JP2008163115A - 金属加工油組成物 - Google Patents
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Abstract
【課題】低粘度であり、引火点が高く、かつ、耐荷重性能の優れた金属加工油組成物を提供すること。
【解決手段】本発明の金属加工油組成物は、エステル油と、炭化水素油と、組成物全量基準で0.005〜20質量%の極圧剤とを含有し、40℃における動粘度が37mm2/s以下であり、かつ、引火点が250℃以上であることを特徴とする。
【選択図】なし
【解決手段】本発明の金属加工油組成物は、エステル油と、炭化水素油と、組成物全量基準で0.005〜20質量%の極圧剤とを含有し、40℃における動粘度が37mm2/s以下であり、かつ、引火点が250℃以上であることを特徴とする。
【選択図】なし
Description
本発明は金属加工油組成物に関する。
切削・研削加工においては、加工に用いられるドリル、エンドミル、バイト、砥石等の工具の寿命延長や被加工物の表面粗さの向上、ならびにそれによる加工能率の向上といった機械加工における生産性の向上を目的として、通常、切削・研削加工用油剤が使用されている。
切削・研削加工用油剤は、界面活性剤および潤滑成分を水に希釈して使用する水溶性切削・研削加工用油剤と、鉱物油を主成分として原液のままで使用する不水溶性切削・研削加工用油剤の2種類に大別される。一般に、不水溶性切削・研削加工用油剤は潤滑性能に、水溶性切削・研削加工用油剤は冷却性能にそれぞれ優れている。
従来、金属加工の分野において用いられる切削・研削加工用油剤の基材としては、鉱油、炭化水素系合成油、エステル等の含酸素系合成油などがある。また、エステルと炭化水素油を組み合わせた金属加工油組成物が知られている(例えば、特許文献1〜3を参照)。
特開平10−17880号公報
特開平2005−290163号公報
特開平2005−272818号公報
ところで、JISK2241の不水溶性切削油剤規格においては、高粘度・高引火点グレードとして、現行規格におけるN2種3号/4号、N3種およびN4種の3号/4号/7号/8号(塩素系極圧添加剤不使用)、ならびに旧規格における2種3号/4号/5号/6号(塩素系添加剤使用)があり、これらは40℃動粘度10mm2/s以上、引火点130℃以上と規定されている。
一方、消防法の改正により、引火点250℃以上の石油製品等が「危険物」ではなく、貯蔵数量の上限の規制がない「指定可燃物」として取り扱われることとなった。
そこで、引火点が高く、加工時における油持出し量抑制や穴加工での加工点への油浸透性の点から低粘度であり、かつ、高水準の加工性能を有する金属加工油組成物が求められている。
従来金属加工の分野において、低粘度でかつ引火点の高い油剤を得るためには、エステル等の含酸素系合成油を使用することが一般的である。すなわち、鉱油や炭化水素系合成油の場合、粘度が同程度である含酸素系合成油に比べて、引火点が低く、また、潤滑性に劣る傾向にある。
しかし、含酸素系合成油を用いる場合であっても、極圧剤の添加効果が不十分であるため、、N2種3号/4号、N3種およびN4種の3号/4号/7号/8号に規定された耐荷重性能を満たすには至っておらず、実用化に供し得るには未だ改善の余地がある。特に、N2種3号/4号、N3種およびN4種の3号/4号/7号/8号の場合は、焼却処理時に有毒なダイオキシンを発生させる可能性のある塩素系化合物の使用が制限されているため、含酸素系合成油のみにより低粘度で、引火点が高く、かつ、耐荷重性能の優れた金属加工油組成物を調製することは極めて困難である。
本発明は、このような実情に鑑みてなされたものであり、低粘度であり、引火点が高く、かつ、耐荷重性能の優れ、工具の長寿命化を達成することのできる金属加工油組成物を提供することを目的とする。
上記課題を解決するために、本発明は、エステル油と、炭化水素油と、組成物全量基準で0.005〜20質量%の極圧剤とを含有し、40℃における動粘度が37mm2/s以下であり、かつ、引火点が250℃以上である金属加工油組成物を提供する。
本発明によれば、エステル油と炭化水素油と極圧剤とを組み合わせて用いると共に、極圧剤の含有量、並びに金属加工油組成物の40℃における動粘度及び引火点が上記の条件を満たすようにすることで、低粘度であり、引火点が高く、かつ、耐荷重性能の優れた金属加工油組成物を実現することができるようになる。
なお、本発明による上記の効果は、低粘度でかつ引火点の高い油剤を得るという観点からは通常用いられない炭化水素油を、エステル油と敢えて併用してみたところ、特定量の極圧剤を添加した場合に極圧剤の添加効果が飛躍的に向上するという本発明者らの知見に基づくものであり、炭化水素油の場合は粘度が同程度である含酸素系合成油に比べて引火点が低く潤滑性に劣るという技術常識からみて、極めて予想外の効果といえる。
また、本発明の金属加工油組成物においては、組成物全量を基準として、エステル油の含有量が40〜90質量%であり、炭化水素油の含有量が5〜55質量%であることが好ましい。
また、本発明の金属加工油組成物においては、エステル油がとして2〜5価の多価アルコールと炭素数4〜18の不飽和脂肪酸とのエステルを含有し、炭化水素油がとしてα−オレフィン重合体を含有することが好ましい。
本発明によれば、低粘度であり、引火点が高く、かつ、耐荷重性能の優れた金属加工油組成物を提供することが可能となる。
以下、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。
本発明の金属加工油組成物は、(A)エステル油と、(B)炭化水素油と、組成物全量基準で0.005〜20質量%の(C)極圧剤とを含有し、40℃における動粘度が37mm2/s以下であり、かつ、引火点が250℃以上であることを特徴とする。
(A)エステル油は、天然物由来のエステル油であっても合成エステル油であってもよい。天然物由来のエステル油としては、例えば、動物油又は植物油などの天然油脂に含まれるエステル油が挙げられる。天然物由来のエステル油は、環境に対する影響の観点から好適である。また、合成エステル油は、得られる潤滑油の安定性やエステル成分の均一性などの点から好ましい。
(A)エステル油を構成するアルコールとしては1価アルコールでも多価アルコールでもよく、また、エステル油を構成する酸としては一塩基酸でも多塩基酸であってもよい。
1価アルコールとしては、通常炭素数1〜24、好ましくは1〜12、より好ましくは1〜8のものが用いられ、このようなアルコールとしては直鎖のものでも分枝のものでもよく、また飽和のものであっても不飽和のものであってもよい。炭素数1〜24のアルコールとしては、具体的には例えば、メタノール、エタノール、直鎖状または分枝状のプロパノール、直鎖状または分枝状のブタノール、直鎖状または分枝状のペンタノール、直鎖状または分枝状のヘキサノール、直鎖状または分枝状のヘプタノール、直鎖状または分枝状のオクタノール、直鎖状または分枝状のノナノール、直鎖状または分枝状のデカノール、直鎖状または分枝状のウンデカノール、直鎖状または分枝状のドデカノール、直鎖状または分枝状のトリデカノール、直鎖状または分枝状のテトラデカノール、直鎖状または分枝状のペンタデカノール、直鎖状または分枝状のヘキサデカノール、直鎖状または分枝状のヘプタデカノール、直鎖状または分枝状のオクタデカノール、直鎖状または分枝状のノナデカノール、直鎖状または分枝状のイコサノール、直鎖状または分枝状のヘンイコサノール、直鎖状または分枝状のトリコサノール、直鎖状または分枝状のテトラコサノールおよびこれらの混合物等が挙げられる。
多価アルコールとしては、通常2〜10価、好ましくは2〜6価、より好ましくは2〜5価のものが用いられる。2〜10の多価アルコールとしては、具体的には例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、ポリエチレングリコール(エチレングリコールの3〜15量体)、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、ポリプロピレングリコール(プロピレングリコールの3〜15量体)、1,3−プロパンジオール、1,2−プロパンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、2−メチル−1,2−プロパンジオール、2−メチル−1,3−プロパンジオール、1,2−ペンタンジオール、1,3−ペンタンジオール、1,4−ペンタンジオール、1,5−ペンタンジオール、ネオペンチルグリコール等の2価アルコール;グリセリン、ポリグリセリン(グリセリンの2〜8量体、例えばジグリセリン、トリグリセリン、テトラグリセリン等)、トリメチロールアルカン(トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、トリメチロールブタン等)およびこれらの2〜8量体、ペンタエリスリトールおよびこれらの2〜4量体、1,2,4−ブタントリオール、1,3,5−ペンタントリオール、1,2,6−ヘキサントリオール、1,2,3,4−ブタンテトロール、ソルビトール、ソルビタン、ソルビトールグリセリン縮合物、アドニトール、アラビトール、キシリトール、マンニトール等の多価アルコール;キシロース、アラビノース、リボース、ラムノース、グルコース、フルクトース、ガラクトース、マンノース、ソルボース、セロビオース、マルトース、イソマルトース、トレハロース、スクロース等の糖類、およびこれらの混合物等が挙げられる。これらの多価アルコールの中でも、エチレングリコール、ジエチレングリコール、ポリエチレングリコール(エチレングリコールの3〜10量体)、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、ポリプロピレングリコール(プロピレングリコールの3〜10量体)、1,3−プロパンジオール、2−メチル−1,2−プロパンジオール、2−メチル−1,3−プロパンジオール、ネオペンチルグリコール、グリセリン、ジグリセリン、トリグリセリン、トリメチロールアルカン(トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、トリメチロールブタン等)およびこれらの2〜4量体、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、1,2,4−ブタントリオール、1,3,5−ペンタントリオール、1,2,6−ヘキサントリオール、1,2,3,4−ブタンテトロール、ソルビトール、ソルビタン、ソルビトールグリセリン縮合物、アドニトール、アラビトール、キシリトール、マンニトール等の2〜6価の多価アルコールおよびこれらの混合物等が好ましい。さらにより好ましくは、エチレングリコール、プロピレングリコール、ネオペンチルグリコール、グリセリン、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ソルビタン、およびこれらの混合物等である。これらの中でも、より高い熱・酸化安定性が得られることから、ネオペンチルグリコール、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、およびこれらの混合物等が最も好ましい。
(A)エステル油を構成するアルコールは、上述したように1価アルコールであっても多価アルコールであってもよいが、より優れた潤滑性が達成可能となる点、並びに流動点の低いものがより得やすく、冬季および寒冷地での取り扱い性がより向上する等の点から、多価アルコールであることが好ましい。また、多価アルコールのエステル油を用いると、切削・研削加工において、加工物の仕上げ面精度の向上と工具刃先の摩耗防止効果がより大きくなる。
また、(A)エステル油を構成する酸のうち、一塩基酸としては、通常炭素数2〜24の脂肪酸が用いられ、その脂肪酸は直鎖のものでも分枝のものでもよく、また飽和のものでも不飽和のものでもよい。具体的には、例えば、酢酸、プロピオン酸、直鎖状または分枝状のブタン酸、直鎖状または分枝状のペンタン酸、直鎖状または分枝状のヘキサン酸、直鎖状または分枝状のヘプタン酸、直鎖状または分枝状のオクタン酸、直鎖状または分枝状のノナン酸、直鎖状または分枝状のデカン酸、直鎖状または分枝状のウンデカン酸、直鎖状または分枝状のドデカン酸、直鎖状または分枝状のトリデカン酸、直鎖状または分枝状のテトラデカン酸、直鎖状または分枝状のペンタデカン酸、直鎖状または分枝状のヘキサデカン酸、直鎖状または分枝状のヘプタデカン酸、直鎖状または分枝状のオクタデカン酸、直鎖状または分枝状のヒドロキシオクタデカン酸、直鎖状または分枝状のノナデカン酸、直鎖状または分枝状のイコサン酸、直鎖状または分枝状のヘンイコサン酸、直鎖状または分枝状のドコサン酸、直鎖状または分枝状のトリコサン酸、直鎖状または分枝状のテトラコサン酸等の飽和脂肪酸、アクリル酸、直鎖状または分枝状のブテン酸、直鎖状または分枝状のペンテン酸、直鎖状または分枝状のヘキセン酸、直鎖状または分枝状のヘプテン酸、直鎖状または分枝状のオクテン酸、直鎖状または分枝状のノネン酸、直鎖状または分枝状のデセン酸、直鎖状または分枝状のウンデセン酸、直鎖状または分枝状のドデセン酸、直鎖状または分枝状のトリデセン酸、直鎖状または分枝状のテトラデセン酸、直鎖状または分枝状のペンタデセン酸、直鎖状または分枝状のヘキサデセン酸、直鎖状または分枝状のヘプタデセン酸、直鎖状または分枝状のオクタデセン酸、直鎖状または分枝状のヒドロキシオクタデセン酸、直鎖状または分枝状のノナデセン酸、直鎖状または分枝状のイコセン酸、直鎖状または分枝状のヘンイコセン酸、直鎖状または分枝状のドコセン酸、直鎖状または分枝状のトリコセン酸、直鎖状または分枝状のテトラコセン酸等の不飽和脂肪酸、およびこれらの混合物等が挙げられる。これらの中でも、潤滑性および取扱性がより高められる点から、特に炭素数3〜20の飽和脂肪酸、炭素数3〜22の不飽和脂肪酸およびこれらの混合物が好ましく、炭素数4〜18の飽和脂肪酸、炭素数4〜18の不飽和脂肪酸およびこれらの混合物がより好ましく、炭素数4〜18の不飽和脂肪酸がさらに好ましい。
多塩基酸としては炭素数2〜16の二塩基酸およびトリメリット酸等が挙げられる。炭素数2〜16の二塩基酸としては、直鎖のものでも分枝のものでもよく、また飽和のものでも不飽和のものでもよい。具体的には例えば、エタン二酸、プロパン二酸、直鎖状または分枝状のブタン二酸、直鎖状または分枝状のペンタン二酸、直鎖状または分枝状のヘキサン二酸、直鎖状または分枝状のヘプタン二酸、直鎖状または分枝状のオクタン二酸、直鎖状または分枝状のノナン二酸、直鎖状または分枝状のデカン二酸、直鎖状または分枝状のウンデカン二酸、直鎖状または分枝状のドデカン二酸、直鎖状または分枝状のトリデカン二酸、直鎖状または分枝状のテトラデカン二酸、直鎖状または分枝状のヘプタデカン二酸、直鎖状または分枝状のヘキサデカン二酸、直鎖状または分枝状のヘキセン二酸、直鎖状または分枝状のヘプテン二酸、直鎖状または分枝状のオクテン二酸、直鎖状または分枝状のノネン二酸、直鎖状または分枝状のデセン二酸、直鎖状または分枝状のウンデセン二酸、直鎖状または分枝状のドデセン二酸、直鎖状または分枝状のトリデセン二酸、直鎖状または分枝状のテトラデセン二酸、直鎖状または分枝状のヘプタデセン二酸、直鎖状または分枝状のヘキサデセン二酸およびこれらの混合物等が挙げられる。
(A)エステル油を構成する酸としては、上述したように一塩基酸であっても多塩基酸であってもよいが、一塩基酸を用いると、粘度指数の向上に寄与するエステルが得られやすくなるので好ましい。
(A)エステルを形成するアルコールと酸との組み合わせは任意であって特に制限されないが、本発明で使用可能なエステル油としては、例えば下記のエステルを挙げることができる。
(i)一価アルコールと一塩基酸とのエステル
(ii)多価アルコールと一塩基酸とのエステル
(iii)一価アルコールと多塩基酸とのエステル
(iv)多価アルコールと多塩基酸とのエステル
(v)一価アルコール、多価アルコールとの混合物と多塩基酸との混合エステル
(vi)多価アルコールと一塩基酸、多塩基酸との混合物との混合エステル
(vii)一価アルコール、多価アルコールとの混合物と一塩基酸、多塩基酸との混合エステル。
(i)一価アルコールと一塩基酸とのエステル
(ii)多価アルコールと一塩基酸とのエステル
(iii)一価アルコールと多塩基酸とのエステル
(iv)多価アルコールと多塩基酸とのエステル
(v)一価アルコール、多価アルコールとの混合物と多塩基酸との混合エステル
(vi)多価アルコールと一塩基酸、多塩基酸との混合物との混合エステル
(vii)一価アルコール、多価アルコールとの混合物と一塩基酸、多塩基酸との混合エステル。
これらの中でも、より優れた潤滑性が得られる、流動点の低いものがより得やすく、冬季および寒冷地での取り扱い性がより向上する、粘度指数の高いものがより得やすくなる点から(ii)多価アルコールと一塩基酸とのエステルであることが好ましい。
また、本発明において用いられる天然物由来のエステルとしては、パーム油、パーム核油、菜種油、大豆油、サンフラワー油、並びに品種改良や遺伝子組換操作などによりグリセリドを構成する脂肪酸におけるオレイン酸の含有量が増加したハイオレイック菜種油、ハイオレイックサンフラワー油などの植物油、ラードなどの動物油などの天然油脂が挙げられる。
これらの天然物由来のエステルの中でも、潤滑油の安定性の点から、オレイン酸の含有量が増加したハイオレイックな天然油脂が好ましく、脂肪酸とグリセリンとのトリエステル(以下、単に「トリエステル」という)であって、該脂肪酸中の30〜98質量%がオレイン酸のものが特に好ましい。かかるトリエステルを用いることによって、潤滑性と熱・酸化安定性との双方を高水準でバランスよく達成することができる。また、当該トリエステルを構成する脂肪酸中のオレイン酸の含有量は、潤滑性と熱・酸化安定性との双方を高水準でバランスよく達成できる点から、好ましくは50質量%以上、より好ましくは60質量%以上、更に好ましくは70質量%以上であり、また、同様の点から好ましくは95質量%以下、より好ましくは90質量%以下である。
なお、上記のトリエステルを構成する脂肪酸(以下、「構成脂肪酸」という)中のオレイン酸の割合や、後述するリノール酸等の割合は、日本油化学会制定の基準油脂分析法2.4.2項「脂肪酸組成」に準拠して測定されるものである。
また、トリエステルの構成脂肪酸のうち、オレイン酸以外の脂肪酸としては、潤滑性および熱・酸化安定性を損なわない限り特に制限されないが、好ましくは炭素数6〜24の脂肪酸である。炭素数6〜24の脂肪酸としては、飽和脂肪酸でもよく、不飽和結合を1〜5個有する不飽和脂肪酸でもよい。また、当該脂肪酸は直鎖状、分枝鎖状のいずれであってもよい。さらに、分子内にカルボキシル基(−COOH)以外に水酸基(−OH)を1〜3個有していてもよい。このような脂肪酸としては、具体的には、カプロン酸、カプリル酸、カプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、アラキン酸、ベヘニン酸、リグノセリン酸、ラウロレイン酸、ミリストレイン酸、パルミトレイン酸、ガドレイン酸、エルシン酸、リシノール酸、リノール酸、リノレン酸、エレオステアリン酸、リカン酸、アラキドン酸、クルバドン酸等が挙げられる。これらの脂肪酸の中でも、潤滑性と熱・酸化安定性との両立の点で、リノール酸が好ましく、トリエステルを構成する脂肪酸の1〜60質量%(より好ましくは2〜50質量%、更に好ましくは4〜40質量%)がリノール酸であることがより好ましい。
更に、上記のトリエステルにおいては、潤滑性と熱・酸化安定性との両立の点で、構成脂肪酸中の0.1〜30質量%(より好ましくは0.5〜20質量%、更に好ましくは1〜10質量%)が炭素数6〜16の脂肪酸であることが好ましい。炭素数6〜16の脂肪酸の割合が0.1質量%未満であると熱・酸化安定性が低下する傾向にあり、他方、30質量%を超えると潤滑性が低下する傾向にある。
また、上記のトリエステルの総不飽和度は0.3以下であることが好ましく、0.2以下であることがより好ましい。トリエステルの総不飽和度が0.3より大きくなると、本発明の潤滑油の熱・酸化安定性が悪くなる傾向にある。なお、本発明でいう総不飽和度とは、ポリウレタン用ポリエーテルの代わりにトリエステルを用いる以外はJISK1557−1970 「ポリウレタン用ポリエーテル試験方法」に準じて、同様の装置・操作法により測定される総不飽和度をいう。
本発明にかかるトリエステルとしては、構成脂肪酸中のオレイン酸の割合等が上記の条件を満たすものであれば、合成により得られるものを用いてもよく、或いは当該トリエステルを含有する植物油等の天然油を用いてもよいが、人体に対する安全性の点から、植物油等の天然油を用いることが好ましい。かかる植物油としては、菜種油、ひまわり油、大豆油、トウモロコシ油、キャノーラ油が好ましく、中でもひまわり油、菜種油および大豆油が特に好ましい。
ここで、天然の植物油の多くは総不飽和度が0.3を超えるものであるが、その精製工程で水素化等の処理により総不飽和度を小さくすることが可能である。また、遺伝子組み替え技術により総不飽和度の低い植物油を容易に製造することができる。例えば総不飽和度が0.3以下でありかつオレイン酸が70質量%以上のものとして高オレイン酸キャノーラ油等、80質量%以上のものとして高オレイン酸大豆油、高オレイン酸ひまわり油、高オレイン酸菜種油などを例示することができる。
本発明において、アルコール成分として多価アルコールを用いた場合に得られるエステルは、多価アルコール中の水酸基全てがエステル化された完全エステルでもよく、水酸基の一部がエステル化されず水酸基のまま残存する部分エステルでもよい。また、酸成分として多塩基酸を用いた場合に得られる有機酸エステルは、多塩基酸中のカルボキシル基全てがエステル化された完全エステルでもよく、あるいはカルボキシル基の一部がエステル化されずカルボキシル基のままで残っている部分エステルであってもよい。
(A)エステル油の沃素価は、好ましくは0〜80、より好ましくは0〜60、更に好ましくは0〜40、更により好ましくは0〜20、最も好ましくは0〜10である。また、本発明にかかるエステルの臭素価は、好ましくは0〜50gBr2/100g、より好ましくは0〜30gBr2/100g、更に好ましくは0〜20gBr2/100g、最も好ましくは0〜10gBr2/100gである。エステルの沃素価や臭素価がそれぞれ前記の範囲内であると、得られる潤滑油のべたつき防止性がより高められる傾向にある。なお、ここでいう沃素価とは、JIS K 0070「化学製品の酸価、ケン化価、エステル価、沃素価、水酸基価および不ケン化価物の測定方法」の指示薬滴定法により測定した値をいう。また臭素価とは、JIS K 2605「化学製品−臭素価試験方法−電気滴定法」により測定した値をいう。
また、本発明の金属加工油組成物に更に良好な潤滑性能を付与するためには、(A)エステル油の水酸基価が0.01〜300mgKOH/gであり、ケン価が100〜500mgKOH/gであることが好ましい。本発明において更に高い潤滑性を得るためのエステルの水酸基価の上限値は、より好ましくは200mgKOH/gであり、最も好ましくは150mgKOH/gであり、一方その下限値は、より好ましくは0.1mgKOH/gであり、更に好ましくは0.5mgKOH/gであり、更に好ましくは1mgKOH/gであり、更により好ましくは3mgKOH/gであり、最も好ましくは5mgKOH/gである。また、(A)エステル油のケン化価の上限値は更に好ましくは400mgKOH/gであり、一方その下限値は更に好ましくは200mgKOH/gである。なお、ここでいう水酸基価とは、JIS K 0070「化学製品の酸価、ケン化価、エステル価、沃素価、水酸基価および不ケン化価物の測定方法」の指示薬滴定法により測定した値をいう。またケン化価とは、JIS K 2503「航空潤滑油試験方法」の指示薬滴定法により測定した値をいう。
(A)エステル油の動粘度については特に制限はないが、40℃における動粘度は、好ましくは100mm2/s以下であり、より好ましくは50mm2/s以下であり、更に好ましくは30mm2/s以下である。また、エステルの動粘度は、好ましくは1mm2/s以上であり、より好ましくは3mm2/s以上であり、更に好ましくは5mm2/s以上である。
(A)エステル油の流動点および粘度指数には特に制限はないが、流動点は−10℃以下であることが好ましく、更に好ましくは−20℃以下である。粘度指数は100以上200以下であることが望ましい。
本発明の金属加工油組成物における(A)エステル油の含有量は特に制限されないが、組成物全量基準で、好ましくは95質量%以下、より好ましくは90質量%以下、更に好ましくは85質量%以下である。当該含有量が95質量%を超えると、溶着が多くなって加工抵抗が増加し、加工効率および工具寿命が低下する傾向にある。また、(A)エステル油の含有量は、組成物全量基準で、好ましくは30質量%以上、より好ましくは40質量%以上、更に好ましくは50質量%以上、特に好ましくは60質量%以上である。当該含有量が30質量未満の場合には、溶着が多くなって加工抵抗が増加し、加工効率および工具寿命が低下する傾向にある。
(B)炭化水素油としては、特に制限されず、鉱油または合成炭化水素油のいずれかであっても、あるいはこれらの2種以上の混合物であってもよいが、鉱油およびポリオレフィンまたはその水素化物から選ばれる少なくとも1種であることが好ましい。
鉱油としては、例えばパラフィン基系原油または混合基系原油を常圧蒸留および減圧蒸留して得られた潤滑油留分、あるいは潤滑油脱ろう工程により得られるワックス(スラックワックス等)および/またはガストゥリキッド(GTL)プロセス等により得られる合成ワックス(フィッシャートロプシュワックス、GTLワックス等)を原料とし、溶剤脱れき、溶剤抽出、水素化分解、水素化異性化、溶剤脱ろう、接触脱ろう、水素化精製、硫酸洗浄、白土処理等の精製処理を適宜組み合わせて精製したパラフィン系鉱油、ナフテン系鉱油、ノルマルパラフィン系基油、イソパラフィン系基油、ホワイトオイルが挙げられる。
鉱油の中では、動粘度と引火点の要求を同時に満たす点から、ワックス及び/又は合成ワックスを原料とした精製基油が好ましい。
また、合成炭化水素油としては、具体的には、プロピレンオリゴマー、ポリブテン、ポリイソブチレン、炭素数5〜20のα−オレフィンのオリゴマー、エチレンと炭素数5〜20のα−オレフィンとのコオリゴマー等のポリオレフィンまたはこれらの水素化物;モノアルキルベンゼン、ジアルキルベンゼン、ポリアルキルベンゼン等のアルキルベンゼン;モノアルキルナフタレン、ジアルキルナフタレン、ポリアルキルナフタレン等のアルキルナフタレンなどが挙げられる。これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
なお、ポリオレフィンが構造の異なるオレフィンモノマーの共重合体である場合、その共重合体におけるモノマー比やモノマー配列には特に制限はなく、ランダム共重合体、交互共重合体およびブロック共重合体のうちのいずれであってもよい。また、オレフィンモノマーは、α−オレフィン、内部オレフィン、直鎖状オレフィン、分枝鎖状オレフィンのうちのいずれであってもよい。
これら合成炭化水素油の中では、動粘度と引火点の要求を同時に満たす点から、ポリオレフィンまたはその水素化物が好ましい。また、ポリオレフィンまたはその水素化物の中では、炭素数5〜20のα−オレフィンのオリゴマーまたはその水素化物がより好ましく、1−オクテンオリゴマーの水素化物、1−デセンオリゴマーの水素化物および1−ドデセンオリゴマーの水素化物が特に好ましい。
本発明で用いられるポリオレフィンは従来公知の方法で製造することができる。具体的には例えば、無触媒による熱反応によって製造することができるほか、過酸化ベンゾイル等の有機過酸化物触媒;塩化アルミニウム、塩化アルミニウム−多価アルコール系、塩化アルミニウム−四塩化チタン系、塩化アルミニウム−アルキル錫ハライド系、フッ化ホウ素等のフリーデルクラフツ型触媒;有機塩化アルミニウム−四塩化チタン系、有機アルミニウム−四塩化チタン系等のチーグラー型触媒;アルミノキサン−ジルコノセン系、イオン性化合物−ジルコノセン系等のメタロセン型触媒;塩化アルミニウム−塩基系、フッ化ホウ素−塩基系等のルイス酸コンプレックス型触媒、等の公知の触媒を用いて、上記のオレフィンを単独重合または共重合させることによって目的のポリオレフィンを製造することができる。
このような方法により得られるポリオレフィンは、通常、二重結合を有しているが、本発明においては、上述のように、これらのポリオレフィン中の二重結合炭素を水素化した、いわゆるポリオレフィンの水素化物を基油として用いることが好ましい。ポリオレフィンの水素化物を用いると、金属加工油組成物の熱・酸化安定性が向上する傾向にある。なお、ポリオレフィンの水素化物は、例えば、ポリオレフィンを公知の水素化触媒の存在下で水素で水素化し、ポリオレフィン中に存在する二重結合を飽和化することによって得ることができる。また、オレフィンの重合反応を行う際に、使用する触媒を選択することによって、オレフィンの重合と重合体の水素化といった2工程を経ることなく、オレフィンの重合と重合体中に存在する二重結合の水素化を1工程で完遂させることも可能である。
(B)炭化水素油の動粘度については特に制限はないが、40℃における動粘度は、好ましくは100mm2/s以下であり、より好ましくは50mm2/s以下であり、更に好ましくは30mm2/s以下である。また、炭化水素油の動粘度は、好ましくは3mm2/s以上であり、より好ましくは5mm2/s以上であり、更に好ましくは10mm2/s以上である。
本発明の金属加工油組成物における(B)炭化水素油の含有量は特に制限されないが、組成物全量基準で、好ましくは90質量%以下、より好ましくは70質量%以下、更に好ましくは55質量%以下、一層好ましくは40質量%以下、特に好ましくは30質量%以下である。当該含有量が90質量%を超えると、溶着が多くなって加工抵抗が増加し、加工効率および工具寿命が低下する傾向にある。また、(B)炭化水素油の含有量は、組成物全量基準で、好ましくは3質量%以上、より好ましくは5質量%以上、更に好ましくは9質量%以上である。当該含有量が3質量未満の場合には、溶着が多くなって加工抵抗が増加し、加工効率および工具寿命が低下する傾向にある。
本発明の金属加工油組成物は、(A)エステル油と(B)炭化水素油とからなるものであってもよいが、その他の基油を更に含有してもよい。その他の基油としては、具体的には、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコール、ポリエチレングリコールモノエーテル、ポリプロピレングリコールモノエーテル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコールモノエーテル、ポリエチレングリコールジエーテル、ポリプロピレングリコールジエーテル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコールジエーテル等のポリグリコール;モノアルキルジフェニルエーテル、ジアルキルジフェニルエーテル、モノアルキルトリフェニルエーテル、ジアルキルトリフェニルエーテル、テトラフェニルエーテル、モノアルキルテトラフェニルエーテル、ジアルキルテトラフェニルエーテル、ペンタフェニルエーテル等のフェニルエーテル;シリコーン油;パーフルオロエーテル等のフルオロエーテル、などが挙げられる。これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
なお、(A)、(B)成分以外の基油の含有量は、組成物全量基準で、好ましくは65質量%以下、より好ましくは50質量%以下、更に好ましくは30質量%以下、更により好ましくは20質量%以下、特に好ましくは10質量%以下である。
なお、(A)、(B)成分以外の基油の含有量は、組成物全量基準で、好ましくは65質量%以下、より好ましくは50質量%以下、更に好ましくは30質量%以下、更により好ましくは20質量%以下、特に好ましくは10質量%以下である。
また、本発明の金属加工油は、加工効率向上および工具の長寿命化の点から(C)極圧剤を必須成分として含有する。好ましい(C)極圧剤としては、硫黄化合物およびリン化合物が挙げられる。
本発明で用いられる硫黄化合物としては、金属加工油組成物の特性を損なわない限りにおいて特に制限されないが、ジヒドロカルビルポリサルファイド、硫化脂肪酸、硫化オレフィン、硫化エステル、硫化油脂、硫化鉱油、ジチオリン酸亜鉛化合物、ジチオカルバミン酸亜鉛化合物、ジチオリン酸モリブデン化合物、ジチオカルバミン酸モリブデン化合物、チアジアゾール化合物、アルキルチオカルバモイル化合物、チオカーバメート化合物、チオテルペン化合物、ジアルキルチオジプロピオネート化合物が好ましく用いられる。
ジヒドロカルビルポリサルファイドとは、一般的にポリサルファイドまたは硫化オレフィンと呼ばれる硫黄系化合物であり、具体的には下記一般式(1):
R1−Sx−R2 (1)
[式(1)中、R1およびR2は同一でも異なっていてもよく、それぞれ炭素数3〜20の直鎖状または分枝状のアルキル基、炭素数6〜20のアリール基、炭素数6〜20のアルキルアリール基あるいは炭素数6〜20のアリールアルキル基を表し、hは2〜6、好ましくは2〜5の整数を表す]
で表される化合物を意味する。上記一般式(1)中のR1およびR2としては、具体的には、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、直鎖または分枝ペンチル基、直鎖または分枝ヘキシル基、直鎖または分枝ヘプチル基、直鎖または分枝オクチル基、直鎖または分枝ノニル基、直鎖または分枝デシル基、直鎖または分枝ウンデシル基、直鎖または分枝ドデシル基、直鎖または分枝トリデシル基、直鎖または分枝テトラデシル基、直鎖または分枝ペンタデシル基、直鎖または分枝ヘキサデシル基、直鎖または分枝ヘプタデシル基、直鎖または分枝オクタデシル基、直鎖または分枝ノナデシル基、直鎖または分枝イコシル基などの直鎖状または分枝状のアルキル基;フェニル基、ナフチル基などのアリール基;トリル基(全ての構造異性体を含む)、エチルフェニル基(全ての構造異性体を含む)、直鎖または分枝プロピルフェニル基(全ての構造異性体を含む)、直鎖または分枝ブチルフェニル基(全ての構造異性体を含む)、直鎖または分枝ペンチルフェニル基(全ての構造異性体を含む)、直鎖または分枝ヘキシルフェニル基(全ての構造異性体を含む)、直鎖または分枝ヘプチルフェニル基(全ての構造異性体を含む)、直鎖または分枝オクチルフェニル基(全ての構造異性体を含む)、直鎖または分枝ノニルフェニル基(全ての構造異性体を含む)、直鎖または分枝デシルフェニル基(全ての構造異性体を含む)、直鎖または分枝ウンデシルフェニル基(全ての構造異性体を含む)、直鎖または分枝ドデシルフェニル基(全ての構造異性体を含む)、キシリル基(全ての構造異性体を含む)、エチルメチルフェニル基(全ての構造異性体を含む)、ジエチルフェニル基(全ての構造異性体を含む)、ジ(直鎖または分枝)プロピルフェニル基(全ての構造異性体を含む)、ジ(直鎖または分枝)ブチルフェニル基(全ての構造異性体を含む)、メチルナフチル基(全ての構造異性体を含む)、エチルナフチル基(全ての構造異性体を含む)、直鎖または分枝プロピルナフチル基(全ての構造異性体を含む)、直鎖または分枝ブチルナフチル基(全ての構造異性体を含む)、ジメチルナフチル基(全ての構造異性体を含む)、エチルメチルナフチル基(全ての構造異性体を含む)、ジエチルナフチル基(全ての構造異性体を含む)、ジ(直鎖または分枝)プロピルナフチル基(全ての構造異性体を含む)、ジ(直鎖または分枝)ブチルナフチル基(全ての構造異性体を含む)などのアルキルアリール基;ベンジル基、フェニルエチル基(全ての異性体を含む)、フェニルプロピル基(全ての異性体を含む)などのアリールアルキル基;などを挙げることができる。これらの中でも、一般式(1)中のR1およびR2としては、プロピレン、1−ブテンまたはイソブチレンから誘導された炭素数3〜18のアルキル基、または炭素数6〜8のアリール基、アルキルアリール基あるいはアリールアルキル基であることが好ましく、これらの基としては例えば、イソプロピル基、プロピレン2量体から誘導される分枝状ヘキシル基(全ての分枝状異性体を含む)、プロピレン3量体から誘導される分枝状ノニル基(全ての分枝状異性体を含む)、プロピレン4量体から誘導される分枝状ドデシル基(全ての分枝状異性体を含む)、プロピレン5量体から誘導される分枝状ペンタデシル基(全ての分枝状異性体を含む)、プロピレン6量体から誘導される分枝状オクタデシル基(全ての分枝状異性体を含む)、sec−ブチル基、tert−ブチル基、1−ブテン2量体から誘導される分枝状オクチル基(全ての分枝状異性体を含む)、イソブチレン2量体から誘導される分枝状オクチル基(全ての分枝状異性体を含む)、1−ブテン3量体から誘導される分枝状ドデシル基(全ての分枝状異性体を含む)、イソブチレン3量体から誘導される分枝状ドデシル基(全ての分枝状異性体を含む)、1−ブテン4量体から誘導される分枝状ヘキサデシル基(全ての分枝状異性体を含む)、イソブチレン4量体から誘導される分枝状ヘキサデシル基(全ての分枝状異性体を含む)などのアルキル基;フェニル基、トリル基(全ての構造異性体を含む)、エチルフェニル基(全ての構造異性体を含む)、キシリル基(全ての構造異性体を含む)などのアルキルアリール基;ベンジル基、フェニルエチル基(全ての異性体を含む)などのアリールアルキル基が挙げられる。
R1−Sx−R2 (1)
[式(1)中、R1およびR2は同一でも異なっていてもよく、それぞれ炭素数3〜20の直鎖状または分枝状のアルキル基、炭素数6〜20のアリール基、炭素数6〜20のアルキルアリール基あるいは炭素数6〜20のアリールアルキル基を表し、hは2〜6、好ましくは2〜5の整数を表す]
で表される化合物を意味する。上記一般式(1)中のR1およびR2としては、具体的には、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、直鎖または分枝ペンチル基、直鎖または分枝ヘキシル基、直鎖または分枝ヘプチル基、直鎖または分枝オクチル基、直鎖または分枝ノニル基、直鎖または分枝デシル基、直鎖または分枝ウンデシル基、直鎖または分枝ドデシル基、直鎖または分枝トリデシル基、直鎖または分枝テトラデシル基、直鎖または分枝ペンタデシル基、直鎖または分枝ヘキサデシル基、直鎖または分枝ヘプタデシル基、直鎖または分枝オクタデシル基、直鎖または分枝ノナデシル基、直鎖または分枝イコシル基などの直鎖状または分枝状のアルキル基;フェニル基、ナフチル基などのアリール基;トリル基(全ての構造異性体を含む)、エチルフェニル基(全ての構造異性体を含む)、直鎖または分枝プロピルフェニル基(全ての構造異性体を含む)、直鎖または分枝ブチルフェニル基(全ての構造異性体を含む)、直鎖または分枝ペンチルフェニル基(全ての構造異性体を含む)、直鎖または分枝ヘキシルフェニル基(全ての構造異性体を含む)、直鎖または分枝ヘプチルフェニル基(全ての構造異性体を含む)、直鎖または分枝オクチルフェニル基(全ての構造異性体を含む)、直鎖または分枝ノニルフェニル基(全ての構造異性体を含む)、直鎖または分枝デシルフェニル基(全ての構造異性体を含む)、直鎖または分枝ウンデシルフェニル基(全ての構造異性体を含む)、直鎖または分枝ドデシルフェニル基(全ての構造異性体を含む)、キシリル基(全ての構造異性体を含む)、エチルメチルフェニル基(全ての構造異性体を含む)、ジエチルフェニル基(全ての構造異性体を含む)、ジ(直鎖または分枝)プロピルフェニル基(全ての構造異性体を含む)、ジ(直鎖または分枝)ブチルフェニル基(全ての構造異性体を含む)、メチルナフチル基(全ての構造異性体を含む)、エチルナフチル基(全ての構造異性体を含む)、直鎖または分枝プロピルナフチル基(全ての構造異性体を含む)、直鎖または分枝ブチルナフチル基(全ての構造異性体を含む)、ジメチルナフチル基(全ての構造異性体を含む)、エチルメチルナフチル基(全ての構造異性体を含む)、ジエチルナフチル基(全ての構造異性体を含む)、ジ(直鎖または分枝)プロピルナフチル基(全ての構造異性体を含む)、ジ(直鎖または分枝)ブチルナフチル基(全ての構造異性体を含む)などのアルキルアリール基;ベンジル基、フェニルエチル基(全ての異性体を含む)、フェニルプロピル基(全ての異性体を含む)などのアリールアルキル基;などを挙げることができる。これらの中でも、一般式(1)中のR1およびR2としては、プロピレン、1−ブテンまたはイソブチレンから誘導された炭素数3〜18のアルキル基、または炭素数6〜8のアリール基、アルキルアリール基あるいはアリールアルキル基であることが好ましく、これらの基としては例えば、イソプロピル基、プロピレン2量体から誘導される分枝状ヘキシル基(全ての分枝状異性体を含む)、プロピレン3量体から誘導される分枝状ノニル基(全ての分枝状異性体を含む)、プロピレン4量体から誘導される分枝状ドデシル基(全ての分枝状異性体を含む)、プロピレン5量体から誘導される分枝状ペンタデシル基(全ての分枝状異性体を含む)、プロピレン6量体から誘導される分枝状オクタデシル基(全ての分枝状異性体を含む)、sec−ブチル基、tert−ブチル基、1−ブテン2量体から誘導される分枝状オクチル基(全ての分枝状異性体を含む)、イソブチレン2量体から誘導される分枝状オクチル基(全ての分枝状異性体を含む)、1−ブテン3量体から誘導される分枝状ドデシル基(全ての分枝状異性体を含む)、イソブチレン3量体から誘導される分枝状ドデシル基(全ての分枝状異性体を含む)、1−ブテン4量体から誘導される分枝状ヘキサデシル基(全ての分枝状異性体を含む)、イソブチレン4量体から誘導される分枝状ヘキサデシル基(全ての分枝状異性体を含む)などのアルキル基;フェニル基、トリル基(全ての構造異性体を含む)、エチルフェニル基(全ての構造異性体を含む)、キシリル基(全ての構造異性体を含む)などのアルキルアリール基;ベンジル基、フェニルエチル基(全ての異性体を含む)などのアリールアルキル基が挙げられる。
さらに、上記一般式(1)中のR1およびR2としては、加工効率および工具寿命の向上の点から、別個に、エチレンまたはプロピレンから誘導された炭素数3〜18の分枝状アルキル基であることがより好ましく、エチレンまたはプロピレンから誘導された炭素数6〜15の分枝状アルキル基であることが特に好ましい。
硫化脂肪酸の例としては硫化オレイン酸などを挙げることができる。
硫化オレフィンとしては、例えば、下記一般式(2)で表される化合物が挙げられる。この化合物は、炭素数2〜15のオレフィンまたはその二〜四量体を、硫黄、塩化硫黄等の硫化剤と反応させることによって得られ、該オレフィンとしては、プロピレン、イソブテン、ジイソブテンなどが好ましい。
R3−Sy−R4 (2)
[式中、R3は炭素数2〜15のアルケニル基、R4は炭素数2〜15のアルキル基またはアルケニル基を示し、yは1〜8の整数を示す。]
R3−Sy−R4 (2)
[式中、R3は炭素数2〜15のアルケニル基、R4は炭素数2〜15のアルキル基またはアルケニル基を示し、yは1〜8の整数を示す。]
硫化エステルとしては、例えば、牛脂、豚脂、魚脂、菜種油、大豆油などの動植物油脂;不飽和脂肪酸(オレイン酸、リノール酸または上記の動植物油脂から抽出された脂肪酸類などを含む)と各種アルコールとを反応させて得られる不飽和脂肪酸エステル;およびこれらの混合物などを任意の方法で硫化することにより得られるものが挙げられる。より具体的には、硫化オレイン酸メチルや硫化米ぬか脂肪酸オクチルおよびこれらの混合物などを挙げることができる。
硫化油脂は、硫黄や硫黄含有化合物と油脂(ラード油、鯨油、植物油、魚油等)を反応させて得られるものであり、例えば硫化ラード、硫化なたね油、硫化ひまし油、硫化大豆油、硫化米ぬか油などが挙げられる。
硫化鉱油とは、鉱油に単体硫黄を溶解させたものをいう。ここで、本発明にかかる硫化鉱油に用いられる鉱油としては特に制限されないが、本願発明の(B)炭化水素油成分のうちの鉱油として挙げられているものを使用することができる。また、単体硫黄としては、塊状、粉末状、溶融液体状等いずれの形態のものを用いてもよいが、粉末状または溶融液体状の単体硫黄を用いると基油への溶解を効率よく行うことができるので好ましい。なお、溶融液体状の単体硫黄は液体同士を混合するので溶解作業を非常に短時間で行うことができるという利点を有しているが、単体硫黄の融点以上で取り扱わねばならず、加熱設備などの特別な装置を必要としたり、高温雰囲気下での取り扱いとなるため危険を伴うなど取り扱いが必ずしも容易ではない。これに対して、粉末状の単体硫黄は、安価で取り扱いが容易であり、しかも溶解に要する時間が十分に短いので特に好ましい。また、本発明にかかる硫化鉱油における硫黄含有量に特に制限はないが、通常、硫化鉱油全量を基準として好ましくは0.05〜1.0質量%であり、より好ましくは0.1〜0.5質量%である。
ジチオリン酸亜鉛化合物、ジチオカルバミン酸亜鉛化合物、ジチオリン酸モリブデン化合物およびジチオカルバミン酸モリブデン化合物とは、それぞれ下記一般式(3)〜(6)で表される化合物を意味する。
[式(3)〜(6)中、R5、R6、R7、R8、R9、R10、R11、R12、R13、R14、R15、R16、R17、R18、R19およびR20は同一でも異なっていてもよく、それぞれ炭素数1以上の炭化水素基を表し、X1およびX2はそれぞれ酸素原子または硫黄原子を表す。]
ここで、R5、R6、R7、R8、R9、R10、R11、R12、R13、R14、R15、R16、R17、R18、R19およびR20で表される炭化水素基の具体例を例示すれば、メチル基、エチル基、プロピル基(すべての分枝異性体を含む)、ブチル基(すべての分枝異性体を含む)、ペンチル基(すべての分枝異性体を含む)、ヘキシル基(すべての分枝異性体を含む)、ヘプチル基(すべての分枝異性体を含む)、オクチル基(すべての分枝異性体を含む)、ノニル基(すべての分枝異性体を含む)、デシル基(すべての分枝異性体を含む)、ウンデシル基(すべての分枝異性体を含む)、ドデシル基(すべての分枝異性体を含む)、トリデシル基(すべての分枝異性体を含む)、テトラデシル基(すべての分枝異性体を含む)、ペンタデシル基(すべての分枝異性体を含む)、ヘキサデシル基(すべての分枝異性体を含む)、ヘプタデシル基(すべての分枝異性体を含む)、オクタデシル基(すべての分枝異性体を含む)、ノナデシル基(すべての分枝異性体を含む)、イコシル基(すべての分枝異性体を含む)、ヘンイコシル基(すべての分枝異性体を含む)、ドコシル基(すべての分枝異性体を含む)、トリコシル基(すべての分枝異性体を含む)、テトラコシル基(すべての分枝異性体を含む)などのアルキル基;シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基などのシクロアルキル基;メチルシクロペンチル基(すべての置換異性体を含む)、エチルシクロペンチル基(すべての置換異性体を含む)、ジメチルシクロペンチル基(すべての置換異性体を含む)、プロピルシクロペンチル基(すべての分枝異性体、置換異性体を含む)、メチルエチルシクロペンチル基(すべての置換異性体を含む)、トリメチルシクロペンチル基(すべての置換異性体を含む)、ブチルシクロペンチル基(すべての分枝異性体、置換異性体を含む)、メチルプロピルシクロペンチル基(すべての分枝異性体、置換異性体を含む)、ジエチルシクロペンチル基(すべての置換異性体を含む)、ジメチルエチルシクロペンチル基(すべての置換異性体を含む)、メチルシクロヘキシル基(すべての置換異性体を含む)、エチルシクロヘキシル基(すべての置換異性体を含む)、ジメチルシクロヘキシル基(すべての置換異性体を含む)、プロピルシクロヘキシル基(すべての分枝異性体、置換異性体を含む)、メチルエチルシクロヘキシル基(すべての置換異性体を含む)、トリメチルシクロヘキシル基(すべての置換異性体を含む)、ブチルシクロヘキシル基(すべての分枝異性体、置換異性体を含む)、メチルプロピルシクロヘキシル基(すべての分枝異性体、置換異性体を含む)、ジエチルシクロヘキシル基(すべての置換異性体を含む)、ジメチルエチルシクロヘキシル基(すべての置換異性体を含む)、メチルシクロヘプチル基(すべての置換異性体を含む)、エチルシクロヘプチル基(すべての置換異性体を含む)、ジメチルシクロヘプチル基(すべての置換異性体を含む)、プロピルシクロヘプチル基(すべての分枝異性体、置換異性体を含む)、メチルエチルシクロヘプチル基(すべての置換異性体を含む)、トリメチルシクロヘプチル基(すべての置換異性体を含む)、ブチルシクロヘプチル基(すべての分枝異性体、置換異性体を含む)、メチルプロピルシクロヘプチル基(すべての分枝異性体、置換異性体を含む)、ジエチルシクロヘプチル基(すべての置換異性体を含む)、ジメチルエチルシクロヘプチル基(すべての置換異性体を含む)などのアルキルシクロアルキル基;フェニル基、ナフチル基などのアリール基;トリル基(すべての置換異性体を含む)、キシリル基(すべての置換異性体を含む)、エチルフェニル基(すべての置換異性体を含む)、プロピルフェニル基(すべての分枝異性体、置換異性体を含む)、メチルエチルフェニル基(すべての置換異性体を含む)、トリメチルフェニル基(すべての置換異性体を含む)、ブチルフェニル基(すべての分枝異性体、置換異性体を含む)、メチルプロピルフェニル基(すべての分枝異性体、置換異性体を含む)、ジエチルフェニル基(すべての置換異性体を含む)、ジメチルエチルフェニル基(すべての置換異性体を含む)、ペンチルフェニル基(すべての分枝異性体、置換異性体を含む)、ヘキシルフェニル基(すべての分枝異性体、置換異性体を含む)、ヘプチルフェニル基(すべての分枝異性体、置換異性体を含む)、オクチルフェニル基(すべての分枝異性体、置換異性体を含む)、ノニルフェニル基(すべての分枝異性体、置換異性体を含む)、デシルフェニル基(すべての分枝異性体、置換異性体を含む)、ウンデシルフェニル基(すべての分枝異性体、置換異性体を含む)、ドデシルフェニル基(すべての分枝異性体、置換異性体を含む)、トリデシルフェニル基(すべての分枝異性体、置換異性体を含む)、テトラデシルフェニル基(すべての分枝異性体、置換異性体を含む)、ペンタデシルフェニル基(すべての分枝異性体、置換異性体を含む)、ヘキサデシルフェニル基(すべての分枝異性体、置換異性体を含む)、ヘプタデシルフェニル基(すべての分枝異性体、置換異性体を含む)、オクタデシルフェニル基(すべての分枝異性体、置換異性体を含む)などのアルキルアリール基;ベンジル基、フェネチル基、フェニルプロピル基(すべての分枝異性体を含む)、フェニルブチル基(すべての分枝異性体を含む)などのアリールアルキル基などが挙げられる。
チアジアゾール化合物としては、例えば、下記一般式(7)で表される1,3,4−チアジアゾール、下記一般式(8)で表される1,2,4−チアジアゾール化合物および下記一般式(13)で表される1,4,5−チアジアゾール化合物が挙げられる。
[式(7)〜(9)中、R21、R22、R23、R24、R25およびR26は同一でも異なっていてもよく、それぞれ水素原子または炭素数1〜20の炭化水素基を示し、c、d、e、f、gおよびhは同一でも異なっていてもよく、それぞれ0〜8の整数を示す。]
[式(7)〜(9)中、R21、R22、R23、R24、R25およびR26は同一でも異なっていてもよく、それぞれ水素原子または炭素数1〜20の炭化水素基を示し、c、d、e、f、gおよびhは同一でも異なっていてもよく、それぞれ0〜8の整数を示す。]
このようなチアジアゾール化合物の具体例としては、2,5−ビス(n−ヘキシルジチオ)−1,3,4−チアジアゾール、2,5−ビス(n−オクチルジチオ)−1,3,4−チアジアゾール、2,5−ビス(n−ノニルジチオ)−1,3,4−チアジアゾール、2,5−ビス(1,1,3,3−テトラメチルブチルジチオ)−1,3,4−チアジアゾール、3,5−ビス(n−ヘキシルジチオ)−1,2,4−チアジアゾール、3,5−ビス(n−オクチルジチオ)−1,2,4−チアジアゾール、3,5−ビス(n−ノニルジチオ)−1,2,4−チアジアゾール、3,5−ビス(1,1,3,3−テトラメチルブチルジチオ)−1,2,4−チアジアゾール、4,5−ビス(n−ヘキシルジチオ)−1,2,3−チアジアゾール、4,5−ビス(n−オクチルジチオ)−1,2,3−チアジアゾール、4,5−ビス(n−ノニルジチオ)−1,2,3−チアジアゾール、4,5−ビス(1,1,3,3−テトラメチルブチルジチオ)−1,2,3−チアジアゾールおよびこれらの混合物などを好ましく挙げることができる。
アルキルチオカルバモイル化合物としては、例えば、下記一般式(10)で表される化合物が挙げられる。
[式(10)中、R27、R28、R29およびR30は同一でも異なっていてもよく、それぞれ炭素数1〜20のアルキル基を示し、jは1〜8の整数を示す。]
このようなアルキルチオカルバモイル化合物の具体例としては、ビス(ジメチルチオカルバモイル)モノスルフィド、ビス(ジブチルチオカルバモイル)モノスルフィド、ビス(ジメチルチオカルバモイル)ジスルフィド、ビス(ジブチルチオカルバモイル)ジスルフィド、ビス(ジアミルチオカルバモイル)ジスルフィド、ビス(ジオクチルチオカルバモイル)ジスルフィドおよびこれらの混合物などを好ましく挙げることができる。
アルキルチオカーバメート化合物としては、例えば、下記一般式(11)で示される化合物が挙げられる。
[式(15)中、R31、R32、R33およびR34は同一でも異なっていてもよく、それぞれ炭素数1〜20のアルキル基を示し、R35は炭素数1〜10のアルキル基を示す。]
このようなアルキルチオカーバメート化合物の具体例としては、メチレンビス(ジブチルジチオカーバメート)、メチレンビス[ジ(2−エチルヘキシル)ジチオカーバメート]などを好ましく挙げることができる。
さらに、チオテルペン化合物としては、例えば、五硫化リンとピネンの反応物を、ジアルキルチオジプロピオネート化合物としては、例えば、ジラウリルチオジプロピオネート、ジステアリルチオジプロピオネートおよびこれらの混合物などを挙げることができる。
本発明においては、上記硫黄化合物の中でも、ジヒドロカルビルポリサルファイド、硫化エステル、硫化油脂、ジチオリン酸亜鉛化合物等の有機金属化合物およびチアジアゾール化合物からなる群より選ばれる少なくとも1種を用いると、加工効率および工具寿命の向上効果が一層高水準で得られるので好ましく、更に硫化エステルを用いることがより好ましい。
また、本発明にかかるリン化合物としては、具体的には例えば、リン酸エステル、酸性リン酸エステル、酸性リン酸エステルのアミン塩、塩素化リン酸エステル、亜リン酸エステルおよびホスホロチオネート、下記一般式(12)または(13)で表されるリン化合物の金属塩等が挙げられる。これらのリン化合物は、リン酸、亜リン酸またはチオリン酸とアルカノール、ポリエーテル型アルコールとのエステルあるいはその誘導体が挙げられる。
[式(12)中、X3、X4およびX5は同一でも異なっていてもよく、それぞれ酸素原子または硫黄原子を表し、X3、X4またはX5の少なくとも2つは酸素原子であり、R36、R37、およびR38は同一でも異なっていてもよく、それぞれ水素原子または炭素数1〜30の炭化水素基を表す]
[式(13)中、X6、X7、X8およびX9は同一でも異なっていてもよく、それぞれ酸素原子または硫黄原子を表し、X6、X7、X8またはX9の少なくとも3つは酸素原子であり、R39、R40およびR41は同一でも異なっていてもよく、それぞれ水素原子または炭素数1〜30の炭化水素基を表す。]
より具体的には、リン酸エステルとしては、トリブチルホスフェート、トリペンチルホスフェート、トリヘキシルホスフェート、トリヘプチルホスフェート、トリオクチルホスフェート、トリノニルホスフェート、トリデシルホスフェート、トリウンデシルホスフェート、トリドデシルホスフェート、トリトリデシルホスフェート、トリテトラデシルホスフェート、トリペンタデシルホスフェート、トリヘキサデシルホスフェート、トリヘプタデシルホスフェート、トリオクタデシルホスフェート、トリオレイルホスフェート、トリフェニルホスフェート、トリクレジルホスフェート、トリキシレニルホスフェート、クレジルジフェニルホスフェート、キシレニルジフェニルホスフェート等;
酸性リン酸エステルとしては、モノブチルアシッドホスフェート、モノペンチルアシッドホスフェート、モノヘキシルアシッドホスフェート、モノヘプチルアシッドホスフェート、モノオクチルアシッドホスフェート、モノノニルアシッドホスフェート、モノデシルアシッドホスフェート、モノウンデシルアシッドホスフェート、モノドデシルアシッドホスフェート、モノトリデシルアシッドホスフェート、モノテトラデシルアシッドホスフェート、モノペンタデシルアシッドホスフェート、モノヘキサデシルアシッドホスフェート、モノヘプタデシルアシッドホスフェート、モノオクタデシルアシッドホスフェート、モノオレイルアシッドホスフェート、ジブチルアシッドホスフェート、ジペンチルアシッドホスフェート、ジヘキシルアシッドホスフェート、ジヘプチルアシッドホスフェート、ジオクチルアシッドホスフェート、ジノニルアシッドホスフェート、ジデシルアシッドホスフェート、ジウンデシルアシッドホスフェート、ジドデシルアシッドホスフェート、ジトリデシルアシッドホスフェート、ジテトラデシルアシッドホスフェート、ジペンタデシルアシッドホスフェート、ジヘキサデシルアシッドホスフェート、ジヘプタデシルアシッドホスフェート、ジオクタデシルアシッドホスフェート、ジオレイルアシッドホスフェート等;
酸性リン酸エステルのアミン塩としては、前記酸性リン酸エステルのメチルアミン、エチルアミン、プロピルアミン、ブチルアミン、ペンチルアミン、ヘキシルアミン、ヘプチルアミン、オクチルアミン、ジメチルアミン、ジエチルアミン、ジプロピルアミン、ジブチルアミン、ジペンチルアミン、ジヘキシルアミン、ジヘプチルアミン、ジオクチルアミン、トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリプロピルアミン、トリブチルアミン、トリペンチルアミン、トリヘキシルアミン、トリヘプチルアミン、トリオクチルアミン等のアミンとの塩等;
塩素化リン酸エステルとしては、トリス・ジクロロプロピルホスフェート、トリス・クロロエチルホスフェート、トリス・クロロフェニルホスフェート、ポリオキシアルキレン・ビス[ジ(クロロアルキル)]ホスフェート等;
亜リン酸エステルとしては、ジブチルホスファイト、ジペンチルホスファイト、ジヘキシルホスファイト、ジヘプチルホスファイト、ジオクチルホスファイト、ジノニルホスファイト、ジデシルホスファイト、ジウンデシルホスファイト、ジドデシルホスファイト、ジオレイルホスファイト、ジフェニルホスファイト、ジクレジルホスファイト、トリブチルホスファイト、トリペンチルホスファイト、トリヘキシルホスファイト、トリヘプチルホスファイト、トリオクチルホスファイト、トリノニルホスファイト、トリデシルホスファイト、トリウンデシルホスファイト、トリドデシルホスファイト、トリオレイルホスファイト、トリフェニルホスファイト、トリクレジルホスファイト等;
ホスホロチオネートとしては、トリブチルホスホロチオネート、トリペンチルホスホロチオネート、トリヘキシルホスホロチオネート、トリヘプチルホスホロチオネート、トリオクチルホスホロチオネート、トリノニルホスホロチオネート、トリデシルホスホロチオネート、トリウンデシルホスホロチオネート、トリドデシルホスホロチオネート、トリトリデシルホスホロチオネート、トリテトラデシルホスホロチオネート、トリペンタデシルホスホロチオネート、トリヘキサデシルホスホロチオネート、トリヘプタデシルホスホロチオネート、トリオクタデシルホスホロチオネート、トリオレイルホスホロチオネート、トリフェニルホスホロチオネート、トリクレジルホスホロチオネート、トリキシレニルホスホロチオネート、クレジルジフェニルホスホロチオネート、キシレニルジフェニルホスホロチオネート、トリス(n−プロピルフェニル)ホスホロチオネート、トリス(イソプロピルフェニル)ホスホロチオネート、トリス(n−ブチルフェニル)ホスホロチオネート、トリス(イソブチルフェニル)ホスホロチオネート、トリス(s−ブチルフェニル)ホスホロチオネート、トリス(t−ブチルフェニル)ホスホロチオネート等
が挙げられる。
酸性リン酸エステルとしては、モノブチルアシッドホスフェート、モノペンチルアシッドホスフェート、モノヘキシルアシッドホスフェート、モノヘプチルアシッドホスフェート、モノオクチルアシッドホスフェート、モノノニルアシッドホスフェート、モノデシルアシッドホスフェート、モノウンデシルアシッドホスフェート、モノドデシルアシッドホスフェート、モノトリデシルアシッドホスフェート、モノテトラデシルアシッドホスフェート、モノペンタデシルアシッドホスフェート、モノヘキサデシルアシッドホスフェート、モノヘプタデシルアシッドホスフェート、モノオクタデシルアシッドホスフェート、モノオレイルアシッドホスフェート、ジブチルアシッドホスフェート、ジペンチルアシッドホスフェート、ジヘキシルアシッドホスフェート、ジヘプチルアシッドホスフェート、ジオクチルアシッドホスフェート、ジノニルアシッドホスフェート、ジデシルアシッドホスフェート、ジウンデシルアシッドホスフェート、ジドデシルアシッドホスフェート、ジトリデシルアシッドホスフェート、ジテトラデシルアシッドホスフェート、ジペンタデシルアシッドホスフェート、ジヘキサデシルアシッドホスフェート、ジヘプタデシルアシッドホスフェート、ジオクタデシルアシッドホスフェート、ジオレイルアシッドホスフェート等;
酸性リン酸エステルのアミン塩としては、前記酸性リン酸エステルのメチルアミン、エチルアミン、プロピルアミン、ブチルアミン、ペンチルアミン、ヘキシルアミン、ヘプチルアミン、オクチルアミン、ジメチルアミン、ジエチルアミン、ジプロピルアミン、ジブチルアミン、ジペンチルアミン、ジヘキシルアミン、ジヘプチルアミン、ジオクチルアミン、トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリプロピルアミン、トリブチルアミン、トリペンチルアミン、トリヘキシルアミン、トリヘプチルアミン、トリオクチルアミン等のアミンとの塩等;
塩素化リン酸エステルとしては、トリス・ジクロロプロピルホスフェート、トリス・クロロエチルホスフェート、トリス・クロロフェニルホスフェート、ポリオキシアルキレン・ビス[ジ(クロロアルキル)]ホスフェート等;
亜リン酸エステルとしては、ジブチルホスファイト、ジペンチルホスファイト、ジヘキシルホスファイト、ジヘプチルホスファイト、ジオクチルホスファイト、ジノニルホスファイト、ジデシルホスファイト、ジウンデシルホスファイト、ジドデシルホスファイト、ジオレイルホスファイト、ジフェニルホスファイト、ジクレジルホスファイト、トリブチルホスファイト、トリペンチルホスファイト、トリヘキシルホスファイト、トリヘプチルホスファイト、トリオクチルホスファイト、トリノニルホスファイト、トリデシルホスファイト、トリウンデシルホスファイト、トリドデシルホスファイト、トリオレイルホスファイト、トリフェニルホスファイト、トリクレジルホスファイト等;
ホスホロチオネートとしては、トリブチルホスホロチオネート、トリペンチルホスホロチオネート、トリヘキシルホスホロチオネート、トリヘプチルホスホロチオネート、トリオクチルホスホロチオネート、トリノニルホスホロチオネート、トリデシルホスホロチオネート、トリウンデシルホスホロチオネート、トリドデシルホスホロチオネート、トリトリデシルホスホロチオネート、トリテトラデシルホスホロチオネート、トリペンタデシルホスホロチオネート、トリヘキサデシルホスホロチオネート、トリヘプタデシルホスホロチオネート、トリオクタデシルホスホロチオネート、トリオレイルホスホロチオネート、トリフェニルホスホロチオネート、トリクレジルホスホロチオネート、トリキシレニルホスホロチオネート、クレジルジフェニルホスホロチオネート、キシレニルジフェニルホスホロチオネート、トリス(n−プロピルフェニル)ホスホロチオネート、トリス(イソプロピルフェニル)ホスホロチオネート、トリス(n−ブチルフェニル)ホスホロチオネート、トリス(イソブチルフェニル)ホスホロチオネート、トリス(s−ブチルフェニル)ホスホロチオネート、トリス(t−ブチルフェニル)ホスホロチオネート等
が挙げられる。
また、上記一般式(12)または(13)で表されるリン化合物の金属塩に関し、式中のR36〜R41で表される炭素数1〜30の炭化水素基としては、具体的には、アルキル基、シクロアルキル基、アルケニル基、アルキルシクロアルキル基、アリール基、アルキルアリール基、アリールアルキル基等が挙げられる。
上記アルキル基としては、例えばメチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基、トリデシル基、テトラデシル基、ペンタデシル基、ヘキサデシル基、ヘプタデシル基、オクタデシル基等のアルキル基(これらアルキル基は直鎖状でも分枝状でもよい)が挙げられる。
上記シクロアルキル基としては、例えば、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基等の炭素数5〜7のシクロアルキル基を挙げることができる。また上記アルキルシクロアルキル基としては、例えば、メチルシクロペンチル基、ジメチルシクロペンチル基、メチルエチルシクロペンチル基、ジエチルシクロペンチル基、メチルシクロヘキシル基、ジメチルシクロヘキシル基、メチルエチルシクロヘキシル基、ジエチルシクロヘキシル基、メチルシクロヘプチル基、ジメチルシクロヘプチル基、メチルエチルシクロヘプチル基、ジエチルシクロヘプチル基等の炭素数6〜11のアルキルシクロアルキル基(アルキル基のシクロアルキル基への置換位置も任意である)が挙げられる。
上記アルケニル基としては、例えば、ブテニル基、ペンテニル基、ヘキセニル基、ヘプテニル基、オクテニル基、ノネニル基、デセニル基、ウンデセニル基、ドデセニル基、トリデセニル基、テトラデセニル基、ペンタデセニル基、ヘキサデセニル基、ヘプタデセニル基、オクタデセニル基等のアルケニル基(これらアルケニル基は直鎖状でも分枝状でもよく、また二重結合の位置も任意である)が挙げられる。
上記アリール基としては、例えば、フェニル基、ナフチル基等のアリール基を挙げることができる。また上記アルキルアリール基としては、例えば、トリル基、キシリル基、エチルフェニル基、プロピルフェニル基、ブチルフェニル基、ペンチルフェニル基、ヘキシルフェニル基、ヘプチルフェニル基、オクチルフェニル基、ノニルフェニル基、デシルフェニル基、ウンデシルフェニル基、ドデシルフェニル基等の炭素数7〜18のアルキルアリール基(アルキル基は直鎖状でも分枝状でもよく、またアリール基への置換位置も任意である)が挙げられる。
上記アリールアルキル基としては、例えばベンジル基、フェニルエチル基、フェニルプロピル基、フェニルブチル基、フェニルペンチル基、フェニルヘキシル基等の炭素数7〜12のアリールアルキル基(これらアルキル基は直鎖状でも分枝状でもよい)が挙げられる。
R36〜R41で表される炭素数1〜30の炭化水素基は、炭素数1〜30のアルキル基または炭素数6〜24のアリール基であることが好ましく、更に好ましくは炭素数3〜18のアルキル基、更に好ましくは炭素数4〜12のアルキル基である。
R36、R37およびR38は同一でも異なっていてもよく、それぞれ水素原子または上記炭化水素基を表すが、R36、R37およびR38のうち、1〜3個が上記炭化水素基であることが好ましく、1〜2個が上記炭化水素基であることがより好ましく、2個が上記炭化水素基であることがさらに好ましい。
また、R39、R40およびR41は同一でも異なっていてもよく、それぞれ水素原子または上記炭化水素基を表すが、R39、R40およびR41のうち、1〜3個が上記炭化水素基であることが好ましく、1〜2個が上記炭化水素基であることがより好ましく、2個が上記炭化水素基であることがさらに好ましい。
一般式(12)で表されるリン化合物において、X3〜X5のうちの少なくとも2つは酸素原子であることが必要であるが、X3〜X5の全てが酸素原子であることが好ましい。また、一般式(13)で表されるリン化合物において、X6〜X9のうちの少なくとも3つは酸素原子であることが必要であるが、X6〜X9の全てが酸素原子であることが好ましい。
一般式(12)で表されるリン化合物としては、例えば、亜リン酸、モノチオ亜リン酸;上記炭素数1〜30の炭化水素基を1つ有する亜リン酸モノエステル、モノチオ亜リン酸モノエステル;上記炭素数1〜30の炭化水素基を2つ有する亜リン酸ジエステル、モノチオ亜リン酸ジエステル;上記炭素数1〜30の炭化水素基を3つ有する亜リン酸トリエステル、モノチオ亜リン酸トリエステル;およびこれらの混合物が挙げられる。これらの中でも、亜リン酸モノエステル、亜リン酸ジエステルが好ましく、亜リン酸ジエステルがより好ましい。
また、一般式(13)で表されるリン化合物としては、例えば、リン酸、モノチオリン酸;上記炭素数1〜30の炭化水素基を1つ有するリン酸モノエステル、モノチオリン酸モノエステル;上記炭素数1〜30の炭化水素基を2つ有するリン酸ジエステル、モノチオリン酸ジエステル;上記炭素数1〜30の炭化水素基を3つ有するリン酸トリエステル、モノチオリン酸トリエステル;およびこれらの混合物が挙げられる。これらの中でも、リン酸モノエステル、リン酸ジエステルが好ましく、リン酸ジエステルがより好ましい。
一般式(12)または(13)で表されるリン化合物の金属塩としては、当該リン化合物の酸性水素の一部または全部を金属塩基で中和した塩が挙げられる。かかる金属塩基としては、金属酸化物、金属水酸化物、金属炭酸塩、金属塩化物等が挙げられ、その金属としては、具体的には、リチウム、ナトリウム、カリウム、セシウム等のアルカリ金属、カルシウム、マグネシウム、バリウム等のアルカリ土類金属、亜鉛、銅、鉄、鉛、ニッケル、銀、マンガン等の重金属等が挙げられる。これらの中ではカルシウム、マグネシウム等のアルカリ土類金属および亜鉛が好ましい。
上記リン化合物の金属塩は、金属の価数やリン化合物のOH基あるいはSH基の数に応じその構造が異なり、従ってその構造については何ら限定されないが、例えば、酸化亜鉛1molとリン酸ジエステル(OH基が1つ)2molを反応させた場合、下記式(14)で表される構造の化合物が主成分として得られると考えられるが、ポリマー化した分子も存在していると考えられる。
また、例えば、酸化亜鉛1molとリン酸モノエステル(OH基が2つ)1molとを反応させた場合、下記式(15)で表される構造の化合物が主成分として得られると考えられるが、ポリマー化した分子も存在していると考えられる。
また、これらの2種以上の混合物も使用できる。
本発明においては、上記リン化合物の中でも、より高い加工効率および工具寿命の向上効果が得られることから、リン酸エステル、酸性リン酸エステル、酸性リン酸エステルのアミン塩およびホスホロチオネートが好ましいが、工具の腐食防止とより一層の加工効率向上効果が期待できることからリン酸エステル、ホスホロチオネートの少なくとも1種を用いることがより好ましい。
また、本発明の金属加工油組成物は、後述するように、金属加工以外の用途に適用可能であるが、本発明の金属加工油組成物を工作機械の摺動面用油として使用する場合には、酸性リン酸エステル、酸性リン酸エステルのアミン塩を含有することが好ましい。また、本発明の金属加工油組成物を油圧作動油として使用する場合には、リン酸エステルが好ましい。さらに、摺動面用油と油圧作動油との兼用油として用いる場合には、酸性リン酸エステルおよび酸性リン酸エステルのアミン塩から選ばれる少なくとも1種と、リン酸エステルと、を組み合わせて用いることが好ましい。
本発明の金属加工油組成物は、(C)極圧剤として硫黄化合物またはリン化合物の一方のみを含有するものであってもよく、硫黄化合物とリン化合物との双方を含有するものであってもよい。加工効率および工具寿命の向上効果がより高められる点からは、リン化合物単独または硫黄化合物およびリン化合物の双方を含有することが好ましく、硫黄化合物とリン化合物との双方を含有することがより好ましい。これら硫黄化合物またはリン化合物単独あるいは両者の組合せのケースにおいて、金属分を含有しない硫黄化合物またはリン化合物を用いた場合には、それらに加えて、前記したジチオリン酸亜鉛化合物、ジチオカルバミン酸亜鉛化合物、ジチオリン酸モリブデン化合物、ジチオカルバミン酸モリブデン化合物、リン化合物の金属塩等の有機金属化合物を更に含有することが最も好ましい。
(C)極圧剤の含有量は、加工効率および工具寿命向上の点から、組成物全量基準で、0.005質量%以上であることが好ましく、0.01質量%以上であることがより好ましく、0.05質量%以上であることが更に好ましく、0.5質量%以上であることが一層好ましく、1.0質量%以上であることが特に好ましい。また、異常摩耗の防止の点から、(C)極圧剤の含有量は、組成物全量基準で、20質量%以下であることが好ましく、15質量%以下であることがより好ましく、10質量%以下であることが更に好ましく、7質量%以下であることが一層好ましく、5質量%以下であることが特に好ましい。
本発明の金属加工油組成物は、加工効率および工具寿命がより高められる点から、油性剤を更に含有することができる。油性剤としては、(a)アルコール、(b)カルボン酸、(c)不飽和カルボン酸の硫化物、(d)下記一般式(16)で表される化合物、(e)下記一般式(17)で表される化合物、(f)ポリオキシアルキレン化合物、(g)エステル、(h)多価アルコールのヒドロカルビルエーテル、(i)アミンなどを挙げることができる。
[式(16)中、R42は炭素数1〜30の炭化水素基を表し、pは1〜6の整数を表し、qは0〜5の整数を表す。]
[式(17)中、R43は炭素数1〜30の炭化水素基を表し、rは1〜6の整数を表し、sは0〜5の整数を表す。]
(a)アルコールは、1価アルコールでも多価アルコールでもよい。より高い加工効率および工具寿命が得られる点から、炭素数1〜40の1価アルコールが好ましく、更に好ましくは炭素数1〜25のアルコールであり、最も好ましくは炭素数8〜18のアルコールである。具体的には、上記基油のエステルを構成するアルコールの例を挙げることができる。これらのアルコールは直鎖状でも分枝を有していてもよく、また飽和でも不飽和でもよい。
(b)カルボン酸は1塩基酸でも多塩基酸でもよい。より高い加工効率および工具寿命が得られる点から、炭素数1〜40の1価のカルボン酸が好ましく、更に好ましくは炭素数5〜25のカルボン酸であり、最も好ましくは炭素数5〜20のカルボン酸である。具体的には、上記基油としてのエステルを構成するカルボン酸の例を挙げることできる。これらのカルボン酸は、直鎖状でも分枝を有していてもよく、飽和でも不飽和でもよい。
(c)不飽和カルボン酸の硫化物としては、例えば、上記(b)のカルボン酸のうち、不飽和のものの硫化物を挙げることができる。具体的には例えば、オレイン酸の硫化物を挙げることができる。
(d)上記一般式(16)で表される化合物において、R42で表される炭素数1〜30の炭化水素基の例としては、例えば炭素数1〜30の直鎖または分枝アルキル基、炭素数5〜7のシクロアルキル基、炭素数6〜30のアルキルシクロアルキル基、炭素数2〜30の直鎖または分枝アルケニル基、炭素数6〜10のアリール基、炭素数7〜30のアルキルアリール基、および炭素数7〜30のアリールアルキル基を挙げることができる。これらの中では、炭素数1〜30の直鎖または分枝アルキル基であることが好ましく、更に好ましくは炭素数1〜20の直鎖または分枝アルキル基であり、更に好ましくは炭素数1〜10の直鎖または分枝アルキル基であり、最も好ましくは炭素数1〜4の直鎖または分枝アルキル基である。炭素数1〜4の直鎖または分枝アルキル基の例としては、メチル基、エチル基、直鎖または分枝のプロピル基および直鎖または分枝のブチル基を挙げることができる。
水酸基の置換位置は任意であるが、2個以上の水酸基を有する場合には隣接する炭素原子に置換していることが好ましい。pは好ましくは1〜3の整数であり、更に好ましくは2である。qは好ましくは0〜3の整数であり、更に好ましくは1または2である。一般式(16)で表される化合物の例としては、p−tert−ブチルカテコールを挙げることができる。
(e)上記一般式(17)で表される化合物において、R43で表される炭素数1〜30の炭化水素基の例としては、前記一般式(16)中のR42で表される炭素数1〜30の炭化水素基の例と同じものを挙げることができ、また好ましいものの例も同じである。水酸基の置換位置は任意であるが、2個以上の水酸基を有する場合には隣接する炭素原子に置換していることが好ましい。rは好ましくは1〜3の整数であり、更に好ましくは2である。sは好ましくは0〜3の整数であり、更に好ましくは1または2である。一般式(17)で表される化合物の例としては、2,2−ジヒドロキシナフタレン、2,3−ジヒドロキシナフタレンを挙げることができる。
(f)ポリオキシアルキレン化合物としては、例えば下記一般式(18)または(19)で表される化合物を挙げることができる。
R44O−(R45O)t−R46 (18)
[式(18)中、R44およびR46は各々独立に水素原子または炭素数1〜30の炭化水素基を表し、R45は炭素数2〜4のアルキレン基を表し、tは数平均分子量が100〜3500となるような整数を表す。]
A−[(R47O)u−R48]v (19)
[式(19)中、Aは、水酸基を3〜10個有する多価アルコールの水酸基の水素原子の一部または全てを取り除いた残基を表し、R47は炭素数2〜4のアルキレン基を表し、R48は水素原子または炭素数1〜30の炭化水素基を表し、uは数平均分子量が100〜3500となるような整数を表し、vはAの水酸基から取り除かれた水素原子の個数と同じ数を表す。]
R44O−(R45O)t−R46 (18)
[式(18)中、R44およびR46は各々独立に水素原子または炭素数1〜30の炭化水素基を表し、R45は炭素数2〜4のアルキレン基を表し、tは数平均分子量が100〜3500となるような整数を表す。]
A−[(R47O)u−R48]v (19)
[式(19)中、Aは、水酸基を3〜10個有する多価アルコールの水酸基の水素原子の一部または全てを取り除いた残基を表し、R47は炭素数2〜4のアルキレン基を表し、R48は水素原子または炭素数1〜30の炭化水素基を表し、uは数平均分子量が100〜3500となるような整数を表し、vはAの水酸基から取り除かれた水素原子の個数と同じ数を表す。]
上記一般式(18)中、R44およびR46の少なくとも一方は水素原子であることが好ましい。R44およびR46で表される炭素数1〜30の炭化水素基としては、例えば上記一般式(16)のR42で表される炭素数1〜30の炭化水素基の例と同じものを挙げることができ、また好ましいものの例も同じである。R45で表される炭素数2〜4のアルキレン基としては、具体的には例えば、エチレン基、プロピレン基(メチルエチレン基)、ブチレン基(エチルエチレン基)を挙げることができる。tは、好ましくは数平均分子量が300〜2000となるような整数であり、更好ましくは数平均分子量が500〜1500となるような整数である。
また、上記一般式(19)中、Aを構成する3〜10の水酸基を有する多価アルコールの具体例としては、グリセリン、ポリグリセリン(グリセリンの2〜4量体、例えば、ジグリセリン、トリグリセリン、テトラグリセリン)、トリメチロールアルカン(トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、トリメチロールブタン)およびこれらの2〜4量体、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、1,2,4−ブタントリオール、1,3,5−ペンタントリオール、1,2,6−ヘキサントリオール、1,2,3,4−ブタンテトロ−ル、ソルビトール、ソルビタン、ソルビトールグリセリン縮合物、アドニトール、アラビトール、キシリトール、マンニトール、イジリトール、タリトール、ズルシトール、アリトールなどの多価アルコール;キシロース、アラビノース、リボース、ラムノース、グルコース、フルクトース、ガラクトース、マンノース、ソルボース、セロビオース、マントース、イソマントース、トレハロース、およびシュクロースなどの糖類を挙げることができる。これらの中でもグリセリン、ポリグリセリン、トリメチロールアルカン、およびこれらの2〜4量体、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、ソルビトール、またはソルビタンが好ましい。
R47で表される炭素数2〜4のアルキレン基の例としては、上記一般式(18)のR45で表される炭素数2〜4のアルキレン基の例と同じものを挙げることができる。またR48で表される炭素数1〜30の炭化水素基の例としては、前記一般式(16)のR42で表される炭素数1〜30の炭化水素基の例と同じものを挙げることができ、また好ましいものの例も同じである。v個のR48のうち少なくとも一つが水素原子であることが好ましく、全て水素原子であることが更に好ましい。uは、好ましくは数平均分子量が300〜2000となるような整数であり、更に好ましくは数平均分子量が500〜1500となるような整数である。
(g)エステルとしては、これを構成するアルコールが1価アルコールでも多価アルコールでもよく、またカルボン酸は一塩基酸でも多塩基酸であってもよい。なお、ここでいうエステルは、本発明の金属加工油組成物の必須成分であるトリエステルと区別されるものである。以下の説明では、便宜上、前者を「エステル油性剤」という。
エステル油性剤を構成する1価アルコールおよび多価アルコールの例としては、1価アルコールでも多価アルコールでもよく、また、エステル油性剤を構成する酸としては一塩基酸でも多塩基酸であってもよい。
エステル油性剤を構成する1価アルコールおよび多価アルコールとしては、本願発明の金属加工油組成物の必須成分であるエステル油の場合と同様のものを用いることができる。
エステル油性剤を構成するアルコールは、上述したように1価アルコールであっても多価アルコールであってもよいが、より優れた加工効率および工具寿命が達成可能となる点、並びに流動点の低いものがより得やすく、冬季および寒冷地での取り扱い性がより向上する等の点から、多価アルコールであることが好ましい。また、多価アルコールのエステルを用いると、切削・研削加工において、加工物の仕上げ面精度の向上と工具刃先の摩耗防止効果がより大きくなる。
また、エステル油性剤を構成する一塩基酸および多塩基酸としては、本願発明の金属加工油組成物の必須成分であるエステル油の場合と同様のものを用いることができる。
エステル油性剤におけるアルコールと酸との組み合わせは任意であって特に制限されないが、本発明で使用可能なエステル油性剤としては、例えば下記のエステルを挙げることができる。
(i)一価アルコールと一塩基酸とのエステル
(ii)多価アルコールと一塩基酸とのエステル
(iii)一価アルコールと多塩基酸とのエステル
(iv)多価アルコールと多塩基酸とのエステル
(v)一価アルコール、多価アルコールとの混合物と多塩基酸との混合エステル
(vi)多価アルコールと一塩基酸、多塩基酸との混合物との混合エステル
(vii)一価アルコール、多価アルコールとの混合物と一塩基酸、多塩基酸との混合エステル。
(i)一価アルコールと一塩基酸とのエステル
(ii)多価アルコールと一塩基酸とのエステル
(iii)一価アルコールと多塩基酸とのエステル
(iv)多価アルコールと多塩基酸とのエステル
(v)一価アルコール、多価アルコールとの混合物と多塩基酸との混合エステル
(vi)多価アルコールと一塩基酸、多塩基酸との混合物との混合エステル
(vii)一価アルコール、多価アルコールとの混合物と一塩基酸、多塩基酸との混合エステル。
なお、アルコール成分として多価アルコールを用いた場合、多価アルコール中の水酸基全てがエステル化された完全エステルでもよく、あるいは水酸基の一部がエステル化されず水酸基のままで残っている部分エステルでもよい。また、カルボン酸成分として多塩基酸を用いた場合、多塩基酸中のカルボキシル基全てがエステル化された完全エステルでもよく、あるいはカルボキシル基の一部がエステル化されずカルボキシル基のままで残っている部分エステルであってもよい。
エステル油性剤の合計炭素数には特に制限はないが、加工効率および工具寿命の向上の点から、合計炭素数が7以上のエステルが好ましく、9以上のエステルが更に好ましく、11以上のエステルが最も好ましい。また、ステインや腐食の発生を増大させない点、並びに有機材料との適合性の点から、合計炭素数が60以下のエステルが好ましく、45以下のエステルがより好ましく、26以下のエステルが更に好ましく、24以下のエステルが一層好ましく、22以下のエステルが最も好ましい。
(h)多価アルコールのヒドロカルビルエーテルを構成する多価アルコールとしては、本願発明の金属加工油組成物の必須成分であるエステル油の場合と同様のものを用いることができる。
より好ましくは、エチレングリコール、プロピレングリコール、ネオペンチルグリコール、グリセリン、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ソルビタン、およびこれらの混合物等である。これらの中でも、加工効率および工具寿命の向上の点から、グリセリンが最も好ましい。
多価アルコールのヒドロカルビルエーテルとは、上記多価アルコールの水酸基の一部または全部をヒドロカルビルエーテル化したものである。加工効率および工具寿命の向上の点からは、多価アルコールの水酸基の一部をヒドロカルビルエーテル化したもの(部分エーテル化物)が好ましい。ここでいうヒドロカルビル基とは、炭素数1〜24のアルキル基、炭素数2〜24のアルケニル基、炭素数5〜7のシクロアルキル基、炭素数6〜11のアルキルシクロアルキル基、炭素数6〜10のアリール基、炭素数7〜18のアルカリール基、炭素数7〜18のアラルキル基等の炭素数1〜24の炭化水素基を表す。
炭素数1〜24のアルキル基としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、直鎖または分枝のペンチル基、直鎖または分枝のヘキシル基、直鎖または分枝のヘプチル基、直鎖または分枝のオクチル基、直鎖または分枝のノニル基、直鎖または分枝のデシル基、直鎖または分枝のウンデシル基、直鎖または分枝のドデシル基、直鎖または分枝のトリデシル基、直鎖または分枝のテトラデシル基、直鎖または分枝のペンタデシル基、直鎖または分枝のヘキサデシル基、直鎖または分枝のヘプタデシル基、直鎖または分枝のオクタデシル基、直鎖または分枝のノナデシル基、直鎖または分枝のイコシル基、直鎖または分枝のヘンイコシル基、直鎖または分枝のドコシル基、直鎖または分枝のトリコシル基、直鎖または分枝のテトラコシル基等が挙げられる。
炭素数2〜24のアルケニル基としては、ビニル基、直鎖または分枝のプロペニル基、直鎖または分枝のブテニル基、直鎖または分枝のペンテニル基、直鎖または分枝のへキセニル基、直鎖または分枝のヘプテニル基、直鎖または分枝のオクテニル基、直鎖または分枝のノネニル基、直鎖または分枝のデセニル基、直鎖または分枝のウンデセニル基、直鎖または分枝のドデセニル基、直鎖または分枝のトリデセニル基、直鎖または分枝のテトラデセニル基、直鎖または分枝のペンタデセニル基、直鎖または分枝のヘキサデセニル基、直鎖または分枝のヘプタデセニル基、直鎖または分枝のオクタデセニル基、直鎖または分枝のノナデセニル基、直鎖または分枝のイコセニル基、直鎖または分枝のヘンイコセニル基、直鎖または分枝のドコセニル基、直鎖または分枝のトリコセニル基、直鎖または分枝のテトラコセニル基等が挙げられる。
炭素数5〜7のシクロアルキル基としては、シクリペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基等が挙げられる。炭素数6〜11のアルキルシクロアルキル基としては、メチルシクロペンチル基、ジメチルシクロペンチル基(全ての構造異性体を含む。)、メチルエチルシクロペンチル基(全ての構造異性体を含む。)、ジエチルシクロペンチル基(全ての構造異性体を含む。)、メチルシクロヘキシル基、ジメチルシクロヘキシル基(全ての構造異性体を含む。)、メチルエチルシクロヘキシル基(全ての構造異性体を含む。)、ジエチルシクロヘキシル基(全ての構造異性体を含む。)、メチルシクロヘプチル基、ジメチルシクロヘプチル基(全ての構造異性体を含む。)、メチルエチルシクロヘプチル基(全ての構造異性体を含む。)、ジエチルシクロヘプチル基(全ての構造異性体を含む。)等が挙げられる。
炭素数6〜10のアリール基としては、フェニル基、ナフチル基等が挙げられる。炭素数7〜18のアルカリール基としては、トリル基(全ての構造異性体を含む。)、キシリル基(全ての構造異性体を含む。)、エチルフェニル基(全ての構造異性体を含む。)、直鎖または分枝のプロピルフェニル基(全ての構造異性体を含む。)、直鎖または分枝のブチルフェニル基(全ての構造異性体を含む。)、直鎖または分枝のペンチルフェニル基(全ての構造異性体を含む。)、直鎖または分枝のヘキシルフェニル基(全ての構造異性体を含む。)、直鎖または分枝のヘプチルフェニル基(全ての構造異性体を含む。)、直鎖または分枝のオクチルフェニル基(全ての構造異性体を含む。)、直鎖または分枝のノニルフェニル基(全ての構造異性体を含む。)、直鎖または分枝のデシルフェニル基(全ての構造異性体を含む。)、直鎖または分枝のウンデシルフェニル基(全ての構造異性体を含む。)、直鎖または分枝のドデシルフェニル基(全ての構造異性体を含む。)等が挙げられる。
炭素数7〜12のアラルキル基としては、ベンジル基、フェニルエチル基、フェニルプロピル基(プロピル基の異性体を含む。)フェニルブチル基(ブチル基の異性体を含む。)、フェニルペンチル基(ペンチル基の異性体を含む。)、フェニルヘキシル基(ヘキシル基の異性体を含む。)等が挙げられる。
これらの中では、加工効率および工具寿命の向上の点から、炭素数2〜18の直鎖または分枝のアルキル基、炭素数2〜18の直鎖または分枝のアルケニル基が好ましく、炭素数3〜12の直鎖または分枝のアルキル基、オレイル基(オレイルアルコールから水酸基を除いた残基)がより好ましい。
(i)アミンとしては、モノアミンが好ましく使用される。モノアミンの炭素数は、好ましくは6〜24であり、より好ましくは12〜24である。ここでいう炭素数とはモノアミンに含まれる総炭素数の意味であり、モノアミンが2個以上の炭化水素基を有する場合にはその合計炭素数を表す。
本発明で用いられるモノアミンとしては、第1級モノアミン、第2級モノアミン、第3級モノアミンの何れもが使用可能であるが、加工効率および工具寿命の向上の点から、第1級モノアミンが好ましい。
モノアミンの窒素原子に結合する炭化水素基としては、アルキル基、アルケニル基、シクロアルキル基、アルキルシクロアルキル基、アリール基、アルキルアリール基、アリールアルキル基等の何れもが使用可能であるが、加工効率および工具寿命の向上の点から、アルキル基またはアルケニル基であることが好ましい。アルキル基、アルケニル基としては、直鎖状のものであっても分枝鎖状のものであっても良いが、加工効率および工具寿命の向上の点から、直鎖状のものが好ましい。
本発明で用いられるモノアミンの好ましいものとしては、具体的には例えば、ヘキシルアミン(全ての異性体を含む)、ヘプチルアミン(全ての異性体を含む)、オクチルアミン(全ての異性体を含む)、ノニルアミン(全ての異性体を含む)、デシルアミン(全ての異性体を含む)、ウンデシルアミン(全ての異性体を含む)、ドデシルアミン(全ての異性体を含む)、トリデシルアミン(全ての異性体を含む)、テトラデシルアミン(全ての異性体を含む)、ペンタデシルアミン(全ての異性体を含む)、ヘキサデシルアミン(全ての異性体を含む)、ヘプタデシルアミン(全ての異性体を含む)、オクタデシルアミン(全ての異性体を含む)、ノナデシルアミン(全ての異性体を含む)、イコシルアミン(全ての異性体を含む)、ヘンイコシルアミン(全ての異性体を含む)、ドコシルアミン(全ての異性体を含む)、トリコシルアミン(全ての異性体を含む)、テトラコシルアミン(全ての異性体を含む)、オクタデセニルアミン(全ての異性体を含む)(オレイルアミン等を含む)およびこれらの2種以上の混合物などが挙げられる。これらの中でも、加工効率および工具寿命の向上の点から、炭素数12〜24の第1級モノアミンが好ましく、炭素数14〜20の第1級モノアミンがより好ましく、炭素数16〜18の第1級モノアミンがさらに好ましい。
本発明においては、上記油性剤(a)〜(i)の中から選ばれる1種のみを用いてもよく、また2種以上の混合物を用いてもよい。これらの中でも、加工効率および工具寿命の向上の点から、(b)カルボン酸および(i)アミンから選ばれる1種または2種以上の混合物であることが好ましい。
上記油性剤の含有量は特に制限はないが、加工効率および工具寿命の向上の点から、組成物全量基準で、好ましくは0.01質量%以上、より好ましくは0.05質量%以上、更に好ましくは0.1質量%以上である。また、安定性の点から、油性剤の含有量は、組成物全量基準で、好ましくは15質量%以下、より好ましくは10質量%以下、更に好ましくは5質量%以下である。
本発明においては、上述の極圧剤または油性剤の一方のみを用いてもよいが、溶着と加工抵抗の増加とを防止して優れた加工効率および工具寿命を達成できる点から、極圧剤と油性剤とを併用することが好ましい。また、本発明の金属加工油組成物は、後述するように、工作機械の加工部以外の潤滑油として使用することが可能であるが、この場合には油性剤を含有することが望ましい。
また、本発明の金属加工油組成物においては、より優れた加工効率および工具寿命が得られる点から、有機酸塩を含有することが好ましい。有機酸塩としては、スルフォネート、フェネート、サリシレート、並びにこれらの混合物が好ましく用いられる。これらの有機酸塩の陽性成分としては、ナトリウム、カリウムなどのアルカリ金属;マグネシウム、カルシウム、バリウムなどのアルカリ土類金属;アンモニア、炭素数1〜3のアルキル基を有するアルキルアミン(モノメチルアミン、ジメチルアミン、トリメチルアミン、モノエチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、モノプロピルアミン、ジプロピルアミン、トリプロピルアミンなど)、炭素数1〜3のアルカノール基を有するアルカノールアミン(モノメタノールアミン、ジメタノールアミン、トリメタノールアミン、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、モノプロパノールアミン、ジプロパノールアミン、トリプロパノールアミンなど)などのアミン、亜鉛などが挙げられるが、これらの中でもアルカリ金属またはアルカリ土類金属が好ましく、カルシウムが特に好ましい。有機酸塩の陽性成分がアルカリ金属またはアルカリ土類金属であると、より高い潤滑性が得られる傾向にある。
有機酸塩の全塩基価は、好ましくは50〜500mgKOH/gであり、より好ましくは100〜450mgKOH/gである。有機酸塩の全塩基価が100mgKOH/g未満の場合は有機酸塩の添加による潤滑性向上効果が不十分となる傾向にあり、他方、全塩基価が500mgKOH/gを超える有機酸塩は、通常、製造が非常に難しく入手が困難であるため、それぞれ好ましくない。なお、ここでいう全塩基価とは、JIS K 2501「石油製品および潤滑油−中和価試験方法」の7.に準拠して測定される過塩素酸法による全塩基価[mgKOH/g]をいう。
また、有機酸塩の含有量は、組成物全量基準で好ましくは0.1〜30質量%であり、より好ましくは0.5〜25質量%であり、さらに好ましくは1〜20質量%である。有機酸塩の含有量が前記下限値未満の場合、有機酸塩の添加による加工効率および工具寿命の向上効果が不十分となる傾向にあり、他方、前記上限値を超えると金属加工油組成物の安定性が低下して析出物が生じやすくなる傾向にある。
スルフォネートは、任意の方法によって製造されたものが使用可能である。例えば、分子量100〜1500、好ましくは200〜700のアルキル芳香族化合物をスルフォン化することによって得られるアルキル芳香族スルフォン酸のアルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩、アミン塩およびこれらの混合物などが使用できる。ここでいうアルキル芳香族スルフォン酸としては、一般に鉱油の潤滑油留分のアルキル芳香族化合物をスルフォン化したものや、ホワイトオイル製造時に副生する、いわゆるマホガニー酸などの石油スルフォン酸や、洗剤の原料となるアルキルベンゼン製造プラントから副生したり、ポリオレフィンをベンゼンにアルキル化することにより得られる直鎖状または分枝状のアルキル基を有するアルキルベンゼンをスルフォン化したもの、あるいはジノニルナフタレンなどのアルキルナフタレンをスルフォン化したものなどの合成スルフォン酸などが挙げられる。また、上記のアルキル芳香族スルフォン酸と、アルカリ金属の塩基(アルカリ金属の酸化物や水酸化物など)、アルカリ土類金属の塩基(アルカリ土類金属の酸化物や水酸化物など)または上述したアミン(アンモニア、アルキルアミンやアルカノールアミンなど)とを反応させて得られるいわゆる中性(正塩)スルフォネート;中性(正塩)スルフォネートと、過剰のアルカリ金属の塩基、アルカリ土類金属の塩基またはアミンを水の存在下で加熱することにより得られるいわゆる塩基性スルフォネート;炭酸ガスの存在下で中性(正塩)スルフォネートをアルカリ金属の塩基、アルカリ土類金属の塩基またはアミンと反応させることにより得られるいわゆる炭酸塩過塩基性(超塩基性)スルフォネート;中性(正塩)スルフォネートをアルカリ金属の塩基、アルカリ土類金属の塩基またはアミンならびにホウ酸または無水ホウ酸などのホウ酸化合物と反応させたり、または炭酸塩過塩基性(超塩基性)スルフォネートとホウ酸または無水ホウ酸などのホウ酸化合物を反応させることによって製造されるいわゆるホウ酸塩過塩基性(超塩基性)スルフォネート;およびこれらの混合物などが挙げられる。
また、フェネートとしては、具体的には、元素硫黄の存在下または不存在下で、炭素数4〜20のアルキル基を1〜2個有するアルキルフェノールと、アルカリ金属の塩基(アルカリ金属の酸化物や水酸化物など)、アルカリ土類金属の塩基(アルカリ土類金属の酸化物や水酸化物など)または上述したアミン(アンモニア、アルキルアミンやアルカノールアミンなど)とを反応させることにより得られる中性フェネート;中性フェネートと過剰のアルカリ金属の塩基、アルカリ土類金属の塩基またはアミンを水の存在下で加熱することにより得られる、いわゆる塩基性フェネート;炭酸ガスの存在下で中性フェネートをアルカリ金属の塩基、アルカリ土類金属の塩基またはアミンと反応させることにより得られる、いわゆる炭酸塩過塩基性(超塩基性)フェネート;中性フェネートをアルカリ金属の塩基、アルカリ土類金属の塩基またはアミンならびにホウ酸または無水ホウ酸などのホウ酸化合物と反応させたり、または炭酸塩過塩基性(超塩基性)フェネートとホウ酸または無水ホウ酸などのホウ酸化合物を反応させることによって製造される、いわゆるホウ酸塩過塩基性(超塩基性)フェネート;およびこれらの混合物などが挙げられる。
さらに、サリシレートとしては、具体的には、元素硫黄の存在下または不存在下で、炭素数4〜20のアルキル基を1〜2個有するアルキルサリチル酸と、アルカリ金属の塩基(アルカリ金属の酸化物や水酸化物など)、アルカリ土類金属の塩基(アルカリ土類金属の酸化物や水酸化物など)または上述したアミン(アンモニア、アルキルアミンやアルカノールアミンなど)とを反応させることにより得られる中性サリシレート;中性サリシレートと、過剰のアルカリ金属の塩基、アルカリ土類金属の塩基またはアミンを水の存在下で加熱することにより得られるいわゆる塩基性サリシレート;炭酸ガスの存在下で中性サリシレートをアルカリ金属の塩基、アルカリ土類金属の塩基またはアミンと反応させることにより得られるいわゆる炭酸塩過塩基性(超塩基性)サリシレート;中性サリシレートをアルカリ金属の塩基、アルカリ土類金属の塩基またはアミンならびにホウ酸または無水ホウ酸などのホウ酸化合物と反応させたり、または炭酸塩過塩基性(超塩基性)金属サリシレートとホウ酸または無水ホウ酸などのホウ酸化合物を反応させることによって製造されるいわゆるホウ酸塩過塩基性(超塩基性)サリシレート;およびこれらの混合物などが挙げられる。
本発明においては、有機酸塩を単独で用いてもよく、あるいは有機酸塩と他の添加剤とを組み合わせて用いてもよい。加工効率および工具寿命がより高められる点からは、有機酸塩を上記の極圧剤と組み合わせて用いることが好ましく、硫黄化合物、リン化合物および有機酸塩の3種を組み合わせて用いることが特に好ましい。
また、本発明の金属加工油組成物は酸化防止剤を更に含有していることが好ましい。酸化防止剤の添加により、構成成分の変質によるべたつきを防止することができ、また、熱・酸化安定性を向上させることができる。
使用できる酸化防止剤としては、フェノール系酸化防止剤、アミン系酸化防止剤、ジチオリン酸亜鉛系酸化防止剤、その他食品添加剤として使用されているものなどが挙げられる。
フェノール系酸化防止剤としては、潤滑油の酸化防止剤として用いられる任意のフェノール系化合物が使用可能であり、特に制限されるものでないが、例えば下記の一般式(20)および一般式(21)で表される化合物の中から選ばれる1種または2種以上のアルキルフェノール化合物が好ましいものとして挙げられる。
[式(20)中、R49は炭素数1〜4のアルキル基を示し、R50は水素原子または炭素数1〜4のアルキル基を示し、R51は水素原子、炭素数1〜4のアルキル基、下記一般式(i)または(ii):
(一般式(20−i)中、R52は炭素数1〜6のアルキレン基を示し、R53は炭素数1〜24のアルキル基またはアルケニル基を示す。)
(一般式(20−ii)中、R54は炭素数1〜6のアルキレン基を示し、R55は炭素数1〜4のアルキル基を示し、R56は水素原子または炭素数1〜4のアルキル基を示し、wは0または1を示す。)
で表される基を示す。]
[一般式(21)中、R57およびR59は同一でも異なっていてもよく、それぞれ炭素数1〜4のアルキル基を示し、R58およびR60は同一でも異なっていてもよく、それぞれ水素原子または炭素数1〜4のアルキル基を示し、R61およびR62は同一でも異なっていてもよく、それぞれ炭素数1〜6のアルキレン基を示し、Aは炭素数1〜18のアルキレン基または下記の一般式(21−i):
−R63−S−R64− (21−i)
(一般式(21−i)中、R63およびR64は同一でも異なっていてもよく、それぞれ炭素数1〜6のアルキレン基を示す)
で表される基を示す。]
(一般式(20−i)中、R52は炭素数1〜6のアルキレン基を示し、R53は炭素数1〜24のアルキル基またはアルケニル基を示す。)
で表される基を示す。]
−R63−S−R64− (21−i)
(一般式(21−i)中、R63およびR64は同一でも異なっていてもよく、それぞれ炭素数1〜6のアルキレン基を示す)
で表される基を示す。]
本発明に使用されるアミン系酸化防止剤としては、潤滑油の酸化防止剤として用いられる任意のアミン系化合物が使用可能であり、特に限定されるものではないが、例えば、下記の一般式(22)で表されるフェニル−α−ナフチルアミンまたはN−p−アルキルフェニル−α−ナフチルアミン、並びに下記一般式(23)で表されるp,p’−ジアルキルジフェニルアミンの中から選ばれる1種または2種以上の芳香族アミンが好ましいものとして挙げられる。
[式(22)中、R65は水素原子またはアルキル基を示す。]
[式(23)中、R66およびR67は同一でも異なっていてもよく、それぞれアルキル基を示す。]
アミン系酸化防止剤の具体例としては、4−ブチル−4’−オクチルジフェニルアミン、フェニル−α−ナフチルアミン、オクチルフェニル−α−ナフチルアミン、ドデシルフェニル−α−ナフチルアミンおよびこれらの混合物などが挙げられる。
本発明に使用されるジチオリン酸亜鉛系酸化防止剤としては、具体的には、下記一般式(24)で表されるジチオリン酸亜鉛などが挙げられる。
[式(24)中、R68、R69、R70およびR71は同一でも異なっていてもよく、それぞれ炭化水素基を示す。]
また、食品添加剤として使用されている酸化防止剤も使用可能であり、上述したフェノール系酸化防止剤と一部重複するが、例えば、例えば、2,6−ジ−tert−ブチル−p−クレゾール(DBPC)、4,4’−メチレンビス(2,6−ジ−tert−ブチルフェノール)、4,4’−ビス(2,6−ジ−tert−ブチルフェノール)、4,4’−チオビス(6−tert−ブチル−o−クレゾール)、アスコルビン酸(ビタミンC)、アスコルビン酸の脂肪酸エステル、トコフェロール(ビタミンE)、3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシアニソール、2−tert−ブチル−4−ヒドロキシアニソール、3−tert−ブチル−4−ヒドロキシアニソール、1,2−ジハイドロ−6−エトキシ−2,2,4−トリメチルキノリン(エトキシキン)、2−(1,1−ジメチル)−1,4−ベンゼンジオール(TBHQ)、2,4,5−トリヒドロキシブチロフェノン(THBP)を挙げることができる。
これらの酸化防止剤の中でも、フェノール系酸化防止剤、アミン系酸化防止剤、並びに上記食品添加剤として使用されているものが好ましい。さらに、生分解性を重視する場合には、上記食品添加剤として使用されているものがより好ましく、中でもアスコルビン酸(ビタミンC)、アスコルビン酸の脂肪酸エステル、トコフェロール(ビタミンE)、2,6−ジ−tert−ブチル−p−クレゾール(DBPC)、3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシアニソール、2−tert−ブチル−4−ヒドロキシアニソール、3−tert−ブチル−4−ヒドロキシアニソール、1,2−ジハイドロ−6−エトキシ−2,2,4−トリメチルキノリン(エトキシキン)、2−(1,1−ジメチル)−1,4−ベンゼンジオール(TBHQ)、または2,4,5−トリヒドロキシブチロフェノン(THBP)が好ましく、アスコルビン酸(ビタミンC)、アスコルビン酸の脂肪酸エステル、トコフェロール(ビタミンE)、2,6−ジ−tert−ブチル−p−クレゾール(DBPC)、または3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシアニソールがより好ましい。
酸化防止剤の含有量は特に制限はないが、良好な熱・酸化安定性を維持させるためにその含有量は、組成物全量基準で0.01質量%以上が好ましく、更に好ましくは0.05質量%以上、最も好ましくは0.1質量%以上である。一方それ以上添加しても効果の向上が期待できないことからその含有量は10質量%以下であることが好ましく、更に好ましくは5質量%以下であり、最も好ましくは3質量%以下である。
また、本発明の金属加工油組成物には、上記した以外の従来公知の添加剤を含有することができる。かかる添加剤としては、例えば、上記したリン化合物、硫黄化合物以外の極圧剤(塩素系極圧剤を含む);ジエチレングリコールモノアルキルエーテル等の湿潤剤;アクリルポリマー、パラフィンワックス、マイクロワックス、スラックワックス、ポリオレフィンワックス等の造膜剤;脂肪酸アミン塩等の水置換剤;グラファイト、フッ化黒鉛、二硫化モリブデン、窒化ホウ素、ポリエチレン粉末等の固体潤滑剤;アミン、アルカノールアミン、アミド、カルボン酸、カルボン酸塩、スルホン酸塩、リン酸、リン酸塩、多価アルコールの部分エステル等の腐食防止剤;ベンゾトリアゾール、チアジアゾール等の金属不活性化剤;メチルシリコーン、フルオロシリコーン、ポリアクリレート等の消泡剤;アルケニルコハク酸イミド、ベンジルアミン、ポリアルケニルアミンアミノアミド等の無灰分散剤;等が挙げられる。これらの公知の添加剤を併用する場合の含有量は特に制限されないが、これらの公知の添加剤の合計含有量が組成物全量基準で0.1〜10質量%となるような量で添加するのが一般的である。
なお、本発明の金属加工油組成物は、上述のように塩素系極圧剤などの塩素系添加剤を含有してもよいが、安全性の向上および環境に対する負荷の低減の点からは、塩素系添加剤を含有しないことが好ましい。また、塩素濃度は、組成物全量基準で、1000質量ppm以下であることが好ましく、500質量ppm以下であることがより好ましく、200質量ppm以下であることが更に好ましく、100質量ppm以下であることが特に好ましい。
本発明の金属加工油組成物の動粘度は、油持出し量低減および加工部位への供給容易性の点から、40℃における動粘度は37mm2/s以下であることが必須であり、好ましくは30mm2/s以下であり、最も好ましくは25mm2/s以下である。一方、耐荷重能およびJIS規格適応の点から、40℃における動粘度は、10mm2/s以上であることが好ましく、更に好ましくは12mm2/s以上であり、最も好ましくは15mm2/s以上である。
本発明の金属加工油組成物の引火点(COC)は、火災等の危険回避および法規制上の要求の点から、250℃以上であることが必須であり、好ましくは260℃以上、更に好ましくは270℃以上である。一方、加工後の油剤除去性やステイン防止性の点からは300℃以下が好ましい。
なお金属加工油組成物の粘度および引火点に対しては、配合する添加剤も大きな影響を与えるため、単純にエステル油と炭化水素油の組合せだけでは粘度および引火点要求を満たす組成物は確定せず、総合的な判断が求められる点も本発明の特徴である。一般に極圧剤等の添加剤は粘度を上昇させ、引火点を低下させるものが多いだけに、本発明の組成物の調製には更なる困難が伴う。
上記構成を有する本発明の金属加工油組成物は、加工効率、工具寿命などの加工性能、更には取扱性に優れるものであるため、金属加工分野の広範な用途において好適に使用することができる。ここでいう金属加工とは、切削・研削加工に限定されず、広く金属加工全般を意味する。
金属加工の種類としては、具体的には、切削加工、研削加工、転造加工、鍛造加工、プレス加工、引き抜き加工、圧延加工等が挙げられる。これらの中でも、本発明の金属加工油組成物は切削加工、研削加工、転造加工などの用途に非常に有用である。
また本発明の金属加工油組成物は上述のように優れた加工性能を有するため重加工、難加工又は難加工材加工にも好適に用いることができる。
さらに、本発明の金属加工油組成物は、摺動面用油剤、軸受部分用油剤、油圧機器用油剤などの工作機械の加工部位以外の潤滑油剤として用いることが可能なものであり、従って工作機械の省スペース化、省エネルギー化を可能とする点で非常に有用である。
なお、本発明でいう摺動面用油剤とは、切削・研削加工に用いられる工作機械が備える構成部材のうち、当接する2平面の摺動運動の案内機構に用いられる潤滑油剤をいう。例えば、ベッド上を移動可能なテーブル上に被加工部材を配置し、テーブルを移動させて切削・研削加工用工具へ向けて被加工部材を搬送する工作機械においては、テーブルとベッドとの間の摺動面が摺動面用油剤により潤滑される。また、ベッド上を移動可能な台上に切削・研削加工用工具を固定し、その台を移動させて工具を被加工部材に向けて移動させる工作機械においては、台とベッドとの間の摺動面が摺動面用油剤により潤滑される。
このような摺動面用油には、摺動面での摩擦係数が小さいことやスティックスリップ防止性が高いなどの摩擦特性が求められる。工作機械の加工テーブルなどの摺動面においてスティックスリップが発生すると、その摩擦振動がそのまま被加工部材に転写され、その結果加工精度が低下したり、あるいはその振動から工具寿命が低下するなどの問題が生じる。本発明の金属組成物は、摺動面用油剤として用いた場合にこれらの現象を十分に防止することが可能なものであるが、摩擦特性の点からはリン化合物を更に含有することが好ましい。
また、軸受部分の潤滑には、油剤軸受潤滑とミスト軸受潤滑等の潤滑方法があるが、本発明の金属加工油組成物はこのどちらにも使用可能である。
油剤軸受潤滑とは、潤滑油を液体のまま軸受部に供給して当該部分の円滑な摺動を図る潤滑方式を意味し、潤滑油による軸受部の冷却等も期待できる。このような軸受潤滑用の潤滑油剤としては、より高温部で使用されることから熱劣化が起きにくい、つまり耐熱性に優れていることが要求されるが、本発明の金属加工油組成物はこのような油剤軸受潤滑にも用いることができるものである。
ミスト軸受潤滑とは、潤滑油をミスト発生装置により霧状にし、空気等の気体でその霧状の油を軸受部に供給して当該部分の円滑な摺動を図る潤滑方式を意味し、軸受部等の高温部では、空気等による冷却効果を期待できることから、近年の工作機械ではこの潤滑方式を採用している例が多い。このようなミスト潤滑用の潤滑油剤としては、より高温部で使用されることから熱劣化が起きにくい、つまり耐熱性に優れていることが要求されるが、本発明の金属加工油組成物はこのようなミスト軸受潤滑にも用いることができるものである。
油圧機器は、油圧にて機械の動作、制御を行うものであり、機械類の動作を司る油圧制御部分では潤滑、シール、冷却効果を期待される油圧作動油が使用される。油圧作動油は、潤滑油をポンプで高圧に圧縮し、油圧を発生させ、機器を動かすため、潤滑油に高い潤滑性と高い酸化安定性、熱安定性が求められが、本発明の金属加工油組成物はこのような油圧作動油にも用いることができるものである。本発明の金属加工油組成物を油圧作動油兼用油として使用する場合には、その潤滑性をさらに向上させるために、リン化合物を更に含有することが好ましい。
以下、実施例および比較例に基づき本発明を更に具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に何ら限定されるものではない。
[実施例1〜24、比較例1〜5]
実施例1〜24および比較例1〜5においては、それぞれ以下に示す基油および添加剤を用いて、表1〜6に示す組成、40℃粘度および引火点(COC)を有する金属加工油組成物を調製した。
(基油)
基油A:ネオペンチルグリコールとオレイン酸とのジエステル(40℃動粘度:24mm2/s、引火点(COC)286℃)
基油B:グリセリンとn−C8酸/n−C10酸のトリエステル(40℃動粘度:14mm2/s、引火点(COC)250℃)
基油C:グリセリンとn−C8酸/n−C10酸/オレイン酸のトリエステル(40℃動粘度:19mm2/s、引火点(COC)270℃)
基油D:トリメチロールプロパンとオレイン酸のトリエステル(40℃動粘度:46mm2/s、引火点(COC)308℃)
基油E:α−オレフィンオリゴマー(40℃動粘度:30mm2/s、引火点(COC)240℃)
基油F:鉱油(40℃動粘度:30mm2/s、引火点(COC)264℃)
基油G:鉱油(40℃動粘度:18mm2/s、引火点(COC)220℃)
(添加剤)
添加剤a:硫化エステル(硫黄分10.1質量%)
添加剤b:硫化油脂(硫黄分11.4質量%)
添加剤c:トリフェニルホスホロチオネート
添加剤d:トリクレジルホスフェート
添加剤e:ジアルキルジチオリン酸亜鉛
添加剤f:カルシウムスルホネート
添加剤g:2,6−ジ−t−ブチル−p−クレゾール
実施例1〜24および比較例1〜5においては、それぞれ以下に示す基油および添加剤を用いて、表1〜6に示す組成、40℃粘度および引火点(COC)を有する金属加工油組成物を調製した。
(基油)
基油A:ネオペンチルグリコールとオレイン酸とのジエステル(40℃動粘度:24mm2/s、引火点(COC)286℃)
基油B:グリセリンとn−C8酸/n−C10酸のトリエステル(40℃動粘度:14mm2/s、引火点(COC)250℃)
基油C:グリセリンとn−C8酸/n−C10酸/オレイン酸のトリエステル(40℃動粘度:19mm2/s、引火点(COC)270℃)
基油D:トリメチロールプロパンとオレイン酸のトリエステル(40℃動粘度:46mm2/s、引火点(COC)308℃)
基油E:α−オレフィンオリゴマー(40℃動粘度:30mm2/s、引火点(COC)240℃)
基油F:鉱油(40℃動粘度:30mm2/s、引火点(COC)264℃)
基油G:鉱油(40℃動粘度:18mm2/s、引火点(COC)220℃)
(添加剤)
添加剤a:硫化エステル(硫黄分10.1質量%)
添加剤b:硫化油脂(硫黄分11.4質量%)
添加剤c:トリフェニルホスホロチオネート
添加剤d:トリクレジルホスフェート
添加剤e:ジアルキルジチオリン酸亜鉛
添加剤f:カルシウムスルホネート
添加剤g:2,6−ジ−t−ブチル−p−クレゾール
実施例1〜24および比較例1〜5の各金属加工油組成物について以下の評価試験を行った。
(耐荷重能評価試験)
JISK2519に準拠し、曽田式四球試験機を用いて、回転数750rpm、荷重0.049MPaで60秒間保持し、焼付きが認められない場合は更に荷重を0.049MPa増やして60秒間保持する工程を繰り返し、焼付きが生じたときの荷重を耐荷重能として求めた。得られた結果を表1〜6に示す。
JISK2519に準拠し、曽田式四球試験機を用いて、回転数750rpm、荷重0.049MPaで60秒間保持し、焼付きが認められない場合は更に荷重を0.049MPa増やして60秒間保持する工程を繰り返し、焼付きが生じたときの荷重を耐荷重能として求めた。得られた結果を表1〜6に示す。
(摩擦特性評価試験)
直径24mm、厚さ6.9mmのディスク上に直径10mmのボール(SUJ−2)を配置し、ディスクとボールとの接触部位に金属加工油組成物を介在させた状態で、荷重800N、温度120℃の条件下、周波数50Hz、振幅1.5mmでボールを微振動させた。微振動開始後2分間は慣らし運転とし、その後の10分間摩擦係数を測定して平均摩擦係数を求めた。摩擦係数が低いと工具の長寿命化につながる。得られた結果を表1〜6に示す。
直径24mm、厚さ6.9mmのディスク上に直径10mmのボール(SUJ−2)を配置し、ディスクとボールとの接触部位に金属加工油組成物を介在させた状態で、荷重800N、温度120℃の条件下、周波数50Hz、振幅1.5mmでボールを微振動させた。微振動開始後2分間は慣らし運転とし、その後の10分間摩擦係数を測定して平均摩擦係数を求めた。摩擦係数が低いと工具の長寿命化につながる。得られた結果を表1〜6に示す。
(油持出し量評価試験)
JISK2246(さび止め油) 5.19に準拠し、縦80mm、横60mm、厚さ1〜2mmの試験片を試料油中に1分間浸漬し、引き上げ、24時間垂直に吊るした後、試験片の質量を測定し、単位面積当たりの付着量に換算した。得られた結果を表1〜6に示す。
JISK2246(さび止め油) 5.19に準拠し、縦80mm、横60mm、厚さ1〜2mmの試験片を試料油中に1分間浸漬し、引き上げ、24時間垂直に吊るした後、試験片の質量を測定し、単位面積当たりの付着量に換算した。得られた結果を表1〜6に示す。
Claims (3)
- エステル油と、炭化水素油と、組成物全量基準で0.005〜20質量%の極圧剤とを含有し、40℃における動粘度が37mm2/s以下であり、かつ、引火点が250℃以上であることを特徴とする金属加工油組成物。
- 組成物全量を基準として、前記エステル油の含有量が40〜90質量%であり、前記炭化水素油の含有量が5〜55質量%であることを特徴とする、請求項1に記載の金属加工油組成物。
- 前記エステル油として2〜6価の多価アルコールと炭素数4〜18の不飽和脂肪酸とのエステルを含有し、前記炭化水素油としてα−オレフィン重合体を含有することを特徴とする、請求項1又は2に記載の金属加工油組成物。
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