JP2008144174A - 光学フイルムおよびその製造方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】酢酸基およびプロピオン酸基を有する脂肪酸セルロースエステルからなる光学フイルム。
【選択図】図2
Description
(1)酢酸基およびプロピオン酸基を有する脂肪酸セルロースエステルからなる光学フイルム。
(2)該脂肪酸セルロースエステルの酢酸置換度(DSac)とプロピオン酸置換度(DSpr)との和が2.0〜3.0の間にあることを特徴とする(1)記載の光学フイルム。
(3)該脂肪酸セルロースエステルの酢酸置換度(DSac)が2.0〜2.7、プロピオン酸置換度(DSpr)が0.1〜0.9であることを特徴とする(1)記載の光学フイルム。
(4)25℃、相対湿度60%における平衡水分率が0.1から1.5であることを特徴とする(1)記載の光学フイルム。
(5)該脂肪酸セルロースエステルの粘度平均重合度(DP)が250から400であることを特徴とする(1)記載の光学フイルム。
(6)該脂肪酸セルロースエステル100重量部に対して、リン酸エステル化合物、脂肪酸エステル化合物、フタル酸エステル化合物、クエン酸エステル化合物からなる可塑剤の中の少なくとも1種を1〜40重量部含有させることを特徴とする(1)記載の光学フイルム。
(7)表面から深さ10μmまでの範囲における表面層の可塑剤含有量がフイルム全体の可塑剤の平均濃度より低いことを特徴とする(6)記載の光学フイルム。
(8)下記の一般式(I):
(9)偏光素子と該偏光素子の少なくとも一方の側に設けられている(1)から(8)記載のいずれかの光学フイルムとからなることを特徴とする偏光フイルム。
(10)(9)記載の偏光フイルムと位相差フイルムとを積層してなることを特徴とする楕円偏光フイルム。
(11)酢酸基およびプロピオン酸基を有する脂肪酸セルロースエステルを溶媒に溶解し、得られた溶液を支持体上に流延し、はぎ取ることを特徴とする光学フイルムの製造方法。
Rth={(nMD+nTD)/2−nTH}×d (式1)
〔nMDは流延方向に平行な方向でのフイルム屈折率、nTDは流延方向に垂直な方向でのフイルム屈折率、nTHは厚み方向でのフイルム屈折率、dはフイルム厚み(nm)である。〕
一般に、光学的に一軸異方性をもった物質に光が入射すると、位相速度の異なる互いに直行する直線偏光が伝搬するため、2つの屈折光が現れる。このような現象を複屈折といい、複屈折の大きさは、光学軸に平行な方向での屈折率(np)と光学軸に垂直な方向での屈折率(nv)との差によるので、
Δn=np−nv (式2)
を複屈折ということが多い。この複屈折(Δn)と厚み(d)の積、
Re=Δn×d (式3)
をレターデーション値(Re)といい、物質の光学的異方性を表す指標として用いられる。
Rmt=|nMD−nTD|×d (式4)
セルローストリアセテートフイルムは、この正面レターデーション値が極めて低いものとして知られ、液晶表示装置に用いる偏光板にその保護フイルムとして需要が大きい。しかしながら、液晶表示装置の偏光板としての用途の場合、液晶表示装置の表示面に垂直な方向での光学的異方性のみならず、表示面に対して任意の角度における光学的異方性をも考慮する必要がある。この場合、フイルム面内で直交する2つの屈折率(nMD、nTD)に加えてフイルム面に垂直な方向の屈折率(nTH)の寄与も考慮する必要がある。このため、フイルムの光学的異方性は(式1)に示すレターデーション値(Rth:以下「厚み方向レターデーション」という。)を考慮する必要がある。本発明は、(式1)に示すレターデーション値(Rth)が40nm≧Rth>0nm、好ましくは20nm≧Rth>0nmであり、しかも、(式4)に示す正面レターデーション値と(式1)に示す厚み方向レターデーション値との差の絶対値が0〜20nmとフイルム全体としても光学的異方性が少ない光学フイルムを提供するものである。図2に示す通り、溶液流延法による製膜では乾燥過程で溶媒が除かれるにつれフイルムの厚みは流延当初の1/5〜1/10となり、フイルム厚み方向に直交するポリマーの配向が進んで厚み方向の屈折率(nTH)が小さくなり、結果として厚み方向の複屈折(Rth)は大きくなる。比較例に示す通り、溶媒により異なるがセルローストリアセテートフイルムは25〜160nm、ポリカーボネートフイルムは216nmもあるが、実施例に示すように、本発明の混合脂肪酸セルロースエステルフイルムは、おおよそ5nmとセルローストリアセテートフイルムやポリカーボネートフイルムに比べて極めて低い。この理由としては、素材本来の複屈折値、いわゆる固有複屈折値差と溶液流延による製膜過程で生じる面配向性の差の両者の寄与が考えられる。ただし、両者の寄与の程度については明かでない。なお、本発明はプロピオン酸基を含むものについて述べているが、これは例示にすぎず、炭素数3以上のカルボン酸についても可能である。
本発明の混合脂肪酸セルロースエステルの全置換度、すなわち、酢酸置換度(DSac)とプロピオン酸置換度(DSpr)との和は、2.0〜3.0の間において任意に選択できる。とりわけ、全置換度が2.8を越える範囲においては、セルローストリアセテートに比べて、レターデーション値が低いことに加えて、置換度が同等のセルローストリアセテートを常温で溶解することが困難である、アセトン、メチルアセテート等の(式5)に示す溶解度パラメーター1.9〜2.0の溶媒にも常温で溶解する。このため、溶媒の選択範囲が広がり、近年、環境面、安全衛生面から問題となっている塩素系炭化水素を溶媒とせずとも溶液製膜できるという長所もある。
δ=(E/v)1/2 (式5)
[δは溶解度パラメーター(MPa1/2)であり、Eは蒸発エネルギー(J/mol)であり、vはモル容積(ml/mol、20℃)である。]
ηrel=T/T0
〔η〕=(lnηrel)/C
DP=〔η〕/Km
T: 測定試料の落下秒数
T0: 溶剤単独の落下秒数
C: 濃度(g/リットル)
Km:6×10−4
前記一般式(I)を有する化合物は、紫外線防止剤としての作用のほか、フイルム表面の滑り性も向上する。滑り性が要求されるのは、偏光素子と保護フイルムとから偏光フイルムを製造する場合に、フイルムのケン化処理(親水処理)、偏光素子と保護フイルムの接着剤による接着工程、保護フイルム上へのハードコートのコーティング工程、さらにこれらの工程などを行うための搬送作業等が行われる。この場合において、表面の耐傷性が充分でないときは、作業中に保護フイルム表面に傷がつき、このような保護フイルムを用いた偏光フイルムが組み込まれた液晶表示装置は致命的な表示欠陥を示すこととなるからである。
表1は、本発明の実施例および比較例で用いた素材のセルロース置換度、粘度平均重合度及び素材に対する溶媒と可塑剤との組成比を示したものである。ここで、CAPとは、本発明の混合脂肪酸セルロースエステルをいい、酢酸置換度が2.2〜2.3、プロピオン酸置換度が0.5〜0.7である。CTAとは、セルローストリアセテートをいい、酢酸置換度2.87と2.81の2品種がある。溶媒および可塑剤にカッコ書きで付記した数値は、素材100重量部に対するこれらの混合割合を示すものである。
1)フイルム中の可塑剤濃度(表面層及び膜全体)
各例で得られたCAPフイルムについて、フイルムの表面から深さ10μmまでの表面層を削って0.5gを採取し、フイルムのもう一方の表面についても同様に試料を採取し、さらにフイルムを厚さ方向に切断して膜全体の試料として0.5gを採取した。上記試料0.5gをそれぞれクロロホルム40mlに溶解し、2μlをガスクロマトグラフィーの気化室注入し、得られたガスクロマトグラムから可塑剤濃度を決定した。
使用機種: GC−15A((株)島津製作所製)
カラム: シリコンOV、2%、1.6m、3φ、260℃
キャリアガス:窒素50ml/min
検出器: FID、水素0.6kg/cm2、空気0.5kg/cm2
気化室: 280℃
A:切り屑の発生がほとんどなく、切り口が滑らかであった。
B:切り屑が少し発生し、切り口が多少ノコギリ状であった。
C:切り屑が多く、切り口がノコギリ状であった。
A:割れ、剥離、着色のいずれの発生もなかった。
B:割れが数カ所発生し、若干の着色があった。
C:割れ、剥離、着色の発生があった。
2)光透過率透明度測定機((株)KOTAKI製作所製)を用いて、得られたCAPフイルムの可視光線の透過率を測定した。
3)波長400nmの光透過率分光光度計(U−3400、(株)日立製作所製)を用いて、得られたCAPフイルムの波長400nmの光透過率を測定した。
4)動摩擦係数100mm×200mmのフイルム上に75mm×100mmのフイルムを載せ、これを固定した台の上に載せ、さらにフイルム上にフォームラバーで覆われた200gのおもりを載せる。おもりを水平方向に引っ張り、動きだした時の力(F)を測定し、下記式より動摩擦係数(μ)を求めた。
F=μ×W (W:おもりの重さ(kgf))
Claims (11)
- 酢酸基およびプロピオン酸基を有する脂肪酸セルロースエステルからなる光学フイルム。
- 該脂肪酸セルロースエステルの酢酸置換度(DSac)とプロピオン酸置換度(DSpr)との和が2.0〜3.0の間にあることを特徴とする請求項1記載の光学フイルム。
- 該脂肪酸セルロースエステルの酢酸置換度(DSac)が2.0〜2.7、プロピオン酸置換度(DSpr)が0.1〜0.9であることを特徴とする請求項1記載の光学フイルム。
- 25℃、相対湿度60%における平衡水分率が0.1から1.5であることを特徴とする請求項1記載の光学フイルム。
- 該脂肪酸セルロースエステルの粘度平均重合度(DP)が250から400であることを特徴とする請求項1記載の光学フイルム。
- 該脂肪酸セルロースエステル100重量部に対して、リン酸エステル化合物、脂肪酸エステル化合物、フタル酸エステル化合物、クエン酸エステル化合物からなる可塑剤の中の少なくとも1種を1〜40重量部含有させることを特徴とする請求項1記載の光学フイルム。
- 表面から深さ10μmまでの範囲における表面層の可塑剤含有量がフイルム全体の可塑剤の平均濃度より低いことを特徴とする請求項6記載の光学フイルム。
- 偏光素子と該偏光素子の少なくとも一方の側に設けられている請求項1から請求項8記載のいずれかの光学フイルムとからなることを特徴とする偏光フイルム。
- 請求項9記載の偏光フイルムと位相差フイルムとを積層してなることを特徴とする楕円偏光フイルム。
- 酢酸基およびプロピオン酸基を有する脂肪酸セルロースエステルを溶媒に溶解し、得られた溶液を支持体上に流延し、はぎ取ることを特徴とする光学フイルムの製造方法。
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