JP2008162494A - 航空機用空気入りタイヤ - Google Patents

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Abstract

【課題】タイヤ重量を低減する上、重荷重走行時の耐久性を大幅に向上させることが可能な航空機用空気入りタイヤを提供する。
【解決手段】一対のビード部1及び一対のサイドウォール部2と、両サイドウォール部2に連なるトレッド部3とを有し、前記一対のビード部1間にトロイド状に延在し、平行に配列した複数の有機繊維コードをゴム被覆した複数枚のカーカスプライよりなるバイアス構造のカーカス5を備えた航空機用空気入りタイヤにおいて、前記カーカス5がターンアッププライ5aとダウンプライ5bとからなり、前記ダウンプライ5bに、式(I):σ ≧ -0.01×E + 1.2及び式(II):σ ≧ 0.02[式中、σは、177℃における熱収縮応力(cN/dtex)であり;Eは、25℃における49N荷重時の弾性率(cN/dtex)である]の条件を満たす有機繊維コードを用いる。
【選択図】図1

Description

本発明は、航空機用空気入りタイヤに関し、特にタイヤ重量を低減する上、重荷重走行時の耐久性を大幅に向上させた航空機用空気入りタイヤに関するものである。
航空機用空気入りタイヤは、重荷重の航空機に装着され、離陸時には乗客、積荷、燃料を載せた過酷な使用条件において滑走路を走行し、着陸時には燃料が少なくなっているものの、機体の減速と共にタイヤにかかる荷重が増加するため、重荷重での走行時に優れた耐久性を具備していることが要求される。また一方、航空機用空気入りタイヤは、離着陸滑走の際に使用されるが、空中では全く不要となってしまうため、タイヤの重量の減少に対する要求も強い。
また、航空機用空気入りタイヤは、その負担する荷重が大きいことから、使用状態でのタイヤの撓みが非常に大きく設定されており、重荷重での走行時においては、タイヤのサイドウォール部の変形が大きく、カーカスを構成するコードの変形も大きくなる。そして、該コードには、局部的な屈曲変形によって大きな圧縮力が作用し、タイヤ負荷転動時においては、かかる圧縮力がコードに繰り返し作用するため、コードが疲労破断し易いという問題があった。特に、コードが有機繊維コードである場合には、疲労破断が顕著に生じる傾向にある。
この問題に対し、カーカスを構成するコードとして比較的高強度の有機繊維コードを用いる手法が一般的であり、該有機繊維コードの強度の更なる増加やその配置位置の選択、そして、該コードが形成するカーカスプライ間への層間ゴムの配置やその形状の設計等を行い、重荷重走行時の耐久性の向上を図ってきた。
例えば、特開平6−1105号公報(特許文献1)には、タイヤの軽量化と共にカーカスの強度を向上できる航空機用空気入りタイヤとして、カーカスを構成する有機繊維コードに、強度が9.0g/d以上の高強力ナイロンコードを適用した航空機用空気入りタイヤが開示されている。
一方、特開平6−143913号公報(特許文献2)には、耐破壊圧力性、耐バースト性及び耐カットバースト性に優れる上、タイヤ重量を低減できる空気入りバイアスタイヤとして、カーカス等を構成する有機繊維コードに、特定の傾斜角度で配向し、強度が9.0gr/d以上の超高強度ポリアミド繊維コードを適用した空気入りバイアスタイヤが開示されている。
特開平6−1105号公報 特開平6−143913号公報
しかしながら、本発明者らが検討したところ、重荷重時の走行によりタイヤが発熱した場合、従来の航空機用空気入りタイヤに用いられる高強度ナイロンコード等の有機繊維コードでは、強度保持の限界温度に達してしまうことがあり、重荷重時走行でのタイヤの耐久性の向上に関し、依然として改良の余地があることが分かった。
そこで、本発明の目的は、上記従来技術の問題を解決し、タイヤ重量を低減する上、重荷重走行時の耐久性を大幅に向上させることが可能な航空機用空気入りタイヤを提供することにある。
本発明者らは、上記目的を達成するために鋭意検討した結果、ターンアッププライとダウンプライとからなるバイアス構造のカーカスを有する航空機用空気入りタイヤにおいて、該ダウンプライを構成するコードとして、特定の熱収縮応力及び弾性率を有する有機繊維コードを適用することで、航空機用空気入りタイヤの重量を低減しつつ、重荷重走行時の耐久性を大幅に向上できることを見出し、本発明を完成させるに至った。
即ち、本発明の航空機用空気入りタイヤは、一対のビード部及び一対のサイドウォール部と、両サイドウォール部に連なるトレッド部とを有し、前記一対のビード部に埋設された少なくとも二対のビードコアと、前記一対のビード部間にトロイド状に延在し、平行に配列した複数の有機繊維コードをゴム被覆した複数枚のカーカスプライよりなるバイアス構造のカーカスとを備え、
前記カーカスが、前記ビードコアの対毎に該ビードコア間をトロイド状に延在する本体部と該ビードコアの周囲でタイヤ幅方向の内側から外側へ巻き返した巻き返し部とを有する少なくとも2枚のカーカスプライよりなるターンアッププライと、該ターンアッププライを巻き返し部も含めて外包する少なくとも2枚のカーカスプライよりなるダウンプライとからなり、
前記ダウンプライを構成する有機繊維コードが、下記式(I)及び式(II):
σ ≧ -0.01×E + 1.2 ・・・ (I)
σ ≧ 0.02 ・・・ (II)
[式中、σは、177℃における熱収縮応力(cN/dtex)であり;Eは、25℃における49N荷重時の弾性率(cN/dtex)である]の条件を満たすことを特徴とする。
ここで、上記有機繊維コードの177℃における熱収縮応力σは、一般的なディップ処理を施した加硫前の補強コードの25cmの長さ固定サンプルを5℃/分の昇温スピードで加熱して、177℃時にコードに発生する応力であり、また、上記有機繊維コードの25℃における49N荷重時の弾性率Eは、JISのコード引張り試験によるSSカーブの49N時の接線から算出した単位cN/dtexでの弾性率である。
本発明の航空機用空気入りタイヤの好適例においては、前記ターンアッププライの内の最外側に位置するターンアッププライと前記ダウンプライとの間に、平行に配列した複数の有機繊維コードをゴム被覆したカーカスプライを該有機繊維コードが互いに交差するように積層して形成された複数枚の補強カーカスプライを備え、
前記補強カーカスプライが、前記トレッド部の接地部分のタイヤ幅方向外側端部よりもタイヤ幅方向外側から前記ビード部のビードヒール部まで配置されており、
前記補強カーカスプライを構成する有機繊維コードが、上記式(I)及び式(II)の条件を満たす。
本発明の航空機用空気入りタイヤの好適例においては、前記ダウンプライを構成する有機繊維コードが、ポリケトン繊維のコードである。また、本発明の航空機用空気入りタイヤが前記補強カーカスプライを備える場合、該補強カーカスプライを構成する有機繊維コードとしては、ポリケトン繊維のコードが好ましい。
本発明の航空機用空気入りタイヤの他の好適例においては、前記ターンアッププライの内の最外側に位置するターンアッププライと前記ダウンプライとの間に、最外側に位置するターンアッププライのプライ間の厚さに対し1.5〜2倍の範囲の厚さを有する層間ゴムを配置している。この場合、有機繊維コードの熱収縮による応力を緩和することができる。
本発明の航空機用空気入りタイヤの他の好適例においては、前記ターンアッププライの内の最外側に位置するターンアッププライと前記ダウンプライとの間に、最外側に位置するターンアッププライのプライ間の厚さに対し0.7〜1.2倍の範囲の厚さを有するプレキュアゴムシートを配置している。
本発明によれば、バイアス構造のカーカスを構成するダウンプライに、特定の熱収縮応力及び弾性率を有する有機繊維コードをゴム被覆したカーカスプライを用いることにより、タイヤ重量を低減する上、重荷重走行時の耐久性を大幅に向上させた航空機用空気入りタイヤを提供することができる。
以下に、図を参照しながら本発明を詳細に説明する。図1は、本発明の航空機用空気入りタイヤの一例の左半分の断面図である。本発明の航空機用空気入りタイヤは、一対のビード部1及び一対のサイドウォール部2と、両サイドウォール部2に連なるトレッド部3とを有し、上記一対のビード部1に埋設された少なくとも二対のビードコア4と、上記一対のビード部1間にトロイド状に延在し、平行に配列した複数の有機繊維コードをゴム被覆した複数枚のカーカスプライよりなるバイアス構造のカーカス5とを備える。また、図示例のタイヤにおいて、各ビード部1は、3本のビードコア4a,4b,4cが埋設されたトリプルビード構造を形成している。
本発明の航空機用空気入りタイヤにおいて、上記カーカス5は、上記ビードコア4の対毎に該ビードコア4間をトロイド状に延在する本体部と該ビードコア4の周囲でタイヤ幅方向の内側から外側へ巻き返した巻き返し部とを有する少なくとも2枚のカーカスプライよりなるターンアッププライ5aと、該ターンアッププライ5aを巻き返し部も含めて外包する少なくとも2枚のカーカスプライよりなるダウンプライ5bとからなる。ここで、図示例のタイヤのターンアッププライ5aを構成するカーカスプライは、一対のビードコア4a,4b,4c夫々の相互間にトロイド状に延在しており、ダウンプライ5bを構成するカーカスプライと共にビード部1、サイドウォール部2及びトレッド部3を補強している。また、図示例のタイヤのダウンプライ5bは、ターンアッププライ5aを巻き返し部も含めて外包するように配置されており、その端部は、上記ビード部1のビードヒール部6から、ビード部1のビードベース部7に沿って、ビード部1のビードトウ部8まで延在している。ここで、ビードヒール部は、ビード部のタイヤ半径方向最内側で且つタイヤ幅方向最外側の部分であり、ビードベース部は、ビード部のタイヤ半径方向最内側の平らな部分であり、ビードトウ部は、ビード部のタイヤ半径方向最内側で且つタイヤ幅方向最内側の部分である。
更に、図示例のタイヤのカーカス5を構成するカーカスプライは、偶数枚で1組のターンアッププライ5a及びダウンプライ5bを形成することが好ましく、偶数枚のカーカスプライは、平行に配列した複数の有機繊維コードをゴム被覆したカーカスプライを該有機繊維コードが互いに交差するように積層してターンアッププライ5a及びダウンプライ5bを構成する。なお、図示例のタイヤにおいては、ターンアッププライ5aを構成するカーカスプライの枚数が多いため、全てのカーカスプライを図示するのは困難であり、これらカーカスプライを部分的に破線を用いて示す。また、図示例のタイヤは、上記バイアス構造のカーカス5のクラウン部のタイヤ半径方向外側に二層のカーカス補強層9を備えるが、本発明の航空機用空気入りタイヤにおいては、カーカス補強層の配設は必須ではなく、別の構造及び層数のカーカス補強層を配設することもできる。
また、本発明の航空機用空気入りタイヤのカーカス5において、ダウンプライ5bを形成するカーカスプライの枚数は、ターンアッププライ5aを形成するカーカスプライの枚数以下であることが好ましい。ここで、ダウンプライ5bを形成するカーカスプライの枚数が、ターンアッププライ5aを形成するカーカスプライの枚数より多いと、耐水圧性が低下する。
本発明の航空機用空気入りタイヤにおいて、上記ダウンプライ5bを構成する有機繊維コードが、下記式(I)及び式(II):
σ ≧ -0.01×E + 1.2 ・・・ (I)
σ ≧ 0.02 ・・・ (II)
[式中、σは、177℃における熱収縮応力(cN/dtex)であり;Eは、25℃における49N荷重時の弾性率(cN/dtex)である]の条件を満たすことを要する。
上記ダウンプライ5bを構成する有機繊維コードが、上記式(I)及び式(II)の条件を満たすと、該有機繊維コードの高温時における熱収縮応力が大きいため、重荷重走行時にタイヤが高温になる場合において、初期の比較的タイヤの歪が小さい時から高い剛性を発揮し、タイヤのサイドウォール部の径方向の曲げ剛性を上昇させて、タイヤの撓みを抑制し、その結果として、タイヤの耐久性を向上させることができる。また、ダウンプライ5bに、上記式(I)及び式(II)の条件を満たす有機繊維コードを適用した場合、航空機用空気入りタイヤに要求される耐久性を満足した上で、従来のナイロンコード等の有機繊維コードをダウンプライに適用した場合より、カーカスを構成するカーカスプライの全体の枚数を減らすことが可能であり、タイヤ重量を大幅に低減することができる。
なお、使用する有機繊維コードが、上記式(I)の関係を満たさない場合、即ち、熱収縮応力σが大きいものの弾性率Eが低いコードを使用すると、重荷重走行時のタイヤの撓みを十分に抑制することができず、タイヤの耐久性が低下し、一方、弾性率Eが高いものの熱収縮応力σが小さいコードを使用すると、重荷重走行時にタイヤが高温になってもコードが収縮しないため、タイヤのサイドウォール部の径方向曲げ剛性が上がらない。また、使用する有機繊維コードの177℃における熱収縮応力σが0.02cN/dtex未満では、重荷重走行時のたわみ量が大きくなってしまい、タイヤの耐久距離が不足してしまう。更に、使用する有機繊維コードの177℃における熱収縮応力σは0.4cN/dtex以上であることが好ましいが、該熱収縮応力σが1.5cN/dtex以上になると、加硫時の収縮力が大きくなり過ぎ、結果としてタイヤ内部のコード乱れやゴムの配置乱れを引き起こし、タイヤの耐久性の悪化やユニフォーミティーの悪化を招くおそれがある。
本発明の航空機用空気入りタイヤのダウンプライを構成する有機繊維コードとしては、ポリケトン繊維のコードが好ましい。該ポリケトン繊維のコードは、高温下で収縮し、室温に戻すと伸長する可逆性を有する。このため、高温下、即ち、重荷重走行時にダウンプライ中のポリケトン繊維コードが収縮しようとして剛性が高まり、タイヤのサイドウォール部の撓みを抑制することができる。
上記ポリケトン繊維のコードは、ポリケトン繊維を含むフィラメント束を撚ってなり、該ポリケトン繊維の原料のポリケトンとしては、下記一般式(III):
Figure 2008162494
[式中、Aは不飽和結合によって重合された不飽和化合物由来の部分であり、各繰り返し単位において同一でも異なっていてもよい]で表される繰り返し単位から実質的になるポリケトンが好ましい。また、該ポリケトンの中でも、繰り返し単位の97モル%以上が1-オキソトリメチレン[−CH2−CH2−CO−]であるポリケトンが好ましく、99モル%以上が1-オキソトリメチレンであるポリケトンが更に好ましく、100モル%が1-オキソトリメチレンであるポリケトンが最も好ましい。
上記ポリケトン繊維の原料のポリケトンは、部分的にケトン基同士、不飽和化合物由来の部分同士が結合していてもよいが、不飽和化合物由来の部分とケトン基が交互に配列している部分の割合が90質量%以上であることが好ましく、97質量%以上であることが更に好ましく、100質量%であることが最も好ましい。
また、上記式(III)において、Aを形成する不飽和化合物としては、エチレンが最も好ましいが、プロピレン,ブテン,ペンテン,シクロペンテン,ヘキセン,シクロヘキセン,ヘプテン,オクテン,ノネン,デセン,ドデセン,スチレン,アセチレン,アレン等のエチレン以外の不飽和炭化水素や、メチルアクリレート,メチルメタクリレート,ビニルアセテート,アクリルアミド,ヒドロキシエチルメタクリレート,ウンデセン酸,ウンデセノール,6-クロロヘキセン,N-ビニルピロリドン,スルニルホスホン酸のジエチルエステル,スチレンスルホン酸ナトリウム,アリルスルホン酸ナトリウム,ビニルピロリドン及び塩化ビニル等の不飽和結合を含む化合物等であってもよい。
更に、上記ポリケトンの重合度としては、下記式:
Figure 2008162494
[式中、t及びTは、純度98%以上のヘキサフルオロイソプロパノール及び該ヘキサフルオロイソプロパノールに溶解したポリケトンの希釈溶液の25℃での粘度管の流過時間であり;Cは、上記希釈溶液100mL中の溶質の質量(g)である]で定義される極限粘度[η]が1〜20dL/gの範囲にあることが好ましく、2〜10dL/gの範囲にあることが更に好ましく、3〜8dL/gの範囲にあることがより一層好ましい。極限粘度が1dL/g未満では、分子量が小さ過ぎて、高強度のポリケトン繊維コードを得ることが難しくなる上、紡糸時、乾燥時及び延伸時に毛羽や糸切れ等の工程上のトラブルが多発することがあり、一方、極限粘度が20dL/gを超えると、ポリマーの合成に時間及びコストがかかる上、ポリマーを均一に溶解させることが難しくなり、紡糸性及び物性に悪影響が出ることがある。
上記ポリケトンの繊維化方法としては、(1)未延伸糸の紡糸を行った後、多段熱延伸を行い、該多段熱延伸の最終延伸工程で特定の温度及び倍率で延伸する方法や、(2)未延伸糸の紡糸を行った後、熱延伸を行い、該熱延伸終了後の繊維に高い張力をかけたまま急冷却する方法が好ましい。上記(1)又は(2)の方法でポリケトンの繊維化を行うことで、上記ポリケトン繊維コードの作製に好適な所望のフィラメントを得ることができる。
ここで、上記ポリケトンの未延伸糸の紡糸方法としては、特に制限はなく、従来公知の方法を採用することができ、具体的には、特開平2−112413号、特開平4−228613号、特表平4−505344号に記載のようなヘキサフルオロイソプロパノールやm-クレゾール等の有機溶剤を用いる湿式紡糸法、国際公開第99/18143号、国際公開第00/09611号、特開2001−164422号、特開2004−218189号、特開2004−285221号に記載のような亜鉛塩、カルシウム塩、チオシアン酸塩、鉄塩等の水溶液を用いる湿式紡糸法が挙げられ、これらの中でも、上記塩の水溶液を用いる湿式紡糸法が好ましい。
例えば、有機溶剤を用いる湿式紡糸法では、ポリケトンポリマーをヘキサフルオロイソプロパノールやm-クレゾール等に0.25〜20質量%の濃度で溶解させ、紡糸ノズルより押し出して繊維化し、次いでトルエン,エタノール,イソプロパノール,n-ヘキサン,イソオクタン,アセトン,メチルエチルケトン等の非溶剤浴中で溶剤を除去、洗浄してポリケトンの未延伸糸を得ることができる。
一方、水溶液を用いる湿式紡糸法では、例えば、亜鉛塩、カルシウム塩、チオシアン酸塩、鉄塩等の水溶液に、ポリケトンポリマーを2〜30質量%の濃度で溶解させ、50〜130℃で紡糸ノズルから凝固浴に押し出してゲル紡糸を行い、更に脱塩、乾燥等してポリケトンの未延伸糸を得ることができる。ここで、ポリケトンポリマーを溶解させる水溶液には、ハロゲン化亜鉛と、ハロゲン化アルカリ金属塩又はハロゲン化アルカリ土類金属塩とを混合して用いることが好ましく、凝固浴には、水、金属塩の水溶液、アセトン、メタノール等の有機溶媒等を用いることができる。
また、得られた未延伸糸の延伸法としては、未延伸糸を該未延伸糸のガラス転移温度よりも高い温度に加熱して引き伸ばす熱延伸法が好ましく、更に、該未延伸糸の延伸は、上記(2)の方法では一段で行ってもよいが、多段で行うことが好ましい。該熱延伸の方法としては、特に制限はなく、例えば、加熱ロール上や加熱プレート上に糸を走行させる方法等を採用することができる。ここで、熱延伸温度は、110℃〜(ポリケトンの融点)の範囲が好ましく、総延伸倍率は、10倍以上であることが好ましい。
上記(1)の方法でポリケトンの繊維化を行う場合、上記多段熱延伸の最終延伸工程における温度は、110℃〜(最終延伸工程の一段前の延伸工程の延伸温度−3℃)の範囲が好ましく、また、多段熱延伸の最終延伸工程における延伸倍率は、1.01〜1.5倍の範囲が好ましい。一方、上記(2)の方法でポリケトンの繊維化を行う場合、熱延伸終了後の繊維にかける張力は、0.5〜4cN/dtexの範囲が好ましく、また、急冷却における冷却速度は、30℃/秒以上であることが好ましく、更に、急冷却における冷却終了温度は、50℃以下であることが好ましい。ここで、熱延伸されたポリケトン繊維の急冷却方法としては、特に制限はなく、従来公知の方法を採用することができ、具体的には、ロールを用いた冷却方法が好ましい。なお、こうして得られるポリケトン繊維は、弾性歪みの残留が大きいため、通常、緩和熱処理を施し、熱延伸後の繊維長よりも繊維長を短くすることが好ましい。ここで、緩和熱処理の温度は、50〜100℃の範囲が好ましく、また、緩和倍率は、0.980〜0.999倍の範囲が好ましい。
本発明の航空機用空気入りタイヤのダウンプライを構成する有機繊維コードの製法は、特に限定されない。上記有機繊維コードが、有機繊維のフィラメント束を複数本、好ましくは、2本又は3本撚り合わせてなる、即ち、双撚り構造である場合、例えば、上記フィラメント束に下撚りをかけ、次いでこれを複数合わせて、逆方向に上撚りをかけることで、撚糸コードとして得ることができる。また、上記有機繊維コードが有機繊維のフィラメント束1本を撚ってなる、即ち、片撚り構造である場合、例えば、上記有機繊維のフィラメント束を引きそろえて、一方の方向に撚りをかけることで、撚糸コードとして得ることができる。
本発明の航空機用空気入りタイヤにおいては、カーカスを構成するダウンプライに、上記式(I)及び式(II)の条件を満たす有機繊維コードを適用する限り特に制限されるものではない。従って、本発明の航空機用空気入りタイヤのターンアッププライを構成する有機繊維コードは、上記式(I)及び式(II)の条件を満たす必要はなく、該有機繊維コードを形成する有機繊維としては、ポリケトン繊維でもよいし、ナイロン繊維等の他の有機繊維でもよい。
また、図2に本発明の航空機用空気入りタイヤの他の例の左半分の断面図を示す。本発明の航空機用空気入りタイヤは、図2に示すように、上記ターンアッププライ5aの内の最外側に位置するターンアッププライと上記ダウンプライ5bとの間に、平行に配列した複数の有機繊維コードをゴム被覆したカーカスプライを該有機繊維コードが互いに交差するように積層して形成された複数枚の補強カーカスプライ10を備えてもよい。この場合、該補強カーカスプライ10は、上記トレッド部3の接地部分のタイヤ幅方向外側端部よりもタイヤ幅方向外側から上記ビード部1のビードヒール部6まで配置されるのが好ましいが、上記トレッド部3の接地部分のタイヤ幅方向外側端部よりもタイヤ幅方向外側から上記ビード部1のビードヒール部6までの間の少なくとも一部分に配置されていればよい。
本発明の航空機用空気入りタイヤが上記補強カーカスプライ10を備える場合、該補強カーカスプライ10を構成する有機繊維コードは、上記式(I)及び式(II)の条件を満たすことが好ましい。上記補強カーカスプライ10に、上記式(I)及び式(II)の条件を満たす有機繊維コードを適用すると、上記の通り、タイヤの撓みを抑制し、タイヤの耐久性を向上できるため、走行距離を向上させることが可能になる。ここで、上記補強カーカスプライを構成する有機繊維コードとしては、上記ダウンプライを構成する有機繊維コードと同様に、ポリケトン繊維のコードが好ましい。
また、本発明の航空機用空気入りタイヤにおいては、図示しないが、上記ターンアッププライ5aの内の最外側に位置するターンアッププライと上記ダウンプライ5bとの間に、層間ゴム及び/又はプレキュアゴムシートを配置してもよい。ここで、本発明の航空機用空気入りタイヤが上記補強カーカスプライ10を備える場合においては、上記ターンアッププライ5aの内の最外側に位置するターンアッププライと上記補強カーカスプライ10の内の最内側に位置するカーカスプライとの間に、層間ゴム及び/又はプレキュアゴムシートを配置すればよい。また、層間ゴム及びプレキュアゴムシートに用いるゴム組成物は、ゴム業界で通常使用されるゴム成分を含み、必要に応じて充填剤、加硫剤等の公知の添加剤を含むことができる。なお、上記ゴム組成物は、ゴム成分と、必要に応じて適宜選択した各種配合剤とを混練り、熱入れ、押出等することにより製造することができる。
上記ターンアッププライ5aの内の最外側に位置するターンアッププライと上記ダウンプライ5bとの間に層間ゴムを配置した場合、該層間ゴムは、最外側に位置するターンアッププライのプライ間の厚さに対し1.5〜2倍の範囲の厚さを有することが好ましい。ここで、最外側に位置するターンアッププライのプライ間の厚さは、最外側のターンアッププライを構成する少なくとも2枚のカーカスプライにおいて、隣接するカーカスプライ間のコードの距離である。層間ゴムの厚さが上記特定した範囲内にあると、ダウンプライを構成する有機繊維コードの熱収縮による応力を十分に緩和させることができる。また、最外側に位置するターンアッププライのプライ間の厚さに対し層間ゴムの厚さが1.5倍未満では、応力を十分に緩和できず、セパレーションが発生する場合がある。一方、2倍を超えると、タイヤの重量が増加する。
上記ターンアッププライ5aの内の最外側に位置するターンアッププライと上記ダウンプライ5bとの間にプレキュアゴムシートを配置した場合、該プレキュアゴムシートは、最外側に位置するターンアッププライのプライ間の厚さに対し0.7〜1.2倍の範囲の厚さを有することが好ましく、最外側に位置するターンアッププライのプライ間の厚さと同一の厚さを有することが最も好ましい。ここで、最外側に位置するターンアッププライのプライ間の厚さは、上述した通りである。また、プレキュアゴムシートは、予備加硫処理を施したゴムシートであり、該ゴムシートを配置することで、各カーカスプライを構成するゴムの加硫成形時の流動を抑制することができる。加えて、プレキュアゴムシートの厚さが上記特定した範囲内にあると、ダウンプライを構成する有機繊維コードの熱収縮による応力を十分に緩和させることができる。
本発明の航空機用空気入りタイヤは、例えば、ダウンプライ5bに上記式(I)及び式(II)の条件を満たす有機繊維コード、好ましくはポリケトン繊維のコードを適用し、ターンアッププライ5aにナイロンコード等のカーカスに通常使用される有機繊維コードを適用し、更に、好ましくは補強カーカスプライ10、層間ゴム及びプレキュアゴムシートの少なくともいずれかを配置させて、常法により製造することができる。ここで、コードのコーティングゴムとしては、特に制限はなく、従来のカーカスプライに用いていたコーティングゴムを用いることができる。また、コードのゴム被覆に先立って、コードに接着剤処理を施し、コーティングゴムとの接着性を向上させてもよい。更に、補強カーカスプライに上記式(I)及び式(II)の条件を満たす有機繊維コード、好ましくはポリケトン繊維のコードを適用することが好ましい。なお、本発明の航空機用空気入りタイヤにおいて、タイヤ内に充填する気体としては、通常の或いは酸素分圧を変えた空気、又は窒素等の不活性ガスを用いることができる。
以下に、実施例を挙げて本発明を更に詳しく説明するが、本発明は下記の実施例に何ら限定されるものではない。
表1に示す構造を有し、タイヤサイズ:H49×19.0−22 32PRの航空機用空気入りタイヤを常法に従って作製した。また、ターンアッププライ、ダウンプライ及び補強カーカスプライを構成するカーカスプライの枚数、該カーカスプライを形成する有機繊維コードの材質及び打込み数、並びに最外側に位置するターンアッププライのプライ間の厚さに対する層間ゴム(図示せず)の厚さの比率及び最外側に位置するターンアッププライのプライ間の厚さは、表1に示す通りである。なお、カーカスプライを形成する有機繊維コードがナイロン繊維のコードである場合には、該コードの繊度が1400dtex/2で、177℃における熱収縮応力σが0.2cN/dtexで、25℃における49N荷重時の弾性率Eが40cN/dtexである。一方、カーカスプライを形成する有機繊維コードがポリケトン繊維のコードである場合には、該コードの繊度が1400dtex/2で、177℃における熱収縮応力σが0.5cN/dtexで、25℃における49N荷重時の弾性率Eが155cN/dtexである。なお、使用したポリケトン繊維は、繰り返し単位の98%が(CH2-CH2-CO)である。
次に、作製したタイヤに対し、下記の方法で重荷重走行時のタイヤの耐久性を評価した。結果を表1に示す。
(1)重荷重走行時のタイヤの耐久性
THE TIRE AND RIM ASSOCIATION YEAR BOOKに規定された正規荷重の1.2倍の荷重の作用下で、205psiの内圧を充填し、60km/hrの速度で10分間走行させ、試験サイクル2時間の繰り返し試験を行い、故障発生までの回数を測定した。ここで、従来例のタイヤの故障発生までの回数を100として指数表示した。指数値が大きい程、重荷重走行時のタイヤの耐久性に優れることを示す。
Figure 2008162494
表1から、実施例のタイヤは、ダウンプライ5bに上記式(I)及び式(II)の条件を満たす有機繊維コードを用いているため、従来例のタイヤより重荷重走行時の耐久性に優れることが分かる。また、補強カーカスプライを備えた実施例2のタイヤは、実施例1のタイヤよりも重荷重走行時の耐久性が更に向上していることが分かる。なお、実施例1のタイヤを構成するカーカスプライの総数が従来例のタイヤを構成するカーカスプライの総数より少ないことから、実施例1のタイヤは、優れた重荷重走行時の耐久性を維持しつつ、タイヤ重量を低減できることが分かる。
本発明の航空機用空気入りタイヤの一例の左半分の断面図である。 本発明の航空機用空気入りタイヤの他の例の左半分の断面図である。
符号の説明
1 ビード部
2 サイドウォール部
3 トレッド部
4,4a,4b,4c ビードコア
5 カーカス
5a ターンアッププライ
5b ダウンプライ
6 ビードヒール部
7 ビードベース部
8 ビードトウ部
9 カーカス補強層
10 補強カーカスプライ

Claims (5)

  1. 一対のビード部及び一対のサイドウォール部と、両サイドウォール部に連なるトレッド部とを有し、前記一対のビード部に埋設された少なくとも二対のビードコアと、前記一対のビード部間にトロイド状に延在し、平行に配列した複数の有機繊維コードをゴム被覆した複数枚のカーカスプライよりなるバイアス構造のカーカスとを備えた航空機用空気入りタイヤにおいて、
    前記カーカスが、前記ビードコアの対毎に該ビードコア間をトロイド状に延在する本体部と該ビードコアの周囲でタイヤ幅方向の内側から外側へ巻き返した巻き返し部とを有する少なくとも2枚のカーカスプライよりなるターンアッププライと、該ターンアッププライを巻き返し部も含めて外包する少なくとも2枚のカーカスプライよりなるダウンプライとからなり、
    前記ダウンプライを構成する有機繊維コードが、下記式(I)及び式(II):
    σ ≧ -0.01×E + 1.2 ・・・ (I)
    σ ≧ 0.02 ・・・ (II)
    [式中、σは、177℃における熱収縮応力(cN/dtex)であり;Eは、25℃における49N荷重時の弾性率(cN/dtex)である]の条件を満たすことを特徴とする航空機用空気入りタイヤ。
  2. 前記ターンアッププライの内の最外側に位置するターンアッププライと前記ダウンプライとの間に、平行に配列した複数の有機繊維コードをゴム被覆したカーカスプライを該有機繊維コードが互いに交差するように積層して形成された複数枚の補強カーカスプライを備え、
    前記補強カーカスプライが、前記トレッド部の接地部分のタイヤ幅方向外側端部よりもタイヤ幅方向外側から前記ビード部のビードヒール部まで配置されており、
    前記補強カーカスプライを構成する有機繊維コードが、下記式(I)及び式(II):
    σ ≧ -0.01×E + 1.2 ・・・ (I)
    σ ≧ 0.02 ・・・ (II)
    [式中、σは、177℃における熱収縮応力(cN/dtex)であり;Eは、25℃における49N荷重時の弾性率(cN/dtex)である]の条件を満たすことを特徴とする請求項1に記載の航空機用空気入りタイヤ。
  3. 前記有機繊維コードが、ポリケトン繊維のコードであることを特徴とする請求項1又は2に記載の航空機用空気入りタイヤ。
  4. 前記ターンアッププライの内の最外側に位置するターンアッププライと前記ダウンプライとの間に、最外側に位置するターンアッププライのプライ間の厚さに対し1.5〜2倍の範囲の厚さを有する層間ゴムを配置したことを特徴とする請求項1に記載の航空機用空気入りタイヤ。
  5. 前記ターンアッププライの内の最外側に位置するターンアッププライと前記ダウンプライとの間に、最外側に位置するターンアッププライのプライ間の厚さに対し0.7〜1.2倍の範囲の厚さを有するプレキュアゴムシートを配置したことを特徴とする請求項1に記載の航空機用空気入りタイヤ。
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