JP2008171734A - 薄膜電池の製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】薄膜電池において、極力特定の層のみを熱処理することが可能な薄膜電池の製造方法を提供する。
【解決手段】本発明薄膜電池の製造方法は、正極層5および負極層4の少なくとも一方の電極層と、この電極層に接触する電解質層6とを形成する。この電極層に通電して、電極層に接触する電解質層6を加熱処理する。電極層に通電することで、局所的に発生するジュール熱により電極層を加熱することができる。この電極層の加熱に伴い、隣接する電解質層6も熱処理される。この電解質層6の熱処理により、少なくとも電極層と電解質層6との界面を改質し、低抵抗化することができる。
【選択図】図2

Description

本発明は、薄膜電池の製造方法と薄膜電池に関するものである。特に、電極と電解質層との界面を改質できる薄膜電池の製造方法に関するものである。
携帯電話など、比較的小型の電気機器の電源に、リチウムイオン二次電池(以下、単にリチウム電池と呼ぶ)が利用されている。このリチウム電池としては、正極集電体層、正極層、固体電解質層、負極層、負極集電体層を個別に作製して組み合わせることで、順次重ねた積層構造のものが知られている。
このようなリチウム電池の固体電解質に好適な材料として、特許文献1は、メカニカルミリングによりガラス化したリチウムイオン伝導性硫化物ガラスをガラス転移温度以上で焼成することで得られる電解質を開示している。この文献は、この熱処理を施すことで、得られた固体電解質の室温での電気伝導度が向上することも開示している。
一方、薄膜電池の研究開発が進められている。薄膜電池は、例えば、基材上に、各々薄膜からなる正極集電体、正極層、固体電解質層、負極層、負極集電体を気相合成法などで積層した薄型の電池である。
特開2004-348972号公報
しかし、上記の薄膜電池においては、電解質層のみを熱処理して、電解質層を改質することが難しいという問題がある。
電解質層を電極層などと個別に作製して組み合わせる構造の電池では、予め電解質層だけに熱処理を施すことができる。しかし、薄膜電池では、基材上に電極層や電解質層が気相合成法にて成膜されているため、特定の層のみ熱処理を施すことができない。例えば、電解質層を熱処理しようとしても、電池を構成する全層を加熱するしかない。その結果、熱処理温度が基材などの耐熱温度に依存するという問題がある。また、電池を構成する層全体に熱処理を施すと、隣接する各層間で反応による劣化を引き起こすことも考えられる。
本発明は上記の事情に鑑みてなされたもので、その目的の一つは、薄膜電池において、極力特定の層のみを熱処理することが可能な薄膜電池の製造方法を提供することにある。
また、本発明の他の目的は、電極層と電解質層との界面抵抗が改善された薄膜電池を提供することにある。
本発明は、薄膜電池の構成層の一部に通電または課電することで特定の層を抵抗加熱し、上記の目的を達成する。
本発明に係る第一の薄膜電池の製造方法は、正極層および負極層の少なくとも一方の電極層と、この電極層に接触する電解質層とを形成する。この方法において、本発明は、前記電極層に通電して、この電極層に接触する電解質層を加熱処理することを特徴とする。
電極層に通電することで、局所的に発生するジュール熱により電極層を加熱することができる。この電極層の加熱に伴い、隣接する電解質層も熱処理される。この電解質層の熱処理により、少なくとも電極層と電解質層との界面を改質し、低抵抗化することができる。
本発明に係る第二の薄膜電池の製造方法は、正極層および負極層の少なくとも一方の電極層と、この電極層に接触する電解質層とを形成する薄膜電池の製造方法である。そして、前記電解質層に仮設電極を形成し、この仮設電極と電極層に課電することで、電解質層を加熱処理することを特徴とする。
電極層に直接通電することも可能であるが、電解質層に仮設電極を形成し、この仮設電極と電極層に電圧を印加すれば、効果的に電解質層を熱処理することができる。
本発明製造方法の一形態としては、前記電解質層が固体電解質で形成され、その固体電解質がLi、P、O、Sを含有していることが好ましい。
Li、P、O、Sを含有している電解質層は、熱処理により電極層との界面を改質して低抵抗化したり、電解質層自体のイオン伝導度を向上させることが期待できる。
本発明製造方法の一形態としては、電極層が多孔質で、上記加熱処理により、電解質層の表面部を溶融させ、その溶融した電解質層を電極層の空隙に侵入させることが好ましい。
熱処理により溶融された電解質層が電極層の空隙に侵入すれば、電解質層と電極層の界面の低抵抗化をより促進することができる。特に、電極層と固体電解質層の界面は、微視的に見れば、微細な凹凸同士の点接触であるといえるため、この溶融された電解質層が電極層の空隙に侵入すれば、上記界面の接触状態を実質的に面接触状態とすることができる。
本発明製造方法の一形態としては、通電電流や印加電圧がパルスであることが好ましい。
パルス電流(電圧)であれば、電極層への通電が間歇的であるため、電極層(電解質層)の加熱程度の調整が行いやすく、電池を構成する他の層への加熱を低減することができる。
一方、本発明薄膜電池は、正極層および負極層の少なくとも一方の電極層と、この電極層に接触する電解質層とを備える薄膜電池である。そして、前記電極層と電解質層との界面において、溶融した電解質層の一部が多孔質の電極層の空隙に侵入してなることを特徴とする。
溶融された電解質層が電極層の空隙に侵入すれば、上記界面の接触状態を実質的に面接触状態とすることができる。この電解質層と電極層との接触状態の改質により、両層の界面における接触抵抗を低減することができる。
本発明薄膜電池の製造方法によれば、電極層に通電または課電することで電解質層を局部的に熱処理することができる。そのため、電解質層以外の電池構成層が加熱されることを極力抑制しながら、電解質層を熱処理して、その電解質層と電極層との界面を低抵抗化することが期待できる。
また、本発明薄膜電池によれば、電解質層と電極層との接触状態の改質により、両層の界面における接触抵抗を低減することができる。
以下、本発明の各部の構成をより詳しく説明する。
[電池の基本構成]
本発明の電池は、リチウムイオン電池として好適に利用でき、正極層、負極層、電解質層、正極集電体、負極集電体を備えることを基本構成とする。通常、いずれの層も薄膜状に形成されている。このうち、正極層と負極層は、電池を平面視した場合に、互いに重複する箇所がある積層構造の場合でもよいし、重複する箇所がない構造でもよい。前者の場合、電池の面積を小さくしやすく、後者の場合、電解質層の厚さ方向にピンホールが生じていても、両電極層間の短絡が抑制しやすい。電池を平面視した場合、両電極層に重複する箇所がない電極の構成としては、正極層と負極層とを各々櫛歯状に形成して、互いに嵌め合わされるように並列することが挙げられる。
[抵抗加熱]
上記のような電池のうち、正極層および負極層の少なくとも一方に通電または課電を行って、この電極層を抵抗加熱し、電極層からの熱伝導により隣接する電解質層を熱処理する。
(通電・課電の仕方)
通電は、電極層に直接通電する。また、課電は、仮設電極を電解質層に形成して仮設電極と電極層との間に対して行う。通常、電解質層は多孔質である上、抵抗加熱により効率的に発熱させることが難しい。これに対して、電極層は電解質層に比べれば導電性も高く、抵抗加熱により効率的に発熱させることができ、かつ電解質層と接触しているため、電極層からの熱伝導により電解質層を熱処理することが容易にできる。
<電極層への直接通電>
電極層への直接通電を行う場合、正極層または負極層のうち、表面が露出されている箇所の2箇所以上を通電のための給電点とし、これらの給電点から通電を行う。直接通電の場合、新たに通電のための仮設電極などを形成する必要がない点で通電工程が容易に行える。給電点は、電極層に対してほぼ均一に分散するように複数配置すれば、電極層の加熱、つまりは電解質層の加熱を均一に行うことができる。
<仮設電極を利用した課電>
一方、仮設電極を利用した課電は、電解質層に仮設電極を形成する。この仮設電極は、例えば電解質層のいずれかの適宜な位置に金属片などを接合することで形成できる。金属片の材質は、課電により発熱しやすい程度の抵抗を有する金属が好適である。
仮設電極の面積は、電解質層の一部であっても全面であってもよい。仮設電極の形成を電解質層の一部とする場合、仮設電極を複数個所とし、この仮設電極を電解質層の全面に亘って均等に分散させることが好ましい。この構成により、電解質層全体をほぼムラなく熱処理することができる。あるいは、仮設電極を電解質層の全面に亘って設けても同様にムラの少ない熱処理が行える。
上述したような仮設電極と電極層との間に電圧を印加することで、効率的に電解質層を加熱することができる。特に、仮設電極は、電圧を印加する電極層との間に電解質層を挟みこむように形成することが好ましい。この構成によれば、課電により、電極層と仮設電極の双方が抵抗加熱され、電解質層は両面から効率的に熱処理することができる。
(通電・課電条件)
通電電流は、1mA〜500mA程度が好適である。また、印加電圧は10V〜1000V程度が好適である。これらの下限を下回ると、電解質層を改質できる程度の加熱を行うことが難しい。逆に上限を超えると、電解質層の改質効果が飽和すると共に、基材など電池の他の構成層への熱的影響が大きくなるためである。特に好ましい電流範囲は、交流で10mA〜100mAである。特に好ましい印加電圧は、100V〜300V程度である。
さらに、通電・課電時間は30秒から15分程度が好適である。この下限値未満では、電解質層を改質できる程度の加熱を行うことが難しい。逆に、15分を超えても、基材など電池の他の構成層への熱的影響が大きくなる。より好ましい通電・課電時間は、1分から10分程度である。
その他、電流の種類は、直流、交流、パルス電流のいずれでもよい。特に、パルス電流(電圧)であれば、通電・課電対象層あるいは電解質層以外の層への加熱を低減することができて好ましい。
さらに、通電・課電による電解質層の熱処理は、Arなどの不活性雰囲気下で行うことが好ましい。これにより、通電加熱時の電解質層の酸化を抑制することができる。
(抵抗加熱処理の時期)
加熱処理は、電極層および電解質層が形成された後とすることが好ましい。例えば、正極層と電解質層が形成された段階、あるいは負極層と電解質層が形成された段階で電極層に対して加熱処理を行う。それにより、抵抗加熱された電極層からの熱伝導により電解質層を熱処理することができる。
[電池の各部の構成]
(正極層)
<材質>
正極層は、イオンの吸蔵及び放出を行う活物質を含む層で構成する。リチウムイオン電池の場合、正極層は、酸化物、例えばコバルト酸リチウム(LiCoO2)、ニッケル酸リチウム(LiNiO2)、マンガン酸リチウム(LiMn2O4)及びオリビン型鉄リン酸リチウム(LiFePO4)よりなる群より選ばれる1つ、若しくはこれらの混合物を好適に使用することができる。また、正極層は、硫化物、例えばイオウ(S)、硫化リチウム(Li2S)、FeS、FeS2及び硫化チタニウム(TiS2)よりなる群より選ばれる1つ、若しくはこれらの混合物であっても良い。その他、正極層の材料としては、銅−リチウム酸化物(Li2CuO2)、あるいはLiV3O3、V2O、Cu2V2O7などのバナジウム酸化物が挙げられる。上述した酸化物は、いずれも電解質層を改質するための熱処理に対して耐熱性を備えている。正極層の厚みは、10〜300μm程度が好適である。より好ましい正極層の厚みは100μm以下、さらに好ましい正極層の厚みは30μm以下である。
<正極層の形成方法>
正極層の形成方法としは、湿式法や乾式法を利用することができる。湿式法には、ゾルゲル法、コロイド法、キャスティング法等が挙げられる。特に、塗布法により正極層を形成することが好適である。例えば、ドクターブレード法やスクリーン印刷法などが挙げられる。より具体的には、結着剤を有機溶剤に溶解又は分散させた液体にLiCoO2、LiNiO2、LiMn2O4、MnO2などの活物質からなる粒子を加えて撹拌・混合してスラリーを作製し、このスラリーを基材や集電体層に塗布した後、溶媒を乾燥すればよい。結着剤は、ポリフッ化ビニリデン(PVdF)、ポリテトラフルオロエチレン、エチレン−プロピレン−ジエン共重合体、フッ素系ゴム、カルボキシメチルセルロース、フルオロオレフィン共重合体架橋ポリマー、ポリビニルアルコール、ポリアクリル酸、ポリイミドなどが好適に利用できる。有機溶剤は、N-メチル-2-ピロリドンなどを用いることができる。上記スラリーには、導電助剤として、活物質よりも導電性の大きい高導電性粒子を添加することが好ましい。高導電性粒子は、例えば、アセチレンブラックといったカーボンブラック、天然黒鉛、熱膨張黒鉛、炭素繊維、酸化ルテニウム、酸化チタン、アルミニウムやニッケルなどの金属繊維からなるものが利用できる。乾式法には、気相堆積法である蒸着法、イオンプレーティング法、スパッタリング法、レーザアブレーション法等が挙げられる。
(負極層)
<材質>
負極層も、イオンの吸蔵及び放出を行う活物質を含む層で構成する。リチウムイオン電池の場合、負極層として、Li金属及びLi金属と合金を形成することのできる金属よりなる群より選ばれる1つ、若しくはこれらの混合物又は合金が好適に使用できる。Liと合金を形成することのできる金属としては、アルミニウム(Al)、シリコン(Si)、錫(Sn)、ビスマス(Bi)、亜鉛(Zn)及びインジウム(In)よりなる群より選ばれる少なくとも一つ(以下、合金化材料という)が良い。その他、グラファイト等の炭素材料、Li4Ti5O12、Li4Fe0.5Ti5O12、Li4Zn0.5Ti5O12などのスピネル構造を有するリチウムチタン酸化物、TiS2等の硫化物、LiCo2.6O0.4N等の窒素化合物、およびこれらの混合物などが負極層の材質として挙げられる。これらのうち、炭素材料や酸化物などは、電解質層を改質するための熱処理に対して耐熱性を備えている。負極層の厚みは、0.5〜80μm程度が好適である。より好ましい負極層の厚みは1〜40μmである。
上述した合金からなる負極層は、負極層自体に集電体としての機能を持たせることができ、かつリチウムイオンの吸蔵・放出能力が高く好ましい。特に、シリコン(Si)はリチウムを吸蔵・離脱する能力がグラファイト(黒鉛)よりも大きくエネルギー密度を高くすることができる。
また、負極層材料にLi金属との合金相を用いることで、Li金属と合金化した合金化材料とLiイオン伝導性の固体電解質層との界面でのLiイオンの移動抵抗が低減される効果があり、第1サイクル目の充電初期における合金化材料の高抵抗化が緩和される。
さらに、合金化材料の金属単体を負極層とした場合には、第1サイクル目の充放電サイクルにおいて、充電容量に対して放電容量が大幅に小さくなる問題があるが、予めLi金属と合金化材料とを合金化した負極層材料を用いることにより、この不可逆容量は殆どなくなる。このことにより、正極活物質量を不可逆容量分だけ余分に充填する必要がなくなり、薄膜電池の容量密度を向上させることができる。
<負極層の形成方法>
負極層の形成方法は、気相堆積法が好ましい。気相堆積法としては、例えば、PVD(物理的気相合成)法やCVD(化学的気相合成)法が挙げられる。具体的には、PVD法としては、真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法、レーザアブレーション法が、CVD法としては、熱CVD法、プラズマCVD法などが挙げられる。その他、負極層は塗布法により形成することもできる。例えば、結着剤を溶剤に溶解した液体に、カーボン、Siなどの粉末と導電助剤を混合したスラリーを基材や集電体層に塗布した後、溶媒を乾燥することで負極層を形成する。結着剤、導電助剤には「正極層」において記載した材料と同一のものが利用できる。
(電解質層)
<材質>
電解質層にはイオン伝導性があり、電子伝導性が無視できるほど小さい材料を用いる。リチウムイオン電池用の電解質層の場合、Liイオン伝導体であり、電解質層のLiイオン伝導度(20℃)が10-5S/cm以上あり、かつLiイオン輸率が0.999以上である固体電解質層が好ましい。特に、Liイオン伝導度が10-4S/cm以上あり、かつLiイオン輸率が0.9999以上であれば良い。固体電解質層の材質としては硫化物系が良く、Li、P、Sより構成される固体電解質層が好ましく、さらに酸素を含有していても良い。例えば、Li3PO4や、Li3PO4に窒素を混ぜたLiPON、Li2S−SiS2、Li2S−P2S5、Li2S−B2S3等のリチウムイオン伝導性硫化物ガラス状固体電解質や、これらのガラスにLiIなどのハロゲン化リチウム、Li3PO4などのリチウム酸素酸塩をドープしたリチウムイオン伝導性固体電解質などが固体電解質層の材料として好適に利用できる。これらの複合酸化物などからなる固体電解質層、特にLi、P、O、Sを含む電解質層は、熱処理により、電極層との界面抵抗の低減やイオン伝導度の改善が期待できる。Li、P、O、Sを含む固体電解質層の場合、この電解質層の温度を150℃以上に加熱すれば、上記界面抵抗の低減効果が期待でき、200℃以上に加熱すれば、イオン伝導度の改善が期待できる。また、固体電解質層の厚みは、3〜80μm程度が好適である。より好ましい固体電解質層の厚みは5〜20μmである。
<電解質層の形成方法>
電解質層の形成方法は、気相堆積法が好ましい。気相堆積法としては、例えば、PVD(物理的気相合成)法、CVD(化学的気相合成)法が挙げられる。具体的には、PVD法としては、真空蒸着法,スパッタリング法、イオンプレーティング法,レーザアブレーション法が、CVD法としては、熱CVD法、プラズマCVD法などが挙げられる。
[その他の構成部材]
(基材)
通常、導電性の基板の上方に正極層、負極層、電解質層および絶縁層を形成するか、絶縁性の基板の上方に集電体層を形成してから正極層、負極層、電解質層および絶縁層を形成する。基材の材料には、アルミナ、ガラスおよびポリフェニレンスルフィド(PPS)、ポリイミド(PI)フィルム等の絶縁性基板、シリコン等の半導体基板、プラチナ、金、鉄、ニッケル、アルミニウムや銅、ステンレス等の導電性基板などを用いることができる。これらの材料は、いずれも電解質層を熱処理する際の加熱温度に対して耐熱性を備えている。基材の厚みは、3〜80μm程度が好適である。より好ましい基材の厚みは5〜25μmである。樹脂製の基材を用いた場合、得られる電池に可とう性を持たせやすい。さらに、基材自体が樹脂フィルムと金属箔との積層構造となっていてもよい。このような基材は、金属箔で高い防湿性を確保することができ、樹脂フィルムで電池構成部材との絶縁性を確保したり、電池を覆う封止フィルムと容易に接着させることができる。特に、金属箔の表裏が樹脂フィルムで覆われた基材が好適に用いられる。
(集電体)
正極層、負極層の各々には、通常、集電体が接合されている。集電体には金属箔などが適する。負極集電体材料としては、例えば、銅(Cu)、ニッケル(Ni)、鉄(Fe)、クロム(Cr)、及びこれらの合金から選択される1種が挙げられる。これらの金属は、リチウム(Li)と金属間化合物を形成しないため、リチウムとの金属間化合物による不具合、具体的には、充放電による膨張・収縮によって、負極層が構造破壊を起こし集電性が低下したり、負極層の接合性が低下して負極層が集電体から脱落し易くなるといった不具合を防止できる。正極集電体の具体例としては、アルミニウム(Al)、ニッケル(Ni)、これらの合金、ステンレスから選択される1種が挙げられる。
これらの集電体は、PVD法やCVD法により形成することができる。特に、所定のパターンに集電体を形成する場合、適宜なマスクを用いることで、容易に所定のパターンの集電体を形成することができる。
(イオン液体)
さらに、電極層や電解質層にイオン液体を含浸させることが好ましい。イオン液体を電極層に含浸させることで、電極層や電解質層の抵抗を低減し、電池の容量低下を改善することができる。特に正極層にイオン液体を含浸させることが好ましい。
イオン液体としては、例えば、四フッ化ホウ酸ジアルキルイミダゾリウム(DI・BF4)、ジアルキルイミダゾリウムトリストリフルオロメタンスルフォニルメチド(DI・C(CF3SO23)、六フッ化リン酸ジアルキルイミダゾリウム(DI・PF6)、トリアルキルイミダゾリウムトリストリフルオロメタンスルフォニルメチド(TI・C(CF3SO23)等の有機物カチオンを有する有機塩を挙げることができる。
本発明電池を図1、図2に基づいて説明する。図1は電池要部の平面図、図2は電池要部の部分縦断面図である。
この電池は、図1、図2に示すように、基材1上の一部に負極集電体2と正極集電体3が形成され、この集電体2,3の上に、負極集電体2を覆うように負極層4が、正極集電体3を覆うように正極層5が形成されている。負極層4は、電池を平面視した場合に正極層5と重ならない位置に形成されている。
各集電体2,3は、直線状の端子部21,31と、端子部21,31から櫛歯状に分岐する複数の分岐部22,32とを有している。これら負極集電体2と正極集電体3とは、櫛歯部分が噛み合うように、負極集電体2の分岐部22の間に正極集電体3の分岐部32が配置され、負極側の端子部21と正極側の端子部31とが平行するように形成されている。
一方、負極層4は負極集電体2の分岐部22の上に、正極層5は正極集電体3の分岐部32の上に形成される。負極層4、正極層5は、各々短冊状の櫛歯部41、51が交互に並列された構成である。このような負極層4と正極層5との配置により、両電極層4,5は、実質的に同一平面上に配されることになる。
そして、負極側の端子部21と正極側の端子部31との間に挟まれた領域で、負極層4および正極層5の各櫛歯部41、51が並列された領域の全体を電解質層6で覆っている。この電解質層6で覆われた領域が発電エリアGとなる。また、発電エリアの両側に位置して電解質層6で覆われていない各端子部21,31が負極集電エリアNおよび正極集電エリアPとなる。ただし、負極集電体の端子部21および正極集電体の端子部31の上には、負極層4および正極層5の一部が電解質層6に覆われることなく露出されている(図示略)。
この露出されている箇所から通電を行う。例えば、電解質層6に覆われていない正極層5に給電点を設けて、そこから正極層5に通電する。この通電により、正極層5がジュール熱により加熱される。このとき、正極層5からの伝導熱は基材1にも達するが、基材1自体を直接加熱する場合と異なり、正極層5、集電体3を介しての加熱になるため、基材1が熱により損傷されることもない。そして、加熱された正極層5の熱が電解質層6に伝導され、電解質層6を加熱することができる。この加熱により、少なくとも電解質層6と正極層5の界面を改質し、界面抵抗を小さくすることができる。また、電解質層6自体のイオン伝導度の向上も期待できる。もちろん、正極層5のみならず、負極層4に対しても同様の通電加熱を行ってもよい。
熱処理を終えたら、発電エリアGにイオン液体を塗布する。イオン液体は、正極層5に含浸されればよいが、ここでは負極層4上も含む発電エリアGの大部分にイオン液体を塗布する。例えば、発電エリアGの全体ではなく、同エリアGの周縁部を除く内側部に限定して塗布する。その際、イオン液体が正負極の集電エリアP,Nに付着しないようにする。
このような電池は、発電エリアGを図示しない封止フィルムで封止する。この封止フィルムは、その輪郭内の面積が基材1よりも大きな面積を有する。但し、各集電エリアN,Pに対応した位置には、開口部が形成されている。より具体的には、矩形の封止フィルムの両側部に一対の四角形の開口部が形成されている。
さらに、本例では、基材1の裏面、つまり発電エリアGが形成されていない面も封止フィルムで覆う。この基材の裏面を覆う封止フィルムは、開口部が形成されていない。
電池の封止を行うには、まず、開口部の形成された封止フィルムを封止対象の表面側(発電エリアG側)に配置する。その際、開口部から集電エリアN,Pが露出されるようにする。次に、封止対象の裏面側に開口部のない封止フィルムを配する。つまり、両封止フィルムで封止対象を挟み込む。そして、封止フィルムで挟み込んだ封止対象をロールプレスし、同フィルムの周縁部をヒートシールして融着させる。
このロールプレスとヒートシールにより、封止フィルムは発電エリアGを覆った状態で封止対象に接着される。但し、各集電エリアN,Pは封止フィルムに覆われることなく露出されている。そのため、発電エリアGの防湿性は確保しながら、封止フィルムに被覆されていない集電エリアN,Pを、電気を取り出すためのリード部とすることができる。また、この電池では、両極層4,5が厚さ方向に重ならない配置のため、電解質層6にピンホールが在っても、両極層4,5が短絡することがない。
その他、実施例1の変形例としては、電解質層の上のうち、電池を平面視した場合に正極層と重なる位置に仮設電極を形成する。そして、この仮設電極と正極層との間に電圧を印加してもよい。この課電により、仮設電極と正極層とが抵抗加熱され、その伝導熱により電解質層を熱処理することができる。この場合、電解質層のうち、正極層上に位置する部分は、正極層側と仮設電極側とから加熱されるため、効率的な熱処理を行うことができる。さらに、実施例1では、各電極層の一部を電解質層から露出させて給電点とするために、各電極層の一部を各端子部21,31の上に突出させたが、その代わりに端子部近傍において電極層に重複する(電極層上に位置する)電解質層の一部を切り欠いて電極層を露出させてもよい。
次に、実施例1とは異なる構造の電池を図3に基づいて説明する。この電池は、基材1上に形成する正極層5、負極層4、正極集電体3、負極集電体2、電解質層6の積層構造が異なるだけであり、発電エリアの封止構造は、実施例1と同様とすればよい。
この電池では、まず、基材1上の離れた位置に正極集電体3と負極集電体2が形成される。
次に、この正極集電体3の一部に重なるように正極層5が形成される。この正極層5の正極集電体3と重ならない側は、正極集電体3と負極集電体2との間に位置される。つまり、正極層5のうち、正極集電体3と重なる箇所が薄肉部52で、正極集電体3と重ならない箇所が厚肉部53となる。
次に、この正極層5の上に、電解質層6が形成される。電解質層6は、上段部61と下段部62からなる段差状の層で、上段部61が正極層5の一部を覆い、下段部62が基材1上に形成される。この下段部62は、正極層5と負極集電体2との間に配置される。電解質層の下段部62の厚みは、負極集電体2の厚みと実質的に同一である。
電解質層6を形成した後、正極層5の電解質層6に覆われていない薄肉部52の表面に通電する。この通電により正極層5が加熱され、その伝導熱により電解質層6を熱処理することができる。本実施例の場合も、熱処理により電解質層6と正極層5との界面抵抗を低減したり、電解質層6のイオン伝導度を改善することができる。
さらに、この電解質層6の上に負極層4が形成される。この負極層4も上段部42と下段部43とを備える段差状の層である。負極層の上段部42は電解質層の上段部61を覆い、負極層の下段部43は、その一部が電解質層の下段部62を覆って、残部が負極集電体2の一部を覆っている。
この構成の電池では、両集電体2,3の間に、正極層5、電解質層6、負極層4が積層された発電エリアGが形成される。また、発電エリアGの一側に、正極集電体3の露出した正極集電エリアPが形成され、発電エリアGの他側に負極集電体2の露出した負極集電エリアNが形成される。
ここでも、負極層4に対して通電を行い、負極層4の加熱→負極層4から電解質層6への熱伝導→電解質層6の加熱を行ってもよい。この場合も、電解質層6と負極層4との界面抵抗の低減や電解質層6のイオン伝導度の改善が期待できる。
このような電池であれば、層が最も多く重なり合っている箇所(正極層5、電解質層6、負極層4が積層されている箇所)の層数が、全ての層2,3,4,5,6を重複させた場合の層数よりも少ない。この例では、層2〜6の5層に対して、電池の最も厚い箇所の積層数は、正極層5、電解質層6、負極層4の3層である。また、正極層5、電解質層6、負極層4が積層構造となっているため、各電極層4,5を重複することなく並列する場合に比べて電池の面積を小型化できる。そして、このような構成の電池においても、発電エリアGを封止フィルムで覆い、両集電体エリアN,Pを封止フィルムから露出するようにすれば、電池の厚みを極力薄くして、各集電体2,3をリード部として利用することができる。
なお、この例では、正極層5が基材1に接する構成としたが、図3の正極層5と負極層4を置換し、負極層4が基材1に接する構成としてもよい。
次に、実施例1、2とは異なる構造の電池を図4に基づいて説明する。この電池は、基材1上に形成する正極層5、負極層4、正極集電体3、電解質層6の積層構造が異なるだけであり、発電エリアの封止構造は、実施例1と同様とすればよい。
本例の電池は、実施例1に類似しており、正極集電体3、正極層5、負極層4が各々櫛歯状である点は実施例1と共通である。但し、負極層4の配置箇所が実施例1とは異なり、かつ負極層4が負極集電体の機能も兼ねている。
この電池でも、基板1上の一部に正極集電体3を形成し、その集電体3の上に正極層5を形成している。次に、この電池では、正極層5を含む基板1のほぼ全面を電解質層6で覆っている。そして、電解質層6上で、電池を平面視した場合に、正極層5と重ならない位置に負極層4を形成している。つまり、正極層5と負極層4は同一平面上に存在しない。
また、本例の場合、負極層4を合金材料などで構成することで、負極層4自体に負極集電体としての機能も持たせている。この場合、負極層4自体を、複数の櫛歯部と、櫛歯部の一端側を連結する集電部とからなる構成とし、正極層5および負極層4の櫛歯部が並列された箇所を発電エリアとし、正極集電体3の端子部を正極集電エリア、負極層4の集電部を負極集電エリアとすればよい。特に、負極層4の一部である集電部は、電解質層6と重ならないようにしておくことが好ましい。
本例の電池では、負極層4の上に給電点を形成し、負極層4を通電加熱することで、その伝導熱で電解質層6を熱処理することができる。そして、この熱処理により、電解質層6と負極層4との界面抵抗を低減したり、電解質層6自体のイオン伝導度を改善することができる。
このような構成の電池は、一方の電極層4または5が電解質層6に覆われ、他方の電極層5または4が電解質層6上に存在する構成のため、両極層4,5間に何らかの導電性異物が在っても、この異物を介した界面伝導による両極層4,5間の短絡を効果的に抑制できる。
そして、上記の電池に実施例1と同様の封止構造を適用すれば、発電エリアは封止フィルムで封止され、各集電エリアは封止フィルムから露出された状態を構成できる。
なお、この例では、正極層5が基材1に接する構成としたが、図6の正極層5と負極層4を置換し、負極層4が基材1に接する構成としてもよい。その他、負極層4の上に、別途負極集電体を形成してもよい。
[試作例]
図1、図2に示す構造と同様の電池を用いて、発明例および比較例の電池を作製し、放電試験を行って電圧低下状況を調べてみた。各発明例、比較例の具体的な共通仕様は次の通りである。
基材→材質:ポリフェニレンスルフィド(PPS)、厚さ:50μm
集電体→材質:正負極共にNi膜、厚さ:0.2μm
正極層→MnO2粒、カーボンブラック、ポリフッ化ビニリデンを8:2:1の重量比でN-メチル-2-ピロリドンに混合・溶解したスラリーをスクリーン印刷し、150℃で真空乾燥させたもの、厚さ100μm
負極層→材質:Li金属膜、厚さ:25μm
電解質層→材質:Li-P-S組成、厚さ:10μm、成膜方法:Li/Pのモル比が2.0となるように調整したLi2SとP2S5の混合ターゲットを用いて、エキシマレーザアブレーション法により成膜。
正極含浸イオン液体→EMI-FSIに支持塩としてLiTFSIを0.3mol/kg溶解させたもの。
発電エリア→面積:3cm2、正負極の各櫛歯部の幅:0.5mm、ギャップ(正極層の櫛歯部と負極層の櫛歯部との隣接間隔):0.3mm
封止フィルム→PET(50μm)/Al(30μm)/変性PE(30μm)のラミネートシート
封止構造→封止フィルムを電池の両面に配置し、120℃でロールプレスした後、フィルムの周縁部をヒートシールにて圧着。
以上のような電池に対して、表1の熱処理を施す。ここで、仮設電極にはSUS板を用いた。放電試験は、1mA放電時の電池の低下電圧を計測することで行った。電圧低下は、放電前と放電10秒後の電圧の差で示している。放電試験の結果も合わせて表1に示す。
Figure 2008171734
この表から明らかなように、発明例1、2では放電時の電圧低下が比較例1よりも小さく、電池の内部抵抗が低減しているものと考えられる。また、基材が溶融するなどの損傷も見られなかった。一方、発明例3では、発明例2よりも熱処理時間を長くしている。そのため、固体電解質層における正極層との界面部に溶融しているところが見られた。この界面をSEM(Scanning Electron Microscope)にて観察したところ、正極層の空隙の一部に溶融した固体電解質層が侵入していることが確認できた。そして、放電後の電圧低下は最も小さく、界面抵抗あるいは電解質層の抵抗の改善効果が高いことがわかった。
本発明電池は、リチウム二次電池として好適に利用することができる。例えば、この電池は、移動型、携帯型などの種々の電気・電子機器の電源として利用することが期待される。
実施例1の本発明電池の平面図である。 実施例1の本発明電池の縦断面図である。 実施例2の本発明電池の縦断面図である。 実施例3の本発明電池の縦断面図である。
符号の説明
1 基材 2 負極集電体 3 正極集電体 4 負極層 5 正極層
6 固体電解質層
21、31 端子部 22、32 分岐部 41、51 櫛歯部
42 上段部 43 下段部 52 薄肉部 53 厚肉部 61 上段部 62 下段部
G 発電エリア N 負極集電エリア P 正極集電エリア

Claims (6)

  1. 正極層および負極層の少なくとも一方の電極層と、この電極層に接触する電解質層とを形成する薄膜電池の製造方法であって、
    前記電極層に通電して、この電極層に接触する電解質層を加熱処理することを特徴とする薄膜電池の製造方法。
  2. 正極層および負極層の少なくとも一方の電極層と、この電極層に接触する電解質層とを形成する薄膜電池の製造方法であって、
    前記電解質層に仮設電極を形成し、
    この仮設電極と電極層に課電することで、電解質層を加熱処理することを特徴とする薄膜電池の製造方法。
  3. 前記電解質層が固体電解質で形成され、その固体電解質がLi、P、O、Sを含有していることを特徴とする請求項1または2に記載の薄膜電池の製造方法。
  4. 電極層が多孔質で、
    上記加熱処理により、電解質層の表面部を溶融させ、その溶融した電解質層を電極層の空隙に侵入させることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の薄膜電池の製造方法。
  5. 通電電流または印加電圧がパルスであることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の薄膜電池の製造方法。
  6. 正極層および負極層の少なくとも一方の電極層と、この電極層に接触する電解質層とを備える薄膜電池であって、
    前記電極層と電解質層との界面において、溶融した電解質層の一部が多孔質の電極層の空隙に侵入してなることを特徴とする薄膜電池。
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