JP2008136423A - 微生物検査デバイス - Google Patents

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Abstract

【課題】ATP法による空中浮遊菌の計測において、夾雑物が混入せず、測定精度の高い検査用キット、システムの提供。
【解決手段】菌を透過せず水分を透過する膜2と、着脱可能に設けた吸収材3、膜と吸収材との間を結ぶバインダ4などから構成されるデバイス1。このデバイス上に空中浮遊菌を集菌し、このデバイス上で不要物消去反応を行い、水溶成分を膜を通して吸収材に吸収させることにより除去し、デバイスから吸収材を取り除いた後、菌からATPを回収することにより、夾雑物除去とATP回収を簡便迅速かつ効率的に行う。
【選択図】図1

Description

本発明は、微生物の検査に用いられる前処理デバイスに関するものである。
空中に浮遊する細菌などの微生物数の検査法として、集塵機を用いて捕集した微生物を培地上で培養し、生じたコロニー数を計数する方法が実用に供されている。
しかし、培養法は1日ないし数日に及ぶ長い時間がかかり、また自動化が困難で手間がかかるという課題がある。一方、微生物検査は医薬品工場やセルプロセッシングセンター、食品工場など、高清浄度が要求される環境の微生物的清浄度(無菌性)の検証のために用いられるケースが多い。上記環境におけるオンサイトの微生物検査に培養法を適用する場合、検査工程の産物である大量に増幅した微生物が万一混入すると検査対象の清浄度確保の目的を破壊しかねないため、オンサイトの検査が行いにくく、検査室の設置、試料の搬送、産物の厳重な管理が必要である、という課題があった。
この改善策として培養無しに迅速簡便に微生物数を検査する方法が各種研究されている。第1の方法として試料中の微生物を2種類の蛍光試薬を用いて染色し、蛍光顕微画像解析などにより生菌と死菌を判別、計数する方法(蛍光法)がある(例えば、非特許文献1)。第2の方法として試料中の微生物からATPを抽出し、ATPの生物化学発光反応をルミノメータを用いて計測することによりATP量を定量し、生菌数に換算する方法(ATP法)がある(例えば、非特許文献2)。第1の方法は原理的に1細菌の計測が可能であるが、蛍光性の夾雑物質が試料中に混在すると誤差の原因となる。また生菌と死菌の判別は必ずしも容易ではない。例えば死菌を選択的に染色するとされるプロピジウムアイオダイド(PI)の死菌に対する平均蛍光強度は生菌に対するそれよりむしろ低い場合があり、単純な解釈を行うと正反対の結論を導く恐れが高い。第2の方法はATPに選択的に応答する生物化学発光反応に基づくため、蛍光性の夾雑物質の影響は原理的に受けない。またATP消去剤を用いて生菌の菌体外に含まれるATPを事前に消去するATP消去試薬、ATP抽出試薬を用いて生菌からATPを抽出するATP抽出試薬、生物化学発光により生菌中のATPを計測するためATP発光試薬の試薬一式を備えた試薬キットも開発されている。このキットをルミノメータと組み合わせて用いれば死菌などの影響を排除し、生菌のみに由来するATP量を選択的に測定可能である。
第2の方法の検査対象試料は現在のところ水溶液中に分散された微生物であり、空中浮遊菌の検査に適用するための検討が不十分である。即ち、空中浮遊菌の培養法による検査のためにはインパクタ方式の集塵機構を備え培地カセットを内蔵可能な製品として入手出来るのに対し、ATP法に関してはそのような簡便な装置は市販されていない。空中浮遊菌の検査に強いてATP法を適用しようとした場合、上記エアーサンプラーを用いて菌を点着した培地カセット上から菌を取り出し、試験管などへ移した後、試薬キットを用いてATP法により計測を行う方法が考えられる。このエアーサンプラーとATP法との単純な組合せを本明細書では従来法と記す。
ヴィルタ ほか、「デターミネーション オフ コンプルメントーメディエイテッド キリング オフ バクテリア バイ バイアビリティ ステイニング アンド バイオルミネッセンス」、アプライド アンド エンバイロンメンタル マイクロバイオロジー、1998年2月、pp.515−519。
ハットリ ほか、「エンハンスド マイクロバイアル バイオマス アッセイ ユージング ミュータント ルシフェラーゼ レジスタント トゥー ベンザルコニウム クロライド」、アナリティカル バイオケミストリー、319巻、2003年、pp.287-2295。
従来法は培地カセットの上から菌を取り出し、試験管へ移す工程(以降両者を併せて菌の回収工程と記す)が検討されていない。これらの工程は用手法に依存し、培地カセット上から菌を取り出す効率や試験管への移入効率(以降両者を併せて菌の回収効率と記す)が不明である。また本法を実試料に適用した場合、集塵した試料中には微生物以外の夾雑物が多量に混入するが、従来法では菌の回収効率を上げた場合、夾雑物も比例して多量に回収されてしまい、ATP消去反応やATP抽出反応、ATP発光反応に影響を及ぼし、測定精度が低い場合がある、という課題があった。
以上を踏まえ、空中浮遊菌の検査にATP法を適用する場合における課題として、即ち、菌の回収工程が未検討であり、回収率が不明であり、夾雑物が混入し測定精度が低いこと、などがある。
本発明は一例として、菌を透過せず水分を透過する膜と、着脱可能に設けた吸収材、膜と吸収材との間を結ぶバインダなどから構成されるデバイス、キットを用いる。また、他の例として、 親水性の第1膜と、第1膜と対面する吸水性の第2膜と、第1膜と第2膜とを接合し、透水性を有する接合部材などから構成されるデバイス、キットを用いる。また、このデバイス上に空中浮遊菌を集菌し、このデバイス上で不要物消去反応を行い、水溶成分を膜を通して吸収材に吸収させることにより除去し、デバイスから吸収材を取り除いた後、菌からのATP抽出反応を行い、抽出したATPを発行反応行程へ移す(以降ATP回収)。これにより、夾雑物除去とATP回収を簡便迅速かつ効率的に行う。
本発明によるデバイスは、菌を透過せず水分を透過する膜を用いて菌を保持し、菌以外の不要物や水溶成分を消去ないし除去するため、夾雑物の混入を防止できる。また、デバイスから吸収材を取り除いた後、菌からのATP抽出反応を行い、ATPを回収するため、ATP回収率が高い。本発明は上記デバイスを用いることにより、夾雑物除去とATP回収を簡便迅速かつ効率的に行うことができる、という利点がある。従って、本発明は測定精度と感度が高く、菌測定を簡便迅速に行える、という効果がある。
菌以外の不要物を除去し、菌中のATPを回収する構成を、簡便迅速に実現した。当該構成を以下実施例の例示により説明する。
図1は、前処理用のデバイス1の1実施例の断面図である。2は第1膜たる膜、3は第2膜たる吸収材、4は第1膜と第2膜の結合部材たるバインダである。図2は、菌の計測手順の概略図である。(a)は菌捕集工程、(b)はATP消去工程、(c)は洗浄工程、(d)はATP抽出工程、(e)はATP回収工程、(f)はATP発光工程である。
図1を用いてデバイス1の材料について説明する。本実施例では膜2の材料として生物学的に不活性なセルロースアセテートおよびニトロセルロースの混合物(セルロース混合エステル)を含むフィルターを用いる。本実施例では、ミリポア社のメンブレンフィルター、GSWP02500を用いた。このメンブレンフィルターはMF-ミリポアと呼ばれるものであり、孔径0.22ミクロンの微細孔を有し、厚さ150ミクロン、フィルター直径25mmの円盤状である。この膜は水流量18 mL/min/cm2の水分透過性を有する、即ち親水性である。この膜は一般的な細菌のサイズである1ミクロンより小さな孔径を有し、膜2は細菌を透過せず、水溶性成分を透過するという特性を有する。本実施例では吸収材3の材料としてセルロースを含むものを用いる。本実施例では、ミリポア社のセルロース吸収パッド薄型、AP1002500を用いた。この吸収パッドは純粋セルロース製で、直径25mmの円盤状である。微生物培養の際に培地を染みこませる吸収パッドとしても使用する。すなわち、吸収材3は水溶性成分を吸収する特性、即ち吸水性を有する膜状の材料である。本実施例ではバインダ4の材料として透水性を有し、かつ膜2と吸収材3とを接合する作用を有するものを用いる。またバインダが吸水した際はこの接合は着脱可能となる部材を使用してもよい。本実施例では、日澱化学社の白色デキストリンNo.1-Aを用いた。このバインダ材料は透水性を有し、膜2と吸収材3とを接合する作用を有し、またバインダが吸水した際はこの接合は着脱可能である。
デバイス1の製作法について説明する。バインダ4の材料である白色デキストリン 1-Aを純水に溶解し、ろ過滅菌後、スピンカラム式限外ろ過膜を用いて低分子量分画をろ別して洗浄した。膜2の材料であるメンブレンフィルター、吸収材3の材料である吸収パッドはオートクレーブにより高圧蒸気滅菌して使用した。以降の製作作業はクリーンベンチの内部で無菌的に行った。白色デキストリン 1-Aの高分子分画を重量濃度20wt%となるように滅菌水に溶解し、この水溶液0.1mLを吸収材3に塗布した後、その上に膜2を圧接し、一晩乾燥することによりデバイス1を形成した。
図2を用いて本デバイス1を用いた1実施例の動作を説明する。なお空中浮遊菌の捕集、ならびにATPの生物化学発光計測法の詳細な説明は省略する。
本実施例では(a)の菌捕集工程に、1穴のノズルを有するインパクタ方式のエアーサンプラーを使用した。従来の微生物捕集用のエアーサンプラーは多穴ノズルを有し、ノズル群の下に設置した寒天培地上に均等に菌を捕集するが、本実施例では寒天培地の代わりにデバイス1を用い、また多穴ノズルの代わりに1穴ノズルを用い、デバイス1の膜2の中央部分を1穴ノズルの直下に対向させて設置する。本エアーサンプラーにより試料気体中に浮遊する微粒子をデバイス1の膜2上の中央部分に集塵した。集塵した微粒子は、測定目的である生菌以外に、死菌や、塵埃などを含む。エアーサンプラーは毎分28.3Lの流量で35分間運転し、合計1mの気体をサンプリングした。デバイス1に捕集されるまでに試料気体が接触する可能性があるエアーサンプラーのノズルなどは予めオートクレーブにより滅菌処理を行った上で使用し、また以降の工程はクリーンベンチ内で行った。
以下(b)ないし(f)の工程を順番に説明する。なお(b)のATP消去工程や、(d)のATP抽出工程、(f)のATP発光計測工程において、それぞれATP消去剤、ATP抽出試薬、発光試薬を用いた。これらの試薬として、キッコーマン社の試薬キット(ルシフェールHSキット)に含まれる試薬をそれぞれ使用した。
ちなみに(b)のATP消去工程はATP消去剤を用いて死菌内や菌外のATPを分解除去し、(d)のATP抽出工程はATP抽出試薬を用いて生菌内からATPを抽出し、(f)のATP発光計測工程は発光試薬を用いてATPを発光させて計測する工程である。
(b)のATP消去工程においてATP消去剤の代わりに、それを滅菌した純水(以下滅菌水)で十分の一に希釈した水溶液を調製して使用した。上記(a)の菌捕集工程で得た試料、即ちデバイス1の膜2上に上記希釈ATP消去剤水溶液0.1mLを滴下し、ATP消去反応を室温で30分間行った。ATP消去剤滴下の際は最初は膜2上の中央部分を避けて、その周囲から実質的に同心円状に少量ずつ滴下することにより、微粒子の飛散を防止した。ATP消去剤がデバイス1の膜2の周囲から中央部分へ均等に浸透して微粒子へ浸透した後、残りのATP消去剤を膜2上の中央部分に滴下し、微粒子に対しATP消去剤を十分過剰に供給した。これにより微粒子中の死菌中のATPなど、生菌以外に含まれるATPが分解された。また、生菌以外の微粒子に含まれる水溶性成分がATP消去剤に溶解した。ATP消去剤の一部は膜2の下の面を通してバインダ4に浸透し、バインダ4は徐々に吸水した。バインダ4が吸収したATP消去剤の一部はさらに吸収材3に浸透した。これにより、ATP消去剤は膜2から除去され、吸収材3へ吸収された。
(c)の洗浄工程において、デバイス1の膜2上に滅菌水0.2mLを2回に分けて滴下した。吸収材3の吸水容量は合計約0.5mLあるため、滴下した滅菌水は膜2、バインダ4、吸収材3の順に浸透し、吸収材3へ吸収された。約1分後、吸収材3を下方に引き下げることにより大部分のバインダ4と共に膜2から取り外し、以降の工程では膜2を用いた。この洗浄工程により工程(b)、工程(c)で膜2上に存在した水溶性の成分(ATP消去剤を含む)はバインダ4と吸収材3とともに除去され、以降の工程への影響が回避された。
(d)のATP抽出工程において、ピペットを用いて膜2上にATP抽出試薬を0.1mL滴下し、約30秒間ピペッティングを行った。このATP抽出工程により膜2上に捕集された生菌が分解され、菌の内部のATPが抽出された。工程(c)でバインダ4並びに吸収材3は除去されているため、膜2上に滴下したATP抽出試薬は浸透せず、膜2(特に背面にバインダ4が接触していた領域)の上に液滴状に盛り上がった状態のままで維持された。
(e)のATP回収工程において、ピペットを用いて上記菌から抽出されたATPを含むATP抽出試薬0.1mLを混合し、そのうち0.01 mLを回収液として取り出した。これにより捕集した試料中に存在した生菌中のATPの10%が回収液に回収された。
(f)のATP発光計測工程において、事前にATP発光液0.2mLをルミノメータ用のポリプロピレン製の試験管に注入し、ルミノメータ(Berthold Detection Systems社FB12型)に設置して発光量を測定した(ベースライン)。次に上記回収液0.01mLを、上記ATP発光液0.2mLを含む試験管に追加注入し、混合後、同様に発光量を測定した(サンプル)。サンプルの実効発光量は、サンプルの発光量からベースラインの発光量を減算して求めた。サンプル測定と同様の操作を濃度既知のATP標準液について行い、単位濃度のATP当たりの実効発光量として感度を求めた。サンプルの実効発光量を感度で除算することにより、回収液中のATP量を求めた。この値を回収液の回収効率0.1で除算することにより、試料中の生菌に含まれるATP量を求めた。試料中のATP量を捕集した気体試料の体積である1mで除算することにより、単位体積当たりの気体試料に含まれる生菌中のATP量を求めた。この値を一生菌当たりのATP含有量の平均値(約2amol)で除算することにより体積当たりの空中浮遊菌の平均生菌数を求めた。
バインダ4の原料について以下の検討を行った。第1に、バインダ4は洗浄工程(c)において夾雑物を含む水溶性成分を膜2から吸収材3に効率よく透過する必要がある。換言すると予め膜2上に水溶性成分があっても洗浄工程(c)を行うことによりそれを極力透過除去し、その残留が少ない程高性能である。そこで透過除去性能評価のため各種材料からなるバインダ4を用いてデバイス1を作製し、下記モデル実験を行った。即ちデバイス1の膜2の上に除去すべき水溶性成分のモデル試料として色素水溶液(アミドブラックの0.1mg/mL水溶液)を点着し、洗浄工程(c)を行った後、膜2に残留した色素を100マイクロリットルの純水を滴下、混合して回収し、回収液の吸光度により色素の残留を評価した。その結果を表1に示した。表1に示す通り、バインダ材料として、でんぷんを主成分とするでんぷん糊(本例では以下を使用。ヤマト株式会社製、製品名:ヤマト糊チューブ入、製品番号:T-N03H、主成分:でんぷん(タピオカ使用)。でんぷん糊としては、でんぷんを煮沸して調製され、その原料でんぷんは焙焼デキストリンの原料と比較して分解程度の低いでんぷんが使用されるものとする。)、ポリビニルアルコールを主成分とするPVA糊(本例では以下を使用。ヤマト株式会社製、製品名:アラビックヤマト、製品番号:NA-150、主成分:PVAL(ポリビニルアルコール、別称PVA)。)、白色デキストリン(本例では以下を使用。日澱化学社製、製品名:赤玉デキストリン No.1-AならびにNo.4-C、主成分:焙焼デキストリン。)、酵素変性デキストリン(本例では以下を使用。日澱化学社製、製品名:PENON PKW、主成分:酵素変性デキストリン。)、カルボキシメチルセルロース(本例では以下を使用。ダイセル化学工業社製、製品名:CMCダイセル3403、主成分:カルボキシメチルセルロースナトリウム)を用いた。さらに、バインダを用いない場合をブランクとした。
Figure 2008136423
表1の左欄はバインダの材料、右欄は回収液中の色素濃度の(元の濃度に対する)比率である。表1から明らかな通り、バインダ4を用いないブランクと比較して、バインダ4を用いた系はおしなべて回収濃度比率が低い、即ち効率的に水溶性成分のみを透過した。また、バインダを用いない場合、膜2と吸収材3の接触が不十分となる場合があることが観察された。バインダは膜2と吸収材3との間の接触を良好に維持し、水溶性成分の透過を促進する。各種バインダ材料のうち、カルボキシメチルセルロース(本実施例ではダイセル化学工業社の(CMC)3403型)と、白色デキストリン(本実施例では日澱化学社のNo.1-A)が最も回収濃度比率が低く、即ち最も良好な透過除去性能を示した。No.1-Aは溶解度50%以上であり、No.4-Cは溶解度が99.99%(30℃)、粘度500cps(50%, 30℃)、還元糖が2.4%であった。両者は製造条件が異なり、No.1-Aは分解度が低く、No.4-Cは分解度が高い、従って前者は高粘性、後者は低粘性を示す。
バインダ4に関する第2の検討として、バインダ4が膜2の裏に若干残留してもATP抽出工程(d)とATP回収工程(e)においてATP抽出液の損失や希釈を極力抑制し、目的とする回収液を膜2上から回収する必要がある。そこで回収性能評価のため上記同様にデバイス1を作製し、下記のモデル実験を行った。即ちデバイス1の膜2の上に純水を滴下して洗浄工程(c)を行った後、吸収材3を分離して膜2とバインダ4を残した。次にATP抽出工程(d)におけるATP抽出液のモデル試料として色素水溶液(アミドブラックの0.1mg/mL水溶液)を点着、混合し、さらにATP回収工程(e)として膜2に残留したモデル試料を回収し、回収液の吸光度により色素の回収効率を評価した。その結果を表2に示した。
Figure 2008136423
表2の左欄はバインダの材料、右欄は回収液中の色素濃度の(元の濃度に対する)比率である。表2から明かな通り、バインダ4を用いないブランクと比較しても、バインダ4を用いた系は回収濃度比率が極端に低下することは無かった。これはバインダの多くが吸収材3と共に除去され、膜2に対するバインダ4の残留が少なかったためと考えられる。即ちバインダを用いる系であっても、ATP抽出液の回収効率を十分高く維持することが可能であった。各種バインダ材料のうち、白色デキストリンNo.1-A(日澱化学社)とNo.4-Cが最も回収濃度比率が高く、即ち最も良好な回収性能を示した。
以上により、バインダ4として白色デキストリンNo.1-Aを用いることにより、夾雑物透過除去効率と、回収性能が共に優れた結果が得られることが判明した。従って実施例1ではバインダ4として白色デキストリンNo.1-Aを用いた。白色デキストリンはでんぷんに酸を加え、加熱分解して得られる焙焼デキストリンの一種であり、特に分解の初期のものを指す。白色デキストリンは主に直鎖分子で構成され、ゲル化力が強く、再湿性接着力、粘結力に優れ、いわゆるでんぷん糊と比較して強い粘着性を示す工業用の接着剤として知られる。表1、表2に示したその他の材料の多くもこの材料に近い性質を具備することから、それらの材料も本発明に好適に利用可能である。バインダ4としては透水性と可逆的接着性を兼備する材料であることを要する。接着剤の分類の観点からは、白色デキストリン等は溶剤蒸発型の水溶性接着剤、特に再活性接着性を有する接着剤に分類され、従って透水性と可逆的接着性を有する。溶液系あるいは溶剤蒸発型、特に水系接着剤あるいは水溶性接着剤に区分され、そのうち再活性接着の特性を有する接着剤が上記の性質をもつため、この範疇に入る接着剤、具体的にはでんぷん糊、アラビアゴム糊、白色デキストリン、カルボキシメチルセルロース(CMC)、PVA糊などがバインダ4の材料として好適に利用可能である。なお白色デキストリンは上述の通りでんぷんに酸を添加し、水分の少ない状態で乾燥により分解した焙焼デキストリンの一種で、特に分解初期の白色の外観を呈するもであるため白色デキストリンと通称される。白色デキストリンは分解の初期のもので、主に直鎖の分子で構成され、ゲル化力が強く、再湿性接着力、粘結力に優れる。関連物質として黄色デキストリンがあり、これは分解をさらに進めたもので、分解が進むにつれて再重合を起こし、多分枝状の分子構造を呈する。黄色デキストリンも焙焼デキストリンの一種であるが、分解後期の黄色の外観を呈するもであるため黄色デキストリンと通称される。一方PENON PKWは日澱化学社の酵素変性デキストリンであり、低粘度、冷水可溶性であり、酵素変性デキストリンの中では高粘度タイプのものである。
本実施例では膜2としてセルロースアセテートおよびニトロセルロースの混合物、即ちセルロース混合エステルを成分とする孔径0.22ミクロンのメンブレンフィルターを用いたが、菌を保持し、水溶性成分を透過する性質を有する膜であればその他各種のフィルターが使用可能である。菌の保持能力の指標としては孔径がある。本発明が測定対象とする菌の大きさの下限は約1ミクロンであるため、本発明には0.5ミクロン以下、好ましくは0.3ミクロン以下の孔径を有する膜が望ましい。また水溶性成分の透過性に関しては膜の湿潤性として特に親水性の材料を用いるものが好適である。親水性膜材料の典型例として本実施例で採用したセルロース混合エステルが挙げられるが、類似の性能を発揮する膜材料として親水性デュラポア(ポリビニリデンフロライド)、ポリカーボネート、親水性PTFE、ナイロンなどが挙げられる。
本実施例の総合性能を以下の方法により評価した。空中浮遊菌のモデル試料を調製する場合、空中浮遊菌の密度の制御が困難で、またエアーサンプラーを用いる捕集工程に由来する誤差が累積する課題が考えられた。そこで代わりに標準菌株(日水製薬社のEasy QA Ball大腸菌10,000cfu)を純水で希釈した懸濁液を調製してモデル試料として用いた。菌捕集工程(a)における気体試料からのエアーサンプラーによるデバイス1への浮遊細菌の捕集工程を、一定量のモデル試料をデバイス1へ点着することにより代用し、以降の工程は本実施例通りに評価実験を行った。比較のために従来法(ATP法)の結果と比較検討した。従来法はキッコーマン社のルシフェールHSキットを用い、慣用される手順で行った。両者による菌数の計測結果の一例を点着した菌数とともに表3に示す。
Figure 2008136423
本実施例による結果は点着菌数が0の場合150CFUとなったことから、本実施例1の検出下限は約200CFUと考えられる。一方、点着した菌数が480CFU以上の場合は点着した菌数とよく一致する結果が得られた。一方従来法においては菌数が0の場合に本実施例と比較して6倍高い正の誤差を生じ、また480CFUの場合は点着した菌数の10倍高い結果となった。また表には平均値を示したが特に従来法の再現性は極めて低く、最小値と最大値の比は5ないし9に及んだ。以上の通り本実施例は従来法と比較して偏りが少なく再現性の高い、高精度な測定結果が得られた。本実施例の方が従来法より高精度だったのは、洗浄工程(c)によりATP消去剤やそれに含まれる各種水溶性の夾雑物を効率よく除去できたため、ATP抽出工程(d)やATP発光計測工程(f)においてATP消去剤や水溶性の夾雑物の影響を受けにくく、高精度な計測が行えたためと考えられる。
以上の通り本実施例は菌以外の水溶性夾雑物を除去でき、ATP回収率が高いため、信頼性の高い菌数計測が行える。さらに本デバイスを用いることにより、夾雑物除去とATP回収を簡便かつ効率的に行うことができる。
図3は、本発明第2の実施例による前処理用のデバイス11の1実施例の断面図である。デバイス11は上部部材12と下部部材13の2つの部材から構成される。上部部材12は第1膜たる膜2と第1接合部材たるバインダ4,下部部材13は第2接合部材たるバインダ4と第2膜たる吸収材3とから構成される。ここで、第1接合部材は第1膜の第2膜と対向する面に配置され、第2接合部材は第2膜の第1膜と対向する面に配置される。膜2、吸収材3、バインダ4の各材料としてはそれぞれ実施例1と同じ材料を使用した。
デバイス11の製作法、特に実施例1との相違点について説明する。上部部材12は、膜2の背面にバインダ4の材料である白色デキストリン 1-A水溶液を塗布し、一晩乾燥することにより形成した。下部部材13は、オートクレーブした白色デキストリン 1-A水溶液を吸収材3に塗布し、一晩乾燥することにより形成した。
図4は、前処理装置21の1実施例の構成を示すブロック図である。22はデバイス11の上部部材(12)用ホルダ、23は下部部材(13)用ホルダ、24はATP消去剤用分注器、25は洗浄用分注器、26はATP抽出試薬用分注器、27はATP回収用ピペッタ、28は試験管ホルダ、29は制御装置、30は滅菌装置、31は空気清浄装置である。上部部材用ホルダ22,下部部材用ホルダ23、試験管ホルダ28はそれぞれ上部部材、下部部材、試験管(図示省略)を設置可能であり、またそれぞれ搬送機構を備え、各ホルダを所定の位置に搬送可能である。32は上部部材用ホルダ用の搬送機構,33は下部部材用ホルダ用の搬送機構である。またATP消去剤用分注器24、洗浄用分注器25、ATP抽出試薬用分注器26、ATP回収用ピペッタ27はそれぞれ制御装置29からの制御信号により自動的に分注やピペッティング動作を行う機構を備える。
デバイス11と前処理装置21を用いた実施例2の動作を説明する。本実施例2の動作は基本的に実施例1と同様であるが、図2における(b)のATP消去工程から(e)のATP回収工程までの工程を前処理装置21を用いて自動で行う点、並びにデバイス11が上下の2つの部材に分かれた構成となっており、前処理装置21が必要に応じて両者を接合、解離する点が主要な相違点である。 本実施例2では前処理装置21の使用開始に先立ち、滅菌装置30を用いてその内部を滅菌し、また空気清浄装置31を用いてその内部のオゾンガス(滅菌装置30として紫外線滅菌装置を用いた場合)や目的外の微粒子を除去しつつ使用した。
本実施例2では(a)の菌捕集工程に実施例1と同じエアーサンプラーを用いて、デバイス11の上部部材12の膜2の上に気体試料中の微粒子を捕集した。この上部部材12を前処理装置21の上部部材用ホルダ22に、また下部部材13を下部部材用ホルダ23にそれぞれ無菌的に設置した。以降(b)のATP消去工程から(e)のATP回収工程までの工程を自動的に行った。またその以外の工程は基本的に無菌的に行った。
(b)のATP消去工程に先立ち、上部部材12を設置したまま上部部材用ホルダ22をATP消去剤用分注器24の下方の位置に搬送した。次に実施例1におけるデバイス1の代わりに、デバイス11の上部部材12に対して(希釈)ATP消去剤を滴下し、ATP消去反応を室温で30分間行った。ATP消去剤の滴下はATP消去剤用分注器24を用いて行った。ATP消去剤は膜2へ浸透し、さらに膜2の上の微粒子へ浸透した。これにより微粒子のうちの死菌中のATPなど、生菌以外に含まれるATPが分解された。また、生菌以外の微粒子に含まれる水溶性成分がATP消去剤に溶解した。(この水溶性成分などを含む)ATP消去剤の一部は膜2の下の面を通してバインダ4に浸透した。バインダ4は徐々に吸水した。
(c)の洗浄工程に先立ち、上部部材12を設置したまま上部部材用ホルダ22を上部部材用ホルダ用の搬送機構32を用いて洗浄用分注器25の下方の位置に搬送して鉛直方向に固定し、また下部部材13を設置したまま下部部材用ホルダ23を下部部材用ホルダ用の搬送機構33を用いて上部部材用ホルダ22の方向に搬送することにより、下部部材13を上部部材12に圧接した。これにより上部部材12の吸水したバインダ4が下部部材13のバインダ4と接触し、上部部材12のバインダ4が吸収したATP消去剤の一部は下部部材13のバインダ4に浸透し、上下部材のバインダ4は均一に混合した。下部部材13のバインダ4に浸透したATP消去剤の一部はさらに吸収材3に浸透した。次に洗浄用分注器25を用いて滅菌水0.2mLを2回に分けて膜2上に滴下した。滴下した滅菌水は膜2、バインダ4、吸収材3の順に浸透した。約1分後、下部部材用ホルダ23を上部部材用ホルダ22と反対の方向に搬送し、吸収材3とバインダ4の一部からなる下部部材13を、膜2とバインダ4の一部からなる上部部材12から取り外した。以降の工程では上部部材12のみを用いた。この洗浄工程により工程(b)、工程(c)で膜2上に存在した水溶性成分(ATP消去剤を含む)は吸収材3とバインダ4の一部からなる下部部材13とともに除去され、以降の工程への影響が回避された。
(d)のATP抽出工程、(e)のATP回収工程はそれぞれATP抽出試薬用分注器26、ATP回収用ピペッタ27を用いて同様に行った。並行して、実施例1と同様にATP発光液0.2mLを含む試験管をルミノメータに設置して予めベースラインを測定し、測定を終えた試験管を試験管ホルダ28に設置した。ATP回収用ピペッタ27を用いてATP回収液0.01mLを回収して試験管に追加注入した。試験管を無菌的に前処理装置21から取り出し、混合後、実施例1と同様に (f)のATP発光計測工程のサンプルとしてルミノメータを用いて発光量を測定した。以降実施例1と同様の手順により体積当たりの空中浮遊菌の平均生菌数を求めた。
本実施例2では前処理装置21とルミノメータを独立の装置として説明したが、もちろん両者を一体化し、さらに微生物捕集用の1穴式エアーサンプラーと組合せて空中浮遊菌の自動計測システムを構成することも可能である。また本実施例はデバイスとATP法の試薬を独立に説明したが、両者をあわせたキットとして利用者に供給することも可能であり、それにより利用者の利便性が向上する。
本実施例2の総合性能を前記実施例1と同様に評価し、結果の一例を表4に示した。
Figure 2008136423
なお前述の通り従来例は計測値の誤差が大きかったためその評価は省略した。点着菌数が0ないし10の範囲で本実施例による結果が8ないし10CFUとなったことから、本実施例の検出下限は約10CFUと考えられる。また点着菌数が72CFUに対し本実施例による結果は67CFUとよく一致したことから、概ね50CFU以上の菌数については精度良く計測可能と考えられる。以上の通り本実施例は特に菌数が少ない場合において実施例1と比較して検出下限が低く高感度であった。本実施例2と実施例1の最大の相違点は前処理工程の自動化の有無にあるため、本実施例2の方が実施例1より検出下限が低い理由は、操作者等由来のコンタミネーションを防止できたためである。自動化に伴うその他の効果として、簡便化、省力化、人為ミスの防止、再現性の向上などが挙げられる。また前処理デバイスがATP消去工程までは分割して設置されるという特有の構成も有するため、ATP消去工程においてATP消去剤が吸収材3に浸透しないため、ATP消去反応を促進できる効果もある。
即ち実施例2は実施例1と同様の効果に加えて、前処理工程の自動化と、デバイスの分割設置という構成により、高感度化、簡便化、省力化、人為ミスの防止、再現性の向上、 ATP消去反応の促進、などの特有の効果がある。
図5は、本発明第3の実施例による前処理用のデバイス41の1実施例の断面図である。デバイス41は上部部材42と下部部材43の2つの部材から構成される。上部部材42は第1膜たる膜2と支持リング44,下部部材43は第2膜たる吸収材3と支持板45とから構成される。膜2としてはミリポア社のメンブレンフィルター、GSWP04700(フィルター直径47mm)を用いた。吸収材3の材料としては実施例2と同じ材料を使用したが、使用量を複数枚数、具体的には5倍(5枚)に増やした。支持リング44の内径は37mmであり、吸収材3の直径25mmより大きい。支持リング44の外径は膜2の外径47mmと同じとした。支持リング44の厚みは、5枚の吸収材3の厚みより十分に薄かった。
本実施例3によるデバイス41の製作法、特に実施例2との主な相違点について説明する。上部部材42は、膜2の背面に支持リング44を接着して形成した。下部部材43は、吸収材3を支持板45接着して形成した。上下両部材ともオートクレーブ滅菌して使用した。
デバイス41と前処理装置21を用いた実施例3の動作を説明する。本実施例3の動作は基本的に実施例2と共通であるが、デバイス41の上下の2つの部材を接合する際にバインダを用いず、機械的な圧接を用いる点が主要な相違点である。以下相違点のみ詳細に説明する。
(c)の洗浄工程に先立ち、上部部材42を設置したまま上部部材用ホルダ22を洗浄用分注器25の下方の位置に搬送し、また下部部材用ホルダ23を上部部材用ホルダ22の方向に搬送し、下部部材13を上部部材12に圧接した。この際、吸収材3の厚みが支持リング44のそれより厚いため、吸収材3は支持リング44の内部の空隙を通過して膜2の背面に圧接した。これにより上部部材42上のATP消去剤の一部は下部部材43の吸収材3に浸透した。次に洗浄用分注器25を用いて滅菌水1mLを5回に分けて膜2上に滴下した。滴下した滅菌水は膜2、吸収材3の順に浸透した。約1分後、下部部材用ホルダ23を上部部材用ホルダ22と反対の方向に搬送し、吸収材3と支持板45からなる下部部材43を、膜2と支持リング44からなる上部部材42から取り外した。以降の工程では上部部材42のみを用いた。この洗浄工程により工程(b)、工程(c)で膜2上に存在した水溶性成分(ATP消去剤を含む)は吸収材3を含む下部部材13とともに除去された。
本実施例3は実施例2と比較してバインダ4を用いない。しかし吸収材3の使用量を増大し、また支持リング44,支持板45を用いて圧接に耐える機械的強度を膜2と吸収材3に付与する構成上の改善を行うと共に、十分な量の洗浄用の純水を用いて洗浄工程を念入りに行う工程上の改善を行うことにより、前記課題の影響を最小限に留めて夾雑成分の透過除去を実現できる。
本実施例は、デバイス作製におけるバインダ材料の調製と塗布、乾燥の工程が不要であり、製造工程が短縮し、コストが低減するメリットを有する。またバインダの性能の保存安定性などを検証する必要がない、という効果もある。
図6は、本発明第4の実施例による前処理用デバイス51の1実施例の断面図である。デバイス51は上部部材52と下部部材53の2つの部材から構成される。上部部材52は第1膜たる膜54と支持リング44,下部部材53は第2膜たる吸収材3と支持板45とから構成される。膜54としてはミリポア社の周縁疎水性メンブレンフィルター、HAEP047SWを用いた。このメンブレンフィルターの中央部分55は実施例1ないし3で用いたものと同様MFタイプのフィルターであり、孔径0.45ミクロン、フィルター直径47mmの円盤状である。この周縁疎水性フィルターはその周縁部分56が6mm幅で疎水性になっている点が、実施例1ないし3で用いた(全面的に親水性の)膜2と異なる。即ち、膜54はその中央部分55が親水性、またその周縁部分56が疎水性である。吸収材3や支持リング44,支持板45としては実施例3と同じものを使用した。
本実施例4によるデバイス51は実施例3と同様に製作した。即ち、膜54と支持リング44は膜周縁部の疎水性部分においてのみにおいて接着し、膜54の中央部分55、即ち親水性の領域は支持リング44と直接接触しない構造とした。
デバイス51と前処理装置21を用いた実施例3の動作を説明する。本実施例3の動作は基本的に実施例3と共通であるが、デバイス51として周縁部が疎水性の膜54を用いる点が主要な相違点である。以下相違点のみ詳細に説明する。
ATP抽出工程(d)を含む各工程において、膜54上に各種水溶液を滴下する際、膜54の周縁部分56即ち疎水性領域を避けて、中央部分55即ち親水性領域に滴下した。各種水溶液は膜54の中央部分55即ち親水性領域内、あるいは液量が多い場合は表面張力により中央部分55の上方に盛り上がった状態で保持され、周縁部分56即ち疎水性部分には浸透しなかった。従って本実施例4によるATP回収工程(e)において回収すべき水溶液は中央部分55、即ち限定された面積内に局在し、90%以上の体積回収率で回収することが可能であった。
一方実施例3においては膜2は支持リング44の接着面を含む全ての領域が親水性であるため、水溶液は膜2の全面に渡って浸透、拡散し、さらに保持リング44との接着部を経由して保持リング44との境界部分にわずかに染み出す可能性がある。本実施例4は体積回収率を最大化し、超高感度分析や自動制御条件の裕度確保のために抽出したATPの回収効率を最大化でき、高感度な計測を簡便迅速に行える効果がある。
本発明によるデバイスは、菌を保持しつつ菌以外の夾雑物を除去でき、ATP回収率が高いため、信頼性の高い菌数計測が行える。また本デバイスを用いることにより夾雑物除去とATP回収を簡便かつ効率的に行うことができるため、菌数の自動計測にも好適に適用できる。
デバイス1の構成の概略を示した断面図である。(実施例1) デバイス1を用いた菌数の計測手順の概略を示した説明図である。(実施例1) デバイス11の構成の概略を示した断面図である。(実施例2) 前処理装置21の構成を示したブロック図である。(実施例2) デバイス41の構成の概略を示した断面図である。(実施例3) デバイス51の構成の概略を示した断面図である。(実施例4)〔表1〕夾雑物を含む水溶性成分の透過除去性能に関し、バインダ4の種類による影響を比較した表である。(実施例1)〔表2〕目的とする回収液の回収性能に関し、バインダ4の種類による影響を比較した表である。(実施例1)〔表3〕本発明、並びに従来例による菌数の計測結果の一例を比較した表である。(実施例1)〔表4〕本発明による菌数の計測結果の一例を比較した表である。(実施例2)
符号の説明
1…デバイス、2…膜、3…吸収材、4…バインダ、11…デバイス、12…上部部材、13…下部部材、21…前処理装置、22…上部部材用ホルダ、23…下部部材用ホルダ、24…ATP消去剤用分注器、25…洗浄用分注器、26…ATP抽出試薬用分注器、27…ATP回収用ピペッタ、28…試験管ホルダ、29…制御装置、30…滅菌装置、31…空気清浄装置、32…上部部材用ホルダ用の搬送機構、33…下部部材用ホルダ用の搬送機構、41…デバイス、42…上部部材、43…下部部材、44…支持リング、45…支持板、51…デバイス、52…上部部材、53…下部部材、54…膜、55…膜54の中央部分、56…膜54の周縁部分5、(a)…菌捕集工程、(b)…ATP消去工程、(c)…洗浄工程、(d)…ATP抽出工程、(e)…ATP回収工程、(f)…ATP発光計測工程。

Claims (15)

  1. 孔径1ミクロン以下の微細孔を有する親水性の第1膜と、
    前記第1膜と対面する吸水性の第2膜を
    着脱可能に組み合わせて構成される検査用キット。
  2. 親水性の第1膜と、
    前記第1膜と対面する吸水性の第2膜と、
    前記第1膜と前記第2膜とを接合し、透水性を有する接合部材とを有する検査用キット。
  3. 前記第1膜は、孔径1ミクロン以下の微細孔を有することを特徴とする請求項2に記載の検査用キット。
  4. 前記接合部材は、透水性と可逆的接着性を有することを特徴とする請求項2に記載の検査用キット。
  5. 前記第1膜は、生物学的に不活性なセルロースアセテートおよびニトロセルロースの混合物を含むことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の検査用キット。
  6. 前記第1膜は、セルロース混合エステルを含むことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の検査用キット。
  7. 前記第2膜は、セルロースを含むことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の検査用キット。
  8. 前記接合部材は、でんぷん糊、PVA糊、白色デキストリン、酵素変性デキストリン、カルボキシメチルセルロースのいずれかを含むことを特徴とする請求項2に記載の検査用キット。
  9. 前記接合部材は、溶剤蒸発型接着剤であることを特徴とする請求項2に記載の検査用キット。
  10. 前記接合部材は、前記第1膜の前記第2膜と対向する面に配置された第1接合部材と、前記第2膜の前記第1膜と対向する面に配置された第2接合部材とを具備することを特徴とする請求項2に記載の検査用キット。
  11. 前記第1膜と接して設けられる支持部材と、前記第2膜と接して設けられる支持板とをさらに有し、前記支持部材は前記第2膜に対向して設けられることを特徴とする請求項1に記載の検査用キット。
  12. 前記第1膜の周縁部は疎水性であることを特徴とする請求1に記載の検査用キット。
  13. 親水性の第1膜と、前記第1膜と対面する吸水性の第2膜と、前記第1膜と前記第2膜とを接合し、透水性を有する接合部材とを具備する分析部と、
    前記分析部へATP消去試薬を供給する第1供給部と、
    前記分析部へATP抽出試薬を供給する第2供給部と、
    前記分析部について光学検出を行う検出部とを有する分析システム。
  14. 前記分析部は、前記第1膜を保持する第1ホルダと、前記第2膜を保持する第2ホルダとを具備することを特徴とする請求項13に記載の分析システム。
  15. 親水性の第1膜の第1面へ試料を供給する工程と、
    前記第1膜の第1面へATP除去試薬を供給する工程と、
    前記第1膜の第2面へ、接合部材を介して吸水性の第2膜を接合する工程と、
    前記接合する工程の後に、前記第1膜から前記第2膜を乖離する工程と、
    前記第1膜の第1面へATP抽出試薬を供給する工程とを有する分析方法。
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