以下、この発明の一例である無端ベルトを図面に基づいて説明する。図1に示されるように、無端ベルト1は、後述する変性ポリアミドイミド樹脂によって、環状に形成されて成る。無端ベルト1の厚さは、特に限定されないが、通常、例えば、0.03〜1mmであるのが好ましく、0.05〜0.2mmであるのがより好ましく、0.07〜0.14mm程度であるのが特に好ましい。無端ベルト1の厚さが0.03mm未満であると、無端ベルト1の機械的強度が低下することがあり、一方、1mmを超えると、無端ベルト1の可撓性が低下し、耐久性に劣ることがある。無端ベルト1の幅及び内周径は、無端ベルト1の用途等、すなわち、画像形成装置に配設される位置(構成部分)、張架される複数のローラ間隔等に応じて、所望の幅及び内周径となるように、任意に設定される。その一例を挙げると、例えば、無端ベルト1の幅は200〜350mmであり、内周径は200〜2,500mmである。
図1に示されるように、無端ベルト1は、単層構造とされる。無端ベルト1が単層構造に形成されると、画像形成装置に長期間にわたって装着されても、また、高寿命化、高精細化及び高速化された画像形成装置に装着されても、複層構造に形成された無端ベルトを構成する各層の機械的強度、ヤング率等の相違、及び、複層構造の損傷等に起因する機械的強度の低下を効果的に防止することができると共に、無端ベルト1を構成する層が剥離することなど起こり得ない。その結果、単層構造の無端ベルト1は、高品質の画像を長期間にわたって形成することができる。
無端ベルト1は、ISO耐折回数が6,500回以上である。このISO耐折回数が6,500回以上であると、耐揉性、すなわち、繰り返しの屈曲疲労に対する耐久性が改善されるから、画像形成装置に長期間にわたって装着されて無限走行しても、また、高寿命化、高精細化及び高速化された画像形成装置に装着されて無限走行しても、無端ベルト1にひび割れ、亀裂等の損傷が生じることを防止することができる。その結果、無端ベルト1は、高品質の画像を長期間にわたって形成することができる。高品質の画像をより一層長期間にわたって形成することができる点で、前記ISO耐折回数は、6,800回以上であるのが好ましく、7,500回以上であるのが特に好ましい。一方、前記ISO耐折回数の上限値は、特に限定されないが、現実的には、例えば、12,000回程度であればよいが、無端ベルト1の用途等に応じて、10,000回程度であってもよい。
前記ISO耐折回数は、次のようにして求めることができる。まず、MIT試験機(例えば、商品名「MIT−DA」、株式会社東洋精機製作所製)を準備し、幅15mm、長さ150mm及び厚さ100μmの寸法を有する無端ベルト1、又は、無端ベルト1から前記寸法に切り出した試験片を、前記MIT試験機に装備された折り曲げクランプ(先端半径0.38mmR)で挟持して固定する。次いで、折り曲げクランプに固定された前記無端ベルト1又は試験片の自由端(幅15mm×長さ約100mm)を前記MIT試験機の折り曲げクランプより50mmの間隔を離して具備されたバネ荷重クランプで挟持する。この無端ベルト1又は試験片を荷重4.9Nで引っ張りつつ、折り曲げ角度が90度になるように折り曲げクランプを回動させて、無端ベルト1又は試験片を繰り返し折り曲げる。そして、前記無端ベルト1又は試験片が破断するまでの往復折り曲げ回数を耐折回数とする。この試験を複数回、例えば、3回行い、その耐折回数の常用対数の算術平均値を求め、求めた算術平均値の真数を無端ベルト1のISO耐折回数とする。なお、上記条件以外は、基本的には、JIS P8115に規定された測定条件に従う。
無端ベルト1のISO耐折回数は、変性ポリアミドイミド樹脂の種類、後述する二次溶媒除去工程の条件等により、調整することができる。
無端ベルト1は、吸水率が1.8%以下であるのが好ましい。吸水率が1.8%以下であると、無端ベルト1の寸法安定性が高く、画像形成装置に長期間にわたって装着されても、又は/及び、高速化された画像形成装置に装着されても、支持ローラに張架された無端ベルト1が空転することもなく、記録体、現像剤等の被搬送物を所望のように搬送することができる。また、吸水率が1.8%以下であると、中間転写ベルトとして無端ベルト1を使用し、かつ、後述する像担持体としてアモルファスシリコン感光ドラム等を使用しても、無端ベルト1の吸湿に起因する像流れ現象の発生を防止して、高品質の画像を形成することができる。ここで、像流れ現象とは、アモルファスシリコン感光ドラムから生じるa−SiOと水とが結合することによって、アモルファスシリコン感光ドラム表面の電気抵抗値が低下し、電位が横に流れる現象をいい、a−SiOは、アモルファスシリコン感光ドラムが帯電時に生じるオゾンや窒素酸化物等の影響でアモルファスシリコン感光ドラム表面が酸化されると生成し、親水性で、雰囲気中や中間転写ベルトの含有水と結合しやすいという特性を有している。これらの特性により一層優れる点で、吸水率は、1.65%以下であるのがより好ましく、1.6%以下であるのが特に好ましい。吸水率の下限値は、理想的には0%であるが、現実的には、例えば、0.5%程度に設定することができる。吸水率の下限値は、前記0.5%程度に限定されず、無端ベルト1の特性、吸水率調整時の作業性等を考慮して、例えば、0.3%程度であってもよい。
前記吸水率は、無端ベルト1を10mm×150mm×100μm(厚さ)の寸法に切り出した試験片を(23℃50%R.H.で24時間乾燥した後)、25℃に調節された水中に24時間浸漬して、浸漬前後の質量変化量を、浸漬前の質量で除して、求めることができる。この測定を複数回、例えば、3回行い、その算術平均値を無端ベルト1の吸水率とする。
無端ベルト1の吸水率は、変性ポリアミドイミド樹脂の種類、後述する二次溶媒除去工程の条件により、調整することができる。
無端ベルト1は、ヤング率が、1,500〜4,000MPaであるのが好ましく、2,000〜4,000MPaであるのがより好ましく、2,000〜3,000MPaであるのが特に好ましい。無端ベルト1のヤング率が前記範囲にあると、無端ベルト1が可撓性に富み、所定の張力がかけられた状態で複数のローラ及び駆動ローラ等に張架されても破損又は損傷しにくく、また駆動時の応力に対する無端ベルト1の変形量が小さくなり、高品質の画質を安定して形成することができる。また、無端ベルト1のヤング率が前記範囲にあると、現像剤として、トナー粒子とキャリア粒子とを含有する磁性二成分現像剤を使用しても、キャリア粒子の無端ベルト1への付着に起因するキャリア粒子引き現象が生じにくく、高品質の画像を形成することができる。ここで、キャリア粒子引き現象とは、鉄粉等のキャリア粒子が無端ベルト1の表面に付着した場合に、無端ベルト1と像担持体とのニップ間隔が局部的に拡大してしまう現象をいう。
前記ヤング率は、JIS K7113に規定された「プラスチックの引張試験方法」に記載された方法に準じて測定することができる。すなわち、無端ベルト1における、単位断面積にかかる力ΔSと単位長さでの伸びΔaを測定し、式E=ΔS/Δa により求めることができる。ここで、前記式中、ΔSは、負荷F、無端ベルト1の厚さt及び幅wより、式ΔS=F/(w×t)で表され、Δaは、無端ベルト1の基準長さL、負荷をかけたときの無端ベルト1の伸びΔLより、Δa=ΔL/Lで表される。無端ベルト1のヤング率は、引張り試験機、例えば、商品名「MODEL−1605N」(アイコーエンジニアリング株式会社製)を用いて、測定することもできる。前記算出又は前記測定を複数回、例えば、3回行い、その算術平均値を無端ベルト1のヤング率とする。
無端ベルト1のヤング率は、変性ポリアミドイミド樹脂の種類、後述する二次溶媒除去工程の条件により、調整することができる。
無端ベルト1は、引張伸度が10%以上であるのが好ましく、12%以上であるのがより好ましい。引張伸度の上限は、理想的には特に限定されないが、現実的には100%であるのがよく、好ましくは80%であり、特に好ましくは50%である。無端ベルト1の引張伸度が前記範囲にあると、無端ベルト1の端部が損傷しても、損傷部分をきっかけとして無端ベルト1が破断することを抑えることができる。
前記引張伸度は、JIS K7113に規定された「プラスチックの引張試験方法」に記載された方法に準拠して測定することができる。無端ベルト1の引張伸度は、測定を複数回、例えば、3回行い、その算術平均値とする。無端ベルト1の引張伸度は、変性ポリアミドイミド樹脂の種類、後述する二次溶媒除去工程の条件により、調整することができる。
無端ベルト1は、接触帯電量が−7×10−3〜7×10−3μC(0μCを除く)であるのが好ましく、−5×10−3〜5×10−3μC(0μCを除く)であるのがより好ましく、−3×10−3〜3×10−3μC(0μCを除く)であるのが特に好ましい。無端ベルト1の接触帯電量が前記範囲にある場合には、無端ベルト1を転写搬送ベルト又は搬送ベルトとして使用すると、記録体を所望のように長期間にわたって搬送することができ、また、無端ベルト1を中間転写ベルト、転写ベルト、現像ベルト等として使用すると、所望のように現像剤を、担持し、かつ記録体又は像担持体等に転写することができるから、長期間にわたって高品質の画像を形成することができる。
前記接触帯電量は、例えば、次のようにして測定することができる。まず、カスケード式接触帯電量測定装置(例えば、東芝ケミカル株式会社製、商品名「TS−100AT」)と、基準接触粉体として球形フェライト粉(パウダーテック株式会社製、商品名「MF−60」)と、無端ベルト1から75mm×100mmの寸法に切り出した試験片とを準備する。次いで、準備した試験片をカスケード式接触帯電量測定装置にセットする。そして、25℃、60%RHの雰囲気下で、基準接触粉体の流しかけ時間5秒で3回の測定を行い、その3回の算術平均値を求める。この平均値を無端ベルト1の接触帯電量とする。無端ベルト1の接触帯電量は、変性ポリアミドイミド樹脂の種類、導電性付与剤の種類又は配合量、並びに、後述する二次溶媒除去工程の条件等により、調整することができる。
無端ベルト1は、濡れ指数が34mN/m以下であるのが好ましく、32mN/m以下であるのがより好ましく、25mN/m以下であるのが特に好ましい。無端ベルト1の濡れ指数が前記範囲にあると、現像剤に含まれるシリカ粒子が無端ベルト1に固着することを防止し、高品質の画像を形成することができる。
前記濡れ指数は、和光純薬株式会社製の濡れ張力試験用混合液を使用して測定することができる。この測定を複数回、例えば、3回行い、その算術平均値を無端ベルト1の濡れ指数とする。無端ベルト1の濡れ指数は、変性ポリアミドイミド樹脂の種類、後述する二次溶媒除去工程の条件により、調整することができる。
無端ベルト1は、ループステフネスが150〜450mNであるのが好ましく、200〜400mNであるのがより好ましく、250〜350mNであるのが特に好ましい。無端ベルト1のループステフネスが前記範囲にあると、無端ベルト1の柔軟性と耐久性とがバランスよく発現される。
前記ループステフネスは、次のようにして測定することができる。まず、ループステフネス測定器(例えば、商品名「ループステフネステスタDA型」、株式会社東洋精機製作所製)を準備して、無端ベルト1と同様にして、幅20mm及び周長175mmの寸法を有するループ状試験片を作製する。次いで、このループ状試験片を80mm間隔で前記測定器のクランプに、チャックして、固定する。そして、クランプにチャックされた部分の間にあり、チャックされていないループ状試験片の領域で、(重力の影響を受けない方向から)、100mm/分の押し込み速度で押し込み量が20mmとなるまで、直径20mmの円盤状圧子を押圧する。このときに、チャックされていないループ状試験片が変形して、前記円盤状圧子にかかる最大押圧荷重を、円盤状圧子に接続された荷重測定器、例えば、デジタルフォースゲージで読み取り、荷重値を測定する。この測定を複数回、例えば、3回行い、その算術平均値を無端ベルト1のループステフネスとする。
無端ベルト1のループステフネスは、変性ポリアミドイミド樹脂の種類、後述するポリジメチルシロキサンの種類又は存在量、並びに、後述する二次溶媒除去工程の条件等により、調整することができる。
無端ベルト1は、導電性が要求される場合には、通常、1×109〜1×1013Ω・cmの体積抵抗率を有するのが好ましく、1×1010〜1×1012Ω・cmであるのが特に好ましい。体積抵抗率が前記範囲内にあると、無端ベルト1を画像形成装置に使用した場合に、高品質の画像を形成することができる。前記体積抵抗率は、体積抵抗測定装置(三菱化学株式会社製、商品名:Hiresta−UP、使用プローブ:URS)により測定することができる。
無端ベルト1は、後述する変性ポリアミドイミド樹脂によって形成される。この変性ポリアミドイミド樹脂は、芳香族ポリアミドイミド樹脂を後述するポリジメチルシロキサンで変性した変性芳香族ポリアミドイミド樹脂が、強度、可撓性、寸法安定性及び耐熱性等の機械的特性がバランスよく優れている点で、特に好ましい。
前記変性芳香族ポリアミドイミド樹脂は、後述するポリジメチルシロキサンの存在下に、トリカルボン酸無水物とジイソシアネート化合物とを反応させるジイソシアネート法により製造することができ、原料の入手、反応性及び副生成物が少ない等の点で優れている。ジイソシアネート法で製造される変性芳香族ポリアミドイミド樹脂の他にも、重縮合反応を好適に進めることができるのであれば、後述するポリジメチルシロキサンの存在下に、ジイソシアネート化合物に代えてジアミン化合物を用いて製造される変性芳香族ポリアミドイミド樹脂も、好ましい。ジアミン化合物を用いて得られる変性芳香族ポリアミドイミド樹脂は、ヤング率が高く、無端ベルト1を形成する樹脂として好適である。また、トリカルボン酸無水物の一部をテトラカルボン酸二無水物に代えてイミド結合を増加させた変性芳香族ポリアミドイミド樹脂は、耐湿性に優れている。
変性芳香族ポリアミドイミド樹脂は、後述するポリジメチルシロキサンの存在下に、適宜の溶媒中で、常圧下、及び、常温下又は加熱下で、トリカルボン酸無水物とジイソシアネート化合物とを反応させることにより、容易に合成することができる。
トリカルボン酸無水物とジイソシアネート化合物とを重合させるときの、ポリジメチルシロキサンの存在量は、トリカルボン酸無水物とジイソシアネート化合物との合計100質量部に対して10質量部以下であるのが好ましく、5質量部以下であるのが特に好ましい。ポリジメチルシロキサンの存在量が10質量部を超える場合には、得られる変性芳香族ポリアミドイミド樹脂で無端ベルト1を形成すると、無端ベルト1の表面及び内部に気泡が発生することがある。一方、ポリジメチルシロキサンの存在量は、2質量部以上であるのが好ましく、3質量部以上であるのが好ましい。ポリジメチルシロキサンの存在量が2質量部未満である場合には、得られた変性芳香族ポリアミドイミド樹脂で無端ベルト1を形成しても、所望の効果が得られないことがある。
前記ポリジメチルシロキサンは、繰り返し単位−(Si(CH3)2−O)−からなるポリジメチルシロキサン構造−(Si(CH3)2−O)n−を有し、その末端に、アミノ基、カルボキシ基及びヒドロキシ基の少なくとも一種の基を有するポリジメチルシロキサンである。ここで、ポリジメチルシロキサン構造におけるnは整数であり、具体的には、例えば、40〜60の整数である。ポリジメチルシロキサンが、アミノ基、カルボキシ基及びヒドロキシ基の少なくとも一種の基を末端に有していると、これらの基がイソシアネート化合物のイソシアネート基と反応して、トリカルボン酸無水物とジイソシアネート化合物とからなるポリアミドイミド樹脂にポリジメチルシロキサンを均一に組み込むことができ、ブロック共重合体又はグラフト共重合体の変性ポリアミドイミド樹脂を得ることができる。
前記ポリジメチルシロキサンは、ポリジメチルシロキサン構造の両末端にアミノ基、カルボキシ基及びヒドロキシ基の少なくとも一種の基を有するのが好ましく、ポリジメチルシロキサン構造の末端に有する基はカルボキシ基であるのが好ましい。
前記ポリジメチルシロキサンは、その数平均分子量が3,200〜4,600であるのが好ましい。ポリジメチルシロキサンの数平均分子量が前記範囲にあると、無端ベルト1の耐揉性及び現像剤の離型性が向上する。数平均分子量は、ゲル・パーミエーション・クロマトグラフィーによる標準ポリスチレン換算した分子量である。
前記ポリジメチルシロキサンは、適宜調製してもよく、また、市販品を使用することもできる。市販品としては、例えば、商品名「X22−162C」(ポリジメチルシロキサン構造の両末端はカルボキシ基、数平均分子量4,600、信越化学株式会社製)、商品名「X22−176DX」(ポリジメチルシロキサン構造の両末端はヒドロキシ基、数平均分子量3,200、信越化学株式会社製)、商品名「KF8012」(ポリジメチルシロキサン構造の両末端はアミノ基、数平均分子量約4,000、信越化学株式会社製)等が挙げられる。
前記トリカルボン酸無水物としては、芳香族トリカルボン酸無水物が好ましく、例えば、トリメリット酸無水物、3,4,4’−ジフェニルエーテルトリカルボン酸無水物、3,4,4’−ベンゾフェノントリカルボン酸無水物、2,3,5−ピリジントリカルボン酸無水物、ナフタレントリカルボン酸無水物、及びこれらの誘導体等が挙げられる。これらの酸無水物は1種単独で又は2種以上を混合して用いることができる。
トリカルボン酸無水物の一部に代えて用いられるテトラカルボン酸二無水物としては、例えば、ピロメリット酸二無水物、3,3’,4,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,3,6,7−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、1,4,5,8−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、2,2’−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)プロパン二無水物、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)スルホン酸二無水物、ペリレン−3,4,9,10−テトラカルボン酸二無水物、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)エーテル二無水物、エチレンテトラカルボン酸二無水物、及びこれらの誘導体等が挙げられる。これらのテトラカルボン酸二無水物は1種単独で又は2種以上を混合して用いることができる。
前記ジイソシアネート化合物としては、芳香族ジイソシアネート化合物を好ましく挙げることができる。また、ジイソシアネート化合物として、芳香族ジイソシアネート化合物と共に、又は芳香族ジイソシアネート化合物に代えて、脂肪族ジイソシアネート化合物及び/又は脂環式ジイソシアネート化合物を、又はこれらの誘導体であるアミン類を使用することもできる。
芳香族ジイソシアネート化合物として、例えば、m−フェニレンジイソシアネート、p−フェニレンジイソシアネート、ジフェニルメタン−4,4’−ジイソシアネート、4,4’−ジイソシアネートジフェニルエーテル、4,4’−ジイソシアネートジフェニルスルホン、4,4’−ジイソシアネートビフェニル、3,3’−ジメチル−4,4’−ジイソシアネートビフェニル、2,4−トルエンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート等が挙げられる。また、これらの芳香族ジイソシアネート化合物の誘導体であるジアミン類も原料として利用できる。脂肪族ジイソシアネート化合物としては、例えば、エチレンジイソシアネート、プロピレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート等が挙げられる。脂環式ジイソシアネート化合物としては、例えば、1,4−シクロヘキサンジイソシアネート、1,3−シクロヘキサンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、4,4’−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート等が挙げられる。これらのジイソシアネート化合物の中でも、無端ベルト1の耐熱性、機械的特性及び溶解性等を考慮すると、使用する全ジイソシアネート化合物中の60質量%以上、好ましくは70質量%以上を、ジフェニルメタン−4,4’−ジイソシアネート、2,4−トルエンジイソシアネート、3,3’−ジメチル−4,4’−ジイソシアネートビフェニル、イソホロンジイソシアネート又はこれらの誘導体であるジアミン類とすることが好ましい。さらに、無端ベルト1の寸法安定性を考慮すると、使用する全ジイソシアネート化合物中の70質量%以上をジフェニルメタン−4,4’−ジイソシアネート又はこの誘導体である4,4′−ジアミノジフェニルメタンとすることがより好ましい。
変性芳香族ポリアミドイミド樹脂を合成する反応に使用される溶媒としては、溶解性の点で極性溶媒が好ましく、反応性を考慮すると非プロトン性極性溶媒が特に好ましい。非プロトン性極性溶媒として、例えば、N,N−ジアルキルアミド類が挙げられ、N,N−ジアルキルアミド類としては、例えば、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジエチルホルムアミド、N,N−ジエチルアセトアミド、及び、N,N−ジメチルメトキシアセトアミド等が挙げられる。また、極性溶媒として、N−メチル−2−ピロリドン、ピリジン、ジメチルスルホキシド、テトラメチレンスルホン、ジメチルテトラメチレンスルホン等も好ましい。これらの溶媒は、1種単独で又は2種以上を混合して用いることができる。
このように重合されて成る変性芳香族ポリアミドイミド樹脂は、芳香族ポリアミドイミド樹脂に、前記ポリジメチルシロキサン構造が組み込まれた、又は、グラフトされた、ブロック共重合体又はグラフト共重合体である。
変性芳香族ポリアミドイミド樹脂は、その数平均分子量が10,000〜50,000であるのが好ましい。変性芳香族ポリアミドイミド樹脂の数平均分子量が前記範囲にあると、成形膜の引張伸度が向上するという効果を奏する。数平均分子量は、ゲル・パーミエーション・クロマトグラフィーによる標準ポリスチレン換算した分子量である。
無端ベルト1は、変性ポリアミドイミド樹脂によって形成されるが、必要により、変性ポリアミドイミド樹脂と各種添加剤等とを含有する樹脂組成物によって形成されることもできる。
例えば、転写搬送ベルト又は中間転写ベルト等のように、無端ベルト1にある程度の導電性が要求される場合には、変性ポリアミドイミド樹脂と導電性付与剤とを含有する樹脂組成物によって、無端ベルト1は形成されるのがよい。樹脂組成物に含有される導電性付与剤としては、ファーネスブラック、アセチレンブラック、ケッチェンブラック等の各種カーボンブラック、天然黒鉛、人造黒鉛、膨張黒鉛等の黒鉛粉末、金属又は合金等からなる針状、球状、板状及び不定形等の粉末、セラミックス粉末、表面が金属メッキされた各種粒子等が挙げられる。これらの中でも、カーボンブラックが、粒径、導電性及び変性ポリアミドイミド樹脂との親和性等がバランスよく優れている点で、好ましい。また、カーボンブラックは、変性ポリアミドイミド樹脂との親和性が向上する点で、酸化処理により、カルボキシ基、ヒドロキシ基等を付加した酸化処理カーボンブラックがより好ましく、pH6以下の酸化処理カーボンブラックも好ましい。導電性付与剤の好ましい形状は、球状又は不定形である。球状又は不定形をなす導電性付与剤の粒子のサイズは、一次粒子径として0.01〜10μm程度が好ましい。導電性付与剤がカーボンブラックの場合、そのBET比表面積は、一次粒子径との相関性が強く、50〜300m2/gであることが好ましく、100〜200m2/gがより好ましい。
導電性付与剤の添加量は、導電性付与剤の導電性及び粒径、並びに、無端ベルト1に要求される導電性等により、適宜調整すればよいが、通常、変性ポリアミドイミド樹脂と導電性付与剤との合計100質量%に対して、1〜25質量%であるのが好ましく、5〜20質量%であるのがより好ましい。導電性付与剤の添加量が1質量%より少ないと、発現する導電性が小さいことがあり、一方、導電性付与剤の添加量が25質量%を超えると、無端ベルト1の機械的強度が低下することがある。導電性付与剤を変性ポリアミドイミド樹脂に分散させるには、公知の方法を適宜選択することができ、公知の方法として、例えば、ミキシングロール、加圧式ニーダー、押出機、三本ロール、ホモジナイザー、ボールミル、ポットミル及びビーズミル等を用いた混合方法が挙げられる。
また、導電性付与剤以外の添加剤としては、例えば、フッ素系有機化合物、カップリング剤、滑剤、酸化防止剤、可塑剤、着色剤、帯電防止剤、老化防止剤、補強性充填材、反応助剤、反応抑制剤等の各種添加剤、他の樹脂及び溶媒等が挙げられる。
次に、本発明に係る無端ベルト1の製造方法を説明する。無端ベルト1を製造するには、まず、前記変性ポリアミドイミド樹脂を準備する。すなわち、前記したように、例えば、ポリジメチルシロキサン構造の両末端にアミノ基、カルボキシ基及びヒドロキシ基の少なくとも一種の基を有するポリジメチルシロキサンの存在下に、適宜の溶媒中で、常圧下、及び、常温下又は加熱下で、トリカルボン酸無水物とジイソシアネート化合物とを重合させて、変性ポリアミドイミド樹脂を製造する。なお、必要により、変性ポリアミドイミド樹脂と各種添加剤とを含有する樹脂組成物を前記方法により調整する。
次いで、変性ポリアミドイミド樹脂又は樹脂組成物(以下、変性ポリアミドイミド樹脂等と称する。)を、公知の成形方法によって、環状に成形する。例えば、遠心成形、押出成形、射出成形、RIM成形等により、無端ベルト1を成形することができる。これらの成形方法の中でも、厚さ精度に優れる等の点で、遠心成形が好ましい。
無端ベルト1を遠心成形によって成形する場合には、無端ベルト1を形成する変性ポリアミドイミド樹脂等は、その成形時の粘度が50,000mPa・s以下に調整されるのが好ましい。粘度が50,000mPa・sを超えると、厚さの均一な無端ベルト1を製造するのが困難になることがある。前記粘度の下限については、特に限定されるものではないが、10mPa・s以上であるのが好ましい。成形時における、変性ポリアミドイミド樹脂等の粘度が上記範囲を外れる場合は、前記溶媒の添加量等を調節することにより、変性ポリアミドイミド樹脂等の粘度を前記範囲内に調整することができる。溶媒としては、変性芳香族ポリアミドイミド樹脂を合成する際に使用される前記溶媒が挙げられる。
遠心成形によると、溶媒を含有することにより流動性を発現した変性ポリアミドイミド樹脂等を円筒形の金型に注入し、金型を回転させて遠心力で金型内周面に、変性ポリアミドイミド樹脂等の層を均一に展開し、変性ポリアミドイミド樹脂等の層から溶媒を乾燥除去して、無端ベルト基体が製造される。金型は各種金属管を用いることができる。好適な金型としては、金型の内周面は鏡面研磨されており、鏡面となった内周面はフッ素樹脂やシリコーン樹脂等の離型剤により離型処理され、形成した無端ベルト基体が内周面から容易に脱型できるようにされた金属管を挙げることができる。
なお、上述した遠心成形による他に、アミノ基、カルボキシ基及びヒドロキシ基の少なくとも一種の基を末端に有するポリジメチルシロキサンの存在下に、前記トリカルボン酸無水物と前記ジイソシアネート化合物とを一部重合させた変性ポリアミド酸の溶液を、金型の内周面や外周面に浸漬方式、遠心方式、塗布方式等によってコートし、又は前記変性ポリアミド酸の溶液を注形型に充填する等の適宜な方式で筒状に展開し、その展開層を乾燥製膜してベルト形に成形し、その成形物を加熱処理して変性ポリアミド酸を変性イミドに転化して型より回収する公知の方法(特開昭61−95361号公報、特開昭64−22514号公報、特開平3−180309号公報等)等により、無端ベルト1を製造することもできる。なお、この方法において、前記トリカルボン酸無水物と前記ジイソシアネート化合物とを一部重合させるときの、前記ポリジメチルシロキサンの存在量は、前記の通りである。
金型内周面に展開された変性ポリアミドイミド樹脂等の層から除去される溶媒は、金型内周面に展開された変性ポリアミドイミド樹脂等の層に含有された溶媒であり、例えば、変性ポリアミドイミド樹脂等の粘度を調整する際に使用される溶媒の他に、前記変性芳香族ポリアミドイミド樹脂を合成する際に使用される溶媒等が挙げられる。金型内周面に展開された変性ポリアミドイミド樹脂等の層から溶媒を除去する処理として、加熱処理を挙げることができるが、以下の一次溶媒除去工程及び二次溶媒除去工程からなる溶媒除去処理を行うのが好ましい。
前記一次溶媒除去工程は、金型を回転して金型内周面に展開された変性ポリアミドイミド樹脂等の層から溶媒を除去しつつ成形して、変性ポリアミドイミド樹脂等の層をフィルム状成形体とする。一次溶媒除去工程は、金型を回転したまま5〜60分間、40〜150℃の熱風を金型内に通過させることにより、溶媒が除去される。熱風温度が150℃を超えると、及び/又は、加熱時間が60分を超えると、成形されるフィルム状成形体が酸化されることがある。
二次溶媒除去工程は、一次溶媒除去工程で成形されたフィルム状成形体を金型ごと遠心成形機から取り出し、金型ごと加熱して、フィルム状成形体から溶媒を除去し、無端ベルト基体とする。例えば、熱風乾燥器、オーブン等の加熱器を用いる場合には、フィルム状成形体を金型ごと、200〜300℃で1〜3時間加熱すればよく、また、過熱水蒸気炉を用いる場合には、フィルム状成形体を金型ごと、110〜350℃の過熱水蒸気で、30〜150分間加熱すればよい。
このようにして、フィルム状成形体を均一に成形した後、金型ごとフィルム状成形体を取り出し、又は、フィルム状成形体から溶媒を除去した後、フィルム状成形体を金型から取り出し、放冷する。なお、金型ごとフィルム状成形体を放冷すると、金型とフィルム状成形体との熱膨張率の差により、樹脂組成物で形成されたフィルム状成形体を脱型することができる。脱型した円筒状のフィルム状成形体の両側端部を除去し、所定幅毎に裁断すれば、無端ベルト1が製造される。
この発明における無端ベルトは、前記した無端ベルト1に限定されることはなく、本願発明の目的を達成することができる範囲において、種々の変更が可能である。例えば、無端ベルト1は蛇行防止部材を備えていないが、この発明においては、無端ベルトの少なくとも一方の端部近傍に、無端ベルトの円周方向に延在する桿状、軌条状及び帯状等の細長い形状を成した蛇行防止部材を備えていてもよい。
次に、この発明に係る無端ベルト1を備えた画像形成装置(以下、この発明に係る画像形成装置と称することがある。)の一例を、図2を参照して、説明する。なお、図2に示される画像形成装置は、像担持体に現像された現像剤像を記録体に直接転写する直接転写方式のタンデム型カラー画像形成装置であり、図2に示されるように、無端ベルト1は、転写搬送ベルトとして二本の支持ローラ42に張架され、また、定着ベルトとして定着装置30の定着ローラ31と無端ベルト支持ローラ33に張架されている。
図2に示されるように、画像形成装置10は、四種の現像ユニットに装備された像担持体11B、11C、11M及び11Yを転写搬送ベルト1上に直列に配置したタンデム型カラー画像形成装置であり、したがって、現像ユニットB、C、M及びYが転写搬送ベルト1上に直列に配置されている。
図2に示されるように、現像ユニットBは、静電潜像が形成される回転可能な像担持体11Bと、像担持体11Bに当接若しくは圧接して又は所定の間隔を置いて設けられ、像担持体11Bを帯電させる帯電手段12Bと、像担持体11Bの上方に設けられ、像担持体11Bに静電潜像を形成する露光手段13Bと、像担持体11Bに当接若しくは圧接して又は所定の間隔を置いて設けられ、像担持体11Bに一定の層厚で現像剤22Bを供給し、静電潜像を現像する現像手段20Bと、像担持体11Bの下方に転写搬送ベルト1を介して当接又は圧接するように設けられ、現像された静電潜像を像担持体11Bから転写搬送ベルト1で搬送される記録体16上に転写する転写手段14Bと、記録体16に転写されず像担持体11Bに残留した現像剤22B等を除去するクリーニング手段15Bとを備えている。図2に示されるように、現像ユニットBにおける像担持体11Bと転写手段14Bとは、二本の支持ローラ5に張架された転写搬送ベルト1を介して当接又は圧接している。そして、記録体16は、転写搬送ベルト1により、像担持体11Bと転写手段14Bとの当接部を通過するように、搬送される。この転写搬送ベルト1は記録体16を搬送すると共に、転写手段14Bと協働して像担持体11Bに現像された静電潜像を転写する。像担持体11B、帯電手段12B、露光手段13B、転写手段14B及びクリーニング手段15Bは、従来公知のものを適宜選択して使用することができる。
図2に示されるように、前記現像手段20Bは、像担持体11Bに対向する位置に開口部を有し、現像剤22Bを収納する筐体21Bと、筐体21Bの開口部に、像担持体11Bに当接若しくは圧接して又は所定の間隔を置いて設けられ、像担持体11Bに現像剤22Bを一定の層厚で供給する回転可能な現像剤担持体23Bと、現像剤担持体23Bの上方に設けられ、現像剤担持体23Bに当接又は圧接して現像剤22Bの層厚を規制すると共に、摩擦帯電により現像剤22Bを帯電させる現像剤規制部材24Bとを備えている。現像剤担持体23B及び現像剤規制部材24Bは、従来公知のものを適宜選択して使用することができる。前記現像剤22Bは、摩擦により帯電可能で、記録体16に定着可能な現像剤であれば、乾式現像剤でも湿式現像剤でもよく、また、非磁性現像剤でも磁性現像剤でもよく、さらに、1成分現像剤でも二成分現像剤でもよい。現像ユニットBは、筐体21B内に黒色現像剤を収納している。
現像ユニットC、M及びYは、図2に示されるように、現像ユニットBと同様に構成されている。現像ユニットC、M及びYはそれぞれ、筐体21C、21M及び21Y内に、シアン現像剤22C、マゼンタ現像剤22M及び黄色現像剤22Yを収納している。
図2に示されるように、画像形成装置10の底部には、記録体16として複数枚の記録体を積層収容するカセット41が設置され、カセット41内の記録体は給紙ローラ等によって1枚ずつ送り出されて、転写搬送ベルト1上に搬送される。
図2に示されるように、画像形成装置10における記録体16の搬送方向下流には、記録体16に転写された各種現像剤(静電潜像)を定着させる定着手段30が配置されている。定着手段30は、例えば、発熱可能な定着ローラを備えた熱ローラ定着装置、オーブン定着器等の加熱定着装置、加圧可能な定着ローラを備えた圧力定着装置等を用いることができる。図2に示されるように、画像形成装置10は、無端ベルト1を備えた定着装置30が配置されている。定着装置30は、図2にその断面が示されるように、記録体16を通過させる開口部35を有する筐体34内に、定着ローラ31と、定着ローラ31の近傍に配置された無端ベルト支持ローラ33と、定着ローラ31及び無端ベルト支持ローラ33に巻き掛けられた定着ベルト、すなわち、無端ベルト1と、定着ローラ31と対向配置された加圧ローラ32とを備え、無端ベルト1を介して定着ローラ31と加圧ローラ32とが、互いに当接又は圧接するように、回転自在に支持されて成る圧力熱定着装置である。無端ベルト支持ローラ33は、画像形成装置に通常用いられるローラであればよく、例えば、弾性ローラ等が用いられる。定着ローラ31、無端ベルト支持ローラ33及び加圧ローラ32はそれぞれ、加熱体(図示しない。)が内蔵され、加圧ローラ32はスプリング等の付勢手段(図示しない。)によって、無端ベルト1を介して定着ローラ31に圧接している。無端ベルト1と加圧ローラ32との圧接された間を記録体16が通過することにより、加圧と同時に加熱され、記録体16に転写された現像剤42(静電潜像)を定着させることができる。
画像形成装置10は、次にように作用する。まず、現像ユニットBの像担持体11Bが、帯電手段12Bにより一様に帯電され、露光手段13Bにより画像が露光されて、像担持体11Bの表面に静電潜像が形成される。一方、現像手段20Bにおいて、現像剤担持体23B及び現像剤規制部材24Bにより、黒色現像剤22Bが所望の層厚に規制され、所望のように帯電される。そして、この黒色現像剤22Bが現像剤担持体23Bから像担持体11Bに供給され、像担持体11Bに形成された静電潜像が現像されて、現像剤像として可視化される。次いで、この現像剤像が、像担持体11Bと転写手段14Bとの間に転写搬送ベルト1により搬送される記録体16上に、転写される。このようにして、現像剤像が記録体16上に黒像に顕像化される。
次いで、現像ユニットBと同様にして、現像ユニットC、M及びYによって、現像剤像が黒像に顕像化された記録体16に、それぞれシアン像、マゼンタ像及び黄色像が重畳され、カラー像が顕像化される。
次いで、カラー像が顕像化された記録体16は、搬送手段により定着手段30に搬送され、定着ローラ31と加圧ローラ32との無端ベルト1を介した当接部又は圧接部を通過するときに加熱及び/又は加圧されて、転写されたカラー像が永久画像として定着される。このようにして、記録体16にカラー画像を形成することができる。
画像形成装置10によれば、転写搬送ベルトとして無端ベルト1を使用しているから、画像形成装置10が従来の画像形成装置であっても、また、高寿命化、高精細化及び高速化された画像形成装置であっても、画像形成装置に長期間装着され、及び/又は、長期間無限走行しても、無端ベルト1の空転を抑えることができると共に無端ベルト1にひび割れ、亀裂等の損傷の発生を抑えることができる。それ故、無端ベルト1の初期の特性が長期間にわたって発揮され、無端ベルト1によって記録体16を長期間にわたって所望のように搬送することができる。その結果、記録体16上に顕像化された黒像に、シアン像、マゼンタ像及び黄色像を正確な位置に重畳して画像ずれ等及び画像濃度むら等を効果的に防止することができる。また、定着ベルトとして無端ベルト1を使用しているから、記録紙16上に転写された各色の現像剤を所望のように定着させることができる。したがって、画像形成装置10によれば、高品質の画像を長期間にわたって形成することができる。
なお、この発明に係る無端ベルト1を、前記像担持体11と同様の役割を担う転写ベルト(感光ベルトとも称することがある。)、前記中間転写方式における一次転写体として使用される中間転写ベルト、及び、前記現像剤担持体と同様の役割を担う現像ベルトとして、画像形成装置10に組み込んでも、無端ベルト1は、前記したように、初期の特性が長期間にわたって発揮するから、画像形成装置10は高品質の画像を形成することができる。
画像形成装置10は、電子写真方式の画像形成装置とされているが、この発明において、画像形成装置10は、電子写真方式には限定されず、例えば、静電方式の画像形成装置であってもよい。また、画像形成装置10は、各色の現像ユニットを備えた複数の像担持体を転写搬送ベルト上に直列に配置したタンデム型カラー画像形成装置とされているが、画像形成装置は、単一の現像ユニットを備えたモノクロ画像形成装置であっても、像担持体上に担持された現像剤像を無端ベルトに順次一次転写を繰り返す四サイクル型カラー画像形成装置等であってもよい。画像形成装置10は、例えば、複写機、ファクシミリ、プリンタ等の画像形成装置とされる。
(実施例1)
反応容器中に、N−メチル−2−ピロリドン適量と、トリメリット酸無水物1molと、ジフェニルメタン−4,4’−ジイソシアネート1molと、トリメリット酸無水物とジフェニルメタン−4,4’−ジイソシアネートとの合計質量に対して10質量部のポリジメチルシロキサン(商品名「X22−162C」、両末端はカルボキシ基、信越化学株式会社製)と、フッ化カリウム(触媒)0.02molとを加え、窒素ガス雰囲気下、撹拌しながら1時間かけて室温から150℃に昇温後、同温度を4時間保持して、反応物濃度(実質的全閉環の変性ポリアミドイミド樹脂、変性ポリアミドイミド樹脂の数平均分子量は20,000)20質量%の変性ポリアミドイミド樹脂溶液を得た。この溶液に、N−メチル−2−ピロリドンをさらに加え、反応物濃度15質量%の変性ポリアミドイミド樹脂溶液を調製した。得られた変性ポリアミドイミド樹脂溶液に、酸化処理カーボンブラック(商品名「スペシャルブラック4」、Degussa社製、pH3.0、揮発分14.0%)を変性ポリアミドイミド樹脂と酸化処理カーボンブラックとの合計100質量%に対して15質量%の割合で加え、ビーズミルで1時間混合分散して、樹脂組成物を調製した。
遠心成形に使用する金型は、内径200mm、外径220mm、長さ400mmの大きさを有し、金型内面はポリッシングにより鏡面研磨されている。次いで、金型両端の開口部に、リング状の蓋(内径170mm、外径250mm)をそれぞれ嵌合して、金型を閉塞し、樹脂組成物を1,000rpmの速度で回転する金型内周に215g注入した。次いで、金型を同速度で30分間回転させて金型内周面に樹脂組成物の層を均一に展開した。次いで、金型を同速度で回転させつつ、熱風乾燥機により金型周囲の温度を150℃に保ち、この状態を30分間保持し、フィルム状成形体を成形した。その後、金型の回転を停止し、フィルム状成形体を金型ごと遠心成形機から取り出し、250℃に調節された過熱水蒸気炉で150分間過熱水蒸気加熱した後、室温で放冷して、無端ベルト基体とした。金型ごと無端ベルト基体を冷却すると、金型と無端ベルト基体との熱膨張率の差により、無端ベルト基体が剥離した。
このようにして作製したベルト基体の両端部をそれぞれ切断し、周長約200mm、幅240mmの大きさに切り出し、厚さ100μmの無端ベルト1Aを作製した。
(実施例2)
ポリジメチルシロキサン(商品名「X22−162C」)の存在量を、トリメリット酸無水物とジフェニルメタン−4,4’−ジイソシアネートとの合計質量に対して5質量部に変更した以外は、実施例1と同様にして、無端ベルト1Bを作製した。
(比較例1)
前記ポリジメチルシロキサンを使用しない(すなわち、ポリジメチルシロキサンの存在量0質量部に変更した)以外は、実施例1と同様にして、無端ベルト1Cを作製した。
(比較例2)
ポリイミド樹脂溶液(商品名「U−ワニス−S」、宇部興産株式会社製)に酸化処理カーボンブラック(商品名「スペシャルブラック4」、Degussa社製、pH3.0、揮発分14.0%)をポリイミド樹脂溶液中のポリイミド樹脂と酸化処理カーボンブラックとの合計100質量%に対して15質量%の割合で加え、ビーズミルで1時間混合分散して、樹脂組成物を調製した。
次いで、実施例1と同じく内径200mm、外径220mm、長さ400mmの金型を1,000rpmの速度で回転させながら金型内周に、215gの樹脂組成物を注入した。次いで、金型を同速度で30分間回転させて金型内周面に樹脂組成物の層を均一に展開した。次いで、金型を同速度で回転させつつ、熱風乾燥機により金型周囲の温度を150℃に保ち、この状態を30分間保持し、フィルム状成形体を成形した。その後、金型の回転を停止し、フィルム状成形体を金型ごと遠心成形機から取り出し、350℃に調節された過熱水蒸気炉で150分間過熱水蒸気加熱した後、室温で放冷して、無端ベルト基体とした。金型ごと無端ベルト基体を冷却すると、金型と無端ベルト基体との熱膨張率の差により、無端ベルト基体が剥離した。このようにして作製した無端ベルト基体の両端部をそれぞれ切断し、周長約200mm、幅240mmの大きさに切り出し、厚さ100μmの無端ベルト1Dを作製した。
(比較例3)
比較例1で作製した無端ベルト基体の表面に、シリコーングラフトアクリル樹脂(商品名「X22−8004」、信越化学工業株式会社製)を、スプレー塗布法によって、膜厚を5μmに均一塗布した後、150℃で2時間乾燥して、二層構造の無端ベルト1Eを作製した。
(比較例4)
シリコーングラフトアクリル樹脂(商品名「X22−8004」、信越化学工業株式会社製)とN−メチル−2−ピロリドンとを混合して、シリコーングラフトアクリル樹脂の濃度が15質量%のシリコーングラフトアクリル樹脂溶液を調製した。得られたシリコーングラフトアクリル樹脂溶液に、酸化処理カーボンブラック(商品名「スペシャルブラック4」、Degussa社製、pH3.0、揮発分14.0%)をシリコーングラフトアクリル樹脂と酸化処理カーボンブラックとの合計100質量%に対して15質量%の割合で加え、ビーズミルで1時間混合分散して、樹脂組成物を調製した。
次いで、実施例1と同様にして、金型内周面に樹脂組成物の層を均一に展開した。次いで、金型を同速度で回転させつつ、熱風乾燥機により金型周囲の温度を80℃に保ち、この状態を30分間保持し、フィルム状成形体を成形した。その後、金型の回転を停止し、フィルム状成形体を金型ごと遠心成形機から取り出し、100℃に調節された熱風乾燥機で150分間加熱した後、室温で放冷して、無端ベルト基体とした。このようにして作製したベルト基体の両端部をそれぞれ切断し、周長約200mm、幅240mmの大きさに切り出し、厚さ100μmの無端ベルト1Fを作製した。
前記各測定方法に準拠して、無端ベルト1A〜1FのISO耐折回数、吸水率、ヤング率、引張伸度、接触帯電量、濡れ指数及びループステフネスを測定した。その結果を表1に示す。
また、無端ベルト1A〜1Fのシリカ固着試験を行った。具体的には、シリカ粉末(商品名「X24−9163A」、信越化学工業株式会社製)をウエスで無端ベルト1A〜1Fの表面に塗りつけた後、塗りつけたシリカ粉末を清浄なウエスで拭取った。各無端ベルトの表面に固着して残存したシリカ粉末量を目視で評価した。評価は、シリカ粉末の残存量が少ないほうから順に、「◎」、「○」、「×」の3段階とした。その結果を表2に示す。
さらに、無端ベルト1A〜1Fの像流れ、現像剤の転写性及び白抜け試験を行った。具体的には、作製した無端ベルト1A〜1Fそれぞれを、アモルファスシリコン感光ドラムを備えたベルト中間転写方式のカラー画像形成装置(商品名「DocuPrint C830」、富士ゼロックス株式会社製)に装着し、現像剤として磁性二成分トナーを用いて印字試験を行い、その印字サンプルを10倍の光学顕微鏡で観察して判断した。像流れは、印字サンプルにおける印字文字の輪郭が周囲に滲んでいなかった場合を「◎」、印字文字の輪郭がわずかに滲んでいたものの実用上まったく問題のない程度である場合を「○」、印字文字の輪郭が激しく滲んでいたものを「×」とした。現像剤の転写性は、印字サンプルにおけるハーフトーンのドットが綺麗に紙上に転写されていた場合を「◎」、ハーフトーンのドットが多少欠損していた場合を「○」、ハーフトーンのドットが大きく欠損していた場合を「×」とした。白抜けは、印字サンプルにおけるベタ印字の画像中に現像剤の未転写部分(白色部分)が認められなかった場合を「◎」、ベタ印字の画像中に現像剤の未転写部分(白色部分)が多少認められた場合を「○」、ベタ印字の画像中に現像剤の未転写部分(白色部分)が多数認められた場合を「×」とした。その結果を表2に示す。
また、作製した無端ベルト1A〜1Fをそれぞれ図2に示される画像形成装置(タンデム型カラープリンター(商品名「MicroLine 9055c」、株式会社沖データ製))に装着し(張力100〜3,000gf)、無端ベルト支持ローラ33に張架された無端ベルトを、A4用紙を横21枚/分印刷する速度で無限軌道上を回転させ、耐久試験を行った。300,000回転走行させた後に、無端ベルトの亀裂及び/又は破損等の有無を確認した。無端ベルトを300,000回転走行させても亀裂及び破損等が生じなかった場合を「◎」とし、無端ベルトを100,000回転走行させても亀裂及び破損等が生じなかった場合を「○」とし、無端ベルトが50,000回転走行する前に、亀裂及び/又は破損等が生じた場合を「×」として、評価した。その結果を表2に示す。