JP2008169060A - Iii族窒化物半導体微細柱状結晶の製造方法およびiii族窒化物構造体 - Google Patents

Iii族窒化物半導体微細柱状結晶の製造方法およびiii族窒化物構造体 Download PDF

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Abstract

【課題】 III族窒化物半導体からなる微細柱状結晶を選択的に成長させることにより、III族窒化物半導体微細柱状結晶の位置および形状を制御する。
【解決手段】 微細柱状結晶の製造方法が、基板表面の所定領域に、金属窒化物または金属酸化物からなる表面を有する膜を形成する工程と、前記基板表面に成長原料を導き、前記膜上の領域を微細柱状結晶の成長促進領域として、少なくとも前記微細柱状結晶の成長促進領域上にIII族窒化物半導体からなる微細柱状結晶を成長させる工程とを含む。
【選択図】図1

Description

本発明は、III族窒化物半導体微細柱状結晶の製造方法およびIII族窒化物構造体に関する。
近年、窒化ガリウム(GaN)等のIII族窒化物は、高品質短波長発光ダイオードおよびレーザーダイオードを実現できる素子として注目されている。このようなIII族窒化物構造を利用した電子デバイス等の実用化にあたっては解決すべき多くの問題がある。
半導体結晶の成長技術、例えばエピタキシャル技術、MOCVD(Metal Organic Chemical Vapor Deposition)技術等は、積層方向には制御性を有するが、通常、面内方向に構造を作るためには別の技術を用いて加工する必要がある。結晶加工技術は大別して、結晶成長後に結晶を加工するトップダウン型と、結晶成長前に基板を加工し、結晶成長と同時に構造が作製されるボトムアップ型がある。トップダウン型は加工により結晶にダメージが与えられ、特に微細な構造では表面積が多くなるために問題となる。一方、ボトムアップ型の作製法は構造の制御性と結晶品質が両方確保できる場合が多い。
窒化物半導体に関しては、ボトムアップ型の微細構造作製技術として酸化珪素などのマスクを用いる方法がある。基板にパターニングしたマスクの開口部分に選択的に結晶成長するこの方法は気相成長法では実用的に使われている手法であるが、分子線エピタキシー法(以下、MBEと略記する)においてはマスク上に多結晶が析出してしまう。
M.Yoshizawaらは、窒素源として高周波プラズマ励起の活性窒素を用いるMBEにおいて、窒素過剰下で窒化ガリウムを成長することによって、直径100nm程度の微細な柱状の窒化ガリウム結晶を自己組織的に形成する方法を見出した(非特許文献1参照)。
さらにH.Sekiguchiらは、サファイア基板上に薄膜窒化アルミニウムをバッファ層として成長する窒化ガリウム微細柱状結晶の直径、密度、および独立度が、バッファ層の表面モホロジーに大きく依存することを報告している(非特許文献2参照)。薄膜窒化アルミニウムバッファ層は凹凸を持った形状に成長する。そのモホロジーは膜厚に依存し、膜厚が薄いと小さなグレインが多数形成され、厚くなるとグレインサイズが大きくなる傾向がある。さらにこの上に成長した柱状の窒化ガリウム結晶は、窒化アルミニウムの膜厚が厚くなるほど径が小さく、互いに独立する傾向である。上記報告ではサファイア基板を用いているが、他の基板においても,バッファ層のモホロジーとその上に成長した柱状結晶の形状は大きく関連している。
H.Tangらは、結晶成長法にアンモニアを用いたMBE法を用いてSi(111)基板上に25nmの薄膜AlNを作製した後に、光露光技術を用いてレジストパターンを作製し、薄膜AlNを選択的にエッチングしてAlNのパターンを作製、さらにアンモニアMBE法を用いてGaNを結晶成長することにより、AlN上にGaNを選択成長し、AlNが除去された部分には成長しないことを実証した(非特許文献3参照)。アンモニアMBEにおいて、Si上に比べてAlN上はGaNの成長核形成温度が高いため、適切な温度で成長を行えばGaNの選択成長が実現できることが示されている。
T.MartenssonらはInP基板上にパターニングした粒子状Auを触媒として用い、VLSモード成長によって規則配列し、形状の制御されたInPナノワイヤーを作製している(非特許文献4参照)。
M.Yoshizawa,A.Kikuchi,M.Mori,N.Fujita,and K.Kishino,Jpn.J.Appl.Phys.Vol.36(1997),pp.L459−L462 H.Sekiguchi,T.Nakazato,A.Kikuchi,and K.Kishino,Journal of Crystal Growth H.Tang,S.Haffouz,and J.A.Bardwell,Applied Physics Letters 88.172110(2006) T.Martensson,P.Carlberg,M.Borgstrom,L.Montelius,W.Seifert,and L.Samuelson,Nano Letters 4,699(2004)
しかしながら、基板上の微細柱状結晶は自然核発生により成長されるため、基板表面上に不規則に配置される。また、微細柱状結晶の高さおよび間隔も不均一である。従って、従来の方法で製造される微細柱状結晶は形状にばらつきがあり、そのような形状のばらつきが窒化物半導体の性質のばらつきにつながっていると考えられる。
前述の非特許文献2の方法のように、バッファ層の成長条件や、GaN柱状結晶の成長条件によって柱状結晶の形成が可能であるという報告は多数ある。しかしながら、上記文献の方法を用いても、ばらつきの低減、および柱状結晶の直径や位置を任意に変化させるような高度な制御(例えば意図的に欠陥を導入したフォトニック結晶など)は困難であった。
また、薄膜窒化アルミニウムをバッファ層として成長したGaN結晶の形状がバッファ層の表面モホロジーに大きく依存することから、バッファ層のパターニングにより結晶の位置と形状を制御することが可能であることがわかっている。しかしながら、非特許文献3では、膜状のGaN結晶が成長しており、柱状結晶ではない。また、非特許文献3に示した方法では2回の結晶成長が必要であり、煩雑な方法である。
従って、III族窒化物半導体の微細柱状結晶のデバイス応用へ向けて、形状のばらつきを低減することが課題となっている。しかしながら、従来、窒化物半導体の微細柱状結晶を成長させる条件下で、結晶の位置や形状を簡易な方法により高度に制御することは困難であった。
本発明は、上記状況に鑑みてなされたものであり、III族窒化物半導体の微細柱状結晶を選択的に成長させることにより、位置および形状を制御する方法を提供するものである。
本発明者らは、III族窒化物半導体からなるナノメーターオーダーの微細柱状結晶(ナノコラムまたはナノピラーともいう)成長の位置および形状制御に関して鋭意検討し、結晶成長前工程として、金属窒化物または金属酸化物からなる表面を有する膜を基板上に形成することにより、微細柱状結晶の成長を高度に制御ができることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は、基板表面の所定領域に、金属窒化物または金属酸化物からなる表面を有する膜を形成する工程と、前記基板表面に成長原料を導き、前記膜上の領域を微細柱状結晶の成長促進領域として、少なくとも前記微細柱状結晶の成長促進領域上にIII族窒化物半導体からなる微細柱状結晶を成長させる工程と、を含む微細柱状結晶の製造方法に関するものである。
すなわち、予め基板上に金属窒化物または金属酸化物の薄膜パターンを形成し、該金属窒化物または金属酸化物膜上にIII族窒化物半導体からなる微細柱状結晶を選択的に成長させることにより、III族窒化物半導体微細柱状結晶の成長を制御することができる。金属窒化物または金属酸化物からなる表面上の領域は微細柱状結晶の成長促進領域としての役割を果たし、該領域上においては微細柱状結晶の成長が促進される。
また、本発明は、微細柱状結晶を成長させる前記工程において、前記微細柱状結晶の成長促進領域においてIII族窒化物半導体からなる第一の微細柱状結晶を成長させるとともに、前記微細柱状結晶の成長促進領域以外の領域において、III族窒化物半導体からなる前記第一の微細柱状結晶よりも高さの低い第二の微細柱状結晶を成長させる工程と、
を含む、微細柱状結晶の製造方法に関するものである。
さらに、本発明は、微細柱状結晶を成長させる前記工程において、前記微細柱状結晶の成長促進領域上のみにIII族窒化物半導体からなる微細柱状結晶を選択的に成長させる、微細柱状結晶の製造方法に関するものである。
微細柱状結晶の成長促進領域上では、該領域以外の基板表面上に成長させる微細柱状結晶よりも高い微細柱状結晶が成長する。あるいは、該成長促進領域以外の基板表面上では微細柱状結晶が成長せず、成長促進領域上にのみ選択的に微細柱状結晶が成長する。
さらに、本発明は、基板表面の所定領域に形成された金属窒化物または金属酸化物からなる表面を有する膜と、前記膜表面上に形成されたIII族窒化物半導体からなる第一の微細柱状結晶と、前記膜表面以外の領域上に形成されたIII族窒化物半導体からなる前記第一の微細柱状結晶よりも高さの低い第二の微細柱状結晶と、を含むIII族窒化物構造体に関するものである。
また、本発明は、基板表面の所定領域に形成された金属窒化物または金属酸化物からなる表面を有する膜と、前記膜表面上のみに選択的に形成されたIII族窒化物半導体からなる微細柱状結晶と、を含むIII族窒化物構造体に関するものである。
金属窒化物または金属酸化物からなる表面を有する膜上では、該膜上以外の領域と比較して、III族窒化物半導体からなる微細柱状結晶の成長が促進される。従って、金属窒化物または金属酸化物膜のパターン形成によるIII族窒化物半導体からなる微細柱状結晶の位置および形状の制御が実現される。
以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。
図2を参照して、本実施形態を説明する。
まず、シリコン基板表面の所定領域に、金属窒化物からなる表面を有する膜を形成する。金属窒化物からなる表面を有する膜の形成工程は、例えば、基板202上にフォトレジスト204をコーティングした後、リソグラフィ技術を用いて所定領域にパターンを形成する。
具体的には、まず、基板202表面にレジスト材料の溶液を塗布、乾燥してフォトレジスト膜204を形成する(図2(a))。本実施形態では、Si基板202として単結晶シリコンを用いる。このフォトレジスト膜204を露光、現像してパターニングし、所望の位置に溝206を形成する(図2(b))。溝の断面形状は、本実施形態では図2(b)に示すように溝底部に近づくにつれて幅が狭くなる逆テーパ状としているが、これに限られず、溝底部に近づくにつれて幅が広くなるテーパ状、溝の底面と側面が直角である矩形等であってもよい。次に、溝206を含む基板上全面に金属膜208を蒸着させる(図2(c))。金属膜208は溝206の側面には蒸着しない場合もある。
金属(Al)膜208形成後、フォトレジスト膜204を除去することにより、その上に形成されたAl膜208を同時に除去する(リフトオフ法)。これにより、基板表面の所定領域にAl膜208を形成する(図2(d))。リフトオフ条件によりAl膜縁の突起はないこともある。また、窒化温度をAl融点以上とすれば突起物は溶けてなくなる。次いで、このAl膜208の表面を窒化することにより、基板表面の所定領域に金属窒化物(AlN)からなる表面を有する膜(AlN膜)210が形成される(図2(e))。
金属膜を窒化する方法としては、例えば、金属膜208の設けられたSi基板202を高真空チェンバーに搬送後、該Si基板202を室温(25℃)〜1100℃程度に加熱し、基板表面に高周波プラズマ励起の活性窒素、またはアンモニアやヒドラジン等の含窒素化合物を照射して金属窒化物を形成することができる。
この時の基板温度は、上記の範囲内であれば特に限定されないが、好ましくは700℃以上、950℃以下であり、さらに好ましくは750℃以上、900℃以下である。
ここで、AlN膜210は、所定領域に所定のパターンで形成できる。所定のパターン形状は特に限定されないが、例えば、図3(a)に示すように、基板1上にドット形状の金属膜2を斜方格子状に配置したものである。その他のパターン形状としては、例えば、ドットを正方格子状に配置したもの(図(b))、ドット形状を円形のほか、四角、六角形等の多角形としたもの(図4および5)、縞状(図6)、または基板1の露出部分と金属膜2の配置を逆転させた、これらの反転パターン(図7)等が挙げられる。
また、ドットの直径、縞形状の幅等は特に限定されないが、ドットの平均直径または縞形状の幅は、例えば20nm以上とすることができる。
AlN膜210を形成した後、基板表面に、本実施形態ではIII族窒化物半導体として窒化ガリウム(GaN)からなる微細柱状結晶212を成長させる(図2(f))。ここで、AlN膜210が形成された領域とAlN膜210が形成されていない領域211とが存在するが、AlN膜210が形成された領域を微細柱状結晶の成長促進領域と呼ぶこととする。ただし、ここでいう成長促進領域とは、厳密にAlN膜210が形成された領域上に限られず、AlN膜210が形成された領域外の周縁部分も含む。従って、成長促進領域上に成長した微細柱状結晶は、AlN膜210が形成された領域上およびAlN膜210が形成された領域周縁のSi基板上に成長したもの、およびこれらの両方にまたがって成長したものを含む。微細柱状結晶の成長促進領域上に形成される微細柱状結晶の高さは、それ以外の領域において形成される微細柱状結晶の高さよりも高くなる。この理由としては、必ずしも明らかではないが、AlN膜210の表面において核成長レートが速くなる結果、この領域において微細柱状結晶の成長が促進されると推測される。
微細柱状結晶の成長は、本実施形態では、MBE法を用いる。基板表面に前述の高周波プラズマ励起の活性窒素とIII属金属を含む成長ガスを成長原料として同時に導き、細柱状結晶を成長させる。この際の成長条件は、III属金属に比べて活性窒素の実効的な供給量比を大きくし、柱状結晶が成長する条件とする。
柱状結晶を成長させるために、MBEは以下の条件で行うことが望ましい。温度は、成長させるIII族窒化物半導体の種類に応じて適宜選択されるが、350℃以上、1100℃以下の範囲である。例えば、GaNの場合は400℃以上、1000℃以下であり、AlNの場合は500℃以上、1100℃以下、およびInNの場合は350℃以上、600℃以下が好ましい。
上記の温度範囲で、窒素リッチの条件下でMBEを行うことにより、窒化物半導体の微細柱状結晶を成長させることができる。
本実施形態の方法によって成長するIII族窒化物半導体からなる微細柱状結晶は、ナノメーターオーダーの大きさからなる断面を有する柱状構造の単結晶であり、ナノコラムまたはナノピラーと称される場合もある。結晶の高さ、直径、形状等は結晶の成長条件により変動し得るが、通常は以下の通りとなる。
微細柱状結晶の成長促進領域以外の領域上で成長した微細柱状結晶の高さに対する、微細柱状結晶の成長促進領域上で成長した微細柱状結晶の高さ比は、微細柱状結晶の成長促進領域上で成長した微細柱状結晶の方が高ければよく、特に限定されないが、好ましくは1.05以上、2以下、より好ましくは1.3以上、2以下である。図1は、本実施形態の方法において作製されるGaN微細柱状結晶構造の概略図である。金属窒化物膜102の表面上に成長したIII族窒化物半導体からなる微細柱状結晶103は、それ以外の領域、すなわち基板101上に直接成長したIII族窒化物半導体からなる微細柱状結晶103よりも高さが高い。本実施形態において、微細柱状結晶の成長促進領域上の微細柱状結晶の核形成は、それ以外の領域上と比較して、速くなる。
従って、本実施形態では、予め基板上に薄膜金属窒化物パターンを作製しておき、それに続く窒化物半導体の微細柱状結晶成長プロセスにより、形成される微細柱状結晶の位置と形状を制御することができる。
また、金属窒化物膜近傍、例えば金属窒化物膜から数100nm付近の微細柱状結晶の成長促進領域以外の領域では、特に微細柱状結晶の成長レートが遅くなる。さらに、金属窒化物膜から約100nm以内と近接している成長促進領域以外の領域では、微細柱状結晶が析出しないことが確認されている。金属窒化物膜以外の基板表面ではマイグレーションにより、金属窒化物膜へ材料が吸着することが確認されている。
微細柱状結晶の成長促進領域上で成長した微細柱状結晶の高さは、金属窒化膜の厚さ、結晶の成長条件等によっても変動し得るが、0.2μm以上、5μm以下である。
微細柱状結晶の断面形状は略円形あるいはいくつかの略円形の柱状結晶が結合した形状であり、微細柱状結晶の直径は、結晶の成長条件等によっても変動し得るが、10nm以上、300nm以下である。
本実施形態の微細柱状結晶は、基板表面に対して略垂直方向に起立して成長する。成長条件によっては一部、傾斜、倒れたものや、枝分かれ状の結晶が生じる場合もある。
特に、金属窒化物上およびその近傍の微細柱状結晶の形状は、金属窒化物の膜厚等に依存して変化し得る。図9に示すように、例えば、金属窒化物として窒化アルミニウム(AlN)を用いた場合、Al膜厚が約16nm以下の場合、AlNパターン内側には直立した柱状結晶が成長した。また、同様の条件で、膜厚を約18nm以上とした場合、AlNのパターン内側には傾斜した柱状結晶が成長し、パターン周辺端部には直立した柱状結晶が成長した。さらに、Al膜厚が薄いと、微細柱状結晶の高さの差があまり見られず、結晶パターンが薄くなる傾向にあった。ただし、上記の数値は例示であり、微細柱状結晶の形状は、Al膜厚のほか、基板または窒化方法等の条件も複雑に関連して変動し得る。
金属膜厚の違いにより結晶の成長にも違いが生じる原因としては、必ずしも明らかではないが、以下のように推測できる。金属膜厚が厚すぎる場合、窒化工程において十分に金属が窒化されない可能性がある。金属の十分な窒化がなされない場合、基板からの結晶情報が成長する窒化物半導体結晶に引き継がれにくいため、柱状結晶が傾いて成長する場合があると考えられる。一方、金属膜厚が薄すぎる場合、表面の金属膜が途中工程において一部離脱してしまう可能性が考えられる。
微細柱状結晶の成長促進領域において成長する微細柱状結晶の分布密度は、特に限定されないが、例えば、10本/μm以上、100本/μm以下である。また、微細柱状結晶の成長促進領域以外の領域において成長する微細柱状結晶の分布密度は、例えば、0本/μm以上、100本/μm以下である。
微細柱状結晶の成長促進領域において成長する微細柱状結晶の分布密度は、微細柱状結晶の成長促進領域以外の領域において成長する微細柱状結晶の分布密度よりも、高くなる傾向にある。
前述の非特許文献3による、成長した薄膜AlNをパターニングすることによってGaN結晶の選択成長を実現する方法は、2回の結晶成長が必要になるのに対し、本発明では結晶成長が1回で済み、簡便な手法といえる。
また、本実施形態では、プロセスも金属のパターニングという確立された技術を用いている。上記金属窒化物からなる表面を有する膜を形成する工程は、比較的安価な手法である光リソグラフィやナノメートルオーダーの精度が得られる電子ビームリソグラフィといった様々な方法から選択して行うことができる。
以上、図面を参照して本発明の実施形態について述べたが、これらは本発明の例示であり、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内で上記以外の様々な構成を採用することもできる。
たとえば、上記実施形態では、GaNからなる微細柱状結晶を例に挙げて説明したが、微細柱状結晶の構成材料としては、GaN以外のIII族窒化物半導体、例えば、AlN、InN、AlGaN、InGaN、AlInGaN等の一般式AlGaIn1−x−yN(0≦x≦1、0≦y≦1、かつ0≦x+y≦1)で表される窒化物半導体や、BN等のボロン窒化物等を用いることができる。
また、上記実施形態では、基板の材料として、単結晶シリコンを用いたが、これに限られず、SiC、SiO、Si、GaN、サファイア基板等を用いることができる
また、上記実施形態では、基板上にAl膜形成後、表面を窒化することで、表面がAlNで構成された膜を形成したが、金属窒化物膜の形成方法として、金属膜の代わりに金属窒化物を直接基板上にスパッタリング法等により形成してもよい。この場合、窒化工程を省略することができる。
また、上記金属窒化膜の構成は、AlNに限られず、アルミニウム、ガリウム、インジウムなどのIII族金属または亜鉛などのII族金属の窒化物または酸化物から構成されるものを用いてもよい。例えば、アルミニウム、ガリウム、インジウムなどの窒化物、または亜鉛の酸化物が挙げられる。さらに、窒化物は酸窒化物も含む。
ここで、金属はシリコンを含まないものとする。
金属酸化物からなる表面を有する膜の形成方法としては、例えば、上述の実施形態と同様に金属膜を基板上に形成した後、該基板を酸素雰囲気中、加熱することにより該金属膜の少なくとも表面を酸化させ、金属酸化物からなる表面を有する膜を形成することができる。
または、金属膜の代わりに金属酸化物を直接基板上にスパッタリング法等により形成してもよい。この場合、酸化工程を省略することができる。
微細柱状結晶の成長方法については、上記実施形態ではMBEを用いた例を示したが、有機金属化学気相蒸着法(MOCVD)、有機金属気相エピタキシー(MOVPE)法、またはハイドライド気相エピタキシー(HVPE)法を用いてもよい。
金属膜の表面が窒化された膜または酸化された膜が微細柱状結晶の成長を促進する理由については必ずしも明らかではないが、窒化または酸化により、金属膜表面が適度に荒れることにより、核形成のサイト密度が増えることが考えられる。その結果、窒化物または酸化物からなる表面上では柱状結晶の核形成レートが速くなり、それにより微細柱状結晶の成長が促進されることが考えられる。
上記実施形態では、金属窒化物膜または金属酸化物からなる表面を有する膜上の領域を微細柱状結晶の成長促進領域として、該成長促進領域上にIII族窒化物半導体からなる微細柱状結晶を成長させるとともに、該成長促進領域以外の領域に、該成長促進領域上に成長した微細柱状結晶よりも高さの低い微細柱状結晶を成長させる微細柱状結晶の成長方法について説明した。しかしながら、成長促進領域以外の領域において、微細柱状結晶は必ずしも成長していなくてもよい。
すなわち、金属窒化物または金属酸化物からなる表面を有する膜においては、III族窒化物半導体の微細柱状結晶の核形成レートが速くなり、位置および形状の制御された微細柱状結晶が成長するが、それ以外の領域ではこのような効果は生じない。従って、微細柱状結晶の成長促進領域以外の領域においては、微細柱状結晶が生じない場合も考えられる。例えば、基板温度を一定温度以上(例えば、965℃以上)とした場合、シリコン表面に結晶が析出せず、金属窒化物膜または金属酸化物膜のみに微細柱状結晶が形成する。上記のような条件で窒化物半導体の微細柱状結晶の成長を行った場合、金属窒化物膜または金属酸化物膜を有する表面以外の領域においては、微細柱状結晶が成長しない傾向にある。
また、基板としてサファイア基板などを用いた場合、サファイア表面には窒化物半導体の結晶自体が成長しない場合と、柱状結晶の代わりに膜状の結晶成長が生じる場合がある。この場合、微細柱状結晶の成長促進領域上にのみ、選択的にIII族窒化物半導体からなる微細柱状結晶が成長し、微細柱状結晶の成長促進領域以外の領域においては微細柱状結晶は成長しないことになる。
以下、本発明の実施例についてさらに詳細に説明する。
(実施例1)
Si(111)基板上に光リソグラフィを用いて薄膜のAlパターンを形成した。直径2.8μmの円形Al薄膜が周期4μmで正方格子状に並んだパターンである。これを超高真空チェンバーに搬送後、基板温度860℃にて、高周波プラズマ励起の活性窒素を照射して窒化アルミニウム(AlN)を形成した。さらに基板温度960℃にて前述の高周波プラズマ励起の活性窒素とガリウムを同時に照射し、窒化ガリウム(GaN)の微細柱状結晶を形成した。この際の成長条件はガリウムに比べて活性窒素の実効的な供給量比を大きくし、柱状結晶が成長する条件とした。
図8に、本実施例により形成したミクロンオーダーのAl(膜厚22.5nm)パターン上への窒化ガリウムの微細柱状結晶成長を示す。Al膜厚が18nmから31nmでは同様の結果が得られた。図8において、(a)薄膜AlパターンのAFM像、(b)成長後GaN微細柱状結晶の鳥瞰SEM像、(c)成長後GaN微細柱状結晶の断面模式図、および(d)成長後GaN微細柱状結晶の断面SEM像である。Si基板801上に形成されたAlN膜802上に成長したGaN微細柱状結晶803は、AlN膜802の表面以外の領域において成長したものと比較して、高さが高くなっていることがわかる(図8(b)〜(d))。具体的には、AlN薄膜上に成長した柱状結晶の高さは平均約1200nmであり、AlN薄膜上以外に成長した柱状結晶の高さは平均約810nmであった。従って、AlN薄膜上に成長した柱状結晶の高さの比は、該膜上以外に成長した柱状結晶に対して、平均約1.48であった。
(実施例2)
Al膜の厚さを7.7nmに変えた以外は、実施例1と同様の方法によりGaNの微細柱状結晶を形成した。図9(a)に成長したGaN微細柱状結晶の表面SEM像を示す。AlN膜上の柱状結晶は直立しており、その周辺の柱状結晶は若干傾いている。
AlN薄膜上に成長した柱状結晶の高さは平均約1190nmあり、AlN薄膜上以外に成長した柱状結晶の高さは平均約790nmであった。従って、AlN薄膜上に成長した柱状結晶の高さの比は、該膜上以外に成長した柱状結晶に対して、平均約1.51であった。柱状結晶の密度は43本/μmで、平均直径は111nmであった。
(実施例3)
Al膜の厚さを15.5nmに変えた以外は、実施例1と同様の方法によりGaNの微細柱状結晶を形成した。図9(b)に成長したGaN微細柱状結晶の表面SEM像を示す。AlN膜上の柱状結晶は直立しており、その周辺の柱状結晶は傾いている。
AlN薄膜上に成長した柱状結晶の高さは平均約1090nmであり、AlN薄膜上以外に成長した柱状結晶の高さは平均約750nmであった。従って、AlN薄膜上に成長した柱状結晶の高さの比は、該膜上以外に成長した柱状結晶に対して、平均約1.45であった。柱状結晶の密度は61本/μmで、平均直径は88nmであった。実施例2に比べて柱状結晶同士が独立した形状となった。
ここで、図9(c)は実施例1において形成した微細柱状結晶を上から見たものであるが、実施例2および3とは対照的に、AlN膜内側の柱状結晶は傾斜しているのに対し、その円周上の柱状結晶は直立している。これらは、AlN薄膜パターンの周縁に沿って、AlN薄膜上およびAlN薄膜近傍のSi基板上に成長していた。このことはAlNパターンの縁に沿って柱状結晶を配列できることを示しており、パターンによって規則配列ができることを示唆している。
(実施例4)
Si(111)基板上に電子ビームリソグラフィを用いて薄膜のアルミニウムパターンを形成し、実施例1と同様の方法でGaNの成長を行った。アルミニウムのパターンは、周期300nmの三角格子状に直径約100nm、膜厚約20nmの円形ディスク状薄膜アルミニウムが並んだパターンであった。
AlN薄膜上に成長した柱状結晶の高さは平均約1600nmであり、AlN薄膜上以外に成長した柱状結晶の高さは平均約1500nmであった。また、AlN薄膜上に成長した柱状結晶の高さの比は、該膜上以外に成長した柱状結晶に対して、平均約1.07であった。
本実施例で成長させた微細柱状結晶の中には、AlN薄膜パターンの縁に沿って結晶が形成されてチューブ状となった微細柱状結晶も確認された。チューブ状の微細柱状結晶、もしくは不完全なチューブ形状の微細柱状結晶はAlN薄膜パターンの配列に従って、すなわち周縁に沿って、AlN薄膜パターンを取り囲むように壁状の微細柱状結晶が形成されていた。また、これらは、AlN薄膜パターンの周縁に沿って、AlN薄膜上およびAlN薄膜近傍のSi基板上に成長していた。
本発明は、電子デバイスおよび光デバイスの分野において応用可能である。また、バイオチップ等の技術への応用も考えられる。
AlNバッファ上に結晶成長したGaN微細柱状結晶の構造の概略を示す断面図である。 薄膜Alパターン基板上GaN微細柱状結晶の成長プロセスの概略を示す断面図である。 (a)円形ドット形状の金属膜が斜方格子状に配置されたパターンを示す平面図である。(b)円形ドット形状の金属膜が正方格子状に配置されたパターンを示す平面図である。 四角形ドット形状の金属膜が正方格子状に配置されたパターンを示す平面図である。 六角形ドット形状の金属膜が斜方格子状に配置されたパターンを示す平面図である。 縞状に金属膜が配置されたパターンを示す平面図である。 図3(a)の反転パターンで配置された金属膜を示す平面図である。 光露光により形成したミクロンオーダーのAl(膜厚25nm)パターン上へのGaN微細柱状結晶成長を示す図である。(a)薄膜AlパターンのAFM像、(b)成長後GaN微細柱状結晶の鳥瞰SEM像、(c)成長後GaN微細柱状結晶の断面模式図、および(d)成長後GaN微細柱状結晶の断面SEM像である。 光露光により形成したミクロンオーダーのAl(膜厚t)パターン上へ結晶成長したGaN微細柱状結晶の表面SEM像である。
符号の説明
1 基板
2 金属窒化物膜
101 基板
102 金属窒化物膜
103 III族窒化物半導体微細柱状結晶
202 Si基板
204 フォトレジスト
206 溝
208 金属膜
210 AlN膜
211 微細柱状結晶の成長抑制領域
212 GaN微細柱状結晶
301 基板
302 金属パターン
801 Si基板
802 AlN
803 GaN微細柱状結晶

Claims (19)

  1. 基板表面の所定領域に、金属窒化物または金属酸化物からなる表面を有する膜を形成する工程と、
    前記基板表面に成長原料を導き、前記膜上の領域を微細柱状結晶の成長促進領域として、少なくとも前記微細柱状結晶の成長促進領域上にIII族窒化物半導体からなる微細柱状結晶を成長させる工程と、
    を含む微細柱状結晶の製造方法。
  2. 微細柱状結晶を成長させる前記工程において、前記微細柱状結晶の成長促進領域においてIII族窒化物半導体からなる第一の微細柱状結晶を成長させるとともに、前記微細柱状結晶の成長促進領域以外の領域において、III族窒化物半導体からなる前記第一の微細柱状結晶よりも高さの低い第二の微細柱状結晶を成長させる工程と、
    を含む、請求項1に記載の微細柱状結晶の製造方法。
  3. 微細柱状結晶を成長させる前記工程において、前記微細柱状結晶の成長促進領域上のみにIII族窒化物半導体からなる微細柱状結晶を選択的に成長させる、請求項1に記載の微細柱状結晶の製造方法。
  4. 金属窒化物または金属酸化物からなる表面を有する膜を形成する前記工程は、
    基板表面の所定領域に金属膜を形成する工程と、
    前記金属膜の少なくとも表面を窒化または酸化する工程と
    を含む、請求項1乃至3のいずれかに記載の微細柱状結晶の製造方法。
  5. 前記微細柱状結晶が単結晶である、請求項1乃至4のいずれかに記載の微細柱状結晶の製造方法。
  6. 微細柱状結晶を成長させる前記工程において、分子線エピタキシー法(MBE)によりIII族窒化物半導体からなる微細柱状結晶を形成する、請求項1乃至5のいずれかに記載の微細柱状結晶の製造方法。
  7. 微細柱状結晶を成長させる前記工程において、分子線エピタキシー法による微細柱状結晶の成長温度を350℃以上、1100℃以下とする、請求項6に記載の微細柱状結晶の製造方法。
  8. 微細柱状結晶を成長させる前記工程において、窒素源として高周波プラズマ励起した活性窒素を用いる、請求項1乃至7のいずれかに記載の微細柱状結晶の製造方法。
  9. 金属膜の少なくとも表面を窒化する前記工程において、窒素源として高周波プラズマ励起した活性窒素を用いる、請求項4乃至8のいずれかに記載の微細柱状結晶の製造方法。
  10. 前記金属窒化物または金属酸化物からなる表面を有する膜における金属がIII族金属またはII族金属である、請求項1乃至9のいずれかに記載の微細柱状結晶の製造方法。
  11. 前記金属がアルミニウム、ガリウム、インジウム、および亜鉛からなる群より選択されるいずれかである、請求項10に記載の微細柱状結晶の製造方法。
  12. 前記金属がアルミニウムである、請求項10に記載の微細柱状結晶の製造方法。
  13. 前記III族窒化物半導体がAlGaIn1−x−yN(0≦x≦1、0≦y≦1、かつ0≦x+y≦1)の一般式で表される、請求項1乃至12のいずれかに記載の微細柱状結晶の製造方法。
  14. 前記III族窒化物半導体が窒化ガリウムである、請求項13に記載の微細柱状結晶の製造方法。
  15. 金属窒化物または金属酸化物からなる表面を有する膜を形成する前記工程において、ドット形状の前記金属窒化物または金属酸化物からなる表面を有する膜を所定のパターンで形成する、請求項1乃至14のいずれかに記載の微細柱状結晶の製造方法。
  16. 前記ドット形状の金属窒化物または金属酸化物からなる表面を有する膜の平均直径が20nm以上である、請求項15に記載の微細柱状結晶の製造方法。
  17. 請求項1乃至16のいずれかに記載の方法により製造した微細柱状結晶を含むIII族窒化物構造体。
  18. 基板表面の所定領域に形成された金属窒化物または金属酸化物からなる表面を有する膜と、
    前記膜表面上に形成されたIII族窒化物半導体からなる第一の微細柱状結晶と、
    前記膜表面以外の領域上に形成されたIII族窒化物半導体からなる前記第一の微細柱状結晶よりも高さの低い第二の微細柱状結晶と、
    を含むIII族窒化物構造体。
  19. 基板表面の所定領域に形成された金属窒化物または金属酸化物からなる表面を有する膜と、
    前記膜表面上のみに選択的に形成されたIII族窒化物半導体からなる微細柱状結晶と、
    を含むIII族窒化物構造体。
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