JP2008169448A - フッ化不動態膜を形成した炭素鋼又は特殊鋼及びその形成方法 - Google Patents

フッ化不動態膜を形成した炭素鋼又は特殊鋼及びその形成方法 Download PDF

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Abstract

【課題】耐食性を有するフッ化不動態膜をステンレス材以外の鉄鋼基材に形成することが可能なフッ化不動態膜の形成方法を提供すること。
【解決手段】炭素鋼又は特殊鋼(但しステンレス鋼は除く)からなる基材をベーキングし、次いで、50℃以上150℃未満の温度においてフッ素化処理を行うことを特徴とするフッ化不動態膜の形成方法。
【選択図】なし

Description

ステンレス材は主成分である鉄以外にニッケルおよびクロムにより構成されている。しかし、ステンレス材以外の特殊用途鋼で、軸受け鋼は鉄(Fe)以外の添加物が合計10%未満しか含まれていない。このため、前述の金属基材は腐食性雰囲気では、腐食が進行し、さらに腐食が進んだ部分の皮膜が剥離し、装置内部部品の欠損による回転の不安定化を引き起こしたり、装置内部に混在することによって、後段の装置へ流入し、機器の損傷を起こしていた。
腐食性ガスに晒されても腐食が生じない真空ポンプに使用される回転部分において、ベアリングのような軸受け部分は潤滑油によって満たされているが、使用状況によっては腐食性ガス雰囲気になることがある。このとき、潤滑油に溶け込んだ腐食性ガス成分に由来するハロゲンが軸受け部の金属と反応し、表面に腐食が発生する。
このために、金属材料表面に耐腐食性処理を行うことが必要になってくる。ステンレス材に関しては、特許文献1(特許第3030351号公報)にフッ化不動態膜をその表面に形成することの優位性が述べられている。
特許文献1では、SUS316Lに対して、200〜500℃の温度において2時間のフッ化処理を行うことによりフッ化第一鉄の単独層ないしフッ化第一鉄とフッ化第二鉄との混合層からなるフッ化不動態膜の形成を行っている(特許文献1の実施例)。
しかし、ステンレス材以外の鉄鋼、特に、ニッケル、クロムの含有量が少ない鉄鋼材料(例えば、構造用炭素鋼(JIS:SC材)や軸受用炭素鋼(JIS:SUJ材))について特許文献1に記載された方法によりフッ化不動態膜の形成を試みたところ耐食性を有するフッ化不動態膜の形成はできなかった。
ステンレス材とそれ以外の特殊用途鋼とではフッ化不動態膜の形成方法が異なってくることがわかった。
特許第30351号公報)
本発明は、耐食性を有するフッ化不動態膜をステンレス材以外の鉄鋼基材に形成することが可能なフッ化不動態膜の形成方法を提供することを目的とする。
本発明は、耐食性を有するフッ化不動態膜を表面に有するステンレス材以外の鉄鋼基材を提供することを目的とする。
本発明は、耐食性及び耐磨耗性を有するフッ化不動態膜を表面に有する鋼材を提供することを目的とする。
本発明は、摺動部分において腐食性ガスに晒されても腐食が起こらない装置を提供することを目的とする。
本発明は、炭素鋼又は特殊鋼(但しステンレス鋼は除く)からなる基材をベーキングし、次いで、50℃以上150℃未満の温度においてフッ素化処理を行うことを特徴とするフッ化不動態膜の形成方法である。
本発明は、炭素鋼又は特殊鋼(但しステンレス鋼は除く)からなる基材表面の少なくとも一部に化学量論比を満足するフッ化第一鉄とフッ化第二鉄との混合層を主成分とする金属フッ化物からなる不動態皮膜が形成されていることを特徴とするフッ化不動態膜が形成された鉄鋼材である。
(基材)
本発明における対象基材は炭素鋼又は特殊鋼(但しステンレス鋼を除く)である。
鋼には、鉄にC,Si、Mn、P、Sが含まれた炭素鋼(普通鋼)と炭素鋼に特殊元素が添加された特殊鋼がある。
炭素鋼には一般構造用圧延材(SS)と溶接構造用圧延鋼材(SM)、高張力鋼材(ハイテン)があり、これらはいずれも本発明の対象である。
特殊鋼には、合金鋼(SA)、工具鋼(SK)、特殊用途鋼の3種類がある。
合金鋼には、機械構造用炭素材(SC)と構造用合金材(SA)がある。機械構造用炭素材はクロムを含有せず本発明の対象である。構造用合金材の中にはクロムを含有するものがあるがそのうちクロムが2重量%以下のものが特に好ましい。
工具鋼には、工具用炭素鋼材(SK)、合金工具鋼(SKS、SKD)、高速度鋼(SKH)がある。工具用炭素鋼は、多くは耐摩耗用部材として使用される。
特殊用途鋼(SU)にはステンレス鋼(SUS)、高C高Cr軸受鋼(SUJ)、ばね鋼(SUP)、快削鋼(SUM)がある。ステンレス鋼は本発明の対象外である。高C高Cr軸受鋼(SUJ)は本発明の対象である。
なお、構造用炭素鋼あるいは軸受鋼は一般的に、球状化炭化物が均一に分布しており、耐摩耗性に優れたベアリングに多用される。
なお、機械構造用炭素鋼(SC)、軸受材(SUJ)の組成例を表1、表2に示す。
Figure 2008169448
Figure 2008169448


機械構造用炭素鋼(SC)、軸受け鋼(SUJ)は一般的に、焼入れ後焼鈍を行う。この焼きなまし後の組織はパーライト中のセメンタイトを又は網状セメンタイトを球状化するための処理である。従って、これら鋼の場合フッ化処理前においては、球状炭化物が均一に分布している。
鋼としては、炭素含有率が0.02〜2.1%の鋼を用いることが好ましい。
0.02%未満の場合、鉄とフッ素との反応が進みすぎて、表面に均一なフッ化不動態皮膜が形成されないことがある。
2.1%を超えると、球状炭化物の分布量が多くなり、フッ化不動態膜の密着性が低下することがある。また、フッ素と炭素との反応生成物であるフッ化炭素がガス化した際に、基材表面にピット部分を発生させ、表面が荒れてしまい良好な皮膜の形成に影響を及ぼすことがある。また、クロム含有率が2%以下の鋼が好ましい。本発明におけるフッ化膜の形成方法における条件においては、クロムの含有率が2%以下の場合が2%を超えた場合に比べるとより耐食性の良好なフッ化不動態膜を形成することができる。
(前処理(ベーキング))
本発明において、フッ化処理前においては、ベーキングを行うことが好ましい。
ベーキングは100℃〜300℃の温度において、炉内を不活性ガスでパージしながら行うことが好ましい。
すなわち、フッ素化の前に予めある特定雰囲気下に熱処理する。この雰囲気として特に水分が極めて低い雰囲気の条件下に更に好ましくはその温度がステンレス鋼表面の付着水分を完全に除去しうる温度で熱処理を行うものである。このような条件下で予め熱処理した後フッ素化を行うと、FeFとFeFとが共に生成しても、得られる不働態膜は極めて優れた特性を有し、剥離や割れ等は全く生じない。
フッ素化すべき鋼を予め特定の予備処理を行うと、たとえフッ素化温度が高温になっても、換言すればFeFとFeFとが混在して生成しても優れた耐食性を有する不働態膜が強固に形成され、剥離や亀裂が全く生じない。予め特定の予備処理を行わない場合には、鋼を高温でフッ素化すると、FeFとFeFとが共に生成して得られる不働態膜は亀裂や剥離が生ずる可能性があるが、フッ素化する前に予めある特定の処理、即ちある特定雰囲気下で熱処理すると、フッ素化温度に関係なくたとえFeFとFeFとが共に生成しても優れた不働態膜が得られる。
(フッ化処理)
フッ素化の条件は50〜150℃の温度範囲で、フッ素化の時間は30分〜3時間の間である。フッ素化は基本的に常圧にて行うが、必要に応じて減圧下もしくは加圧化にて行うことも可能である。この際の圧力は2気圧以下程度でよい。フッ素化の雰囲気は酸素の存在しない状態で行うのが好ましく、したがって、フッ素を単独で、あるいは適宜な不活性ガス(たとえば、N,Ar,He等)で希釈することが望ましい。
(フッ化処理温度)
フッ化処理の温度は、50℃以上150℃未満である。
50℃以上とすることにより耐食性が優れたフッ化不動態が形成される。一方、150℃を越えると表面にクラックを有するフッ化不動態が形成され、腐食性ガスがそのクラック部分から浸入し、基材と反応するため、耐食性が得られない。
(フッ化処理時間)
フッ化処理時間としては30分から3時間が好ましい。30分未満では十分の厚さのフッ化不動態が形成されないことがある。また、3時間を超えると皮膜の厚膜化が進み、表面にクラックを有するフッ化不動態が形成され、腐食性ガスがそのクラック部分から浸入し、基材と反応するため、耐食性が得られない。
(フッ化処理の処理ガス)
フッ化処理の処理ガスとしては、フッ素単独またはフッ素を不活性ガスで希釈したガスを用いることができる。
フッ化処理を、鉄鋼基材の使用温度以上の温度で行うことが好ましい。フッ素の存在する雰囲気において、フッ化処理を行った温度以上の温度に保持するとフッ化不動態の膜厚の増加が認められる。それに対して、フッ素の存在する雰囲気中において、フッ化処理を行った温度より低い温度に保持した場合にはフッ化不動態の膜厚の増加は認められない。使用中にフッ化不動態膜の増加が生じると、例えば軸受材においては回転摺動性が悪くなる。従って、使用中におけるフッ化不動態の膜厚の増加を防ぐために、フッ化処理は使用温度よりも低い温度で行うことが好ましい。
なお、ベーキング前に表面の酸化物を除去することがより密着性の優れたフッ化不動態を形成する上から好ましい。
(後処理)
フッ化処理の後には、皮膜を構成するフッ素原子と鉄原子の化学量論比に近づけるために、再度不活性ガス中で熱処理を行う。熱処理の温度は100〜300℃の範囲で行うのがよいが、基材の設計上の熱によるひずみの許容範囲によって、温度を変えることもできる。
(フッ化不動態膜)
本発明により形成されるフッ化不動態膜はフッ化第一鉄とフッ化第二鉄との混合層を主成分とする。
フッ化第一鉄、フッ化第二鉄ともにほぼ化学量論比を満足する。FeFxとするとフッ化第一鉄の場合x=2±0.1、フッ化第二鉄の場合x=3±0.1である。
本発明に係るフッ化不動態皮膜は堅牢で、且つ緻密で金属との密着性もあり、さらに耐食性も充分に認められる不動態皮膜である。
(部材)
フッ化不動態膜が形成された部材は、腐食性ガスに晒される可能性がある環境下で使用される装置に用いることができる。特にフッ化不動態膜が形成された面を摺動面として用いることが好ましい。
例えば、軸受部材の軸受面をフッ化不動態膜で構成することが好ましい。
本発明のフッ化不動態膜は、例えば、次の各種腐食性ガス(あるいはその腐食性ガスを含むガス)に対して特に優れた耐腐食性を示す。F,Cl,NF,ClF,CF,IF,IF、SF,SF,SiF,BF,HF,WF,MoF,PF,PF,AsF,AsFの中から選ばれる少なくとも1種類から構成される無機ハロゲン系ガス、あるいは、SO,HS,NOの中から選ばれる少なくとも1種類から構成されるガス。特に、フッ素を含む無機フッ素系ガスに対して優れた耐食性を示す。
本発明により、腐食性ガス雰囲気では使用ができなかった、または、腐食により、部品の交換が頻繁に行う必要があったものに対して、フッ化不動態膜を形成することにより、使用が可能、もしくは部品の長寿命化が可能となった。
発明によって達成された炭素鋼を中心とする鋼材へのフッ化不動態膜は耐フッ素特性のみならず、腐食性ガス対して優れているので、ターボ分子ポンプや真空ポンプを中心とする該当する鋼材を使用する装置部材として、極めて有効である。従って、本発明によりフッ化不動態膜を形成した金属材料もしくは金属皮膜は真空関連装置部材として、極めて有効である。
真空ポンプの回転部分を構成する軸受け材(材質:SUJ)にフッ化不動態皮膜を形成させることにより、腐食性ガス雰囲気でも、軸受け材の腐食を防止することができる。
ターボ分子ポンプの軸受け(磁気浮上式も含む)部分において、フッ化不動態皮膜を形成させることにより、同ポンプの回転翼部分が高速回転するため、軸部分の腐食によるぶれを大きく低減させることができる。
自動車もしくは航空機に関して、燃料噴出部分付近のベアリングは、燃料の燃焼後のガスに含まれるSO,NOによって、腐食雰囲気に曝露される。フッ化不動態膜を施した場合、腐食防止がなされ、部品の延命対策が可能となる。
以下、各種条件によりフッ化不動態膜の形成及び形成された膜の評価を行った。
なお、試験例1及び7は比較例、試験例2〜6は本発明の実施例、試験例8〜10は、試験例1〜7のサンプルを用いた比較評価実施例である。
(試験例1)
軸受け鋼の例として、SUJ2を試験片とした。
常圧ガス流通式反応炉に、試験片を炉内部に装着して、不活性ガスである窒素(99.999%)を流通させながら、大気圧の状態で150℃にて8時間保持した。その後、反応炉を真空(真空度10Pa)にして、1%Fガス(窒素希釈)を導入させて、内圧を大気圧まで戻す。そのまま2時間保持し、窒素ガスにて、希釈フッ素ガスを置換しながら降温した。完全置換後、150℃にて8時間保持し、室温まで自然降温させた。
(試験例2)
常圧ガス流通式反応炉に、試験例1にて示した手法にて調整した試験片を炉内部に装着して、不活性ガスである窒素(99.999%)を流通させながら、大気圧の状態で150℃にて8時間保持した。140℃まで降温させ、その後、温度を保持したまま、反応炉を真空(真空度10Pa)にして、1%Fガス(窒素希釈)を導入させて、内圧を大気圧まで戻す。そのまま2時間保持し、窒素ガスにて、希釈フッ素ガスを置換しながら降温した。完全置換後、150℃にて8時間保持し、室温まで自然降温させた。
(試験例3)
常圧ガス流通式反応炉に、試験例1にて示した手法にて調整した試験片を炉内部装着して、不活性ガスである窒素(99.999%)を流通させながら、大気圧の状態で150℃にて8時間保持した。100℃まで降温させ、その後、温度を保持したまま、反応炉を真空(真空度10Pa)にして、1%Fガス(窒素希釈)を導入させて、内圧を大気圧まで戻す。そのまま2時間保持し、窒素ガスにて、希釈フッ素ガスを置換しながら降温した。完全置換後、150℃にて8時間保持し、室温まで自然降温させた。
(試験例4)
常圧ガス流通式反応炉に、試験例1にて示した手法にて調整した試験片を炉内部に装着して、不活性ガスである窒素(99.999%)を流通させながら、大気圧の状態で150℃にて8時間保持した。80℃まで降温させ、その後、温度を保持したまま、反応炉を真空(真空度10Pa)にして、1%Fガス(窒素希釈)を導入させて、内圧を大気圧まで戻す。そのまま2時間保持し、窒素ガスにて、希釈フッ素ガスを置換しながら降温した。完全置換後、150℃にて8時間保持し、室温まで自然降温させた。
(試験例5)
常圧ガス流通式反応炉に、試験例1にて示した手法にて調整した試験片を炉内部に装着して、不活性ガスである窒素(99.999%)を流通させながら、大気圧の状態で150℃にて8時間保持した。50℃まで降温させ、その後、温度を保持したまま、反応炉を真空(真空度10Pa)にして、1%Fガス(窒素希釈)を導入させて、内圧を大気圧まで戻す。そのまま2時間保持し、窒素ガスにて、希釈フッ素ガスを置換しながら降温した。完全置換後、150℃にて8時間保持し、室温まで自然降温させた。
(試験例6)
常圧ガス流通式反応炉に、試験例1にて示した手法にて調整した試験片を炉内部に装着して、不活性ガスである窒素(99.999%)を流通させながら、大気圧の状態で150℃にて8時間保持した。30℃まで降温させ、その後、温度を保持したまま、反応炉を真空(真空度10Pa)にして、1%Fガス(窒素希釈)を導入させて、内圧を大気圧まで戻す。そのまま2時間保持し、窒素ガスにて、希釈フッ素ガスを置換しながら降温した。完全置換後、150℃にて8時間保持し、室温まで自然降温させた。
(試験例7)
常圧ガス流通式反応炉に、試験例1にて示した手法にて調整した試験片を炉内部に装着して、不活性ガスである窒素(99.999%)を流通させながら、大気圧の状態で150℃にて8時間保持した。30℃まで降温させ、その後、温度を保持したまま、2時間保持後降温した。その後150℃にて8時間保持し、室温まで自然降温させた。
(膜厚の測定結果)
試験例1,2,3,4,5,6の試験片をXPS(X−ray PhotoelectronSpectroscopy)にて解析した。アルゴンスパッタリングによって、深さ方向へエッチングを行った。フッ化膜の膜厚はフッ素原子と鉄原子の存在比率が等比になる深さをもって、膜厚とする。ただし、事前に膜厚が既知のSi上のSiO薄膜の酸素検出深さにつき、同様に測定を行い、スパッタレートを測定した。これらの試験片のXPSでの測定値を示す。
Figure 2008169448
(試験例8)
試験例1,2,3,4,5,6および7におけるフッ化処理を行った試験片を加圧式反応炉に装着して1%F(窒素希釈)を圧力0.2MPa(ゲージ圧)まで加圧し、温度を80℃まで加熱後、24時間保持して、窒素ガスにて、希釈フッ素ガスを置換しながら降温した。これらの試験片のXPSでの測定値を示す。
Figure 2008169448
表4に示す試験例8の結果から、試験例2,3,4で作成した試験片の皮膜の厚さに変化は見られなかったが、試験例1で作成した試験片は膜厚が1.5倍まで増加している。また、試験例1で作成した試験片の表面にクラックが発生してクラック部分からフッ素が浸入し、皮膜下地の鉄元素と反応が進んだため、さらにフッ素化が進んだ。また、試験例8におけるフッ素暴露温度よりもフッ素との反応温度が低い温度にて処理した試験例5,6で作成した試験片に対しては、各試験例にて生成された皮膜が薄いため、表層に存在しているフッ素と結合していない鉄原子が試験例8によるフッ素暴露によりフッ素が浸入し、反応が進んだ。なお、試験例7で作成した試験片についてはフッ化不動態皮膜がないため、フッ素の浸入が他の試験例よりも顕著に見られた。
(試験例9)
試験例8と同様に試験例1,2,3,4,5,6および7の試験片を加圧式反応炉に装着して系内を真空引きし、その後1%F(窒素希釈)を大気圧まで加圧し、温度を50℃まで加熱後、24時間保持して、窒素ガスにて、希釈フッ素ガスを置換しながら降温した。これらの試験片のXPSでの測定値を示す。
Figure 2008169448
表5に示す試験例9の結果から、試験例1,2,3,4,5で作成した試験片の皮膜の厚さに変化は見られなかった。また、試験例6で作成した試験片に関しては生成された皮膜が薄いため、表層に存在しているフッ素と結合していない鉄原子が試験例8でのフッ素暴露によりフッ素が浸入し、反応が進んだ。なお、試験例7の試験片についてはフッ化不動態皮膜がないため、フッ素の浸入が他の試験例1,2,3,4,5の試験片よりも顕著に見られた。
(試験例10)
試験例1,2,3,4,5,6および7で作成した試験片を加圧式反応炉に装着して系内を真空引きし、その後5%Cl(窒素希釈)を大気圧まで加圧し、温度を50℃まで加熱後、24時間保持して、窒素ガスにて、希釈フッ素ガスを置換しながら降温した。これらの試験片のSEM−EDX(エネルギー分散型検出器)によって、10000倍での視野にて塩素原子の存在数を測定した。
Figure 2008169448
表6に示す試験例10の結果から、試験例2,3,4,5で作成した試験片の皮膜上に塩素原子が存在しなかった。試験例1で作成した試験片は表面のクラック部から塩素原子が深さ方向入り込み、皮膜下地の鉄元素と反応が進んだため、塩化鉄が生成した。また、試験例6で作成した試験片に関しては生成された皮膜が薄いため、表層に曝露されている塩素とフッ素と結合していない鉄原子に対して塩素暴露を行った試験例10で塩素が浸入し、反応が進んだ。
なお、試験例7の試験片についてはフッ化不動態皮膜がないため、塩素の浸入が他の試験例2,3,4,5の試験片よりも顕著に見られた。

Claims (21)

  1. 炭素鋼又は特殊鋼(但しステンレス鋼は除く)からなる基材をベーキングし、次いで、50℃以上150℃未満の温度においてフッ素化処理を行うことを特徴とするフッ化不動態膜の形成方法。
  2. 前記フッ素化処理の処理時間は30分〜3時間であることを特徴とする請求項1記載のフッ化不動態膜の形成方法。
  3. 前記フッ化処理の処理ガスは、フッ素単独またはフッ素を不活性ガスで希釈したガスであることを特徴とする請求項1又は2記載のフッ化不動態膜の形成方法。
  4. 前記フッ化処理を、鉄鋼基材の使用温度以上の温度で行うことを特徴とする請求項1ないし3のいずれか1項記載のフッ化不動態膜の形成方法。
  5. 前記ベーキングは100℃〜300℃の温度において、炉内を不活性ガスでパージしながら行うことを特徴とする請求項1ないし4のいずれか1項記載のフッ化不動態膜の形成方法。
  6. 前記ベーキング前に表面の酸化物を除去することを特徴とする請求項1ないし5のいずれか1項記載のフッ化不動態膜の形成方法。
  7. 前記鋼は、炭素含有率が0.02〜2.1%である請求項1ないし6のいずれか1項記載のフッ化不動態の形成方法。
  8. 前記鋼は、機械構造用炭素鋼であることを特徴とする請求項1ないし7のいずれか1項記載のフッ化不動態膜の形成方法。
  9. 前記鋼は、特殊用途鋼であることを特徴とする請求項1ないし7のいずれか1項記載のフッ化不動態膜の形成方法。
  10. 前記鋼は工具用炭素鋼であることを特徴とする請求項1ないし7のいずれか1項記載のフッ化不動態膜の形成方法。
  11. 前記フッ化処理前の前記鉄鋼基材は、球状炭化物が分布した表面組織を有することを特徴とする請求項1ないし10のいずれか1項記載のフッ化不動態膜の形成方法。
  12. 請求項1ないし11のいずれか1項記載のフッ化不動態膜の形成方法により形成したことを特徴とする鉄鋼材。
  13. 炭素鋼又は特殊鋼(但しステンレス鋼は除く)からなる基材表面の少なくとも一部に化学量論比を満足するフッ化第一鉄とフッ化第二鉄との混合層を主成分とする金属フッ化物からなる不動態皮膜が形成されていることを特徴とするフッ化不動態膜が形成された鉄鋼材。
  14. 前記鋼は、炭素含有率が0.04〜2.1%である請求項13記載の鉄鋼材。
  15. 前記鋼は球状炭化物が分布した表面組織を有すことを特徴とする請求項12ないし14のいずれか1項記載の鉄鋼材。
  16. 前記フッ化不動態膜の厚さは50Åを超える厚さである請求項12ないし15のいずれか1項記載の鉄鋼材。
  17. 摺動面を請求項12ないし16のいずれか1項記載の鉄鋼材の不動態膜により構成したことを特徴とする摺動部材。
  18. 前記摺動面は回転摺動面であることを特徴とする請求項17記載の摺動部材。
  19. 前記摺動面は腐食性ガスに晒される面であることを特徴とする請求項17又は18記載の摺動部材。
  20. 請求項17ないし19のいずれか1項記載の摺動部材を摺動部に用いたことを特徴とするとターボ分子ポンプ、軸受、ボールベアリングその他の回転部を有する回転装置。
  21. 前腐食性ガスはF,Cl,NF,ClF,CF,IF,IF、SF,SF,SiF,BF,HF,WF,MoF,PF,PF,AsF,AsFの中から選ばれる少なくとも1種類から構成されるハロゲン系ガス、もしくはSO,HS,NOの中から選ばれる少なくとも1種類から構成されるガスであることを特徴とする請求項19記載の摺動部材。
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