JP2008141048A - p型窒化物半導体の製造方法および窒化物半導体装置 - Google Patents
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Abstract
【課題】低抵抗のp型窒化物半導体を製造することができるp型窒化物半導体の製造方法およびそのp型窒化物半導体の製造方法を用いて製造されたp型窒化物半導体を含む窒化物半導体装置を提供する。
【解決手段】窒素ガスおよび窒素ガスよりも多い水素ガスを含む第1のキャリアガスと、マグネシウムを含むドーピングガスと、III族元素を含むIII族原料ガスと、窒素を含むV族原料ガスと、を少なくとも導入することによって、有機金属気相成長により、窒化物半導体を成長させる第1工程と、マグネシウムを含む第2のキャリアガスを導入しながら窒化物半導体の温度を低下させる第2工程と、を含む、p型窒化物半導体の製造方法およびそのp型窒化物半導体の製造方法を用いて製造されたp型窒化物半導体を含む窒化物半導体装置である。
【選択図】図1
【解決手段】窒素ガスおよび窒素ガスよりも多い水素ガスを含む第1のキャリアガスと、マグネシウムを含むドーピングガスと、III族元素を含むIII族原料ガスと、窒素を含むV族原料ガスと、を少なくとも導入することによって、有機金属気相成長により、窒化物半導体を成長させる第1工程と、マグネシウムを含む第2のキャリアガスを導入しながら窒化物半導体の温度を低下させる第2工程と、を含む、p型窒化物半導体の製造方法およびそのp型窒化物半導体の製造方法を用いて製造されたp型窒化物半導体を含む窒化物半導体装置である。
【選択図】図1
Description
本発明は、p型窒化物半導体の製造方法および窒化物半導体装置に関する。
従来から、窒化物半導体発光素子や窒化物半導体電子素子等の窒化物半導体装置の製造において、窒化物半導体をp型化する手法としては、結晶成長後の窒化物半導体積層体の全体を窒素雰囲気中でアニールする方法が用いられてきた(たとえば、特許文献1参照)。この方法によれば、窒化物半導体中においてp型ドーパントと結合している水素を放出させることによって、低抵抗なp型窒化物半導体とすることができるとされてきた。
しかしながら、この特許文献1で開示された方法においてもアニール後のp型窒化物半導体の抵抗率が十分に低いと言うことができなかった。窒化物半導体の抵抗率の低減は窒化物半導体装置の消費電力の低減に直結するために非常に重要な事項であるが、一般にp型窒化物半導体の抵抗率はn型窒化物半導体と比べて非常に高いため、p型窒化物半導体のさらなる抵抗率の低下が求められている。
また、特許文献1で開示された方法においては、結晶成長後の窒化物半導体積層体の全体をアニールするため、たとえば窒化物半導体発光素子におけるInGaN活性層等の重要な部位が熱による損傷を受けて劣化してしまうという問題もあった。
そこで、たとえば特許文献2および特許文献3には、p型化のためのアニールを行なわなくてもp型窒化物半導体において高いキャリア濃度または抵抗率の低減を図る方法が開示されている。
ここで、特許文献2には、たとえば、p型クラッド層およびp型コンタクト層の積層時においては、不活性ガスを水素ガスに対して過剰とし、かつ水素ガスの不活性ガスに対する流量比を0.75%以上とし、結晶成長終了後、不活性ガスの流量を増大して基板を自然放冷させる(特許文献2の[0020]、[0025]等参照)方法が開示されている。ここで、不活性ガスの流量を増大させる段階で、不活性ガスおよびアンモニアガスの流量比は2:1に設定される(特許文献2の[0031]等参照)。
このような特許文献2に開示された方法によれば、p型ドーパントの7%以上が電気的に活性化され、2.4×1018cm-3以上の非常に高いキャリア濃度を得ることができるとされている(特許文献2の[0018]等参照)。
また、特許文献3には、不活性ガスを50vol%以上の割合で含む雰囲気中でp型ドーパントを含むGaN半導体結晶を成長させた後、その結晶成長温度で雰囲気をアンモニアを0.1〜30vol%の割合で含む冷却用雰囲気に切り替え、この冷却用雰囲気中でGaN半導体結晶を冷却する(特許文献3の[請求項1]および[請求項2]等参照)方法が開示されている。
このような特許文献3に開示された方法によれば、結晶成長終了後のアニールを行なうことなく、p型ドーパントの活性化を安定的に行なうことができるとされている。
特開平5−183189号公報
特開平9−129929号公報
特開2004−103930号公報
上述した特許文献2および特許文献3に開示された方法においては、結晶成長後のアニールを必要としない、または短時間のアニールで済むことから、特許文献1に開示されたような窒化物半導体装置の重要な部位が熱による損傷を受けて劣化するという問題を回避することができるため、非常に有益であると考えられる。
しかしながら、本発明者らが追試験を実施したところ、上述した特許文献2および特許文献3に開示された方法においては、p型窒化物半導体がp型の電気特性を示していない、またはp型の電気特性を示したとしても抵抗率が非常に高い(あるいはp型窒化物半導体層のキャリア濃度が非常に小さい)等の問題があり、特許文献2および特許文献3に開示されているとおりの結果が得られなかった。
そこで、本発明の目的は、低抵抗のp型窒化物半導体を製造することができるp型窒化物半導体の製造方法およびそのp型窒化物半導体の製造方法を用いて製造されたp型窒化物半導体を含む窒化物半導体装置を提供することにある。
本発明は、窒素ガスおよび窒素ガスよりも多い水素ガスを含む第1のキャリアガスと、マグネシウムを含むドーピングガスと、III族元素を含むIII族原料ガスと、窒素を含むV族原料ガスと、を少なくとも導入することによって、有機金属気相成長により、窒化物半導体を成長させる第1工程と、マグネシウムを含む第2のキャリアガスを導入しながら窒化物半導体の温度を低下させる第2工程と、を含む、p型窒化物半導体の製造方法である。
ここで、本発明のp型窒化物半導体の製造方法において、第2のキャリアガスは、シクロペンタジエニルマグネシウムおよびビスエチルシクロペンタジエニルマグネシウムの少なくとも一方を含むことができる。
また、本発明のp型窒化物半導体の製造方法において、窒化物半導体の厚さを0.5μm以上とすることができる。
また、本発明のp型窒化物半導体の製造方法において、窒化物半導体のアルミニウムの組成比を2%以上とし厚さを0.3μm以上とすることができる。なお、本発明において、「窒化物半導体のアルミニウムの組成比」は、窒化物半導体に含まれるIII族元素(アルミニウム、ガリウムおよびインジウム)の総原子数に対するアルミニウムの原子数の割合(%)を意味する。
また、本発明のp型窒化物半導体の製造方法において、第2のキャリアガスは、アルゴンガスおよび窒素ガスの少なくとも一方を含むことができる。
また、本発明のp型窒化物半導体の製造方法において、第2工程は窒化物半導体の温度を400℃以下まで低下させる工程であって、窒化物半導体の温度の低下を開始した時点から窒化物半導体の温度が400℃になる時点までの時間を25分以下とすることが好ましい。
また、本発明のp型窒化物半導体の製造方法は、第2工程後に窒化物半導体を不活性ガスを含む雰囲気中でアニールする第3工程を含むことが好ましい。
また、本発明のp型窒化物半導体の製造方法においては、第3工程において窒化物半導体が700℃以上900℃以下の温度でアニールされることが好ましい。
また、本発明のp型窒化物半導体の製造方法においては、第3工程において1分以上15分以下の時間アニールすることが好ましい。
また、本発明は、上記のいずれかのp型窒化物半導体の製造方法を用いて作製されたp型窒化物半導体を含む窒化物半導体装置である。
なお、本明細書において、Alはアルミニウムを示し、Gaはガリウムを示し、Inはインジウムを示し、Nは窒素を示す。
また、本明細書において、2種以上の元素記号を含む化学式は、特にその組成比についての言及がない限り、その化学式で表わされる化合物を構成する元素の組成比は特に限定されないものとする。
本発明によれば、低抵抗のp型窒化物半導体を製造することができるp型窒化物半導体の製造方法およびそのp型窒化物半導体の製造方法を用いて製造されたp型窒化物半導体を含む窒化物半導体装置を提供することができる。
以下、本発明の実施の形態について説明する。なお、本発明の図面において、同一の参照符号は、同一部分または相当部分を表わすものとする。
本発明は、窒素ガスおよび窒素ガスよりも多い水素ガスを含む第1のキャリアガスと、マグネシウムを含むドーピングガスと、III族元素を含むIII族原料ガスと、窒素を含むV族原料ガスと、を少なくとも導入することによって、有機金属気相成長により、p型窒化物半導体を成長させる第1工程と、マグネシウムを含む第2のキャリアガスを導入しながらp型窒化物半導体の温度を低下させる第2工程と、を含む、p型窒化物半導体の製造方法である。
これは、本発明者らが鋭意検討した結果、上記の第1工程および第2工程を経て得られたp型窒化物半導体層は、高品質な結晶性を有するとともに、第2工程後においてアニールをしない場合でも再現性良くp型の電気特性を示し、さらに低抵抗率となることを見いだし、本発明を完成するに至ったものである。
<第1工程>
図1に、本発明のp型窒化物半導体の製造方法の第1工程の一例を図解する模式的な断面図を示す。ここで、第1工程においては、有機金属気相成長装置の反応炉102内に設置されたサセプタ104上に基板101を設置し、その後、窒素ガスおよび窒素ガスよりも多い水素ガスを含む第1のキャリアガスと、マグネシウムを含むドーピングガスと、III族元素を含むIII族原料ガスと、窒素を含むV族原料ガスと、を少なくとも含むガス103を反応炉102内に導入する。これにより、基板101上に窒化物半導体が有機金属気相成長によって結晶成長する。
図1に、本発明のp型窒化物半導体の製造方法の第1工程の一例を図解する模式的な断面図を示す。ここで、第1工程においては、有機金属気相成長装置の反応炉102内に設置されたサセプタ104上に基板101を設置し、その後、窒素ガスおよび窒素ガスよりも多い水素ガスを含む第1のキャリアガスと、マグネシウムを含むドーピングガスと、III族元素を含むIII族原料ガスと、窒素を含むV族原料ガスと、を少なくとも含むガス103を反応炉102内に導入する。これにより、基板101上に窒化物半導体が有機金属気相成長によって結晶成長する。
ここで、本発明のp型窒化物半導体の製造方法の第1工程においては、第1のキャリアガスに水素ガスが窒素ガスよりも多く含まれていることに特徴がある。これは、従来技術である特許文献2および特許文献3に開示された方法とは逆の発想になっている。
すなわち、特許文献2および特許文献3に開示された方法においては、p型ドーパントがドーピングされた窒化物半導体について、その結晶成長終了後にアニールすることなくp型の電気特性を発揮させるために、窒素ガスが水素ガスよりも多い雰囲気下で窒化物半導体を成長させる必要があった(特許文献2の段落[0022]および特許文献3の段落[0017]〜[0018]参照)。
その理由の1つとしては、一般に、結晶成長終了後においてp型の電気特性が得られないのは、窒化物半導体にp型ドーパントとしてドーピングされたマグネシウムが水素と結合して、p型ドーパントとして機能しない(水素によってマグネシウムが不活性化される)ためと考えられていることによるものである。
しかしながら、特許文献2および特許文献3に開示された方法で製造されたp型窒化物半導体の抵抗率は結晶成長終了後、p型の電気特性を示さなかったり、p型の電気特性を示しても非常に高抵抗であったり、p型の電気特性を示しても基板面内においてその抵抗率が一様ではなく抵抗率の低い部分や高い部分が混在していたりして、結晶成長終了後に再現性良くp型の電気特性を示すものが得られなかった。そして、特許文献2および特許文献3に開示された方法を用いて製造された窒化物半導体発光素子に電流を注入した場合には、経過時間とともに電圧が上昇し、破壊してしまうという問題があった。
そこで、この原因を調査するため、窒素ガスと水素ガスとの混合ガスからなるキャリアガスにおける窒素ガスの流量と水素ガスの流量との和に対する水素ガスの流量の割合をxとし、このxを変数として、p型ドーパントとしてマグネシウムがドーピングされた窒化物半導体を有機金属気相成長により成長させた。
その結果、xが50%以下の場合には、窒化物半導体の結晶成長方向におけるチルト成分(結晶の配向に寄与する成分)および/または結晶面内のツイスト成分(結晶の刃状転位密度に寄与する成分)が増大し、結晶性が悪化することがX線解析により確認された。窒化物半導体の結晶性は、水素ガスの流量の割合xが減少するにつれて悪化することも確認された。
また、窒化物半導体層の表面モフォロジーも水素ガスの流量の割合xが減少するにつれて悪化し、窒化物半導体層の表面モフォロジーは窒化物半導体層の厚さが厚くなるにつれて顕著に悪化する傾向にあることも確認された。
たとえば、マグネシウムがp型ドーパントとしてドーピングされたGaNからなる窒化物半導体の場合にはその厚さが0.3μmを超えたあたりから、マグネシウムがp型ドーパントとしてドーピングされたAlGaNからなる窒化物半導体の場合にはその厚さが0.2μmを超えたあたりから、それぞれ次第に表面モフォロジーが悪化し始めた。
これらの結果から、上記の特許文献2および特許文献3に開示された方法における問題点は、p型ドーパントとしてマグネシウムがドーピングされた窒化物半導体の結晶性が低下したために引き起こされたものと考えられる。したがって、上記の特許文献2および特許文献3に開示された方法は、高品質で厚さの大きいp型窒化物半導体(たとえば0.3μm以上の厚さを有するp型窒化物半導体)を必要とする場合には適さない。
マグネシウムがドーピングされた窒化物半導体の結晶品質(結晶性)が上記の水素ガスの流量の割合xに依存した理由としては以下の3点が考えられる。
第1に、水素ガスの流量の割合xが減少すると、窒化物半導体を構成するIII族元素を含むIII族原料ガスおよびマグネシウムを含むドーピングガスの分解効率が低下し、結晶品質が低下する。
第2に、水素ガスの流量の割合xが減少すると、III族元素を含むIII族原料ガスおよびマグネシウムを含むドーピングガス等の原料ガスが十分にキャリアガス中を拡散することができず(窒素ガスは水素ガスに比べて原料ガスの拡散効率が低い)、基板の表面内で原料ガスの分布が生じる。
第3に、高品質の窒化物半導体(特に、アルミニウムを含む窒化物半導体層)を結晶成長させるためには、上記の原料ガスの流速を50cm/秒以上として結晶成長させる必要があるが、その流速が大きくなると上記の第2の理由に記載された傾向がより顕著になる。
従来の特許文献2および特許文献3に開示された方法における問題点を解決するため、本発明に係る第1工程においては、水素ガスが窒素ガスよりも多く含まれている第1のキャリアガスを用いる。このような構成の第1のキャリアガスを用いて有機金属気相成長により結晶成長させたp型ドーパントがドーピングされた窒化物半導体層の結晶性はその厚さにほとんど依存することなく非常に良好であった。これは、第1のキャリアガスにおける水素ガスの割合を窒素ガスよりも多くする(たとえば、窒素ガスと水素ガスとの混合ガスからなる第1のキャリアガスにおける窒素ガスの流量と水素ガスの流量との和に対する水素ガスの流量の割合xを50%よりも多くする)ことによって、窒化物半導体を構成する原料ガスが十分に拡散したためと考えられる。
また、p型ドーパントがドーピングされた窒化物半導体を有機金属気相成長により高品質に結晶成長させるために50cm/秒以上の流速で原料ガスを導入した場合でも、基板の表面内において原料ガスの分布が生じるということもなかった。
このような本発明に係る第1工程を用いた場合には、p型ドーパントがドーピングされた窒化物半導体をその厚さが0.5μm以上となるように成長させる場合であっても、アルミニウムの組成比が2%以上であって厚さが0.3μm以上であるp型ドーパントがドーピングされた窒化物半導体を成長させる場合であっても、高品質の窒化物半導体を結晶成長させることができる。
なお、上記の第1工程において、p型ドーパントとしてマグネシウムがドーピングされたGaNまたはAlGaNを窒化物半導体として成長させる場合には、良好な結晶性を有する窒化物半導体を成長させる観点からは、基板101の温度は900℃以上1100℃以下であることが好ましく、1000℃以上1080℃以下であることがより好ましい。また、上記の第1工程において、p型ドーパントとしてマグネシウムがドーピングされたAlGaInNを窒化物半導体として成長させる場合には、良好な結晶性を有する窒化物半導体を成長させる観点からは、基板101の温度は700℃以上1000℃以下であることが好ましい。さらに、上記の第1工程において、p型ドーパントとしてマグネシウムがドーピングされたInGaNを窒化物半導体として成長させる場合には、良好な結晶性を有する窒化物半導体を成長させる観点からは、基板101の温度は700℃以上850℃以下であることが好ましい。
また、第1工程における第1のキャリアガスに含まれる窒素ガスとしては水分濃度が1ppb以下に制御された窒素ガスを用いることが好ましい。窒素ガスは安価である点で好ましいが、一般に吸湿性があるため多くの水分を含んでおり、窒化物半導体層のp型の電気特性を発揮させるためにはその水分濃度を低くすることが好ましいためである。
ここで、水分濃度が1ppb以下に制御された窒素ガスを有機金属気相成長装置の反応炉102内に安定して導入する方法としては、ゲッター効果を利用した窒素精製装置を用いることが好ましい。一般に用いられている吸着再生式の窒素精製装置の場合には、一度吸着した水分(あるいは酸素などの不純物)が吸着筒の再生工程で再び放出されるため、窒素ガスの純度が不安定となることがある。一方、ゲッター効果を用いた窒素精製装置は水分(あるいは酸素などの不純物)を一度捕らえるとそれを再放出することはほぼないため、高純度の窒素ガスを安定して導入することができる。
また、高純度の窒素ガスを安定して導入することを考慮すると、ゲッター効果を利用した窒素精製装置を1台若しくは2台以上直列に併設することが好ましい。また、経済性を考慮すると、2台以上の吸着再生式の窒素精製装置を直列に併設するか、または複数の吸着再生式の窒素精製装置を直列に併設した後にゲッター効果を利用した窒素精製装置を設置することが好ましい。また、高純度の窒素ガスを安定して導入し、かつ経済性に優れた窒素精製装置の設置方法としては、2台の窒素精製装置のうち、初段(窒素ガス導入側)に吸着再生式の窒素精製装置を設置し、後段(有機金属気相成長装置側)にゲッター効果を利用した窒素精製装置を設置することが好ましい。
また、マグネシウムを含むドーピングガスとしては、たとえば、シクロペンタジエニルマグネシウムおよびビスエチルシクロペンタジエニルマグネシウムの少なくとも一方を用いることができる。ここで、低抵抗率のp型窒化物半導体を得る観点からは、マグネシウムを含むドーピングガスとしてビスエチルシクロペンタジエニルマグネシウムを用いることが好ましかった。その理由としては、マグネシウムを含むドーピングガスの種類によってマグネシウムの水素の取り込み方が異なるのではないかと考えられる。また、ビスエチルシクロペンタジエニルマグネシウムは液体原料であるため、固形原料のシクロペンタジエニルマグネシウムと比べて原料の供給変動に対する応答が良いという特徴がある。
さらに、本発明に係る第1工程においては、水素ガスが窒素ガスよりも多く含まれている第1のキャリアガスを用いていることから、第1のキャリアガス中でのマグネシウムを含むドーピングガスの拡散が向上する。上述の供給変動に対する応答性の向上とマグネシウムを含むドーピングガスの拡散性の向上はp型ドーパントであるマグネシウムが窒化物半導体中に均一にドーピングされるのを助け、結晶成長終了後に、アニールすることなく、再現性良くp型の電気特性を示す低抵抗率のp型窒化物半導体を得ることに貢献すると考えられる。
また、III族元素を含むIII族原料ガスとしては、たとえば、トリメチルガリウム、トリエチルガリウム、トリメチルアルミニウム、トリメチルインジウムおよびトリエチルインジウムからなる群から選択された少なくとも1種を用いることができる。
また、窒素を含むV族原料ガスとしては、たとえば、アンモニアなどを用いることができる。
ここで、本発明に係る第1工程で用いられる窒素を含むV族原料ガスの導入量は、1分間当たり1リットル以上10リットル以下であって、窒素を含むV族原料ガスの流量は、第1のキャリアガスの水素ガスの流量よりも小さいことが好ましい。これは、マグネシウムを含むドーピングガスは窒素を含むV族原料ガス中よりも水素ガス中の方が拡散しやすいため低抵抗率のp型窒化物半導体を得やすくなるためである。
なお、上記において、反応炉102内に導入されるガス103には、III族元素を含むIII族原料ガスを気化または昇華させるために使用したバブリングガスを含んでいてもよい。たとえば、III族原料ガスとして用いられるトリメチルガリウムを気化させるために水素ガスでバブリングを行なった場合には、第1のキャリアガス中の水素ガスにはバブリングに用いられた水素ガスが含まれる。同様に、たとえば、窒素ガスでバブリングを行なった場合には、第1のキャリアガス中の窒素ガスにはバブリングに用いられた窒素ガスが含まれる。
ここで、第1のキャリアガス中の水素ガスの割合は、第1のキャリアガスの総体積を100体積%としたとき、50体積%よりも大きく100体積%未満であることが好ましく、70体積%よりも大きく95体積%以下となることがより好ましい。第1のキャリアガス中の水素ガスの割合が大きくなるにつれて窒化物半導体の結晶性が良好となるが、70体積%を超えたあたりから結晶性の顕著な向上は見られなくなり、70体積%よりも水素ガスの割合が大きくなっても結晶性はほとんど向上しない。
第1のキャリアガス中の水素ガスの割合が95体積%を超える場合には、窒化物半導体の表面に対して平行方向(a軸方向)への結晶成長が鈍くなり、100体積%になると窒化物半導体の表面に微小なピットが生じることがある。これは、水素ガスは窒化物半導体の結晶軸方向(c軸方向)の結晶成長を促進させる働きがあり、一方、窒素ガスは窒化物半導体の面内方向(a軸方向)の結晶成長を促進させる働きがあるためである。
なお、上記において、基板101としては、たとえば、サファイア基板、GaN(窒化ガリウム)、AlGaN(窒化アルミニウムガリウム)、SiC(炭化ケイ素)、Si(ケイ素)またはジルコニアなどの母材からなるもの、またはその母材上に窒化物半導体を結晶成長したもの等を用いることができる。
<第2工程>
図2に、本発明のp型窒化物半導体の製造方法の第2工程の一例を図解する模式的な断面図を示す。ここで、第2工程においては、第1工程で基板101上に結晶成長させられた窒化物半導体106の結晶成長終了後にマグネシウムを含む第2のキャリアガス105を導入しながら窒化物半導体106の温度を低下させることを特徴としている。
図2に、本発明のp型窒化物半導体の製造方法の第2工程の一例を図解する模式的な断面図を示す。ここで、第2工程においては、第1工程で基板101上に結晶成長させられた窒化物半導体106の結晶成長終了後にマグネシウムを含む第2のキャリアガス105を導入しながら窒化物半導体106の温度を低下させることを特徴としている。
このような第2工程を経ることにより、窒化物半導体106についてアニールをしなくても、再現性良くp型の電気特性を示す低抵抗率のp型窒化物半導体(窒化物半導体106)を得ることができる。
ここで、窒化物半導体106としては、たとえば、p型ドーパントとしてマグネシウムがドーピングされたAlsGatInuN(0≦s≦1、0≦t≦1、0≦u≦1、s+t+u≠0)の組成式で表わされる窒化物半導体を成長させることができる。なお、上記の組成式において、sはAlの組成比を示し、tはGaの組成比を示し、uはInの組成比を示す。
また、マグネシウムを含む第2のキャリアガス105は、たとえば、シクロペンタジエニルマグネシウムおよびビスエチルシクロペンタジエニルマグネシウムの少なくとも一方を含むことができる。
なお、第2工程における窒化物半導体106の温度とは、有機金属気相成長装置で結晶成長すべき複数の窒化物半導体のうち最終の窒化物半導体が結晶成長を完了した時点の窒化物半導体106の温度と定義される。たとえば、第1工程で結晶成長させられた窒化物半導体106が上記の最終の窒化物半導体に該当する場合には第2工程における窒化物半導体106の温度は窒化物半導体106の結晶成長完了時点の温度となる。また、第1工程で結晶成長させられた窒化物半導体106が上記の最終の窒化物半導体に該当しない場合には第2工程における窒化物半導体106の温度は第1工程で結晶成長させられた最終の窒化物半導体が結晶成長を完了した時点の窒化物半導体106の温度となる。
一般に、結晶性の良好な窒化物半導体を得るためには、700℃以上1100℃以下の非常に高い基板101の温度で窒化物半導体を結晶成長させる。また、窒化物半導体を構成している窒素は揮発性が高いため、窒素を含むV族原料ガスを導入しないと容易に窒素が窒化物半導体から放出されてしまう(窒化物半導体が分解(エッチング)されてしまう)。これを抑止するために、従来においては、p型ドーパントがドーピングされた窒化物半導体の結晶成長終了後に過剰なアンモニアを導入しながらその窒化物半導体の温度を低下させていた。従来の方法に倣い、本発明の第1工程後のp型ドーパントがドーピング窒化物半導体について、過剰なアンモニア(30体積%)を含む窒素ガスからなる第2のキャリアガスを導入しながらその窒化物半導体の温度を低下させたところ、窒化物半導体の表面は非常に良好であったが、非常に高抵抗であって、p型の電気特性を全く示さなかった。
本発明者らの実験結果によれば、0.01体積%以上5体積%以下という従来よりも遥かに低い含有量のアンモニアとマグネシウムを含む材料とを含む第2のキャリアガスを反応炉102内に導入しながら窒化物半導体106の温度を低下させた場合には、本発明の第1工程で結晶成長した窒化物半導体106は再現性良く、良好なp型の電気特性(ここでいう良好なp型の電気特性とは、低抵抗率であることまたは高いキャリア濃度を有することを含む)を示すことを見いだした。しかも、上記の第2工程後の窒化物半導体の表面は光学顕微鏡による観察では荒れていなかった。
また、第2のキャリアガスが窒素ガスを含む場合には、水分濃度が1ppb以下の窒素ガスを用いることが好ましい。窒素ガスは安価である点で好ましいが、一般に吸湿性があるため多くの水分を含んでおり、p型の電気特性を示すためにはその水分濃度を低くすることが好ましいためである。水分濃度が1ppb以下の窒素ガスを得る方法としては、上述した方法が挙げられる。また、第2のキャリアガスがアルゴンガスを含む場合には、アルゴンガスは吸湿性ではないため、p型の電気特性を示させるためには好ましい。
また、第2工程における第2のキャリアガスの流量は、第1工程における第1のキャリアガス中の窒素ガスの流量よりも多く導入することが好ましい。これは、本発明の第2工程における第2のキャリアガス中のアンモニアの含有量は従来に比べて十分に低いため、窒化物半導体106の表面が荒れないように第1工程後速やかに窒化物半導体106の温度を低下させることが好ましいためである。特に、第2のキャリアガスがアルゴンガスを含む場合には、アルゴンガスは窒素ガスに比べて熱伝導率が悪いため、より多くの流量が必要となる傾向にある。
また、第2工程においては、窒化物半導体106の温度の低下を開始した時点から窒化物半導体106の温度が400℃になる時点までの時間が25分以下であることが好ましく、20分以下であることが好ましい。窒化物半導体106の温度が400℃となるまでの時間が25分を超える場合には、窒化物半導体106の表面が荒れたり、結晶成長終了後においてオーミック電極が得られない(抵抗率が高くなる)といった不具合が生じるおそれがある。また、窒化物半導体106の温度が400℃になる時点までの時間の下限は特に限定されないが、窒化物半導体106をある程度アンモニアに曝した方が結晶成長終了後にp型の電気特性を得やすいため、窒化物半導体106の温度が400℃になる時点までの時間は3分以上であることが好ましく、5分以上であることがより好ましい。
また、第2工程においては、窒化物半導体106の温度を600℃まで低下させた後にはアンモニアの導入を停止してもよい。窒化物半導体106の温度が600℃になるまでアンモニアを導入すれば再現性良く低抵抗率であって、p型の電気特性を示す窒化物半導体106を得ることができる傾向にある。また、窒化物半導体106の温度が400℃になるまでアンモニアを導入し、その後はアンモニアの導入を停止した場合には、窒化物半導体106の温度が400℃から基板搬送可能温度(約180℃)まで30分以上経過したとしても窒化物半導体の表面が荒れてしまうことはほとんどないため好ましい。
また、上述したように、第2のキャリアガス105中のマグネシウムを含む材料としては、たとえば、シクロペンタジエニルマグネシウムおよびビスエチルシクロペンタジエニルマグネシウムの少なくとも一方を用いることができるが、シクロペンタジエニルマグネシウムおよびビスエチルシクロペンタジエニルマグネシウムはそれぞれアンモニアよりも強い水素吸着性があるため、アンモニアよりも効果的に結晶成長終了後においてp型の電気特性を示す窒化物半導体を得ることができる傾向にある。
なお、第2のキャリアガス105がシクロペンタジエニルマグネシウムおよびビスエチルシクロペンタジエニルマグネシウムの少なくとも一方を含む場合には、18分以内で窒化物半導体106の温度を600℃まで低下させることが好ましい。
本発明のp型窒化物半導体の製造方法により製造されたp型窒化物半導体に適したp側電極としては、パラジウムまたはプラチナを含む電極を用いることが好ましい。p側電極としてパラジウムまたはプラチナを含む電極を用いた場合には、p側電極とp型窒化物半導体との接触抵抗が低減され、窒化物半導体発光素子あるいは窒化物半導体電子素子における消費電力をより一層低減することができる。
<さらに再現性良く低抵抗率のp型窒化物半導体を得るための形態>
本発明の第2工程後において、p型の電気特性を示す窒化物半導体106を得るためには、窒化物半導体106中の結晶欠陥密度を低減することが好ましい。窒化物半導体106中の結晶欠陥は、マグネシウムの活性化を阻害して、p型の電気特性に悪影響を及ぼすためである。
本発明の第2工程後において、p型の電気特性を示す窒化物半導体106を得るためには、窒化物半導体106中の結晶欠陥密度を低減することが好ましい。窒化物半導体106中の結晶欠陥は、マグネシウムの活性化を阻害して、p型の電気特性に悪影響を及ぼすためである。
本発明者らの実験結果によれば、p型ドーパントがドーピングされた窒化物半導体106のみならず、窒化物半導体106の下地となる窒化物半導体の結晶性が良好でない場合には、結晶成長終了後の窒化物半導体106において、p型の電気特性と十分に低い抵抗率を再現性良く得ることが困難となる場合があることがわかった。
ここで、たとえば窒化物半導体発光素子を作製する場合には、p型窒化物半導体の下地としては、通常、n型ドーパントがドーピングされたn型窒化物半導体が形成される。ここで、n型窒化物半導体としては、たとえば、n型GaN、n型AlGaN、n型InAlGaNまたはn型InGaNなどが挙げられる。
そして、上述したn型ドーパントがドーピングされたn型窒化物半導体の結晶性が悪い場合には、その上に形成されるp型窒化物半導体の結晶性にまで悪影響を及ぼす。これを防止するためにはn型窒化物半導体中のn型ドーパントの濃度を精密に制御することが好ましい。たとえば、n型ドーパントとしてSiをドーピングする場合には、n型窒化物半導体中におけるSiの濃度が7×1017cm-3以下であることが好ましく、5×1017cm-3以下であることがより好ましい。
これにより、n型窒化物半導体中の結晶欠陥密度が低減され、結果的にp型ドーパントがドーピングされた窒化物半導体106中の結晶欠陥密度も低減され得るので、結晶成長終了後において、さらに再現性よく且つ低抵抗率のp型窒化物半導体を得ることができる傾向にある。
<第3工程>
本発明のp型窒化物半導体の製造方法においては、上記の第2工程の後、窒化物半導体106を不活性ガスを含む雰囲気中でアニールする第3工程を含むことが好ましい。
本発明のp型窒化物半導体の製造方法においては、上記の第2工程の後、窒化物半導体106を不活性ガスを含む雰囲気中でアニールする第3工程を含むことが好ましい。
本発明に係る第1工程および第2工程を経て得られた窒化物半導体をさらに上記の第3工程によってアニールした後の窒化物半導体の抵抗率は、第1工程後の窒化物半導体を第2工程を経ずに上記の第3工程によってアニールした後の窒化物半導体の抵抗率と比べて明らかに低かった。しかも、後者の窒化物半導体をどんなにアニールしても前者の窒化物半導体の抵抗率に及ばなかった。
また、上記の前者および後者の窒化物半導体にそれぞれアニールを施して、窒化物半導体の抵抗率がほぼ一定となるアニール時間を計測したところ、前者の窒化物半導体のアニール時間の方が後者の窒化物半導体のアニール時間と比べて短かった。これは、本発明によるp型窒化物半導体の製造方法を用いた場合には、窒化物半導体をアニールしたとしても、それに必要なアニール時間は短くて済むことを意味している。これはInを含む活性層が必須の窒化物半導体発光素子においては好都合である。なぜならば、Inを含む活性層がアニールによる熱の損傷を受けて劣化することを防止できるからである。その結果、窒化物半導体発光素子の発光効率の向上と長寿命化が期待できる。
本発明に係る第2工程後においては、基板101を有機金属気相成長装置から取り出して第3工程のアニールを行なってもよく、引き続き有機金属気相成長装置内で第3工程のアニールを行なってもよい。
基板101を有機金属気相成長装置から取り出して第3工程のアニールを行なう場合には、アニール装置として、RTA(Rapid Thermal Annealing)装置を用いることができる。
RTA装置は昇降温が速いため、窒化物半導体106への熱によるダメージが小さくて好ましい。基板101上に複数の種類の窒化物半導体を積層した場合、特に、InGaNやInAlGaNなどからなる活性層を含む場合には活性層はアニールによる熱のダメージを受けにくくなる点で好ましい。
また、第3工程における不活性ガスとしては、たとえば、窒素ガスおよびアルゴンガスの少なくとも一方を用いることができる。アルゴンガスは窒素ガスに比べて熱伝導率が低いため、基板101の周りの熱が奪われにくく、基板101内での熱分布を改善することができるため、p型の電気特性の面内分布の均一化を図ることができる。
また、第3工程における不活性ガスとしてアルゴンガスを用いる場合には、アルゴンガスの1分間あたりの導入量は1リットル以上10リットル以下であることが好ましい。アルゴンガスは熱伝導率が低いため、所望のアニール温度で第3工程のアニールを完了した後には、第3工程のアニール中に流していたアルゴンガスの流量よりも多い流量のアルゴンガスを導入して窒化物半導体106を冷却することが好ましく、たとえば、第3工程のアニール中に導入していたアルゴンガスの流量の1.2倍以上2倍以下の流量で第3工程のアニール完了後にアルゴンガスを導入することが好ましい。これにより、第3工程のアニール完了後の窒化物半導体106の冷却過程において、Inを含む窒化物半導体からなる活性層等に熱的なダメージを与えることを抑制することができる。
また、第3工程のアニール完了後には、不活性ガスの種類をアルゴンガスから窒素ガスに変更して、アルゴンガスよりも熱伝導率の高い窒素ガスによって窒化物半導体106を冷却することも特にInを含む窒化物半導体からなる活性層等に与えられる熱的なダメージを抑制する観点から好ましい。
また、第3工程の不活性ガスに用いられるアルゴンガスとしては、99.9999%から99.99%の純度のものを用いることが好ましい。
また、第3工程において、アルゴンガスとしては、99.9999%から99.99%の純度のものを用いることが好ましい。第3工程において、99.99%のアルゴンガスを用いた場合には窒化物半導体106のp型の電気特性が向上することが確認された。
また、第3工程におけるアニール温度は700℃以上900℃以下であることが好ましく、800℃以上850℃以下であることがより好ましい。アニール温度が700℃未満である場合には、第3工程のアニールによるp型の電気特性の向上が見られないおそれがあり、アニール温度が900℃を超える場合には、窒化物半導体106が熱によるダメージを受けるおそれがある。また、アニール温度が800℃以上850℃以下である場合には、窒化物半導体106のp型の電気特性が良好になるとともに、窒化物半導体106が熱によるダメージを受けにくくなる。なお、本発明において「アニール温度」とは、第3工程において最も長い時間保持された窒化物半導体106の温度である。
また、第3工程におけるアニール時間は1分以上15分以下であることが好ましく、3分以上10分以下であることがより好ましい。アニール時間が15分を超える場合には窒化物半導体106が熱によるダメージを受けてp型の電気特性が悪化するおそれがある。また、アニール時間が1分未満である場合には十分なアニールを行なうことができず、第2工程後のp型の電気特性とほぼ同等となり、第3工程による効果が発現しないおそれがある。また、第3工程におけるアニール時間が1分以上15分以下である場合には、第3工程による効果が発現して窒化物半導体106のp型の電気特性が向上するとともに窒化物半導体106が熱によるダメージを受けにくくなる。
また、アニール装置としてRTA装置を選択した場合には、アニール時間は、700℃以上900℃以下、より好ましくは800℃以上850℃以下での所望のアニール温度に到達した総積算時間が1分以上15分以下になるようにすることが好ましい。たとえば、2分間だけ上記の所望のアニール温度でアニールを実施し、その後、3分間冷却(ここでの冷却とは、400℃以下の温度にすることである)する工程を5回繰り返すと、アニールの総積算時間は2分×5回で合計10分間アニールを実施したことになる。このような熱サイクルを繰り返すことによって、連続的なアニールよりもInを含む窒化物半導体からなる活性層等への熱によるダメージを防ぐことができる。
本発明の第3工程におけるより好ましい形態は、不活性ガスにアンモニアが0.01体積%以上5体積%以下で添加された雰囲気で上記のアニールをすることである。この場合には窒化物半導体106のp型の電気特性が向上する傾向にある。これは、不活性ガスにアンモニアが0.01体積%以上5体積%以下の少量添加されると、窒化物半導体が熱によってダメージを受ける温度の上限値が高くなるので、アニール温度を高く設定することができるためである。その他の効果については上記と同様である。
本発明の第3工程において、不活性ガスにアンモニアが0.01体積%以上5体積%以下で添加された雰囲気でアニールする場合には、アニール温度は700℃以上920℃以下であることが好ましく、800℃以上900℃以下であることがより好ましく、810℃以上880℃以下であることがさらに好ましい。ただし、850℃以上の温度でアニール処理を行なった場合には、アンモニアが添加されていてもInを含む窒化物半導体からなる活性層等に熱によるダメージが生じやすくなるため、アニール時間は1分以上10分以下であることが好ましい。
本発明の第3工程におけるより好ましい形態は、不活性ガスに水素ガスが10ppm以上500ppm以下で添加された雰囲気で上記のアニールをすることである。この場合には窒化物半導体106のp型の電気特性が向上する傾向にある。その他の効果については上記と同様である。
本発明の第3工程において、不活性ガスに水素ガスが10ppm以上500ppm以下で添加された雰囲気でアニールする場合には、アニール温度は700℃以上850℃以下であることが好ましく、800℃以上850℃以下であることがより好ましい。ただし、水素ガスを含む雰囲気中で長時間アニールした場合には、窒化物半導体106がエッチングされることにより却ってp型の電気特性が悪化するおそれがあるため、アニール時間は精度よく制御することが好ましい。
本発明の第3工程において、不活性ガスに水素ガスが10ppm以上500ppm以下で添加された雰囲気でアニールする場合のアニール時間は1分以上10分以下であることが好ましく、3分以上7分以下であることがより好ましい。また、この場合にもアニール装置としてはRTA装置を用いることが好ましい。
<実施例1>
まず、図3の模式的断面図に示すように、サファイア基板からなる基板101のC面上にAlGaNからなるバッファ層201を有機金属気相成長法により成長させた。次に、図4の模式的断面図に示すように、バッファ層201上に厚さ1μmのアンドープのGaN層202を有機金属気相成長法により成長させた。
まず、図3の模式的断面図に示すように、サファイア基板からなる基板101のC面上にAlGaNからなるバッファ層201を有機金属気相成長法により成長させた。次に、図4の模式的断面図に示すように、バッファ層201上に厚さ1μmのアンドープのGaN層202を有機金属気相成長法により成長させた。
続いて、図5の模式的断面図に示すように、GaN層202上に厚さ4μmのSiドープのn型GaN層203を有機金属気相成長法により成長させた。そして、図6の模式的断面図に示すように、n型GaN層203上にGaNから成るバリア層と、InGaNから成る井戸層で構成された多重量子井戸の発光層204を有機金属気相成長法により成長させた。
その後、図7の模式的断面図に示すように、発光層204上にp型AlGaNから成るp型クラッド層205を有機金属気相成長法により成長させた。次いで、図8の模式的断面図に示すように、p型クラッド層205上にp型ドーパントとしてマグネシウムがドーピングされたp型GaNから成るp型コンタクト層206を有機金属気相成長法により成長させた。
ここで、p型GaNから成るp型コンタクト層206は、以下のようにして形成された。
まず、基板101の温度が1170℃の条件で、水素ガスと窒素ガスをそれぞれ1分間当たり25リットルと6.5リットルの流量で導入しながら、III族原料ガスとしてトリメチルガリウムを1分間当たり40ccの流量で導入するとともに、シクロペンタジエニルマグネシウムからなるドーピングガスを1分間あたり100ccの流量で導入し、V族原料としてアンモニアを1分間あたり6リットルの流量で導入することによって、p型コンタクト層206を有機金属気相成長法により成長させた(第1工程)。
次に、水素ガスおよびトリメチルガリウムの導入を停止するとともに基板101の加熱を停止して、窒素ガスを1分間当たり14.9リットルの流量で、アンモニアを1分間当たり0.3リットルの流量で、シクロペンタジエニルマグネシウムを1分間当たり0.1リットルの流量でそれぞれ導入した。そして、これらのガスを導入しながらp型コンタクト層206の温度を1170℃から400℃まで約16分間で冷却した(第2工程)。
ここで、アンモニアおよびシクロペンタジエニルマグネシウムの導入を停止し、窒素ガスをさらに1分間当たり15リットルの流量に増大してp型コンタクト層206の温度を400℃以下から常温まで低下させた。
以上のようにして作製された窒化物半導体積層体を実施例の試料Aとし、第2工程においてシクロペンタジエニルマグネシウムを全く導入しなかったこと以外は実施例の試料Aと同じ方法で作製した窒化物半導体積層体を比較例の試料Bとした。
次に、実施例の試料Aと比較例の試料Bの電気特性の比較を行なった。これらの試料に対する電気特性の評価方法はホール測定を用いた。
その結果、実施例の試料Aは第2工程後にアニール処理を施すことなく、p型の電気特性を示しており、具体的な電気特性値は、抵抗率が約3.8Ω・cm、キャリア濃度は2.4×1017/cm3であった。
一方、比較例の試料Bは第2工程後、非常に高抵抗であってホール測定により電気特性(抵抗率とキャリア濃度)を評価することができなかった。そこで抵抗率が12kΩ・cmまで測定可能な四探針法による測定装置で比較例の試料Bの抵抗率の測定を試みたが、やはり非常に高抵抗であって測定することができなかった。本測定装置の測定限界を考慮すると、比較例の試料Bの抵抗率は少なくとも12kΩ・cmよりも大きいことがわかった。
<実施例2>
上記の実施例の試料Aと比較例の試料Bをそれぞれ窒素ガス雰囲気中でアニール温度が800℃の条件でアニールを行なった(第3工程)。
上記の実施例の試料Aと比較例の試料Bをそれぞれ窒素ガス雰囲気中でアニール温度が800℃の条件でアニールを行なった(第3工程)。
そして、上記のアニール後の試料Aと試料Bの電気特性の比較を行なった。これらの試料に対する電気特性の評価方法はホール測定を用いた。
その結果、試料Aは試料Bに比べて抵抗率が低く(試料Aの抵抗率は試料Bの抵抗率の約80%以下)であって、キャリア濃度も高かった。
ここで注目すべき点は、まず第1に、有機金属気相成長装置から取り出した直後の電気特性が高抵抗であってp型の電気特性を示さなかった試料Bは、その後のアニール処理でどんなにアニール時間をかけても試料Aによって得られた電気特性に及ばなかったということである。なお、アニール時間が長くなると、具体的には10分を超えたあたりから次第にp型コンタクト層206の抵抗率が上昇し始めた。アニール時間が15分を超えてさらに長くなると、p型コンタクト層206が熱によるダメージを受けて抵抗率がさらに悪化した。このことから、試料Bがアニール処理でどんなにアニール時間をかけても試料Aに到達できないと判断した。
第2に、試料Bの抵抗率は、アニール時間が約7分でほぼ一定になるのに対して、試料Aの抵抗率は、アニール時間が約3分でほぼ一定になっていた。つまり、本発明の製造方法によって作製された試料Aは、比較例の試料Bと比べて、抵抗率が低く(キャリア濃度が高く)、かつアニールに要する時間が短くて済むことがわかった。特に後者の特徴は、InGaNなどのInを含む活性層が必須の窒化物半導体発光素子においては好都合である。なぜならば、Inを含む活性層は熱による損傷を受けやすいためである。このように、本発明によるp型窒化物半導体の製造方法を用いた場合には、低抵抗率を得るために必要なp型コンタクト層206のアニール時間が短くて済むため、Inを含む活性層等への熱的なダメージを減らすことができる。
このような結果が生じる理由は不明であるが、同じアニールでもp型の電気特性に大きな違いが生じていることから、試料A(結晶成長終了後、p型の電気特性を示す)は試料B(結晶成長終了後、非常に高抵抗でp型の電気特性を示さない)とは異なるメカニズムでp型の低抵抗化が図られるのではないかと推測される。
今回開示された実施の形態および実施例はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
本発明によれば、低抵抗、かつ抵抗率の面内均一性に優れたp型窒化物半導体を備えた窒化物半導体発光素子等の窒化物半導体装置を量産することができる。
これにより、従来に比べて窒化物半導体装置の消費電力をさらに低減することができるとともに、窒化物半導体装置の小型化(モバイル化)ならびに長時間駆動を実現することが可能になる。
さらに、本発明は、たとえば、窒化物半導体レーザ素子、窒化物半導体発光ダイオード素子、窒化物半導体電子素子(窒化物半導体トランジスタ素子)、光ピックアップ装置、光磁気再生記録装置、高密度記録再生装置、レーザプリンタ、バーコードリーダ、プロジェクタまたは白色LED光源等の窒化物半導体装置に適用することができる。
101 基板、102 反応炉、103 ガス、104 サセプタ、105 第2のキャリアガス、106 窒化物半導体、201 バッファ層、202 GaN層、203 n型GaN層、204 発光層、205 p型クラッド層、206 p型コンタクト層。
Claims (10)
- 窒素ガスおよび前記窒素ガスよりも多い水素ガスを含む第1のキャリアガスと、マグネシウムを含むドーピングガスと、III族元素を含むIII族原料ガスと、窒素を含むV族原料ガスと、を少なくとも導入することによって、有機金属気相成長により、窒化物半導体を成長させる第1工程と、
マグネシウムを含む第2のキャリアガスを導入しながら前記窒化物半導体の温度を低下させる第2工程と、
を含む、p型窒化物半導体の製造方法。 - 前記第2のキャリアガスは、シクロペンタジエニルマグネシウムおよびビスエチルシクロペンタジエニルマグネシウムの少なくとも一方を含むことを特徴とする、請求項1に記載のp型窒化物半導体の製造方法。
- 前記窒化物半導体の厚さは0.5μm以上であることを特徴とする、請求項1または2に記載のp型窒化物半導体の製造方法。
- 前記窒化物半導体のアルミニウムの組成比が2%以上であって厚さが0.3μm以上であることを特徴とする、請求項1から3のいずれかに記載のp型窒化物半導体の製造方法。
- 前記第2のキャリアガスは、アルゴンガスおよび窒素ガスの少なくとも一方を含むことを特徴とする、請求項1から4のいずれかに記載のp型窒化物半導体の製造方法。
- 前記第2工程は前記窒化物半導体の温度を400℃以下まで低下させる工程であって、前記窒化物半導体の温度の低下を開始した時点から前記窒化物半導体の温度が400℃になる時点までの時間が25分以下であることを特徴とする、請求項1から5のいずれかに記載のp型窒化物半導体の製造方法。
- 前記第2工程後に前記窒化物半導体を不活性ガスを含む雰囲気中でアニールする第3工程を含むことを特徴とする、請求項1から6のいずれかに記載のp型窒化物半導体の製造方法。
- 前記第3工程において前記窒化物半導体は700℃以上900℃以下の温度でアニールされることを特徴とする、請求項1から7のいずれかに記載のp型窒化物半導体の製造方法。
- 前記第3工程において1分以上15分以下の時間アニールすることを特徴とする、請求項1から8のいずれかに記載のp型窒化物半導体の製造方法。
- 請求項1から9のいずれかに記載のp型窒化物半導体の製造方法を用いて作製されたp型窒化物半導体を含む、窒化物半導体装置。
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-
2006
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