特許文献1においては、スロットル開度を入力として、むだ時間と遅れ要素の線形数学モデルを用い、筒内充填空気量を演算によって出力することが行われる。内燃機関の挙動は、複数の制御入力が、吸気系、排気系、燃焼系等の各系における複数の状態量、あるいは複数の性能出力に関係するので、その挙動の全体を物理モデルで記述し、これをエンジン制御コンピュータに搭載して制御演算を実行させるのは大変である。そこで、特許文献1の1入力1出力のモデルのように、個別に解決したい性能出力に対する簡単な物理モデルあるいは数学モデルを構築し、これらをいくつか用いて、内燃機関の性能制御を実行することが行われている。
このように、従来技術では、内燃機関の性能制御において、複数の制御入力に応じた各系の複数の状態量の応答及びエンジン性能の応答等を統合的に演算することができる物理モデルをエンジン制御コンピュータに搭載することが困難である。その結果、全制御要求を満足する複数の制御入力の最適解を、相互関係や操作量の制約等の拘束を考慮しながら、すべてを同時に決定することが困難となっている。
本発明の目的は、複数の制御入力に基づいて内燃機関の各系の状態量を演算することを可能とする内燃機関の制御装置を提供することである。また、他の目的は、複数の制御入力に基づいて内燃機関の各系の状態量を演算することができる物理モデルを搭載する内燃機関の制御装置を提供することである。また、他の目的は、全制御要求を満足する複数の制御入力の最適解を、相互関係や操作量の制約等の拘束を考慮しながら、すべてを同時に決定することを可能にする内燃機関の制御装置を提供することである。また、他の目的は、演算量を低減して、複数の制御入力に基づいて内燃機関の各系の状態量を演算することを可能とする内燃機関の制御装置を提供することである。以下の手段は、上記目的の少なくとも1つに貢献する。
本発明に係る内燃機関の性能制御装置は、複数の制御入力を取得する手段と、取得された制御入力を内燃機関の物理モデルに適用して、内燃機関の各要素における状態量を算出する状態量算出手段と、算出された状態量に基づき、内燃機関の性能を算出する手段と、を備え、状態量算出手段は、内燃機関の気筒数に応じて吸気−燃焼−排気の1サイクルを複数の離散的時間に分割する手段と、複数の状態量について、内燃機関全体についての離散的時間の物理モデルである統合離散的時間モデルを作成する手段と、統合離散的時間モデルに、取得された制御入力を適用し、各離散的時間における内燃機関全体の複数の状態量を逐時的に算出する手段と、を有することを特徴とする。
本発明に係る内燃機関の性能制御装置は、複数の制御入力を取得する手段と、取得された制御入力を内燃機関の物理モデルに適用して、内燃機関の各要素における状態量を算出する状態量算出手段と、算出された状態量に基づき、内燃機関の性能を算出する手段と、を備え、状態量算出手段は、内燃機関の気筒数に応じて吸気−燃焼−排気の1サイクルを複数の離散的時間に分割する手段と、状態量を質量と圧力として、内燃機関全体についての離散的時間の物理モデルである統合離散的時間モデルを作成する手段と、統合離散的時間モデルに、取得された制御入力を適用し、各離散的時間における内燃機関全体の質量と圧力を逐時的に算出する手段と、を有することを特徴とする。
また、本発明に係る内燃機関の性能制御装置において、統合離散的時間モデルを作成する手段は、内燃機関の各気筒ごとの状態量である気筒毎状態量に関する離散的時間の物理モデルを作成することが好ましい。
また、本発明に係る内燃機関の性能制御装置において、統合離散的時間モデルを作成する手段は、気筒数と同じ数の離散的時間の物理モデルを作成することを特徴とする。
また、本発明に係る内燃機関の性能制御装置において、統合離散的時間モデルを作成する手段は、内燃機関の吸気−燃焼−排気のサイクリックな複数の遷移過程ごとの状態量である遷移過程毎状態量に関する離散的時間の物理モデルを作成することが好ましい。
また、本発明に係る内燃機関の性能制御装置において、統合離散的時間モデルを作成する手段によって作成された離散的時間の物理モデルの数は、気筒数に依存しないことを特徴とする。
また、本発明に係る内燃機関の性能制御装置において、統合離散的時間モデルを作成する手段は、離散的時間の物理モデルを作成する方法の選択を行う選択手段を有し、選択手段は、選択の指示に応じて、内燃機関の各気筒ごとの状態量である気筒毎状態量に関する離散的時間の物理モデルを作成する方法であって、気筒数と同じ数の離散的時間の物理モデルを作成する方法と、内燃機関の吸気−燃焼−排気のサイクリックな複数の遷移過程ごとの状態量である遷移過程毎状態量に関する離散的時間の物理モデルを作成する方法であって、気筒数に依存しない数の離散的時間の物理モデルを作成する方法との間で選択を行うことが好ましい。
また、本発明に係る内燃機関の性能制御装置において、統合離散的時間モデルを作成する手段は、統合離散的時間モデルの下位階層の物理モデルとして、少なくとも、吸気行程についての離散的時間の物理モデルである吸気系離散的時間モデルを作成し、排気行程についての離散的時間の物理モデルである排気系離散的時間モデルを作成し、燃焼行程についての離散的時間の物理モデルである燃焼系離散的時間モデルを作成することが好ましい。
また、本発明に係る内燃機関の性能制御装置において、離散的時間に分割する手段は、複数の気筒が同時に吸気行程を行う期間と、1つの気筒のみが吸気行程を行う期間とを区別して、吸気行程を複数の離散的時間に分割することが好ましい。
また、本発明に係る内燃機関の性能制御装置において、離散的時間に分割する手段は、複数の気筒が同時に排気行程を行う期間と、1つの気筒のみが排気行程を行う期間とを区別して、排気行程を複数の離散的時間に分割することが好ましい。
また、本発明に係る内燃機関の性能制御装置において、吸気系離散的時間モデルの作成は、サージタンクを含む吸気系の全体積と、吸気バルブが開いたときの気筒の体積とに基づいて、吸気行程の開始の離散的時間における全質量と全エネルギを計算し、サージタンクを含む吸気系の全体積と、吸気バルブが閉じたときの気筒の体積とに基づいて、吸気行程の終了の離散的時間における全質量と全エネルギを計算し、吸気行程の開始と終了との間を複数の離散的時間に分割する場合に、サージタンクを含む吸気系の全体積と、分割された途中の離散的時間における気筒の体積とに基づいて、途中の離散的時間における全質量と全エネルギを計算し、吸気行程の開始から終了までの間について、各離散的時間ごとに全質量の収支と全エネルギの収支とをそれぞれ計算することで、状態量についての物理モデルを作成することが好ましい。
また、本発明に係る内燃機関の性能制御装置において、排気系離散的時間モデルの作成は、排気管を含む排気系の全体積と、排気バルブが開いたときの気筒の体積とに基づいて、排気行程の開始の離散的時間における全質量と全エネルギを計算し、排気管を含む排気系の全体積と、排気バルブが閉じたときの気筒の体積とに基づいて、排気行程の終了の離散的時間における全質量と全エネルギを計算し、排気行程の開始と終了との間を複数の離散的時間に分割する場合に、排気管を含む排気系の全体積と、分割された途中の離散的時間における気筒の体積とに基づいて、途中の離散的時間における全質量と全エネルギを計算し、排気行程の開始から終了までの間について、各離散的時間ごとに全質量の収支と全エネルギの収支とをそれぞれ計算することで、状態量についての物理モデルを作成することが好ましい。
また、本発明に係る内燃機関の性能制御装置において、燃焼系離散的時間モデルの作成は、吸気弁が閉じたときから排気弁が開くときまでについて、質量保存則とエネルギ保存則とに基づいて、近似計算を利用して微分方程式を解析的に解いて物理モデルを作成することが好ましい。
また、本発明に係る内燃機関の性能制御装置において、複数の離散的時間に分割する手段は、複数の気筒が同時に吸気行程を行う期間と、1つの気筒のみが吸気行程を行う期間とを区別して、吸気行程を複数の離散的時間に分割し、さらに、分割された離散的時間を適当に結合して、状態量算出のサンプル間隔を内燃機関全体の1サイクル720度を気筒数で除した間隔に近い間隔とし、複数の気筒が同時に排気行程を行う期間と、1つの気筒のみが排気行程を行う期間とを区別して、排気行程を複数の離散的時間に分割し、さらに、分割された離散的時間を適当に結合して、状態量算出のサンプル間隔を内燃機関全体の1サイクル720度を気筒数で除した間隔に近い間隔とすることで、状態量算出のサンプル間隔が、内燃機関全体の1サイクル720度を気筒数で除したものより長短があってもよい。
また、本発明に係る内燃機関の性能制御装置において、統合離散的時間モデルを作成する手段は、遷移過程毎の制御入力と、気筒毎の制御入力との間を変換する制御入力変換手段と、遷移過程毎状態量と、気筒毎状態量との間を変換する状態量変換手段と、を有することが好ましい。
また、本発明に係る内燃機関の性能制御装置において、制御入力変換手段は、制御入力が入力される遷移過程と、同じ制御入力が入力される気筒との関連付けに基づく演算作用素を用いて、遷移過程毎の制御入力と、気筒毎の制御入力との間を変換することが好ましい。
また、本発明に係る内燃機関の性能制御装置において、状態量変換手段は、任意の遷移過程と、その遷移過程が生じる気筒との関連付けに基づく変換行列を用いて、遷移過程毎の状態量と、気筒毎の状態量との間を変換することが好ましい。
上記構成により、内燃機関の性能制御装置は、内燃機関の気筒数に応じて吸気−燃焼−排気の1サイクルを複数の離散的時間に分割し、複数の状態量について、内燃機関全体についての離散的時間の物理モデルである統合離散的時間モデルを作成する。そして、統合離散的時間モデルに、複数の制御入力を適用し、各離散的時間における内燃機関全体の複数の状態量を逐時的に算出する。ここで、質量と圧力とを、複数の状態量とすることができる。また、質量と圧力以外に、温度等を状態量の組合せに加えてもよい。
ここで、内燃機関は、一般的に気筒数が定まると、各気筒の吸気−燃焼−排気の1サイクルは、一定の繰り返しを行い、これの総合が内燃機関全体としてのサイクルとなる。したがって、内燃機関のサイクリックな現象に基づいて、内燃機関のサイクルを複数の離散的時間に分割して物理モデルを構成することが可能で、その離散的時間の分割は、気筒数に依存し、内燃機関の大きさ等のパラメータに依存しない。また、気筒数が異なっても、そのサイクルの分割の基本的方法は変わらない。つまり、気筒数や具体的なエンジンパラメータが変化しても、離散的時間に分割する定義自体に変更がなく、物理モデル自体の構成は変わらず、例えば、物理モデルを構成する行列の要素の変更ですむ。したがって、この内燃機関のサイクリックな現象に基づいて離散的時間に分割した物理モデルを、内燃機関全体の統合離散的時間モデルとできる。このようにして、記述量を少なくして統合離散的物理モデルを構成することができる。また、内燃機関の基本構成に他のシステムが付加されても、内燃機関のサイクリックな現象は変わらないので、統合離散的時間モデルに対する変更を要しない。この統合離散的時間モデルに、複数の制御入力を適用し、内燃機関全体としての状態量として、質量と圧力を逐時的に算出する。このようにして、複数の制御入力に基づいて内燃機関の各系の状態量を演算することが可能となる。
また、統合離散的時間モデルの下位階層の物理モデルとして、少なくとも、吸気行程についての離散的時間の物理モデルである吸気系離散的時間モデルを作成し、排気行程についての離散的時間の物理モデルである排気系離散的時間モデルを作成し、燃焼行程についての離散的時間の物理モデルである燃焼系離散的時間モデルを作成する。これにより、内燃機関の吸気−燃焼−排気の1サイクルを構成する各系の詳細な質量と圧力を逐次的に算出でき、これを統合して、内燃機関全体の状態量の逐時的算出を裏付けることができる。
また、内燃機関の性能制御装置において、内燃機関の各気筒ごとの状態量である気筒毎状態量に関する離散的時間の物理モデルを作成する。これによって、各気筒ごとに、離散的時間における状態量を把握できる。
また、内燃機関の性能制御装置において、内燃機関の吸気−燃焼−排気のサイクリックな複数の遷移過程ごとの状態量である遷移過程毎状態量に関する離散的時間の物理モデルを作成する。サイクリックな複数気筒の内燃機関においては、どの気筒も同じ遷移過程を異なるタイミングで実行する。したがって、気筒毎状態量を用いる場合に比べ、演算量を少なくできる。
また、内燃機関の性能制御装置において、気筒毎状態量に関する離散的時間の物理モデルを作成するときは、気筒数と同じ数の離散的時間の物理モデルを作成する。一方、遷移過程毎状態量に関する離散的時間の物理モデルを作成するときは、作成された離散的時間の物理モデルの数は、気筒数に依存しない。このように、遷移過程毎状態量に関する離散的時間の物理モデルを作成するときには、作成される物理モデルの数を抑制することができる。
また、内燃機関の性能制御装置において、統合離散的時間モデルを作成する手段は、離散的時間の物理モデルを作成する方法の選択を行う選択手段を有する。選択手段は、選択の指示に応じて、内燃機関の各気筒ごとの状態量である気筒毎状態量に関する離散的時間の物理モデルを作成する方法であって、気筒数と同じ数の離散的時間の物理モデルを作成する方法と、内燃機関の吸気−燃焼−排気のサイクリックな複数の遷移過程ごとの状態量である遷移過程毎状態量に関する離散的時間の物理モデルを作成する方法であって、気筒数に依存しない数の離散的時間の物理モデルを作成する方法との間で選択を行う。これにより、作成する物理モデル数を抑制したいときには、遷移過程毎状態量に関する離散的時間の物理モデルを作成する方法を選択すること等ができる。
また、内燃機関の性能制御装置において、複数の気筒が同時に吸気行程を行う期間と、1つの気筒のみが吸気行程を行う期間とを区別して、吸気行程を複数の離散的時間に分割する。これにより、吸気行程における異なる内容に応じて離散的時間の分割が行え、実際の内燃機関の動作に適合した物理モデルを作成することができる。排気行程についても同様である。
また、内燃機関の性能制御装置において、サージタンクを含む吸気系の全体積と、吸気バルブが開いたときの気筒の体積とに基づいて、吸気行程の開始の離散的時間における全質量と全エネルギを計算し、サージタンクを含む吸気系の全体積と、吸気バルブが閉じたときの気筒の体積とに基づいて、吸気行程の終了の離散的時間における全質量と全エネルギを計算し、吸気行程の開始と終了との間を複数の離散的時間に分割する場合に、サージタンクを含む吸気系の全体積と、分割された途中の離散的時間における気筒の体積とに基づいて、途中の離散的時間における全質量と全エネルギを計算し、吸気行程の開始から終了までの間について、各離散的時間ごとに全質量の収支と全エネルギの収支とをそれぞれ計算することで、状態量についての物理モデルを作成する。体積の変化に着目することで、質量保存則とエネルギ保存則を適用して状態量の変化を求めることができる。これにより、複雑な微分方程式を解くことを要せずに、吸気系の物理モデルを作成することができる。
同様に、排気管を含む排気系の全体積と、排気バルブが開いたときの気筒の体積とに基づいて、排気行程の開始の離散的時間における全質量と全エネルギを計算し、排気管を含む排気系の全体積と、排気バルブが閉じたときの気筒の体積とに基づいて、排気行程の終了の離散的時間における全質量と全エネルギを計算し、排気行程の開始と終了との間を複数の離散的時間に分割する場合に、排気管を含む排気系の全体積と、分割された途中の離散的時間における気筒の体積とに基づいて、途中の離散的時間における全質量と全エネルギを計算し、排気行程の開始から終了までの間について、各離散的時間ごとに全質量の収支と全エネルギの収支とをそれぞれ計算し、状態量についての物理モデルを作成することで、複雑な微分方程式を解くことを要せずに、排気系の物理モデルを作成することができる。
また、複数の気筒が同時に吸気行程を行う期間と、1つの気筒のみが吸気行程を行う期間とを区別して、吸気行程を複数の離散的時間に分割し、さらに、分割された離散的時間を適当に結合して、状態量算出のサンプル間隔を内燃機関全体の1サイクル720度を気筒数で除した間隔に近い間隔とし、複数の気筒が同時に排気行程を行う期間と、1つの気筒のみが排気行程を行う期間とを区別して、排気行程を複数の離散的時間に分割し、さらに、分割された離散的時間を適当に結合して、状態量算出のサンプル間隔を内燃機関全体の1サイクル720度を気筒数で除した間隔に近い間隔とすることで、状態量算出のサンプル間隔が、内燃機関全体の1サイクル720度を気筒数で除したものより長短がある。したがって、単純に1サイクル720度を内燃機関の気筒数で除した離散的時間の分割でなく、実際の内燃機関の現象に適合した離散的時間の分割を用いることができる。
また、内燃機関の性能制御装置において遷移過程毎の制御入力と、気筒毎の制御入力との間を変換する手段と、遷移過程毎状態量と、気筒毎状態量との間を変換する手段を有する。これによって、気筒毎の記述と制御過程毎の記述との間の変換を容易に行うことができる。
また、制御入力が入力される遷移過程と、同じ制御入力が入力される気筒との関連付けに基づく演算作用素を用いて、遷移過程毎の制御入力と、気筒毎の制御入力との間を変換する。これよって、関連付け表す演算作用素を用いた演算によって、容易に制御入力の記述の変換を行うことができる。
また、任意の遷移過程と、その遷移過程が生じる気筒との関連付けに基づく変換行列を用いて、遷移過程毎の状態量と、気筒毎の状態量との間を変換する。これによって、関連付けを表す行列を用いた演算によって、容易に状態量の記述の変換を行うことができる。
上記のように、本発明に係る内燃機関の制御装置によれば、複数の制御入力に基づいて内燃機関の各系の状態量を演算することが可能となる。また、本発明に係る内燃機関の制御装置によれば、記述量が少ない離散的時間の物理モデルを用いるので、複数の制御入力に基づいて内燃機関の各系の状態量を演算することができる物理モデルを搭載することができる。また、本発明に係る内燃機関の制御装置によれば、遷移過程毎の状態量を用いることで、演算量を低減して、複数の制御入力に基づいて内燃機関の各系の状態量を演算することが可能となる。
図1は、内燃機関の制御装置30と、その制御対象の内燃機関である6気筒エンジンシステム10とを示す図である。制御対象の6気筒エンジンシステム10は、6つの気筒12と、吸気側のエアフィルタ14と、吸気量を制御するためのスロットル16と、サージタンク18と、サージタンク18から各気筒12に分岐する吸気管20と、各気筒12ごとに設けられる燃料噴射弁21及び点火栓22と、クランク回転角度を検出する回転角度センサ24と、各気筒12ごとに設けられ、エキゾーストマニホールド集合部を含む排気管(以下、これを単にエキゾーストマニホールド集合部26ということにする)と、触媒28とを含んで構成される。
内燃機関の制御装置30は、目標回転数や目標トルク等の目標指令入力部32と、エンジンシステム10から伝送されるクランク回転角度等を受け取る観測量取得部34と、エンジン制御ユニット(ECU)40と、ECU40からエンジンシステム10にスロットル開度等の操作量すなわち制御入力を出力する制御出力部36とを含んで構成される。
ECU40は、目標指令入力部32から受け取った目標指令と、エンジンシステム10から取得した観測量とに基づき、エンジンシステム10に操作量すなわち制御入力を出力する機能を有する。具体的には、エンジンシステム10に対する全体的な物理モデルである統合離散的時間モデルを有し、この統合離散的時間モデルに基づいた状態量算出部60によってエンジン性能を算出し、あるいは、逆に、状態量算出部60にエンジン性能46を入力して与え、これを満たす制御入力42を算出する機能を有する。かかるECU40は、適当なコンピュータで構成することができる。
図2は、ECU40の詳細な構成を説明するブロック図である。ECU40は、制御対象のエンジンシステムの気筒数等を含む具体的なエンジンパラメータ50を取得するエンジンパラメータ取得部と、スロットル開度θt、燃料噴射量Fi、点火時期θS等の制御入力42を取得する制御入力取得部と、制御入力42をエンジンシステムの物理モデルに適用してエンジンシステムの各要素における状態量を算出する状態量算出部60と、算出された状態量と制御入力42とに基づき、エンジンシステムのトルク、燃料消費量等のエンジン性能を算出する性能算出部46とを含んで構成される。
状態量算出部60は、制御対象のエンジンシステムに対する離散的時間の物理モデルを作成し記憶する物理モデル作成記憶部62と、質量・圧力・回転角速度算出部82とを含んで構成される。ここで、質量・圧力・回転角速度算出部82は、物理モデル作成記憶部62で作成された離散的時間モデルに複数の制御入力42を適用して、エンジンシステムの全体及び各要素における質量と圧力とを逐時的に算出し、また、算出された質量と圧力の逐時的変化をピストン機構についての並進回転系離散的時間モデルに適用してエンジンシステムの回転角速度を逐時的に算出する機能を有する。
物理モデル作成記憶部62は、内燃機関のサイクリックな現象に基づき、各気筒の吸気−燃焼−排気の1サイクルを複数の離散的時間に分割する離散的時間分割部66と、状態量を質量と圧力として、エンジンシステム全体についての離散的時間の物理モデルを作成する物理モデル作成部68とを含んで構成される。
ここで、エンジンシステム全体についての離散的時間の物理モデルを、統合離散的時間モデル44と呼ぶことにすると、統合離散的時間モデル44は、その下位階層の物理モデルとして、吸気行程についての離散的時間の物理モデルである吸気系離散的時間モデル70、燃焼行程についての離散的時間の物理モデルである燃焼系離散的時間モデル72、排気行程についての離散的時間の物理モデルである排気系離散的時間モデル74、燃料系についての離散的時間の物理モデルである燃料系離散的時間モデル76、並進回転系についての離散的時間の物理モデルである並進回転系離散的時間モデル78、エンジン性能の物理モデルであるエンジン性能モデル80を有する。
以下に、図3から図7を用いて、離散的時間の分割の内容、及び各離散的時間モデルの内容を説明する。図3は、統合離散的時間モデルにおけるサンプル点の様子を説明する図、図4と図5は、吸気系離散的時間モデルの様子を説明する図、図6と図7は、排気系離散的時間モデルの様子を説明する図である。
図3は、6気筒のエンジンシステムにおいて、各気筒の吸気、燃焼、排気がどのように進行して繰り返されるかを示し、そのサイクリックな現象に基づいて離散的時間に分割して、制御のためのサンプル点の位置を定める様子を説明する図である。図3(a)は、6つの気筒について示され、(b)は、TDCを上死点、BDCを下死点として、3番気筒のクランク角度の変化を示したものである。
周知のように、6気筒のエンジンシステムは、クランクの720度回転を1サイクルとして、6つの気筒が順次に吸気−燃焼−排気を繰り返す。そこで、図3において、横軸は、クランクの1サイクルの720度回転を20度ごとに区切ってある。1から36の番号は、その分割された20度の期間に付された順序番号である。縦軸は、吸気、燃焼、排気の3つの行程を並べてある。そして、各気筒を区別するために、気筒番号を1から6として、各気筒について、クランク角度と行程との関係が示されている。なお、ここでは、圧縮行程と膨張行程とをまとめて燃焼行程として示している。
例えば、3番気筒は、吸気行程が31番目の期間から始まり、次の720度回転サイクルの5番目の期間で終わる。図3(b)のクランク角度を参照すると、例えば、吸気行程は、TDCのところで吸気弁が開き(IVO=0BTDC:Intake valve open 0 degree before TDC)、BDCより40度遅れて吸気弁が閉じる(IVC=40ABDC:Intake valve close 40 degree after BDC)。そして燃焼行程は6番目の期間から始まり、19番目の期間で終わる。また、排気行程は、20番目の期間から始まり、30番目の期間で終わる。そして次の吸気行程が31番目の期間から始まる。したがって、吸気行程は合計で11×20度=220度、燃焼行程は合計で14×20度=280度、排気行程は合計で11×20度=220度である。
このように、各気筒は、220度の吸気行程、280度の燃焼行程、220度の排気行程を気筒番号の順番で繰り返す。この繰り返しは、この6気筒エンジンシステムに共通のサイクリックな現象であり、エンジンパラメータ等に関係なく行われる。したがって、このサイクリックな現象に基づいて、720度の1サイクルを複数の離散的時間で分割すれば、エンジンパラメータ等に依存せずに、エンジンシステム全体の物理モデルを構成することができる。統合離散的時間モデルは、このような考えの下に、エンジンシステムの1サイクルを複数の離散的時間で分割して、物理モデルを構成するものである。
一般的には、720度を気筒数で除した分割を行うことができる。6気筒の場合は、720度/6=120度で離散的時間の分割を行うことができる。また、エンジンシステムの1サイクルは、吸気−燃焼−排気の各行程で構成されるので、これらの行程の特徴に着目した離散的時間の分割を行うことが好ましい。
たとえば、図3に示されるように、3番気筒の吸気行程は、その前半において2番気筒と3番気筒がともに吸気行程にあり、後半においては3番気筒と4番気筒とがともに吸気行程にある。そして、その中間においては、3番気筒のみが吸気行程にある。このように、吸気行程は、3つの種類に分けることができる。120度の分割を考慮すると、前半と中間とをまとめ、後半と区別して2つの種類に分けることができる。ただし、中間と後半とをまとめ、前半と区別して2つの種類に分けるものとしてもよい。
したがって、離散的時間の分割に際しては、吸気行程における少なくともこの2つの種類を区別できるように、分割点、すなわちエンジンの状態量算出のためのサンプル点を設定することが好ましい。
また、3番気筒の排気行程も、吸気行程と同様に、その前半において2番気筒と3番気筒がともに排気行程にあり、後半においては3番気筒と4番気筒とがともに排気行程にある。そして、その中間においては、3番気筒のみが排気行程にある。したがって、排気行程においても、離散的時間の分割、すなわちサンプル点の設定は、排気行程における少なくとも2つの種類を区別できるように行われることが好ましい。
なお、燃焼行程においては、途中の計算値を他の気筒が利用することがないため、吸気行程及び排気行程で述べたような種類分けを行う必要がない。もちろん、ノック制御等で、他の気筒の計算結果を利用する必要があるときは、その状況にあわせ、燃焼行程を複数の種類に区別し、サンプル点の適切な設定を行うことができる。
この吸気行程の2種類の区別、排気行程の2種類の区別を考慮して、720度の1サイクルについて6つのサンプル点を設定すると、図3における期間番号で、6,12,18,24,30,36の近傍がよい。この分割は120度ごとであるが、その前後±20度の範囲のサンプル点を集めることで、上記の吸気行程と排気行程の種類の異なる内容を区別できる。このように、6気筒のエンジンシステムにおける離散的時間の分割は、120度ごとに、その前後±20度の範囲で、サンプル点を集めるものとすることがよい。図3では、その離散的時間の分割におけるサンプル点を集める領域を太枠で囲み、k=0,1,2,3,4,5で示してある。また、計算のためのサンプル点の位置を右上がりの斜線で示してある。
図3の例では、エンジンシステム全体におけるサンプル点は、20度おきの期間の番号で、(35,36,1),(5,6,7),(11,12,13),(17,18,19),(23,24,25),(29,30,31)である。このように離散的時間の分割を行い、サンプル点を設定することで、吸気行程の2種類の状態、排気行程の2種類の状態を区別したサンプル点を集めることができる。
このようにして設定されたサンプル点の集合について、隣接するサンプル点の間隔は、必ずしも120度となっていない。例えば、3番気筒についてサンプル点は、20度おきの期間の番号で、5,19,25,30,36である。つまり、吸気行程の2種類の状態、排気行程の2種類の状態を区別し、燃焼行程は1種類で扱うことから、隣接する離散的時間のサンプル間隔は、エンジンシステム全体の1サイクル720度を気筒数の6で除した120度に対し、長短があることになる。
このようにして、エンジンシステム全体のサイクリックな現象に基づいて、吸気−燃焼−排気の1サイクルを複数の離散的時間で分割して、複数のサンプル点を集め、離散的時間状態を定義して統合離散的時間モデルを構成する。
統合離散的時間モデルは、状態量として質量mと圧力pを用い、次の式(1)で示される。
ここで、例えば、m(l,4)とは、図3におけるl,k=4のサンプル点における質量mを示す。同様に、例えば、p(l+1,0)とは、図3におけるl+1,k=0のサンプル点における圧力を示す。また、例えば、F
C(l,3)とは、図3におけるl,k=3のサンプル点における筒内流入燃料量を示す。A,g,bは、それぞれエンジンパラメータ等で定められるパラメータ行列で、Aは8行8列、gは8行1列、bは8行6列の行列である。これらに付される添字は、行列の相違を示すためのものである。
そして、mは、吸気系と排気系と6つの気筒の合計8個の要素における質量状態を示す8行1列の行列である。pも、吸気系と排気系と6つの気筒の合計8個の要素における圧力状態を示す8行1列の行列である。F
Cは、6つの気筒における合計6個の要素における筒内流入燃料量状態を示す6行1列の行列である。m,p,F
Cは、次の式(2)で示される。ここで、添字のaは吸気系、eは排気系、cは気筒を示し、例えばc3は3番気筒を示す。
式(1)から分かるように、任意のサンプル点における質量mは、離散的時間の分割における1つ前のサンプル点における質量状態と、2つ前のサンプル点における質量状態と、2つ前のサンプル点における筒内流入燃料量等に基づいて記述することができる。また、任意のサンプル点における圧力pは、離散的時間の分割における1つ前のサンプル点における圧力状態と、2つ前のサンプル点における圧力状態等に基づいて記述することができる。このようにして、エンジンシステム全体の離散的時間のモデルとして、式(1)、(2)によって、統合離散的時間モデルを記述することができる。
図4、図5は、統合離散的時間モデルの下位階層モデルである吸気系離散的時間モデルの内容を説明する図である。吸気系離散的時間モデルは、スロットルから気筒に至るまでの吸気系について、質量保存則とエネルギ保存則に基づいて構築される。例えば、ある吸気弁のタイミングに固定した場合、微分方程式を解析的に解くことに代えて、サージタンクと気筒の2つの容積に注目し、吸気弁が開いた状態と、定常状態と仮定する吸気弁が閉じた状態との間で、逐時的に質量保存則とエネルギ保存則を適用して、離散的時間モデルを構成することができる。
図4は、吸気行程の最初において吸気弁が開くときの様子を示す図である。ここでは、注目している気筒13が上死点近くにあるので、気筒13の容積を小さく示してある。図5は、吸気行程の最後において吸気弁が閉じるときの様子を示す図である。ここでは、気筒13が下死点近くにあるので、気筒13の容積を大きく示してある。図4において白抜き矢印は、質量の移動を示し、斜線付き矢印は、熱あるいはシリンダの移動による仕事等のエネルギの移動を示す。図4、図5において、Pは圧力、Mは質量、Tは温度を示し、添字のsはスタート(開始時期)、fはファイナル(終了時期)、aは吸気系、cは気筒をそれぞれ示す。
このように、吸気行程においては、逐時的に、サージタンク18と気筒13との間の容積変化とともに、質量とエネルギの移動が生じる。そこで、吸気行程の離散的時間のそれぞれにおいて、サージタンク18と気筒13の間において、質量保存則とエネルギ保存則を適用して、吸気行程における離散的時間モデルを次の式(3)、(4)のように記述できる。ここで、吸気行程の内容には、上記のように、2つの種類があるので、その2つを区別して、式(3)は1つの気筒のみが吸気行程にある場合、式(4)は2つの気筒が吸気行程にある場合の離散的時間モデルの記述式をそれぞれ示している。
ここで、M
tは、スロットル通過流量である。2つの気筒を区別するために、添字に、j,kを用いた。その他の記号、添字の意味は図4、図5で説明したものと同じである。行列の各要素は、エンジンパラメータ等から定めることができる。
式(3)から分かるように、1つの気筒が吸気行程にある場合には、吸気行程の最後のサンプル点におけるサージタンクと気筒における圧力と質量は、吸気行程の最初のサンプル点におけるサージタンクと気筒における圧力と質量、及びスロットル通過流量とに基づいて記述することができる。
また、式(4)から分かるように、2つの気筒が吸気行程にある場合には、吸気行程の最後のサンプル点におけるサージタンクと2つの気筒における圧力と質量は、吸気行程の最初のサンプル点におけるサージタンクと2つの気筒における圧力と質量、及びスロットル通過流量とに基づいて記述することができる。
式(3)、(4)は、吸気行程における最後のサンプル点についての記述式を示しているが、途中の離散的時間においても、同様な内容で、吸気行程における各要素の圧力と質量を記述することができる。
このように、吸気行程において、吸気弁が閉じた状態を定常状態と仮定することで計算を容易にすることができる。吸気弁の開閉タイミングを制御したい場合は、一般的な微分方程式を解析的に解けるように工夫することで、同様な離散的時間モデルを導き出せばよく、その他のモデルの修正をする必要がない。また、インテークマニホールド、インテークポート、吸気弁等の温度を状態量として加えることで、さらに精度を向上させることもできる。
次に、燃焼行程においては、吸気弁が閉じたときから、排気弁が開くときまでについて、質量保存則とエネルギ保存則に基づいて、離散的時間モデルを導き出すことになる。ここで、熱発生の計算には適当な周知の燃焼モデルを用いて計算することができるが、たとえば、周知のWiebe関数を用いた場合、微分方程式を解析的に解くことができないので、一部近似を利用する。式(5)は、そのような近似を用い、燃焼行程における離散的時間モデルとして、圧力と質量について記述する式である。
ここで、Pは圧力、Mは質量、F
Cは筒内流入燃料量、θ
Sは点火時期、αは空燃比、IVCは吸気弁が閉じた状態、EVOは排気弁が開いた状態を示す。添字の意味は、式(1)等で説明した内容と同じである。
式(5)から分かるように、排気弁が開くときの気筒における圧力は、吸気弁が閉じたときの気筒における圧力と、点火時期θSと、点火時期θSと筒内流入燃料量FCと空燃比αとで定まる関数とによって記述することができる。また、排気弁が開くときの気筒における質量は、吸気弁が閉じたときの気筒における質量と、筒内流入燃料量FCあるいは燃料噴射量Fiとで記述することができる。また、シリンダ壁等の温度を状態量として加えて、冷却損失を陽に考慮することで、さらに精度を向上させることができる。
式(5)は、燃焼行程における最後のサンプル点についての記述式を示しているが、途中の離散的時間においても、同様な内容で、燃焼行程における気筒の圧力と質量を記述することができる。
次に排気行程について説明する。図6、図7は、統合離散的時間モデルの下位階層モデルである排気系離散的時間モデルの内容を説明する図である。排気系離散的時間モデルは、気筒からエキゾーストマニホールド集合部に至るまでの排気系について、質量保存則とエネルギ保存則に基づいて構築される。例えば、ある排気弁のタイミングに固定した場合、微分方程式を解析的に解くことに代えて、気筒とエキゾーストマニホールド集合部の2つの容積に注目し、排気弁が開いた状態と、定常状態と仮定する排気弁が閉じた状態との間で逐時的に質量保存則とエネルギ保存則を適用して、離散的時間モデルを構成することができる。
図6は、排気行程の最初において排気弁が開くときの様子を示す図である。ここでは、注目している気筒13が下死点近くにあるので、気筒13の容積を大きく示してある。図7は、排気行程の最後において排気弁が閉じるときの様子を示す図である。ここでは、気筒13が上死点近くにあるので、気筒13の容積を小さく示してある。図6において白抜き矢印は、質量の移動を示し、斜線付き矢印は、熱あるいはシリンダの移動による仕事等のエネルギの移動を示す。図6、図7において、Pは圧力、Mは質量、Tは温度を示し、添字のsはスタート(開始時期)、fはファイナル(終了時期)、eは排気系、cは気筒をそれぞれ示す。
このように、排気行程においては、逐時的に、気筒13とエキゾーストマニホールド集合部26との間の容積変化とともに、質量とエネルギの移動が生じる。そこで、排気行程の離散的時間のそれぞれにおいて、気筒13とエキゾーストマニホールド集合部26の間において、質量保存則とエネルギ保存則を適用して、排気行程における離散的時間モデルを次の式(6)、(7)のように記述できる。ここで、排気行程の内容には、上記のように、2つの種類があるので、その2つを区別して、式(6)は1つの気筒のみが排気行程にある場合、式(7)は2つの気筒が排気行程にある場合の離散的時間モデルの記述式をそれぞれ示している。
ここで、各記号、添字の意味は、図6、図7で説明したものと同じである。行列の各要素は、エンジンパラメータ等から定めることができる。
式(6)から分かるように、1つの気筒が排気行程にある場合には、排気行程の最後のサンプル点におけるエキゾーストマニホールド集合部と気筒における圧力と質量は、排気行程の最初のサンプル点におけるエキゾーストマニホールド集合部と気筒における圧力と質量とに基づいて記述することができる。
また、式(7)から分かるように、2つの気筒が排気行程にある場合には、排気行程の最後のサンプル点におけるエキゾーストマニホールド集合部と2つの気筒における圧力と質量は、排気行程の最初のサンプル点におけるエキゾーストマニホールド集合部と2つの気筒における圧力と質量とに基づいて記述することができる。
式(6)、(7)は、排気行程における最後のサンプル点についての記述式を示しているが、途中の離散的時間においても、同様な内容で、排気行程における各要素の圧力と質量を記述することができる。
このように、排気行程においても、排気弁が閉じた状態を定常状態と仮定することで計算を容易にすることができる。排気弁の開閉タイミングを制御したい場合は、一般的な微分方程式を解析的に解けるように工夫することで、同様な離散的時間モデルを導き出せばよく、その他のモデルの修正をする必要がない。また、エキゾーストマニホールド集合部、エキゾーストポート、排気弁等の温度を状態量として加えることで、さらに精度を向上させることもできる。
統合離散的時間モデルの下位階層のエンジン性能モデルは、エンジンシステム全体の1サイクル当りの図示仕事、トルク、燃料消費量等のエンジン性能を予測する物理モデルである。このエンジン性能モデルは、エンジンシステムの各状態量の逐時的変化に基づいて、サンプル間隔及び1サイクル当たりの図示仕事を計算することができる。この図示仕事から、エンジンシステム全体のトルク、回転数、出力、熱効率、燃料消費量等を予測することができる。
上記構成の内燃機関の制御装置を用いて、エンジンシステムの各要素における圧力と質量の逐時的変化を計算することができる。図8は、サージタンク内の圧力と質量についての計算結果の1例であり、図9は、気筒内の圧力と質量についての計算結果の1例である。これらの図において、横軸は時間をとり、各計算の点は、離散的時間の分割におけるサンプル点に対応する。○印で示されるものが、離散的時間モデルによる計算結果で、線分で示されるものが、連続時間での保存則を用いて計算した結果である。なお、気筒内における圧力と質量についての離散的時間モデルの計算は、燃焼途中のデータが未計算であるので、×印で示してある。図8、図9から分かるように、離散的時間モデルによる計算結果は、連続時間モデルによる計算結果とよい一致を示している。
上記構成の内燃機関の制御装置は、図1で説明したように、エンジンシステム10に対する全体的な物理モデルである統合離散的時間モデル44を有し、この統合離散的時間モデル44に制御入力42を適用してエンジン性能46を算出し、あるいは、逆に、統合離散的時間モデル44にエンジン性能46を与えて、これを満たす制御入力42を算出する機能を有する。したがって、この機能を、内燃機関のフィードバック制御、フィードフォワード制御に組み込むことができる。図10、図11は、それぞれ、エンジンシステム10に対する回転数制御、トルク制御において、統合離散的時間モデルに基づく内燃機関の制御機能をフィードフォワード部90,91及びフィードバック部92,93に組み込んで構成する様子を示す図である。これらの組み込みに際しては、回転数、スロットル通過空気量、各気筒のピストン位置等の観測量から、エンジンシステムの各要素の状態を予測する手段の他に、エンジン性能である回転数、トルク、熱効率、燃料消費量等を予測する手段を含む。さらに、エンジン性能を目的である目標回転数レギュレーション、目標トルク追従等に合わせて最適にするように、複数の制御入力を同時に最適計算する手段を含む。
上記では、式(1)に示すように、状態量である質量mと圧力pの統合離散的時間モデルを記述した。ここで質量mと圧力pは、吸気系と排気系と6つの気筒の合計8つの要素における質量状態、圧力状態を示す行列である。すなわち、式(1)は気筒ごとに状態量を記述しているために、大きな規模の関数または行列となり、サイクリックな現象を時不変系と見る場合、状態量についての演算量が大きな規模となっている。ところで、内燃機関の各気筒が同一の構造を有し、これらの各気筒がそれぞれ吸気−燃焼−排気のサイクリックな動作をしている場合には、気筒ごとに状態量を考えるのではなく、吸気−燃焼−排気のサイクリックな過程ごとに状態量を考えることで、この記述量を少なくすることができる。例えば、吸気の過程における状態量は、吸気にある気筒が第1気筒でも第2気筒であっても、あるいは第6気筒であっても同じく定義できる。同様に燃焼の過程における状態量も、燃焼過程にある気筒がどの気筒であっても同じで、排気の過程における状態量も、排気過程にある気筒がどの気筒であっても同じである。
したがって、統合離散的時間モデルの各サンプル点における状態量を、気筒ごとに考え、サイクリックな現象を時不変系と見る場合、気筒の数に応じて、大きな規模の関数または行列を必要とするが、これを内燃機関の吸気−燃焼−排気のサイクリックの遷移過程ごとに考えることにすれば、気筒数に関係なく小さな規模の関数または行列で済むことになる。内燃機関のサイクルは、吸気−燃焼−排気の3つで代表されるが、これを状態量の観点から見ると、バルブが開閉するときの状態量と、その途中の状態量とは異なるものと考えられる。このことから、例えば6気筒の場合は、内燃機関の吸気−燃焼−排気のサイクリックの遷移過程は、吸気途中−吸気終了−燃焼途中−燃焼終了−排気途中−排気終了の6つの遷移過程に区分することがよい。このように、統合離散的時間モデルの各サンプル点における状態量を、気筒ごとに考えるのではなく、内燃機関のサイクリックの複数の遷移過程ごとに考えることで、状態方程式の記述に要する関数または行列を小規模とすることができる。以下では、その内容を詳細に説明する。
最初に、気筒ごとの状態量と、遷移過程ごとの状態量の関係の一般的説明を行い、遷移過程ごとの状態量を説明し、その後に、気筒ごとの状態量と遷移過程ごとの状態量との間の変換等について説明する。
いま、式(1)を状態量x、入力変数u、状態量関数形をf、観測量をy、観測量関数形をgとして、状態方程式を一般形に書き直すと次の式(8)で表せる。ここで、状態量x、入力変数uについては、気筒ごとの状態量、入力変数であることを示すために、x及びuの頭部に山形(ハット)記号を付してある。
式(8)を、サンプル点を示すkを用いて表すと式(9)のように示される。
ここで、式(9)の3番目に示されていることは、関数fl、kが、サンプル点を示すkが異なるとその関数形を変えることを意味している。これは、図3に示されるように、サンプル点を示すkが異なると、各気筒の状態がそれぞれ異なっていることから来ている。すなわち、各気筒ごとの状態量である気筒毎状態量を考える場合には、関数fl、kの関数形がサンプル点と共に、つまり時間と共に変化する。このことから、各気筒ごとの状態量の関数形は、内燃機関のサイクリックの時間経過とともに変化する時変系である、といえる。
これに対し、内燃機関の吸気−燃焼−排気のサイクリックな遷移過程ごとの状態量は、上記のように、気筒がどれであっても同じ内容であるので、気筒に依存しない。したがって、遷移過程ごとの状態量の関数形は、内燃機関のサイクリックの時間経過によっては変化せず、そのことから、時不変系である、といえる。そのことを式(9)と対比する形で式(10)に示す。
式(10)では、式(9)と同様に、状態量x、入力変数u、状態量関数形をf、観測量をy、観測量関数形をgとして、状態方程式が示されている。ここで、状態量x、入力変数uは、頭部に山形のハット記号を付した式(9)の気筒ごとのものと区別するため、ハット記号を付していない。そして、関数形f、関数形gは、サンプル点を示すkに依存せず、全てのkに対し同一の関数形を用いることができる。このことが、上記で述べた時不変系を示している。
このように、内燃機関のサイクリックな遷移過程ごとの状態量である遷移過程毎状態量を考えることで、状態方程式を時不変系で記述することができる。次に、図3で説明した内燃機関のサイクリックな現象を例として、実際の遷移過程毎状態量について説明する。
図12は、図3のうち、k=1の周辺について抜き出し、そのサイクリックな現象について、遷移過程毎状態量を説明する図である。なお、状態量とは、上記のように、質量mあるいは圧力p等である。ここでは、遷移過程毎状態量として、6つの遷移過程ごとの状態量を示してある。すなわち、遷移過程として、吸気途中、吸気終了、燃焼途中、燃焼終了、排気途中、排気終了について、それぞれの状態量を、x(3)、x(2)、x(1)、x(6)、x(5)、x(4)が示されている。それぞれの括弧の中の数字は、6つの遷移過程を区別するものであるが、吸気途中が1番でなく3番となっている。これは、サイクリックな現象を説明するために用いた図3が、サンプル点を示す番号であるk=0において、吸気途中の気筒が3番気筒である等の理由である。したがって、気筒番号と、サンプル点番号との決め事によって、遷移過程の番号の定義も変わってくる。ここでは、図3を用いて遷移過程を説明するので、上記のような番号付けになっている。
図12の左側に示すサイクリックな現象を示す図においては、図3で説明したように、各気筒の状態の変化が示されている。この図で1とは1番気筒であり、2とは2番気筒である。したがって、k=1のサンプル点についてみると、吸気終了の気筒は、3番気筒である。また、燃焼終了の気筒は1番気筒である。排気終了の気筒は5番気筒である。同様に、吸気途中の気筒は4番気筒、燃焼途中の気筒は2番気筒、排気途中の気筒は6番気筒である。
上記のことを換言すれば、例えば、吸気終了の遷移過程における状態量x(2)は、k=1において、3番気筒の状態量と同じ内容であることを示している。ここで、吸気終了の遷移過程における状態量x(2)は、サンプル点が変わって、別の気筒の状態量に対応するものとなっても、その状態量の内容は変わらない。つまり、内燃機関を構成する各気筒の構造が同じで、かつ、内燃機関が全体として各気筒がサイクリックに動作している場合には、どのような局面においても、吸気終了の状態量は何番気筒であっても同じである。つまり、サンプル点であるkが変化しても、吸気終了の状態量は変化しない。このことは、他の遷移過程の状態量についても同様である。
図12の右の表では、気筒毎状態量として、1番気筒の状態量をx(1)、2番気筒の状態量をx(2)、3番気筒の状態量をx(3)、4番気筒の状態量をx(4)、5番気筒の状態量をx(5)、6番気筒の状態量をx(6)として示してある。ここで括弧の中の数字は気筒番号を示している。そして、それぞれを遷移過程毎状態量と区別するため頭部に山形のハット記号を付してある。例えば、k=1の場合、吸気途中の遷移過程の状態量は4番気筒の状態量と同じで、吸気終了の遷移過程の状態量は3番気筒の状態量と同じであること等が示されている。
図12の右の表の下側には、遷移過程ごとに考えた入力変数の様子が示されている。ここで、入力変数とは、例えば、点火時期、燃料噴射量、スロットル開度等であるが、ここでは、点火時期と燃料噴射量が示されている。図3では、点火時期を各気筒ごとに考えていたが、これを遷移過程について考えることにすると、点火時期は、遷移過程においては燃焼開始の時期に決定される。また、燃料噴射量は、遷移過程においては、燃焼終了の時期で決定される。これをk=1の場合で見ると、燃焼開始の時期にあるのは、3番気筒であり、燃焼終了に相当するのは、1番気筒である。
上記のことを換言すれば、例えば、点火時期の遷移過程における入力変数をusとして、これはk=1において、3番気筒の入力変数である点火時期と同じ内容であることを示している。ここで、点火時期がどの遷移過程であるかは、サンプル点が変わって、別の気筒の点火時期に対応するものとなっても、常に燃焼開始のときである。つまり、内燃機関を構成する各気筒の構造が同じで、かつ、内燃機関が全体として各気筒がサイクリックに動作している場合には、どのような局面においても、点火時期は何番気筒であっても、同じように燃焼開始のときである。つまり、サンプル点であるkが変化しても、入力変数である点火時期は、遷移過程としては常に燃焼開始となり、変化しない。このことは、他の入力変数、例えば、燃料噴射量等についても同様である。
図12の右の表の下側には、気筒毎の点火時期として、3番気筒の点火時期をus(3)、1番気筒の燃料噴射量をuf(1)として示してある。そして、それぞれを遷移過程ごとの入力変数である点火時期us、燃料噴射量ufと区別するため頭部に山形のハット記号を付してある。
図12ではk=1について、遷移過程毎状態量とこれに対応する気筒毎状態量、遷移過程で考えた入力変数とこれに対応する気筒ごとに考えた入力変数について説明したが、同様のことは、他のkについても同様に対応付けを行うことができる。図13は、各kについてまとめた様子を示す図である。ここでは、左側に遷移過程毎状態量、遷移過程で考えた入力変数が示され、これに対応する気筒毎状態量と、気筒で考えた入力変数とが、各サンプル点について示されている。例えば、サンプル点k=1においては、図12で説明したように、吸気途中の遷移過程毎状態量が4番気筒の状態量に対応し、点火時期は3番気筒の入力変数に対応することが示されている。
そして、サンプル点を移動させると、例えば、k=0で遷移過程としては吸気途中であった3番気筒は、k=1で遷移過程が吸気終了に移り、さらに、k=2で燃焼途中の遷移過程となり、k=3で燃焼終了の遷移過程、k=4で排気途中の遷移過程、k=5で排気終了の遷移過程となる。図13では、3番気筒の移動状態を斜線で示したが、このように、各気筒は、サイクリックに各遷移過程を移動する。そして、例えば、吸気途中の状態量は、k=0で3番気筒、k=1で4番気筒、k=2で5番気筒、k=3で6番気筒、k=4で1番気筒、k=5で2番気筒というように、サイクリックに気筒が変わるが、どの気筒においても、その状態量は、吸気途中の状態量であって、気筒番号に依存しない。同様に、吸気終了等の他の遷移過程における状態量も、気筒番号に依存しない。勿論、吸気途中、吸気終了、燃焼途中、燃焼終了、排気途中、排気終了のそれぞれにおける状態量は相互において相違するが、状態量の関数形は同じであり、遷移過程の相違によって、その値が相違するのみである。
入力変数もまた、遷移過程で考えることで、気筒番号に依存しない。例えば、点火時期は、上記のように、どの気筒においても燃焼開始の遷移過程である。図13では、点火時期にある気筒が、サンプル点kが変わると変化する様子が示されている。すなわち、k=0では2番気筒、k=1では3番気筒、k=2では4番気筒、k=3では5番気筒、k=4では6番気筒、k=5では1番気筒が点火時期にある気筒である。このように、点火時期にある気筒はサイクリックに変化するが、この場合でも、遷移過程で考えると、どの気筒においても、燃焼開始のときである。
上記のように、遷移過程毎状態量は、気筒毎状態量とサイクリックに変化する対応関係で対応付けられている。また、遷移過程で考えた入力変数も、サイクリックに変化する気筒番号と対応付けられる。したがって、内燃機関のサイクリックな状態変化に基づく対応関係を対応付け関数として示すことで、その対応付け関数を用いて、遷移過程毎状態量と気筒毎状態量との間の変換を演算によって行うことができる。同様に、遷移過程で考えた入力変数と、対応する気筒に対する入力変数との間の変換を演算によって行うことができる。
遷移過程毎状態量と気筒毎状態量との間の変換は、変換行列を用いて行うことができる。状態量として、質量m、圧力pを選び、変換行列をZとすると、変換関係式は次の式(11)で示すことができる。なお、ここでは、気筒毎状態量について、遷移過程毎状態量と区別するため、頭部に山形のハット記号を付してある。
ここで、状態量である質量m、圧力pは、吸気系と排気系と複数の気筒の行列である。例えば、6気筒の場合、8行1列の行列である。ここでは、吸気系と排気系を省略し、気筒についてのみ考えると、次の式(12)のように、各状態量は6行1列の行列で示される。
変換行列Zは、k=0からk=5の間を順次サイクリックに変換するものであるので、直交行列の一種である置換行列を用いることができる。すなわち、置換行列をQとして、kに応じて、そのべき乗数を変更してサイクリックに変換を実行できる変換行列とすることができる。その様子を、図14に示す。ここでは、べき乗数をkの関数という意味で、kの頭部に横線(バー)が付されている。べき乗数は、サンプル点が所定数であるので、その所定数で変換行列が繰り返すように設定される。例えば、図14の場合、k=0,1,2,3,4,5の6つがサンプル点であるので、べき乗数は、最小が0で、最大が5となる。
べき乗数は、上記のように、サンプル点の数で上限が決められるので、これをkmodAで定義できる。kmodAとは、数kと数Aとの間で、k/Aを計算したときの余りの数である。例えば、上記のようにA=6の場合は、k=2のときのkmod6は、2/6の余りであるので、2である。このような変換行列Zは、次の式(13)で与えることができる。
式(13)を満たす変換行列Zは、図13の対応関係を満たすような適当な置換行列Qを求めることで得られる。6気筒の場合、置換行列Qは、次の式(14)を満たす必要がある。
図13の場合においては、遷移過程の種類が6つ、気筒数が6つであるので、置換行列Qは6行6列の行列になる。また、サンプル点の数は6つであるので、置換行列Qのべき乗であるkmodAにおいて、A=6である。これらの条件の下で、図13の対応関係を満たす置換行列Qの1例を図15に示す。
このようにして、置換行列Qと、べき乗であるkmodAを用いて、変換行列Zを定めることができる。そしてこの変換行列Zを用いて、遷移過程毎の状態量と、気筒毎の状態量との間を演算により変換することができる。
遷移過程を考えた入力変数と、これに対応する気筒における入力変数との間の変換を表す次の式(15)は、作用素Ψを用いて行うことができる。作用素Ψは、例えば点火時期である燃焼開始時期が、任意のkにおいて、どの気筒の点火時期に対応するかを定める演算要素である。その関係は、式(16)で示すことができる。
図13で示す例では、点火時期に対応する遷移過程は、k=0で2番気筒、k=1で3番気筒で、以下、kの変化と共に気筒番号が進んでゆく。したがって、作用素Ψは、上記のkmodAの関数を用いて、((k+1)mod6)+1と示すことができる。同様に、燃料噴射量に対応する遷移過程は、k=0で6番気筒、k=1で1番気筒、k=2で2番気筒であり、以下、kの変化と共に気筒番号が進んでゆく。したがって、これもkmodAの関数を用いて表すことができる。上記の式(16)は、そのことをまとめたものである。
これらが図15にまとめてある。ここでは、上記のように、遷移過程毎状態量と、気筒毎状態量との間を変換する状態量変換手段として、変換行列Zが示されている。そして、図13で説明した対応付けを変換する変換行列Qの1例が示されている。また、遷移過程を考えた制御入力と、気筒毎の制御入力との間を変換する制御入力変換手段として、作用素Ψが示されている。そして、図13で説明した対応付けを変換する作用素Ψの1例が示されている。この変換行列、作用素を用いることで、演算により、遷移過程毎の状態変化に基づく状態方程式と、気筒毎の状態変化に基づく状態方程式との間の変換を演算により実行することができる。
10 エンジンシステム、12,13 気筒、14 エアフィルタ、16 スロットル、18 サージタンク、20 吸気管、21 燃料噴射弁、22 点火栓、24 回転角度センサ、26 エキゾーストマニホールド集合部、28 触媒、30 内燃機関の制御装置、32 目標指令入力部、34 観測量取得部、36 制御出力部、40 ECU(エンジン制御ユニット)、42 制御入力、44 統合離散的時間モデル、46 性能算出部、50 エンジンパラメータ、60 状態量算出部、62 物理モデル作成記憶部、66 離散的時間分割部、68 物理モデル作成部、70 吸気系離散的時間モデル、72 燃焼系離散的時間モデル、74 排気系離散的時間モデル、76 燃料系離散的時間モデル、78 並進回転系離散的時間モデル、80 エンジン性能モデル、82 質量・圧力・回転角度算出部、90,91 フィードフォワード部、92,93 フィードバック部。