本実施形態で用いられるトナーは、トナーの1粒1粒が異なる波長の光で露光されると、該波長に応じた色に発色する、あるいは発色しない(非発色)状態を維持する機能を有している。すなわち、トナーがその内部に光による発色情報の付与により発色可能な発色性物質(さらにはこれを含む発色部)を有しており、前記光による発色情報の付与により、トナーが発色又は非発色の状態を維持するように制御されるものである。
ここで、前記「光による発色情報の付与」とは、トナー像を構成する個々のトナー粒子単位で発色/非発色状態や発色した際の色調を制御するために、トナー像の所望の領域に対して選択的に1種類以上の特定波長の光を付与する、あるいは、何らの光を付与しないことを意味する。なお、トナーの構成材料等の詳細については後述する。
さて、このようなトナーを用いた画像形成装置では、トナーを1つの現像器に搭載し、シアン(C)、マゼンタ(M)、イエロー(Y)及び黒(K)の4つの色の画像形成情報の論理和で像保持体上に静電潜像を形成し、該静電潜像を該トナーで現像してトナー像を形成した後、色情報に応じた波長の光で該トナー像を露光して該トナー像に発色情報を付与する。その後、発色情報を付与された前記トナー像が記録媒体に転写され、その後熱と圧力により記録媒体に定着される。この時、前記熱によりトナーの発色反応が行なわれることで、フルカラー画像が得られる。
したがって、1つの像保持体と1つの現像器でフルカラー画像を得ることができるので、画像形成装置の大きさは限りなくモノクロプリンタ並みの大きさに近づくこととなり、画像形成装置の小型化が可能となる。これに加えて、トナー像の形成に際して色毎にトナーを積層する必要がないために画像表面の凸凹が抑制でき、画像表面の光沢を均一にすることができ、更に、トナーに顔料等の着色剤を使わないため、銀塩ライクな画像を得ることも可能である。
つぎに、本発明にかかる第一実施形態の画像形成装置01について説明する。
図1は、画像形成装置01を示す概略構成図である。図1に示す画像形成装置01は、通常の電子写真プロセスに用いる感光体(像保持体)10、帯電装置(帯電手段)12、露光装置(露光手段)14、現像器(現像手段)16、転写装置(転写手段)18、定着装置(定着手段)22、クリーナ20を備えている。また、現像後のトナー像に発色情報を付与する発色情報付与装置28も備えている。なお、定着装置22はトナー像を発色させる発色装置(発色手段)を兼ねている。更に、定着装置22の下流側にはトナーの発色を固定化するための記録用紙(被転写体)26への光照射を行なう光照射装置(光照射手段)24が設けられている。
つぎに、画像形成装置01の構成を、画像形成における各工程に沿って説明する。
<トナー像形成工程>
まず、回転軸Gを軸心として回転する感光体10の表面全面を帯電装置12によって帯電させる。ついで、露光装置14によって、矢印Aのように感光体10を露光し、静電潜像を形成する。そして、静電潜像を、現像器16の現像ローラ17上に形成したトナー層Sによって現像し、感光体10上にトナー像Tを形成する。なお、このとき、トナー像Tにおいて、後述する発色情報付与のための光が照射された部分全体に行き渡らなければならないため、トナー層厚は一定以下に抑えることが好ましい。具体的には、例えば、ベタ画像においてトナー層は3層以下であることが好ましく、2層以下であることがより好ましい。なお、上記トナー層厚は、実際の感光体10表面に形成されたトナー像Tの層厚を測定し、これをトナーの個数平均粒径で除した値である。
なお、帯電装置12には公知の帯電手段が使用できる。接触方式である場合は、ロール、ブラシ、磁気ブラシ、ブレード等が使用でき、非接触の場合は、コロトロン、スコロトロン等が使用できる。なお、帯電手段としてはこれらに限られるものではない。
また、感光体10としては、公知のいかなるものも用いることができる。例えば、導電性基体上にSe、a−Si等の無機の感光層、あるいは単層若しくは多層の有機感光層を形成したもの等である。また、ドラム状でなくベルト状の感光体の場合は、基体としてPET、PC等の透明樹脂が使用でき、その厚みはベルト状の感光体を張架するロールの径、張力等の設計事項から決められ、おおよそ10〜500μm程度の範囲である。その他の層構成等はドラムの場合と同様である。
更に、感光体10の表面には、次工程における発色情報付与(詳細は後述する)のための露光による感光体10の劣化を防止する機能を持たせることが好ましい。具体的には、感光層の表面に潜像形成のための露光光のみ透過し、発色情報付与のための露光光を反射する若しくは吸収する表面層を設けることが有効である。該表面層としては、ダイクロイックミラーコート(反射)、光吸収物質を分散したシャープカットフィルター(吸収)などを挙げることができる。
また、静電潜像の形成には公知の露光装置14が使用できる。露光装置14としては、例えば、レーザスキャニングシステム、LEDイメージバーシステム、アナログ露光手段を用いることができる。また、これら以外にも今後開発される新規な露光手段が本発明の効果を達成する限り使用できる。
また、静電潜像に対する現像には、公知の現像器16が使用できる。例えば、現像法としては、キャリアと呼ばれるトナーを担持するための微小磁性粒子とトナーとからなる二成分現像法、又はトナーのみからなる一成分現像法、またこれらの現像法において、更に、現像その他の特性改善のために別の構成物質が添加される場合もある全ての現像方法が使用できる。
また、像保持体へ現像剤が接触、又は非接触で現像を行なうもの、あるいはそれらの組み合わせのいずれもが使用可能である。更に、前記一成分現像法と二成分現像法とを組み合わせたハイブリッド現像方法も使用可能である。
更に、これら以外、例えば、今後開発される新規な現像手段及び現像方法であっても、本発明の効果を達成する限り用いることができる。
また、現像剤に含まれるトナーとしては、例えば、Y色に発色可能な発色部(Y発色部)、M色に発色可能な発色部(M発色部)及びC色に発色可能な発色部(C発色部)を1つのトナー粒子中に含むものであってもよいし、前記Y発色部、M発色部、C発色部を各々トナーごとに別々に含むものであってもよい。
<発色情報付与工程>
感光体10上に形成されたトナー像Tに対して、発色情報付与装置28により、矢印Bのような光による発色情報が付与される。ここで、「光による発色情報の付与」とは、トナー像Tを構成する個々のトナー粒子単位で発色/非発色状態や発色した際の色調を制御するために、トナー像の所望の領域に対して選択的に1種類以上の特定波長の光を付与する、あるいは、何らの光を付与しないことを意味する。
発色情報付与工程は、少なくとも後述する定着工程の前であればよく、例えば発色情報付与工程は後述する転写工程の後でもよい。ただし、発色情報付与のための露光が転写後の場合、記録用紙表面の平滑性や所望画像の発色位置精度の正確性から、現像工程後転写工程前に行われることが画像品質の上で望ましい。
なお、この段階ではトナー像は未発色の本来の色調のままであり、トナー像は、例えば色素増感されていればその色素の色調を帯びているに過ぎない。
発色情報付与装置28としては、発色させるトナー粒子が特定色に発色するための波長の光を所定の解像度と強度とで照射することができるものであれば何でもよい。例えば、LEDイメージバー、レーザスキャニングシステム等を使用することが可能である。なお、トナー像Tに照射される光の照射スポット径は、形成される画像の解像度が100〜2400dpiの範囲となるよう、10〜300μmの範囲となるように調整されることが好ましく、20〜200μmの範囲とすることがより好ましい。
発色あるいは非発色状態維持のために供される光の波長は、使用されるトナーの材料設計により決まるが、例えば、特定波長の光照射により発色するトナー(光発色型トナー)を用いる場合、イエロー(Y色)に発色させるときは405nmの光(λA光とする)を、マゼンタ(M色)に発色させるときは535nmの光(λB光とする)を、シアン(C色)に発色させるときは657nmの光(λC光とする)を、その発色させる所望の位置にそれぞれ照射する。
また、二次色に発色させる時には、前記光の組み合わせになり、レッド(R色)に発色させる時はλA光及びλB光を、グリーン(G色)に発色させる時はλA光及びλC光を、ブルー(B色)に発色させる時はλB光及びλC光を、その発色させる所望の位置にそれぞれ照射する。さらに、三次色であるブラック(K色)に発色させるときは上記λA光、λB光及びλC光をその発色させる所望の位置に重ねて照射する。
一方、特定波長の光照射により非発色状態を維持するトナー(光非発色型トナー)の場合には、例えば、イエロー(Y色)を発色させないようにするときは405nmの光(λA光)を、マゼンタ(M色)に発色させないようにするときは535nmの光(λB光)を、シアン(C色)に発色させないようにするときは657nmの光(λC光)を、その発色させる所望の位置にそれぞれ照射する。したがって、Y色に発色させる時はλB光及びλC光を、M色に発色させる時はλA光及びλC光を、C色に発色させる時はλA光及びλB光を、その発色させる所望の位置にそれぞれ照射することとなる。
また、二次色に発色させる時には、前記光の組み合わせになり、レッド(R色)に発色させる時はλC光を、グリーン(G色)に発色させる時はλB光を、ブルー(B色)に発色させる時はλA光を、その発色させる所望の位置にそれぞれ照射する。さらに、三次色であるブラック(K色)に発色させるときは、その発色させる所望の位置には露光しないようにする。
発色情報付与装置28からの光は、必要に応じてパルス巾変調、強度変調、これら2つを組み合わせたものなど、公知の画像変調方法が使用可能である。また、光の露光量は0.05〜0.8mJ/cm2の範囲とすることが好ましく、0.1〜0.6mJ/cm2の範囲とすることがより好ましい。特にこの露光量に関しては、必要露光量は現像されたトナーの量と相関があり、例えば、トナー現像量(べた)が約5.5g/m2に対し0.2〜0.4mJ/m2の範囲の露光を行うことが好ましい。
なお、本実施形態では、発色情報付与工程は、フルカラー画像形成を行う場合について説明しているが、発色情報付与工程は、イエロー、マゼンタ、シアン及びブラックのうちのいずれかを発色させるモノカラー画像形成のための発色情報付与工程であってもよい。この場合は、発色情報付与装置28からは、前記イエロー、マゼンタ、シアン及びブラックのうちの、所望の発色に対応する特定波長の光のみを照射する。
さて、感光体10上に形成されたトナー像(トナー層)Tを発色情報付与のための露光光により露光をする場合、約10〜50%程度の光は、トナーそのものや、トナー層の隙間を抜けて、感光体10に到達する。従って、到達した光を反射手段で反射させ再び前記トナーを露光すれば、多層に現像されたトナー像Tを図における下層側から露光することが可能となり、十分な発色情報付与露光がトナーに対して行なわれ、その結果十分な発色が得られ、画像における色味を所望のものとすることができる。
一例として、図18に、発色情報付与露光時のトナー像を保持した感光体10の断面を示す。感光体10上に形成されたトナー像(トナー層)Tを発色情報付与のための露光光(図中の矢印L)により露光をする場合、約10〜50%程度の光は、トナーそのものや、トナー層の隙間を抜けて、感光体10に到達する。従って、図におけるl1〜l3のように、前記到達した光を反射層94で反射させ再び前記トナーを露光すれば、多層に現像されたトナー像Tを図における下層側から露光することが可能となり、十分な発色情報付与露光がトナーに対して行なわれ、その結果十分な発色が得られ、画像における色味を所望のものとすることができる。
前記露光光を反射する反射層94としては、感光体10における感光層そのものがその機能を有してもいいし、感光体10における基体がその機能を有していてもよい。前者の感光層が反射手段を有する例としては、前記感光層の表面に設けられる表面層を鏡面とすることが挙げられ、表面層としてはダイクロイックミラーコートなどを用いることが好ましい。また、後者の基体そのものを反射手段とするには、基体表面を滑らか(JIS B 0601に記載の算術平均粗さRaで12.5μm以下)とすることが好ましい。
上記反射層94を設けた場合の露光光の反射率は80%以上とすることが好ましく、90%以上とすることがより好ましい。
なお、この時の露光光がレーザ光である場合、レーザビームの感光体入射に関しては、レーザにおけるモニター(Photo Detector)への戻り光防止のために、通常数度(4度〜13度)傾ける必要があるが、本発明における発色情報付与露光の際は、戻り光がトナーにより吸収されるので、戻り光が極端に少なくなり、0度を含む任意の角度に入射させることができる。
<転写工程>
発色情報を与えられたトナーは、その後一括して記録用紙26に転写される。なお、記録用紙26に転写されず感光体10の残った残留トナーは、クリーナ20によって除去さされる。
転写装置18としては公知の転写装置が使用できる。例えば、接触方式である場合は、ロール、ブラシ、ブレード等が使用でき、非接触方式の場合は、コロトロン、スコロトロン、ピンコロトロン等が使用できる。また、圧力、若しくは圧力及び熱による転写も可能である。
<定着工程及び発色工程>
こうして発色(あるいは非発色状態維持)可能な状態におかれたトナー像は、記録用紙26が定着装置22によって加熱されることで記録用紙26に定着すると共に発色がなされる。なお、本実施形態では、定着装置22が発色工程と定着工程とを兼ねているが、発色工程は定着工程と別に設けられていてもよい。
定着装置22としては公知の定着手段が使用できる。例えば、加熱部材及び加圧部材としてロール、ベルトのそれぞれが選択可能であり、熱源としては、ハロゲンランプ、IH等が使用可能である。その配置も、種々の紙パス、例えばストレートパス、リアCパス、フロントCパス、Sパス、サイドCパス等に対応可能である。
<その他の工程>
定着、発色工程を経て得られた画像に光を照射する光照射工程を含むことが好ましい。これにより発色不可能な状態に制御された発色部中に残存する反応性物質を分解又は失活させることができるため、画像形成後のカラーバランスの変動をより確実に抑制したり、バックグランド色の除去・漂白を行ったりすることができる。このような光照射装置24としては、トナーの発色をこれ以上進めないようにすることができれば特に制限されず、公知のランプ、例えば、蛍光灯、LED、EL等が使用できる。
<プロセスカートリッジ>
つぎに、画像形成装置01の装置本体02に着脱自在に装着されるプロセスカートリッジ100について説明する。
本実施形態では、感光体10、帯電装置12、現像器16、クリーナ20を一体的に構成したプロセスカートリッジ100が、装置本体02のカートリッジ着脱用カバー04を開閉することで、装置本体02に対して着脱自在に装着される構成となっている。なお、このような構成とすることで、各種メンテナンス作業を容易に行なうことができる。
図2と図3に示すように、プロセスカートリッジ100は、感光体10、帯電装置12、現像器16、クリーナ20を収容するハウジング102を有している。また、ハウジング102には、露光装置14(図1参照)から射出される光を通過するための露光用開口部104、発色情報付与装置28(図1参照)から射出された光が通過するための発色情報付与用開口部106、発色情報が付与されたトナー像T(図1参照)を記録用紙26に転写するための転写用開口部108を備えている。なお、プロセスカートリッジ100のハウジング102は、これら露光用開口部104、発色情報付与用開口部106、転写用開口部108以外には、開口や隙間などはなく、これら露光用開口部104、発色情報付与用開口部106、転写用開口部108以外からは、プロセスカートリッジ100の内部に光が入ることはない。
そして、これらの露光用開口部104、発色情報付与用開口部106、転写用開口部108を、それぞれ露光用開閉カバー204、発色情報付与用開閉カバー206、転写用開閉カバー208が開閉する。
露光用開閉カバー204、発色情報付与用開閉カバー206、転写用開閉カバー208は、プロセスカートリッジ100を装置本体02から取り外された状態では、それぞれ付勢手段によって閉止方向に付勢され、閉じた状態を維持する。
しかし、露光用開閉カバー204、発色情報付与用開閉カバー206、転写用開閉カバー208は、装置本体02のカートリッジ着脱用カバー04を開いてプロセスカートリッジ100を装置本体02に装着したのち、カートリッジ着脱用カバー04が閉じられると、自動的に開くようになっている。更に、ジャム処理やプロセスカートリッジ100の着脱のために、装置本体02カートリッジ着脱用カバー04が開けられると、或いは、開けようとカートリッジ着脱用カバー04の取手(図示略)などを持つと、自動的に閉じるようになっている。つまり、プロセスカートリッジ100が外光に曝された状態では、露光用開閉カバー204、発色情報付与用開閉カバー206、転写用開閉カバー208は、必ず閉じた状態となる。
なお、本実施形態では、プロセスカートリッジ100の露光用開閉カバー204、発色情報付与用開閉カバー206、転写用開閉カバー208の開閉は、装置本体02に設けられたカバー開閉機構(図示略)によって行なわれる。なお、カバー開閉機構は、どのようなものであっても良い。例えば、カートリッジ着脱用カバー04の開閉に連動し、モータなどの駆動手段を用いて開閉させる機構などである。
さて、プロセスカートリッジ100は、露光用開閉カバー204、発色情報付与用開閉カバー206、転写用開閉カバー208が閉じられると、ハウジング102と協調して、遮光効果を生じせしめる遮光手段を備えている。よって、外光がハウジング102と各開閉カバーとの隙間から各開口部を介してプロセスカートリッジ100の内部に入り、収容したトナー(例えば、現像ローラ17上のトナー層S)が外光によって光暴露され、所望の色が得られなくなることが防止されている。
なお、ハウジング102と露光用開閉カバー204、発色情報付与用開閉カバー206、転写用開閉カバー208とが協調してとは、ハウジング102と露光用開閉カバー204、発色情報付与用開閉カバー206、転写用開閉カバー208とが組み合わされることにより、遮光機能を発現されるように、あるいは、遮光機能を高めるようにハウジング102と露光用開閉カバー204、発色情報付与用開閉カバー206、転写用開閉カバー208とが構造設計されていることを指す。
つぎに、遮光手段の具体例について説明する。なお、転写用開口部108と転写用開閉カバー208とで代表して説明する。また、感光体10の回転軸Gの軸方向を「軸G方向」と記す。また、転写用開閉カバー208が転写用開口部108を閉じる方向(閉止方向)を「K1方向」、開く方向(開放方向)を「K2方向」と記す。
まず、転写用開閉カバー208について詳しく説明する。
図4と図5とに示すように、転写用開閉カバー208は、軸G方向と同方向の支持軸210、211を軸心として回転することで、ハウジング102の底面部分に沿って、軸G方向と直交する方向(K1方向、K2方向)にスライドすることで、転写用開口部108を開閉する。なお、本実施形態では、回転軸Gが支持軸210、211を兼ねている。
転写用開閉カバー208は、軸G方向の両側の端部の隅部からプロセスカートリッジ100の側面の支持軸210,211に向かって延びる各二本、合計四本の腕部212、213、216、217によって支持されている。腕部212と腕部213、及び腕部216と腕部217、とは、支持軸210、211部分で四角形状の支持部220、222で一体化されている。そして、付勢手段としてのねじりバネ224が支持部220をK1方向に付勢することで、転写用開閉カバー208がK1方向(閉止方向)に付勢されている。よって、プロセスカートリッジ100を装置本体02から取り外した状態においては、転写用開閉カバー208が容易に開かないようになっている。
つぎに、図5に示す、軸G方向に沿った端部208A,208Bの遮光手段について説明する。
図2、図3、図6(a)に示すように、転写用開口部108のK1方向(閉止方向)の外側には、軸G方向と直交する断面がコ字形状の凹形状部302が形成されている。凹形状部302はK2方向(開放方向)が開口している(図では、左側が開口)。そして、図2と図6(a)とに示すように、閉止状態において、この凹形状部302の中に転写用開閉カバー208の閉止側(K1方向側)の端部208Aが入ることで、ハウジング102と転写用開閉カバー208との隙間からの光の入り込みが防止される構成となっている。つまり、凹形状部302に端部208Aが入ることで、遮光性が高められている。
なお、図6(b)と図6(c)とに示すように、凹形状部302の内側や転写用開閉カバー208の端部208Aにスポンジやゴム等からなる弾性部材303、203を配設し、凹形状部302と端部208Aとの隙間(嵌合部分の隙間)を埋める構成とすることで、更に遮光性が高められる。
更に、図2、図3、図7に示すように、ハウジング102には、転写用開口部108のK2方向の外側には、軸G方向と直交する断面がコ字形状の凹形状部304が形成されている。凹形状部304もK2方向側が開口している(図では、左側が開口)。更に、転写用開閉カバー208のK2方向側の端部208Bにも、軸G方向と直交する断面がコ字形状の凹形状部209が形成されている。凹形状部209はK1方向側が開口している(図では、右側が開口)。そして、図2と図7とに示すように、閉止状態において、ハウジング102側の凹形状部304の先端部304Aが転写用開閉カバー208側の凹形状部209に入ると共に、転写用開閉カバー208側の凹形状部209の先端部209Aが、ハウジング102側の凹形状部304に入ることで、ハウジング102と転写用開閉カバー208との隙間からの光の入り込みが防止され、この結果、遮光性が高められる。
なお、この部分にも、なお、図6(b)と図6(c)とで示した弾性部材502、504を配設し、転写用開閉カバー208側の凹形状部209とハウジング102側の凹形状部304との隙間(嵌合部分の隙間)を埋める構成とすることで、更に遮光性を高めても良い。
つぎに、図5に示す、K1方向及びK2方向に沿った端部208C,208Dの遮光手段について説明する。なお、端部208Cと端部208Dとは構成の同様であるので、端部208Cを代表して説明し、反対側の端部208Dの説明は省略する。なお、図4、図5では、上述した端部208A,208Bの遮光手段の構成を判りやすくするため、今から説明する端部208C,208Dの遮光手段の図示を省略している。
図8(a)に示すように、転写用開閉カバー208の端部208Cには、ハウジング102の側壁102Aの下端部分を覆うようにL字状に曲がったL字状部214を備えている。そして、このL字状部214によって、ハウジング102の側壁102Aと転写用開閉カバー208との隙間からの光の入り込みを防止することで、遮光性が高められている。
なお、図9(a)に示すように、ハウジング102の側壁102Aと転写用開閉カバー208のL字状部214との隙間に、スポンジやゴム等からなる弾性部材506を配設して隙間を埋める構成とすることで、更に遮光性を高めても良い。
あるいは、図9(b)に示すように、ハウジング102の底面部102Tと転写用開閉カバー208の背面部218T(転写用開口部108側の面)との隙間に、スポンジやゴム等からなる弾性部材508を配設して隙間を埋める構成とすることで、更に遮光性を高めても良い。
なお、弾性部材506、508は、ハウジング102側に取り付けても良いし、転写用開閉カバー208側に取り付けても良い。
また、図8(b)に示すように、下側面が開口した凹形状部120をハウジング102の側壁102Aの下端部分に設け、この凹形状部120に転写用開閉カバー208のL字状部214が入る構成とすることで、更に遮光性を高めても良い。
更に、図10に示すように、ハウジング102の凹形状部120の軸G方向内側に下面が開口した凹形状部122を設けると共に、転写用開閉カバー208のL字状部214よりも軸G方向内側に突起部215を設け、前記凹形状部122に突起部215が入る構成として、更に遮光性を高めても良い。なお、この構成の場合、ハウジング102の凹形状部120と凹形状部122との間に形成される凸形状部123が、転写用開閉カバー208のL字状部214と突起部215との間に形成される凹形状部219に入ることでも、遮光性が高められる。
なお、図8(b)及び図10の構成においても、図9(a)と図9(b)とで説明したような弾性部材506、508を配設して遮光性を高めても良い。
あるいは、その他の構成として、図11に示すように、ハウジング102の側壁102Aに軸G方向外側が開口した凹形状部124を形成すると共に、この凹形状部124に先端部229Aが入るかぎ状のかぎ部229を転写用開閉カバー208の端部208Cに形成した構成としても良い。
つぎに、転写用開閉カバー208を閉止状態でロックするロック機構の一例と、ロックを解除するスイッチ(解除手段)の一例について説明する。
図5と図12とに示すように、ロック機構250は、転写用開閉カバー208の端部208CのK1方向の隅部からK1方向に延出した爪部230が、ハウジング102に設けられたラッチ部232に係止することで、転写用開閉カバー208を閉止状態でロックする。
図12に示すように、ロック機構250のラッチ部232は、回転軸234を軸心として回転する。また、バネなどの付勢部材150が、爪部230側を、図12おける上方向に付勢している。また、付勢されることでラッチ部232は、ハウジング102を貫通しているスイッチ160の先端部160Aに当接すると共に、爪部230との係止状態を維持する。
スイッチ160は、ハウジング102に設けられた凹部330に設けられている。また、スイッチ160の頭部160Bが凹部330の中に配置されている(頭部160Bは凹部330から突き出ていない)。
そして、スイッチ160の頭部160Bが矢印R方向に押されることで、ラッチ部232が回転し、爪部230のラッチ部232への係止が解除される。つまり、ロックが解除され、転写用開閉カバー208が開放可能となる。なお、このようなロック機構250とスイッチ160は、三箇所以上、それぞれ離して設けられていることが望ましい。
なお、このようにスイッチ160の頭部160Bは凹部330の中に配置されているので、プロセスカートリッジ100を装置本体02から取り外して手で持っている際に、不用意にスイッチ160を押してしまい、ロックが解除されることが防止される。また、スイッチ160を三箇所以上、離して設けることが望ましい。この結果、二本の手で同時に三箇所以上のスイッチ160を押すことが非常に困難となるので、より確実に不用意にロックが解除されることが防止される。
なお、スイッチ160の頭部160Bを押す機構であるが、装置本体02に設けられたロック解除機構(図示略)によって行なわれる。なお、ロック解除機構は、どのようなものであっても良い。例えば、モータなどの駆動手段を用いてピン等がスイッチ160を押す機構などである。
また、このスイッチ160が押されロックが解除されるタイミングは、プロセスカートリッジ100を装置本体02に挿入後、自動的に転写用開閉カバー208が開かれるまでの間であれば、特に限定されない。しかし、カートリッジ着脱用カバー04が閉じられた後に、ロックを解除することが望ましい。なお、このとき、カートリッジ着脱カバー04と転写用開閉カバー208は、図1に示すように、カートリッジ着脱カバー04が開閉するときは、転写用開閉カバー208は、図3に示すように、K2方向に開閉する方が、光が入りにくいので、好ましい。
例えば、プロセスカートリッジ100を装置本体02に挿入し、カートリッジ着脱用カバー04が閉じられたことを検知すると、転写用開閉カバー208を開く前にピン等によってスイッチ160を押しロックを解除すれば良い。あるいは、プロセスカートリッジ100を装置本体02に固定するためのハンドル(図示略)を回すと、ピン等によってスイッチ160を押してロックを解除しても良い。あるいは、プロセスカートリッジ100の装置本体02への挿入と同時にピン等によってスイッチ160を押してロックを解除しても良い。
なお、上述したように、今まで転写用開口部108と転写用開閉カバー208を代表して説明したが、露光用開口部104と露光用開閉カバー204、発色情報付与用開口部106と発色情報付与用開閉カバー206、にも同様の遮光手段を適用し、遮光性を高めている。また、同様のロック機構250とスイッチ160(解除手段)を備えている。
つぎに、本実施形態の作用について説明する。
今まで説明したように、プロセスカートリッジ100は、露光用開閉カバー204、発色情報付与用開閉カバー206、転写用開閉カバー208が閉じられると、ハウジング102と露光用開閉カバー204、発色情報付与用開閉カバー206、転写用開閉カバー208とが協調して、遮光効果を生じせしめる遮光手段(図6から図10を参照)を備えている。よって、収容したトナー(例えば、現像ローラ17上のトナー層S)が外光によって光暴露され、所望の色が得られなくなることが防止されている。
また、ロック機構(例えば、ロック機構250、図12参照)が、露光用開閉カバー204、発色情報付与用開閉カバー206、転写用開閉カバー208を閉止状態でロックし、解除手段(例えば、スイッチ160、図12参照)を操作することよってロックが解除される。よって、露光用開閉カバー204、発色情報付与用開閉カバー206、転写用開閉カバー208が不用意に開き、トナーが光暴露されることが防止されている。
更に、解除手段を3箇所以上、それぞれ離して設けることで、両手で同時に解除手段を操作しロックを解除することが、非常に困難な構成となる。また、ハウジング102に設けられた凹部(例えば、凹部330)の中に配置することで、手で解除手段を操作されにくくしている。つまり、露光用開閉カバー204、発色情報付与用開閉カバー206、転写用開閉カバー208が不用意に開き、トナーが光暴露されることがより確実に防止されている。
また、画像形成装置01は、1つの感光体10、1つの現像器16でフルカラー画像を得ることができるので、画像形成装置01全体の大幅な小型化が可能となる。
つぎに、本発明にかかる第二実施形態の画像形成装置について説明する。なお、第一実施形態と同様の構成については、図示と説明をする。
図13は、第二実施形態の画像形成装置05の要部を示している。画像形成装置05及びプロセスカートリッジ400は、第一実施形態の画像形成装置01及びプロセスカートリッジ100と略同様の構成をしているが、以下の点で異なる。
プロセスカートリッジ400のハウジング402には、発色情報付与装置28から射出された光が通過するための発色情報付与用開口部を備えていない。しかし、発色情報が付与されたトナー像T(図1参照)を記録用紙26に転写するための転写用開口部408が、第一実施形態の転写用開口部108よりも現像器16側に開口面積が拡大されている。また、開口面積の拡大に伴い、転写用開閉カバー418も拡大されている。そして、この拡大された転写用開口部408から発色情報付与装置28から射出された光が通過する。
つまり、発色情報が付与されたトナー像T(図1参照)を記録用紙26に転写するための転写用開口部408が、発色情報付与装置28から射出された光が通過するための発色情報付与用開口部を兼ねている。よって、第一実施形態のプロセスカートリッジ100よりも開口部が一つ少ない(図2と図13とを比較参照)。したがって、プロセスカートリッジ400は、開口部が少ない分、遮光性が高くなっている。
なお、本実施形態においても、第一実施形態で説明した、遮光手段、ロック機構、解除手段を備えている。
つぎに、本発明にかかる第三実施形態の画像形成装置について説明する。なお、第一実施形態及び第二実施形態と同様の構成については、図示と説明をする。
図14は、第三実施形態の画像形成装置07の要部を示している。画像形成装置07及びプロセスカートリッジ500は、第二実施形態の画像形成装置05及びプロセスカートリッジ400と略同様の構成をしているが、以下の点で異なる。
プロセスカートリッジ500は、像保持体として透明感光体510を用いている。なお、ここで、「透明」とは入射した光に対して出射した光の透過率(出射光/入射光)が、使用する波長域において50%以上であることをいう。
透明感光体510は、ガラス、プラスチック等の透明材料を基体とし、その表面に感光層等を設けてなる。基体の肉厚は必要とされる機械強度から決められ、おおよそ0.1〜5mm程度の範囲が好ましい。透明の基体上には透明電極が設けられることが好ましく、該透明電極としては、ITO、SnO2などの金属酸化物を微粒化しバインダー樹脂と混合したものや、ポリピロールなどの導電性ポリマーなどを塗布したもの等が使用できる。透明電極の厚みは、必要とされる導電度と透過性から決められ、おおよそ0.01〜10μm程度の範囲が好ましい。
感光層としては、例えば、Se、a−Si等の無機の感光層、あるいは単層若しくは多層(電荷発生層、電荷輸送層等)の有機感光層を挙げることができる。また、入射した光の散乱をより起こさせるため、金属酸化物やフッ素樹脂粒子等の有機粒子などの粒径が数十ナノメーターから数ミクロンのものを感光層に分散させることが好ましい。
そして、この透明感光体510の内部にLED等からなる露光装置514を配設し、透明感光体510の裏側から露光することで、透明感光体510に静電潜像を形成している。よって、装置本体には、露光装置は配設されていない。
また、このように、透明感光体510の内部にLED等からなる露光装置514を配設し、透明感光体510の裏側から露光しているので、ハウジング502には、露光用開口部が形成されていない。
したがって、プロセスカートリッジ500は、第二実施形態のプロセスカートリッジ400よりも、更に開口部が少なくなっており、その分、更に遮光性が高くなっている。
なお、本実施形態においても、第一実施形態で説明した、遮光手段、ロック機構、解除手段を備えている。
つぎに、本発明にかかる第四実施形態の画像形成装置について説明する。なお、第一実施形態から第三実施形態と同様の構成については、図示と説明をする。
図15は、第四実施形態の画像形成装置08の要部を示している。画像形成装置08及びプロセスカートリッジ600は、第三実施形態の画像形成装置07及びプロセスカートリッジ500と略同様の構成をしているが、以下の点で異なる。
透明感光体510の内部には、LED等からなる露光装置514に加え、透明感光体510上に形成されたトナー像に発色情報を付与するための発色情報付与装置528が配設されている。そして、透明感光体510の裏側から露光することで、透明感光体510上に形成されたトナー像を露光し、発色情報を付与している。よって、装置本体には、発色情報付与装置は配設されていない。
なお、発色情報付与のための露光が通常の潜像形成のための露光よりかなり強い強度で行われるため(発色情報付与に供する光のエネルギー量は、通常の電子写真プロセスに使用される感光体の露光量(約2mJ/m2)の約1000倍程度必要)、透明感光体510へのダメージが心配されるが、例えば、透明感光体510の電荷発生層の光感度を従来の1/1000とすれば、バランスが取れるので問題とはならない。
また、ハウジング602には、転写用開口部108のみ形成されている。なお、転写用開口部108は第一実施形態と同様の大きさである。また、転写用開閉カバー208も第一実施形態と同様である。
このように、プロセスカートリッジ600は、転写用開口部108のみ形成されていると共に、その大きさも第一実施形態と同様の大きさである。よって、更に遮光性が高くなっている。
また、発色情報付与のための露光が透明感光体510の裏面から行なわれるので、例えば透明感光層を光が透過する際に、各層の界面、入射角、透明感光体510内の不純物等により散乱が起こり、透明感光体510の表面からの出射時に光が拡がり、拡がらない場合と比較して、トナー表面に対してより多くの角度で光が照射される。このため、トナー表面での吸収及び反射が促進され、多層現像されたトナーの隙間を満遍なく照射することが可能となる。なお、この時、散乱により解像度が多少犠牲になるが、問題となるレベルではない。
なお、本実施形態においても、第一実施形態で説明した、遮光手段、ロック機構、解除手段を備えている。
つぎに、本発明にかかる第五実施形態の画像形成装置について説明する。なお、第一実施形態から第四実施形態と同様の構成については、図示と説明をする。
図16は、第五実施形態の画像形成装置09の要部を示している。画像形成装置09及びプロセスカートリッジ700は、第四実施形態の画像形成装置08及びプロセスカートリッジ600と略同様の構成をしているが、以下の点で異なる。
プロセスカートリッジ700には、第一実施形態と同様の、露光用開口部104と露光用開閉カバー204、及び転写用開口部108と転写用開閉カバー208、を備えている。
更に、透明感光体510の内部に反射手段としてのミラー等からなる反射部材750が配設されている。
そして、装置本体に設けられた露光装置714から射出した露光光Cで、透明感光体510上に静電潜像を形成すると共に、更に、透明感光体510を透過した露光光Cを反射部材750で反射し、透明感光体510上に形成されたトナー像に発色情報付与のための露光がなされる。なお、装置本体には、発色情報付与装置は配設されていない。
したがって、プロセスカートリッジ700は、第一実施形態のプロセスカートリッジ100よりも、開口部が少なくなっており、その分、遮光性が高くなっている。
更に、第四実施形態同様に、発色情報付与のための露光が透明感光体510の裏面から行なわれるので、多層現像されたトナーの隙間を満遍なく照射することが可能となる。しかも、本実施形態の場合、露光装置514や発色情報付与装置628をプロセスカートリッジ700の(透明感光体510の)内部に設けていないので、低コストであり、プロセスカートリッジ700と装置本体との接続するための電気配線等も不要となる。
なお、本実施形態においても、第一実施形態で説明した、遮光手段、ロック機構、解除手段を備えている。
なお、本発明は、上記実施形態に限定されない。
例えば、上記実施形態では、像保持体としてドラム状の感光体を用いたがこれに限定されない。ベルト状の感光体であってもよい。
また、上記実施形態では、プロセスカートリッジ100からプロセスカートリッジ700は、感光体10(又は透明感光体510)、帯電装置12、現像器16、クリーナ20を一体的に構成していたが、これに限定されない。プロセスカートリッジは、少なくとも現像器16を有していれば良い。
また、上記実施形態では、画像形成のプロセスは、いわゆる電子写真プロセスを用いたがこれに限定されない。
像保持体として誘電体を用い、この誘電体上にイオンなどで静電潜像を形成するプロセス(イオノグラフィ)を用いても良い。あるいは、一様帯電した誘電体に、サーマルヘッドの熱により画像情報に応じて静電潜像を形成するプロセスであっても良い。
更に、静電潜像を利用するものではなく、例えば、磁気潜像を形成してトナー画像を形成するプロセス、粘着性のインク滴を像保持体に画像情報に応じて形成し、トナー画像を形成するプロセス、なども用いることができる。
また、遮光手段は、上記実施形態で説明した構成に限定されない。開閉カバーとハウジングとが協調して遮光効果を生じせしめることができれば、どのような構成であっても良い。
<使用するトナー>
つぎに、上記実施形態に使用するトナーについて説明する。
本発明に使用するトナーは、前述のように、光による発色情報の付与により、発色または非発色の状態を維持することができるように制御されるトナーであり、「光による発色情報の付与」「発色又は非発色の状態を維持する」についても前記の通りである。
上記のような機能を有するトナーとしては、種々のタイプがあるが、例えば前記特許文献1(特開2003−330228号公報)に開示されているトナーは、外部刺激を受けて物質透過性が変化するカプセル壁を有する複数のマイクロカプセルをトナー樹脂中に分散混合して成る粒子であり、この粒子中に互いに混合されて発色反応を起こす2種類の反応性物質のうちの一方(各色染料前駆体)が、マイクロカプセル内に、他方(顕色剤)がマイクロカプセル外のトナー樹脂中に含まれるものである。
このトナーでは、カプセル壁として特定波長の光を照射した際に物質透過性が増大する光異性化物質を用い、このシス−トランス遷移を利用して光の照射や超音波を印加した際に、カプセル内外に存在する2種類の反応性物質が反応して発色する。
したがって、このようなトナーでは前記マイクロカプセルをトナー中に多く存在させることができず、またこれらが偏在してしまうこともあるため、上記実施形態に用いた場合にマイクロカプセルが十分に受光できない場合がある。
このため、上記実施形態では、互いに隔離された状態で存在し、互いに反応した際に発色する第1成分及び第2成分と、該第1成分及び第2成分のいずれかを含む光硬化性組成物と、を有し、光による発色情報の付与により前記光硬化性組成物が硬化または未硬化の状態を維持して、前記発色のための反応が制御されるトナー(以下、「Fトナー」という場合がある)を用いることが好ましい。
上記トナーの発色メカニズムと簡単な構成について、以下に説明する。
前記Fトナーは、後述するように、バインダー樹脂中に発色部と呼ばれる光による発色情報が付与された際に、特定のひとつの色に発色可能な(または非発色状態を維持することが可能な)連続した領域を1つ以上有する。
図17は、Fトナー中の前記発色部の一例を示す模式図であり、(A)は1つの発色部の断面図であり、(B)はさらにその発色部を拡大したものである。
図17(A)に示すように、発色部960中には、各色の発色剤を含有する発色性マイクロカプセル950とそれを取り巻く組成物958とから構成され、図17(B)に示すように、組成物958は、マイクロカプセル950に含有される発色剤(第1成分)952と近接または接触することで発色させる重合性官能基を有した顕色剤モノマー(第2成分)954と光重合開始剤956とを含んでいる。
トナー粒子を構成する発色部960において、発色性マイクロカプセル950に封入する発色剤952としては、発色色相の鮮やかさに優れたトリアリール系ロイコ化合物などが好適である。このロイコ化合物(電子供与性)を発色させる顕色剤モノマー954としては電子受容性化合物が好ましい。特にフェノール系化合物が一般的であり、感熱、感圧紙などに利用されている顕色剤から適宜選択できる。このような電子供与性の発色剤952と電子受容性の顕色剤モノマー954とが酸塩基反応することで発色剤が発色することになる。
光重合開始剤956としては、可視光により感光し顕色剤モノマー954を重合させるためのトリガーとなる重合性ラジカルを発生する分光増感色素が用いられる。例えば、R色、G色、B色の如き三原色露光に対して、顕色性モノマー954が十分な重合反応を進行させることができるように光重合開始剤956の反応促進剤が用いられる。例えば、露光光を吸収する分光増感色素(カチオン)とホウ素化合物(アニオン)からなるイオンコンプレックスを用いることにより、露光により分光増感色素が光励起されホウ素化合物に電子移動することで重合性ラジカルが生成し重合を開始する。
これらの材料を組み合わせることにより、感光性の発色部960として、0.1〜0.2mJ/cm2程度の発色記録感度を得ることができる。
上記構成の発色部960に対する発色情報のための光照射の有無により、発色部960によっては重合された顕色剤化合物と重合されなかった顕色剤モノマー954とを有するものが存在することになる。その後の加熱などの発色装置によって、重合されなかった顕色剤モノマー954を有する発色部960では、この顕色剤モノマー954が熱などによって泳動し、発色剤マイクロカプセル950の隔壁の空孔を泳動通過して発色剤マイクロカプセル中に拡散する。マイクロカプセル950中に拡散された顕色剤モノマー954と発色剤952とは、前述のように発色剤952が塩基性であり、顕色剤モノマー954が酸性であることにより発色剤952を酸塩基反応によって発色させることになる。
一方、重合反応を生じた顕色剤化合物は、この後の加熱などによる発色工程では重合による嵩高さによりマイクロカプセル950の隔壁の空孔を拡散通過できず、発色性マイクロカプセル中の発色剤952と反応ができないため発色することができない。したがって、発色性マイクロカプセル950は無色のままで残ることとなる。すなわち、特定波長光を照射された発色部960は発色されに存在することになる。
発色後、適当な段階で再度全面を白色光源で露光することにより、残留している重合未了の顕色性モノマー954を全て重合させて安定した画像定着がなされるとともに、残留分光増感色素を分解することで地色の消色が行われる。なお、可視光域に対応する光重合開始剤956の分光増感色素はその色調が最後まで地色として残留してしまうが、この分光増感色素の消色には色/ホウ素化合物の光消色現象を利用することができる。すなわち、光励起された分光増感色素からホウ素化合物に電子移動することで重合性ラジカルが生成するが、このラジカルはモノマーの重合を引き起こす一方で、励起された色素ラジカルと反応して色素の色分解を起し、結果的に色素を消色させることができる。
前記Fトナーでは、このような異なる発色を行なう発色部960(例えば、Y色、M色、C色に発色する)を、それぞれの顕色剤モノマー954が目的とする発色剤952以外の発色剤と干渉し合わない状態(互いに隔離された状態)にして一つのマイクロカプセルとして構成し用いることができる。そしてこのFトナーでは、電子供与性発色剤を含むマイクロカプセル以外の空間を電子受容性顕色剤及び光硬化性組成物が埋め、かつこれにより構成される発色部が受光するため、一粒のトナー粒子における受光効率のよさは、前記特許文献1(特開2003−330228号公報)に開示されたトナーに比べ圧倒的に高い。したがって、他のトナーと比較して、背面露光の効果を十分に活用できるものである。
また、このようなトナーは受光効率が良いので、プロセスカートリッジの遮光性を格段に高くする必要があるが、説明したように上記実施形態のプロセスカートリッジは格段に遮光性が高いので、問題が生じることはない。
さらに、前記のように発色情報付与メカニズムが可逆反応ではないことより、加熱による発色までに時間的制約がないというメリットを有する結果、低速域までのプリントも可能、すなわち、広いスピードレンジに対応可能となり、加えて、加熱による発色が行なわれる定着器等の配置場所についても自由度が高いというメリットも有している。
Fトナーの構成について、さらに詳述する。
Fトナーは、発色可能な物質(発色性物質)として、互いに隔離された状態で存在し、互いに反応した際に発色する第1成分と第2成分とを含む。このように、2種類の反応性成分の反応を利用して発色させることにより、発色の制御が容易になる。なお、前記第1成分、第2成分は、発色する前の状態において予め着色していてもよいが、実質的に無色の物質であることが特に好ましい。
前記発色制御を容易とするために、発色性物質として互いに反応した際に発色する2種類の反応性成分を用いるが、これらの反応性成分が、光による発色情報が付与されない状態でも物質拡散が容易な同一のマトリックス内に存在すると、トナーの保管時や製造時において、自発的な発色が進行してしまう場合がある。
このため、前記反応性成分は、その種類毎に、発色情報が付与されない限り互いの領域への物質拡散が困難な異なるマトリックス内に含まれていること(互いに隔離されていること)が必要である。
このように光による発色情報が付与されない状態での物質拡散を阻害して、トナーの保管時や製造時における自発的な発色を防止するためには、2種類の反応性成分の第1成分が第1のマトリックスに含まれ、第2成分が第1のマトリックス外(第2のマトリックス)に含まれ、第1のマトリックスと第2のマトリックスとの間には、両マトリックス間の物質の拡散が阻害されると共に、熱等の外部刺激が付与された際には、刺激の種類、強度や、組み合わせに応じて両マトリックス間の物質の拡散を可能とするような機能を持つ隔壁が設けられることが好ましい。
なお、このような隔壁を利用して2種類の反応性成分をトナー中に配置するには、マイクロカプセルを利用することが好適である。
この場合、Fトナーには、2種類の反応性成分のうち、例えば第1成分がマイクロカプセル内に含まれ、第2成分がマイクロカプセル外に含まれることが好ましい。この場合、マイクロカプセル内部が前記第1のマトリックス、マイクロカプセル外が前記第2のマトリックスに相当する。
このマイクロカプセルは、芯部と、該芯部を被覆する外殻とを有するものであり、熱等の外部刺激が付与されない限りマイクロカプセル内外の物質の拡散を阻害すると共に、外部刺激が付与された際には、刺激の種類、強度や、組み合わせに応じてマイクロカプセル内外の物質の拡散を可能とする機能を有するものであれば特に限定されない。なお芯部には、前記反応性成分の一方が少なくとも含まれる。
また、マイクロカプセルは、光の照射や圧力などの刺激の付与によってマイクロカプセル内外の物質拡散を可能とするものでもよいが、加熱処理によりマイクロカプセル内外の物質拡散を可能とする(外殻の物質透過性が増大する)熱応答性マイクロカプセルであることが特に好ましい。
なお、刺激が付与された際のマイクロカプセル内外の物質拡散は、画像形成時の発色濃度の低下を抑制したり、高温環境下に放置された画像のカラーバランスの変化を抑制する観点からは、不可逆的なものであることが好ましい。それゆえ、マイクロカプセルを構成する外殻は、加熱処理や光照射等の刺激の付与による軟化、分解、溶解(周囲の部材への相溶)、変形等により、物質透過性が不可逆的に増大する機能を有することが好ましい。
つぎに、前記Fトナーがマイクロカプセルを含む場合の好ましい構成について説明する。
このようなトナーとしては、互いに反応した際に発色する第1成分及び第2成分と、マイクロカプセルと、第2成分を分散させた光硬化性組成物とを含むものであることが好ましく、このようなトナーとしては、以下の3つの態様が挙げられる。
すなわち、前記Fトナーは、互いに反応した際に発色する第1成分及び第2成分と、光硬化性組成物と、この光硬化性組成物中に分散するマイクロカプセルとを含み、第1成分がマイクロカプセルに含まれ、第2成分が光硬化性組成物中に含まれる態様(第1の態様)、互いに反応した際に発色する第1成分及び第2成分と、光硬化性組成物を含むマイクロカプセルとを含み、第1成分がマイクロカプセル外に含まれ、第2成分が光硬化性組成物内に含まれる態様(第2の態様)、あるいは、互いに反応した際に発色する第1成分及び第2成分と、第1成分を含む一のマイクロカプセルと、第2成分を分散させた光硬化性組成物を含む他のマイクロカプセルとを含む態様(第3の態様)のいずれかであることが好ましい。
これら3つの態様の中では、特に第1の態様が、光による発色情報付与前の安定性、発色の制御等の観点から好ましい。なお、以下のトナーの説明においては、基本的に第1の態様のトナーを前提としてより詳細に説明するが、以下に説明する第1の態様のトナーの構成、材料、製法等は、第2の態様や第3の態様のトナーにおいても、勿論、利用/転用可能である。
なお、上述した熱応答性マイクロカプセルと光硬化性組成物とを組み合わせて用いたFトナーは、以下の2つのタイプのいずれかであることが特に好ましい。
(1)光硬化性組成物が未硬化の状態で加熱処理しても、未硬化の光硬化性組成物中に含まれる第2成分の物質拡散が抑制され、発色情報付与光の照射によって光硬化性組成物が硬化した後に加熱処理すると、硬化後の光硬化性組成物中に含まれる第2成分の物質拡散が促進されるタイプのトナー(以下、「光発色型トナー」と称す場合がある)。
(2)光硬化性組成物が未硬化の状態(第2成分が重合していない状態)で加熱処理すると、未硬化の光硬化性組成物中に含まれる第2成分の物質拡散が促進され、発色情報付与光の照射によって光硬化性組成物が硬化した後(第2成分が重合した後)に加熱処理すると、硬化後の光硬化性組成物中に含まれる第2成分の物質拡散が抑制されるタイプのトナー(以下、「光非発色型トナー」と称す場合がある)。
前記光発色型トナーと光非発色型トナーとの主たる違いは、光硬化性組成物を構成する材料にあり、光発色型トナーでは、光硬化性組成物中に(光重合性を有さない)第2成分と光重合性化合物とが少なくとも含まれるのに対して、光非発色型トナーは、光硬化性組成物中に、分子中に光重合性基を有する第2成分が少なくとも含まれる。
なお、光発色型トナー及び光非発色型トナーに用いられる光硬化性組成物中には、光重合開始剤が含まれていることが特に好ましく、必要に応じてその他種々の材料が含まれていてもよい。
上記光発色型トナーに用いられる光重合性化合物及び第2成分としては、光硬化組成物が未硬化の状態で両者の間に相互作用が働き、光硬化性組成物中での第2成分の物質拡散が抑制され、発色情報付与光の照射による光硬化性組成物の硬化(光重合性化合物の重合)後の状態で両者の間の相互作用が減少して、光硬化性組成物中での第2成分の拡散が容易となる材料が用いられる。
従って、光発色型トナーにおいては、加熱処理(発色工程)前に予め光硬化性組成物を硬化させる波長の発色情報付与光を照射しておくことによって、光硬化性組成物中に含まれる第2成分の物質拡散が容易な状態となる。このため、加熱処理された際に、マイクロカプセルの外殻の溶解等によって、マイクロカプセル内の第1成分と光硬化性組成物中の第2成分との反応(発色反応)が起こる。
逆に、光硬化性組成物を硬化させる波長の発色情報付与光を照射せずに、そのまま加熱処理しても第2成分は光重合性化合物にトラップされ、マイクロカプセル中の第1成分と接触することができず、第1成分と第2成分との反応(発色反応)が起こらない。
以上説明したように、光発色型トナーでは、光硬化性組成物を硬化させる波長の発色情報付与光の照射の有無と、加熱処理とを組み合わせて付与することによって、第1成分と第2成分との反応(発色反応)を制御できるため、トナーの発色を制御できる。
また、光非発色型トナーにおいては、第2成分自体が光重合性を有するため、発色情報付与光を照射したとしても、この光の波長が光硬化性組成物を硬化させる波長でなければ、光硬化性組成物中に含まれる第2成分の物質拡散が容易な状態を保てるため、この状態で加熱処理するとマイクロカプセルの外殻の溶解等によって、マイクロカプセル内の第1成分と光硬化性組成物中の第2成分との反応(発色反応)が起こる。
逆に、加熱処理前に光硬化性組成物を硬化させる波長の発色情報付与光が照射されると、光硬化性組成物中に含まれる第2成分同士が重合してしまうため、光硬化性組成物中に含まれる第2成分の物質拡散が困難となる。それゆえ、加熱処理しても第2成分は、マイクロカプセル中の第1成分と接触することができず、第1成分と第2成分との反応(発色反応)が起こらない。
以上説明したように、光非発色型トナーでは、光硬化性組成物を硬化させる波長の発色情報付与光の照射の有無と、加熱処理とを組み合わせて付与することによって、第1成分と第2成分との反応(発色反応)を制御できるため、トナーの発色を制御できる。
つぎに、前記Fトナーの好適な構造について、トナーが、前記光硬化性組成物と、この光硬化性組成物中に分散するマイクロカプセルとを含む場合についてより詳細に説明する。
この場合、トナーは光硬化性組成物と、この光硬化性組成物中に分散するマイクロカプセルとを含む発色部を1つのみ有するものであってもよいが、2つ以上有することが好ましい。ここで、上記「発色部」とは、前述のように外部刺激が付与された際に、特定のひとつの色に発色可能な連続した領域を意味する。
なお、トナーに2以上の発色部が含まれる場合、同じ色に発色可能な1種類の発色部のみがトナー中に含まれていてもよいが、互いに異なる色に発色可能な2種類以上の発色部がトナー中に含まれることが特に好ましい。その理由は、ひとつのトナー粒子の発色可能な色が、前者の場合は1種類のみに限定されるが、後者の場合は2種類以上とすることができるからである。
例えば、互いに異なる色に発色可能な2種類以上の発色部としては、イエロー色に発色可能なイエロー発色部と、マゼンタ色に発色可能なマゼンタ発色部と、シアン色に発色可能なシアン発色部とを含むような組み合わせが挙げられる。
この場合、例えば、外部刺激の付与によりいずれか1種類の発色部のみが発色した場合には、トナーは、イエロー、マゼンタ、あるいは、シアンのいずれかの色に発色することができ、いずれか2種類の発色部が発色した場合には、これら2種類の発色部の発色した色を組み合わせた色に発色することができ、ひとつのトナー粒子で、多様な色を表現することが可能となる。
なお、トナー中に互いに異なる色に発色可能な2種類以上の発色部が含まれる場合の発色する色の制御は、各々の種類の発色部に含まれる第1成分及び第2成分の種類や組み合わせを異なるものとすることの他に、各々の種類の発色部に含まれる光硬化性組成物の硬化に用いる光の波長を異なるものとすることにより実現できる。
すなわち、この場合、発色部の種類毎に発色部に含まれる光硬化性組成物の硬化に必要な光の波長が異なるため、制御刺激として、発色部の種類に応じた波長の異なる複数種の発色情報付与光を用いればよい。なお、発色部に含まれる光硬化性組成物の硬化に必要な光の波長を異なるものとするには、発色部の種類毎に異なる波長の光に感応する光重合開始剤を光硬化性組成物中に含有させることが好適である。
例えば、イエロー、マゼンタ、及び、シアンに発色可能な3種類の発色部がトナー中に含まれる場合、各々の種類の発色部に含まれる光硬化性組成物として、光の波長が405nm、532nm及び657nmのいずれかに応答して硬化する材料を用いれば、これら3つの異なる波長の発色情報付与光(特定波長を有する光)を使い分けることによって、トナーを所望の色に発色させることができる。
なお、発色情報付与光の波長としては、可視域の波長から選択することもできるが、紫外域の波長から選択してもよい。
上記実施形態に用いるトナーは、従来の顔料等の着色剤を用いたトナーに用いられるのと同様な結着樹脂を主成分とする母材を含むものであってもよい。この場合、母材中に、前記2以上の発色部の各々が粒子状のカプセルとして分散していることが好ましい(以下、カプセル状のひとつの発色部を「感光・感熱カプセル」と称する場合がある)。また、母材中には、従来の顔料等の着色剤を用いたトナーと同様に離型剤や、種々の添加剤が含まれていてもよい。
感光・感熱カプセルは、マイクロカプセルや光硬化性組成物を含む芯部と、該芯部を被覆する外殻とを有し、この外殻は、後述するトナーの製造過程や、トナーの保管時において、感光・感熱カプセル内のマイクロカプセルや光硬化性組成物を感光・感熱カプセル外に漏れないように安定して保持できるものであれば特に限定されない。
しかしながら、上記実施形態においては、後述するトナーの製造過程において、第2成分が外殻を透過して感光・感熱カプセル外のマトリックスへ流出したり、他の色に発色可能な感光・感熱カプセル中の第2成分が外殻を透過して流入したりするのを防ぐために、非水溶性樹脂からなる結着樹脂や離型材等の非水溶性材料を主成分として含むものであることが好ましい。
つぎに、前記Fトナーに用いられるトナー構成材料や、各トナー構成材料を調製する際に用いる材料・方法等について以下により詳細に説明する。
この場合、トナーには、第1成分、第2成分、第1成分を含むマイクロカプセル、第2成分を含む光硬化性組成物が少なくとも用いられ、光硬化性組成物中には光重合開始剤が含まれることが特に好ましく、種々の助剤等が含まれていてもよい。また、マイクロカプセル内(芯部)には第1成分が固体状態で存在していてもよいが、溶媒と共に存在していてもよい。
なお、前記光非発色型トナーにおいては、第1成分として電子供与性無色染料又はジアゾニウム塩化合物等が用いられ、第2成分として光重合性基を有する電子受容性化合物又は光重合性基を有するカプラー化合物等が用いられる。また、前記光発色型トナーにおいては、第1成分としては、電子供与性無色染料が用いられ、第2成分としては電子受容性化合物(「電子受容性顕色剤」あるいは「顕色剤」と称す場合がある)が用いられ、光重合性化合物としてはエチレン性不飽和結合を有する重合可能な化合物が用いられる。
以上に列挙した材料に加えて、更に、従来の着色剤を用いたトナーを構成する材料と同様の各種材料;結着樹脂、離型剤、内添剤、外添剤等を必要に応じて適宜利用することができる。以下、各材料等についてより詳細に説明する。
−第1成分及び第2成分−
第1成分及び第2成分の組合せとしては、下記(ア)〜(ツ)の組合せを好適に挙げることができる(下記例において、それぞれ前者が第1成分、後者が第2成分を表す。)。
(ア)電子供与性無色染料と電子受容性化合物との組合せ。
(イ)ジアゾニウム塩化合物とカップリング成分(以下、適宜「カプラー化合物」と称する。)との組合せ。
(ウ)ベヘン酸銀、ステアリン酸銀等の有機酸金属塩と、プロトカテキン酸、スピロインダン、ハイドロキノン等の還元剤との組合せ。
(エ)ステアリン酸第二鉄、ミリスチン酸第二鉄等の長鎖脂肪酸鉄塩と、タンニン酸、没食子酸、サリチル酸アンモニウム等のフェノール類との組合せ。
(オ)酢酸、ステアリン酸、パルミチン酸等のニッケル、コバルト、鉛、銅、鉄、水銀、銀塩のような有機酸重金属塩と、硫化カルシウム、硫化ストロンチウム、硫化カリウム等のアルカリ金属またはアルカリ土類金属硫化物との組合せ、又は前記有機酸重金属塩と、s−ジフェニルカルバジド、ジフェニルカルバゾン等の有機キレート剤との組合せ。
(カ)銀、鉛、水銀、ナトリウム等の硫酸塩等の重金属硫酸塩と、ナトリウムテトラチオネート、チオ硫酸ソーダ、チオ尿素等の硫黄化合物との組合せ。
(キ)ステアリン酸第二鉄等の脂肪族第二鉄塩と、3,4−ヒドロキシテトラフェニルメタン等の芳香族ポリヒドロキシ化合物との組合せ。
(ク)シュウ酸銀、シュウ酸水銀等の有機酸金属塩と、ポリヒドロキシアルコール、グリセリン、グリコール等の有機ポリヒドロキシ化合物との組合せ。
(ケ)ペラルゴン酸第二鉄、ラウリン酸第二鉄等の脂肪酸第二鉄塩と、チオセシルカルバミドやイソチオセシルカルバミド誘導体との組合せ。
(コ)カプロン酸鉛、ペラルゴン酸鉛、ベヘン酸鉛等の有機酸鉛塩と、エチレンチオ尿素、N−ドデシルチオ尿素等のチオ尿素誘導体との組合せ。
(サ)ステアリン酸第二鉄、ステアリン酸銅等の高級脂肪族重金属塩とジアルキルジチオカルバミン酸亜鉛との組合せ。
(シ)レゾルシンとニトロソ化合物との組合せのようなオキサジン染料を形成するもの。
(ス)ホルマザン化合物と還元剤及び/又は金属塩との組合せ。
(セ)保護された色素(又はロイコ色素)プレカーサーと脱保護剤との組合せ。
(ソ)酸化型発色剤と酸化剤との組合せ。
(タ)フタロニトリル類とジイミノイソインドリン類との組合せ。(フタロシアニンが生成する組合せ。)
(チ)イソシアナート類とジイミノイソインドリン類との組合せ(着色顔料が生成する組合せ)。
(ツ)顔料プレカーサーと酸または塩基との組合せ(顔料が形成する組合せ)。
上記に列挙した第1成分としては、実質的に無色の電子供与性無色染料又はジアゾニウム塩化合物が好ましい。
前記電子供与性無色染料としては、従来より公知のものを使用することができ、前記第2成分と反応して発色するものであれば全て使用することができる。具体的には、フタリド系化合物、フルオラン系化合物、フェノチアジン系化合物、インドリルフタリド系化合物、ロイコオーラミン系化合物、ローダミンラクタム系化合物、トリフェニルメタン系化合物、トリアゼン系化合物、スピロピラン系化合物、ピリジン系、ピラジン系化合物、フルオレン系化合物等の各種化合物を挙げることができる。
前記第2成分としては、前記光非発色型トナーの場合は同一分子内に光重合性基及び第1成分と反応して発色する部位とを有する実質的に無色化合物であり、光重合性基を有する電子受容性化合物又は光重合性基を有するカプラー化合物等の第1成分と反応して発色し、かつ光に反応して重合し、硬化するという両機能を有するものであれば全て使用することができる。
前記光重合性基を有する電子受容性化合物、即ち、同一分子中に電子受容性基と光重合性基とを有する化合物としては、光重合性基を有し、かつ第1成分の一つである電子供与性無色染料と反応して発色し、かつ光重合して硬化しうるものであれば全て使用することができる。
また、光発色型トナーの場合の第2成分である電子受容性顕色剤としては、フェノール誘導体、含硫フェノール誘導体、有機のカルボン酸誘導体(例えば、サリチル酸、ステアリン酸、レゾルシン酸等)、及びそれらの金属塩等、スルホン酸誘導体、尿素もしくはチオ尿素誘導体等、酸性白土、ベントナイト、ノボラック樹脂、金属処理ノボラック樹脂、金属錯体等が挙げられる。
さらに、光発色型トナーには、光重合性化合物としてエチレン性不飽和結合を有する重合可能な化合物が用いられ、これはアクリル酸及びその塩、アクリル酸エステル類、アクリルアミド類などの分子中に少なくとも1個のエチレン性不飽和二重結合を有する重合性化合物である。
つぎに、前記光重合開始剤について説明する。前記光重合開始剤は、発色情報付与光を照射することによりラジカルを発生して光硬化性組成物内で重合反応を起こし、かつその反応を促進させることができる。この重合反応により光硬化性組成物が硬化する。
前記光重合開始剤は、公知のものの中から適宜選択することができ、中でも、300〜1000nmに最大吸収波長を有する分光増感化合物と、該分光増感化合物と相互作用する化合物と、を含有するものであることが好ましい。
但し、前記分光増感化合物と相互作用する化合物が、その構造内に300〜1000nmに最大吸収波長を有する色素部とボレート部との両構造を併せ持つ化合物であれば、前記分光増感色素を用いなくてもよい。
前記分光増感化合物と相互作用する化合物としては、前記第2成分中の光重合性基と光重合反応を開始しうる公知の化合物の中から、1種又は2種以上の化合物を適宜選択して使用することができる。
この化合物を前記の分光増感化合物と共存させることにより、その分光吸収波長領域の照射光に敏感に感応し、高効率にラジカルを発生させうることから、高感度化が図れ、かつ紫外〜赤外領域にある任意の光源を用いてラジカルの発生を制御することができる。
前記「分光増感化合物と相互作用する化合物」としては、有機系ボレート塩化合物、ベンゾインエーテル類、トリハロゲン置換メチル基を有するS−トリアジン誘導体、有機過酸化物又はアジニウム塩化合物が好ましく、有機系ボレート塩化合物がより好ましい。この「分光増感化合物と相互作用する化合物」を前記分光増感化合物と併用して用いることにより、露光した露光部分に局所的に、かつ効果的にラジカルを発生させることができ、高感度化を達成することができる。
また、光硬化性組成物には重合反応を促進する目的で、さらに助剤として、酸素除去剤(oxygen scavenger)又は活性水素ドナーの連鎖移動剤等の還元剤や連鎖移動的に重合を促進するその他の化合物を添加することもできる。
前記酸素除去剤としては、ホスフィン、ホスホネート、ホスファイト、第1銀塩又は酸素により容易に酸化されるその他の化合物が挙げられる。具体的には、N−フエニルグリシン、トリメチルパルビツール酸、N,N−ジメチル−2,6−ジイソプロピルアニリン、N,N,N−2,4,6−ペンタメチルアニリン酸が挙げられる。さらに、チオール類、チオケトン類、トリハロメチル化合物、ロフィンダイマー化合物、ヨードニウム塩類、スルホニウム塩類、アジニウム塩類、有機過酸化物、アジド類等も重合促進剤として有用である。
Fトナーでは、電子供与性無色染料やジアゾニウム塩化合物のような第1成分をマイクロカプセルに内包して使用する。
マイクロカプセル化する方法としては、従来公知の方法を用いることができる。例えば、米国特許第2800457号、同28000458号に記載の親水性壁形成材料のコアセルベーションを利用した方法、米国特許第3287154号、英国特許第990443号、特公昭38−19574号公報、同42−446号公報、同42−771号公報等に記載の界面重合法、米国特許第3418250号、同3660304号に記載のポリマー析出による方法、米国特許第3796669号に記載のイソシアネートポリオール壁材料を用いる方法、米国特許第3914511号に記載のイソシアネート壁材料を用いる方法、米国特許第4001140号、同4087376号、同4089802号に記載の尿素−ホルムアルデヒド系、尿素ホルムアルデヒド−レゾルシノール系壁形成材料を用いる方法、米国特許第4025455号に記載のメラミン−ホルムアルデヒド樹脂、ヒドロキシブロビルセルロース等の壁形成材料を用いる方法、特公昭36−9168号、特開昭51−9079号に記載のモノマーの重合によるin situ法、英国特許第952807号、同965074号に記載の電解分散冷却法、米国特許第3111407号、英国特許第930422号に記載のスプレードライング法、特公平7−73069号公報、特開平4−101885号公報、特開平9−263057号公報に記載の方法等が挙げられる。
使用しうるマイクロカプセル壁の材料は、油滴内部及び/又は油滴外部に添加される。前記マイクロカプセル壁の材料としては、例えば、ポリウレタン、ポリウレア、ポリアミド、ポリエステル、ポリカーボネート、尿素−ホルムアルデヒド樹脂、メラミン樹脂、ポリスチレン、スチレンメタクリレート共重合体、スチレン−アクリレート共重合体等が挙げられる。中でも、ポリウレタン、ポリウレア、ポリアミド、ポリエステル、ポリカーボネートが好ましく、ポリウレタン、ポリウレアがより好ましい。前記高分子物質は、2種以上併用して用いることもできる。
マイクロカプセルの体積平均粒径は0.1〜3.0μmの範囲内となるように調整することが好ましく、0.3〜1.0μmの範囲内となるように調整することが更に好ましい。
前記感光・感熱カプセルにはバインダーが含まれていてもよく、これは、1つの発色部を有するトナーにおいても同様である。
バインダーとしては、前記光硬化性組成物の乳化分散に用いるバインダーと同様のもの、第1の反応性物質をカプセル化する際に用いる水溶性高分子のほか、ポリスチレン、ポリビニルホルマール、ポリビニルブチラール、ポリメチルアクリレート,ポリブチルアクリレート,ポリメチルメタクリレート,ポリブチルメタクリレートやそれらの共重合体等のアクリル樹脂、フェノール樹脂、スチレン−ブタジエン樹脂、エチルセルロース、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂等の溶剤可溶性高分子、或いは、これらの高分子ラテックスを用いることもできる。中でも、ゼラチン及びポリビニルアルコールが好ましい。また、バインダーとして後述する結着樹脂を用いてもよい。
また、Fトナーには、従来のトナーに用いられている結着樹脂を用いることができる。結着樹脂は、例えば、母材中に感光・感熱カプセルが分散した構造を有するトナーでは、母材を構成する主成分や感光・感熱カプセルの外殻を構成する材料として利用することができるがこれに限定されるものではない。
結着樹脂としては特に限定されず、公知の結晶性や非晶性の樹脂材料を用いることができる。特に低温定着性を付与するには、シャープメルト性がある結晶性ポリエステル樹脂が有用である。また、無定形高分子(非晶質樹脂)としては、スチレンアクリル系樹脂、ポリエステル樹脂など公知の樹脂材料を用いることができるが、非結晶性ポリエステル樹脂が特に好ましい。
その他、Fトナーは、上記に列挙した以外のその他の成分を含んでいてもよい。その他の成分としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択でき、例えば、離型剤、無機微粒子、有機微粒子、帯電制御剤等の従来のトナーに用いられている公知の各種添加剤等が挙げられる
つぎに、Fトナーの製造方法について簡単に説明する。
Fトナーは、凝集合一法等の公知の湿式製法を利用して作製されることが好ましい。特に、互いに反応した際に発色する第1成分及び第2成分と、光硬化性組成物と、該光硬化性組成物中に分散するマイクロカプセルとを含み、前記第1成分が前記マイクロカプセルに含まれ、前記第2成分が前記光硬化性組成物中に含まれる構造を有するトナーの作製に湿式製法は好適である。
なお、上記構造を有するトナーに用いられるマイクロカプセルは熱応答性マイクロカプセルであることが特に好ましいが、光等、その他の刺激に応答するマイクロカプセルであってもよい。
トナーの製造には、公知の湿式製法が利用できるが、湿式製法の中でも最高プロセス温度を低く抑えることができると共に、様々な構造を有するトナーの作製が容易であることから凝集合一法を利用することが特に好ましい。
また、従来の顔料や結着樹脂を主成分とするトナーと比べると、上記構造を有するトナーは、低分子成分を主成分として含む光硬化性組成物が多く含まれるため、トナーの造粒過程で得られる粒子の強度は不十分となりやすいが、凝集合一法では、高いせん断力を必要としないため、この点でも凝集合一法を利用することは好適である。
一般的に、凝集合一法は、トナーを構成する各種材料の分散液を調製した後、2種類以上の分散液を混合した原料分散液中で凝集粒子を形成する凝集工程と、原料分散液に形成された凝集粒子を融合する融合工程とを含むものであり、必要に応じて凝集工程と融合工程との間に、凝集粒子の表面に被覆層を形成する成分を付着させて被覆層を形成する付着工程(被覆層形成工程)とが実施されるものである。
Fトナーの製造においても、原料として使用する各種分散液の種類や組み合わせは異なるものの、凝集工程、融合工程の他に、必要に応じて付着工程を適宜組み合わせることによりトナーを作製することができる。
例えば、樹脂中に感光・感熱カプセル分散構造を有するトナーの場合には、まず、(a1)第1成分を含むマイクロカプセルを分散させたマイクロカプセル分散液と、第2成分を含む光硬化性組成物を分散させた光硬化性組成物分散液とを含む原料分散液中にて第1の凝集粒子を形成する第1の凝集工程と、(b1)前記第1の凝集粒子が形成された原料分散液に、樹脂粒子を分散させた第1の樹脂粒子分散液を添加して、前記凝集粒子表面に前記樹脂粒子を付着させる付着工程と、(c1)前記樹脂粒子をその表面に付着させた凝集粒子を含む原料分散液を加熱して融合させ、第1の融合粒子(感光・感熱カプセル)を得る第1の融合工程とを経ることにより、互いに異なる色に発色可能な1種類以上の感光・感熱カプセル分散液を調製する。
続いて、(d1)前記1種類以上の感光・感熱カプセル分散液と、樹脂粒子を分散させた第2の樹脂粒子分散液とを混合した混合溶液中にて、第2の凝集粒子を形成する第2の凝集工程と、(e1)前記第2の凝集粒子を含む混合溶液を加熱して、第2の融合粒子を得る第2の融合工程とを経ることにより、感光・感熱カプセル分散構造を有するトナーを得ることができる。
なお、第2の凝集工程で用いる感光・感熱カプセル分散液の種類は2種類以上が好ましい。また、(a1)〜(c1)工程を経て得られた感光・感熱カプセルをそのままトナー(すなわち1つの発色部のみを含むトナー)として利用してもよい。
また、1つの発色部のみを含むトナーを作製する場合、上述した付着工程の代わりに、前記第1の凝集粒子が形成された原料分散液に、離型剤を分散させた離型剤分散液を添加して、凝集粒子表面に離型剤を付着させる第1の付着工程と、第1の付着工程を経た後の原料分散液に、樹脂粒子を分散させた第1の樹脂粒子分散液を添加して、この離型剤を表面に付着させた凝集粒子表面に樹脂粒子を付着させる第2の付着工程とを実施してもよい。
上記実施形態に用いることが可能なFトナーの体積平均粒径は、特に限定されず、トナーの構造や、トナー中に含まれる発色部の種類・数に応じて適宜調整することができる。
しかしながら、トナー中に含まれる互いに異なる色に発色可能な発色部の種類が2〜4種類前後(例えば、トナーがイエロー、シアン、マゼンタの各々に発色可能な3種類の発色部を含むような場合)であれば、各々のトナー構造に応じた体積平均粒径は以下の範囲内であることが好ましい。
すなわち、例えばトナーの構造が感光・感熱カプセル(発色部)分散構造の場合には、トナーの体積平均粒径は5〜40μmの範囲内が好ましく、10〜20μmの範囲内がより好ましい。また、このような粒径を有する感光・感熱カプセル分散構造型のトナー中に含まれる感光・感熱カプセルの体積平均粒径は1〜5μmの範囲内であることが好ましく、1〜3μmの範囲内であることが好ましい。
トナーの体積平均粒径が5μm未満では、トナー中に含まれる発色成分量が少なくなるため色再現性が悪化したり、画像濃度が低下してしまう場合がある。また、体積平均粒径が40μmを超えると、画像表面の凹凸が大きくなり、画像表面の光沢ムラが発生してしまう場合があり、また画質が低下する場合がある。
なお、その内部に複数の感光・感熱カプセルを分散させた感光・感熱カプセル分散構造型のトナーは、従来の着色剤を用いた小径トナー(体積平均粒径5〜10μm程度)と比べると粒径が大きくなる傾向にあるものの、画像の解像度は、トナーの粒径ではなく感光・感熱カプセルの粒径により決定されるため、より高精細な画像を得ることができる。加えて、粉体流動性にも優れるため、外添剤の量が少なくても十分な流動性が確保できると共に、現像性やクリーニング性も向上させることができる。
一方、1つの発色部のみを有するトナーの場合には、上述した場合と比べると小径化がより容易であり、その体積平均粒径は3〜8μmの範囲内が好ましく、4〜7μmの範囲内が好ましい。体積平均粒径が3μm未満の場合には粒径が小さすぎるために粉体流動性が十分に得られなくなったり、十分な耐久性が得られない場合がある。また、体積平均粒径が8μmを超えると、高精細な画像が得られなくなる場合がある。
上記実施形態には、以上説明したFトナーをはじめ、光照射により(あるいは光が照射されないことにより)発色または非発色の状態を維持するように制御されるトナーであれば、用いる構成材料、トナーの構造、発色機構等によらず用いることができる。
上記実施形態に用いることができるトナーは、体積平均粒度分布指標GSDvが1.30以下であり、且つ、体積平均粒度分布指標GSDvと数平均粒度分布指標GSDpとの比(GSDv/GSDp)が、0.95以上であることが好ましい。
更に好ましくは、体積平均粒度分布指標GSDvが1.25以下であり、且つ、体積平均粒度分布指標GSDvと数平均粒度分布指標GSDpとの比(GSDv/GSDp)が、0.97以上であることが更に好ましい。
体積分布指標GSDvが1.30を超えた場合には、画像の解像性が低下する場合があり、また、体積平均粒度分布指標GSDvと数平均粒度分布指標GSDpの比(GSDv/GSDp)が0.95未満の場合、トナーの帯電性低下やトナーの飛散、カブリ等が発生し画像欠陥を招く場合がある。
なお、上記実施形態において、トナーの体積平均粒径や、上記した体積平均粒度分布指標GSDv、及び数平均粒度分布指標GSDpの値は、次のようにして測定し算出した。
まず、コールターマルチサイザーII(ベックマン−コールター社製)等の測定器を用いて測定されたトナーの粒度分布を分割された粒度範囲(チャンネル)に対し、個々のトナー粒子の体積及び数について小径側から累積分布を描き、累積16%となる粒径を、体積平均粒子径D16v、及び、数平均粒子径D16pと定義し、累積50%となる粒径を、体積平均粒子径D50v、及び、数平均粒子径D50pと定義する。同様に、累積84%となる粒径を、体積平均粒子径D84v、及び、数平均粒子径D84pと定義する。この際、体積平均粒度分布指標(GSDv)は、(D84v/D16v)1/2として定義され、数平均粒度指標(GSDp)は、(D84p/D16p)1/2として定義されるこれらの関係式を用いて、体積平均粒度分布指標(GSDv)及び数平均粒度指標(GSDp)を算出できる。
また、前記マイクロカプセルや感光・感熱カプセルの体積平均粒径は、例えば、レーザー回折式粒度分布測定装置(LA−700、堀場製作所製)を用いて測定することができる。
また、上記実施形態のトナーは、下式(1)で表される形状係数SF1が、110〜130の範囲内であることが好ましい。
SF1=(ML2/A)×(π/4)×100 ・・・ 式(1)
〔但し、上記式(1)において、MLはトナーの最大長(μm)を表し、Aはトナーの投影面積(μm2)を表す。〕
形状係数SF1が110未満の場合には、画像形成の際に転写工程で、像保持体表面にトナーが残留しやすくなるため、この残留トナーの除去が必要となるが、残留トナーをブレード等によりクリーニングする際のクリーニング性を損ないやすく、結果として画像欠陥を生じる場合がある。
一方、形状係数SF1が130を超える場合には、トナーを現像剤として使用する場合に、現像器内でのキャリアとの衝突によりトナーが破壊される場合がある。この際、結果として微粉が増加したり、これによってトナー表面に露出した離型剤成分により像保持体表面等が汚染され帯電特性を損なうことがあるばかりでなく、微粉に起因するかぶりの発生等の問題を起こすことがある。
形状係数SF1はルーゼックス画像解析装置(株式会社ニレコ製、FT)を用いて以下のように測定した。まず、スライドグラス上に散布したトナーの光学顕微鏡像をビデオカメラを通じてルーゼックス画像解析装置に取り込み、50個以上のトナーについて最大長(ML)と投影面積(A)を測定し、個々のトナーについて、最大長の2乗、投影面積を算出し、上記式(1)により形状係数SF1を求めた。
<現像剤>
上記実施形態に用いられるトナーは、そのまま一成分現像剤として用いてもよいが、上記実施形態では、キャリアとトナーとからなる二成分現像剤におけるトナーとして使用することが好ましい。
ここで、1種類の現像剤でフルカラー画像が形成できるという点からは、現像剤は、(1)前記光硬化性組成物と、該光硬化性組成物中に分散するマイクロカプセルとを含む発色部を2種類以上有するトナーを1種類有し、且つ、前記トナー中に含まれる2種類以上の発色部が互いに異なる色に発色可能であるタイプの現像剤、あるいは、(2)前記光硬化性組成物と、該光硬化性組成物中に分散するマイクロカプセルとを含む発色部を1つ有するトナーを2種類以上混合した状態で有し、且つ、前記2種類以上のトナーの発色部が互いに異なる色に発色可能であるタイプの現像剤であることが好ましい。
例えば、前者のタイプの現像剤では、トナー中に3種類の発色部が含まれ、且つ、3種類の発色部が、イエロー色に発色可能なイエロー発色部、マゼンタ色に発色可能なマゼンタ発色部及びシアン色に発色可能なシアン発色部からなることが好ましく、後者のタイプの現像剤では、発色部がイエロー色に発色可能なイエロー発色性トナーと、発色部がマゼンタ色に発色可能なマゼンタ発色性トナーと、発色部がシアン色に発色可能なシアン発色性トナーとが混合した状態で現像剤中に含まれることが好ましい。
二成分現像剤に使用し得るキャリアとしては、芯材表面に樹脂を被覆してなることが好ましい。キャリアの芯材としては、上記条件を満たしていれば特に規定されないが、例えば、鉄、鋼、ニッケル、コバルト等の磁性金属、これらとマンガン、クロム、希土類等との合金、及びフェライト、マグネタイト等の磁性酸化物等が挙げられるが、芯材表面性、芯材抵抗の観点から、好ましくはフェライト、特にマンガン、リチウム、ストロンチウム、マグネシウム等との合金が挙げられる。
また、芯材表面を被覆する樹脂としては、マトリックス樹脂として使用できるものであれば特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
上記二成分現像剤における、上記実施形態のトナーと上記キャリアとの混合比(質量比)としては、トナー:キャリア=1:100〜30:100程度の範囲が好ましく、3:100〜20:100程度の範囲がより好ましい。