JP5093449B2 - リチウム電池 - Google Patents
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Description
[活物質層]
正極積層体に備える正極活物質層は、リチウムイオンの吸蔵と放出を行なう活物質を含む層である。この正極活物質層としては、例えば、コバルト酸リチウムやニッケル酸リチウムなどの公知の構成を利用できる。また、負極積層体に備える負極活物質層も、リチウムイオンの吸蔵と放出を行なう活物質を含む層である。この負極活物質層としては、例えば、リチウム金属や、リチウムと合金を形成できる金属(例えば、アルミなど)、あるいは、これらの合金などの公知の構成を利用できる。
正極積層体および負極積層体の少なくとも一方に形成する固体電解質層としては、リチウムイオン伝導性が高いことと、電子伝導性が低いものを使用する。具体的には、リチウムイオン伝導性として、少なくとも10-5S/cm台以上(好ましくは、10-4S/cm台以上)の高イオン伝導性が必要と考えられる。また、電子伝導性に関しては、イオン伝導性に対して4桁以上低い事が必要と考えられ、10-8S/cm以下の低電子伝導体である事が望ましい。このような特性を有する固体電解質層としては、リチウム(Li)、リン(P)、イオウ(S)を含有するものや、さらに酸素(O)を含有するものなどを使用すれば良い。
リチウムイオン伝導性の高分子またはリチウム含有塩を溶解したイオン液体からなる介在層は、リチウム伝導性が高く、電子伝導性が低いものを使用することができる。具体的には、リチウム伝導性は、10-4S/cm台以上、電子伝導性は10-8S/cm以下であることが好ましい。
本発明のリチウム電池を製造するときは、正極積層体と負極積層体をそれぞれ別個に作製する。両積層体を別個に作製することで各積層体に特有の処理を行なうことができる。例えば、正極積層体において、正極固体電解質層のリチウムイオンの伝導率を改善するような熱処理を行なう場合、この熱処理が、正極積層体と別個に作製される負極積層体に影響を及ぼさないようにすることができる。また、正極活物質層から固体電解質層、負極活物質層までを連続的に気相堆積法で形成した場合に、負極積層体を形成するときの高温雰囲気で正極積層体が劣化する虞がない。
本発明リチウム電池の正極積層体と負極積層体のうち少なくとも一方は、さらに各積層体の活物質層を支持する支持体を有していても良い。
正極積層体は、リチウムイオンの吸蔵及び放出を行なう活物質を含む正極活物質層を支持すると共に、集電体の役割を果たす支持体を備えていても良い。例えば、絶縁体の上に金属膜を形成した正極支持体を用意し、この金属膜の上に正極活物質層を形成して正極積層体を形成することが挙げられる。この場合、この金属膜が集電体の役割を果たす。また、金属製の支持体として、支持体自体を集電体として使用しても良い。
負極積層体は、リチウムイオンの吸蔵及び放出を行なう活物質を含む負極活物質層を支持すると共に、集電体の役割を果たす支持体を備えていても良い。例えば、絶縁体の上に金属膜を形成した負極支持体を用意し、この金属膜の上に負極活物質層を形成して負極積層体を形成することが挙げられる。この場合、この金属膜が集電体の役割を果たす。また、金属製の支持体として、支持体自体を集電体として使用しても良い。負極活物質層の組成によっては、負極活物質層自身を集電体として使用することもできる。
≪リチウム二次電池の全体構成≫
図1(A)は、本実施の形態におけるリチウム二次電池の縦断面図である。このリチウム二次電池1は、正極積層体10と負極積層体20とが対向して配置され、これら正極積層体10と負極積層体20との間に介在層30が配置された構成である。正極積層体10は、正極支持体11上に正極活物質層12と正極固体電解質層(PSE層)13とを有し、負極積層体20は、負極支持体21上に負極活物質層22と負極固体電解質層(NSE層)23とを有している。
[正極支持体]
正極支持体は、金属から構成し集電体を兼ねたものとしても良いし、絶縁体上に金属膜を形成し、当該金属膜を集電体として使用しても良い。正極の集電体としては、アルミニウム(Al)、ニッケル(Ni)、これらの合金、ステンレスから選択される1種が好適に利用できる。金属膜からなる集電体は、PVD法やCVD法により形成することができる。特に、所定のパターンに金属膜(集電体)を形成する場合、適宜なマスクを用いることで、容易に所定のパターンの集電体を形成することができる。
正極活物質層は、リチウムイオンの吸蔵及び放出を行う活物質を含む層で構成する。特に、酸化物、例えばコバルト酸リチウム(LiCoO2)、ニッケル酸リチウム(LiNiO2)、マンガン酸リチウム(LiMn2O4)及びオリビン型鉄リン酸リチウム(LiFePO4)よりなる群より選ばれる1つ、若しくはこれらの混合物を好適に使用することができる。その他、正極活物質層は、硫化物、例えばイオウ(S)、硫化リチウム(LiO2)及び硫化チタニウム(TiS2)よりなる群より選ばれる1つ、若しくはこれらの混合物であっても良い。
正極固体電解質層(PSE層)はLiイオン伝導体であり、固体電解質層のLiイオン伝導度(20℃)が10-5S/cm以上あり、かつLiイオン輸率が0.999以上であることが好ましい。特に、Liイオン伝導度が10-4S/cm以上あり、かつLiイオン輸率が0.9999以上であれば良い。また、PSE層は、電子伝導率が10-8S/cm以下であることが好ましい。PSE層の材質としては、Li、P、S、Oより構成されるPSE層が好ましく、さらに窒素を含有していても良い。特に、Li-P-O-Nから構成したPSE層とすると、このPSE層と正極活物質層との間の界面抵抗値を10000Ω・cm2以下とすることができ、その結果、電池の性能を向上させることができる。
負極支持体は、金属から構成し集電体を兼ねたものとしても良いし、絶縁体上に金属膜を形成し、当該金属膜を集電体として使用しても良い。負極の集電体としては、銅(Cu)、ニッケル(Ni)、鉄(Fe)、クロム(Cr)、及びこれらの合金から選択される1種が好適に利用できる。これらの金属は、リチウム(Li)と金属間化合物を形成しないため、リチウムとの金属間化合物による不具合、具体的には、充放電による膨張・収縮によって、負極支持体が構造破壊を起こし集電性が低下したり、負極活物質層との接合性が低下して負極活物質層が負極支持体から脱落し易くなるといった不具合を防止できる。なお、負極の集電体(金属膜)も、正極の場合と同様に、PVD法やCVD法で形成することができる。
負極活物質層は、リチウムイオンの吸蔵及び放出を行う活物質を含む層で構成する。例えば、負極活物質層として、Li金属及びLi金属と合金を形成することのできる金属よりなる群より選ばれる1つ、若しくはこれらの混合物又は合金が好適に使用できる。Liと合金を形成することのできる金属としては、アルミニウム(Al)、シリコン(Si)、錫(Sn)、ビスマス(Bi)、及びインジウム(In)よりなる群より選ばれる少なくとも一つ(以下、合金化材料という)が良い。なお、負極活物質層は、正極活物質層と同様の導電助剤や結着剤を含んでいても良い。
負極固体電解質層(NSE層)は、上述したPSE層と同様にリチウム伝導度とイオン輸率が高く、電子伝導性が低いものであることが好ましい。このNSE層の材質としては硫化物系が良く、Li、P、Sより構成されるNSE層が好ましく、さらに酸素を含有していても良い。特に、Li2SとP2S5とからなるLi-P-Sで構成したNSE層とすると、このNSE層と負極活物質層との間の界面抵抗値を10000Ω・cm2以下とすることができ、その結果、電池の性能を向上させることができる。
介在層としては、リチウムイオン伝導性の高分子、もしくは、リチウム含有塩を溶解したイオン液体を利用する。これらに要求される特性は、リチウムイオン伝導性が高く、電子伝導性が低いことである。具体的な数値としては、リチウムイオン伝導性が、10-4S/cm以上、電子伝導性が10-8S/cm以下であることが好ましい。
介在層に使用されるリチウムイオン伝導性の高分子としては、非水溶性であって、かつ電子伝導性が低く、リチウムイオン伝導性を有するものであれば特に限定されない。例えば、ポリエステル、ポリアミン、ポリスルフィド、ポリエーテル共重合体、ポリエーテル架橋体、ポリエーテル側鎖を有するくし型高分子にリチウム塩を溶解せしめたものや、高分子側鎖にリチウム塩を有するポリアニオン型高分子固体電解質型イオン伝導体、炭素−炭素二重結合を有する化合物とリチウムシリルアミド化合物を混合して得られるシリルアミド高分子固体電解質などを使用することができる。
イオン液体とは、有機カチオンとアニオンとの組み合わせからなるイオンのみからなる液体である。
本発明のリチウム二次電池を製造するには、図1(B)に示すように、正極積層体10と負極積層体20とをそれぞれ別個に作製する。正極積層体10は、正極支持体11上に正極活物質層12を形成し、さらにその上にPSE層13を形成することで作製する。また、負極積層体20は、負極支持体21上に負極活物質層22を形成し、さらにその上にNSE層23を形成することで作製する。さらに、リチウムイオン伝導性高分子、または、リチウム含有塩を溶解したイオン液体からなる介在層溶液を作製する。そして、作製した正極積層体10のPSE層13と負極積層体20のNSE層23の少なくとも一方に(同図ではPSE層13に)、介在層溶液31を塗布して、PSE層13とNSE層23とが互いに対向するように両積層体10,20を重ね合わせて、図1(A)に示すリチウム二次電池1を作製する。
[正極積層体の作製]
正極活物質としてLiCoO2粉末を87重量部と、導電助剤としてカーボンブラックを9重量部と、結着剤としてPVdFを4重量部とをN-メチルピロリドン(NMP)溶液中で混合し、スラリーを調整した。得られたスラリーを厚さ20μmのAl箔からなる集電体(正極支持体)に塗布し、乾燥後、プレスすることにより集電体上に正極活物質層を形成した。正極活物質層の厚さは、100μmであった。
また、厚さ5μmのCu箔からなる集電体(負極支持体)上に、気相法によりLi薄膜からなる負極活物質層を形成した。負極活物質層の厚さは、5μmであった。
カチオンとしてEMI+、アニオンとしてFSI-を使用したイオン液体に、リチウム含有塩であるLiTFSIを合計で0.35mol/kgの濃度となるように溶解させて介在層溶液を作製した。
上述のようにして作製した正極積層体のPSE層に介在層溶液を塗布し、PSE層に対向するように負極積層体のNSE層を重ね合わせた。そして、重ね合わせた積層体の外周を外装材で覆ってリチウム二次電池を作製した。リチウム二次電池は、各積層体の集電体から端子を取れるようにしてある。
実施例2では、実施例1のリチウム二次電池とは正極活物質層の組成が異なるリチウム二次電池を作製した。正極活物質層の具体的組成は、活物質であるMnO2を72重量部、導電助剤であるカーボンブラックを18重量部、結着剤であるPVdFを10重量部とした。また、この正極活物質層の厚さは100μmであった。正極活物質層以外の層の組成や膜厚、各層の形成方法などは実施例1と同様である。
実施例3では、実施例1のリチウム二次電池とはPSE層の組成が異なるリチウム二次電池を作製した。PSE層の具体的な組成は、Li-P-O-Nであり、この膜の厚さは3μmであった。PSE層以外の層の組成や膜厚、各層の形成方法などは実施例1と同様である。
実施例4では、実施例1のリチウム二次電池とはイオン液体の組成が異なるリチウム二次電池を作製した。具体的には、イオン液体として、PP13 +とTFSI-とからなるイオン液体を使用した。また、このイオン液体にLiTFSIを0.35mol/kgの濃度となるように溶解させた。イオン液体の組成以外は実施例1と同様である。
比較例1では、イオン液体を使用しない以外は実施例1と同様であるリチウム二次電池を作製した。つまり、比較例1のリチウム二次電池は、介在層を有さない従来のリチウム二次電池である。
上述した実施例1〜4と比較例1のリチウム二次電池を使用して、各電池の電圧降下の度合いを測定し、各電池の放電特性を評価した。電池の試験方法は、まず各電池を充電し、次いで電池を電流密度1mA/cm2で、放電開始10秒後における電圧降下の度合いを測定することにより行なった。電池の電圧降下が大きいということは、電池の内部抵抗が大きいということに等しい。そのため、電圧降下の値が小さいほど放電特性に優れた電池であると判断することができる。この測定結果を表1に示す。
図2(A)に実施の形態1とは異なる構成のリチウム二次電池の縦断面図を示す。この実施の形態のリチウム二次電池2は、正極活物質層12の上にのみ固体電解質層(PSE層)13を設け、このPSE層13と負極活物質層22との間に介在層30を形成した点を除いて、基本的な構成は実施の形態1と共通する。つまり、この実施の形態の電池2は、正極支持体11上に正極活物質層12、PSE層13、介在層30、負極活物質層22、負極支持体21が積層された構成である。
図3(A)に実施の形態1および2とは異なる構成のリチウム二次電池の縦断面図を示す。この実施の形態のリチウム二次電池3は、負極活物質層22の上にのみ固体電解質層(NSE層)23を設け、このNSE層23と正活物質層12との間に介在層30を形成した点を除いて、基本的な構成は実施の形態1と共通する。つまり、この実施の形態の電池3は、正極支持体11上に正極活物質層12、介在層30、NSE層23、負極活物質層22、負極支持体21が積層された構成である。
10 正極積層体 11 正極支持体 12 正極活物質層 13 PSE層
20 負極積層体 21 負極支持体 22 負極活物質層 23 NSE層
30 介在層 31 介在層溶液
Claims (8)
- 正極積層体と負極積層体とが積層されてなるリチウム電池であって、
正極積層体は、正極活物質層と、この正極活物質層の上に形成される正極無機固体電解質層とを有し、
負極積層体は、負極活物質層と、この負極活物質層の上に形成される負極無機固体電解質層とを有し、
正極積層体と負極積層体とを積層するときに互いに対向して配置される正極無機固体電解質層と負極無機固体電解質層との間に、リチウム含有塩を溶解したイオン液体からなる介在層を具えることを特徴とするリチウム電池。 - 正極無機固体電解質層は、正極活物質層上に形成されたときに、正極活物質層と正極無機固体電解質層との間の界面抵抗値を10000Ω・cm2以下とし、
負極無機固体電解質層は、負極活物質層上に形成されたときに、負極活物質層と負極無機固体電解質層との間の界面抵抗値を10000Ω・cm2以下としたことを特徴とする請求項1に記載のリチウム電池。 - 正極積層体と負極積層体とが積層されてなるリチウム電池であって、
正極積層体は、正極活物質層と、この正極活物質層の上に形成される正極無機固体電解質層とを有し、
負極積層体は、負極活物質層を有し、
正極積層体と負極積層体とを積層するときに互いに対向して配置される正極無機固体電解質層と負極活物質層との間に、リチウム含有塩を溶解したイオン液体からなる介在層を具えることを特徴とするリチウム電池。 - 正極積層体と負極積層体とが積層されてなるリチウム電池であって、
正極積層体は、正極活物質層を有し、
負極積層体は、負極活物質層と、この負極活物質層の上に形成される負極無機固体電解質層とを有し、
正極積層体と負極積層体とを積層するときに互いに対向して配置される正極活物質層と負極無機固体電解質層との間に、リチウム含有塩を溶解したイオン液体からなる介在層を具えることを特徴とするリチウム電池。 - 正極積層体および負極積層体の少なくとも一方が、金属製の支持体を備え、この支持体が集電機能を有することを特徴とする請求項1〜4の何れか一項に記載のリチウム電池。
- 正極積層体および負極積層体の少なくとも一方が、金属膜付きの絶縁体の支持体を備え、当該金属膜が集電機能を有することを特徴とする請求項1〜4の何れか一項に記載のリチウム電池。
- 無機固体電解質層が、リチウム(Li)、硫黄(S)およびリン(P)を含有することを特徴とする請求項1〜4の何れか一項に記載のリチウム電池。
- 負極活物質層がリチウム金属あるいはリチウム合金で形成されていることを特徴とする請求項1〜4の何れか一項に記載のリチウム電池。
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