JP2008152947A - プラズマディスプレイパネル - Google Patents

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Abstract

【課題】本発明によれば、放電電圧の低電圧化とアドレス放電の安定性を両立させることができ、良好な表示品質のPDPを実現することが可能である。
【解決手段】このような目的を達成するために、本発明におけるプラズマディスプレイパネルは、前面側基板上に複数の表示電極対とそれを覆う誘電体層と保護膜とが形成された前面板と、背面側基板上に蛍光体層と隔壁が形成された背面板とを放電空間を介して対向させてなるプラズマディスプレイパネルであって、前記保護膜の前記放電空間側の表面の一部に窒化物結晶粒を有することを特徴とする。
【選択図】図1

Description

本発明は、プラズマディスプレイパネル(以下、PDPとする)の保護膜に関するものである。
PDPは、液晶パネルに比べて高速表示が可能、大型化が容易であることなどから大画面表示デバイスとして注目され、高精細化、高輝度化などの表示品質の向上と高い信頼性を目指した開発が盛んである。
一般的にAC駆動面放電型PDPは3電極構造を採用しており、前面板と背面板の2枚のガラス基板が所定の間隔で対向配置された構造となっている。前面板は、ガラス基板上に形成されたストライプ状の走査電極および維持電極よりなる表示電極と、この表示電極を被覆して電荷を蓄積するコンデンサとしての働きをする誘電体層と、この誘電体層上に形成された厚さ1μm程度の保護膜とで構成されている。一方、背面板は、ガラス基板上に複数形成されたアドレス電極と、このアドレス電極を覆う下地誘電体層と、その上に形成された隔壁と、各隔壁によって形成された表示セル内に塗布された赤色、緑色および青色にそれぞれ発光する蛍光体層とで構成されている。
前面板と背面板とはその電極形成面側を対向させて気密封着され、隔壁によって形成された放電空間にはネオンおよびキセノンなどの放電ガスが400Torr〜600Torrの圧力で封入されている。表示電極に映像信号電圧を選択的に印加することによって放電ガスを放電させ、それによって発生した紫外線が各色蛍光体層を励起して赤色、緑色、青色の各色を発光させることにより、カラー画像を表示している。
保護膜は、イオン衝撃に対して耐スパッタ性の高い材料を用いて形成されて、放電によるスパッタリングから誘電体層を保護するとともに、保護膜の表面から2次電子を放出して放電ガスを放電させるための駆動電圧を低下させる役割を有している。このような特性から、保護膜は酸化マグネシウム(MgO)材料を用い真空成膜技術によって形成されている。
これまでPDPの保護膜の形成での真空成膜技術として、電子線真空蒸着法またはスパッタ蒸着法によるMgO膜が広く用いられてきたが、低消費電力化に向けた発光効率の改善や、駆動回路のコスト低減が求められているため、MgO以外にも種々の材料の保護膜材料が検討されており、MgOより低電圧駆動が可能な材料が多く開示されている(例えば非特許文献1参照)。
Appl.Phys.Lett.80,2216(2002)
しかしながら、MgO以外の材料においては量産製品にこれまでに用いられてきたことはない。これについては以下のように考えられる。一般的なPDPの駆動方法としては、主に初期化期間、アドレス期間、維持期間の各期間に、表示セル内にて放電を生じさせる手法を採用している。ここで、上述した保護膜材料検討による低電圧化とは、一般に維持期間における維持放電の放電電圧だけが議論されている。ところが、それだけではPDPを安定的に駆動することはできず、実際にはアドレス期間のアドレス放電の安定性が重要であり、アドレス放電の安定性についてはMgOを上回る材料がこれまで見出されていないことが、起因していると考えられる。
ここでいうアドレス放電の安定性とは、初期化期間で蓄積した電荷をもってアドレス時のセル選択を行う放電時の放電の発生タイミングのばらつきをいい、放電空間に十分にプライミング粒子がない状態では、このばらつきが大きくなる。
実際のPDP点灯では、アドレス放電のばらつきが大きくなるとアドレス放電パルス内で放電が発生せず、アドレスミスを引き起こす。アドレス放電のミスは点灯画素の選択のミスを意味する。そのため、本来点灯するべき画素が点灯しない、または、消灯すべき画素が点灯するなど、PDPの表示品質の低下を引き起こす原因となる。その指標は放電ばらつきから発生する統計遅れ時間(ts)で表すことができ、tsの値が小さいものほど安定したアドレス放電が可能となる。
本発明は上記課題に鑑みてなされたものであり、放電電圧を低減し、かつ、良好なアドレス放電の安定性を示すPDPを実現することを目的とする。
このような課題を解決するため、本発明のPDPは、前面側基板上に複数の表示電極対とそれを覆う誘電体層と保護膜とが形成された前面板と、背面側基板上に蛍光体層と隔壁が形成された背面板とを放電空間を介して対向させてなるプラズマディスプレイパネルであって、前記保護膜の前記放電空間側の表面の一部に窒化物結晶粒を有することを特徴とする。また、前記窒化物結晶粒がBNまたはAlNであることが望ましく、さらに前記保護膜がMgO膜であることが望ましい。さらには前記窒化物結晶粒の粒径が0.5〜10μmであることが望ましい。
本発明によれば、放電電圧の低電圧化とアドレス放電の安定性を両立させることができ、良好な表示品質のPDPを実現することが可能である。
以下、本発明の一実施の形態によるPDPについて、図面を用いて説明する。
図1においてそれぞれ図1(a)、図1(b)はPDPの互いに直交する方向の断面を示している。背面基板1には、ストライプ状のアドレス電極2、それを覆う誘電体層3、それらの放電を仕切るストライプ状または格子状の隔壁4が形成され、さらに各隔壁4の間には赤色、緑色、青色の蛍光体層5が形成されている。
前面基板6にはアドレス電極2と直交する形で透明電極7とバス電極8からなる表示電極が設けられ、さらに透明電極7とバス電極8を覆って誘電体層9およびMgを主成分とする酸化膜よりなる保護膜10が形成されている。
表示を行う最小単位である放電セル11は、2組の透明電極7・バス電極8と1本のアドレス電極2、隔壁4で囲まれた領域から成る。このとき表示電極は走査電極、維持電極にそれぞれを一対として、複数対の電極で構成される(図中では区別せず)。
この放電セル11内の2本の表示電極間に交流電圧を印加し放電によって生じる真空紫外線により、蛍光体層5の蛍光体を励起発光させて前面基板6を透過する光で任意のカラー画像表示を行うものである。このようにPDP20は構成されている。
続いて、PDP20の製造方法について説明する。始めに、背面基板1、前面基板6の製造方法について説明する。
ガラス基板上に透明電極7、バス電極8、アドレス電極2などの電極を形成する方法としては、真空蒸着法、スパッタリング法、メッキ法、スクリーン印刷法、コーティング法、フィルムラミネート法などによってガラス基板上に電極材料の膜を形成し、これをフォトリソグラフィー法によってパターニングする方法と、スクリーン印刷あるいはオフセット印刷によりパターニングする方法とがある。メッキ法、スクリーン印刷法、コーティング法などの湿式成膜方法を適用した場合には、成膜後に乾燥、焼成などの熱処理が必要な場合もある。
次に、誘電体層3、9を形成する方法もスクリーン印刷法、ロールコーティング法、ダイコーティング法、フィルムラミネート法などが用いられる。誘電体層3、9も湿式方法で形成した場合には、乾燥、焼成などの熱処理が必要な場合もある。
そして、誘電体層9上に保護膜10を形成する。なお、保護膜10については詳細に後述する。
続いて背面基板1に隔壁4を形成する方法としては、アドレス電極2および誘電体層3を形成後のガラス基板上に、感光性を有する隔壁4用材料ペーストをコーティング法により成膜し、フォトリソグラフィー法により直接隔壁4をパターニング形成する方法や、隔壁パターンをマスク化したスクリーンを用い、隔壁4用材料のペーストで印刷を複数回繰り返し、乾燥させて隔壁4を形成するスクリーン印刷法などがある。
また、蛍光体層5を形成する方法としては、ディスペンサーによる塗布法や、スクリーン印刷法により隔壁4の間に各色の蛍光体ペーストを選択的に充填する方法などがあり、通常蛍光体ペースト塗布後に乾燥工程、焼成工程を経て蛍光体層5が形成される。
次に、本実施の形態における保護膜10について説明する。図2は本実施の形態の保護膜10の断面図を示しており、図1とは異なり放電空間に面する側を上側としている。この保護膜10は、上述したように保護膜10の膜内あるいは放電空間側の膜表面にAlNあるいはBNを主成分とした窒化物の結晶粒を含んでいる。そして図2に示したように保護膜10はMgO層21及び当該窒化物結晶粒を含む層(以下、結晶粒層22とする)とで構成されている。
MgO層21は、電子線真空蒸着法にて成膜されている。誘電体層9まで形成した前面基板6を、真空排気系及び加熱機構を具備した真空装置内に設置し、真空状態で基板を加熱しながら蒸着する。蒸着源はMgOを主成分とした結晶体、あるいは焼結体を用いる。ここに電子ビームを照射して蒸着源を加熱して、その蒸気を前面基板6に堆積することによって成膜される。本実施の形態では700〜800nm程度の膜厚とした。
結晶粒層22は、スクリーン印刷法によって成膜している。有機溶剤にAlN結晶粒またはBN結晶粒を混合して分散したペーストを、上記のMgO層21を形成後の前面基板6上に形成する。そして印刷塗布後、乾燥させ、400〜600℃で焼成して、有機溶剤成分を除去する。このようにしてMgO層21の膜内あるいは膜表面にAlN結晶粒またはBN結晶粒を添加する。また有機溶剤には、エチルセルロース、アクリル樹脂などのバインダー成分や、印刷特性を向上させる可塑剤、分散剤などを含む。
次に、AlN結晶粒およびBN結晶粒について説明する。本実施の形態では、AlN結晶粒として、三井化学株式会社製の「窒化アルミニウム MAN−2」を使用した。本製品は有機アルミニウムガスとアンモニアガスとの気相反応法により形成されたもので、以下の特性を有している。
平均粒子径 1.5μm
粒度分布 径5μm以下粒子 80wt%程度
不純物含有量 0.5wt%以下
また、結晶粒として高い結晶性を示している。
そしてBN結晶粒として、三井化学株式会社製の「窒化硼素 MBN−010」を使用した。本製品について形成方法は不明であるが、以下の特性を有している。
平均粒子径 1.5μm
粒度分布 径5μm以下粒子 80wt%程度
不純物含有量 0.5wt%以下
また、先のAlN結晶粒と同様に高い結晶性を示している。
これらの結晶粒を用いて、上述した手法によりPDP20を作製し放電特性を評価した。その結果を表1に示す。
Figure 2008152947
放電特性を評価するために作製したPDP20として次のパネル1〜パネル5を準備した。(1)結晶粒層22形成用のペーストに混合するAlN結晶粒の量を制御し、保護膜10の膜表面の概ね50%程度にAlN結晶粒を有するようにしたパネル1、(2)同じく結晶粒層22形成用のペーストに混合するAlN結晶粒の量を制御し、MgO層21を形成せずに、誘電体層9上にAlNの結晶粒層22を形成したパネル2、(3)同じく結晶粒層22形成用のペーストに混合するBN結晶粒の量を制御し、保護膜10の膜表面の概ね50%程度にBN結晶粒を有するようにしたパネル3、(4)同じく結晶粒層22形成用のペーストに混合するBN結晶粒の量を制御し、MgO層21を形成せずに、誘電体層9上にBNの結晶粒層22を形成したパネル4、(5)従来技術との比較として結晶粒層22を設けないパネル5の5種類である。
ここでいう放電特性の評価として、放電電圧とアドレス放電の安定性を評価した。図3に本実施の形態において放電特性を評価するために用いた駆動波形を示す。ここで放電電圧とは図3に示した維持期間での放電維持に必要な電圧V1の値を指し、アドレス特性とは図3でのアドレス期間でのアドレス放電における放電ばらつきの統計遅れ時間tsを指す。
また、tsは放電空間中のプライミング粒子に大きく左右されるため、点灯階調、初期化期間からの時間間隔など測定条件により値は大きく変化するが、画像表示品位を損なうことなく、現在のハイビジョン規格である1080pを駆動するためには、本実施の形態の測定条件において、tsが300ns以下であることが必要である。なお、放電ガスにはNeバランスでXe10%ガスを60kPa用い、放電ギャップを80μmとした。
表1に示したように、AlN結晶粒のみまたはBNのみの保護膜10であるパネル2とパネル4の放電特性はアドレス放電特性評価で放電ばらつきtsが非常に大きく測定不能であった。この結果からこれらの放電ばらつきtsは少なくとも3000ns以上になるものと思われる。また、保護膜10の表面の概ね50%程度にAlN結晶粒またはBN結晶粒を有するパネル1とパネル3においても、従来技術であるパネル5と比較して、放電ばらつきtsは230〜280nsと悪化することがわかった。
一方で、放電電圧においては、従来技術であるパネル5と比較して、保護膜10の表面の概ね50%程度にAlN結晶粒またはBN結晶粒を有するパネル1とパネル3で、15〜20V低下し、さらにBN結晶粒のみ、AlN結晶粒のみの保護膜10であるパネル2とパネル4では、28〜30V低下することがわかった。
また、AlN結晶粒またはBN結晶粒の粒径を変更して検討した結果、平均粒径0.5〜10μmの範囲である場合に、上述したような特性差が現出することがわかった。
これらの結果より、従来技術のMgO蒸着膜の特性を基準に次のことが言える。(1)保護膜10の膜表面に、AlN結晶粒またはBN結晶粒を有することで、MgO膜のみよりも、放電電圧を低下させることが可能。(2)保護膜10の膜表面に、AlN結晶粒またはBN結晶粒が概ね50%程度存することで、MgO膜のみより、放電電圧を低化させることが可能で、かつ実際の画像表示において品質を損なわない程度のアドレス放電の安定性を実現することができる。
このように、保護膜にAlN結晶粒またはBN結晶粒を有することで、放電電圧が低下する現象として、発明者等は次のように考察している。
従来、AlN結晶粒は主に熱伝導フィラー等として、またBN結晶粒は化粧品や潤滑剤等として利用されている。これはこれらの材料が有する耐熱性、熱伝導性等、特有の性質を活かした利用である。一方でこれらの材料は冷陰極材料としても研究が進められている。これはこれらの材料が負性の電子親和力、すなわち伝導帯の電子を容易に物質表面から真空中に放出する特性を有するためである。
また、上述した非特許文献1によると、BNとAlNのバンドギャップ(Eg)がそれぞれ5.8eV、6.2eVであり、それぞれの電子親和力がほぼ0eVに近い値である。また、放出された電子のエネルギーに相当する値が、MgOでは5.1eVであるのに対して、BN、AlNはそれぞれ10.1eV、9.3eVとなっている。
このことから、本実施の形態で示した、MgO層のみの保護膜に比べ、BN結晶粒またはAlN結晶粒を有する保護膜において、放電電圧が概ね10〜20%程度低下した結果は、文献結果と概ね一致すると考えられる。
これまで、BNやAlNを主材料として、結晶性良く成膜するためには、一般的な手法であるCVD法やPVD法を用いて基板温度を800℃以上という高温にする必要があった。このため、PDPの保護膜として、高い結晶性を保持しつつ、BNやAlNを用いることは困難であった。ところが、本実施の形態にて示した構成を実施することによって、結晶性の良いBN、AlN材料を保護膜として用いることが可能になる。
以上のように、本発明におけるPDPの保護膜は、保護膜の前記放電空間側の表面の一部に窒化物結晶粒を有することを特徴とする。これによって、放電電圧の低電圧化とアドレス放電の安定性を両立させることができ、良好な表示品質のPDPを実現することが可能である。
なお、本発明を実現する手法として、本実施の形態では上述の手法を用いて説明したが、これに限らず、実施条件等に相違があっても、本発明の技術思想に基づいていれば、本発明と同様の効果は得られる。
例えば、MgO層21の成膜方法として真空蒸着法を用いたが、これに限らずスパッタ法、イオンプレーティング法などによっても形成可能である。また結晶粒層22の形成方法として、スクリーン印刷法を用いたが、これに限らず、スプレー法などによっても形成可能である。さらには、AlN結晶粒若しくはBN結晶粒とMgO成分を含むペーストを用いて、スクリーン印刷法などによって、一括して保護膜10を形成する手法も可能であり、当該AlN結晶粒若しくはBN結晶粒が保護膜に存することによって、本発明の効果は得られる。
以上のように本発明によれば、放電電圧の低電圧化とアドレス放電の安定性を両立させることができ、良好な表示品質のPDPを実現することが可能であり、有用である。
本発明の実施の形態によるプラズマディスプレイパネルの要部構成を示す断面図 同前面基板の要部構成を示す断面図 同放電特性を評価する駆動波形を示す図
符号の説明
1 背面基板
4 隔壁
5 蛍光体層
6 前面基板
9 誘電体層
10 保護膜
21 MgO層
22 結晶粒層

Claims (4)

  1. 前面側基板上に複数の表示電極対とそれを覆う誘電体層と保護膜とが形成された前面板と、背面側基板上に蛍光体層と隔壁が形成された背面板とを放電空間を介して対向させてなるプラズマディスプレイパネルであって、前記保護膜の前記放電空間側の表面の一部に窒化物結晶粒を有することを特徴とするプラズマディスプレイパネル。
  2. 前記窒化物結晶粒がBNまたはAlNであることを特徴とする請求項1記載のプラズマディスプレイパネル。
  3. 前記保護膜の一部にMgOが含まれていることを特徴とした請求項1記載のプラズマディスプレイパネル。
  4. 前記窒化物結晶粒の粒径が0.5〜10μmであることを特徴とする請求項1記載のプラズマディスプレイパネル。
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