JP2008144673A - 内燃機関の制御装置 - Google Patents
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Abstract
【課題】内燃機関の燃焼状態を効率的且つ効果的に最適化する。
【解決手段】ECU100は、燃焼制御処理を実行する過程において、エンジン200の最適なスワール比SRを「SR=C×θ/Dmain」なる式に従って算出し、SCV207の開度を、係るスワール比の最適値SRに対応する開度に制御する。一方、ECU100は、係る最適なスワール比SRに対応するメイン噴射とパイロット噴射との時間間隔を規定するインタバルθintを、「θint=C’×θ/SR」なる式に従って算出し、インジェクタ209の噴射動作を制御する。この際、スートセンサ206によって検出されるシリンダ202内部の煤濃度Dsが基準値Dsth以上である場合には、前述した最適値SRは無条件に上限値SRmaxとされ、インタバルθintもそれに応じて制御される。
【選択図】図4
【解決手段】ECU100は、燃焼制御処理を実行する過程において、エンジン200の最適なスワール比SRを「SR=C×θ/Dmain」なる式に従って算出し、SCV207の開度を、係るスワール比の最適値SRに対応する開度に制御する。一方、ECU100は、係る最適なスワール比SRに対応するメイン噴射とパイロット噴射との時間間隔を規定するインタバルθintを、「θint=C’×θ/SR」なる式に従って算出し、インジェクタ209の噴射動作を制御する。この際、スートセンサ206によって検出されるシリンダ202内部の煤濃度Dsが基準値Dsth以上である場合には、前述した最適値SRは無条件に上限値SRmaxとされ、インタバルθintもそれに応じて制御される。
【選択図】図4
Description
本発明は、例えば可変スワール機構を有する内燃機関において燃焼状態を最適化するための内燃機関の制御装置の技術分野に関する。
この種の装置として、最適な強度のスワールを設定するものが提案されている(例えば、特許文献1参照)。特許文献1に開示されたディーゼルエンジンの吸気制御装置(以下、「従来の技術」と称する)によれば、SCV開度を、予め実験等から燃料と空気との混合を促進させることのできる最適な強度のスワールを生成し得るものとして求められマップに格納されてなる目標開度に収束させることによって、スモークを含むパティキュレートの発生を大幅に低減することが可能であるとされている。
尚、燃焼室内の排気ガスの微粒子含有率を測定して得られた結果に基づいて、排気ガス中の微粒子含有率が小さくなるように内燃機関を調節する技術も提案されている(例えば、特許文献2参照)。
また、排気ガス中の煤塵濃度をセンサで検出し、煤塵濃度が基準値以下となるように排気タービン及びコンプレッサの回転数を制御する技術も提案されている(例えば、特許文献3参照)。
尚、排気ガスに含まれるスートを測定するものとして、例えば測定素子に付着するスートによる測定素子の振動状態の変化に基づいてスートを検出するものも提案されている(例えば、特許文献4参照)。
尚、例えば、特許文献5には、一対の電極のインピーダンスの変化に基づいて煤粒子による排ガスの汚染度を検出する旨が開示されている。
尚、排気中のすす粒子群に波長の異なる2本の光線を同軸で透過させ、透過率等から煤濃度を算出する技術も開示されている(例えば、特許文献6参照)。
最適なスワール比がマップ等の形態として予め与えられている場合、内燃機関の運転条件の過渡的な変化に対し、最適なスワール比を維持するためには、係るマップにおける広大な負荷領域でスワール比の適合を行う必要があり、スワール比を最適に維持することによって内燃機関の燃焼状態を最適に維持するに際し実践上の困難が伴い易い。更に、ディーゼルエンジン等の内燃機関では、例えば過渡状態等にある場合に煤が発生し易い。ところが、スワール比は、通常このような過渡的に発生する煤には対応していないため、このような条件下では燃焼状態が最適化されず、内燃機関のエミッションが悪化しかねない。
即ち、従来の技術には、内燃機関の広範な運転領域においてエミッションの悪化を抑制することが困難であるという技術的な問題点がある。
本発明は上述した問題点に鑑みてなされたものであり、内燃機関の燃焼状態を効率的且つ効果的に最適化し得る内燃機関の制御装置を提供することを課題とする。
上述した課題を解決するため、本発明に係る内燃機関の制御装置は、気筒における吸気流路が少なくとも二つに分割され、該分割された吸気流路の少なくとも一方に燃焼室内で形成される吸気の旋回流の強度を開度に応じて制御することが可能な制御弁を備えると共に、周状に所定間隔で配置された複数の噴射孔から燃料を副噴射及び主噴射に分割して前記燃焼室内に供給する供給手段を備えた内燃機関を制御する内燃機関の制御装置であって、前記所定間隔を規定する角度値をθ、相互に異なる複数の前記内燃機関相互間における旋回流の特性の差異を補正する第1補正係数をC、前記主噴射が行われる期間を規定する角度値をDmainとした場合に(1)式に従って前記旋回流の強度を規定するスワール比の最適値SRを決定する第1決定手段と、前記スワール比が前記最適値SRとなるように前記開度を制御する開度制御手段と、第2補正係数をC’とした場合に(2)式に従って前記最適値SRに対応する前記主噴射と前記副噴射との時間間隔を規定する角度値θintを決定する第2決定手段と、前記時間間隔が前記θintに対応する時間間隔となるように前記供給手段を制御する供給制御手段と、前記気筒の内部における煤の濃度を特定する特定手段と、前記特定された濃度に基づいて前記最適値SRを補正する補正手段とを具備し、前記第2決定手段は、前記最適値SRが補正された場合に、該補正された最適値SRに対応する前記角度値θintを決定することを特徴とする。
SR=C×θ/Dmain…(1)
θint=C’×θ/SR…(2)
本発明に係る「内燃機関」とは、例えば車両用のディーゼルエンジン等を指し、例えば複数の気筒を有し、当該複数の気筒の各々における燃焼室において、例えばガソリン、軽油、アルコール又はLPG等の各種燃料が燃焼した際に発生する爆発力を、例えばピストン及びコネクティングロッド等の機械的な伝達経路を経て、例えばクランク軸等の入出力軸を介して動力として取り出すことが可能な機関を包括する概念である。
θint=C’×θ/SR…(2)
本発明に係る「内燃機関」とは、例えば車両用のディーゼルエンジン等を指し、例えば複数の気筒を有し、当該複数の気筒の各々における燃焼室において、例えばガソリン、軽油、アルコール又はLPG等の各種燃料が燃焼した際に発生する爆発力を、例えばピストン及びコネクティングロッド等の機械的な伝達経路を経て、例えばクランク軸等の入出力軸を介して動力として取り出すことが可能な機関を包括する概念である。
本発明に係る内燃機関では、気筒における吸気流路が少なくとも二つに分割される。ここで、「吸気流路」とは、エアクリーナやスロットルバルブ等を介して適宜吸入される空気(即ち、吸入吸気)の流路であり、好適には吸気管、特に内燃機関に備わる各気筒へ分岐する吸気マニホールドや吸気ポート等を指す。従って、「気筒における吸気流路」とは、係る吸気流路のうち各気筒に対応する部分であり、例えば吸気マニホールドにおける各気筒に対応する枝管部分や、各気筒における吸気ポート等を指す。
気筒における前述した吸気流路のうち少なくとも一方には、例えば、バタフライバルブ等の制御弁が設置される。本発明に係る制御弁とは、燃焼室内において発生する吸気の旋回流(以降、適宜「スワール」と称する)の強度を開度に応じて制御することが可能な弁を包括する概念である。
尚、燃焼室内に吸気の旋回流を形成することが可能であって、且つ制御弁の開度に応じて係る旋回流の強度を制御可能である限りにおいて、気筒における吸気流路の材質、形状、空間的な配置態様及び分割される各々相互間の位置関係等は何ら限定されない。例えば、分割された一方にのみ制御弁が設けられていてもよい。この場合、制御弁が閉じれば必然的に制御弁を有さない吸気流路における吸気の流速が上昇し、旋回流の強度は大きくなる。また、制御弁が開けば、制御弁が閉じられた場合と比較して幾らかなりとも吸気の干渉が生じるため、旋回流の強度は小さくなる。
一方、内燃機関には、供給手段が備わり、燃焼室内に燃料が噴射される。即ち、本発明に係る内燃機関は、気筒内に燃料が直接噴射される、所謂筒内直噴型の内燃機関である。供給手段は、周状に所定間隔で配置された複数の噴射孔から、例えば機関回転数及びアクセルペダルの操作量(以下、適宜「アクセル開度」と称する)等内燃機関の各種状態に応じて噴射量が定まる燃料を、副噴射及び主噴射に分割して供給する。
ここで、「副噴射」とは、主として燃焼騒音を低減するために実行されるものであり、所謂「パイロット噴射」と等価な概念である。内燃機関、とりわけディーゼルエンジン等の圧縮自着火式内燃機関では、圧縮比が高い上、燃焼室内の温度が燃料の着火に大きな影響を与える。従って、供給すべき燃料が一度に噴射された場合には、着火遅れに起因して急激な温度上昇が発生し、燃焼騒音の増大やノッキングの発生が顕在化する。そこで、噴射すべき燃料のうち一部を副噴射として主噴射以前に燃焼室内に供給し、主噴射以前に燃焼温度を高めることによって燃焼室内部の急激な温度上昇が防止される。
ここで特に、燃焼室内には既に述べた旋回流が生じており、副噴射において噴射された燃料は、係る旋回流に乗って燃焼室内を旋回し、燃料と吸気との混合が促進され、効率的な燃焼が促される。一方で、この副噴射による噴霧(即ち、燃料)が、主噴射が行われる時点で噴射孔に対面している場合には、副噴射による噴霧と主噴射による噴霧とが衝突するため燃料の燃焼が効率的に行われず、煤、スモーク等といった微粒子の発生量が増加しエミッションが悪化し易い。従って、旋回流の強度(即ち、旋回流の速度)及び副噴射及び主噴射間の噴射間隔は、内燃機関の燃焼状態に大きな影響を与える。
ところが、このような旋回流の強度を規定するスワール比が、回転数及び負荷等の機関運転条件に応じて最適化された形で予めマップ等の形態で記憶されている場合、内燃機関の運転条件の過渡的な変化に対する真に最適なスワール比を実現しようとすれば、膨大な適合工数が必要となる。従って、内燃機関の燃焼状態は、少なくとも最適なスワール比が実現されるまでの期間において悪化し、環境性能はそのような期間において必然的に低下し易い。
そこで、本発明に係る内燃機関の制御装置は、以下の如くにして、スワール比を速やかに最適値に制御し、内燃機関の燃焼状態を効率的且つ効果的に最適化することが可能となっている。
即ち、本発明に係る内燃機関の制御装置によれば、その動作時には、例えばECU(Electronic Control Unit:電子制御ユニット)等の各種処理ユニット、各種コントローラ或いはマイコン装置等各種コンピュータシステム等の形態を採り得る第1決定手段により、上記(1)式に基づいて、旋回流の強度を規定するスワール比の最適値SRが決定される。
ここで、「スワール比」とは、機関一回転当りの旋回流の旋回回数を表す数値であり、大きい程旋回流の強度が高く(即ち、旋回速度が速く)、小さい程旋回流の強度が低い(即ち、旋回速度が遅い)ことを表す数値である。
尚、気筒における吸気流路が分割されることに鑑みれば、典型的には、制御弁の開度を大きくしてスワール比を低下させれば吸気量自体は増加し、制御弁の開度を小さくしてスワール比を上昇させれば吸気量は減少する。尚、開度の基準を全開状態におくか全閉状態におくかによって係る挙動は正反対となり得、例えば全開状態の開度をゼロとすれば開度が大きい程スワール比は大きくなる。
ここで、(1)式における第1補正係数Cとは、相互に異なる複数の内燃機関相互間における旋回流の特性の差異を補正する係数である。燃焼室内で形成される旋回流は、燃焼室を含む気筒の形状等によってその特性が夫々異なる。第1補正係数は、このような内燃機関毎の差異を補正するために、例えば、基準となる内燃機関の状態に対する相対的な値として決定されている。
所定間隔を規定する角度値θとは、供給手段における噴射孔の間隔を規定する角度値である。このような角度値を規定するためには、供給手段における噴射孔は等間隔に配列するのが望ましいが、必ずしも噴射孔は等間隔に配列しておらずともよい。例えば、係る角度値θは、便宜的に全周360度を噴射孔の総数で除算した値であってもよい。
角度値Dmainとは、主噴射が行われる期間を規定する角度値である。噴射期間は無論時間概念であるが、係る時間概念と角度概念とを相関付ける要素、好適には内燃機関のクランク角によって、噴射期間を角度として表すことが可能となる。例えば、噴射期間とは噴射開始時刻と噴射終了時刻の差分であるから、噴射開始クランク角と噴射終了クランク角との差分(即ち、角度)は噴射期間を規定する角度値となる。
尚、噴射期間が角度として表される場合、機関回転数によって噴射期間が表す噴射時間は異なるから、同一の燃料を噴射するための噴射期間は、機関回転数に応じて変化することになる。従って、本発明に係る角度値Dmainとは、噴射量(負荷に対応)及び機関回転数に応じて変化する関数となる。
尚、上記(1)式における第1補正係数Cを除く部分、即ち角度値θを角度値Dmainで除算した値は、内燃機関におけるスワール比と相関することが予め実験的に確認されている。即ち、上記(1)式に従って決定されるスワール比の最適値SRとは、燃焼室における、噴霧と噴霧との空間(即ち、角度値θが表す概念)が主噴射の期間中に最も有効に利用され得るスワール比を表す概念である。
一方、スワール比の最適値SRが決定されると、例えばECU等の各種処理ユニット、各種コントローラ或いはマイコン装置等各種コンピュータシステム等の形態を採り得る開度制御手段により、スワール比が、このようにして決定された最適値SRとなるように、例えば予め設定された、当該開度とスワール比との対応関係等に基づいて制御弁の開度が制御される。
尚、ここで述べられる対応関係とは、好適には予め実験的に、経験的に或いはシミュレーション等に基づいて求められた制御弁の開度とスワール比の直接的な関係であるが、スワール比から最終的に制御弁の開度を取得可能である限りにおいて如何なる関係であってもよい。尚、制御弁の開度とスワール比とが直接的に対応付けられる場合等には、係る対応関係は、然るべき記憶手段、例えばROM(Read Only Memory)などにマップとして格納されていてもよい。この段階で、内燃機関のスワール比は、内燃機関の運転条件(例えば、機関回転数や噴射量等)及びエミッションの状態に対してリアルタイムに適合する値に制御される。
一方、上述した最適値SRの概念に鑑みれば、主噴射と副噴射との時間間隔は内燃機関の燃焼状態を左右する一因となり得る。そこで、本発明に係る内燃機関の制御装置では、第2決定手段により、上記(2)式に従って、既に決定されたスワール比の最適値SRに対応する主噴射と副噴射との時間間隔を規定する角度値θintが決定される。
ここで、(2)式の構成に鑑みれば、第2補正係数C’とは即ち、副噴射による噴霧と主噴射による噴霧との相対位置を規定する値である。より具体的には、第2補正係数C’が「1」である場合とは、即ち、ある噴射孔における副噴射による噴霧が、スワールの方向に隣接する噴射孔における主噴射による噴霧と真正面から衝突することを意味する。従って、第2補正係数C’とは好適には、1より大きい或いは1未満の数値として設定される。1より大きい場合とは、概念的には副噴射による噴霧が通り過ぎた後に主噴射が行われることを意味し、1より小さい場合とは、概念的には副噴射による噴霧が到達する以前に主噴射が行われることを意味する。このような第2補正係数C’の値は、予め実験的に、経験的に又はシミュレーション等によって内燃機関の燃焼状態が最適化され得るように決定されている。
一方、供給制御手段は、副噴射と主噴射との時間間隔が係るθintに対応する時間間隔となるように前記供給手段を制御する。このような制御とは、好適には前述した如くクランク角に対応付けた制御であり、この場合、副噴射が実行されてからθintに対応するクランク角変位が生じた場合に主噴射が実行されることになる。尚、θintは、角度値Dmainに対応して変化する値であるから、本発明に係る内燃機関の制御装置によれば、結局係る時間間隔を規定する指標値θintも内燃機関の運転条件をリアルタイムに反映した値となる。
ここで特に、例えば加速要求等過渡的な要求等によって内燃機関における例えば要求負荷等の運転条件が定常状態と比較して急激に変化している状態を包括する概念としての過渡状態においては、内燃機関の動作条件が急峻に変化、例えば要求負荷が急峻に増大するため、例えば圧縮自着火式内燃機関等、燃料の噴射量制御に機関回転数の減少に応じて噴射量を増量し燃焼を安定させる所謂ガバナ制御が使用される場合等には特に、燃料の要求噴射量がスモーク等の発生限界を規定する上限ガード以上となってエミッションが悪化しかねない。
或いは、内燃機関がEGR(Exhaust Gas Recirclation:排気ガス再循環)装置を備える場合、EGR装置の切り遅れ(例えばバルブの閉じ遅延等であり、即ち、相対的な空気量不足)等によって、過渡状態において顕著に(但し、必ずしも過渡状態に限定されない)煤が発生し易い。EGR装置により循環供給されるEGRガス(即ち、排気ガス)が、NOxの排出量軽減に顕著に有効である点に鑑みれば、煤の発生は、NOxの抑制とは言わば背反する事象であり、回避し難い事象となり得る。
他方、内燃機関がこのような過渡状態にある期間(以下、適宜「過渡期間」と称する)では、第1決定手段により決定される、上述したスワール比の最適値SRは、刻々と変化する内燃機関の動作条件に追従しきれない場合がある。また、上述したようなEGRの切り遅れ等は、本来、スワール比の制御とは無関係に生じ得る。従って、上述したようにスワール比を最適値SRに制御した所で、燃焼状態は必ずしも最適化されるとは限らず、現実問題として煤の発生量が実践上無視し得ない程度に顕在化してエミッションが悪化する可能性がある。
そのような事態に対処すべく、本発明に係る内燃機関の制御装置は、例えばECU等の各種処理ユニット、各種コントローラ或いはマイコン装置等各種コンピュータシステム等の形態を採り得る特定手段を備え、気筒の内部における煤の濃度が特定される。
尚、本発明における「特定」とは、例えば、何らかの検出手段を介して直接的に又は間接的に、特定対象そのもの又は特定対象と相関する物理的指標を、物理的数値又は物理的数値に対応する例えば電気信号等として検出すること、予め然るべき記憶手段等に記憶されたマップ等から該当する数値を選択する又はそのような選択を介して推定すること、それら検出された物理的数値若しくは電気信号又は選択若しくは推定された数値等から、予め設定されたアルゴリズムや計算式等に従って導出又は推定すること、或いはこのように検出、選択、推定又は導出された値等を単に電気信号等として取得すること等を包括する広い概念である。特定手段は、例えば、二色法を利用したスートセンサ等の検出手段から煤の濃度或いは濃度に対応する指標値等を取得すること等により、気筒内部における煤の濃度を特定する。
一方、このように煤の濃度が特定されると、例えばECU等の各種処理ユニット、各種コントローラ或いはマイコン装置等各種コンピュータシステム等の形態を採り得る補正手段の作用により、スワール比の最適値SRが補正される。
ここで、本発明に係る「補正」とは、上述した(1)式に従って第1決定手段により導かれた最適値SRに対し、例えば適当な補正項を加算、減算、乗算又は除算を施すといった数値演算の概念を含みつつ、更には、第1決定手段により導かれた最適値SRに優先して、係る導かれた最適値SRとは全く無関係に暫定的な最適値SRを設定すること等を含む広い概念である。
尚、上述したように、(1)式に従って決定される最適値SRとは、燃焼室における、噴霧と噴霧との空間が主噴射の期間中に最も有効に利用され得るスワール比を表す概念であるから、係る補正の好適な態様の一として、例えば、基本的に(1)式に従って最適値SRが決定され、特定された煤の濃度が相対的に高い場合等、エミッションの悪化を抑制する観点等から適宜設定され得る条件が満たされた場合等に限って、或いはそのような場合に顕著に、最適値SRの補正が行われてもよい。
尚、補正手段に係る補正の態様は、過渡期間を含む内燃機関の広い運転範囲で内燃機関の燃焼状態を最適化或いは可及的に向上せしめ得る限りにおいて、無論このような制御に限定されない。例えば、最適値SRを決定するに際し、特定された煤の濃度に基づいた補正を行うべきか否かは、例えば予め実験的に、経験的に、理論的に或いはシミュレーション等に基づいて、可及的に広い運転範囲で最適なスワール比が得られるように設定されてなる判断基準に従って、その都度個別具体的に判断されてもよい。
このように、補正手段によれば、その時点におけるリアルタイムな煤の濃度、或いは近未来的に到達すると予測される煤の濃度等に応じて、暫定的にスワール比の最適値SRを設定することが可能となり、(1)式に従った、好適には定常的な運転条件における理想的な最適値では対処が困難となり得る運転条件においても、内燃機関の燃焼状態を最適化することが可能となる。
尚、このように最適値SRの補正がなされた場合には、無論開度制御手段により制御弁の開度はこの補正された最適値SRに対応した開度に制御される。更に、前述した角度値θintも、補正された最適値SRに応じて演算され、供給制御手段により、当該角度値が実現される。
以上説明したように、本発明に係る内燃機関の制御装置によれば、内燃機関の運転条件に対しスワール比の最適値SRを数値演算の結果として取得することができるため、速やかに最適なスワール制御を行うことが可能となる。また、この際、気筒内部の煤の濃度に基づいて最適値SRが適宜補正されるため、例えば煤の濃度が相対的にみて高い場合等には、例えばスワール比を可及的に大きくする等、過渡期間や、突発的に或いは不定のタイミングで訪れ得るエミッションの悪化を招きかねない期間等における、エミッションの悪化も抑制される。更には、係るスワール比の最適値SRに応じた最適な噴射間隔で副噴射と主噴射を実行することが可能となる。即ち、効率的且つ効果的に内燃機関の燃焼状態を最適化することが可能となるのである。
本発明に係る内燃機関の制御装置の一の態様では、前記補正手段は、前記特定された濃度が所定値以上である場合に前記最適値SRを補正する。
この態様によれば、例えば煤の濃度がエミッションの悪化を顕在化させ得る程度に高い場合等に、最適値SRの補正を行うことができるため、上述した(1)式に従って決定される内燃機関の運転条件に応じた最適なスワール比を可及的に維持しつつ、過渡的なエミッションの悪化を効果的に抑制することが可能となるといった、実践上有益な効果が奏される。
尚、この態様では、前記補正手段は、前記特定された濃度が前記所定値以上である場合に、前記最適値SRを、予め設定される前記スワール比の上限値SRmaxとすることにより前記最適値SRを補正してもよい。
この態様によれば、特定された濃度が所定値以上である場合には、最適値SRが、例えば吸気系(主として吸気ポート)の形状及び空間的な配置並びに気筒(燃焼室やピストン等)の形状によって規定され得る、予め設定された上限値SRmaxに決定されるため、エミッションの悪化が顕在化し易い状況下において、気筒内部における燃料の燃焼を迅速に且つ最大限に促進することが可能となり、実践上有益である。
尚、このような上限値SRmaxとは、内燃機関毎に定まる、物理的に実現し得る最大のスワール比であってもよいし、このようなスワール比に一定のマージンやオフセットを付与してなる実践上最大とみなし得るスワール比であってもよい。
本発明に係る内燃機関の制御装置の他の態様では、前記第1決定手段は、(i)前記最適値SRが予め設定される上限値SRmaxより大きい場合には前記上限値SRmaxを前記最適値SRとして決定し、(ii)前記最適値SRが予め設定される下限値SRmin未満である場合には前記下限値SRminを前記最適値SRとして決定する。
内燃機関では、上述したように、吸気系(主として吸気ポート)の形状及び空間的な配置並びに気筒(燃焼室やピストン等)の形状によって、実現され得るスワール比の範囲が決定され得る。従って、第1決定手段によって決定されるスワール比の最適値SRが、実現され得ない値となる場合がある。この態様によれば、内燃機関が採り得るスワール比の上限値SRmax及び下限値SRminによって規定される範囲内で最適値SRが決定されるため、スワール比を現実的に見て最適な値に制御することが可能となる。
本発明に係る内燃機関の制御装置の他の態様では、前記第2決定手段は、前記θintが予め設定される下限値未満である場合には、前記第2補正係数に自然数を加算してなる前記(2)式に従って前記θintを更新する。
供給手段には、その物理的、機械的、機構的又は電気的な或いは仕様的な制約によって、実現し得る最小の噴射間隔(即ち、下限値)が存在し得る。従って、第2決定手段によって決定されるθintは、係る下限値以上である必要がある。
この態様によれば、第2決定手段が、前述した(2)式に従って決定されたθintが予め設定される下限値未満である場合には、第2補正係数C’を自然数、例えば「1」インクリメントし、第2補正係数C’を補正する。第2補正係数C’は、副噴射と主噴射との相対的な位置関係を規定する値であるから、その値が、例えば「1」インクリメントされた場合には、係る位置関係は保存されたまま、副噴射による噴霧が衝突(混合)の対象となる噴霧を噴射する噴射孔が、一個先送りされることになる。従って、スワール比の最適値SRに対する最適な噴射間隔を保持することが可能となり好適である。
本発明のこのような作用及び他の利得は次に説明する実施形態から明らかにされる。
以下、適宜図面を参照して、本発明の好適な実施形態について説明する。
<実施形態>
<実施形態の構成>
始めに、図1を参照して、本発明の一実施形態に係るエンジンシステムの構成について説明する。ここに、図1は、エンジンシステム10の模式図である。
<実施形態>
<実施形態の構成>
始めに、図1を参照して、本発明の一実施形態に係るエンジンシステムの構成について説明する。ここに、図1は、エンジンシステム10の模式図である。
図1において、エンジンシステム10は、ECU(Electronic Control Unit:電子制御ユニット)100及びエンジン200を備える。
ECU100は、図示せぬCPU(Central Processing Unit)、ROM及びRAM(Random Access Memory)などを備え、エンジン200の動作を制御すると共に、本発明に係る「内燃機関の制御装置」の一例として機能するように構成されている。
エンジン200は、軽油を燃料とするディーゼルエンジンであり、本発明に係る「内燃機関」の一例である。以下に、エンジン200の要部構成について、その動作と共に説明する。
エンジン200は、車両用のディーゼルエンジンであり、シリンダブロック201に収容される複数のシリンダ202(即ち、本発明に係る「気筒」の一例)各々において、インジェクタ209によって噴射される燃料を自着火させて爆発させると共に、爆発力に応じて生じるピストン(不図示)の往復運動を、コネクティングロッド(不図示)を介してクランクシャフト(不図示)の回転運動に変換することが可能に構成されている。尚、複数のシリンダ202は、夫々同一の構成を有しており、図1においては、図面の煩雑化を防ぐ目的から、相互に重複する箇所の符号が一部省略されている。
シリンダ202内における燃料の燃焼に際し、外部から吸入された空気は、吸気管(符号省略)を通過する過程でエアクリーナ204によって濾過され、吸気マニホールド203を介して各シリンダ202に供給される。吸気マニホールド203において各シリンダへ分岐する枝管部分(即ち、本発明に係る「気筒における吸気流路」の一例)は、二つの吸気ポートに分岐し、夫々の吸気ポートを介してシリンダ202内部(例えば、燃焼室)と繋がっている。
各吸気ポートと燃焼室との連通状態は、吸気バルブ205、及び一方の吸気ポート上流部に備わるスワールコントロールバルブ(以下、適宜「SCV」と称する)207の開閉に応じて制御される。吸気バルブ205の開閉は、クランクシャフトの動作に連動したカム及びカムシャフトの動作によって制御される。
SCV207は、本発明に係る「制御弁」の一例たるバタフライ弁である。SCV207は、ECU100と電気的に接続されており(制御ラインは不図示)、ECU100による不図示の電動アクチュエータの制御に従ってその開閉状態が制御される構成となっている。また、SCV207の開度は、開度センサ208によって検出される。開度センサ208は、ECU100と電気的に接続されており(制御ラインは不図示)、そのセンサ出力たるSCV開度は、ECU100によって絶えず、或いは一定又は不定の周期で把握される構成となっている。
夫々の吸気ポートは、吸気マニホールド203を介して供給される吸気を燃焼室内に導入する管状部材であり、燃焼室内に導入される吸気が燃焼室壁面に沿って流れるようにその形状及び空間的な配置態様が決定されている。従って、燃焼室内では必然的に吸気のスワールが発生する。また、吸気ポート各々の形状及び空間的な配置態様は、一方の吸気ポートに設けられたSCV207が相対的に開いた状態において、係るスワールの回転速度が相対的に低下し、SCV207が相対的に閉じた状態において、係るスワールの回転速度は相対的に上昇するように決定されている。
燃焼室内におけるスワールの回転速度の指標としては、スワール比が用いられる。スワール比は、エンジン200における機関一回転当りのスワールの回転数を指し、その値は、予め実験的に、経験的に或いはシミュレーション等に基づいてSCV207の開度と対応付けられている。ECU100のROMには、SCV207の開度とエンジン200のスワール比とを相互に対応付けるSCV開度マップが予め格納されている。
尚、スワール比の定義に鑑みれば、スワール比は、SCV207の開度に応じて、即ち開度が増加する(本実施形態では弁が相対的に開くことを指す)に連れて低下するが、燃焼室に導かれる吸気の全体量としては無論、SCV207の開度に応じて、即ち開度の増加に伴って増加する。
インジェクタ209には、燃料が不図示の燃料タンクからコモンレール210及び枝管211を介して供給されており、インジェクタ209は、この供給される燃料を、ECU100の制御に従ってシリンダ202内に直接噴射することが可能に構成されている。尚、コモンレール210は、高温且つ高圧のシリンダ内に燃料を安定に供給するため、インジェクタ209に対し、高圧の燃料供給を行うことが可能に構成されている。
ここで、図2を参照して、インジェクタ209の詳細について説明する。ここに、図2は、燃焼室上方からインジェクタ209を見た模式的平面図である。尚、同図において、図1と重複する箇所には同一の符合を付してその説明を適宜省略することとする。
図2において、インジェクタ209には、4つの噴射孔209a、209b、209c及び209dが周状に等間隔で配置されている。従って、各噴射孔の配置間隔(即ち、本発明に係る「所定間隔」の一例)を規定する角度θは90度となっている。尚、燃料噴射時以外の期間において、各噴射孔は遮蔽板(不図示)によって燃焼室と隔絶されており、燃料噴射時にはECU100の制御により遮蔽板が摺動して噴射孔と燃焼室とが相互に連通し、各噴射孔から同時に燃料が噴射される構成となっている。
一方、燃焼室内には、図示スワール方向に前述したスワールが形成されており、各噴射孔から噴射された燃料(図示「噴霧」参照)は、係るスワールに乗って係るスワール方向へと旋回する。エンジン200は、このスワールによって燃料と吸気との混合を促進し、燃焼効率を高める構成となっている。また、本実施形態において、インジェクタ209は、噴射すべき燃料を、パイロット噴射(即ち、本発明に係る「副噴射」の一例)及びメイン噴射(即ち、本発明に係る「主噴射」の一例)に分割して噴射するように構成されている。係るパイロット噴射によって燃焼室内の急激な温度上昇が防止され、着火遅れに起因する燃焼騒音が低減される。
図1に戻り、シリンダ202内部では、インジェクタ209によって噴射された燃料と、吸入空気とが混合し、混合ガスとなって圧縮されると共に、更に係る圧縮の過程で混合ガスが燃焼温度に到達することによって混合ガスが燃焼する。燃焼した混合ガスは排気ガスとなり吸気バルブ205の開閉に連動して開閉する排気バルブ212の作用によって不図示の排気ポートから排気マニホールド213へ排出される。排気マニホールド213から繋がる排気管(符号省略)には、触媒214が設置されており、排気ガスの浄化が行われている。
ここで、各シリンダ202の壁体部には、検出端子が燃焼室に露出してなるスートセンサ206が設置されている。スートセンサ206は、例えば二色法等を応用してシリンダ内部の煤濃度Dsを検出することが可能に構成されたセンサである。スートセンサ206は、ECU100と電気的に接続されており、検出された煤濃度Dsは、ECU100によって絶えず、或いは一定又は不定の周期で把握される構成となっている。
尚、シリンダ内部の煤濃度を検出する手段は、実践上十分な精度を伴って煤濃度を検出可能である限りにおいてスートセンサ206に限定されない。また、スートセンサ206或いはそれに準じるセンサの設置位置は、必ずしもシリンダ壁体部に限定されない。
一方、クランクシャフトの近傍には、クランクシャフトの回転位置(即ち、クランク角)を検出するクランクポジションセンサ217が設置されている。クランクポジションセンサ217は、ECU100と電気的に接続されており、ECU100は、クランクポジションセンサから得られるクランク角に基づいて、エンジン200の機関回転数等を算出することが可能に構成されている。
一方、排気マニホールド213の一部は、EGRパイプ215に連通しており、エンジン200において排気バルブ212を介して排出された排気の一部は、係るEGRパイプ215を介して吸気マニホールド203に還流される構成となっている。この際、吸気マニホールド203に還流せしめられる排気の量は、例えばソレノイドバルブ等の形態を採るEGRバルブ216によって制御される構成となっている。また、EGRバルブ216は、ECU100と電気的に接続されており、その開閉状態は、ECU100によって上位に制御される構成となっている。EGRパイプ215及びEGRバルブ216は、所謂EGR装置の一例を構成している。
<実施形態の動作>
ECU100は、エンジン200の燃焼状態を効率的且つ効果的に最適化するため、ROMに格納されるプログラムに従って、以下に説明する燃焼制御処理を実行している。ここで、図3を参照して、燃焼制御処理の詳細について説明する。ここに、図3は、燃焼制御処理のフローチャートである。
ECU100は、エンジン200の燃焼状態を効率的且つ効果的に最適化するため、ROMに格納されるプログラムに従って、以下に説明する燃焼制御処理を実行している。ここで、図3を参照して、燃焼制御処理の詳細について説明する。ここに、図3は、燃焼制御処理のフローチャートである。
図3において、ECU100は、エンジン200におけるスワール比の最適値SRを下記(1)式に従って算出する(ステップA10)。尚、(1)式において、Cは絶対値補正係数(即ち、本発明に係る「第1補正係数」の一例)であり、エンジン200に固有の値である。θは前述した噴射孔の間隔を規定する角度値(即ち、本実施形態では90(deg))である。また、Dmainは、メイン噴射が行われる期間を規定する角度値である。
SR=C×θ/Dmain…(1)
ECU100は、インジェクタ209による燃料噴射のタイミングをクランクポジションセンサ217によって検出されるクランク角に基づいて制御しており、メイン噴射が行われる期間(以下、適宜「メイン噴射期間」と略称する)は、噴射開始クランク角と噴射終了クランク角との差分として決定される。
ECU100は、インジェクタ209による燃料噴射のタイミングをクランクポジションセンサ217によって検出されるクランク角に基づいて制御しており、メイン噴射が行われる期間(以下、適宜「メイン噴射期間」と略称する)は、噴射開始クランク角と噴射終了クランク角との差分として決定される。
尚、燃料噴射量(パイロット噴射によって噴射される燃料が極少量である場合には、実質的にはメイン噴射によって噴射される燃料量と等価)は、エンジン200の機関回転数Ne及び負荷(アクセル開度)によって決定される値であり、即ち、刻々と変化するエンジン200の運転条件に対応する値となる。従って、メイン噴射期間を規定するDmainもまた、エンジン200の機関回転数Ne及び負荷に対応して変化する値となる。
最適値SRを算出すると、ECU100は、算出された最適値SRが所定の上限値SRmaxより大きいか否かを判別する(ステップA11)。最適値SRが上限値SRmaxより大きい場合(ステップA11:YES)、ECU100は、スワール比の最適値SRを上限値SRmaxに設定する(ステップA13)。
一方、最適値SRが上限値SRmax以下である場合(ステップA11:NO)、ECU100は、最適値SRが所定の下限値SRmin未満であるか否かを判別する(ステップA12)。最適値SRが下限値SRmin未満である場合(ステップA12:YES)、ECU100は、スワール比の最適値SRを下限値SRminに設定する(ステップA14)。
最適値SRが上限値SRmax以下且つ下限値SRmin以上である場合(ステップA12:NO)、ECU100は、スワール比の最適値SRを、ステップA10に係る処理において算出された最適値SRに設定する。
最適値SRが上限値SRmax以下且つ下限値SRmin以上である場合(ステップA12:NO)、ECU100は、スワール比の最適値SRを、ステップA10に係る処理において算出された最適値SRに設定する。
スワール比の最適値SRが設定されると、ECU100は、エンジン200のスワール比が係る設定された最適値SRとなるようにSCV207の開度を制御する(ステップA15)。この際、ECU100は、上述した、ROMに格納されるSCV開度マップを参照して最適値SRに対応するSCV207の開度を取得し、SCV207を制御する。
エンジン200のスワール比が(1)式に基づいた最適値SRに設定されると、ECU100は、下記(2)式に基づいてパイロット噴射とメイン噴射との最適な間隔を規定する角度値であるインタバルθintを算出する(ステップA16)。ここで、C’は、パイロット噴射による噴霧とメイン噴射による噴霧との相対的な位置関係を規定する補正係数である。
θint=C’×θ/SR…(2)
ここで、一旦図2に戻って補足すると、(2)式における補正係数C’が「1」である場合とは、概念的には、例えば噴射孔209aにおけるパイロット噴射の噴霧が、噴射孔209bにおけるメイン噴射の噴霧と真正面から衝突することを表す。また、補正係数C’が1未満であれば、噴射孔209bにおけるメイン噴射の噴霧が、噴射孔209aにおけるパイロット噴射の噴霧が到達するよりも早いタイミングで噴射されることを表す。反対に、補正係数C’が1より大きければ、噴射孔209bにおけるメイン噴射の噴霧が、噴射孔209aにおけるパイロット噴射の噴霧が通過してから噴射されることを表す。係る補正係数C’の値は、予め実験的に、経験的に或いはシミュレーション等に基づいて、噴霧と噴霧との空間(即ち、吸気)を最大限に利用することが可能となるように決定されている。
ここで、一旦図2に戻って補足すると、(2)式における補正係数C’が「1」である場合とは、概念的には、例えば噴射孔209aにおけるパイロット噴射の噴霧が、噴射孔209bにおけるメイン噴射の噴霧と真正面から衝突することを表す。また、補正係数C’が1未満であれば、噴射孔209bにおけるメイン噴射の噴霧が、噴射孔209aにおけるパイロット噴射の噴霧が到達するよりも早いタイミングで噴射されることを表す。反対に、補正係数C’が1より大きければ、噴射孔209bにおけるメイン噴射の噴霧が、噴射孔209aにおけるパイロット噴射の噴霧が通過してから噴射されることを表す。係る補正係数C’の値は、予め実験的に、経験的に或いはシミュレーション等に基づいて、噴霧と噴霧との空間(即ち、吸気)を最大限に利用することが可能となるように決定されている。
図3に戻り、インタバルθintが算出されると、ECU100は、算出されたインタバルθintが、所定の下限インタバルθintmin未満であるか否かを判別する(ステップA17)。ここで、下限インタバルθintminとは、エンジン200における物理的、機械的、機構的又は電気的な制約等によって実現不可能なインタバルを規定する閾値である。
インタバルθintが、下限インタバルθintmin以上である場合(ステップA17:NO)、ECU100は、パイロット噴射とメイン噴射との時間間隔(角度値)をインタバルθintに設定し、インジェクタ209を制御する(ステップA19)。
一方、インタバルθintが、下限インタバルθintmin未満である場合(ステップA17:YES)、ECU100は、補正係数C’を「1」インクリメントして更新する(ステップA18)と共に、処理をステップA17に戻し、インタバルθintが下限インタバルθintmin以上となるまでステップA17及びステップA18に係る処理を繰り返す。インタバルθintが最終的に下限インタバルθintmin以上となった場合、上述したステップA19に係る処理が実行される。ステップA19に係る処理を実行すると、ECU100は、処理をステップA10に戻し、一連の処理を繰り返す。
ここで、θintが「1」インクリメントされるとは、即ち、上述した図2の例で言えば、噴射孔209aにおけるパイロット噴射の噴霧が、隣接する噴射孔209bを通り過ぎて一つ先の噴射孔209cにおけるメイン噴射の噴霧と前後する位置関係となる概念である。即ち、θintが自然数インクリメントされる限りにおいて、メイン噴射における噴霧とパイロット噴射における噴霧との相対的な位置関係は保存される。
一方、エンジン200では、例えばEGRバルブ216の閉弁遅延等によって、シリンダ202内部に必要以上の排気が還流し、相対的に空気量が不足することがある。或いは、急加速時等の過渡期間において、噴射量に吸入空気量が追従しきれずに空気量が不足することがある。このような、特定の期間に、又は不測のタイミングで、或いは何らかの理由で偶発的に発生する空気量の不足は、シリンダ202内部における煤の発生を助長し、最終的にはエンジン200のエミッションを悪化させる要因となる。
ところが、上述した燃焼制御処理は、基本的にエンジン200が定常状態にある場合に有効であり、スワール比の最適値SRは、このような特定の期間等におけるエミッションの悪化とは無関係に決定される値である。従って、このままでは、エンジン200の動作期間の一部において、エミッションが悪化しかねない。そこで、ECU100は、図3に示す燃焼制御処理と並行して、以下に説明するエミッション補償処理を実行し、エンジン200における燃焼状態を、エンジン200の広い動作期間で最適化することを可能としている。
ここで、図4を参照し、エミッション補償処理の詳細について説明する。ここに、図4は、エミッション補償処理のフローチャートである。尚、同図において、図3と重複する箇所には同一の符号を付してその説明を適宜省略することとする。
図4において、ECU100は、スートセンサ206によって検出された各シリンダ内部の煤濃度Dsが基準値Dsth以上であるか否かを判別する(ステップB10)。ここで、基準値Dsthは、エンジン200から排出される排気のエミッションが制限量を超えないように、予め実験的に、経験的に、理論的に或いはシミュレーション等に基づいて設定されている。
検出された煤濃度Dsが基準値Dsth未満である場合(ステップB10:NO)、ECU100は、繰り返しステップB10に係る処理を実行して、実質的に処理を待機状態に制御する。
一方、検出された煤濃度Dsが基準値Dsth以上である場合(ステップB10:YES)、ECU100は、スワール比の最適値SRを、既に述べた上限値SRmax(即ち、エンジン200で実現し得る最大のスワール比)に設定する(ステップB11)と同時に、図3に示す燃焼制御処理における、ステップA15に対する割り込み処理を実行する(ステップB12)。
この結果、煤濃度Dsが基準値Dsth以上である場合には、図3におけるステップA10からステップA14に至る一連の処理に優先して(即ち、この場合、当該ステップは無視されて)、無条件に最適スワール比が上限値SRmaxに設定され、ステップA15に係る処理を経てスワール比が速やかに上限値SRmaxに制御される。
ステップB12に係る割り込み処理が実行されると、ECU100は、処理を一旦ステップB10に戻し、一連の処理を繰り返す。従って、煤濃度Dsが基準値Dsth以上である限り、エンジン200のスワール比は上限値SRmaxに制御され続け、シリンダ内における混合ガスの攪拌が最大限に促進されて、燃焼状態が向上する。この結果、エミッションの悪化が抑制される。一方、煤濃度Dsが基準値Dsth未満となった場合には、割り込み処理が実行されないため、図3における燃焼制御処理に従って、その時点のエンジン200の運転条件に応じた最適スワール比SRが算出され、スワール比が制御される。
以上説明したように、本実施形態に係る燃焼制御処理によれば、(1)刻々と変化するエンジン200の運転条件に対し、マップ適合などの膨大な処理工程を経ることなく演算処理によって最適なスワール比を決定することが可能である。更に、(2)係る最適なスワール比に対して最適となるパイロット噴射とメイン噴射との時間間隔を演算処理の結果として取得することが可能となる。更に(3)シリンダ内の煤濃度が相対的に高い場合には、無条件に上限値SRmaxが最適スワール比SRとして設定され開度制御に供されるため、エンジン200の動作期間の一部において何らかの理由で煤が発生した場合であってもエミッションの悪化が抑制される。即ち、効率的且つ効果的にエンジン200の燃焼状態を最適化することが可能となるのである。
尚、本実施形態においては、シリンダ内部の煤濃度が予め設定された基準値以上である場合に、最適スワール比が無条件に上限値に設定されるが、当該煤濃度に基づいて最適スワール比を補正する態様はこれに限定されない。
例えば、煤濃度が基準値以上である場合には、予め煤濃度、燃料噴射量及び機関回転数等に応じて適合されてなるスワール比を最適スワール比として設定してもよい。この場合、複数の煤濃度毎に、例えば縦軸(或いは横軸)及び横軸(或いは縦軸)に夫々燃料噴射量及び機関回転数を配してなる座標系に適合済みのスワール比を配してなるマップが用意されていてもよい。この場合、当該マップから該当するスワール比を選択することにより、処理負荷を大きく増大させることなく、燃焼状態を最適化することが可能である。
また、本実施形態では、煤濃度を考慮するための処理が、エミッション補償処理として燃焼制御処理と並列に実行されるが、ECU100が実行する処理の態様はこれに限定されず、例えば、図3におけるステップA10の前段に、図4に相当する処理フローが挿入されてもよい。
或いは、図3において(1)式により算出された最適スワール比SRが、その時点の煤濃度Dsに応じて定まる補正項又は補正係数を使用して適宜数値演算の結果として補正される構成を有していてもよい。
本発明は、上述した実施形態に限られるものではなく、請求の範囲及び明細書全体から読み取れる発明の要旨或いは思想に反しない範囲で適宜変更可能であり、そのような変更を伴う内燃機関の制御装置もまた本発明の技術的範囲に含まれるものである。
10…エンジンシステム、100…ECU、200…エンジン、202…シリンダ、207…SCV。
Claims (5)
- 気筒における吸気流路が少なくとも二つに分割され、該分割された吸気流路の少なくとも一方に燃焼室内で形成される吸気の旋回流の強度を開度に応じて制御することが可能な制御弁を備えると共に、周状に所定間隔で配置された複数の噴射孔から燃料を副噴射及び主噴射に分割して前記燃焼室内に供給する供給手段を備えた内燃機関を制御する内燃機関の制御装置であって、
前記所定間隔を規定する角度値をθ、相互に異なる複数の前記内燃機関相互間における旋回流の特性の差異を補正する第1補正係数をC、前記主噴射が行われる期間を規定する角度値をDmainとした場合に(1)式に従って前記旋回流の強度を規定するスワール比の最適値SRを決定する第1決定手段と、
SR=C×θ/Dmain…(1)
前記スワール比が前記最適値SRとなるように前記開度を制御する開度制御手段と、
第2補正係数をC’とした場合に(2)式に従って前記最適値SRに対応する前記主噴射と前記副噴射との時間間隔を規定する角度値θintを決定する第2決定手段と、
θint=C’×θ/SR…(2)
前記時間間隔が前記θintに対応する時間間隔となるように前記供給手段を制御する供給制御手段と、
前記気筒の内部における煤の濃度を特定する特定手段と、
前記特定された濃度に基づいて前記最適値SRを補正する補正手段と
を具備し、
前記第2決定手段は、前記最適値SRが補正された場合に、該補正された最適値SRに対応する前記角度値θintを決定する
ことを特徴とする内燃機関の制御装置。 - 前記補正手段は、前記特定された濃度が所定値以上である場合に前記最適値SRを補正する
ことを特徴とする請求項1に記載の内燃機関の制御装置。 - 前記補正手段は、前記特定された濃度が前記所定値以上である場合に、前記最適値SRを、予め設定される前記スワール比の上限値SRmaxとすることにより前記最適値SRを補正する
ことを特徴とする請求項2に記載の内燃機関の制御装置。 - 前記第1決定手段は、(i)前記最適値SRが予め設定される上限値SRmaxより大きい場合には前記上限値SRmaxを前記最適値SRとして決定し、(ii)前記最適値SRが予め設定される下限値SRmin未満である場合には前記下限値SRminを前記最適値SRとして決定する
ことを特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載の内燃機関の制御装置。 - 前記第2決定手段は、前記θintが予め設定される下限値未満である場合には、前記第2補正係数に自然数を加算してなる前記(2)式に従って前記θintを更新する
ことを特徴とする請求項1から4のいずれか一項に記載の内燃機関の制御装置。
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