ところで、現像装置の筐体に内装される攪拌ローラは、ローラ軸回りに円運動で回転するため、筐体内の現像剤は、攪拌ローラの円軌跡に沿うようにトンネルが掘られた状態で堆積し、これによる棚吊り現象で現像剤を確実に搬送し得なくなることがあるという問題点が存在する。
また、筐体内の隅部は、攪拌ローラの回転軌跡の外側に位置した死角になっているため、死角に貯留された現像剤には攪拌ローラの攪拌力が及ばず、これによって筐体の隅部に現像剤が堆積したままになるという問題点も存在する。そして、現像剤は、大径で比重の大きいものが筐体の隅部に徐々に溜まる傾向があるため、結果として像担持体へ供給される現像剤の粒径分布や帯電性能が設計値とは異なったものになり、これによって安定した状態で適正なトナー画像が形成され得なくなる。
かかる不都合を解消するべく、特許文献1の現像装置においては、筐体の底部が攪拌ローラの回転軌跡に沿うように断面視で円弧状に形成され、隅部が存在しないようになされている。しかしながら、筐体の底部が円弧状に形成されると、その分現像装置の容量が少なくなるという新たな問題点が提起される。これを解消するべく現像装置を大きくすると、現像装置のコンパクト化に逆行することになる。
本発明は、従来のかかる問題点を解消するためになされたものであり、筐体の容量の減少を回避した上で現像剤の棚吊り現象や筐体隅部への堆積を防止することが可能であり、これによって筐体内の現像剤を余すことなく消費することができるとともに、安定した状態で適正なトナー画像を像担持体上に形成させることができる現像装置を提供することを目的としている。
請求項1記載の発明は、所定の筐体内に充填された現像剤を像担持体に供給する現像装置であって、前記筐体内には、現像剤を前記像担持体に供給するべく回転しながら攪拌しつつ搬送する攪拌搬送部材が設けられ、前記攪拌搬送部材は、前記現像剤の搬送方向と直交する方向から見て略ルーローの多角形の形状とされている部分を少なくとも一部に有することを特徴とするものである。
かかる構成の現像装置によれば、攪拌搬送部材を、ルーローの多角形における頂点を中心とした円弧の曲率半径を一辺とする、例えば正四角形からなる所定の枠(以下保持枠という)内で回転させることにより、ルーローの多角形の重心位置が反対方向に向けて胴部の角速度の数倍の角速度(例えば、ルーローの多角形が三角形の場合は3倍、五角形の場合は5倍、7角形の場合は7倍等)で周回する。
従って、筐体内に保持枠を形成させ、攪拌搬送部材を四角の保持枠内で回転させることにより、保持枠内の現像剤は、攪拌搬送部材の重心位置の近傍にあるものとその周りにあるものとの間で互いに反対方向に向かう力が作用し、これによって現像剤が有効に攪拌されるため、従来のように攪拌搬送部材が位置の固定された軸心回りに回転するものに比べて現像装置の筐体内の現像剤はより確実に攪拌される。
また、攪拌搬送部材を筐体の保持枠内で回転させると、攪拌搬送部材におけるルーローの多角形の頂点部分を、保持枠の隅部に極めて接近した状態とすることができるため、従来の攪拌搬送部材が固定された軸心回りに回転するものと比較して筐体内の隅部に堆積する現像剤の量が少なくなる。
また、攪拌搬送部材を四角の保持枠内で回転させると、攪拌搬送部材に形成された角部の数に応じた所定の角度の回転毎に攪拌搬送部材の近傍に位置した現像剤に加わる力の方向が急激に変化するため(すなわち変位点が存在するため)、これによっても変位点が存在しない従来の攪拌搬送部材に比べて現像装置の筐体内の現像剤は十分に攪拌される。
因みに、請求項1において、「現像剤の搬送方向と直交する方向から見て略ルーローの多角形の形状とされている」と規定したのは、攪拌搬送部材の外面の一部が、例えば現像剤を逃がすことで攪拌能力を高めるべく凹没されているような場合、長手方向に延びる中心線と直交する方向の攪拌搬送部材の断面形状の輪郭が正確にルーローの多角形とならずに凹没された部分が存在した状態になる場合があるからである。このような輪郭の一部が凹没したようなものも請求項1の発明の技術的範囲に含めるべく「略」と規定している。
すなわち、言葉を代えれば、攪拌搬送部材の中心線の方向から当該攪拌搬送部材を投影することにより得られた図形の輪郭線がルーローの多角形の形状になっておれば、請求項1の発明の技術的範囲に含まれるということができる。
請求項2記載の発明は、請求項1記載の発明において、前記筐体は、前記攪拌部材の回転に応じて前記略ルーローの多角形の各角部が摺接または接触に近い状態まで近接する壁面を備えた攪拌搬送室を備えることを特徴とするものである。
かかる構成によれば、攪拌搬送手段は、ルーローの多角形の各頂点が攪拌搬送室の壁面に当接または接触に近い状態まで近接した状態で回転するため、攪拌搬送室内に充填された現像剤は、全体的に攪拌される。
請求項3記載の発明は、請求項2記載の発明において、前記攪拌搬送室は、互いに対向した端壁を有し、前記攪拌搬送部材は、前記一対の端壁間に架設された回転軸と、前記回転軸に同心で一体回転可能に固定された複数枚の攪拌フィンとを有し、前記攪拌フィンが前記略ルーローの多角形の形状とされている部分であることを特徴とするものである。
かかる構成によれば、攪拌搬送部材の回転軸が攪拌搬送室の一対の端壁間に架設されることにより攪拌搬送部材が攪拌搬送室に装着される。そして、攪拌搬送部材が攪拌搬送室に装着された状態で回転軸が駆動回転されることにより、ルーローの多角形の形状を呈した攪拌フィンは、その頂点が攪拌搬送室の内壁面に摺接または接触に近い状態まで近接しながら回転軸回りに一体回転し、これによって攪拌搬送室内の現像剤が攪拌されつつ像担持体へ供給される。
請求項4記載の発明は、請求項3記載の発明において、前記攪拌搬送部材は、一対が互いに平行に配設され、前記筐体には、各攪拌搬送部材が装着される一対の前記攪拌搬送室間に前記各攪拌フィンの角部が摺接または接触に近い状態まで近接する仕切り板が設けられ、前記仕切り板の両端部には、一対の攪拌搬送室間で現像剤を通過させる通過開口が設けられ、前記筐体の前記像担持体と対向した面には、現像剤を像担持体に供給するための供給開口が設けられていることを特徴とするものである。
かかる構成によれば、仕切り板を介して互いに平行に配設された一対の搬送攪拌室にそれぞれ設けられている攪拌搬送部材をそれぞれ回転軸回りに駆動回転させることにより、現像剤は、一方の攪拌搬送室と他方の攪拌搬送室との間を仕切り板の両端部に形成された通過開口を通って循環搬送され、その一部が筐体の前記像担持体と対向した面に設けられた供給開口を介して像担持体へ供給される。
請求項5記載の発明は、請求項2乃至4のいずれかに記載の発明において、前記互いに対向した端壁の一方側に前記攪拌搬送部材を回転させるための回転機構が設けられていることを特徴とするものである。
かかる構成によれば、攪拌搬送室の互いに対向する端壁の一方側に設けられた回転機構を動作させることにより、攪拌搬送部材は、ルーローの多角形の頂点が攪拌搬送室の内壁面に当接または接触に近い状態まで近接しつつ回転する。
請求項6記載の発明は、請求項1乃至5のいずれかに記載の現像装置において、前記多角形は、三角形であることを特徴とするものである。
かかる構成によれば、現像装置は、ルーローの多角形の形状が適用されることによる優れた攪拌作用を確保した上で現像装置の攪拌搬送部材の断面形状が単純な三角形状になり、現像装置の製造コストの低減化に貢献する。
また、ルーローの多角形がルーローの三角形であると、それより多角のルーローの多角形に比べて重心位置の移動量が最大になるため、現像装置の回転に応じた当該現像装置内での現像剤の攪拌効果が向上する。
請求項1記載の発明によれば、現像装置の筐体内に設けられた、現像剤を攪拌して感光体ドラムへ搬送するための攪拌搬送部材を、現像剤の搬送方向と直交する方向から見て略ルーローの多角形の形状とされている部分を少なくとも一部に有するようにするようにすることで、筐体内の現像剤は、攪拌搬送部材により死角(デッドゾーン)がない状態で、かつ、従来よりも効果的に攪拌されるため、筐体の容量の減少を回避した上で現像剤の棚吊り現象や筐体隅部への堆積を防止することができ、これによって筐体内の現像剤を余すことなく消費することができるとともに、安定した状態で適正なトナー画像を像担持体上に形成させることができる。
請求項2記載の発明によれば、攪拌搬送手段は、ルーローの多角形の各頂点が攪拌搬送室の壁面に当接または接触に近い状態まで近接した状態で回転し、これによって攪拌搬送室内に充填された現像剤を全体的に攪拌することができるため、攪拌搬送室内で現像剤が搬送されることなく蓄積されてしまうような不都合の発生を防止することができる。
請求項3記載の発明によれば、攪拌搬送部材が攪拌搬送室に装着された状態で回転軸が駆動回転されることにより、ルーローの多角形の形状を呈した攪拌フィンは、その頂点が攪拌搬送室の内壁面に摺接または接触に近い状態まで近接しながら回転軸回りに一体回転し、これによって攪拌搬送室内の現像剤を攪拌しつつ像担持体へ供給することができる。
請求項4記載の発明によれば、仕切り板を介して互いに平行に配設された一対の搬送攪拌室内の現像剤は、一方の攪拌搬送室と他方の攪拌搬送室との間を仕切り板の両端部に形成された通過開口を通って循環搬送されるため、現像剤は、攪拌搬送部材が駆動されている限り攪拌されることとなり、これによって現像剤を粒度分布が均一になるように十分に攪拌することができる。
請求項5記載の発明によれば、攪拌搬送室の互いに対向する端壁の一方側に設けられた回転機構を動作させることにより、攪拌搬送部材をルーローの多角形の頂点が攪拌搬送室の内壁面に当接または接触に近い状態まで近接させつつ回転させることができる。
請求項6記載の発明によれば、ルーローの多角形とあいてルーローの三角形が採用されているため、現像装置は、優れた攪拌作用を確保した上で製造コストの低減化に貢献するとともに、三角より多角のルーローの多角形に比べて重心位置の移動量が最大になり、現像装置内での現像剤の攪拌効果を向上させることができる。
図1は、本発明に係る現像装置20が適用されたプリンタ10の一実施形態を示す側面断面視の説明図である。なお、図1においてY−Y方向を前後方向といい、特に−Y方向を前方、+Y方向を後方という。
図1に示すように、プリンタ(画像形成装置)10は、印刷処理に供する用紙Pを貯留する用紙貯留部12と、この用紙貯留部12に貯留された用紙束P1から繰り出された1枚ずつの用紙Pに対して画像形成処理を施す画像形成部13と、この画像形成部13で転写処理の施された用紙Pに対して定着処理を施す定着部14とがプリンタ本体11に内装されるとともに、定着部14で定着処理の施された用紙Pが排紙される排紙部15がプリンタ本体11の頂部に設けられることによって構成されている。
前記用紙貯留部12には、所定数(本実施形態では1つ)の用紙カセット121がプリンタ本体11に対して挿脱自在に設けられている。用紙カセット121の上流端(前方)には、用紙束P1から1枚ずつの用紙Pを繰り出させるピックアップローラ122が設けられている。このピックアップローラ122の駆動によって用紙カセット121から繰り出された用紙Pは、給紙搬送路123およびこの給紙搬送路123の下流端に設けられたレジストローラ対124を介して画像形成部13に給紙されるようになっている。
前記画像形成部13は、コンピュータ等から電送された画像情報に基づき用紙Pに転写処理を施すものであり、左右方向(図1の紙面と直交する方向)に延びるドラム心回りに回転可能に設けられた感光体ドラム(像担持体)131の周面に沿うように、当該感光体ドラム131の直上位置から時計方向に向けて帯電器132、露光装置133、トナーコンテナ19が着脱自在に装着される、本発明に係る現像装置20、転写ローラ134およびクリーニング装置135が配設されることによって構成されている。
前記感光体ドラム131は、周面に静電潜像およびこの静電潜像に沿ったトナー像を形成させるためのものであり、周面に平準で、かつ、強靱なアモルファスシリコン層が積層され、これによってこれらの像を形成させるのに適したものになっている。
前記帯電器132は、ドラム心回り時計方向に回転している感光体ドラム131の周面に一様な電荷を形成させるものであり、図1に示す例では、コロナ放電によって感光体ドラム131の周面に電荷を付与する方式が採用されている。なお、感光体ドラム131の周面に電荷を付与する部材として帯電器132に代えて周面が感光体ドラム131の周面と当接または接触に近い状態まで近接しながら従動回転しつつ電荷を付与する帯電ローラを採用してもよい。
前記露光装置133は、コンピュータ等の外部の機器から電送されてきた画像データに基づきオンオフされるレーザー光を回転している感光体ドラム131の周面に照射し、これによる感光体ドラム131周面のレーザー光が照射された部分の電荷の消去によって当該感光体ドラム131の周面に静電潜像を形成させるものである。
前記現像装置20は、感光体ドラム131の周面にトナーを供給することによって周面の静電潜像が形成された部分にトナーを付着させ、これによって感光体ドラム131の周面にトナー像を形成させるものである。かかる現像装置20は、前記感光体ドラム131の直前側に隣設された筐体21内に後述する各種の部材が装着されることによって構成されている。
前記トナーコンテナ19は、筐体21の上部の図1における前方位置に着脱可能に装着され、筐体21に現像剤(本実施形態ではトナー)を補給するようになっている。
因みに現像剤は、トナーのみからなる、いわゆる1成分系のものと、トナーとキャリヤとからなる、いわゆる2成分系のものとがある。トナーは、着色剤、電荷制御剤およびワックス等の添加剤をバインダー樹脂中に分散させた体積平均粒径が6〜12μmの微粉体である。これに対してキャリヤは、磁鉄鉱(Fe3O4)等の質量平均粒径が30〜200μmの磁性粒子であり、トナーを帯電させるために使用される。現像剤が1成分系のものである場合、トナーの中に微細な磁性粒子が含まれている。
そして、トナーは、トナーコンテナ19から現像装置20に適宜補給される消耗品であるのに対し、キャリヤは、予め所定量が現像装置20内に装填されており、消耗することなく循環使用されるのが一般的である。そして、本実施形態においては、現像剤としてトナーのみからなる1成分系のものが採用されているが、本発明は、現像剤がトナーのみからなる1成分系のものであることに限定されるものではなく、トナーとキャリヤとからなる2成分系のものであってもよい。
前記筐体21の天板25の図1における前方には、トナーコンテナ19内のトナーを筐体21内へ受け入れるための受入開口21aが設けられているとともに、筐体21の前面側には、当該筐体21の左右方向(図1の紙面に直交する方向)に開口されたトナーを感光体ドラム131へ供給するためのトナー供給開口21bが設けられている。
そして、前記トナーコンテナ19から受入開口21aを介して導入されたトナーは、後述の第1および第2攪拌搬送部材301,302の駆動回転によって攪拌されつつ筐体21内を周回し、その一部が駆動回転している現像ローラ40の周面を介して感光体ドラム131の周面へ供給されるようになっている。
トナー供給開口21bの上部には、天板25から垂下して下端縁部が現像ローラ40の周面と対向した層厚規制ブレード251が設けられ、現像ローラ40の軸心回りの反時計方向へ向かう回動で当該現像ローラ40の周面によって感光体ドラム131へ向けて供給されるトナーは、層厚規制ブレード251と現像ローラ40の周面との間の隙間を通ることで所定の層厚になるようになされている。そして、前記第1および第2攪拌搬送部材301,302並びに現像ローラ40は、いずれも図略の駆動モータの駆動力が所定のギヤ機構を介して伝達され、これによって同期回転する。
前記転写ローラ134は、感光体ドラム131の直下位置に送り込まれた用紙Pに対して当該感光体ドラム131の周面に形成されているプラスに帯電したトナー像を用紙Pに転写させるものであり、トナー像の電荷と逆極性であるマイナスの電荷を用紙Pに付与するようになっている。
従って、感光体ドラム131の直下位置に到達した用紙Pは、転写ローラ134と感光体ドラム131とによって押圧挟持されつつ、プラスに帯電した感光体ドラム131周面のトナー像がマイナスに帯電した用紙Pの表面に向けて引き剥がされ、これによって用紙Pに対し転写処理が施される。
前記クリーニング装置135は、転写処理後の感光体ドラム131の周面に残留しているトナーを取り除いて清浄化するためのものである。このクリーニング装置135によって清浄化された感光体ドラム131の周面は、次の画像形成処理のために再び帯電器132へ向かうことになる。
前記定着部14は、画像形成部13によって転写処理の施された用紙Pのトナー像に加熱による定着処理を施すものであり、用紙Pに熱を加える定着ローラ141と、この定着ローラ141の下部に対向配置された加圧ローラ142とを備えて構成されている。そして、転写処理後の用紙Pは、定着ローラ141と加圧ローラ142との間に形成されたニップ部Nへ向けて送り込まれ、当該ニップ部Nを通過することによって、定着ローラ141からの熱を得て定着処理が施される。定着処理の施された用紙Pは、排紙搬送路143を通って排紙部15へ排出される。
前記排紙部15は、プリンタ本体11の頂部が凹没されることによって形成されている。この凹没された凹部の底板によって排紙された用紙Pを受ける排紙トレイ151が形成されている。
図2〜図4は、本発明に係る現像装置20の一実施形態を示す斜視図であり、図2は、内部構造の分解斜視図、図3は内部構造の組み立て斜視図、図4は、外観視の組み立て斜視図である。また、図5は、図4のV−V線断面図であり、図6は、図4のVI−VI線断面図である。なお、図2〜図6においてX−X方向を左右方向、Y−Y方向を前後方向といい、特に−X方向を左方、+X方向を右方、−Y方向を前方、+Y方向を後方という。
これらの図に示すように、現像装置20は、箱形の筐体21内に前後方向一対の攪拌搬送部材30(前方の第1攪拌搬送部材301および後方の第2攪拌搬送部材302)と、これら第1および第2攪拌搬送部材301,302によって攪拌されつつ筐体21内で循環搬送されているトナーの一部を感光体ドラム131(図1)へ向けて供給する現像ローラ40とが内装されるとともに、前記攪拌搬送部材30を回転させるための回転機構50が筐体21の外面側に設けられることによって構成されている。
前記筐体21は、左右寸法が前記感光体ドラム131の長さ寸法と略等しい左右方向に長尺の底板22と、この底板22の左右の端縁から立設された左右方向一対の側板23と、前記底板22の前縁部から立設された前方板24と、前記一対の側板23間に架設された天板25(図4〜図6)とを有している。前記前方板24の上縁部からは、前記トナーコンテナ19の底板の楕円形状に合うように側面視で楕円状に形成されたコンテナ支持板241が前方に向かって延設され、トナーコンテナ19は、このコンテナ支持板241に支持された状態で現像装置20に着脱自在に装着される。
前記底板22は、後方部分で現像ローラ40の周面に対応するように側面視で下に凸の円弧状に形成された円弧状底板221と、この円弧状底板221の前縁部から前方に向かって延設された平板状底板222とからなっている。そして、平板状底板222の上方には、一対の側板23と前方板24と天板25とにより囲繞された、トナーを攪拌して搬送する攪拌搬送室Vが形成されている。
前記平板状底板222は、前後幅寸法が攪拌搬送部材30の短尺側の幅寸法(前後幅寸法)の2倍よりも若干長めに設定され、これによって左右方向に延びた一対の攪拌搬送部材30を前後方向で並設し得るようになっている。かかる平板状底板222には、前後方向の中央部に仕切り板26が立設され、これによって前記攪拌搬送室Vは、仕切り板26より前方の第1攪拌搬送室V1と、仕切り板26より後方の第2攪拌搬送室V2とに区画されている。
そして、前記仕切り板26の左右の縁部と側板23との間には、トナーを通過させる通過開口261がそれぞれ設けられ、攪拌搬送部材30によって攪拌搬送されるトナーは、これらの通過開口261を通って第1および第2攪拌搬送室V1,V2を循環し得るようになっている。また、天板25には、図4に示すように、現像ローラ40の直上位置からトナーの層厚を規制する層厚規制ブレード251が垂下され、この層厚規制ブレード251の下端縁部と現像ローラ40の周面との間にトナー供給開口21bが形成されている。かかる層厚規制ブレード251によりトナー供給開口21bの上下の隙間寸法が設定され、これによって現像ローラ40から感光体ドラム131へ供給されるトナーの層厚が予め設定された値になる。
前記攪拌搬送部材30は、前記第1および第2攪拌搬送室V1,V2においてそれぞれ一対の側板23間に架設される重心軸(回転軸)31と、重心位置がこの重心軸31に貫通されて固定される複数枚の攪拌フィン32とを備えている。
前記重心軸31は、長さ寸法が一対の側板23間の内寸法より若干長めに設定され、一対の側板23を貫通した状態で各側板23間に架設されている。そして、側板23を貫通した重心軸31の一方の端部(図2に示す例では右方の端部)に回転機構50が形成されている。重心軸31の各端部には、互いに反対方向に向けて同心で突設された小径先端部311が設けられている。
前記回転機構50を支持するために、右側の側板23には第1および第2攪拌搬送室V1,V2にそれぞれ対応した一対の支持枠体27が設けられている。各支持枠体27は、平面視でコ字状を呈し、外方に向かって突設された前後方向一対の突設板271と、これら各突設板271の先端縁部間に架設されたガイド板272とからなっている。ガイド板272の内面側には後述の環状ガイド溝53が設けられている。そして、側板23から後述の亜円孔510を通って支持枠体27内へ突出された重心軸31の小径先端部311が環状ガイド溝53に嵌め込まれる。
なお、亜円孔510は、左側の側板23にも設けられている。また、左側の側板23には、その外面側に亜円孔510を覆った状態でガイド板272のみが固定されている。そして、亜円孔510を貫通した重心軸31の左側の小径先端部311が左側のガイド板272の環状ガイド溝53に嵌め込まれている。
前記攪拌フィン32は、本実施形態では、ルーローの三角形の形状に設定されている。かかるルーローの三角形の形状を呈する複数枚の攪拌フィン32が所定の一縁部同士を接合した状態で連設されることにより、図2に示すような螺旋状のスパイラルフィーダ320が形成されている。そして、このようなスパイラルフィーダ320を備えた一対の攪拌搬送部材30の一方が第1攪拌搬送室V1に装着されて第1攪拌搬送部材301とされ、他方が第2攪拌搬送室V2に装着されて第2攪拌搬送部材302とされている。
因みに、本実施形態においては、複数枚の攪拌フィン32が連設されることによって形成されたスパイラルフィーダ320は、左ネジ状態で螺旋状になっている。
以下、ルーローの三角形の特質について図6〜図8を基に説明する。図7および図8は、攪拌フィン32の形状として採用されているルーローの三角形Tを説明するための説明図であり、図7(A)〜図7(F)は、ルーローの三角形Tの基準頂点Qが基準位置Wから反時計方向に30°ずつ150°まで回転した状態をそれぞれ示し、図8(A)〜図8(F)は、ルーローの三角形Tの基準頂点Qが基準位置から180°反時計方向に回転した状態を始点(図8(A))として反時計方向に30°ずつ330°まで回転した状態をそれぞれ示している。図8(G)は、ルーローの三角形Tが正四角形S内で回転したときの重心Gの周回軌跡によって形成された亜円形状を示している。
ルーローの三角形Tは、図7(A)に一点鎖線で示す正三角形の一辺の長さを半径として各頂点を中心に各辺に対応した円弧を形成することによって形成される。かかるルーローの三角形Tは、一辺の長さが当該正三角形の一辺の長さに設定された正四角形S内で、図7および図8の(A)〜(F)に示すように、頂点および円弧が正四角形の各辺に摺接または接触に近い状態まで近接しながら回転することができる。以下、かかる回転をルーローの回転という。
そして、ルーローの三角形Tの1つの頂点を基準頂点Qとし、最初に、当該基準頂点Qを、図7(A)に示すように、正四角形Sの上部の横線の中点位置(基準位置W)に設定し、引き続き基準頂点Qを通る垂線Lに対してルーローの三角形Tを反時計方向に30°ずつ回転していくと、ルーローの三角形Tの重心Gは、図7(B)〜図8(F)に示すように、正四角形Sの中心O回りに時計方向に向けて(すなわち、ルーローの三角形Tの回転方向と反対方向に向けて)90°ずつ回転する。
従って、ルーローの三角形Tが、図7(A)に示す状態から正四角形S内を反時計方向に向けて1回転すると(図7(A)〜図8(F)の状態を経て図7(A)の状態に戻ると)、ルーローの三角形Tの重心Gは、正四角形Sの中心O回りに時計方向に向けて3周回することになる。
図7(B)〜図7(F)および図8(A)〜図8(F)においては、ルーローの三角形Tの基準頂点Qの基準位置Wからの回転角度を度数表示するとともに、ルーローの三角形Tの重心Gの周回数をカギ括弧内に示している。また、重心Gの概略軌跡を渦巻きで表示し、その周回数を理解し易くしている。
因みに、ルーローの三角形Tが正四角形S内で回転したときの当該ルーローの三角形Tの重心Gの軌跡は、図8(G)に示すように、四隅部が前記正四角形Sの中心Oを中心とする内接円よりも曲率半径が小さい、所定の楕円形状の一部を当該四隅部に備えた形状(以下、亜円形状Kという)になっている。
そして、本発明においては、正四角形S内で上記のような挙動を示すルーローの三角形Tが攪拌フィン32の形状に適用されているとともに、正四角形Sが第1および第2攪拌搬送部材301,302の主要される第1および第2攪拌搬送室V1,V2に適用されている。
従って、攪拌フィン32は、その重心を前記亜円形状Kに沿うように周回させることにより、第1攪拌搬送部材301においては、その攪拌フィン32の周縁が必ず平板状底板222、前方板24および仕切り板26に摺接または接触に近い状態まで近接した状態になるとともに、第2攪拌搬送部材302においては、その攪拌フィン32の周縁が必ず平板状底板222および仕切り板26に摺接または接触に近い状態まで近接することになる。従って、第1および第2攪拌搬送室V1,V2内に位置したトナーは、必ず攪拌フィン32の頂点または円弧状の縁部によってほとんど死角がない状態で第1および第2攪拌搬送室V1,V2の内壁面から掻き取られる状態になるため、第1および第2攪拌搬送室V1,V2内にトナーが蓄積されるような不都合の発生が有効に回避される。
以下、回転機構50について図9を基に、必要に応じて他の図面も参照しながら説明する。図9は、回転機構50の一実施形態を示す斜視図である。なお、図9におけるXおよびYによる方向表示は、図2の場合と同様(Xは左右方向(−X:左方、+X:右方)、Yは前後方向(−Y:前方、+Y:後方))である。
図9に示すように、回転機構50は、筐体21の一対の側板23に左右方向で対向してそれぞれ設けられた亜円孔510(図9では右側のもののみ示している。左側の亜円孔510は図2参照)と、この亜円孔510の内周面に形成された内歯ギヤ51と、各内歯ギヤ51に噛合するように攪拌搬送部材30の重心軸31の両端部にそれぞれ同心で一体回転可能に外嵌された一対の周回ギヤ52(図9では右側のもののみ示している。左側の周回ギヤ52は図2参照)と、前記一対のガイド板272の対向面にそれぞれ凹設され、かつ、重心軸31の各端部が嵌め込まれてガイドされる左右方向一対の環状ガイド溝53と、プリンタ本体11側に設けられた駆動源60からの駆動力が伝達される駆動力被伝達ギヤ54とを備えている。
前記各内歯ギヤ51は、攪拌フィン32が攪拌搬送室Vの内壁面に摺接または接触に近い状態まで近接しながら図7および図8に示すルーローの回転を行った状態で攪拌フィン32の重心軸31の図8(G)に示す亜円形状Kに相当する軌跡より大きめの軌跡(具体的には重心軸31の軸心の軌跡よりも径方向に周回ギヤ52の半径分だけ大きい軌跡)に沿うように形成されている。
前記環状ガイド溝53は、ルーローの三角形の形状を呈した攪拌フィン32が攪拌搬送室V内でその内壁面に摺接または接触に近い状態まで近接しながらルーローの回転を行った状態で、重心軸31の軸心の前記亜円形状Kを呈する周回軌跡に沿うように凹設されている(図2参照)。
従って、駆動源60からの駆動力が前記駆動力被伝達ギヤ54を介して重心軸31に伝達されることにより当該重心軸31が軸心回りに回転すると、この回転は、内歯ギヤ51に噛合している周回ギヤ52に伝達される。これにより周回ギヤ52が重心軸31回りに回転すると、当該周回ギヤ52は、内歯ギヤ51に噛合していることにより内歯ギヤ51に沿って移動することになるが、重心軸31の小径先端部311が環状ガイド溝53に嵌め込まれて当該環状ガイド溝53に案内される。
これにより周回ギヤ52は、内歯ギヤ51から外れることなく内歯ギヤ51に対する噛合を継続しながら亜円孔510に沿って周回するため、結果として重心軸31を介して周回ギヤ52と一体の攪拌フィン32は、攪拌搬送室Vの内壁面に沿ったルーローの回転を行うことになる。
一方、前記駆動源60は、プリンタ本体11の図略のフレームに縦置きで装着された駆動モータ61と、この駆動モータ61の駆動軸611に同心で一体回転可能に外嵌されたウォーム62とを備えている。前記駆動モータ61は、その下端部から下方に向かって突設されたブラケット612を有している一方、プリンタ本体11のフレームには、前記駆動力被伝達ギヤ54の直下位置で左右方向に延びる支持軸63を有している。
前記駆動モータ61は、ブラケット612が回動可能に支持軸63に外嵌されることにより、支持軸63回りに回動可能に軸支されている。そして、前記支持軸63は、駆動モータ61が支持軸63から立設された状態でウォーム62が駆動力被伝達ギヤ54と噛合するように設置位置が設定されている。前記駆動軸611は、駆動モータ61が支持軸63から立設された状態で前記支持枠体27から若干上方へ突出するように長さ寸法が設定されている。
また、前記支持枠体27の一対の突設板271の上縁部間には、駆動軸611が左右方向に向けて横振れするのを防止するとともに、前後方向への移動を案内する横振れ防止板64が架設されている。この横振れ防止板64には、周方向の中央部に前後方向に延びた案内長孔641が穿設されている。そして、ウォーム62は、駆動軸611の上端に同心で突設されたウォーム62より小径の嵌挿軸621を有し、この嵌挿軸621が前記横振れ防止板64の案内長孔641に貫通されることにより、左右方向の横振れば防止された状態で前後方向に向けて支持軸63回りに正逆回動し得るようになっている。
また、前記横振れ防止板64の前端部からは係止突片642が突設され、この係止突片642と前記駆動軸611の嵌挿軸621との間には、伸長状態の付勢部材としてのコイルスプリング65が張設されている。これにより前記ウォーム62は、この駆動軸611を介して常に駆動力被伝達ギヤ54へ向けて付勢されているため、駆動力被伝達ギヤ54が重心軸31の小径先端部311を介し環状ガイド溝53に沿って周回しても、ウォーム62の駆動力被伝達ギヤ54に対する噛合状態が確保される。
そして、攪拌フィン32が駆動モータ61の駆動によりルーローの回転を行う第1および第2攪拌搬送室V1,V2内に充填されているトナーが亜円孔510から外部に漏洩するのを防止するために、本実施形態においては、側板23と重心軸31との間に図2および図6に示すような漏洩防止カバー70が介設されている。
この漏洩防止カバー70は、所定の軟質の合成樹脂やゴム等の可撓性材料からなる漏斗状に形成された蛇腹部材71と、この蛇腹部材71の先細りの先端に設けられた装着環72と、蛇腹部材71の装着環72と反対側に設けられたフランジ部73とを備えている。
前記蛇腹部材71は、内径寸法が摺接状態で重心軸31に外嵌し得るように設定されている。また、前記フランジ部73は、一辺の長さが前記亜円孔510を塞ぎ得るように設定された正方形状に設定されている。
前記装着環72は、周回ギヤ52や駆動力被伝達ギヤ54が重心軸31に外嵌される前に重心軸31に外嵌されて周回ギヤ52と端の攪拌フィン32との間に装着される。また、前記フランジ部73は、装着環72が重心軸31に外嵌された状態で蛇腹部材71が亜円孔510を塞ぐように側板23にねじ止め等によって固定される。
かかる漏洩防止カバー70によれば、亜円孔510からのトナーの漏洩が蛇腹部材71により防止されるとともに、重心軸31が環状ガイド溝53に案内されつつ周回しても、蛇腹部材71の弾性変形でその周回が吸収される。
以上詳述したように、本発明に係る現像装置20は、筐体21内に充填されたトナーを感光体ドラム131に供給するものであり、筐体21内には、トナーを感光体ドラム131に供給するべく回転しながら攪拌しつつ搬送する攪拌搬送部材30が設けられ、この攪拌搬送部材30は、トナーの搬送方向と直交する方向から見て略ルーローの多角形の形状とされている部分(本実施形態では攪拌フィン32)を少なくとも一部に有しているため、攪拌搬送部材30を、ルーローの多角形(本実施形態ではルーローの三角形)における頂点を中心とした円弧の曲率半径を一辺とする、例えば正四角形からなる所定の枠(本実施形態では第1および第2攪拌搬送室V1,V2の内壁面)内で回転させることにより、ルーローの多角形の重心位置が反対方向に向けて胴部の角速度の数倍の角速度(例えば、ルーローの多角形が三角形の場合は3倍、五角形の場合は5倍、7角形の場合は7倍等)で周回する。
従って、第1および第2攪拌搬送室V1,V2内で攪拌フィン32を回転させることにより、第1および第2攪拌搬送室V1,V2内のトナーは、攪拌フィン32の重心位置の近傍にあるものとその周りにあるものとの間で互いに反対方向に向かう力が作用し、これによってトナーが効率的に攪拌されるため、従来の攪拌搬送部材が通常のスパイラルフィーダのように位置が固定された軸心回りに回転するものに比べて現像装置の筐体21内のトナーをより確実に攪拌することができる。
また、攪拌搬送部材30を筐体21の第1および第2攪拌搬送室V1,V2内で回転させると、攪拌搬送部材30におけるルーローの三角形形の頂点部分を、第1および第2攪拌搬送室V1,V2の隅部に極めて接近した状態とすることができるため、従来の攪拌搬送部材30が固定された軸心回りに回転するものと比較して筐体21内の隅部に堆積するトナーの量を少なくすることができる。
また、攪拌搬送部材30を四角の第1および第2攪拌搬送室V1,V2内で回転させると、攪拌フィン32に形成された角部の数に応じた所定の角度の回転毎に攪拌フィン32の近傍に位置したトナーに加わる力の方向が急激に変化するため(すなわち変位点が存在するため)、これによっても変位点が存在しない従来の攪拌フィン32に比べて現像装置の筐体21内のトナーを十分に攪拌することができる。
本発明は上記の実施形態に限定されるものではなく、以下の内容をも包含するものである。
(1)上記の実施形態においては、本発明に係る現像装置20が適用される画像形成装置としてプリンタ10を例に挙げて説明したが、画像形成装置がプリンタ10であることに限定されるものではなく、複写機やファクシミリ装置であってもよい。
(2)上記の実施形態においては、攪拌搬送室Vとして2室(第1および第2攪拌搬送室V1,V2)が採用されているが、1室であってもよいし3室以上であってもよい。
(3)上記の実施形態においては、攪拌搬送部材30として攪拌フィン32を備えたものが適用されているが、これに代えて端面視でルーローの多角形状を呈する筒状体を採用してもよい。この場合、筒状体の表面に螺旋状の凹部を形成させれば、当該筒状体を攪拌搬送室V内で回転させることにより、攪拌搬送室V内のトナーは、螺旋状の凹部に沿って搬送されるとともに、ルーローの多角形状の筒状体の角部が攪拌搬送室Vの壁面に摺接または接触に近い状態まで近接しつつ攪拌搬送室Vの隅部のトナーを掻き起こすため、攪拌搬送室V内にトナーが堆積するような不都合の発生が防止される。