JP2008164500A - ヘモグロビン類の測定方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】電気泳動法を用いてヘモグロビン類を測定する方法であって、内面が親水性ポリマーでコーティングされ、かつ、内部にイオン交換体を充填された泳動路を用いるヘモグロビン類の測定方法。
【選択図】なし
Description
従来、HbA1cの測定方法としては、HPLC法、免疫法、電気泳動法等が用いられている。このうち、臨床検査分野で多く用いられているHPLC法では、1試料当たり1〜2分での測定が可能であり、また、同時再現性試験のCV値が1.0%程度の測定精度が実現されている。糖尿病患者の血糖管理状態を把握するための測定方法としては、このレベルの性能が必要とされている。
電気泳動法によるHb類の測定は、通常とは異なるアミノ酸配列を有する異常Hb類の分離方法として古くから用いられているが、HbA1cの分離は非常に困難であり、ゲル電気泳動の手法では30分以上の時間が必要であった。このように電気泳動法は、臨床検査分野に応用した場合、測定時間及び測定精度の点で問題があるため、現在では糖尿病診断への応用はほとんど行われていなかった。
しかしながら、特許文献1に開示された方法を用いた場合、測定時間が長いという問題点は解消されず、加えて、使用する緩衝液のpHが9〜12と高く、Hbが変性してしまう可能性があることから、この方法を臨床検査に適用することは困難であった。
しかしながら、特許文献3に開示された電気クロマトグラフィーによる方法では、ヘモグロビン類のような蛋白質類が泳動路に非特異吸着するため、ヘモグロビン類の各成分を分離することは困難であった。特に、短時間内に高精度な分離能が要求されるヘモグロビン類の測定においては、特許文献3をはじめとした電気クロマトグラフィーに関する開示技術の条件設定範囲では、安定型HbA1cを分離することは困難であり、糖尿病患者の血糖値を管理できるレベルの分離性能及び測定精度が得られていなかった。
以下に本発明を詳述する。
本発明のヘモグロビン類の測定方法では、泳動路であるキャピラリー14の内部にイオン交換体が充填されている。
そして、ヘモグロビン類を測定する際には、キャピラリー14の一方より試料を注入して、高圧電源15から所定の電圧を印加することにより、キャピラリー14内を移動する目的成分を検出器16によって測定する。
このような泳動路を用いることによって、ヘモグロビン類、特に従来分離することが困難であった安定型HbA1cを短時間に高精度で測定することが可能となる。
上記泳動路の内面とは、具体的には、例えば、キャピラリー電気泳動法の場合は、キャピラリーの泳動路内面のことをいい、マイクロチップ型電気泳動法の場合は、マイクロチップ型電気泳動装置におけるマイクロチップ溝の泳動路内面のことをいう。
上記泳動路内面に形成されるコーティング層は、単層であってもよく、同一又は異なる材料からなる多層であってもよい。
本明細書において、親水性ポリマーとは親水性の官能基を有するポリマーをいう。
上記親水性ポリマーの重量平均分子量の好ましい下限は500である。500未満であると、泳動路の内面を充分に被覆することが困難となり、ヘモグロビン類の分離性能が不充分となることがある。
上記親水性ポリマー溶液の濃度としては、好ましい下限が0.01%、好ましい上限が20%である。0.01%未満であると、固定化が不充分となることがある。20%を超えると、上記親水性ポリマーからなる層を均一に形成することができず、ヘモグロビン類の測定途中に剥離し、再現性低下の原因となることがある。
試料中のヘモグロビン類は、イオン交換体が充填された泳動路に導入された後、電気泳動によって移動しながら該イオン交換体と接触することによって、各成分に分離される。そのため、分離された各成分を検出器によって検出することが可能となる。
上記イオン交換性の官能基としては特に限定されず、例えば、カルボキシル基、リン酸基、スルホン酸基等のカチオン交換基;アミノ基等のアニオン交換基が挙げられる。
これらのイオン交換体は、電気泳動時に不溶性の粒子であればよく、架橋体であってもよく、非架橋体であってもよい。
これらのイオン交換体は、上記イオン交換性の官能基を有するモノマーを重合することによって得られた高分子であってもよく、高分子を調製した後、上記イオン交換性の官能基を導入したものであってもよい。
本発明のヘモグロビン類の測定方法では、血液を試料とするため、試料中の成分の上記イオン交換体への非特異吸着を抑制する必要があることから、これらのイオン交換体は、親水性を有することが好ましい。具体的には例えば、親水性素材からなるイオン交換体、又は、親水化処理を施した多糖類、有機合成高分子、シリカ等からなるイオン交換体が好ましく、親水性の有機合成高分子がより好ましい。
上記イオン交換性を有する多糖類と、デンプン、デキストラン、アガロース、マンナン等の中性多糖類とを混合物や結合物として用いてもよい。
より好ましい下限は1μm、より好ましい上限は20μmである。
上記緩衝液としては、緩衝能を有する従来公知の緩衝液組成物を含有する溶液であれば特に限定されず、例えば、クエン酸、コハク酸、酒石酸、リンゴ酸等の有機酸、及び、その塩類等を含有する溶液等;グリシン、タウリン、アルギニン等のアミノ酸類;塩酸、硝酸、硫酸、リン酸、ホウ酸、酢酸等の無機酸、及び、その塩類等を含有する溶液等が挙げられる。
上記緩衝液には、カオトロピック化合物、界面活性剤、各種ポリマー、親水性の低分子化合物等、一般的に用いられる添加剤を適宜添加してもよい。
具体的には例えば、(メタ)アクリル酸、2−(メタ)アクリロイロキシエチルコハク酸等のカルボキシル基を有するモノマーを重合して得られるアクリル系ポリマー、((メタ)アクリロイルオキシエチル)アシッドホスフェート、(2−(メタ)アクリロイルオキシエチル)アシッドホスフェート、(3−(メタ)アクリロイルオキシプロピル)アシッドホスフェート等のリン酸基を有するモノマーを重合して得られるアクリル系ポリマー、2−(メタ)アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、(メタ)アクリルアミドプロパンスルホン酸、スルホプロピル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリロイルオキシナフタレンスルホン酸等のスルホン酸基を有するモノマーを重合して得られるアクリル系ポリマー等が挙げられる。
上記アニオン性基を有しない(メタ)アクリルモノマーとしては、上記アニオン性基を有する(メタ)アクリルモノマーと共重合が可能な(メタ)アクリルモノマーであれば特に限定されないが、例えば、非イオン性の親水性である(メタ)アクリル酸エステル類であることが好ましい。具体的には、例えば、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、グリセロール(メタ)アクリレート;グリシジル(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコール(メタ)アクリレート等が挙げられる。
(1)イオン交換体の調製
3%のポリビニルアルコール水溶液2.0Lに、トリエチレングリコールジメタクリレート(非イオン性モノマー:新中村化学社製)300g、ジエチルアミノエチルメタクリレート(アミノ基を有するモノマー:和光純薬社製)100g、及び、過酸化ベンゾイル(重合開始剤:ナカライテスク社製)1.0gの混合物を添加して、攪拌しながら、窒素雰囲気下で80℃に昇温して、12時間重合を行った。得られた重合物を洗浄して回収し、アミノ基を有するイオン交換体を得た。
フューズドシリカキャピラリー(内径100μm×全長300mm:GLサイエンス製)を0.2N−NaOH、イオン交換水、0.5N−HClの順で通液してキャピラリー内を洗浄した後、0.5%ポリメタクリル酸水溶液(親水性ポリマー)を20分間通液した。その後、空気をキャピラリー内に注入してポリビニルアルコー水溶液を追い出した後、40℃の乾燥機内で12時間乾燥させた。その後、再び、ポリビニルアルコール水溶液の注入、空気の注入、及び、乾燥からなる一連の工程を5回繰り返して、内部にポリメタクリル酸をコーティングしたキャピラリーを得た。得られたキャピラリーに、上述の(1)イオン交換体の調製で得られたアミノ基を有するイオン交換体を充填したうえで、キャピラリー電気泳動装置(Beckman Coulter社製 PAC/E MDQ)にセットした。
試料として健常人血よりヘパリン採血した血液を用い、該健常人全血70μLに0.05%のTriton X−100(界面活性剤:和光純薬社製)を含むクエン酸緩衝液(pH6.2)200μLを添加して溶血希釈したものを用いた。
キャピラリー及び該キャピラリー両端の電極槽に、リン酸緩衝液(pH7.6)を満たし、キャピラリーの一方より試料を注入し、キャピラリーの両端の緩衝液に20kVの電圧をかけて電気泳動を行い、415nmの可視光における吸光度変化を測定することにより、健常人血中の安定型HbA1cのキャピラリー電気泳動法による測定を行った。
図2は、健常人血の測定によって得られたエレクトロフェログラムを示す模式図である。図2中、ピーク1は安定型HbA1c、ピーク2はHbA0を示す。なお、安定型HbA1cの分離は、約60秒の電気泳動時間で行うことができた。
ヘパリン採血した健常人全血に、グルコースを2500mg/dLとなるように添加し、修飾Hbの一種である不安定型HbA1cを多量に含む試料を人為的に調製した。
キャピラリーの一方から試料を注入し、上述の(3)健常人血の測定と同様の条件を用いて修飾Hb含有試料中の安定型HbA1cのキャピラリー電気泳動法による測定を行った。
図3は、修飾Hbを含む試料の測定によって得られたエレクトロフェログラムを示す模式図である。
図3中、ピーク1は安定型HbA1c、ピーク2はHbA0、ピーク3は修飾Hb(不安定型HbA1c)を示す。図3に示すように、安定型HbA1cと修飾Hbである不安定型HbA1cとが良好に分離された。
(1)イオン交換体の調製
4%ポリビニルアルコール水溶液2.0Lに、テトラエチレングリコールジメタクリレート(非イオン性モノマー:新中村化学社製)300g、テトラメチロールエタントリアクリレート50g(非イオン性モノマー:新中村化学社製)、及び、過酸化ベンゾイル1.0gの混合物を添加し、攪拌しながら、窒素雰囲気下で80℃に昇温して1時間重合を行った。この重合系に、50%の2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸(スルホン酸基を有するモノマー:東亞合成化学社製)水溶液200mLを添加し、更に2時間重合を行った。得られた重合物を洗浄して回収し、スルホン酸基を有するイオン交換体を得た。
キトサン(キトサン−100:和光純薬社製)を0.5重量%含有する0.5N塩酸溶液を用いた以外は、実施例1と同様の方法によって、泳動路のコーティングを行った。得られた内面コーティングキャピラリーに、上述の(1)イオン交換体の調製で得られたスルホン酸基を有するイオン交換体を充填したうえで、キャピラリー電気泳動装置(Beckman Coulter社製 PAC/E MDQ)にセットした。
緩衝液としてクエン酸緩衝液(pH4.7)を用いた以外は、実施例1と同様の方法によって、健常人血の測定及び修飾Hbを含む試料の測定を行った。
図4は、健常人血の測定によって得られたエレクトロフェログラムを示す模式図である。図4中、ピーク1は安定型HbA1c、ピーク2はHbA0を示す。
図5は、修飾Hbを含む試料の測定によって得られたエレクトロフェログラムを示す模式図である。
図5中、ピーク1は安定型HbA1c、ピーク2はHbA0、ピーク3は修飾Hb(不安定型HbA1c)を示す。図5に示すように、安定型HbA1cと修飾Hbである不安定型HbA1cとが良好に分離された。
(1)イオン交換体の調製
4%ポリビニルアルコール水溶液2.0Lに、テトラエチレングリコールジメタクリレート(非イオン性モノマー:新中村化学社製)300g、2−ヒドロキシメチルメタクリレート50g(非イオン性モノマー:新中村化学社製)、ジエチルアミノエチルメタクリレート(アミノ基を有するモノマー:和光純薬社製)100g及び過酸化ベンゾイル1.0gの混合物を添加し、攪拌しながら、窒素雰囲気下で80℃に昇温して10時間重合を行った。得られた重合物を洗浄して回収し、アミノ基を有するイオン交換体を得た。
ポリジメチルシロキサンからなる電気泳動用マイクロチップ(50mm×100mm)に、クロス十字型の溝を形成することによって、幅100μm×長さ70mmの泳動路とした。形成した泳動路内に、実施例2と同様の方法によって、キトサン溶液によるコーティングを行い、更に、上述の(1)イオン交換体の調製で得られたアミノ基を有するイオン交換体を充填した。
緩衝液として2.0重量%のコンドロイチン硫酸を含むクエン酸緩衝液(pH4.7)を用い、1000Vの電圧で電気泳動を行った以外は、実施例1と同様の方法によって、健常人血の測定及び修飾Hbを含む試料の測定を行った。
健常人血の測定では、図4と同様のエレクトロフェログラムが得られた。修飾Hbを含む試料の測定では、図5と同様のエレクトロフェログラムが得られた。
フューズドシリカからなるキャピラリー(GLサイエンス社製:内径25μm×全長30cm)に、0.2N−NaOH、イオン交換水、0.5N−HClを、この順で通液してキャピラリー内部を洗浄した後、BSA(カチオン性ポリマー:牛血清アルブミン:和光純薬社製)の0.5重量%を含むリンゴ酸緩衝液を1分間通液することによって、キャピラリー内面を動的にコーティングした。引き続き、キャピラリー内に充填剤を充填することなく0.2重量%のコンドロイチン硫酸(和光純薬社製:アニオン性基を有するポリマー)を含有するリンゴ酸緩衝液(pH4.7)を上述のキャピラリーの両端にセットし、キャピラリー内部に満たした後、実施例1と同様の方法によって、修飾Hbを含む試料の測定を行った。
図6中、ピーク1は安定型HbA1c、ピーク2はHbA0、ピーク3は修飾Hb(不安定型HbA1c)を示す。図7に示すように、安定型HbA1cを示すピーク1は修飾Hbを示すピーク3に重なっている。
実施例1〜3及び比較例1で得られた試料について、以下の評価を行った。
実施例1〜3及び比較例1について、健常人血試料と、該健常人血試料と同一の健常人血を元に調製した修飾Hb含有試料、すなわち、実施例1(4)修飾Hbを含む試料の測定において調製した健常人血にグルコースを2000mg/dLとなるように添加して得られた不安定型HbA1c含有試料と、更に、他の修飾Hb含有試料、すなわち、健常人血にアセトアルデヒドを50mg/dLとなるように添加して得られたアセチル化Hb含有試料と、シアン酸ナトリウムを50mg/dLとなるように添加して得られたカルバミル化Hb含有試料とを調製し、各試料における安定型HbA1c値を求めた。
なお、各試料の安定型HbA1c値は、全ヘモグロビンピークの面積に対する安定型HbA1cピークの面積の比率(%)を求めることにより算出した。
得られた修飾Hb含有試料の安定型HbA1c値から、得られた健常人血試料の安定型HbA1c値を差し引いた値を求めた。
結果を表1に示した。
実施例1〜3及び比較例1の測定条件を用いて、健常人血試料の同一試料を10回連続して得られた安定型HbA1c値のCV値を算出した。
なお、CV値は(標準偏差/平均値)を算出することにより求めた。
また、比較例1では、1回の測定が終了した時点で、0.2N−NaOH、イオン交換水、0.5N−HClを、この順で通液してキャピラリー内部を洗浄した後、BSA(カチオン性ポリマー:牛血清アルブミン:和光純薬社製)の0.5重量%リンゴ酸緩衝液を1分間送液して動的コーティングを施した後、次試料を測定することによって、測定を繰り返し行うことによって同時再現性試験を行った。
結果を表2に示した。
実施例1〜3及び比較例2の測定条件を用いて、健常人血試料の同一試料を100回連続して測定して得られた安定型HbA1c値の最大値と最小値との差(R値)を算出した。
結果を表2に示した。
一方、比較例2については、同時再現性試験におけるCV値が3%以上と大きく、また、耐久性試験時のバラツキ幅も最大1.2%程度であり、糖尿病患者のHbA1c値を管理するうえで全く不充分な値となっていた。
2 HbA0のピーク
3 修飾Hb(不安定型HbA1c)のピーク
Claims (2)
- 電気泳動法を用いてヘモグロビン類を測定する方法であって、内面が親水性ポリマーでコーティングされ、かつ、内部にイオン交換体が充填された泳動路を用いることを特徴とするヘモグロビン類の測定方法。
- 更に、アニオン性基を有する水溶性ポリマーを含有する緩衝液を用いることを特徴とする請求項1記載のヘモグロビンの測定方法。
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