位を正確に切り出す技術が要求される。従って、この増殖法では、母球養成の培養・育成システムと増殖培養系を並列で進める必要があり、栽培面積や労力の面で、必ずしも効率的とはいえない。
このように、増殖率が高く、かつウイルスフリーのニンニクを増殖する方法については、更なる改良の余地があった。
特開平9−275770号公報 WO2000/078128号公報 特開平5−115227号公報 特開平8−205703号公報 Nagakubo, T., A. Nagasawa and H. Ohkawa. 1993, Micropropagation of garlic through in vitro bulblet formation, Plant Cell, Tissue and Organ Culture 32:175-183 Ayabe, M. and S. Sumi. 1998, Establishment of a novel tissue culture method, stem-disc culture, and its practical application to micropropagation of garlic, Plant Cell Reports 17:773-779
本発明は、上記した事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、増殖率が高く、かつウイルスフリーのニンニクを増殖するための方法を提供することにある。
本発明者は鋭意検討の結果、茎頂切片を採取しウイルスフリー状態として、一定期間培養した後、低温条件を与え、成長点を切断する分割継代培養することにより、ニンニクを高い増殖率で栽培することに成功し、基本的には本発明を完成するに至った。
すなわち、上記課題を解決するための発明に係るニンニクの増殖方法は、(1)ニンニクの茎頂切片からウイルスフリーの小鱗茎を培養する茎頂培養工程、(2)前記小鱗茎を0℃〜10℃の温度範囲で4週間〜8週間経過させる低温処理工程、(3)前記低温処理を経た小鱗茎の鱗茎肥大部を、小鱗茎の中心部にある成長点を通る切断面に沿って縦方向に1/2〜1/8に分割した後、培養し、シュート鱗茎を形成させる分割継代培養工程、(4)前記シュート鱗茎から各シュートを分離し、液体培地において培養し小鱗茎を培養する液体振盪培養工程を備えることを特徴とする。
上記発明においては、(1)茎頂培養工程において、茎頂切片がニンニク珠芽から調製されることが好ましい。
また、(3)分割継代培養工程において、小鱗茎を1/4に分割することが好ましい。
上記(4)液体振盪培養工程を経て得られた小鱗茎は、次のようにして種苗とすることができる。第1に、小鱗茎をそのまま苗育成用用土を充填したトレイに植え込み、窒素濃度を適当に希釈した(例えば、50ppm〜100ppm)液肥を随時に用いつつ培養する。定植期が秋の場合には、ある程度まで肥培管理した後、灌水を停止することで強制的に休眠を誘導し、小鱗茎の形で保存し、そのまま種苗とする。第2に、定植期が春の場合は、小鱗茎をしばらく保存した後、定植前1〜2ヶ月前に苗育成用用土を充填したトレイに植え込み、窒素濃度を適当に希釈した(例えば、50ppm〜100ppm)液肥を随時に用いつつ培養することで種苗を得る。
また、前記(1)茎頂培養工程を行う前に、(P)前記茎頂切片を調製するための母球として使用するニンニクまたは珠芽を0℃〜10℃の温度範囲で4週間〜8週間経過させる母球低温処理工程を備えることが好ましい。
本発明によれば、ニンニクの茎頂切片が、(3)分割継代培養工程において、2倍〜8倍となり、(4)液体振盪培養工程においてシュートが2倍〜6倍程度に拡大される。このため(1)〜(4)の工程を通して、1個の茎頂切片を4倍〜48倍程度まで増殖した種苗とすることができる。この種苗は、通常のニンニク球(4片〜8片)、或いは1片種のままで大きくすることができるので、従来の増殖率に比べると、数倍〜数十倍程度の増殖率を備えた栽培方法を提供できる。
また、(1)〜(4)の工程は、全体で約6ヶ月〜約9ヶ月程度で完了することができるので、カルスを経る場合に比べると、数倍程度の迅速性がある。
加えて、本方法は、カルスを経ないので変異によるバラツキが少なく、かつウイルスフリーのものとなる。
また、(P)母球低温処理工程を行うと、低温処理した母球から茎頂切片を調製することにより、汚染率が低く、鱗茎形成割合及び切片あたりの形成数が向上し、シュート形成(未肥大)率が低く、不定根形成率が低く、かつ無反応率が低いなどの効果を奏することができる。
次に、本発明の実施形態について、図面を参照しつつ説明するが、本発明の技術的範囲は、これらの実施形態によって限定されるものではなく、発明の要旨を変更することなく様々な形態で実施することができる。また、本発明の技術的範囲は、均等の範囲にまで及ぶものである。
以下に説明するニンニク培養苗生産方法は、(P)予め母球として使用するニンニクまたは珠芽の低温処理(母球低温処理工程)、(1)珠芽の茎頂培養によるウイルスフリー化(茎頂培養工程)、(2)低温処理工程、(3)小鱗茎の分割継代培養による大量増殖(分割継代培養工程)、(4)増殖シュート・小鱗茎の肥大促進(液体振盪培養工程)、および(5)トレイを利用した種苗生産工程の各ステップからなる。以下に、各ステップの概要と要点を説明する。
(P)母球の低温処理(母球低温処理工程)
茎頂切片を調製するための母球としてのニンニクまたは珠芽は、予め低温処理しておくことが好ましい。その場合に、母球を0℃〜10℃(好ましくは、3℃〜8℃)の温度で、数週間程度(約2週間〜約8週間程度、好ましくは約4週間〜約8週間)を経過させる。この工程を経ることにより、汚染率を減少させる、鱗茎形成の効率を向上させる、シュート形成(未肥大)の割合を減少させる、不定根形成率を減少させる、無反応率を減少させるなどの効果を奏することができる。
(1)珠芽の茎頂培養によるウイルスフリー化(茎頂培養工程)
次いで、母球のニンニク成球または小鱗茎(珠芽)から茎頂切片を調製する。切片の大きさとしては、約0.2mm〜約0.8mm程度が好ましく、約0.3mm〜 約0. 6mm程度が更に好ましい。この切片を既知の培地を用いて培養することにより、ウイルスフリーの小鱗茎を得ることができる。培地としては、例えば、WP培地、MS培地、ホワイト(White)培地及びこれらの修正培地のような培地を用いることができる。
但し、最も好ましくは、茎頂切片はニンニク珠芽から調製する。珠芽は、抽台後に花序の基部に形成される小球であり、従来かえりみらることがなかった。ニンニク鱗茎は有皮鱗茎のため極端な汚れはないが、長年にわたり土壌中にあるため、初代培養での材料消毒には充分な注意を払う必要がある。しかし、珠芽は花茎の頂部に形成され、鱗茎に比べ遙かに清浄であり、簡易な消毒で容易に無菌化が達成できる。また、珠芽を利用することで、母球はそのまま温存されること、および母球の性質を見極めた後に材料選択ができることなどの利点がある。
この培養工程では、鱗茎部の径が約4mm〜約5mm程度となるまで小鱗茎の培養を行う。
(2)低温処理工程
非特許文献1によれば、ニンニクは低温処理(4℃、60日間程度)することにより鱗茎形成が誘導されることが知られている。そこで、本発明者らはこの条件を本実施形態の方法に合うように改良したものである。
低温処理工程は、小鱗茎を培養容器に入れたまま、0℃〜10℃(好ましくは、3℃〜8℃)の温度で、数週間程度(約2週間〜約8週間程度、好ましくは約4週間〜約8週間)を経過させる。この工程を経ることにより、小鱗茎の鱗茎肥大が促進される。
初代培養で得られた小球について、培養期間中の早期、葉身の伸長が始まった時点で、ウイルス除去の成否をウイルスに特異的な塩基配列をプライマーに設定したPCR法により検出する(例えば、特許文献2に記載の方法を応用することができる)。ウイルス除去が確認された個体についてのみ次に示す小球分割による増殖を行う。
(3)小鱗茎の分割継代培養による大量増殖(分割継代培養工程)
このステップでは、脱分化過程(カルス形成) を経由せず、茎頂培養で得られた小鱗茎を分割して増殖を図る点に新規性がある。培養小球の分割による増殖法は、鱗茎をつくるユリ(高山真策.1988 .ユリ.p.249−252.樋口春三監修.植物組織培養の世界.柴田ハリオ(株).東京.)、アマリリス( 梁川 正.1988.アマリリス.p.133−139 .樋口春三監修.植物組織培養の世界.柴田ハリオ(株) .東京.)、ネリネ(江面 浩.1993 .植物種苗工場と球根花き.p.59−88.高山真策監修.植物種苗工場.化学工業日報社.東京.)などで既に確立した技術となっている。ユリ、アマリリス、ネリネでは培養小鱗茎をそのまま、または鱗葉をばらして継代培養すると、特に液体回転培養の手法によりひとつの鱗葉から多数の小球が誘導される。しかし、ニンニクは肥厚する鱗葉が1枚であり、非常に頂芽優勢性が強い特徴がある。このため、ニンニクでは得られた培養小鱗茎をそのまま継代培養しても増殖は起こらない。このことは、本発明の研究過程において確かめられた。そこで、本発明者はニンニク特有の強い頂芽優勢性(ニンニクでは中心に将来花となる芽( ニンニクの芽として販売される)の外側に、一枚の鱗葉(実際は輪状に形成) だけが分厚く肥厚する)を打破することで、小球分化を促す工夫をした。すなわち、球の中心にある芽を破壊するように分割処理を行い、頂芽優勢を打破して、分割片を培養して、新たな小球を形成させた。
鱗茎部の直径が4mm以上となったら、鱗茎肥大部を縦方向に1/2〜1/8に分割する。このとき上述の通り、小鱗茎の中心部にある成長点を破壊するように、切断面が成長点を通るようにする。最終的なニンニク球のバラツキを小さくするためには、できるだけ均等に分割することが好ましい。1/2に分割すると、後に培養される小鱗茎をより大きくできるものの、増殖率が小さくなる。一方、1/8に分割すると、増殖率をかせげるものの、後に培養される小鱗茎が小さくなってしまう。このため、好ましくは1/3〜1/6に分割する。但し、1/3、1/6のように分母に奇数因数が含まれる場合には、均等に分割することが難しく、分割された小鱗茎のバラツキが大きくなることが予想される。このため、更に好ましくは1/4に分割する。具体的には、小鱗茎の中心部を縦方向に刃物(例えば、ナイフ、メス、カッターなど)で2回切断することにより、1/4分割を得る。技術的には、芽の中心部を確実に壊すように刃物をいれることが重要で、簡易に行うには、まず葉、根を小鱗茎から除去し、逆さにおいて球の下側から刃物を入れると正確に分割することができる。
分割された小鱗茎の切片を数週間(約6週間〜約10週間)に渡って、固形培地(例えば、寒天、ゲランガムを用いた培地)で培養することにより、各切片から数本のシュートを分化させ、シュート鱗茎を栽培する。
(4)増殖シュート・小鱗茎の肥大促進(液体振盪培養工程)
小球分割片から新たに形成されたシュートまたは小球を効率よく肥大させるため、液体培地を用いて回転振とう培養を行う。他の鱗茎類では振とう培養は、新たな小球の分化を促進させるが、ニンニクの場合は小球増殖が起こるのは静置培養の場合のみで、回転 振盪培養を行うと葉の伸長、根の生長が抑えられ、鱗茎部の肥大が促進される。この点は、ニンニク特有の反応である。
具体的には、3〜4本程度のシュートが分化したところで、シュート鱗茎の各シュートを分離し、それぞれのシュートの生長・鱗茎肥大を促進するため、液体培地において振盪培養を行う。このとき、水平回転速度は、60rpm〜100rpmとすることが好ましい。数週間(約3週間〜約5週間)程度の液体振盪培養を行うことにより、各シュートを、鱗茎肥大部の径が約4mm〜5mm程度の小鱗茎となるまで育成する。なお、この工程における培地としては、例えば、WP培地、MS培地、ホワイト(White)培地及びこれらの修正培地のような培地を用いることができる。
(5)セルトレイを利用した種苗生産工程
鱗茎部直径が4〜5mm 大の小鱗茎となったら、篩で大きな破片を除去した成型苗育成用用土(例えば、メロトミックス)、または極微細バーミキュライトを充填したセルトレイに一つずつ植え込み、窒素濃度を50ppm〜100ppm程度に希釈した液肥を随時施用しながら肥培管理する。定植期が秋の場合には、ある程度まで肥培管理した後、灌水を停止することで強制的に休眠を誘導し、小鱗茎の形で保存し、そのまま種苗とする。
また、定植期が春の場合は、(4)の工程後に得られた小鱗茎をしばらく保存した後、定植前1〜2ヶ月前に苗育成用用土を充填したトレイに植え込み、窒素濃度を適当に希釈した(例えば、50ppm〜100ppm)液肥を随時に用いつつ培養することで種苗を得る。
本実施形態の方法の特徴としては、次の通りである。
(1)小鱗茎の分割による増殖
既報のニンニクの組織培養による大量増殖法は、盤茎部(底盤部、または短縮茎)またはそれから誘導したカルスからシュートを得るものである。カルスを経由すると、常に培養変異の問題が懸念され、加えて得られるシュートの大きさが不揃いとなる問題がある。盤茎部を利用する場合には、培養外植片を調整するために正確に切除するなどの一定水準以上の技術が必要となり、大量に扱う方法としては適さない。
一方、本法では、茎頂培養で得たウイルスフリー小鱗茎を縦に分割するという比較的単純な方法で植物体の増殖を図る。小鱗茎の成長点を破壊することで、ニンニクが持つ強い頂芽優勢性を打破して、多くのシュートを得ようとするものである。例えば、1/4にカットした各切片が最低3本のシュートを形成すれば、1回の分割操作で12倍の植物体を得ることができる。この方法では、カルスを経由しないため培養変異の発生率は低く、また小鱗茎の根を切除した切り口を上に向けてメスを入れることで容易に中心部を通るような分割操作を行える。
(2)分割継代培養工程と液体振盪培養工程の分離
固形培地を用いた培養では、シュートが葉を伸ばし、多くの根を伸長させる。しかし、培養容器内での葉はそれほど高い光合成機能を持つわけではなく、本来必要とされる鱗茎の肥大にはあまり機能しない。また、必要以上の根の形成は、逆に鱗茎肥大を抑制するので、必要最低限の葉と根を形成させる条件で培養することが好ましい。このため、本実施形態の方法では、シュート増殖のための工程(分割継代培養工程)は、寒天、ゲランガムなどの固形培地で行い、小鱗茎の肥大のための工程(液体振盪培養工程)は、液体培地を用いて振盪培養を行う。振盪条件として、60rpm〜100rpmの振盪を行うことにより、葉、根の伸長が抑制されるので、鱗葉の肥大が促進され、より短期間に肥大した小鱗茎が得られる。
(3)セルトレイを利用した種苗生産
最終的に種苗とするには、植物体を順化する必要がある。本実施形態の方法では、充分に鱗茎部が肥大した状態でセルトレイに植え付け順化を開始するので、乾燥などの環境変化のストレスに対して耐性が高く、容易に順化できる。また、セルトレイで管理することにより、大量の種苗を小面積で容易に管理できる。更に、ある程度までセルトレイで育成した後、灌水を停止して強制的に休眠させることにより、簡易かつ長期に渡る保存が可能となる。
次に、本実施形態を更に具体化した実施例について説明するが、本発明の技術的範囲は下記実施例によって限定されるものではない。
<実施例1> 鱗茎切片の生長に及ぼすBA濃度の影響
約4mm径のニンニク鱗茎の成長点を通るように縦方向に4分割した。この1/4分割した鱗茎切片の生長に対して、ベンジルアデニン(BA)濃度が与える影響を確認した。
MS培地に50g/lのショ糖、8g/l の寒天、及びBAを濃度を変えて添加した固形培地で、上記鱗茎切片を3ヶ月に渡って培養した。BA濃度は、 0, 0.1, 0.5, 1.0 mg/l とした。培養温度は24 ℃であった。
結果を表1に示した。
Figure 2008178388
データは、10個の平均値±SEで示した。表より、BA濃度が0.1mg/lのときに全体重が最大であったことから、実施例2〜4においては、この濃度を用いた。
<実施例2> 鱗茎切片の生長に及ぼすショ糖濃度および通気栓の有無の影響
MS培地に50g/lまたは80g/l のショ糖、8g/lの寒天、0.1mg/lのBA を添加した固形培地で、1/4分割鱗茎切片を3ヶ月に渡って培養した。それぞれのショ糖濃度において、通気栓の有り(+)または無し(−)のものを用意して、その影響を確認した。培養温度は24℃であった。
結果を表2に示した。
Figure 2008178388
データは、10個の平均値±SEで示した。表より、50g/lまたは80g/lのショ糖においては、大きな変化は見られなかった。また、通気栓の有無についても特に大きな変化は見られなかった。
<実施例3> 鱗茎の生長に及ぼす分割サイズの影響
MS培地に50g/lのショ糖、8g/l の寒天、0.1mg/lのBAを添加した固形培地で、鱗茎(1/1:無切断のもの)、並びに1/2、1/4、1/8分割の鱗茎切片を2ヶ月に渡って培養することにより、分割サイズの影響を確認した。培養温度は24℃であった。
結果を表3に示した。
Figure 2008178388
データは、10〜16 個の平均値±SEで示した。また、表中の括弧内の数値は、鱗茎1個あたりの数値を示した。表より、1/2〜1/8の分割のいずれにおいても、適度な生長が認められることが分かった。但し、1/8切片では、生長した鱗茎の全体重が小さくなった。また、1/2切片と1/4切片とを比べると、生長後の鱗茎の全体重が大きくは違わないことから、1/4切片が最も良いと考えられた。
<実施例4> 液体振盪培養した小鱗茎の培養開始時のサイズとその後の生長の比較
大きさの異なる鱗茎を液体培地で振盪培養し、生長割合を比較した。液体培地として、MS培地に50g/lのショ糖、0.1mg/l のBAを添加したものを用いた。鱗茎は径が3mm〜9mm のものを用い、2ヶ月間の培養を行った。培養温度は24℃であった。
結果を表4に示した。
Figure 2008178388
データは、6個の平均値±SEで示した。表中の括弧内の数値は、培養開始時点と培養終了時点の全体重の割合を示した。表より、3mm〜9mm のいずれの径の鱗茎も良好に生長することが分かった。このとき、培養開始時の鱗茎の径(全量)が小さいと、生長割合が大きくなる傾向があった。また、培養開始時の鱗茎が大きいほど、終了時の鱗茎が大きくなることが分かった。
上記実験結果から次のようにして、ニンニクの種苗を栽培した。
<実施例5> ニンニク種苗の栽培
1.茎頂培養によるウイルスフリー化、及び低温処理
(1)珠芽から0.4mm大で茎頂切片を採取し、MS +0.1mg/lBA(ベンジルアデニン) +50g/lショ糖(スクロース) +5g/lゲルライト(ゲランガム) (pHは5.8に調整)の培地に置床し、24℃、6000lx(80μmolm-2s-1 PPFD) ・16時間照明/8時間暗黒の培養条件で培養することによりウイルスフリー植物体を得た。なお、ウイルスの有無はPCR法で検定した。
(2)その後、鱗茎部がある程度肥大(肥大部径が約4 〜5mm程度)するまで培養容器内で育成した。
(3)更に、この後の増殖過程での鱗茎肥大促進のため、上記(2)で得られた小鱗茎を培養容器に入れたまま、4℃で1〜2ヵ月間低温処理した。
2.小鱗茎の分割継代培養による大量増殖
上記1.(3)により低温処理を終えた小鱗茎から根、葉を切除し、鱗茎肥大部を縦に1/4に分割した。分割の際は、小球を逆さにおいてメスの刃を入れ、切断面が鱗茎の中心部を通るようにした。
3.増殖シュート・小鱗茎の肥大促進
約2ヵ月の培養により、各切片から3〜4本のシュートが分化したところで、各シュートを分離し、それぞれのシュートの生長・鱗茎肥大を促すため、上記培地からゲルライトを除いた液体培地を用いて、液体振とう培養(水平回転培養;60〜80rpm )により1ヵ月間培養を行い、鱗茎肥大部の径が約4〜5mmとなるまで育成した。
4.セルトレイを利用した種苗生産
上記3で得られた小鱗茎を、極微細バーミキュライトまたは篩で大きな砕片を除いたセル成型苗育成用用土(メロトミックスなど) を充填したセルトレイに一つずつ植え込み、窒素濃度50〜100ppm 程度に希釈した液肥を随時施用しながら肥培管理した。
次の工程として、定植期が秋の場合は、ある程度肥培管理した後、灌水を停止して強制的に休眠を誘導し、小鱗茎の形で保存、そのまま種苗とする。また、春先の定植の場合は、上記3のステップを定植前1〜2 ヵ月前から開始し、セルトレイ内で適度に発根、数枚の葉を展開した状態の小鱗茎を種苗として供給できる。
こうして、ニンニクの種苗を栽培することができた。
<実施例6> 母球低温処理工程の影響
次に、茎頂培養工程を行う前に、母球として使用するニンニクの珠芽を低温処理することによって、その後のニンニク小鱗茎切片培養における鱗茎肥大に及ぼす影響を調べた。
36個の珠芽(品種:壱岐早生)を18個ずつの2群に分け、一方の群は低温処理を行わないコントロール群とし、他方の群はガラスシャーレに入れ、5℃の冷蔵庫にて40日間の低温処理を行う群とした。各群について、低温処理後に成長点を通るように縦に1/4に分割し、72個ずつの小鱗茎切片(茎頂切片)とした。各小鱗茎切片について、その後は同じ工程、すなわち茎頂培養工程、低温処理工程、分割継代培養工程、液体振盪培養工程を行った後に、汚染率、鱗茎形成率、シュート形成(未肥大)率、不定根形成率、無反応率を評価した。
基本培地として、MS培地に0.1mg/lのBA、50g/lのショ糖、及び8g/lの寒天(pH5.8)を添加したものを用い、培養容器としてφ20×120mmガラス試験管(培地量10ml)を用いた。また、培養条件として、1日のうち16時間の照明(白色蛍光灯(40μmolm-2s-1PPFD))とし、24±2℃を用いた。
結果を表5に示した。
Figure 2008178388
データは、汚染率については、72個中の割合で示し、その他のデータ(*)については、汚染していない茎頂切片の割合(%)または平均値±SEで示した。表より、母球低温処理工程を行った群は、コントロール群に比べて、汚染率が低く、鱗茎形成割合及び切片あたりの形成数が高く、シュート形成(未肥大)率が低く、不定根形成率が低く、かつ無反応率が低いという優れた結果を示した。
このように本実施形態によれば、ニンニクの茎頂切片が、分割継代培養工程において2倍〜8倍となり、液体振盪培養工程においてシュートが2倍〜6倍程度に拡大される。このため全工程を通して、1個の茎頂切片を4倍〜48倍程度まで増殖した種苗とすることができる。この種苗は、通常のニンニク球(4片〜8片)、或いは1片種のままで大きくすることができるので、従来の増殖率に比べると、数倍〜数十倍程度の増殖率を備えた栽培方法となる。
また、上記の工程は、全体で約3ヶ月〜約5ヶ月程度で完了することができるので、カルスを経る場合に比べると、数倍程度の迅速性がある。
加えて、本方法は、カルスを経ないので変異によるバラツキが少なく、かつウイルスフリーのものとなる。
更に、母球低温処理を行うことにより、汚染率が低く、鱗茎形成割合及び切片あたりの形成数が高く、シュート形成(未肥大)率が低く、不定根形成率が低く、かつ無反応率が低いという優れたものとなる。

Claims (5)

  1. (1)ニンニクの茎頂切片からウイルスフリーの小鱗茎を培養する茎頂培養工程、(2)前記小鱗茎を0℃〜10℃の温度範囲で4週間〜8週間経過させる低温処理工程、(3)前記低温処理を経た小鱗茎の鱗茎肥大部を、小鱗茎の中心部にある成長点を通る切断面に沿って縦方向に1/2〜1/8に分割した後、培養し、シュート鱗茎を形成させる分割継代培養工程、(4)前記シュート鱗茎から各シュートを分離し、液体培地において培養し小鱗茎を肥大させる液体振盪培養工程を備えることを特徴とするニンニクの増殖方法。
  2. 前記茎頂培養工程において、茎頂切片がニンニク珠芽から調製されることを特徴とする請求項1に記載のニンニクの増殖方法。
  3. 前記(3)分割継代培養工程において、小鱗茎を1/4に分割することを特徴とする請求項1または2に記載のニンニクの増殖方法。
  4. 更に、(5)前記液体振盪培養工程で得られた小鱗茎をトレイで用土を用いた培養して種苗とすることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一つに記載のニンニクの増殖方法。
  5. 前記(1)茎頂培養工程を行う前に、(P)前記茎頂切片を調製するための母球として使用するニンニクまたは珠芽を0℃〜10℃の温度範囲で4週間〜8週間経過させる母球低温処理工程を備えたことを特徴とする請求項1〜4のいずれか一つに記載のニンニクの増殖方法。
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