JP2008140747A - 非水電解質二次電池用正極活物質およびその製造方法、ならびに非水電解質二次電池 - Google Patents

非水電解質二次電池用正極活物質およびその製造方法、ならびに非水電解質二次電池 Download PDF

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Abstract

【課題】非水電解質二次電池を4.25V以上の高い充電電圧で用いた場合にも、高安定性、高容量および優れた充放電サイクルを実現する。
【解決手段】化1で平均組成が表される複合酸化物粒子の表面の少なくとも一部に、リチウム(Li)を含有するニッケル(Ni)、マンガン(Mn)およびコバルト(Co)の酸化物を主体とする金属酸化物にモリブデンイオンが結晶相を有さず含有された被覆層を設ける。なお、被覆層に含有されたモリブデンイオンのXPS(X-ray Photoelectron Spectroscopy;光電子分光測定)による3d5/2の結合エネルギーが232.4eV以下となるように構成する。このような被覆層は、Li、Ni、MnおよびMoを主体とする金属化合物を微粉砕した混合粉末を複合酸化物粒子の表面に被着し、焼成することにより形成される。
【選択図】図1

Description

この発明は、非水電解質二次電池用正極活物質およびその製造方法、ならびに非水電解質二次電池に関し、特に高い充電電圧において高安定性、高容量および優れた充放電サイクル特性を有する非水電解質二次電池に関する。
近年、携帯電話、ノートブック型パーソナルコンピュータなどをはじめとする電子機器のコードレス化、ポータブル化が進み、薄型、小型、軽量の携帯電子機器が次々と開発されている。また、機器や機能の多様化によって電力使用量が増加しており、それら電子機器のエネルギー源である電池のより一層の高容量化・軽量化に対する要求が高まっている。そこで、この要求に応えるべく、非水電解質二次電池、中でもリチウムイオンのドープ・脱ドープを利用したリチウムイオン二次電池に関して、種々の提案がなされている。
リチウムイオン二次電池は、リチウムイオンを可逆的に脱挿入可能な正極および負極と、液状、ゲル状もしくは固体状の非水電解質とから構成され、高出力、高エネルギー密度などの利点を有している。このような正極の正極材料としては、LiCoO2、LiNiO2、あるいはこれらのリチウム含有遷移金属化合物に金属元素を一部置換した複合酸化物が用いられる。また、スピネル構造を有するLiMn24は、高エネルギー密度、高充電電圧を有するため、多く用いられており、高充電電圧を有する安価な材料として開発が進められている。
従来のリチウムイオン二次電池では、正極にコバルト酸リチウム、負極には炭素材料が使用されており、作動電圧が4.2Vから2.5Vの範囲で用いられてきた。単電池において、端子電圧を4.2Vまで上げられるのは、非水電解質材料やセパレータ等の優れた電気化学的安定性によるところが大きい。
ところで、従来の最大4.2Vで作動するリチウムイオン二次電池に用いられるコバルト酸リチウム等の正極活物質は、その理論容量に対して6割程度の容量を活用しているに過ぎない。リチウムイオン二次電池については、コスト低減以外にも、更なる高エネルギー密度化、高信頼性化および長寿命化が望まれており、これらの特性、特にエネルギー密度を向上させる方法としては、さらに充電終止電圧を上げることが挙げられる。実際、例えば特許文献1にて開示されているように、充電終止電圧を4.25V以上にすることにより、高エネルギー密度化を実現できることが知られている。
国際公開第WO03/019713号パンフレット
特許文献1では、充電終止電圧を上げたことにより、より多くのリチウムイオンが脱挿入されるため、残存容量を活用して高エネルギー密度化を図ることができる。
なかでも、LiCoO2(0<x≦1.0)、LiNiO2(0<x≦1.0)などが、高電位、安定性、長寿命という点から最も有望である。特に、LiCoO2を主体とする正極活物質は高電位を示す正極活物質であり、エネルギー密度を高めることが期待されるが、充電電圧を高くした電池は充放電サイクル寿命の低下や、高温特性の劣化、Coの溶出による活物質の劣化という問題があった。これに対し、LiCoO2を主体とする活物質を安定化させるために、AlやMg、Zr、Ti等の異種元素を固溶させることや、LiMn1/3Co1/3Ni1/32などを少量混合して用いること、LiCoO2の表面をスピネルマンガン酸リチウムやスピネルチタン酸リチウム、ニッケルコバルト複合酸化物で被覆することが報告されている。
ところが、異種元素を固溶させた場合には、活物質の放電容量や初期効率に影響を与えない範囲では高温特性の改善や溶出抑制を行うことが難しく、高温特性が改善されるほど容量や効率の劣化が生じてしまう。また、スピネルマンガン酸リチウムは安定性が高く、高温特性を改善させる効果が期待されるが、LiCoO2をはじめとする層状化合物に比べて容量が小さく、またサイクル時のMnの溶出が顕著であるという問題がある。また、ニッケルコバルト複合酸化物については活物質の熱安定性が悪く、またLiCoO2に比べて放電電位が低く、エネルギー密度増加に不利であるといった問題があった。
ところで、上述した正極活物質の表面被覆により正極活物質の改質を行う技術は、高い被着性を達成することが課題となっている。この課題を解決するために、各種手法が提案されている。例えば、金属水酸化物により被着する方法は、被着性に優れていることが確認されており、このような方法として、例えば、特許文献2には、ニッケル酸リチウム(LiNiO2)粒子の表面に、コバルト(Co)ならびにマンガン(Mn)をその水酸化物被着工程を通して被着することが開示されている。また、例えば、特許文献3には、リチウムマンガン複合酸化物の表面に、非マンガン金属をその水酸化物被着工程を通して被着することが開示されている。
さらに、特許文献4には、正極前駆体の水酸化ニッケル粒子に表面被覆を施し、最終正極のタップ密度を向上させることが開示されており、被着する金属としてモリブデン(Mo)等多数の金属の記載がある。また、特許文献5には、モリブデン(Mo)および/あるいはタングステン(Ta)と、リチウム(Li)とを含有する表面層を有する正極活物質が開示されており、モリブデン(Mo)は、Li4MoO5の結晶相として存在することが指摘されている。
特開平9−265985号公報 特開平11−71114号公報 特開2001−106534号公報 特開2002−75367号公報
しかしながら、上述のようにして改良した正極活物質を用いても、高い充電電圧で充放電を繰り返した場合に容量劣化を引き起こし、電池寿命が短くなってしまう。また、コバルト酸リチウムを主体とする正極活物質の表面改質を行うにあたり、所望の金属酸化物を均一強固に被着するための技術課題も有している。
したがって、この発明の目的は、上記問題点を解消し、高安定性を有するとともに、高容量で充放電サイクルに優れた非水電解質二次電池用正極活物質およびその製造方法、ならびに非水電解質二次電池を提供することにある。
上記課題を解決するために、第1の発明は、化1で平均組成が表される複合酸化物粒子の表面の少なくとも一部に、リチウム(Li)を含有するニッケル(Ni)、マンガン(Mn)およびコバルト(Co)の酸化物を主体とする金属酸化物からなる被覆層が設けられた非水電解質二次電池用正極活物質において、金属酸化物にはモリブデンイオンが結晶相を有さず含有され、モリブデンイオンのXPS(X-ray Photoelectron Spectroscopy;光電子分光測定)による3d5/2の結合エネルギーが、232.4eV以下であることを特徴とする非水電解質二次電池用正極活物質である。
(化1)
Li(1+x)Co(1-y)y(2-z)
(ただし、化1中、Mはマグネシウム(Mg)、アルミニウム(Al)、ホウ素(B)、チタン(Ti)、バナジウム(V)、クロム(Cr)、マンガン(Mn)、鉄(Fe)、ニッケル(Ni)、銅(Cu)、亜鉛(Zn)、モリブデン(Mo)、スズ(Sn)、タングステン(W)、ジルコニウム(Zr)、イットリウム(Y)、ニオブ(Nb)、カルシウム(Ca)、ストロンチウム(Sr)から選ばれた少なくとも一種の元素からなり、式中x、y、zは、−0.10≦x≦0.10、0≦y<0.50、−0.10≦z≦0.20である。)
なお、上述のような非水電解質二次電池用正極活物質では、モリブデン(Mo)が複合酸化物粒子の表面の少なくとも一部に露出しており、複合酸化物粒子に対するモリブデン(Mo)の被着量が、0.00001mol%以上1.0mol%以下であることが好ましい。
第2の発明は、リチウム(Li)、ニッケル(Ni)、マンガン(Mn)およびモリブデン(Mo)を主体とする金属化合物を微粉砕して混合粉末を作製する粉砕工程と、上述の化1で平均組成が表される複合酸化物粒子と混合粉末とを混合する混合工程と、複合酸化物粒子の表面の少なくとも一部に混合粉末を被着する被着工程と、混合粉末が被着された複合酸化物粒子を焼成し、リチウム(Li)を含有するニッケル(Ni)、マンガン(Mn)およびコバルト(Co)の酸化物を主体とする金属酸化物からなる被覆層を形成する焼成工程とからなる非水電解質二次電池用正極活物質の製造方法である。
なお、金属酸化物は、金属水酸化物、金属含水酸化物、金属炭酸塩、あるいは金属炭酸水素塩等の易分解性金属化合物を被着し、加熱分解して形成することが好ましい。また、被着工程において、金属水酸化物、金属含水酸化物、金属炭酸塩、あるいは金属炭酸水素塩等の易分解性金属化合物に圧縮および剪断力を与えて易分解性金属化合物を複合酸化物粒子に被着させることが好ましい。
第3の発明は、非水二次電池用正極活物質を有する正極と、負極と、セパレ−タおよび電解質とを備え、非水二次電池用正極活物質は、上述の化1で平均組成が表される複合酸化物粒子の表面の少なくとも一部に、リチウム(Li)を含有するニッケル(Ni)、マンガン(Mn)およびコバルト(Co)の酸化物を主体とする金属酸化物からなる被覆層が設けられた非水電解質二次電池用正極活物質において、金属酸化物にはモリブデンイオンが結晶相を有さず含有され、モリブデンイオンのXPSによる3d5/2の結合エネルギーが、232.4eV以下であることを特徴とする非水電解質二次電池用正極活物質を用いた非水電解質二次電池である。
このような非水電解質二次電池は、上限充電電圧を4.25V以上4.80V以下、下限放電電圧を2.00V以上3.30V以下とすることが好ましい。
この発明では、複合酸化物粒子の表面に、リチウム(Li)を含有するニッケル(Ni)およびマンガン(Mn)の酸化物を主体とする金属酸化物にモリブデンイオンが結晶相を有さず含有された被覆層を設けた構成とすることにより、高充電電圧下における金属酸化物の溶出をLiCoO2におけるコバルト(Co)の溶出に比べて減少させることができる。
また、被覆層のモリブデンイオンのXPSによる3d5/2の結合エネルギーが、232.4eV以下となるように構成することにより、正極活物質粒子表面の酸性度を高め、電解液に対する耐久性を向上させることができる。
さらに、被覆層を乾式により形成することにより、モリブデン(Mo)等の被覆材料の添加量を緻密に制御して均一性の高い被着が実現できるとともに、少量生産を簡便に行うことができる。
この発明によれば、高充電電圧での安定性が高く、これに伴い高エネルギー密度を向上でき、かつ、高充電電圧条件下での高容量の充放電サイクルを繰り返し性のよい非水電解質二次電池用正極活物質およびその製造方法、ならびに非水電解質二次電池を提供できる。
以下、この発明の実施の形態について図面を参照して説明する。なお、以下の実施形態の非水電解質二次電池は、その満充電状態における正極の充電電圧が例えば4.25V以上4.80V以下(Li/Li+)という高い電圧で用いられるように構成される。また、下限放電電圧は、例えば2.00V以上3.30V以下で用いられる。
この発明は、金属化合物を焼成して得られた複合酸化物粒子の表面の少なくとも一部に、リチウム(Li)を含有するニッケル(Ni)、マンガン(Mn)およびコバルト(Co)の酸化物を主体とする金属酸化物にモリブデンイオンが結晶相を有さず含有された被覆層を設けたものである。なお、被覆層に含有されたモリブデンイオンのXPS(X-ray Photoelectron Spectroscopy;光電子分光測定)による3d5/2の結合エネルギーは、232.4eV以下となっている。また、被覆層に存在するコバルト(Co)は、複合酸化物粒子を構成するコバルト(Co)が被覆層に拡散したものである。
まず、正極活物質を上記の構成とする理由について説明する。例えばコバルト酸リチウム(LiCoO2)を主体とする正極活物質は、高充電電圧性とそれに伴う高エネルギー密度性とを実現できるが、高充電電圧にて高容量での充放電サイクルを繰り返すと容量の低下が少なくない。この原因は、従来よりも高い例えば4.25V以上の充電電圧で充電を行うと、正極活物質の表面でコバルト(Co)の溶出が発生し、これに伴って正極活物質の崩壊、電解液との反応、負極表面でのコバルト(Co)の析出によるLi受け入れ性の低下が生じるためであると指摘されている。
これに対し、正極活物質粒子の表面処理の必要性が指摘されており、各種の表面処理が提案されているが、体積または重量あたりの容量の低下を無くす、または容量の低下を最小限に留める観点から、容量の低下を抑制、または容量に貢献できる材料で表面処理を行うことにより、高充電電圧性と、これに伴う高エネルギー密度性とを実現でき、かつ高充電電圧での充放電サイクル特性に優れた正極活物質を得ることができる。
そこで、本願発明者等は、鋭意検討の結果、高充電電圧性とこれに伴う高エネルギー密度性においてやや劣るが、金属化合物を焼成して得られた複合酸化物粒子の表面に、リチウム(Li)を含有するニッケル(Ni)およびマンガン(Mn)の酸化物を主体とする金属酸化物にモリブデンイオンが結晶相を有さず含有された被覆層を設けた構成とすることにより、高充電電圧性とこれに伴う高エネルギー密度性を実現し、かつ、高充電電圧条件下で、高容量の充放電サイクル特性に優れた正極活物質が得られることを見出した。
これは、リチウムを含有するニッケル(Ni)、マンガン(Mn)の酸化物を主体とする金属酸化物の高充電電圧下での溶出が、LiCoO2におけるコバルト(Co)の溶出に比べて非常に少なく、かつLiCoO2よりは若干電池容量は劣るもののスピネルマンガン化合物やLiTiO2といった正極活物質よりも容量が大きく、被覆による容量の低下を最低限にとどめることができるからである。
複合酸化物粒子に被覆層を設ける方法としては、焼成状態の活物質同士を混合、再焼成することによって被覆する方法、中和析出法によってリチウム(Li)と、ニッケル(Ni)およびマンガン(Mn)のうちの少なくとも一種の被覆元素水酸化物を複合酸化物粒子表面に被着させ、焼成する方法が提案されている。しかし、焼成体同士の被着では均一な被覆性を得ることや母層と被覆層の密着性を得るのが難しい。また、中和析出法のような湿式法は、水酸化物の複合酸化物粒子への希薄な被着において、均一性が優れているが、仕込みの金属化合物とのずれが生じやすい課題がある。さらに、最終的な脱水加熱焼成において、金属酸化物に添加すべきリチウムの量は、ニッケル(Ni)およびマンガン(Mn)の酸化物を主体とする金属酸化物の被着量が少ないため、添加量を正確に制御することが難しいという問題があった。
そこで、本願発明者等は、さらに、鋭意検討を進めたところ、極端に希薄な被着を行うのでなければ、易分解性のリチウム(Li)、ニッケル(Ni)およびマンガン(Mn)、ならびにモリブデン(Mo)の金属化合物を微粉砕し、複合酸化物粒子と混合・被着し焼成することで、均一性の高い被着が実現でき、良好な特性が得られることを見出した。
易分解性のリチウム(Li)、ニッケル(Ni)およびマンガン(Mn)、ならびにモリブデン(Mo)の金属化合物の被着状態では、金属化合物の粒子性が顕著であり、ミクロな組成の均一性は必ずしも良好ではなく、かつ、複合酸化物粒子への付着性も必ずしも優れてはいないように見られる。しかし、これを加熱昇温することにより、易分解性の金属化合物の分解と拡散、ならびに、複合酸化物粒子表面での焼結を伴う拡散により、複合酸化物粒子表面の被覆の均一性、ならびに、組成の均一性が達成されるものと考えられる。
さらに、被覆層のモリブデンイオンのXPSによる3d5/2の結合エネルギーが、232.4eV以下となるように構成することにより、正極活物質粒子表面の酸性度を高め、電解液に対する耐久性を向上させることができる。
このように作製された正極活物質を用いることで、高充電電圧での安定性が高く、これに伴い高エネルギー密度を向上でき、かつ、高充電電圧条件下での高容量の充放電サイクルを繰り返し性のよい正極活物質を得ることができた。
次に、この発明の一実施形態による正極活物質を構成する複合酸化物、被覆層について詳細に説明する。
[複合酸化物]
複合酸化物粒子は、例えば化1で表された平均組成を有するものである。複合酸化物粒子が化1で表された平均組成を有することにより、高容量および高い放電電位を得ることができるとともに、電気化学的な安定性を向上させることができる。なお、複合酸化物粒子の平均組成は、原子吸光分析により分析することができる。
(化1)
Li(1+x)Co(1-y)y(2-z)
(ただし、化1中、Mはマグネシウム(Mg)、アルミニウム(Al)、ホウ素(B)、チタン(Ti)、バナジウム(V)、クロム(Cr)、マンガン(Mn)、鉄(Fe)、ニッケル(Ni)、銅(Cu)、亜鉛(Zn)、モリブデン(Mo)、スズ(Sn)、タングステン(W)、ジルコニウム(Zr)、イットリウム(Y)、ニオブ(Nb)、カルシウム(Ca)、ストロンチウム(Sr)から選ばれた少なくとも一種の元素からなり、式中x、y、zは、−0.10≦x≦0.10、0≦y<0.50、−0.10≦z≦0.20である。)
ここで、化1において、xの範囲は、−0.10≦x≦0.10であり、−0.08≦x≦0.08がより好ましく、さらに好ましくは−0.06≦x≦0.06である。この範囲外に値が小さくなると、放電容量が減少してしまい、この範囲外に値が大きくなると、該粒子外に拡散し、次の処理工程の塩基性度の制御の障害となると共に、最終的には、正極ペーストの混練中のゲル化促進の弊害の原因となる。
yの範囲は、0≦y<0.50であり、好ましくは0≦y<0.40であり、さらに好ましくは0≦y<0.30である。この範囲外に大きくなると、LiCoO2の有する高充電電圧性とそれに伴う高エネルギー密度性が損なわれ、本発明の本来の目的を達することができない。
zの範囲は、−0.10≦z≦0.20であり、−0.08≦z≦0.18がより好ましく、さらに好ましくは−0.06≦z≦0.16である。この範囲外に値が小さくなる場合と、この範囲外に値が大きくなる場合は、放電容量が減少する傾向がある。
複合酸化物粒子は、例えばボールミルや擂潰機などを用いて二次粒子を解砕して調整したものを用いることができる。
[被覆層]
被覆層は、複合酸化物粒子の表面の少なくとも一部に設けられ、リチウム(Li)を含む、ニッケル(Ni)およびマンガン(Mn)を主体とする金属酸化物に、モリブデンイオンが結晶相を有さず含有されたものである。このような被覆層は、リチウム(Li)、ニッケル(Ni)、マンガン(Mn)およびモリブデン(Mo)を主体とする金属化合物を微粉砕し、複合酸化物粒子と混合・被着して焼成することにより形成することができる。この被覆層を設けることによって、高充電電圧性と、これに伴う高エネルギー密度性とを実現でき、かつ、高充電電圧条件下での充放電サイクル特性を向上できる。
本発明に使用できる易分解性の金属化合物としては、金属水酸化物、金属含水酸化物、金属炭酸塩、金属炭酸水素塩等が挙げられる。分解により強酸性の化学種を生成するもの、ならびに、分解に伴い多量の炭素分を生成するものの有効性が乏しい結果であった。
本発明に使用できる易分解性のリチウム化合物としては、水酸化リチウム無水物、水酸化リチウム一水和物、炭酸リチウム、炭酸水素リチウム、などが挙げられる。本発明に使用できる易分解性のニッケル化合物としては、水酸化ニッケル、炭酸ニッケル、オキシ水酸化ニッケルなどが挙げられる。本発明に使用できる易分解性のマンガン化合物としては、酸化水酸化マンガン、炭酸マンガン、などが挙げられる。また、本発明に使用できるモリブデン化合物の原料としては、モリブデン酸アンモニウム、モリブデン酸リチウム、モリブデン酸、無水モリブデン酸などが挙げられる。
本発明において、複合酸化物粒子に被覆するモリブデン(Mo)の複合酸化物粒子に対する被着量は、複合酸化物粒子の0.00001mol%以上1.0mol%以下、好ましくは、0.0001mol%以上0.1mol%以下である。この範囲外にモリブデン(Mo)の被着量が増加すると、正極活物質の容量が低下する。一方、この範囲外にモリブデン(Mo)の被着量が低下すると、正極活物質の安定性が低下する。
また、本発明において、複合酸化物粒子に被覆するモリブデン(Mo)のニッケル(Ni)およびマンガン(Mn)の総量に対する被着量は、0.1mol%以上25mol%以下、好ましくは、1.0mol%以上20mol%以下である。この範囲以上にモリブデン(Mo)の被着量が増加すると、正極活物質の容量の低下となる。一方、この範囲外にモリブデン(Mo)の被着量が低下すると、正極活物質の安定性が低下する。
焼成後に得られた正極活物質では、モリブデン(Mo)は被覆層のごく表面に結晶相を有することなく存在する。モリブデン(Mo)の部分電荷は、XPSのMo3d5/2のケミカルシフトより推定される。原子価6+のモリブデン(Mo)のXPSのMo3d5/2における結合エネルギーは、通常231.9〜232.7eVの範囲内にある。モリブデン(Mo)は、上述のように金属酸化物内に存在し、酸素と隣接結合している。このとき、結合エネルギーが低いと、隣接結合している酸素との結合のイオン性が低くなり、それに伴い、隣接結合している酸素原子の電子密度が低下し、酸素原子の酸性が高まる。この表面の特定の酸塩基性度が、本発明の電解液と正極の電極界面の相互作用を有効に機作させ、その耐久性を向上させるものと考えられる。本発明における好ましい結合エネルギーは、232.4eV以下であり、さらに好ましくは、232.3eV以下である。この領域において、電池の耐久性を向上させることができる。
なお、モリブデン(Mo)イオンの結合エネルギーを低くするには、モリブデン(Mo)の電子密度を低下させない、すなわち還元性にしないようにすればよい。このためには、モリブデン(Mo)の表面の濃度を低くし、モリブデン同士が凝集せず、原子レベルで分散して均一性を有するようにするのが良い。
被覆層において、金属酸化物のニッケル(Ni)とマンガン(Mn)の構成比は、モル比で99:1から30:70であることが好ましく、90:10から40:60であることがより好ましい。この範囲外にマンガン(Mn)量が増加すると、被着した金属酸化物のリチウムの吸蔵性が低下し、正極活物質の容量の低下、ならびに、電池作製後における電気抵抗の増大の要因となる。また、この範囲外にニッケル(Ni)量が増加すると、被覆層の熱安定性が低下し、電池の高温特性が悪化する原因となる。つまり、ニッケル(Ni)およびマンガン(Mn)を一定量以上ずつ含む金属酸化物層で被覆を行うことで、高温での安定性と容量増加を両立させることが可能となる。
また、被覆層の金属酸化物におけるニッケル(Ni)、マンガン(Mn)およびモリブデン(Mo)以外の元素の40mol%以下を、マグネシウム(Mg)、アルミニウム(Al)、ホウ素(B)、チタン(Ti)、バナジウム(V)、クロム(Cr)、鉄(Fe)、銅(Cu)、亜鉛(Zn)、スズ(Sn)、ニオブ(Nb)、カルシウム(Ca)、ストロンチウム(Sr)、タングステン(W)、イットリウム(Y)、ジルコニウム(Zr)よりなる群から選ばれた少なくとも一種の金属元素で置き換えることができる。
これにより、正極活物質の安定性の向上、ならびにリチウムイオンの拡散性を向上できる。なお、選択された金属元素の置換量は、例えば、被着した酸化物のニッケル(Ni)およびマンガン(Mn)の総量の40mol%以下であることが好ましく、より好ましくは35mol%以下である。この範囲以上に、選択された金属元素の置換量が増加すると、金属酸化物のリチウム(Li)の吸蔵性が低下し、正極活物質の容量の低下となるからである。
上述のように構成された正極活物質の平均粒径は、好ましくは2.0μm以上50μm以下である。平均粒径が2.0μm未満であると、正極作製時にプレスする時に剥離し、また、活物質の表面積が増えるために、導電剤や結着剤の添加量を増加する必要があり、単位重量あたりのエネルギー密度が小さくなってしまう傾向があるからである。一方、この平均粒径が50μmを超えると粒子がセパレータを貫通し、短絡を引き起こす傾向にあるからである。なお、平均粒径は、レーザ散乱法により測定することができる。
次に、この発明の一実施形態による正極活物質の製造方法の一例について説明する。
複合酸化物粒子は、種々の方法により製造することができる。例えば、炭酸リチウム(Li2CO3)、炭酸コバルト(CoCO3)等の原料を所定比で混合し、ボールミルにより混合および粉砕した後、空気中または酸素雰囲気中で焼成することにより、製造することができる。なお、原料には上述したものの他にも、各種炭酸塩、硝酸塩、シュウ酸塩、リン酸塩、酸化物あるいは水酸化物を用いることができる。
被覆層の形成工程は、複合酸化物粒子の少なくとも一部にニッケル(Ni)、マンガン(Mn)あるいはモリブデン(Mo)を主体とする金属化合物よりなる層を形成する第1の工程と、金属化合物よりなる層を形成したのち加熱処理することにより、複合酸化物粒子の少なくとも一部に、リチウム(Li)と、ニッケル(Ni)、マンガン(Mn)の酸化物を主体とする金属酸化物にモリブデンイオンが結晶相を有さず含有された被覆層を形成する第2の工程と、に大別できる。
(第1の工程)
第1の工程では、ニッケル(Ni)、マンガン(Mn)およびモリブデン(Mo)を含む金属化合物の被着処理を行う。第1の工程では、例えば、金属化合物をボールミルにて微粉砕したのち、この金属化合物粉末と複合酸化物粒子とを混合し、メカノフュージョン等を用いて乾式にて金属化合物粉末を複合酸化物粒子の表面に被着させる。
本発明では、複合酸化物粒子と、それに被覆する金属化合物とを粉砕混合被着することで、より少量で複合酸化物粒子全体を被覆することができる。この手段としては、ボールミル以外にも、ジェットミル、擂潰機、微粉砕機などを用いて行うことができる。また、上述の処理の際には、水等の多少の液体分を添加して行うことも有効であり、このような場合は粉末の減圧乾燥を行う。
なお、被覆層を設ける際には、金属化合物粒子に圧縮と剪断力を与えて核物質である複合酸化物粒子にコーティングすることが好ましい。焼成前に圧縮と剪断力を与えて金属化合物粒子を核物質に被着させておくことにより、焼成時に金属化合物が核物質から脱落することを抑制し、被覆層の単一な相生成を容易に行うことが出来るためである。
(第2の工程)
第2の工程では、第1の工程によりニッケル(Ni)、マンガン(Mn)およびモリブデン(Mo)を主体とする金属化合物粉末を被覆した複合酸化物粒子を加熱処理することにより、複合酸化物粒子の表面にリチウム(Li)を含有するニッケル(Ni)およびマンガン(Mn)の酸化物を主体とする金属酸化物にモリブデンイオンが結晶相を有さず含有された被覆層を形成する。ここで、加熱処理は、空気あるいは、純酸素などの酸化雰囲気中において、例えば300℃〜1000℃程度の温度で行うことが好ましい。
また焼成後、必要に応じて、軽い粉砕や分級操作などによって、粒度を調整してもよい。
このような正極活物質を用いることにより、高充電電圧下で優れた安定性を得ることができ、これに伴ってエネルギー密度を向上させて、高い充放電容量を得ることができる。また、高充電電圧下において、高容量での充放電サイクル特性に優れた非水電解質二次電池を得ることができる。
次に、この発明の一実施形態による正極活物質を用いた非水電解質二次電池について説明する。
(1)非水電解質二次電池の第1の例
(1−1)非水電解質二次電池の構成
図1は、この発明の一実施形態による正極活物質を用いた非水電解質二次電池の断面構造を表している。
この二次電池では、一対の正極および負極当たりの完全充電状態における開回路電圧が、例えば、4.25V以上4.80V以下である。
この二次電池は、いわゆる円筒型といわれるものであり、ほぼ中空円柱状の電池缶1の内部に、帯状の正極2と帯状の負極3とがセパレータ4を介して巻回された巻回電極体20を有し、セパレータ4には電解液が含浸されている。
電池缶1は、例えばニッケル(Ni)のめっきがされた鉄(Fe)により構成されており、一端部が閉鎖され他端部が開放されている。電池缶1の内部には、巻回電極体20を挟むように巻回周面に対して垂直に一対の絶縁板5、6がそれぞれ配置されている。
電池缶1の開放端部には、電池蓋7と、この電池蓋7の内側に設けられた安全弁機構8および熱感抵抗素子(Positive Temperature Coefficient;PTC素子)9とが、ガスケット10を介してかしめられることにより取り付けられており、電池缶1の内部は密閉されている。電池蓋7は、例えば、電池缶1と同様の材料により構成されている。安全弁機構8は、熱感抵抗素子9を介して電池蓋7と電気的に接続されており、内部短絡あるいは外部からの加熱などにより電池の内圧が一定以上となった場合にディスク板11が反転して電池蓋7と巻回電極体20との電気的接続を切断するようになっている。熱感抵抗素子9は、温度が上昇すると抵抗値の増大により電流を制限し、大電流による異常な発熱を防止するものである。ガスケット10は、例えば、絶縁材料により構成されており、表面にはアスファルトが塗布されている。
巻回電極体20は、例えば、センターピン12を中心に巻回されている。巻回電極体20の正極2には、例えばアルミニウム(Al)などよりなる正極リード13が接続されており、負極3には、例えばニッケル(Ni)などよりなる負極リード14が接続されている。正極リード13は、安全弁機構8に溶接されることにより電池蓋7と電気的に接続されており、負極リード14は、電池缶1に溶接され電気的に接続されている。
[正極]
図2は、図1に示した巻回電極体20の一部を拡大して表すものである。図2に示すように、正極2は、例えば、導電性基材として、対向する一対の面を有する正極集電体2Aと、正極集電体2Aの両面に設けられた正極合剤層2Bとを有している。なお、正極集電体2Aの片面のみに正極合剤層2Bが設けられた領域を有するようにしてもよい。正極集電体2Aは、例えば、アルミニウム(Al)箔等の金属箔により構成されている。正極合剤層2Bは、例えば、正極活物質を含んでおり、必要に応じてグラファイトなどの導電剤と、ポリフッ化ビニリデンなどの結着剤とを含んでいてもよい。正極活物質としては、上述した一実施形態による正極活物質を用いる。
[負極]
図2に示すように、負極3は、例えば、対向する一対の面を有する負極集電体3Aと、負極集電体3Aの両面に設けられた負極合剤層3Bとを有している。なお、負極集電体3Aの片面のみに負極合剤層3Bが設けられた領域を有するようにしてもよい。負極集電体3Aは、例えば銅(Cu)箔などの金属箔により構成されている。負極合剤層3Bは、例えば、負極活物質を含んでおり、必要に応じてポリフッ化ビニリデンなどの結着剤を含んでいてもよい。
負極活物質としては、対リチウム金属の電位が2.0V以下で、電気化学的にリチウム(Li)を吸蔵および離脱することが可能な負極材料(以下、リチウム(Li)を吸蔵・離脱可能な負極材料と適宜称する。)を含んでいる。リチウム(Li)を吸蔵・離脱可能な負極材料としては、例えば、炭素材料、金属化合物、酸化物、硫化物、LiN3などのリチウム窒化物、リチウム金属、リチウムと合金を形成する金属、あるいは高分子材料などが挙げられる。
炭素材料としては、例えば、難黒鉛化性炭素、易黒鉛化性炭素、人造黒鉛、天然黒鉛、熱分解炭素類、コークス類、グラファイト類、ガラス状炭素類、有機高分子化合物焼成体、炭素繊維、活性炭あるいはカーボンブラック類等が挙げられる。このうち、コークス類には、ピッチコークス、ニードルコークスあるいは石油コークスなどがある。有機高分子化合物焼成体というのは、フェノール樹脂やフラン樹脂等の高分子材料を適当な温度で焼成して炭素化したものをいい、一部には難黒鉛化性炭素または易黒鉛化性炭素に分類されるものもある。また、高分子材料としてはポリアセチレンあるいはポリピロール等が挙げられる。
このようなリチウム(Li)を吸蔵・離脱可能な負極材料のなかでも、充放電電位が比較的リチウム金属に近いものが好ましい。負極3の充放電電位が低いほど電池の高エネルギー密度化が容易となるからである。なかでも炭素材料は、充放電時に生じる結晶構造の変化が非常に少なく、高い充放電容量を得ることができると共に、良好なサイクル特性を得ることができるので好ましい。特に黒鉛は、電気化学当量が大きく、高いエネルギー密度を得ることができるので好ましい。また、難黒鉛化性炭素は、優れたサイクル特性を得ることができるので好ましい。
リチウム(Li)を吸蔵・離脱可能な負極材料としては、また、リチウム金属単体、リチウム(Li)と合金を形成可能な金属元素あるいは半金属元素の単体、合金または化合物が挙げられる。これらは高いエネルギー密度を得ることができるので好ましく、特に、炭素材料と共に用いるようにすれば、高エネルギー密度を得ることができると共に、優れたサイクル特性を得ることができるのでより好ましい。なお、本明細書において、合金には2種以上の金属元素からなるものに加えて、1種以上の金属元素と1種以上の半金属元素とからなるものも含める。その組織には固溶体、共晶(共融混合物)、金属間化合物あるいはそれらのうち2種以上が共存するものがある。
このような金属元素あるいは半金属元素としては、スズ(Sn)、鉛(Pb)、アルミニウム(Al)、インジウム(In)、ケイ素(Si)、亜鉛(Zn)、アンチモン(Sb)、ビスマス(Bi)、カドミウム(Cd)、マグネシウム(Mg)、ホウ素(B)、ガリウム(Ga)、ゲルマニウム(Ge)、ヒ素(As)、銀(Ag)、ジルコニウム(Zr)、イットリウム(Y)またはハフニウム(Hf)が挙げられる。これらの合金あるいは化合物としては、例えば、化学式MasMbtLiu、あるいは化学式MapMcqMdrで表されるものが挙げられる。これら化学式において、Maはリチウムと合金を形成可能な金属元素および半金属元素のうちの少なくとも1種を表し、MbはリチウムおよびMa以外の金属元素および半金属元素のうちの少なくとも1種を表し、Mcは非金属元素の少なくとも1種を表し、MdはMa以外の金属元素および半金属元素のうちの少なくとも1種を表す。また、s、t、u、p、qおよびrの値はそれぞれs>0、t≧0、u≧0、p>0、q>0、r≧0である。
なかでも、短周期型周期表における4B族の金属元素あるいは半金属元素の単体、合金または化合物が好ましく、特に好ましいのはケイ素(Si)あるいはスズ(Sn)、またはこれらの合金あるいは化合物である。これらは結晶質のものでもアモルファスのものでもよい。
この他、酸化鉄、酸化ルテニウム、酸化モリブデン、酸化タングステン、酸化チタン、酸化スズ、二酸化マンガン、酸化バナジウム(V25、V613)等の、比較的卑な電位でリチウムをドープ・脱ドープする酸化物やその他窒素化合物、硫化化合物など、リチウム(Li)を含まない無機化合物も同様に使用可能である。
[電解質]
電解質としては、非水溶媒に電解質塩を溶解させた非水電解液を用いることができる。非水溶媒としては、例えば、エチレンカーボネートおよびプロピレンカーボネートのうちの少なくとも一方を含んでいることが好ましい。サイクル特性を向上させることができるからである。特に、エチレンカーボネートとプロピレンカーボネートとを混合して含むようにすれば、よりサイクル特性を向上させることができるので好ましい。また、他の非水溶媒としては、ジエチルカーボネート、ジメチルカーボネート、エチルメチルカーボネートまたはメチルプロピルカーボネート等の鎖状炭酸エステルの中から、少なくとも1種を含んでいることが好ましい。サイクル特性をより向上させることができるからである。
非水溶媒としては、さらに、ブチレンカーボネート、γ−ブチロラクトン、γ−バレロラクトン、これら化合物の水素基の一部または全部をフッ素基で置換したもの、1,2−ジメトキシエタン、テトラヒドロフラン、2−メチルテトラヒドロフラン、1,3−ジオキソラン、4−メチル−1,3−ジオキソラン、酢酸メチル、プロピオン酸メチル、アセトニトリル、グルタロニトリル、アジポニトリル、メトキシアセトニトリル、3−メトキシプロピロニトリル、N,N−ジメチルフォルムアミド、N−メチルピロリジノン、N−メチルオキサゾリジノン、N,N−ジメチルイミダゾリジノン、ニトロメタン、ニトロエタン、スルホラン、ジメチルスルフォキシド、塩化チオニルあるいはリン酸トリメチル等のいずれか、もしくはこれらの誘導体を1種または2種以上を含んでいてもよい。
組み合わせる電極によっては、上記非水溶媒群に含まれる物質の水素原子の一部または全部をフッ素原子で置換したものを用いることにより、電極反応の可逆性が向上する場合がある。したがって、これらの物質を適宜用いることも可能である。
電解質塩であるリチウム塩としては、例えば、LiPF6、LiBF4、LiAsF6、LiClO4、LiB(C654、LiCH3SO3、LiCF3SO3、LiN(SO2CF32、LiC(SO2CF33、LiAlCl4、LiSiF6、LiCl、LiBF2(ox)、LiBOB、あるいはLiBrが適当であり、これらのうちのいずれか1種または2種以上が混合して用いることができる。なかでも、LiPF6は、高いイオン伝導性を得ることができるとともに、サイクル特性を向上できるので好ましい。
[セパレータ]
以下に、第1の実施形態に利用可能なセパレータ材料について説明する。セパレータ材料としては、従来の電池に使用されてきたものを利用することが可能である。そのなかでも、ショート防止効果に優れ、かつシャットダウン効果による電池の安全性向上が可能なポリオレフィン製微孔性フィルムを使用することが特に好ましい。例えば、ポリエチレンやポリプロピレン樹脂からなる微多孔膜が好ましい。
さらに、セパレータ材料としては、シャットダウン温度がより低いポリエチレンと耐酸化性に優れるポリプロピレンを積層または混合したものを用いることが、シャットダウン性能とフロート特性の両立が図れる点から、より好ましい。
(1−2)非水電解質二次電池の製造方法
次に、非水電解質二次電池の製造方法について説明する。以下、一例として円筒型の非水電解質二次電池を挙げて、非水電解質二次電池の製造方法について説明する。
正極2は、以下に述べるようにして作製する。まず、例えば、正極活物質と、導電剤と、結着剤とを混合して正極合剤を調製し、この正極合剤をN−メチル−2−ピロリドンなどの溶剤に分散させて正極合剤スラリーとする。
次に、この正極合剤スラリーを正極集電体2Aに塗布し溶剤を乾燥させた後、ロールプレス機などにより圧縮成型して正極合剤層2Bを形成し、正極2を作製する。
負極3は、以下に述べるようにして作製する。まず、例えば、負極活物質と、結着剤とを混合して負極合剤を調製し、この負極合剤をN−メチル−2−ピロリドンなどの溶剤に分散させて負極合剤スラリーとする。
次に、この負極合剤スラリーを負極集電体3Aに塗布し溶剤を乾燥させた後、ロールプレス機などにより圧縮成型して負極合剤層3Bを形成し、負極3を作製する。
また、負極合剤層3Bは、例えば、気相法、液相法、焼成法により形成してもよく、それらの2以上を組み合わせてもよい。なお、気相法としては、例えば、物理堆積法あるいは化学堆積法を用いることができ、具体的には、真空蒸着法、スパッタ法、イオンプレーティング法、レーザーアブレーション法、熱CVD(Chemical Vapor Deposition;化学気相成長)法あるいはプラズマCVD法等が利用可能である。液相法としては電解鍍金あるいは無電解鍍金等の公知の手法が利用可能である。焼成法に関しても公知の手法が利用可能であり、例えば、雰囲気焼成法、反応焼成法あるいはホットプレス焼成法が利用可能である。
次に、正極集電体2Aに正極リード13を溶接などにより取り付けると共に、負極集電体3Aに負極リード14を溶接などにより取り付ける。次に、正極2と、負極3とをセパレータ4を介して巻回し、正極リード13の先端部を安全弁機構8に溶接すると共に、負極リード14の先端部を電池缶1に溶接して、巻回した正極2および負極3を一対の絶縁板5、6で挟み電池缶1の内部に収納する。
次に、電解液を電池缶1の内部に注入し、電解液をセパレータ4に含浸させる。次に、電池缶1の開口端部に電池蓋7、安全弁機構8および熱感抵抗素子9を、ガスケット10を介してかしめることにより固定する。以上により、非水電解質二次電池が作製される。
(2)非水電解質二次電池の第2の例
(2−1)非水電解質二次電池の構成
図3は、この発明の一実施形態による正極活物質を用いた非水電解質二次電池の構造を示す。図3に示すように、この非水電解質二次電池は、電池素子30を防湿性ラミネートフィルムからなる外装材37に収容し、電池素子30の周囲を溶着することにより封止してなる。電池素子30には、正極リード32および負極リード33が備えられ、これらのリードは、外装材37に挟まれて外部へと引き出される。正極リード32および負極リード33のそれぞれの両面には、外装材37との接着性を向上させるために樹脂片34および樹脂片35が被覆されている。
[外装材]
外装材37は、例えば、接着層、金属層、表面保護層を順次積層した積層構造を有する。接着層は高分子フィルムからなり、この高分子フィルムを構成する材料としては、例えばポリプロピレン(PP)、ポリエチレン(PE)、無延伸ポリプロピレン(CPP)、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)、低密度ポリエチレン(LDPE)が挙げられる。金属層は金属箔からなり、この金属箔を構成する材料としては、例えばアルミニウム(Al)が挙げられる。また、金属箔を構成する材料としては、アルミニウム(Al)以外の金属を用いることも可能である。表面保護層を構成する材料としては、例えばナイロン(Ny)、ポリエチレンテレフタレート(PET)が挙げられる。なお、接着層側の面が、電池素子30を収納する側の収納面となる。
[電池素子]
この電池素子30は、例えば、図4に示すように、両面にゲル電解質層45が設けられた帯状の負極43と、セパレータ44と、両面にゲル電解質層45が設けられた帯状の正極42と、セパレータ44とを積層し、長手方向に巻回されてなる巻回型の電池素子30である。
正極42は、帯状の正極集電体42Aと、この正極集電体42Aの両面に形成された正極合剤層42Bとからなる。正極集電体42Aは、例えばアルミニウム(Al)などからなる金属箔である。
正極42の長手方向の一端部には、例えばスポット溶接または超音波溶接で接続された正極リード32が設けられている。この正極リード32の材料としては、例えばアルミニウム等の金属を用いることができる。
負極43は、帯状の負極集電体43Aと、この負極集電体43Aの両面に形成された負極合剤層43Bとからなる。負極集電体43Aは、例えば、銅(Cu)箔、ニッケル箔あるいはステンレス箔などの金属箔により構成されている。
また、負極43の長手方向の一端部にも正極42と同様に、例えばスポット溶接または超音波溶接で接続された負極リード33が設けられている。この負極リード33の材料としては、例えば銅(Cu)、ニッケル(Ni)等を用いることができる。
ゲル電解質層45以外については上述の第1の例と同様であるので、以下ではゲル電解質層45について説明する。
ゲル電解質層45は、非水電解液と、この非水電解液を保持する保持体となるマトリクスポリマとを含み、いわゆるゲル状となっている。ゲル電解質層45は高いイオン伝導率を得ることができるとともに、電池の漏液を防止できるので好ましい。電解液の構成(すなわち液状の溶媒、電解質塩および添加剤)は、第1の実施形態と同様である。
マトリクスポリマは、非水溶媒に電解質塩が溶解されてなる非水電解液に相溶可能であり、ゲル化できるものであればよい。このようなマトリクスポリマとしては、ポリアクリロニトリル、ポリフッ化ビニリデン、ポリテトラフルオロエチレン、ポリヘキサフルオロプロピレン、ポリエチレンオキサイド、ポリプロピレンオキサイド、ポリフォスファゼン、ポリシロキサン、ポリ酢酸ビニル、ポリビニルアルコール、ポリメタクリル酸メチル、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸、スチレン−ブタジエンゴム、ニトリル−ブタジエンゴム、ポリスチレンあるいはポリカーボネートを繰り返し単位に含むポリマーが挙げられる。特に、電気化学的な安定性の点からは、ポリアクリロニトリル、ポリフッ化ビニリデン、ポリヘキサフルオロプロピレンあるいはポリエチレンオキサイドが好ましい。このようなポリマーは、1種類を単独で用いてもよいし、2種類以上を混合して用いてもよい。
その中でも特に好ましいのは、酸化還元安定性からフッ素系高分子であり、特にポリフッ化ビニリデン、またはポリフッ化ビニリデンにヘキサフルオロプロピレンが7.5%以下の割合で導入された共重合体を用いることが好ましい。このようなポリマーは、数平均分子量が5.0×105から7.0×105(50万から70万)の範囲であるか、または重量平均分子量が2.1×105から3.1×105(21万から31万)の範囲であり、固有粘度が1.7から2.1の範囲とされている。
(2−2)非水電解質二次電池の製造方法
次に、この発明の一実施形態による正極活物質を用いた非水電解質二次電池の製造方法について説明する。まず、正極42および負極43のそれぞれに、溶媒と、電解質塩と、高分子化合物と、混合溶剤とを含む前駆溶液を塗布し、混合溶剤を揮発させてゲル電解質層45を形成する。なお、予め正極集電体の端部に正極リード32を溶接により取り付けるとともにに、負極集電体43Aの端部に負極リード33を溶接により取り付けるようにする。
次に、ゲル電解質層45が形成された正極42と負極43とを、セパレータ44を介して積層し積層体とした後、この積層体をその長手方向に巻回して、巻回型の電池素子30を形成する。
次に、ラミネートフィルムからなる外装材37を深絞り加工することで凹部36を形成し、電池素子30をこの凹部36に挿入し、外装材37の未加工部分を凹部36上部に折り返し、凹部36の外周部分を熱溶着し密封する。以上により、非水電解質二次電池が作製される。
以下、実施例によりこの発明を具体的に説明するが、この発明はこれらの実施例のみに限定されるものではない。まず、本実施例で用いた正極活物質の作製方法を以下に示す。
<実施例1>
市販試薬のLi2CO3を39.9重量部、Ni(OH)2を45.4重量部、MnCO3を56.3重量部、MoO3・H2Oを3.2重量部(金属元素比Li:Ni:Mn:Mo=1.08:0.49:0.49:0.02)を秤量し、ボールミル装置により平均粒径1μm以下になるまで粉砕した後、70℃で減圧乾燥した。次に、得られた混合粉末5重量部と、複合酸化物粒子として平均粒子径13μm(レーザ散乱法により測定)のコバルト酸リチウム正極活物質(平均化学組成分析値:Li1.03CoO2)100重量部とを、メカノフュージョン装置によって1時間処理を行い、コバルト酸リチウム表面にLi2CO3、Ni(OH)2、MnCO3、MoO3・H2Oを被着させた。この焼成前駆体を毎分3℃の速度で昇温し、800℃で3時間保持した後に徐冷し、正極活物質を得た。
得られた粉末をレーザ回折法により粒径を測定したところ、平均粒径は13.5μmであった。また、SEM/EDX(Scanning Electron Microscope;走査電子顕微鏡/Energy Dispersive X-ray Spectrometer;エネルギー分散形X線分析装置)により粉末を観察したところ、コバルト酸リチウム正極活物質の表面に、粒径0.1〜5μm程度のニッケル・マンガン金属化合物が被着しており、また、ニッケル(Ni)、マンガン(Mn)およびモリブデン(Mo)は表面全体にほぼ均一に存在している様子が観察された。
この粉末のXRD(X-ray diffraction;X線回折)を測定したところモリブデン(Mo)化合物に帰属できる回折ピークは見出されなかった。また、XPS測定の結果、Mo3d5/2のピークは、232.3eVであった。この結果から、モリブデン(Mo)が粒子表面に存在し、かつモリブデン(Mo)が結晶相を有していないことが分かる。
また、この粉末を原子吸光分析により分析したところ、ニッケル(Ni)およびマンガン(Mn)の総量に対するモリブデン(Mo)の被着量は2.0mol%であった。
以上の正極活物質として用い、以下に記すように円筒型二次電池を作製した。
まず、作製した正極活物質粉末86重量%と、導電剤としてグラファイト10重量%と、結着剤としてポリフッ化ビニリデン(PVdF)4重量%とを混合し、溶剤であるN−メチル−2−ピロリドン(NMP)に分散させたのち、厚み20μmの帯状アルミニウム箔よりなる正極集電体の両面に塗布して乾燥させ、ローラプレス機により圧縮成型して正極合剤層を形成し正極を作製した。その際、正極活物質粉末は、70μm開口篩を通るように十分に擂潰機により粉砕して用いた。また、正極合剤層の空隙は、体積比率で26%となるように調節した。次に、正極集電体にアルミニウム製の正極リードを取り付けた。
次に、負極活物質として人造黒鉛粉末90重量%と、結着剤としてポリフッ化ビニリデン(PVdF)10重量%とを混合し、溶剤であるN−メチル−2−ピロリドンに分散させたのち、厚み10μmの帯状銅箔よりなる負極集電体の両面に塗布して乾燥させ、ローラプレス機により圧縮成型して負極合剤層を形成し負極を作製した。次に、負極集電体にニッケル製の負極リードを取り付けた。
以上のようにして作製した帯状正極と、帯状負極とを多孔性ポリオレフィンフィルムからなるセパレータを介して積層し、多数回巻回して渦巻き型の巻回電極体を作製した。次に、この巻回電極体を鉄製の電池缶に収納し、巻回電極体の上下両面に一対の絶縁板を配置した。次に、正極リードを正極集電体から導出して、電池蓋と電気的な同通が確保された安全弁機構に溶接し、負極リードを負極集電体から導出して電池缶の底部に溶接した。
その後、電池缶の内部に電解液を注入した。電解液には、エチレンカーボネート(EC)とジエチルカーボネート(DEC)とを1:1の体積比で混合した溶媒に、電解質塩としてLiPF6を1.0mol/dm3となるように溶解させたものを用いた。さらに、ガスケットを介して電池蓋をかしめることにより、安全弁機構、熱感抵抗素子および電池蓋を固定し、外径18mm、高さ65mmの円筒型二次電池を得た。
<実施例2>
市販試薬のLi2CO3を39.9重量部、Ni(OH)2を69.1重量部、MnCO3を28.7重量部、MoO3・H2Oを0.8重量部(金属元素比Li:Ni:Mn:Mo=1.08:0.745:0.250:0.005)を秤量し、ボールミル装置により平均粒径1μm以下になるまで粉砕した後、70℃で減圧乾燥した。次に、得られた混合粉末10重量部を、実施例1と同様に平均粒子径13μmのコバルト酸リチウム正極活物質(平均化学組成分析値:Li1.03CoO2)100重量部に対して被覆処理を行った。
この粉末のXRDを測定したところモリブデン(Mo)化合物に帰属できる回折ピークは見出されなかった。また、XPS測定の結果、Mo3d5/2のピークは、232.2eVであった。
また、この粉末を原子吸光分析により分析したところ、ニッケル(Ni)およびマンガン(Mn)の総量に対するモリブデン(Mo)の被着量は0.5mol%であった。
<実施例3>
市販試薬のLiOH・H2Oを45.4重量部、Ni(OH)2を46.4重量部、MnCO3を54.6重量部、(NH46Mo724・4H2Oを4.4重量部(金属元素比Li:Ni:Mn:Mo=1.08:0.500:0.475:0.025)を秤量し、ボールミル装置により平均粒径1μm以下になるまで粉砕した後、70℃で減圧乾燥した。次に、得られた混合粉末5重量部を、実施例1と同様に平均粒子径13μmのコバルト酸リチウム正極活物質(平均化学組成分析値:Li1.03CoO2)100重量部に対して被覆処理を行った。
この粉末のXRDを測定したところモリブデン(Mo)化合物に帰属できる回折ピークは見出されなかった。また、XPS測定の結果、Mo3d5/2のピークは、232.4eVであった。
また、この粉末を原子吸光分析により分析したところ、ニッケル(Ni)およびマンガン(Mn)の総量に対するモリブデン(Mo)の被着量は2.5mol%であった。
<実施例4>
市販試薬のLi2CO3を38.1重量部と、CoCO3を116.5重量部と、Al(OH)3を7.8重量部と、MgCO3を8.4重量部とをボールミルで粉砕しながら十分に混合し、この混合物を650℃の空気中で5時間仮焼成し、さらに950℃の空気中で20時間保持した後、毎分7℃で150℃まで冷却し、室温で取り出して粉砕した。レーザ散乱法により測定した平均粒子径は13μmであり、平均化学組成分析値は、Li1.03Co0.98Al0.01Mg0.012.02であった。このような複合酸化物粒子を用いた以外は実施例1と同様(金属元素比Li:Ni:Mn:Mo=1.08:0.49:0.49:0.02)にして正極活物質を得た。
この粉末のXRDを測定したところモリブデン(Mo)化合物に帰属できる回折ピークは見出されなかった。また、XPS測定の結果、Mo3d5/2のピークは、232.3eVであった。
また、この粉末を原子吸光分析により分析したところ、ニッケル(Ni)およびマンガン(Mn)の総量に対するモリブデン(Mo)の被着量は2.0mol%であった。
<比較例1>
市販試薬のLiOH・H2Oを39.9重量部、Ni(OH)2を46.4重量部、MnCO3を57.5重量部(金属元素比Li:Ni:Mn=1.08:0.50:0.50)を秤量し、ボールミル装置により平均粒径1μm以下になるまで粉砕した後、70℃で減圧乾燥した。次に、得られたモリブデン(Mo)を含まない混合粉末5重量部を、実施例1と同様に平均粒子径13μmのコバルト酸リチウム正極活物質(平均化学組成分析値:Li1.03CoO2)100重量部に対して被覆処理を行った。
この粉末のXRDを測定したところモリブデン(Mo)化合物に帰属できる回折ピークは見出されなかった。また、XPS測定の結果、Mo3d5/2のピークは、232.4eVであった。
<比較例2>
市販試薬のLiOH・H2Oを28.8重量部、Ni(OH)2を32.4重量部、MnCO3を40.2重量部、MoO3・H2Oを49.6重量部(金属元素比Li:Ni:Mn:Mo=1.08:0.35:0.35:0.30)を秤量し、ボールミル装置により平均粒径1μm以下になるまで粉砕した後、70℃で減圧乾燥した。次に、得られた混合粉末5重量部を、実施例1と同様に平均粒子径13μmのコバルト酸リチウム正極活物質(平均化学組成分析値:Li1.03CoO2)100重量部に対して被覆処理を行った。
この粉末のXRDを測定したところモリブデン(Mo)化合物に帰属できる回折ピークは見出されなかった。また、XPS測定の結果、Mo3d5/2のピークは、232.6eVであった。
また、この粉末を原子吸光分析により分析したところ、ニッケル(Ni)およびマンガン(Mn)の総量に対するモリブデン(Mo)の被着量は30mol%であった。
[円筒型二次電池の評価]
(a)初期容量
上述のようにして作製した円筒型二次電池について、環境温度45℃で充放電を行い、1サイクル目の放電容量を初期容量として求めた。
なお、充電は、1000mAの定電流で電池電圧が4.40Vに達するまで定電流充電を行ったのち、4.40Vの定電圧で充電時間の合計が2.5時間となるまで定電圧充電を行った。また、放電は、800mAの定電流で電池電圧が2.75Vに達するまで定電流放電を行った。
(b)容量維持率
(a)のようにして初期容量を求めた円筒型二次電池について、同条件にて200サイクルまで充放電を行い、200サイクル目の放電容量を測定して、初期容量に対する容量維持率を{(200サイクル目の放電容量/初期容量)×100}より求めた。
以下の表1に、評価の結果を示す。
Figure 2008140747
実施例1ないし実施例4の結果から分かるように、複合酸化物の表面に、結晶相を有しないモリブデン(Mo)イオンを含有する被覆層が設けられ、モリブデン(Mo)イオンのXPSによる3d5/2の結合エネルギーが232.4eV以下となるように構成された正極活物質を用いることにより、高い初期容量および容量維持率を両立することができる。
以上、この発明の実施形態について具体的に説明したが、この発明は、上述の実施形態に限定されるものではなく、この発明の技術的思想に基づく各種の変形が可能である。
例えば、上述の実施形態において挙げた数値はあくまでも例に過ぎず、必要に応じてこれと異なる数値を用いてもよい。
なお、本発明を適用する非水電解質二次電池としては、上述の円筒型電池やラミネート外装による薄型電池以外にも、角型、コイン型、ボタン型等種々の形状を用いることができる。
また、非水電解質電池の第1の例では、電解質として、電解液を有する非水電解質二次電池、非水電解質電池の第2の例では、電解質として、ゲル電解質を有する非水電解質二次電池について説明したがこれらに限定されるものではない。
例えば、電解質としては、電解質塩を含有させた固体電解質を用いる事も可能である。固体電解質としては、リチウムイオン導電性を有する材料であれば、イオン伝導性高分子を利用した高分子固体電解質、またはイオン伝導性無機材料を利用した無機固体電解質などのいずれも用いることも可能であり、これらを単独あるいは他の電解質と組み合わせて用いてもよい。無機固体電解質としては、窒化リチウム、ヨウ化リチウム、イオン伝導性セラミックス、イオン伝導性結晶、あるいはイオン伝導性ガラス等が挙げられる。高分子固体電解質に用いることができる高分子化合物は、電解質塩とそれを溶解する高分子化合物とからなり、例えばポリエチレンオキサイドや同架橋体等のエーテル系高分子、ポリメタクリレートエステル系、アクリレート系等を単独もしくは分子中に共重合、または混合して用いることができる。
この発明の一実施形態による正極活物質を用いた非水電解質二次電池の第1の例の概略断面図である。 図1に示した巻回電極体の一部の拡大断面図である。 この発明の一実施形態による正極活物質を用いた非水電解質二次電池の第2の例の概略図である。 図3に示した電池素子の一部の拡大断面である。
符号の説明
1・・・電池缶
2・・・正極
2A・・・正極集電体
2B・・・正極合剤層
3A・・・負極集電体
3B・・・負極合剤層
3・・・負極
4・・・セパレータ
5,6・・・絶縁板
7・・・電池蓋
8・・・安全弁機構
9・・・熱感抵抗素子
10・・・ガスケット
11・・・ディスク板
12・・・センターピン
13・・・正極リード
14・・・負極リード
20・・・巻回電極体
30・・・電池素子
32・・・正極リード
33・・・負極リード
34,35・・・樹脂片
35・・・負極リード
36・・・凹部
37・・・外装材
42・・・正極
42A・・・正極集電体
42B・・・正極合剤層
43・・・負極
43A・・・負極集電体
43B・・・負極合剤層
44・・・セパレータ
45・・・ゲル電解質層

Claims (12)

  1. 化1で平均組成が表される複合酸化物粒子の表面の少なくとも一部に、リチウム(Li)を含有するニッケル(Ni)、マンガン(Mn)およびコバルト(Co)の酸化物を主体とする金属酸化物からなる被覆層が設けられた非水電解質二次電池用正極活物質において、
    上記金属酸化物にはモリブデンイオンが結晶相を有さず含有され、
    上記モリブデンイオンのXPS(X-ray Photoelectron Spectroscopy;光電子分光測定)による3d5/2の結合エネルギーが、232.4eV以下である
    ことを特徴とする非水電解質二次電池用正極活物質。
    (化1)
    Li(1+x)Co(1-y)y(2-z)
    (ただし、化1中、Mはマグネシウム(Mg)、アルミニウム(Al)、ホウ素(B)、チタン(Ti)、バナジウム(V)、クロム(Cr)、マンガン(Mn)、鉄(Fe)、ニッケル(Ni)、銅(Cu)、亜鉛(Zn)、モリブデン(Mo)、スズ(Sn)、タングステン(W)、ジルコニウム(Zr)、イットリウム(Y)、ニオブ(Nb)、カルシウム(Ca)、ストロンチウム(Sr)から選ばれた少なくとも一種の元素からなり、式中x、y、zは、−0.10≦x≦0.10、0≦y<0.50、−0.10≦z≦0.20である。)
  2. モリブデン(Mo)が、上記複合酸化物粒子の表面の少なくとも一部に露出していること
    を特徴とする請求項1記載の非水電解質二次電池用正極活物質。
  3. 上記複合酸化物粒子に対する上記モリブデン(Mo)の被着量が、0.00001mol%以上1.0mol%以下であること
    を特徴とする請求項1記載の非水電解質二次電池用正極活物質。
  4. 上記金属酸化物における上記ニッケル(Ni)と上記マンガン(Mn)の総量に対する上記モリブデン(Mo)の被着量が、0.1mol%以上25mol%以下であること
    を特徴とする請求項1記載の非水電解質二次電池用正極活物質。
  5. 上記金属酸化物における上記ニッケル(Ni)と上記マンガン(Mn)との構成比が、モル比で99:1から30:70であること
    を特徴とする請求項1記載の非水電解質二次電池用正極活物質。
  6. 上記金属酸化物におけるニッケル(Ni)、マンガン(Mn)およびコバルト(Co)の総量の40mol%以下を、マグネシウム(Mg)、アルミニウム(Al)、ホウ素(B)、チタン(Ti)、バナジウム(V)、クロム(Cr)、鉄(Fe)、銅(Cu)、亜鉛(Zn)、スズ(Sn)、ニオブ(Nb)、カルシウム(Ca)、ストロンチウム(Sr)、タングステン(W)、イットリウム(Y)、ジルコニウム(Zr)よりなる群から選ばれた少なくとも一種の金属元素で置き換えたこと
    を特徴とする請求項1記載の非水電解質二次電池用正極活物質。
  7. 平均粒径が2.0μm以上50μm以下であること
    を特徴とする請求項1記載の非水電解質二次電池用正極活物質。
  8. リチウム(Li)、ニッケル(Ni)、マンガン(Mn)およびモリブデン(Mo)を主体とする金属化合物を微粉砕して混合粉末を作製する粉砕工程と、
    化1で平均組成が表される複合酸化物粒子と、上記混合粉末とを混合する混合工程と、
    上記複合酸化物粒子の表面の少なくとも一部に上記混合粉末を被着する被着工程と、
    上記混合粉末が被着された上記複合酸化物粒子を焼成し、リチウム(Li)を含有するニッケル(Ni)、マンガン(Mn)およびコバルト(Co)の酸化物を主体とする金属酸化物からなる被覆層を形成する焼成工程と
    からなる非水電解質二次電池用正極活物質の製造方法。
    (化1)
    Li(1+x)Co(1-y)y(2-z)
    (ただし、化1中、Mはマグネシウム(Mg)、アルミニウム(Al)、ホウ素(B)、チタン(Ti)、バナジウム(V)、クロム(Cr)、マンガン(Mn)、鉄(Fe)、ニッケル(Ni)、銅(Cu)、亜鉛(Zn)、モリブデン(Mo)、スズ(Sn)、タングステン(W)、ジルコニウム(Zr)、イットリウム(Y)、ニオブ(Nb)、カルシウム(Ca)、ストロンチウム(Sr)から選ばれた少なくとも一種の元素からなり、式中x、y、zは、−0.10≦x≦0.10、0≦y<0.50、−0.10≦z≦0.20である。)
  9. 上記金属酸化物は、金属水酸化物、金属含水酸化物、金属炭酸塩、あるいは金属炭酸水素塩等の易分解性金属化合物を被着し、加熱分解して形成すること
    を特徴とする請求項7記載の非水電解質二次電池用正極活物質の製造方法。
  10. 上記被着工程において、金属水酸化物、金属含水酸化物、金属炭酸塩、あるいは金属炭酸水素塩等の易分解性金属化合物に圧縮および剪断力を与えて上記易分解性金属化合物を上記複合酸化物粒子に被着させること
    を特徴とする請求項7記載の非水電解質二次電池用正極活物質の製造方法。
  11. 非水電解質二次電池用正極活物質を有する正極と、負極と、セパレ−タおよび電解質とを備え、
    上記非水電解質二次電池用正極活物質は、
    化1で平均組成が表される複合酸化物粒子の表面の少なくとも一部に、リチウム(Li)を含有するニッケル(Ni)、マンガン(Mn)およびコバルト(Co)の酸化物を主体とする金属酸化物からなる被覆層が設けられた非水電解質二次電池用正極活物質において、
    上記金属酸化物にはモリブデンイオンが結晶相を有さず含有され、
    上記モリブデンイオンのXPSによる3d5/2の結合エネルギーが、232.4eV以下である非水電解質二次電池。
    (化1)
    Li(1+x)Co(1-y)y(2-z)
    (ただし、化1中、Mはマグネシウム(Mg)、アルミニウム(Al)、ホウ素(B)、チタン(Ti)、バナジウム(V)、クロム(Cr)、マンガン(Mn)、鉄(Fe)、ニッケル(Ni)、銅(Cu)、亜鉛(Zn)、モリブデン(Mo)、スズ(Sn)、タングステン(W)、ジルコニウム(Zr)、イットリウム(Y)、ニオブ(Nb)、カルシウム(Ca)、ストロンチウム(Sr)から選ばれた少なくとも一種の元素からなり、式中x、y、zは、−0.10≦x≦0.10、0≦y<0.50、−0.10≦z≦0.20である。)
  12. 上限充電電圧を4.25V以上4.80V以下、下限放電電圧を2.00V以上3.30V以下とすること
    を特徴とする請求項11記載の非水電解質二次電池。
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