JP2008156265A - A型プロアントシアニジンオリゴマー画分及びその製造方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】ピーナッツ渋皮熱水抽出液をポリスチレン系合成吸着剤で吸着処理し、該吸着剤を10〜50容量%のエタノールで溶出処理した後、60〜100容量%エタノールで可溶性成分を溶出分取することにより、A型プロアントシアニジンオリゴマーを主要成分とする生理活性画分を製造する。該製造方法により、生体内での吸収性・安定性に優れ、活性低下の少ない高生理活性のプロアントシアニジンを、安価に、かつ効率的に製造することができる。該生理活性画分は、そのオリゴマー画分が、従来のピーナッツ渋皮由来プロアントシアニジンと比較して、抗酸化性、肝機能障害抑制作用のような機能性素材として高い生理活性を有する。
【選択図】なし
Description
本発明により製造されるプロシアニジンオリゴマーは、フラバン骨格を持つ化合物((+)カテキンもしくは(−)エピカテキン等)を最小の構成単位とし、2〜5量体を中心として、13〜14量体程度まで存在するものである。そのうち2量体はプロシアニジンA類と呼称される化合物であり、結合様式は2つのフラバン骨格がC−C結合、及びC−O−C結合にて結合し、結合箇所は、基本的にはC環−A環が2箇所で結合している。同様の結合様式により複数のフラバン骨格が結合し、プロシアニジンオリゴマーを形成するものである。また構成するフラバン骨格の水素原子が、ランダムに水酸基やアルキル基等により置換されたものであっても、水酸基に没食子酸等が結合したものであってもかまわない。
本発明のA型プロアントシアニジンオリゴマーを主要成分とする生理活性画分の製造に用いられる原料となるのはピーナッツの渋皮である。ピーナッツの渋皮は、食経験はあるものの、一般的に食用としての利用は少なく、特に菓子製造時には廃棄物として大量に排出される。本発明の生理活性画分の製造方法においては、このピーナッツの渋皮を熱水で抽出した抽出液を原料として用いる。また、豆菓子製造業において菓子を製造する際には、渋皮の剥皮工程として、熱水(95℃程度)にてピーナッツ(渋皮付き)を浸積処理(数分)しているが、この剥皮処理水(産業廃棄物:渋皮熱水抽出液)を、上記ピーナッツの渋皮の熱水抽出液として利用することができる。該剥皮処理水を利用すれば、製造コストはかなり安価に抑えることができる。原料として使用するピーナッツは、ラッカセイ属に属するものであれば、その種類は問わない。好ましいのはラッカセイ属に属するラッカセイ(Arachis.hypogaea)である。また、生産地や収穫時期等についても特に制限するものではない。
本発明の生理活性画分の製造方法は、ピーナッツ渋皮熱水抽出液をポリスチレン系合成吸着剤で吸着処理し、該吸着剤を濃度の異なるエタノールで溶出処理し、可溶性成分を溶出分取することよりなる。本発明の方法において用いるピーナッツ渋皮熱水抽出液は、熱水抽出条件、方法等(処理温度、時間)は特に制限するものではないが、好ましくは熱水の温度が90〜95℃程度である。本発明の方法における合成吸着剤による吸着処理は、カラムクロマトの形態で処理することが好ましいが、該カラムクロマトの充填剤は、スチレン−ジビニルベンゼン共重合体から構成されるポリスチレン系合成吸着剤が用いられる。本発明の方法において用いられる好ましいポリスチレン系合成吸着剤としては、樹脂の細孔半径が好ましくは38〜80Å(オングストローム)、更に、好ましくは50〜70Å、最も好ましいくは50〜60Åである。本発明の方法において用いられる好ましいポリスチレン系合成吸着剤として、セパビーズSP825(樹脂細孔半径50〜60Å)等を挙げることができる。
本発明において製造したA型プロアントシアニジンオリゴマー生理活性画分は、活性酸素消去能やラジカル消去活性、抗酸化活性等の高活性の生理活性を有する。生体内において、脂質の過酸化や余剰な活性酸素は様々な疾病を引き起こすことが明らかにされており、本発明により製造される生理活性画分は、このような脂質の過酸化や余剰な活性酸素に対する活性酸素消去剤や抗酸化剤として利用することができる。具体的に、活性酸素による障害が原因とされる主な疾患として血管系疾患(動脈硬化、心筋梗塞、脳卒中)、アレルギー性疾患、炎症、肝障害、白内障、糖尿病、リウマチ等をあげることができるが、本発明により製造される生理活性画分はこれらの予防のために使用する有効な活性成分として使用することができる。特に本生理活性画分に含まれるプロシアニジンの二量体は、その大部分が包合体化されずに血漿中に吸収されることを、動物実験により確認しており、血漿中で高い抗酸化機能を発揮することを明らかにしている。また、活性酸素が原因とされる皮膚のトラブルとして、シミ、そばかす、アトピー性皮膚炎、肌荒れ等をあげることができるが、本発明により製造される化合物は化粧品成分としてこれらの疾患の予防等に使用することができる。更に、本生理活性画分は食品添加物として、食品中に含まれる成分の酸化防止剤としても使用することができる。
本発明により製造される生理活性画分は、種々の用途において、機能性素材として用いることができる。該機能性素材の利用に際しては、それぞれの用途において、適宜、形態或いは添加量を変えて用いることができる。例えば、本発明により製造される生理活性画分を用いて食品を製造する場合には、食品の形態、種類及び目的(機能性食品、健康食品、健康志向食品、通常の加工食品)に合わせて添加量(おおよそ0.01%〜99%の範囲)を調節することができる。食品の形態としては、種類を限定するものではなく、飲料を含むすべての加工食品に添加・活用することができる。また、カプセルや錠剤、粉末状の食品であってもかまわない。また、本発明により得られる生理活性画分を化粧品類に利用する場合には、クリーム、ローション、化粧水、洗顔料、石けん、シャンプー等のような種々の形態の化粧品に利用することができる。
(試験方法)
豆菓子製造時に排出されるピーナッツ渋皮剥皮処理水(渋皮付きピーナッツを95℃の熱水にて3〜5分間抽出)7Lを、ポアサイズ10μmのフィルターにてろ過し、これを渋皮熱水抽出液とした。充填材としてセパビーズSP825(三菱化学製)を充填し、蒸留水にて平衡化したカラム(充填材容量1L)に渋皮熱水抽出液をチャージ(送液)後、蒸留水3Lにて洗浄した。続いて、30%エタノール1.5Lにて成分を溶出させた後、更に、80%エタノール1.5Lにて残存成分をすべて溶出させた(溶出条件1)。30%、80%エタノール溶出画分について、エタノールを除去後、凍結乾燥することで、それぞれ4.0g及び2.3gの粉末を得た。
溶出条件2において、10%エタノール溶出粉末は0.4g、酢酸エチル分画率は0.84%、80%エタノール溶出粉末は5.3g、酢酸エチル分画率は24.1%であった。溶出条件3において20%エタノール溶出粉末は1.6g、酢酸エチル分画率は2.8%であった。80%エタノール溶出粉末は6.0g、酢酸エチル分画率は25.8%であった。溶出条件4において50%エタノール溶出粉末は5.5g、酢酸エチル分画率は18.9%であった。80%エタノール溶出粉末は0.2g、酢酸エチル分画率は30.2%であった。溶出条件5において80%エタノール溶出粉末は7.1g、酢酸エチル分画率は13.5%であった(いずれの溶出条件においても、酢酸エチルにて分画される構成成分はほぼ同じであることを確認している)。
また、溶出条件1(30%エタノールにて溶出後、80%エタノールにて溶出させた場合)にて調製したポリフェノールのESI−MS(Electrspray Ionization Mass Spectyometry:ESI-MS)クロマトグラムを図3に、及び、溶出条件5(合成吸着剤としてダイヤイオンHP20を使用し、80%エタノールのみにて溶出した場合)にて調製したポリフェノールのESI−MSクロマトグラムを図4に示した。
図1より最初の溶出(ステップ1)に使用するエタノールの濃度が高くなるにつれて、溶出するポリフェノール量も多くなることがわかる(それにともない、その後の80%エタノールにより溶出するポリフェノールの量は低下する)。また80%エタノールにて溶出した(ステップ2)ポリフェノールの酢酸エチル分画率は、最初の溶出に使用したエタノールの濃度が30%の場合、最も高くなることがわかった。ステップ1の低濃度エタノールは酢酸エチルに溶解しない高分子のプロアントシアニジンを溶出・除去するために使用する。ピーナッツ渋皮に含まれるA型プロアントシアニジンの場合、今回の試験方法では高分子のプロアントシアニジンを溶出・除去するのに30%エタノールが最も適していることがわかった。
(A.ピーナッツ渋皮熱水抽出液よりの生理活性画分の調製)
ピーナッツ渋皮熱水抽出液をダイヤイオンHP20(三菱化学製、樹脂細孔半径260Å)カラムクロマトグラフィーにて処理し、該カラムを、80%エタノールにて残存成分を溶出させたものをポリフェノール画分とした。ポリフェノール画分を酢酸エチルにて抽出し、温水に可溶な成分を低分子プロシアニジン画分とした。このピーナッツ渋皮低分子プロシアニジン画分をHPLCにて分析した結果を、図5(ピーナッツ渋皮低分子プロシアニジン画分及びラット血漿HPLCクロマトグラム)に示す。
実験動物は7週齢、初期体重230gのウイスター系雄ラットを使用した((株)日本クレアより購入)。飼育は23±1℃、湿度55±5%、照明は12時間明暗サイクルで調節された実験飼育室にて行った。実験群は蒸留水を投与した群、低分子プロシアニジン画分を投与し、20分後に採血する群、40分後に採血する群、70分後に採血する群の4群とした。試料の投与は、一週間基本食を給与した後、12時間の絶食後ゾンデを用い胃内に強制的に経口投与した。また、実験に用いたラット数は各群5〜6匹とし、投与量は760mg/kgとした。採血はネンブタール麻酔下、腹部大動脈より行い、血漿中のポリフェノール成分をHPLC(ECD)、ESI−MSにて分析した。
(B)にて調製した、投与40分後の血漿を、AAPH(水溶性ラジカル)にて処理し、血漿中脂質の過酸化反応を誘導した。過酸化脂質はデタミナーLPO(協和メディックス)にて測定した。該ラット血漿の脂質過酸化抵抗性について、AAPHにて脂質過酸化を誘導し、血漿中の過酸化脂質を定量した結果を、図7に示す。図7より、低分子プロシアニジン画分を経口投与したラット血漿は著しく、脂質の過酸化を抑制することがわかった。血漿中の脂質、リポタンパク質等の過酸化反応は、動脈硬化等の血栓症をはじめとした多くの血管系疾患に関与しており、これらに疾患に対して、さらに血管の保護作用としてピーナッツ渋皮低分子プロシアニジン画分が非常に有効であると考えられる。
実験動物は日本SLC(株)から購入し、8週齢、初体重35gのICR系雄マウスを用いた。実験群は基本食を与えた群、基本食を与えた後肝障害を誘発する群、低分子プロシアニジン画分を添加した飼料(1%)を給与した後、肝障害を誘発する群の3群とした。それぞれの群のマウス数は7匹とした。各飼料を3日間給与した後、肝障害誘発群には四塩化炭素をオリーブオイルと等量混合し、60μLを腹腔内投与した。四塩化炭素投与24時間後にネンブタール麻酔下、心臓穿刺により採血し、各種分析に使用した。飼育室は22±1℃、湿度40〜60%とし、飼料と水は実験期間中自由摂取とした。血漿のGOT(グルタミン酸−オキサロ酢酸トランスフェラーゼ)、GPT(グルタミン酸−ピルビン酸トランスフェラーゼ)活性は市販のキット(GOT−UV、GPT−UV テストワコー)を用いて測定した。酵素活性はI.U(国際単位=μ mol/min/L)で示した。
(試験方法)
粉末ピーナッツ(市販品)89.5重量%に、粉末ハチミツ5重量%、イソマルトオリゴ糖5重量%、これに本発明画分0.5重量%となるように添加することで、健康食品として利用可能な機能性ピーナッツパウダーを調製することができた。
(試験方法)
ピーナッツ(小粒種)600gに各製品配合割合に対応した調味粉類625gをよび、本発明画分6gを配合し、成形・加工することで、健康志向な豆菓子類(焙煎黒糖豆、ハバネロ豆)を調製することができた。
(試験方法)
チョコレートに本発明画分を0.5〜2重量%となるように配合し、加工することで、健康志向なチョコレート菓子を試作・調製することができた。
Claims (7)
- ピーナッツ渋皮熱水抽出液をポリスチレン系合成吸着剤で吸着処理し、該吸着剤を10〜50容量%のエタノールで溶出処理した後、60〜100容量%エタノールで可溶性成分を溶出分取することを特徴とするA型プロアントシアニジンオリゴマーを主要成分とする生理活性画分の製造方法。
- ポリスチレン系合成吸着剤が、樹脂細孔半径38〜80Å(オングストローム)のポリスチレン系合成吸着剤であることを特徴とする請求項1記載のA型プロアントシアニジンオリゴマーを主要成分とする生理活性画分の製造方法。
- ピーナッツ渋皮熱水抽出液をポリスチレン系合成吸着剤で吸着処理した吸着剤を、30容量%のエタノールで溶出処理した後、80%エタノールで可溶性成分を溶出分取することを特徴とする請求項1又は2記載のA型プロアントシアニジンオリゴマーを主要成分とする生理活性画分の製造方法。
- ピーナッツ渋皮熱水抽出液をポリスチレン系合成吸着剤で吸着処理し、該吸着剤を10〜50容量%のエタノールで溶出処理した後、60〜100容量%エタノールで可溶性成分を溶出分取することにより得られる2〜5量体の分子群で構成されているA型プロアントシアニジンオリゴマーを主要成分とする生理活性画分。
- 請求項4記載のA型プロアントシアニジンオリゴマーを主要成分とする生理活性画分を有効成分とする肝機能障害抑制剤。
- 請求項4記載のA型プロアントシアニジンオリゴマーを主要成分とする生理活性画分を有効成分とする生体内抗酸化剤。
- 請求項4記載のA型プロアントシアニジンオリゴマーを添加したことを特徴とする飲食品又は化粧品。
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