JP2008177455A - 発光素子 - Google Patents
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Abstract
【課題】高発光効率かつ低電圧駆動が可能な発光素子を提供する。
【解決手段】陽極と陰極との間に正孔輸送層と発光層、電子輸送層が存在し、正孔輸送層は電子受容性ドーパント材料を含む2種以上の化合物を有する層を含有し、電子輸送層は特定の構造を有する1,10又は1,7フェナントロリン誘導体を含有する発光素子。
【選択図】 なし
【解決手段】陽極と陰極との間に正孔輸送層と発光層、電子輸送層が存在し、正孔輸送層は電子受容性ドーパント材料を含む2種以上の化合物を有する層を含有し、電子輸送層は特定の構造を有する1,10又は1,7フェナントロリン誘導体を含有する発光素子。
【選択図】 なし
Description
本発明は、電気エネルギーを光に変換できる素子であって、表示素子、フラットパネルディスプレイ、バックライト、照明、インテリア、標識、看板、電子写真機および光信号発生器などの分野に利用可能な発光素子に関する。
陰極から注入された電子と陽極から注入された正孔が両極に挟まれた有機発光体内で再結合する際に発光するという有機薄膜発光素子の研究が、近年活発に行われている。この発光素子は、薄型でかつ低駆動電圧下での高輝度発光と、発光材料を選ぶことによる多色発光が特徴であり、注目を集めている。
この研究は、コダック社のC.W.Tangらによって有機薄膜発光素子が高輝度に発光することが示されて以来、多くの研究機関が検討を行っている。コダック社の研究グループが提示した有機薄膜発光素子の代表的な構成は、ITOガラス基板上に正孔輸送性のジアミン化合物、発光層であるトリス(8−キノリノラート)アルミニウム(III)、そして陰極としてMg:Agを順次設けたものであり、10V程度の駆動電圧で1,000cd/m2の緑色発光が可能であった(非特許文献1参照)。
また、有機薄膜発光素子は、発光層に種々の発光材料を用いることにより、多様な発光色を得ることが可能であることから、ディスプレイなどへの実用化研究が盛んである。有機薄膜発光素子における最大の課題の一つは、素子の発光効率の向上と低駆動電圧化である。素子発光効率を支配する因子としては、電子と正孔の注入バランス因子(キャリアバランス)、キャリア再結合による発光性励起子の生成効率、発光量子効率が重要であることが知られている(非特許文献2参照)。低駆動電圧化については、高キャリア移動度を有する電子輸送材料として、オキサジアゾール誘導体、トリアゾール誘導体(非特許文献3参照)や、フェナントロリン誘導体(特許文献1参照)など数多くの材料が開発されている。また素子構成の観点からは、正孔、電子輸送材料にルイス酸分子やアルカリ金属をドーピングする「化学ドーピング」技術が低駆動電圧化技術として知られている(非特許文献4、および非特許文献5参照)。
アプライド フィジクス レターズ(Applied Physics Letters)(米国)、1987年、第51巻、第12号、p.913−915 "有機EL材料とディスプレイ"、シーエムシー出版、2001年、p.31 "有機EL材料とディスプレイ"、シーエムシー出版、2001年、p.152 特開2004−281390号公報
"有機EL材料技術"、シーエムシー出版、2004年、p.24
アプライド フィジクス レターズ(Applied Physics Letters)(米国)、1998年、73巻、6号、p.729−731
アプライド フィジクス レターズ(Applied Physics Letters)(米国)、1987年、第51巻、第12号、p.913−915 "有機EL材料とディスプレイ"、シーエムシー出版、2001年、p.31 "有機EL材料とディスプレイ"、シーエムシー出版、2001年、p.152
しかしながら従来の技術では、素子高効率化と低電圧化の両立と言う面では充分なレベルには達しておらず、特に「化学ドーピング」技術を用いる際には低電圧化が可能になる一方で正孔移動度が過剰に高くなるため、正孔、電子のキャリアバランスの制御が難しくなり、素子効率が低下し易いという問題があった。
そこで本発明は、かかる従来技術の問題を解決し、高発光効率かつ低電圧駆動が可能な発光素子を提供することを目的とする。
すなわち本発明は、陽極と陰極との間に少なくとも正孔輸送層と発光層、電子輸送層が存在し、電気エネルギーにより発光する素子であって、正孔輸送層は電子受容性ドーパント材料を含む2種以上の化合物を有する層を含有し、電子輸送層は少なくとも一般式(1)または一般式(2)で表される化合物を含有することを特徴とする発光素子である。
(R1〜R14はそれぞれ同じでも異なっていてもよく、水素、アルキル基、シクロアルキル基、複素環基、アルケニル基、シクロアルケニル基、アルキニル基、アリール基、ヘテロアリール基、ハロゲン、シアノ基、シリル基、並びに隣接置換基との間に形成される環構造の中から選ばれる。B1、B2は単結合もしくは連結基を表し、連結基は二重結合、三重結合、置換もしくは無置換の多価芳香族炭化水素残基および置換もしくは無置換の多価芳香族複素環残基の少なくとも1種を有する基である。nは2以上4以下の自然数である。)
本発明によれば高発光効率かつ低電圧駆動が可能な発光素子が得られる。
本発明の発光素子は、少なくとも陽極と陰極、およびそれら陽極と陰極の間に介在する正孔輸送層と発光層、電子輸送層とで構成されている。
本発明で用いられる陽極は、正孔を有機層に効率よく注入できる材料であれば特に限定されないが、比較的仕事関数の大きい材料を用いるのが好ましく、例えば、酸化錫、酸化インジウム、酸化亜鉛インジウム、酸化錫インジウム(ITO)などの導電性金属酸化物、あるいは金、銀、クロムなどの金属、ヨウ化銅、硫化銅などの無機導電性物質、ポリチオフェン、ポリピロールおよびポリアニリンなどの導電性ポリマーなどが挙げられる。これらの電極材料は、単独で用いてもよいが、複数の材料を積層または混合して用いてもよい。
電極の抵抗は、発光素子の発光に十分な電流が供給できればよく、発光素子の消費電力の観点からは低抵抗であることが望ましい。例えば、300Ω/□以下のITO基板であれば素子電極として機能するが、現在では10Ω/□程度の基板の供給も可能になっていることから、100Ω/□以下の低抵抗品を使用することが特に望ましい。ITOの厚みは抵抗値に合わせて任意に選ぶ事ができるが、通常100〜300nmの間で用いられることが多い。
また、発光素子の機械的強度を保つために、発光素子を基板上に形成することが好ましい。基板としては、ソーダガラスや無アルカリガラスなどのガラス基板が好適に用いられる。ガラス基板の厚みは、機械的強度を保つのに十分な厚みがあればよいので、0.5mm以上あれば十分である。ガラスの材質については、ガラスからの溶出イオンが少ない方がよいので無アルカリガラスの方が好ましいが、SiO2などのバリアコートを施したソーダライムガラスも市販されているのでこれを使用することもできる。さらに、陽極が安定に機能するのであれば、基板はガラスである必要はなく、例えば、プラスチック基板上に陽極を形成してもよい。ITO膜形成方法は、電子線ビーム法、スパッタリング法および化学反応法など特に制限を受けるものではない。
本発明で用いられる陰極に用いられる材料としては、電子を有機層に効率良く注入できる物質であれば特に限定されないが、一般に白金、金、銀、銅、鉄、錫、亜鉛、アルミニウム、インジウム、クロム、リチウム、ナトリウム、カリウム、セシウム、カルシウム、マグネシウムおよびこれらの合金などが挙げられる。電子注入効率をあげて素子特性を向上させるためには、リチウム、ナトリウム、カリウム、セシウム、カルシウム、マグネシウムまたはこれら低仕事関数金属を含む合金が有効である。しかしながら、これらの低仕事関数金属は、一般に大気中で不安定であることが多く、取り扱いが困難である。このため、有機層に微量のリチウムやマグネシウム等の低仕事関数の金属、あるいはフッ化リチウムのような大気中で安定な無機塩をドーピング(真空蒸着の膜厚計表示で1nm以下)した後に、電極保護のために白金、金、銀、銅、鉄、錫、アルミニウムおよびインジウムなどの大気中でより安定な金属を積層して陰極とする方法が好ましい。更にこれら金属を用いた合金、そしてシリカ、チタニアおよび窒化ケイ素などの無機物、ポリビニルアルコール、塩化ビニル、炭化水素系高分子化合物などを保護膜層として積層することが、好ましい例として挙げられる。これらの電極の作製法は、抵抗加熱、電子線ビーム、スパッタリング、イオンプレーティングおよびコーティングなど、特に制限されない。
本発明において、発光層は単一層でも複数層からなってもどちらでもよく、各層の発光材料は単一の材料でも複数の材料(ホスト材料、発光性ドーパント材料)の混合物であってもよいが、効率、色純度、寿命の観点から膜形成、正孔・電子輸送、発光の機能を分離できるホスト材料と発光性ドーパント材料との混合物の方が好ましい。すなわち、本発明の発光素子では、各発光層において、ホスト材料もしくは発光性ドーパント材料のいずれか一種類のみが発光してもよいし、ホスト材料と発光性ドーパント材料がともに発光してもよい。ホスト材料と発光性ドーパント材料は、それぞれ一種類であっても、複数の組み合わせであっても、いずれでもよい。発光性ドーパント材料は発光層の全体に含まれていても、部分的に含まれていても、いずれでもよい。発光性ドーパント材料の量は、多すぎると濃度消光現象が起きるため、ホスト材料に対して20重量%以下で用いることが好ましく、さらに好ましくは10重量%以下である。ドーピング方法としては、ホスト材料との共蒸着法によって形成することができるが、ホスト材料と予め混合してから同時に蒸着してもよい。または、ホスト材料と発光性ドーパント材料を望む割合で溶媒に溶かし、塗布してもよい。
発光性ドーパント材料としては、具体的には従来から知られている、アントラセン、ピレン、ペリレンなどの縮合アリール環を有する化合物やその誘導体、フラン、ピロール、チオフェン、シロール、9−シラフルオレン、9,9’−スピロビシラフルオレン、ベンゾチオフェン、ベンゾフラン、インドール、ジベンゾチオフェン、ジベンゾフラン、イミダゾピリジン、フェナントロリン、ピラジン、ナフチリジン、キノキサリン、ピロロピリジン、チオキサンテンなどのヘテロアリール環を有する化合物やその誘導体、ジスチリルベンゼン誘導体、アミノスチリル誘導体、テトラフェニルブタジエン誘導体、アルダジン誘導体、クマリン誘導体、イミダゾール、チアゾール、チアジアゾール、カルバゾール、オキサゾール、オキサジアゾール、トリアゾールなどのアゾール誘導体およびその金属錯体および4,4’−ビス(N−(3−メチルフェニル)−N−フェニルアミノ)ビフェニルに代表される芳香族アミン誘導体などが挙げられるが、これに限定されるものではない。
ホスト材料としては、具体的には、4,4’−ビス(N−(1−ナフチル)−N−フェニルアミノ)ビフェニルなどの芳香族アミン誘導体、トリス(8−キノリノラート)アルミニウム(III)をはじめとする金属キレート化オキシノイド化合物、ジスチリルベンゼン誘導体などのビススチリル誘導体、テトラフェニルブタジエン誘導体、インデン誘導体、クマリン誘導体、オキサジアゾール誘導体、ピロロピリジン誘導体、ピレン誘導体、アントラセン誘導体やテトラセン誘導体などのアセン化合物、ペリノン誘導体、シクロペンタジエン誘導体、オキサジアゾール誘導体、カルバゾール誘導体、ピロロピロール誘導体、ポリマー系では、ポリフェニレンビニレン誘導体、ポリパラフェニレン誘導体、ポリフルオレン誘導体、ポリビニルカルバゾール誘導体、ポリチオフェン誘導体が好適に用いられる。
正孔輸送層は正孔輸送材料と電子受容性ドーパント材料を含む2種以上の化合物を有する層を含有する。すなわち正孔輸送層は、正孔輸送材料の1種を単層、または2種以上を積層あるいは混合する際に、正孔輸送材料の一部、あるいは全部に電子受容性ドーパントを混合せしめることにより形成される。正孔輸送材料に電子受容性ドーパントを混合することにより、正孔注入、輸送特性が飛躍的に向上し、その結果発光素子の駆動電圧を低減することが可能となる。
正孔輸送層を形成する方法は、抵抗加熱式の真空蒸着法により、1種以上の正孔輸送材料と電子受容性ドーパントを複数の蒸着源から同時に蒸着する方法、1種以上の正孔輸送材料と電子受容性ドーパントを予め混合しておいたものを同一の蒸着源から蒸着する方法、1種以上の正孔輸送材料と電子受容性ドーパントを各種溶媒により溶解、あるいは高分子結着剤を用いて混合物を調整した後に基板上に塗布する方法が用いられる。
正孔輸送材料と電子受容性ドーパントの混合比率は、その組み合わせにより最適値が異なるが、通常、重量比で、正孔輸送材料:電子受容性ドーパント=1:0.01〜1の範囲にあれば素子低電圧化の効果は発現する。
正孔輸送材料は例えば、4,4’−ビス(N−(3−メチルフェニル)−N−フェニルアミノ)ビフェニル、4,4’−ビス(N−(1−ナフチル)−N−フェニルアミノ)ビフェニル、4,4’,4”−トリス(3−メチルフェニル(フェニル)アミノ)トリフェニルアミンなどのトリフェニルアミン誘導体、ビス(N−アリルカルバゾール)またはビス(N−アルキルカルバゾール)などのビスカルバゾール誘導体、ピラゾリン誘導体、スチルベン系化合物、ヒドラゾン系化合物、ベンゾフラン誘導体やチオフェン誘導体、オキサジアゾール誘導体、フタロシアニン誘導体、ポルフィリン誘導体、などの複素環化合物、ポリマー系では前記単量体を側鎖に有するポリカーボネートやスチレン誘導体、ポリチオフェン、ポリアニリン、ポリフルオレン、ポリビニルカルバゾールおよびポリシランなどが好ましいが、発光素子の作製に必要な薄膜を形成し、陽極から正孔が注入できて、さらに正孔を輸送できる化合物であれば特に限定されるものではない。
電子受容性ドーパントは、上記正孔輸送材料にドーピングすることにより正孔キャリア密度を増加させ、駆動電圧を大幅に低下させることができる。電子受容性ドーパントとしては、組み合わせる正孔輸送材料によって最適な材料を選択する必要があるが、無機材料か、少なくともフッ素、ホウ素、もしくはシアノ基を含有する有機材料であることが望ましい。無機材料としては例えば、塩化第二鉄(FeCl3)や塩化アルミニウム(AlCl3)等の塩化物、五酸化バナジウム(V2O5)の酸化物、フッ化ホウ素(BF3)等のホウ化物などの、ルイス酸化合物を好適に用いることができる。有機材料としては、例えばテトラフルオロテトラシアノキノンジメタン(F4−TCNQ)、ジシアノジクロロキノン(DDQ)等のキノン誘導体、ジオクサボリン誘導体、5−スルホサリチル酸、ジノニルナフタレンジスルホン酸等のスルホン酸化合物、トリス(4−ブロモフェニル)アミニウムヘキサクロロアンチモナーテ(TBPAH)、トリス(ペンタフルオロフェニル)ボラン(PPB)、等を好適な例として挙げられるが、これらに限らず正孔輸送材料と電子受容性ドーパント間で、電子の授受が行われる組み合わせであれば、素子の低電圧効果を発現することができる。
上記電子受容性ドーパントを正孔輸送層にドーピングした層と、発光層とが直接接する構成の場合、電子受容性ドーパントと発光層間で相互作用が起こり、発光層本来の発光が得られない場合がある。この時は、正孔輸送材料に電子受容性ドーパントをドーピングした層と発光層との間に、相互作用を防止するための緩衝層を挿入することが効果的である。緩衝層としては既に正孔輸送材料として例示した化合物を好適に用いることができる。緩衝層の膜厚は3nm以上であれば効果があり、30nm以上であれば正孔輸送層の低電圧化効果が低減する。この観点から、5nm以上20nm以下の範囲が最適である。
電子輸送層は少なくとも一般式(1)または一般式(2)で表される化合物を含有する。
R1〜R14はそれぞれ同じでも異なっていてもよく、水素、アルキル基、シクロアルキル基、複素環基、アルケニル基、シクロアルケニル基、アルキニル基、アリール基、ヘテロアリール基、ハロゲン、シアノ基、シリル基、並びに隣接置換基との間に形成される環構造の中から選ばれる。B1、B2は単結合もしくは連結基を表し、連結基は二重結合、三重結合、置換もしくは無置換の多価芳香族炭化水素残基および置換もしくは無置換の多価芳香族複素環残基の少なくとも1種を有する基である。nは2以上4以下の自然数である。
これらの置換基のうち、アルキル基とは、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基などの飽和脂肪族炭化水素基を示し、これは無置換でも置換されていてもかまわない。置換されている場合の置換基には特に制限は無く、例えば、アルキル基、アリール基、ヘテロアリール基等を挙げることができ、この点は、以下の記載にも共通する。また、アルキル基の炭素数は特に限定されないが、入手の容易性やコストの点から、通常、1〜20の範囲である。
また、シクロアルキル基とは、例えば、シクロプロピル、シクロヘキシル、ノルボルニル、アダマンチルなどの飽和脂環式炭化水素基を示し、これは無置換でも置換されていてもかまわない。アルキル基部分の炭素数は特に限定されないが、通常、3〜20の範囲である。
また、複素環基とは、例えば、ピラン環、ピペリジン環、環状アミドなどの炭素以外の原子を環内に有する脂肪族環からなる基を示し、これは無置換でも置換されていてもかまわない。複素環基の炭素数は特に限定されないが、通常、2〜20の範囲である。
また、アルケニル基とは、例えば、ビニル基、アリル基、ブタジエニル基などの二重結合を含む不飽和脂肪族炭化水素基を示し、これは無置換でも置換されていてもかまわない。アルケニル基の炭素数は特に限定されないが、通常、2〜20の範囲である。
また、シクロアルケニル基とは、例えば、シクロペンテニル基、シクロペンタジエニル基、シクロヘキセニル基などの二重結合を含む不飽和脂環式炭化水素基を示し、これは無置換でも置換されていてもかまわない。
また、アルキニル基とは、例えば、エチニル基などの三重結合を含む不飽和脂肪族炭化水素基を示し、これは無置換でも置換されていてもかまわない。アルキニル基の炭素数は特に限定されないが、通常、2〜20の範囲である。
また、アリール基とは、例えば、フェニル基、ナフチル基、ビフェニル基、フェナントリル基、ターフェニル基、ピレニル基などの芳香族炭化水素基を示す。アリール基は、無置換でも置換されていてもかまわない。アリール基の炭素数は特に限定されないが、通常、6〜40の範囲である。
また、ヘテロアリール基とは、例えば、フラニル基、チオフェニル基、オキサゾリル基、ピリジル基、キノリニル基などの炭素以外の原子を環内に有する芳香族基を示し、これは無置換でも置換されていてもかまわない。ヘテロアリール基の炭素数は特に限定されないが、通常、2〜30の範囲である。
ハロゲンとは、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素を示す。
シリル基とは、例えば、トリメチルシリル基などのケイ素原子への結合を有する官能基を示し、これは置換基を有していても有していなくてもよい。シリル基の炭素数は特に限定されないが、通常、3以上20以下の範囲である。また、ケイ素数は、通常、1以上6以下である。
隣接基との間に形成される環構造とは、前記一般式(1)で説明すると、R1〜R7の中から選ばれる任意の隣接2置換基(例えばR1とR2)が互いに結合して共役または非供役の環構造を形成するものである。これら環構造は環内構造に窒素、酸素、硫黄原子を含んでいてもよいし、さらに別の環と縮合していてもよいが、これら環構造を構成する原子が炭素原子と水素原子のみであると、優れた耐熱性が得られるため好ましい。
上記一般式(1)、または一般式(2)で表される電子輸送層に含まれる化合物として、具体的には下記のような構造を挙げられるが特に限定されない。
上記一般式(1)、一般式(2)で示す化合物のうち、一般式(1)で示す1,10−フェナントロリン骨格を含む化合物は特に高い電子輸送特性を示すことから、低電圧化素子を得るにはより好ましい材料であると言える。
また、上記一般式(1)のB1、一般式(2)のB2が、1,4−フェニレン基、1,3−フェニレン基、1,6−ナフチレン基、1,7−ナフチレン基、2,6−ナフチレン基、2,7−ナフチレン基、少なくとも1つのベンゼン環がオルト位で連結しているターフェニル基のうちのいずれかである時高い耐熱性が付与されることから、素子低電圧化と素子耐久性に特に優れた発光素子が得られる。
また、一般式(1)または一般式(2)において、nは2以上4以下の自然数であればいずれでも構わないが、電子輸送層を真空蒸着法にて形成する場合の蒸着安定性の観点や合成の容易さの観点からnは2であることがより好ましい。
本発明では、正孔輸送層として上述の通り電子受容性ドーパント材料を含む2種以上の化合物を有する層を含有し、電子輸送層として一般式(1)、一般式(2)の化合物を含有することにより、低駆動電圧特性と高発光効率特性を両立することができる。これは電子受容性ドーパントを含む正孔輸送層が極めて高い正孔輸送特性を持つ一方で、一般式(1)、一般式(2)で示される化合物を含む電子輸送層が極めて高い電子輸送特性を持つため、正孔と電子のキャリアバランスが理想的な割合になり、励起子の生成効率が高くなることに起因する。この観点で、電子受容性ドーパントを含む正孔輸送層と組み合わせるべき電子輸送材料としては、一般式(1)、一般式(2)の電子輸送層は最適な材料であると言える。
発光素子を構成する上記各層の形成方法は、抵抗加熱蒸着、電子ビーム蒸着、スパッタリング、分子積層法、コーティング法、インクジェット法、印刷法、レーザー誘起熱転写法など特に限定されないが、通常は、素子特性の点から抵抗加熱蒸着または電子ビーム蒸着が好ましい。
層の厚みは、発光物質の抵抗値にもよるので限定することはできないが、1〜1000nmの間から選ばれる。発光層、電子輸送層、正孔輸送層の膜厚はそれぞれ、好ましくは1nm以上200nm以下であり、さらに好ましくは5nm以上100nm以下である。
本発明の発光素子は、電気エネルギーを光に変換できる発光素子である。ここに電気エネルギーとは主に直流電流から得られるエネルギーを指すが、パルス電流や交流電流を用いることも可能である。電流値および電圧値は特に制限はないが、素子の消費電力や寿命を考慮すると、できるだけ低いエネルギーで最大の輝度が得られるようにするべきである。
本発明の発光素子は、例えば、マトリクスおよび/またはセグメント方式で表示するディスプレイとして好適に用いられる。
本発明におけるマトリクス方式とは、表示のための画素が格子状やモザイク状など二次元的に配置されたものをいい、画素の集合で文字や画像を表示する。画素の形状やサイズは用途によって決まる。例えば、パソコン、モニター、テレビの画像および文字表示には、通常一辺が300μm以下の四角形の画素が用いられ、また、表示パネルのような大型ディスプレイの場合は、一辺がmmオーダーの画素を用いることになる。モノクロ表示の場合は、同じ色の画素を配列すればよいが、カラー表示の場合には、赤、緑、青の画素を並べて表示させる。この場合、典型的にはデルタタイプとストライプタイプがある。そして、このマトリクスの駆動方法としては、線順次駆動方法やアクティブマトリクスのどちらでもよい。線順次駆動の方が構造が簡単であるという利点があるが、動作特性を考慮した場合、アクティブマトリクスの方が優れる場合があるので、これも用途によって使い分けることが必要である。
本発明におけるセグメント方式(タイプ)とは、予め決められた情報を表示するようにパターンを形成し、決められた領域を発光させることになる。例えば、デジタル時計や温度計における時刻や温度表示、オーディオ機器や電磁調理器などの動作状態表示および自動車のパネル表示などが挙げられる。そして、前記マトリクス表示とセグメント表示は同じパネルの中に共存していてもよい。
本発明の発光素子は、各種機器等のバックライトとしても好ましく用いられる。バックライトは、主に自発光しない表示装置の視認性を向上させる目的に使用され、液晶表示装置、時計、オーディオ装置、自動車パネル、表示板および標識などに使用される。特に、液晶表示装置、中でも薄型化が課題となっているパソコン用途のバックライトとしては、従来のものが蛍光灯や導光板からなっているため薄型化が困難であることを考えると、本発明における発光素子を用いたバックライトは薄型で軽量であることが特徴となる。
以下、実施例をあげて本発明を説明するが、本発明はこれらの実施例によって限定されない。
実施例1
ITO透明導電膜(陽極)をスパッタリング法により膜厚125nm堆積させたガラス基板(ジオマテック(株)製、11Ω/□、スパッタ品)を38mm×46mmに切断し、エッチング処理により12mm×38mmの矩形のITO膜がガラス基板上に残るようにパターニングを行った。得られた基板を セミコクリン56(商品名、フルウチ化学(株)製)で15分間超音波洗浄してから、超純水でリンス洗浄した後に、クリーンエアーを吹き付けて水分を除去した。この基板を1時間UV−オゾン処理した後に、真空蒸着装置内に設置して、装置内の真空度が5×10−4Pa以下になるまで真空排気した。抵抗加熱法によって、ITO透明導電膜上にまず正孔注入材料として、銅フタロシアニンを10nm成膜した。正孔輸送層は以下の通り形成した。正孔輸送材料として、4,4’−ビス(N−(1−ナフチル)−N−フェニルアミノ)ビフェニル(NPD)、電子受容性ドーパント材料としてテトラフルオロテトラシアノキノンジメタン(F4−TCNQ)を2重量%になるようにして、異なる2箇所の蒸着源から共蒸着を行い、銅フタロシアニン上に40nm積層した。さらに緩衝層として上記NPDを単独で10nm積層した。次に発光層は以下の通り形成した。ホスト材料としてトリス(8−キノリノラート)アルミニウム(III)(Alq3)、発光性ドーパント材料として4−(ジシアノメチレン)−2−tブチル−6(1,1,7,7−テトラメチルジュロリジル−9−エニル)−4H−ピラン(DCJTB)をドープ濃度が2重量%になるように40nmの厚さに正孔輸送層上に積層した。次に、電子輸送材料として、下記に示すE−1を35nmの厚さに積層した。次に、フッ化リチウムを0.5nm蒸着した後、アルミニウムを100nm蒸着して陰極とし、5mm×5mm角の発光素子を作製した。ここで言う膜厚は、水晶発振式膜厚モニター表示値である。得られた発光素子に、1mA(2.5mA/cm2)の直流電流を通電すると、赤橙色の発光が観測された。素子の発光特性を色彩色差計“CS−100”(ミノルタ(株)製)で、駆動電圧を陽極と陰極間の電圧差をテスターで計測して評価した。この時の駆動電圧は4.1V、発光効率(電流効率)は7.5cd/Aであった。
ITO透明導電膜(陽極)をスパッタリング法により膜厚125nm堆積させたガラス基板(ジオマテック(株)製、11Ω/□、スパッタ品)を38mm×46mmに切断し、エッチング処理により12mm×38mmの矩形のITO膜がガラス基板上に残るようにパターニングを行った。得られた基板を セミコクリン56(商品名、フルウチ化学(株)製)で15分間超音波洗浄してから、超純水でリンス洗浄した後に、クリーンエアーを吹き付けて水分を除去した。この基板を1時間UV−オゾン処理した後に、真空蒸着装置内に設置して、装置内の真空度が5×10−4Pa以下になるまで真空排気した。抵抗加熱法によって、ITO透明導電膜上にまず正孔注入材料として、銅フタロシアニンを10nm成膜した。正孔輸送層は以下の通り形成した。正孔輸送材料として、4,4’−ビス(N−(1−ナフチル)−N−フェニルアミノ)ビフェニル(NPD)、電子受容性ドーパント材料としてテトラフルオロテトラシアノキノンジメタン(F4−TCNQ)を2重量%になるようにして、異なる2箇所の蒸着源から共蒸着を行い、銅フタロシアニン上に40nm積層した。さらに緩衝層として上記NPDを単独で10nm積層した。次に発光層は以下の通り形成した。ホスト材料としてトリス(8−キノリノラート)アルミニウム(III)(Alq3)、発光性ドーパント材料として4−(ジシアノメチレン)−2−tブチル−6(1,1,7,7−テトラメチルジュロリジル−9−エニル)−4H−ピラン(DCJTB)をドープ濃度が2重量%になるように40nmの厚さに正孔輸送層上に積層した。次に、電子輸送材料として、下記に示すE−1を35nmの厚さに積層した。次に、フッ化リチウムを0.5nm蒸着した後、アルミニウムを100nm蒸着して陰極とし、5mm×5mm角の発光素子を作製した。ここで言う膜厚は、水晶発振式膜厚モニター表示値である。得られた発光素子に、1mA(2.5mA/cm2)の直流電流を通電すると、赤橙色の発光が観測された。素子の発光特性を色彩色差計“CS−100”(ミノルタ(株)製)で、駆動電圧を陽極と陰極間の電圧差をテスターで計測して評価した。この時の駆動電圧は4.1V、発光効率(電流効率)は7.5cd/Aであった。
実施例2
電子輸送材料として下記に示すE−2を用いた以外は、実施例1と同様にして発光素子を作製した。得られた発光素子に、1mA(2.5mA/cm2)の直流電流を通電すると、赤橙色の発光が観測された。この時の駆動電圧は4.3V、発光効率(電流効率)は7.1cd/Aであった。
電子輸送材料として下記に示すE−2を用いた以外は、実施例1と同様にして発光素子を作製した。得られた発光素子に、1mA(2.5mA/cm2)の直流電流を通電すると、赤橙色の発光が観測された。この時の駆動電圧は4.3V、発光効率(電流効率)は7.1cd/Aであった。
比較例1
電子輸送材料としてトリスキノリノールアルミニウム錯体(Alq3)を用いた以外は、実施例1と同様にして発光素子を作製した。得られた発光素子に、1mA(2.5mA/cm2)の直流電流を通電すると、橙色の発光が観測された。この時の駆動電圧は8.5V、発光効率(電流効率)は3.8cd/Aであり、駆動電圧は高く、発光効率は低くなった。
電子輸送材料としてトリスキノリノールアルミニウム錯体(Alq3)を用いた以外は、実施例1と同様にして発光素子を作製した。得られた発光素子に、1mA(2.5mA/cm2)の直流電流を通電すると、橙色の発光が観測された。この時の駆動電圧は8.5V、発光効率(電流効率)は3.8cd/Aであり、駆動電圧は高く、発光効率は低くなった。
比較例2
正孔輸送層を以下のように形成する以外は実施例2と同様の工程で発光素子を作製した。すなわち正孔輸送材料として4,4’−ビス(N−(1−ナフチル)−N−フェニルアミノ)ビフェニル(NPD)を単独で50nmの厚さになるように銅フタロシアニン上に積層した。この時緩衝層は設けなかった。得られた発光素子に、1mA(2.5mA/cm2)の直流電流を通電すると、赤橙色の発光が観測された。この時の駆動電圧は6.7V、発光効率(電流効率)は5.3cd/Aであり、駆動電圧は高く、発光効率は低くなった。
正孔輸送層を以下のように形成する以外は実施例2と同様の工程で発光素子を作製した。すなわち正孔輸送材料として4,4’−ビス(N−(1−ナフチル)−N−フェニルアミノ)ビフェニル(NPD)を単独で50nmの厚さになるように銅フタロシアニン上に積層した。この時緩衝層は設けなかった。得られた発光素子に、1mA(2.5mA/cm2)の直流電流を通電すると、赤橙色の発光が観測された。この時の駆動電圧は6.7V、発光効率(電流効率)は5.3cd/Aであり、駆動電圧は高く、発光効率は低くなった。
実施例3
電子輸送材料として下記に示すE−3を用いた以外は、実施例1と同様にして発光素子を作製した。得られた発光素子に、1mA(2.5mA/cm2)の直流電流を通電すると、赤橙色の発光が観測された。この時の駆動電圧は5.3V、発光効率(電流効率)は6.5cd/Aであった。
電子輸送材料として下記に示すE−3を用いた以外は、実施例1と同様にして発光素子を作製した。得られた発光素子に、1mA(2.5mA/cm2)の直流電流を通電すると、赤橙色の発光が観測された。この時の駆動電圧は5.3V、発光効率(電流効率)は6.5cd/Aであった。
比較例3
正孔輸送層を以下のように形成する以外は実施例3と同様の工程で発光素子を作製した。すなわち正孔輸送材料として4,4’−ビス(N−(1−ナフチル)−N−フェニルアミノ)ビフェニル(NPD)を単独で50nmの厚さになるように銅フタロシアニン上に積層した。この時緩衝層は設けなかった。得られた発光素子に、1mA(2.5mA/cm2)の直流電流を通電すると、赤橙色の発光が観測された。この時の駆動電圧は7.6V、発光効率(電流効率)は5.0cd/Aであり、駆動電圧は高く、発光効率は低くなった。
正孔輸送層を以下のように形成する以外は実施例3と同様の工程で発光素子を作製した。すなわち正孔輸送材料として4,4’−ビス(N−(1−ナフチル)−N−フェニルアミノ)ビフェニル(NPD)を単独で50nmの厚さになるように銅フタロシアニン上に積層した。この時緩衝層は設けなかった。得られた発光素子に、1mA(2.5mA/cm2)の直流電流を通電すると、赤橙色の発光が観測された。この時の駆動電圧は7.6V、発光効率(電流効率)は5.0cd/Aであり、駆動電圧は高く、発光効率は低くなった。
Claims (4)
- 陽極と陰極との間に少なくとも正孔輸送層と発光層、電子輸送層が存在し、電気エネルギーにより発光する素子であって、正孔輸送層は電子受容性ドーパント材料を含む2種以上の化合物を有する層を含有し、電子輸送層は少なくとも一般式(1)または一般式(2)で表される化合物を含有することを特徴とする発光素子。
- 上記一般式(1)、一般式(2)のnが2である請求項1記載の発光素子。
- 電子受容性ドーパント材料が無機材料であることを特徴とする請求項1記載の発光素子。
- 電子受容性ドーパント材料が、少なくともフッ素、ホウ素もしくはシアノ基を含有する有機材料であることを特徴とする請求項1記載の発光素子。
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- 2007-01-22 JP JP2007011069A patent/JP2008177455A/ja active Pending
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