以下、本発明の実装条件決定方法を用いた部品実装システムの実施の形態について図面を参照しながら説明を行う。
まず、本発明の実装の形態の部品実装システム、および、部品実装システムに含まれる各装置の構成を図1〜図6を用いて説明する。
図1は、実施の形態における部品実装システムの構成を示す構成図である。
図1に示す部品実装システムは、実装ライン7において上流から下流(図1において左から右方向)に向けて基板を送りながら部品実装基板を生産していくシステムである。
実施の形態の部品実装システムは、図1に示すように、実装ライン7を構成する連結された3台の部品実装機10〜12と、実装条件決定装置20とを備える。
また、実装条件決定装置20と、部品実装機10〜12とはLAN(Local Area Network)8により通信可能に接続されている。
図2は、実施の形態における部品実装機10の外観を示す図である。
なお、部品実装機11および部品実装機12は、ともに部品実装機10と同じ構成であり同じ機能を有する部品実装機である。そのため、これら部品実装機の代表として部品実装機10の構成について説明する。
部品実装機10は、交互打ちの部品実装機であり、側面にある搬入口101から搬入された基板30に部品を実装し、搬入口101に対向する側面に存在する搬出口(図示せず)から、部品が実装された基板30を搬出することができる。
また、部品実装機10は、2つの装着ステージを備えている。各装着ステージは、互いに独立して部品を基板に装着することができ、かつ、使用する吸着ノズルの本数等の実装条件も独立してそれぞれ設定可能な1つの実装ユニットである。
そこで、以下、それぞれの装着ステージを、図に示すように上流側から実装ユニット1、実装ユニット2と呼ぶこととする。
なお、これら各実装ユニットは、本発明の実装条件決定方法における部品実装機の一例である。つまり、部品を基板に実装するという機能に着目すれば、これら各実装ユニットのそれぞれは1つの部品実装機である。
また、これら各実装ユニットの部品供給部105には、複数の部品カセット106がセットされ、それぞれの部品カセット106から異なる種類または同一の種類の部品が供給される。
図3は、実施の形態における実装ユニット1の内部の主要な構成を示す平面図である。
なお、実装ユニット1と実装ユニット2とは同じ構成であるため、実装ユニット2についての図示および説明は省略する。
実装ユニット1は、その前後方向(Y軸方向)に向かい合ってビーム122と、装着ヘッド121とを備えている。また、向かい合って存在する2つの装着ヘッド121が協調しながら1つの基板30に対して部品の実装作業を行うことができる。
各装着ヘッド121は、具体的には、ビーム122上をX軸方向に移動し、さらに、ビーム122がY軸方向に移動することにより、X軸方向およびY軸方向に移動することができる。
ビーム122は、自身および自身に取り付けられた装着ヘッド121の移動を駆動するための複数のモータ(図示せず)を有しており、ビーム122を介してこれらモータに電力が供給されている。
また、実装ユニット1は、上述のように、部品供給部105にセットされる部品カセット106から部品の供給を受ける。
部品供給部105における部品カセット106のセット位置を「Z軸上の値」又は「Z軸上の位置(Z番号)」と呼び、Z番号には、例えば、部品供給部105の最左端を「Z1」とする連続番号等が用いられる。
基板30は、2つの実装ユニットを貫くように存在する一対の搬送レール129により上流から搬送されて下流に搬送される。また、部品カセット106により供給される部品は装着ヘッド121に取り付けられた吸着ノズルに吸着され、搬送レール129により搬送されてきた基板30に装着される。
なお、実装ユニット1が本来備える部品認識カメラ等の構成部は、本願発明の主眼ではないため、図示および説明を省略する。
このように構成された実装ユニット1による交互打ちの実装動作の概要は以下の通りである。すなわち、一方の装着ヘッド121が部品を吸着し当該部品の認識が行われている間に、他方の装着ヘッド121が部品を基板に装着することにより、絶え間なくいずれかの装着ヘッド121による基板への部品実装が行われる。
これにより、1つの装着ヘッド121による1サイクル(1タスク)の動作時間と同等の時間内で、2つの装着ヘッド121それぞれが1サイクル分の装着動作を行い、1つの装着ヘッド121のみを稼動させた場合と比較するとスループットをほぼ倍増することができる。
なお、本実施の形態においては、本発明の実装条件決定方法における部品実装機の一例として交互打ちの実装ユニットを用いている。しかしながら、本発明の実装条件決定方法における部品実装機は、交互打ちの実装ユニット等に限られず、複数の吸着ノズルを備えた装着ヘッドを部品供給部と基板との間で移動させて部品を実装するものであれば、その装着ヘッドが1つであっても構わない。
図4は、装着ヘッド121と部品カセット106との位置関係および吸着ノズル120の配列形態を示す模式図である。
図4(A)に示すように、本実施の形態において、部品カセット106には1つの部品リールPTが装填されている。部品リールPTは、1種類の部品を複数(例えば10000個)格納する部品テープが巻き取られた状態のものであり、部品リールPTから部品カセット106を介して実装ユニットに部品が供給される。
また、装着ヘッド121には、複数の吸着ノズル120を取り付けることが可能であり、本実施の形態においては、12本の吸着ノズルが着脱可能に取り付けられている。
具体的には、12本の吸着ノズル120は、図4(B)に示すように、6本×2列の配列形態で装着ヘッド121に取り付けられている。
つまり、本実施の形態において、装着ヘッド121は、吸着ノズル120の1列分に相当する最大6個の部品を、それぞれの部品カセット106から同時に(1回の上下動作で)吸着することができる。
このように構成された部品実装機10〜12は、連結され、実装ライン7を構成している。つまり、本実施の形態の実装ライン7は、計6台の実装ユニットが連結されて構成されている。
図5は、実施の形態の実装ライン7における実装ユニットの構成を示す図である。
図5に示すように、部品実装機11の備える2台の実装ユニットを、実装ユニット3および実装ユニット4とし、部品実装機12の備える2台の実装ユニットを、実装ユニット5および実装ユニット6とする。
つまり、基板30は、実装ユニット1〜6の順に下流に向かって搬送されながら、それぞれの実装ユニットにより順次部品が実装されることになる。つまり、1台の実装ユニットで構成された部品実装機が6台連結されている実装ラインと同じ構成である。
図6は、実施の形態の実装条件決定装置の機能的な構成を示す機能ブロック図である。
実装条件決定装置20は、実装ライン7を構成する各実装ユニットの実装条件を決定する装置であり、図6に示すように、通信部21と、構成情報取得部22と、実装点数取得部23と、タスク数算出部24と、決定部25とを備える。
通信部21は、実装ライン7を構成する各部品実装機と情報のやり取りを行うための処理部である。
構成情報取得部22は、各部品実装機から、それぞれの装着ヘッド121に取り付けられている吸着ノズル120の数などの情報を取得する処理部である。
実装点数取得部23は、部品実装機10または他の機器から、実装ライン7で部品が実装される基板の実装点数を取得する処理部である。
つまり、実装点数取得部23は、ある種類の基板が、実装ライン7に流される前に、その基板に実装されるべき部品の個数(以下、「単位個数」という。)を示す情報を取得する処理部である。
なお、これら構成情報取得部22および実装点数取得部23が取得する情報は、予め記憶装置等に記憶させておき、構成情報取得部22および実装点数取得部23が必要に応じて当該記憶装置等から読み出してもよい。
タスク数算出部24は、実装点数取得部23により取得された単位個数と、構成情報取得部22により取得された情報とを用い、均等振り分けの場合等の実装ライン7のスループットに関連する値を算出する処理部である。
具体的には、タスク数算出部24は、スループットに関連する値として、各装着ヘッド121の論理タスク数および実タスク数を算出する。
決定部25は、タスク数算出部24により算出された論理タスク数および実タスク数に基づき、各実装ユニットの実装条件を決定する処理部である。
決定された実装条件を示す情報、つまり各種の設定値等は、通信部21を介し、各部品実装機へ送信され、各部品実装機を構成する各実装ユニットに設定される。
なお、このように構成された実装条件決定装置20において、実装点数取得部23および構成情報取得部22における情報の取得、タスク数算出部24における数値演算、並びに、決定部25における実装条件の決定等の動作、およびこれら動作の制御は、CPU、記憶装置、および通信インタフェース等を備えるコンピュータによる情報処理により実現される。
次に、以上のように構成された実施の形態の部品実装システムの動作を、図7〜図21を用いて説明する。
図7は、実装条件決定装置20の動作の流れの概要を示すフローチャートである。
図7に示すように、実装条件決定装置20は、均等振り分けの場合の、実装ライン7のスループットに関連する値を算出する(S1)。
ここで、実装ライン7のスループットは、各実装ユニットの生産タクトの短縮化に比例して向上する。また、各実装ユニットの生産タクトは、各装着ヘッドのタスク数が少ないほど短くなる。従って、本実施の形態においては図6を用いて説明したように、スループットに関連する値として、均等振り分けの場合の各装着ヘッドの論理タスク数および実タスク数を算出する。
本実施の形態においては、実装ライン7を構成する6つの実装ユニットの構成は同一である。そのため、計12個の装着ヘッド121に単位個数が等分され、各装着ヘッド121の、振り分けられた部品の基板への装着に必要な論理タスク数および実タスク数は同一なものとなる。
さらに、実装条件決定装置20は、スループットを低下させない範囲で、少なくとも1つの装着ヘッドの満載率を向上させる実装条件を決定する(S2)。
なお、「満載率」とは、装着ヘッド121の部品の最大吸着可能数に対する実吸着数の比である。より詳しくは、数値aを、装着ヘッド121に振り分けられた部品の数とし、数値bを、その振り分けられた部品の全てを基板に装着するために必要な実タスク数で装着ヘッド121が基板に装着可能な部品の最大数とした場合に、aをbで除した値として求められる。
例えば、1つの装着ヘッド121に14個の部品が振り分けられた場合を想定する。この場合、装着ヘッド121には12本の吸着ノズルが取り付けられ、その全てが使用可能であるとすると、論理タスク数は、約1.17(14/12)であり、実タスク数は小数点以下を切り上げた2である。つまり振り分けられた14個の部品を基板に装着するためには2タスク必要である。
また、装着ヘッド121は2タスクで最大24個(12個×2タスク)の部品を基板に装着できるため、満載率は、14を24で除した値である約0.58である。
つまり、2タスク分の動作で最大で24個の部品を基板に装着することができるのに対し、実際には、その約58%にあたる14個の部品のみ基板に装着することとなり非効率的な状態であると言える。
逆に、満載率が1である場合、つまり、仮に振り分けられた部品の個数が24である場合、実際に動作するタスク分の時間および消費エネルギーに見合った数の部品を基板に装着することとなり効率的であるといえる。
このように、満載率は、装着ヘッド121の作業効率を表す一つの指標であり、満載率が低いほど効率性が低く、1に近いほど効率性が高いことを表す数値である。また、装着ヘッド121の作業効率を向上させることは、その装着ヘッド121を備える実装ユニットの生産効率、さらには、実装ライン7の生産効率を高めることに繋がる。
そこで、実装条件決定装置20は、実装ライン7のスループットを低下させず、かつ、少なくとも1つの装着ヘッド121の満載率を1に近づけるように各実装ユニットの実装条件を決定する。
図8は、図7に示す実装条件決定装置20の動作の流れの詳細を示すフローチャートである。
図8を用いて、実装条件決定装置20の動作をより詳細に説明する。
実装条件決定装置20のタスク数算出部24は、均等振り分けの場合の各装着ヘッドの論理タスク数を算出する(S10)。
具体的には、実装点数取得部23が、実装ライン7で部品が装着される基板の実装点数を取得する。また、構成情報取得部22が、各部品実装機の装着ヘッド121の数、および各装着ヘッド121で使用可能な吸着ノズル120の本数を示す情報を取得する。本実施の形態においては、いずれの装着ヘッド121も12本の吸着ノズル120が使用可能に取り付けられている。
タスク数算出部24は、取得された実装点数を装着ヘッド121の数、すなわち12で割り、1つの装着ヘッド121への部品の振り分け数を求める。さらに、その振り分け数を吸着ノズル120の本数である12で割ることで、論理タスク数を求める。
ここで、論理タスク数が整数であれば満載率は1である。例えば、各装着ヘッド121に24個の部品が振り分けられた場合、各装着ヘッド121は12本の吸着ノズル120が取り付けられているため、論理タスク数は2であり、実タスク数も2である。つまり、各装着ヘッド121は、それぞれ、2タスク分の動作で吸着し基板に装着できる最大数の部品を吸着し基板に装着することになる。
一方、算出された論理タスク数が整数でない場合、図7の説明で述べたように、本来的には吸着等できる個数より少ない個数の部品を吸着等することになる。
そこで、決定部25は、上記の論理タスクの算出(S10)において算出された値が整数でない場合(S11でNo)、実装ラインの7のスループットを低下させない範囲で、少なくとも1つの装着ヘッド121の満載率を向上させる実装条件を決定する。
具体的には、実装ライン7に流す基板の種類ごとに実装ユニットを振り分けること、または、実装ユニット、吸着ノズル120、または装着ヘッド121の単位で使用数を制限するための各種の設定値等が実装条件として決定される。
これら、各種の実装条件は、本実施の形態においてはその効果により区分され、例えば、実装条件決定装置20の操作者により選択される。
本実施の形態においては、「段取り優先」または「省エネ優先」のいずれかが選択され(S21)、その選択に応じた実装条件が決定される(S22またはS23)。
なお、「段取り」とは、部品実装機における準備作業、または準備内容のことである。例えば、部品カセット106を、基板に実装すべき部品の個数および種類に応じてセットすること、または、その配列を変更すること、および基板を下から支えるサポートピンを、基板のサイズ、形状に応じてセットすることまたはセットし直すこと等のことを意味する。
つまり、「段取り優先」が選択された場合、実装ライン7のスループットを低下させることなく、実装ライン7の稼働中にこのような準備作業を行えるようにすること、または行い易くさせることを主な目的とした実装条件が各実装ユニットに設定される。
具体的には、本実施の形態においては、基板の種類ごとに6台の実装ユニットを振り分けるための実装条件が決定される(S22)。
これにより、実装ライン7に複数の種類の基板が流された場合であっても、各実装ユニットからすると、実装対象の基板は1種類である。つまり、各実装ユニットに対しては、部品実装の開始前に、ある1種類の基板のサイズおよび形状、並びにその種類の基板に実装すべき部品の種類等のみを考慮した段取りを行えばよい。
また、ある種類の基板が実装ライン7に流れていないときに、その種類の基板への部品実装を担当していた実装ユニットに対し、上記のような準備作業を行うことができる。
この実装ユニットを基板の種類に応じて振り分けた場合の実装ラインの処理の流れ等については、図10および図11を用いて後述する。
また、「省エネ」とは、省エネルギーの意味であり、「省エネ優先」が選択された場合、実装ライン7のスループットを低下させることなく、実装ライン7全体で消費される電気エネルギーを削減することを主な目的とした実装条件が各実装ユニットに設定される。
具体的には、本実施の形態においては、部品実装作業を行わせる実装ユニット、吸着ノズル、装着ヘッドのいずれかの単位で使用数を制限する実装条件が各実装ユニットに設定される(S23)。
これにより、実装ライン7のスループットを低下させることなく、実装ライン7全体で消費される電気エネルギーを削減することができる。
なお、実装ユニットの単位で使用数を制限する場合の詳細については、図14〜図18を用いて後述し、吸着ノズル120の単位で使用数を制限する場合の詳細については、図19を用いて後述する。また、装着ヘッド121の単位で使用数を制限する場合の詳細については、図19を用いて後述する。
また、上記の論理タスクの算出(S10)において算出された値が整数である場合(S11でYes)、各実装ユニットに対し均等振り分けとなる実装条件を決定する(S24)。
例えば、実装点数が144点である場合を想定すると、均等振り分けの場合、各装着ヘッド121に振り分けられる部品の個数は12である。この場合、各装着ヘッド121は丁度1タスクで受け持ち分の12個の部品を基板に装着でき、作業効率の良い状態である。そのため、各装着ヘッド121に12個の部品を基板に実装させる実装条件が決定される。
具体的には、各装着ヘッド121が基板に装着すべき12個の部品の種類を示す情報等が実装条件として送信され、各実装ユニットに設定される。
以上、図8および図9を用いて、実装条件決定装置20の動作を中心に、本発明の実施の形態の実装システムの動作について説明した。
以下、具体的な例を挙げ、実装条件決定装置20がどのような決定をし、各実装ユニットがどのように動作をするかについて具体例を挙げて図9〜図21を用いて説明する。
例えば、実装ライン7において、2種類の基板であるA基板とB基板とに部品を実装する場合を想定する。また、基板Aの実装点数は48であり、基板Bの実装点数は72であると想定する。
この想定の下で、均等振り分けの場合の、各装着ヘッド121に振り分けられる部品の個数等は、図9に示すようになる。
図9は、各装着ヘッド121に略均等に部品を振り分けた場合の振り分け数等の例を示す図である。
なお、図5に示すように、実装ライン7に含まれる装着ヘッド121の数は12である。また、図3および図4に示すように、それぞれの装着ヘッド121には12本の吸着ノズル120が取り付けられており、1タスクで最大12個の部品を基板に装着することができる。
このような構成の実装ライン7において、A基板およびB基板に実装すべき部品を各装着ヘッドに略均等に振り分けた場合、図9(A)に示すように、各装着ヘッド121にはA基板に装着する部品として4個(48部品/12ヘッド)の部品が振り分けられる。
また、各装着ヘッド121が、この4個の部品を基板に装着するための論理タスク数は約0.33(4部品/12本)であり、実タスク数は1となる。
さらに、各装着ヘッド121の満載率は、約0.33(4部品/(1タスク×12本))である。
B基板についても同様に求められ、各装着ヘッド121にはB基板に装着する部品として6個(72部品/12ヘッド)の部品が振り分けられる。
また、各装着ヘッド121が、この6個の部品を基板に装着するための論理タスク数は約0.5(6部品/12本)であり、実タスク数は1となる。
さらに、各装着ヘッド121の満載率は、0.5(4部品/(1タスク×12本))である。
つまり、各実装ユニットは、A基板の場合であっても、B基板の場合であっても、1枚の基板に対して、2つの装着ヘッド121が1タスクずつ動作することで、自身に振り分けられた基板1枚あたりの部品の基板への装着を完了する。
そこで、各実装ユニットにおいて2つの装着ヘッド121がそれぞれ1タスクずつ動作するのに要する時間、すなわち各実装ユニットの基板1枚あたりの生産タクトを約10秒であると想定する。
図9(B)は、このように各装着ヘッド121に部品を略均等に振り分けた場合の、部品の個数等を模式的に表す図である。
図9(B)に示すように、各装着ヘッド121には、A基板に装着する部品として4個が、B基板に装着するものとして6個が振り分けられることになる。
また、6台の実装ユニットは、A基板に対しても、B基板に対しても約10秒の動作時間を要するため、1枚の部品実装基板の生産に要する時間は60秒である。また、実装ライン7の生産状況が定常状態になった後には、部品実装基板が約10秒に1枚の割合で、実装ラインから排出される。
つまり、スループットは6枚/60秒である。例えば、A基板とB基板とを交互に実装ライン7に流した場合、A3枚とB3枚とが60秒で生産される。
ここで、上述のように、各装着ヘッド121の、A基板の場合およびB基板の場合の論理タスク数は、それぞれ.033および0.5であり整数ではないため、いずれの場合も、実タスク数は1となり、上述のように非効率的な生産状況であるといえる。
具体的には、この非効率性は、各装着ヘッド121の満載率として表され、実装条件決定装置20は、実装ライン7のスループットを低下させず、かつ、少なくとも1つの装着ヘッド121の満載率を向上させる実装条件を決定する。
例えば、図8の説明で述べたように、基板の種類ごとに6台の実装ユニットを振り分ける実装条件が決定される。
図10は、基板の種類ごとに部品実装を担当する実装ユニットを振り分けた場合の振り分け数等の例を示す図である。
例えば、A基板専用の実装ユニットを3台、B基板専用の実装ユニットを3台と決定する。つまり、A基板に部品を装着する装着ヘッド121は計6つであり、B基板に部品を装着する装着ヘッド121も計6つである。
なお、部品実装に使用する実装ユニットの台数の決定方法の詳細については、図14を用いて後述する。
この場合、図10(A)に示すように、各装着ヘッド121にはA基板に装着する部品として8個(48部品/6ヘッド)の部品が振り分けられる。また、各装着ヘッド121の論理タスク数は約0.67(8部品/12本)となり、実タスク数の1は維持される。
さらに、各装着ヘッド121の満載率は、約0.67(8部品/(1タスク×12本))であり、均等振り分けの場合の満載率“0.33”よりも向上する。
また、B基板についても同様に求められ、各装着ヘッド121にはB基板に装着する部品として12個(72部品/6ヘッド)の部品が振り分けられる。また、各装着ヘッド121の論理タスク数は1(12部品/12本)であり、実タスク数の1は維持される。
さらに、各装着ヘッド121の満載率は、1(12部品/(1タスク×12本))であり、均等振り分けの場合の満載率“0.5”よりも向上する。
ここで、A基板に着目すると、A基板に部品を実装する実装ユニットの台数を削減することにより、A基板に部品を実装する実装ユニットにおける各装着ヘッド121の論理タスク数は均等振り分けの場合よりも上昇する。
また、均等振り分けの場合の実タスク数を超えない範囲で、A基板に部品を実装する実装ユニットの台数を削減しているため、A基板の部品実装に係るスループットは低下することがない。
また、B基板についても同様であり、B基板の部品実装に係るスループットは低下することがない。
また、部品実装の対象がA基板である場合とB基板である場合の各装着ヘッド121の満載率はともに向上し、非効率性は改善される。
さらに、全部で6台存在する実装ユニットを、3台ずつに分けた場合、図10(B)に示すように、6台の実装ユニットの中から、A基板専用の実装ユニットと、B基板専用の実装ユニットとを交互に選択することができる。
図10(B)は、実装ユニット2、4、および6が、A基板のみに部品を実装するA基板専用の実装ユニットとして選択され、実装ユニット1、3、および5が、B基板のみに部品を実装するB基板専用の実装ユニットとして選択されていることを示している。
また、図9に示す場合と同様に、各実装ユニットにおいて2つの装着ヘッド121がそれぞれ1タスクずつ動作することに変わりはないため、各実装ユニットの生産タクトは約10秒である。
このように選択し、実装ライン7にA基板とB基板とを交互に流すことにより、実装ライン7のスループットを向上させることができる。
図11は、互いに異なる種類の基板を部品実装の対象とする実装ユニットが交互に選択された場合の実装ライン7における部品実装処理の流れを示す図である。
なお、図11に示す、“A1”等の記号におけるアルファベット部分は基板の種類を表し、アルファベットに添えた数字は、同種の基板の中での、実装ライン7に投入される順番を表している。
つまり、実装ライン7には、A基板とB基板が交互に連続して投入されていることを示している。
この場合、図11に示すように、最初に“A1”が実装ユニット1をスルーし実装ユニット2に搬入され、“B1”が実装ユニット1に搬入される。この2枚の基板がそれぞれの実装ユニットに搬入された時点(以下、この時点を「生産開始時点」とする。)から約10秒経過後に、実装ユニット1および2での部品実装が完了し、“A1”は、実装ユニット3をスルーし、次のA基板専用の実装ユニットである実装ユニット4に搬入される。
これと同時に、“B1”は、実装ユニット2をスルーし、次のB基板専用の実装ユニットである実装ユニット3に搬入される。
つまり、各実装ユニットは、実装ライン7に投入される基板に対し、1台おきに部品実装がなされるように、各実装ユニットのシャトルコンベヤ118を稼動させる。
具体的には、このようにシャトルコンベヤ118を稼動させる設定値を含む実装条件が、実装条件決定装置20から各実装ユニットに与えられ、各実装ユニットでは、その実装条件に従い、自身が有するシャトルコンベヤ118を稼動させる。
また、このようにシャトルコンベヤ118を稼動させることにより、この“A1”の実装ユニット4への搬入、および“B1”の実装ユニット3への搬入と同時に、“A2”が実装ユニット2に、また、“B2”が実装ユニット1に搬入され、これら4つの基板にそれぞれの実装ユニットで部品が実装される。
さらに、これら4つの基板が各実装ユニットに搬入されてから約10秒後、つまり、生産開始時点から約20秒後に、それぞれの実装作業が完了し、各基板は、それぞれ下流の1台の実装ユニットをスルーして、次の実装ユニットに搬入される。また、同時に、“A3”が実装ユニット2に搬入され、“B3”が実装ユニット1に搬入される。
これら6枚の基板に対する各実装ユニットでの実装作業が完了すると、つまり、生産開始時点から約30秒後に、“A1”が実装ライン7から排出され、“B1”が実装ユニット5から排出され、さらに実装ユニット6をスルーし実装ライン7から排出される。
つまり、生産開始時点から約30秒後に、“A1”および“B1”に対する部品実装が完了し、実装ライン7から排出される。
その後、10秒ごとに、2枚の基板(B基板1枚とA基板1枚)が実装ライン7から排出される。
従って、この場合の実装ライン7のスループットは、6枚/30秒である。つまり、図9を用いて説明した均等振り分けの場合よりも計算上、倍のスループットで部品実装基板が排出されていくことになる。
なお、実際には、図11に示す場合、各基板は、実装ユニットの2台分の距離を下流に向かって順次搬送されるため、均等振り分けの場合よりも、基板の搬送に係る時間は長いものとなる。しかし、計算上で倍のスループットが減殺されるほどの影響はない。
また、このように、実装ライン7に複数の種類の基板が投入された場合においても、各実装ユニットからすると、自身が部品を実装する基板は1種類である。
例えば、本実施の形態において、実装ユニット2、4、および6は、基板Aのみを部品実装の対象としている。そのため、基板Aに装着すべき部品に対応する部品カセット106のみを選択しこれら実装ユニットにセットするだけでよい。
つまり、1台の実装ユニットが基板Aおよび基板Bを部品実装の対象とする場合は、両種類の基板に装着すべき部品の種類を考慮し、両種類の基板にそれぞれ必要な部品が装着されるように、部品カセット106を選択しセットする必要がある。
この場合、部品カセット106の選択等の手間がかかるのみならず、少なくとも一方の基板に装着される部品について、同時吸着を行わせることが困難なものとなる。これは、例えば、A基板に装着される複数の部品が同時吸着されるように、部品カセット106の配列を決定した場合、その配列が、B基板に装着される複数の部品を同時吸着できる配列と同一である可能性が少ないからである。
つまり、基板種ごとに実装ユニットを振り分けた場合、各実装ユニットでは、それぞれの基板に装着すべき部品群に応じた配列で部品カセット106をセットすることができ、例えば、同時吸着を可能とする配列でセットできる可能性が高くなる。同時吸着できるということは、装着ヘッド121が効率よく部品を吸着できることとなり、部品実装基板の生産の効率化に寄与することとなる。
このように、基板種ごとに実装ユニットを振り分けた場合、各実装ユニットは、それぞれが部品実装の対象とする基板の種類に応じた段取りを行うことができ、部品実装基板の生産の効率化を図ることができる。
また、例えば、B基板に対する部品実装のみが完了した場合、実装ライン7にはA基板のみが流れることになる。この場合であっても、A基板は10秒に1枚、実装ライン7から排出されることになり、均等振り分けの場合のスループットである6枚/60秒より低下することはない。
また、実装ライン7でA基板に対する部品実装が行われている場合、B基板専用であった各実装ユニットは、シャトルコンベヤ118が稼動しているのみであり、部品カセット106の交換等のいわゆる段取り換えを行うことができる。
このような段取り換えは、部品実装の対象となる基板の種類が変わると、原則として必要なことである。また、全ての実装ユニットが部品実装を行っている場合、通常、全ての生産作業が完了して段取り換えを行うこととなる。
しかし、このように、基板種ごとに実装ユニットを振り分けた場合、部品実装基板の生産の途中において、段取り換えを行える場合があり、結果として部品実装基板の生産をより効率的なものにすることができる。
また、図10および図11では、2種類の基板であるA基板とB基板とが部品実装の対象である場合を想定して説明した。しかし、1種類の基板が部品実装の対象である場合も、このように、部品実装を行う実装ユニットを交互に選択することにより、同様に、スループットの向上を図ることができる。
図12は、実装ライン7に投入される基板について、奇数番目と偶数番目とで部品実装を担当する実装ユニットを振り分けた場合の振り分け数等の例を示す図である。
図12において矩形に囲まれた“A”は奇数番目に投入されるA基板(以下、「奇数A基板」という。)を表し、楕円に囲まれた“A”は偶数番目に投入されるA基板(以下、「偶数A基板」という。)を表している。
この場合、6台の実装ユニットは、いずれもA基板が部品実装の対象であり、図12(A)に示すように、各装着ヘッド121にはA基板に装着する部品として8個(48部品/6ヘッド)の部品が振り分けられる。また、各装着ヘッド121の論理タスク数は約0.67(8部品/12本)となり、実タスク数の1は維持される。
さらに、各装着ヘッド121の満載率は、約0.67(8部品/(1タスク×12本))であり、均等振り分けの場合の満載率よりも向上している。
図12(B)は、実装ユニット2、4、および6が、奇数A基板に部品を実装する実装ユニットとして選択され、実装ユニット1、3、および5が、偶数A基板に部品を実装する実装ユニットとして選択されていることを示している。
また、図9に示す場合と同様に、各実装ユニットにおいて2つの装着ヘッド121がそれぞれ1タスクずつ動作することに変わりはないため、各実装ユニットの生産タクトは約10秒である。
このようにある1つの種類の基板が部品実装の対象である場合も、このように1台おきに部品実装作業を行わせることにより、実装ライン7のスループットを向上させることができる。
図13は、奇数番目の基板を部品実装の対象とする実装ユニットと、偶数番目の基板を部品実装の対象とする実装ユニットとが交互に選択された場合の実装ライン7における基板の流れを示す図である。
この場合、図11に示す基板の流れと同じく、実装条件決定装置20によって設定された実装条件の下、1台おきに並んだ3台の実装ユニットにより部品が実装される。
従って、図11に示す場合と同じく、実装ライン7からは、部品の実装が完了した基板が10秒に2枚の割合で排出されることになる。
つまり、スループットは6枚/30秒であり、図9を用いて説明した均等振り分けの場合よりも計算上、倍のスループットで部品実装基板が排出されていくことになる。
このように、実装条件決定装置20は、基板の種類または実装ラインへの投入順に応じて複数の実装ユニットが振り分けられるように実装条件を決定する。
具体的には、決定部25は、(a)6台の実装ユニットの中から選択した1以上の実装ユニットに、一の群に属する基板のみに部品を実装させるとともに、他の群に属する基板に部品を実装させることなく当該基板を下流に搬送させ、(b)他の実装ユニットの中から選択した1以上の実装ユニットに、一の群に属する基板に部品を実装させることなく当該基板を下流に搬送させるとともに、他の群に属する基板のみに部品を実装させ、かつ、(c)一の群に属する基板のみに部品を実装させる実装ユニットと、他の群に属する基板のみに部品を実装させる実装ユニットとの並びが、実装ライン7において交互となる実装条件を決定する。
また、一の群に属する基板のみに部品を実装させる実装ユニットの台数は、これら実装ユニットの各装着ヘッド121に、一の群に属する基板1枚に装着すべき複数の部品を振り分けた場合に、各装着ヘッド121の実タスク数が増加しない範囲である。
また、他の群に属する基板のみに部品を実装させる実装ユニットの台数も同様に、これら実装ユニットの各装着ヘッド121に、他の群に属する基板1枚に装着すべき複数の部品を振り分けた場合に、各装着ヘッド121の実タスク数が増加しない範囲である。
なお、上記の一の群に属する基板と、他の群に属する基板とは、図10および図11に示す例では、いずれか一方がA基板であり他方がB基板である。また、図12および図13に示す例では、いずれか一方が奇数A基板であり他方が偶数A基板である。
このように実装条件を決定することで、部品カセット106のセット換等の段取りを効率的に行うことができる。また、各装着ヘッド121の実タスク数は、均等振り分けの場合と変わりはなく、かつ、各基板に部品実装を行う実装ユニットの数が減るために、スループットが向上する。
すなわち、実装条件決定装置20は、実装ライン7における部品実装基板の生産効率を向上させることができる。
ここで、実装ライン7において、ある実装点数の基板を部品実装の対象とする場合、実装条件決定装置20は、具体的には、使用する実装ユニットの数を変えながら、均等振り分けの場合の実タスク数を超えない範囲で、その基板に部品実装を行う実装ユニットの台数を決定する。
図14は、実装条件決定装置20が、部品実装に使用する実装ユニットの台数を決定する際の動作の流れを示すフローチャートである。
図14を用いて、実装条件決定装置20が、部品実装に使用する実装ユニットの台数を決定する際の動作を説明する。
実装条件決定装置20のタスク数算出部24は、算出(図8のS10)した均等振り分けの場合の各装着ヘッドの論理タスク数から実タスク数を算出する(S30)。
例えば、図9(A)に示すように、実装点数が48であるA基板が部品実装の対象であれば、論理タスク数は“0.33”であり、実タスク数は“1”である。
タスク数算出部24は、さらに、使用する実装ユニットの台数を1ずつ変更し、変更後の台数での各装着ヘッド121の実タスク数をそれぞれ算出する(S31)。
決定部25は、均等振り分けの場合の実タスク数と、使用台数に応じた実タスク数とを受け取り、使用台数に応じた実タスク数が均等振り分けの場合の実タスク数を超えない範囲で、部品実装に使用する実装ユニットの台数を決定する(S32)。
図15は、使用台数を変えた場合の各装着ヘッド121の実タスク数等を例示する図である。
例えば、上述のA基板が部品実装の対象であれば、均等振り分けの場合、つまり、実装ライン7を構成する6台の実装ユニットに略均等に部品実装を行わせた場合、実タスク数は“1”である。
そこで、図15に示すように、実装ユニットの使用台数を6から1つずつ減らした場合、使用台数が2までは、実タスク数が“1”である。つまり、実装ユニットの使用台数が2〜5の範囲であれば、実タスク数が増加することなく、スループットが低下することはない。また、部品実装に使用される各装着ヘッド121の満載率も向上する。
同様に、B基板が部品実装の対象であれば、均等振り分けの場合の実タスク数は“1”である。また、実装ユニットの使用台数を6から1つずつ減らした場合、使用台数が3までは、実タスク数が“1”である。
つまり、実装ユニットの使用台数が3〜5の範囲であれば、スループットが低下することはない。また、部品実装に使用される各装着ヘッド121の満載率も向上する。
従って、A基板とB基板とを混在させて実装ライン7に投入する場合、A基板専用の実装ユニットの台数とB基板専用の実装ユニットの台数の条件は、これら台数の計が6以内であり、かつ、A基板専用の実装ユニットが2〜5台、B基板専用の実装ユニットが3〜5台のいずれかの台数であることである。
ここで、実装ライン7において6台の実装ユニットの全てを使用する場合、図11に示すように、A基板専用の実装ユニットとB基板専用の実装ユニットとが交互に並べられている場合、スループットが向上する。
そのため、A基板専用の実装ユニットとB基板専用の実装ユニットとを3台ずつ選択することを考えると、これら台数は、上記の台数の条件を満たしている。
従って、このように各実装ユニットに部品を実装させるための実装条件を各実装ユニットに設定することは、6台の実装ユニットの全てを使用するという前提においては、従来の均等振り分けの場合よりも効率のよい部品実装基板の生産を実現する一形態である。
なお、A基板専用の実装ユニットの台数とB基板専用の実装ユニットの台数とを求める場合、図15に示すように、実装ユニットが6台の場合から、1台ずつ減らしながら計算するのではなく、基板の実装点数の比を基本にして求めてもよい。
例えば、上述のA基板とB基板とが部品実装の対象であれば、実装点数の比は“2:3”であり、全6台をこの比に分けると、3台と3台、または、2台と4台である。
この場合、タスク数算出部24は、これら台数を中心とし、1ずつ台数を増減させて、それぞれの実タスクを求める。例えば、A基板の場合、使用台数が2の場合の実タスク数は1と求まり、使用台数が1の場合の実タスク数は2と求まる。
従って、実タスク数が増加しない限界は、使用台数が2の場合であることが分かる。つまり、1台〜6台の全ての場合について計算しなくても、実タスク数が増加しない限界の使用台数が判明することになり、タスク数算出部24の処理負荷が低減することになる。
また、図15に示すように、A基板に対しては、使用台数が2台の場合、論理タスク数が1となり、従って、満載率が1である。
そこで、A基板のみが部品実装の対象である場合、2台の実装ユニットのみに部品実装作業を行わせ、その他の実装ユニットは、部品実装作業を停止させ、A基板の下流への搬送のみを行わせることが考えられる。
この場合であっても、実装ライン7は、約10秒に1枚の部品実装基板を生産することになりスループットは低下せず、かつ、実装ライン7が消費する電気エネルギーは削減されることとなる。
つまり、このような生産形態も、効率的な部品実装基板の生産を実現する一形態である。
そのため、図8を用いて説明したように、実装条件決定装置20は、消費エネルギーを削減することを主な目的とした実装条件を決定する。
図16は、実装ライン7のスループットを低下させず消費エネルギーを削減する場合の振り分け数等の例を示す図である。
A基板のみが部品実装の対象である場合、図15に示したように、実装ユニットの使用台数が2であれば、スループットの低下とならず、満載率が1となる。
具体的には、図16(A)に示すように、1つの装着ヘッドに振り分けられる部品の個数は12となり、論理タスク数は1となる。従って、実タスク数も1であり、満載率も1である。
この場合、実装条件決定装置20は、図16(B)に示すように、例えば、使用する実装ユニットとして実装ユニット1と実装ユニット2とを選択し、各実装ユニットに、A基板に実装すべき部品の種類および個数等の実装条件を設定する。
また、残り4台の実装ユニットに対しては、部品の実装を行わず、基板の下流への搬送のみを行う旨の実装条件を設定する。
これにより、実装ユニット1と実装ユニット2とはそれぞれ、2つの装着ヘッド121を1タスクずつ動作させ、24個の部品をA基板に実装する。
この動作を繰り返し、実装ライン7からは、A基板に48個の部品が実装された部品実装基板が約10秒あたり1枚生産される。
つまり、この場合のスループットは、図9に示す、全6台の実装ユニットを使用した均等振り分けの場合のスループットと同じく、6枚/60秒である。
このように、スループットは低下せず、かつ、おおよそ実装ユニット4台分の消費エネルギーが削減される。
また、この部品実装作業が停止された4台の実装ユニットでは、基板搬送のためのシャトルコンベヤ118は稼動される。しかし、部品カセット106の交換、配列の変更等の段取り換えや、装着ヘッド121の清掃等のメンテナンスは可能である。
従って、このように、一部の実装ユニットに部品を振り分けた場合、言い換えると一部の装着ヘッド121に部品を振り分けた場合、省エネルギー化が実現されるとともに、部品振り分けの対象にならなかった装着ヘッド121およびその周囲の構成要素に対して、段取り換えやメンテナンス等の作業が可能となる。
なお、このように、実装ライン7に含まれる一部の装着ヘッド121に部品を振り分けることを、以下「部分振り分け」と呼ぶ。
ここで、図16では、A基板のみが部品実装の対象である場合を示したが、部品実装の対象がB基板である場合も同様であり、この場合の実装ユニットの使用台数は、実タスクが増加せず、かつ、満載率が1となる3台となる(図15参照)。
従って、実装ライン7において、A基板専用の実装ユニットが2台とし、B基板専用の実装ユニットが3台とすることで、A基板とB基板とに対して並行して部品実装を行うことが考えられる。
また、2台と3台とであれば、交互に並べることが可能であり、図11等を用いて述べたようにスループットを向上させることもできる。
そこで、実装ライン7を構成する6台の実装ユニットのうち、1台の部品実装に係る作業を停止させ、5台の実装ユニットでA基板とB基板とに対して部品実装を行う場合について説明する。
図17は、6台の実装ユニットのうち、2台をA基板専用、3台をB基板専用とした場合の振り分け数等の例を示す図である。
図17(A)に示すように、この場合、それぞれの基板専用の実装ユニットにおける、各装着ヘッド121の論理タスク数は、ともに1であり、従って、実タスク数も1であり、満載率も1である。
また、A基板専用の実装ユニットとB基板専用の実装ユニットとして、図17(B)に示すように、実装ユニット1から交互に選択し、実装ユニット6の部品実装に係る動作は停止させる。
これにより、上述のように、実装ユニット6の部品実装に係る消費エネルギーは削減され、かつ、実装ユニット6に対する段取り換えやメンテナンス等を行うことができる。
また、スループットは、図9に示す、全6台の実装ユニットを使用した均等振り分けの場合のスループットよりも向上する。
図18は、6台の実装ユニットのうち、2台をA基板専用、3台をB基板専用とした場合の実装ライン7における部品実装処理の流れを示す図である。
なお、A基板とB基板とは、実装ユニットの並び順と同じく交互に実装ライン7に投入されている。
この場合、A基板およびB基板は、実装条件決定装置20によって設定された実装条件の下、1台おきに並んだ2台または3台の実装ユニットにより部品が実装される。
具体的には、図18に示すように、B基板は、実装ユニット1、3、および5により部品が装着され、A基板は、実装ユニット2、4により部品が装着される。
従って、図11に示す場合と同じく、実装ライン7からは、部品の装着が完了した基板が約10秒に2枚の割合で排出されることになる。
なお、実装ユニット6に、上流側の実装ユニット5から排出された基板が搬入されると、その基板は、そのまま排出される。つまり。実装ライン7から部品実装が完了した基板として排出される。
つまり、スループットは6枚/30秒であり、図9を用いて説明した均等振り分けの場合よりも計算上、倍のスループットで部品実装基板が排出されていくことになる。
さらに、実装ユニット6は、基板搬送のためのシャトルコンベヤ118が稼動されるのみであり、実装ユニット6に対する段取り換えやメンテナンスが可能である。
つまり、このような生産形態も、効率的な部品実装基板の生産を実現する一形態である。
また、実装ライン7の消費エネルギーを削減するということに着目すれば、図16および図18に示すように、実装ユニットの単位で使用数を制限するのでなく、上述のように、使用ノズルの単位で使用数を制限することによっても、実装ライン7の省エネルギー化が実現される。
図19は、実装ライン7において部品実装に使用される吸着ノズル120の数を制限する場合の、使用ノズル数等の例を示す図である。
例えば、実装ライン7において、実装点数が180であるC基板が部品実装の対象である場合を想定する。
この場合、図19(A)に示すように、1つの装着ヘッドに振り分けられる部品数は、C基板1枚あたり15個(180部品/12ヘッド)であり、各装着ヘッド121の論理タスク数は1.25(15部品/12本)である。従って、実タスク数は2となる。
ここで、この場合、各装着ヘッド121は、12本の吸着ノズル120を有し、2タスクで最大24個の部品をC基板に装着できるのに対し、振り分けられた部品の個数は15である。
従って、各装着ヘッド121は、少なくとも8本の吸着ノズル120を有していれば、同じ2タスクで15個の部品を吸着しC基板に装着することができる。そこで、12本のうち、使用ノズル数を8本に制限し、残り4本の吸着ノズル120の使用を停止する。
これら、使用停止する吸着ノズル120の本数等の実装条件は、実装条件決定装置20の決定部25が、C基板の実装点数等から決定し、決定結果に応じた実装条件が各実装ユニットに設定される。
これにより、例えば、真空圧を発生する装置が、真空圧を供給すべき吸着ノズル120の本数が減ることから、当該装置の稼動に係るが消費エネルギーが削減されることになる。
また、このように使用ノズル数を8本に制限した場合、図19(B)に示すように、各装着ヘッド121の満載率は、0.625から、0.94に向上する。
また、このように使用ノズル数を制限した場合においても、各装着ヘッド121の実タスク数は変わらず、そのスループットは、使用ノズル数を制限せずに、6台全ての実装ユニットに180個の部品を略均等に振り分けた場合のスループットよりも低下することはない。
なお、6本×2列のうちのどの吸着ノズル120の使用を停止するかについては、図19(B)に示す形態でなくてもよい。例えば、同時吸着可能な最大数の6を維持するために、一方の列の6本の吸着ノズルの全ては使用可とし、他方の列のいずれかの4本のみを使用停止にしてもよい。
また、上述のように、装着ヘッド121の単位で使用数を制限することによっても、実装ライン7の省エネルギー化が実現される。
図20は、実装ライン7において部品実装に使用される装着ヘッド121の数を制限する場合の、使用ヘッド数等の例を示す図である。
なお、装着ヘッド121の使用数を制限するということは、装着ヘッド121を稼動させないということである。つまり、装着ヘッド121をX軸方向およびY軸方向へ移動させるビーム122(図3参照)の使用数を制限するということにもなる。
また図20は、図19に示す場合と同じく、実装ライン7において部品実装の対象がC基板である場合を示している。
この場合、図20(A)に示すように、1つの装着ヘッドに振り分けられる部品数は、C基板1枚あたり15個(180部品/12ヘッド)であり、各装着ヘッド121の論理タスク数は1.25(15部品/12本)である。従って、実タスク数は2となる。
ここで、各装着ヘッド121は、12本の吸着ノズルを有し、2タスクで最大24個の部品を基板に装着できる。そのため、各装着ヘッドの実タスク数が2を超えない範囲で、180個の部品をC基板に装着するためには、7.5(180部品/(2タスク×12本))の装着ヘッド121が2タスク分の動作を行うことで足りる。
そこで、実装ライン7に含まれる12の装着ヘッド121のうち、使用ヘッド数を8に制限し、残り4つの装着ヘッド121の使用を停止する。
これら、使用停止する装着ヘッド121の数等は、実装条件決定装置20の決定部25が、C基板の実装点数等から決定し、その決定結果に応じた実装条件が各実装ユニットに設定される。
これにより、装着ヘッド121の稼動に係る消費エネルギー、具体的には、使用停止された装着ヘッド121自体の消費エネルギーおよび、それら装着ヘッド121を移動させるビームの稼動に係る消費エネルギーが削減されることになる。
また、このように使用ヘッド数を8に制限した場合、図20(B)に示すように、各装着ヘッド121に振り分けられる部品の個数は、22個または23個(180部品/8ヘッド)である。
従って、使用される各装着ヘッド121の満載率は、0.625から、0.92または0.96に向上する。
なお、使用停止される4つの装着ヘッド121を、12の装着ヘッド121の中からどのように選択しても、そのスループットは、使用ヘッド数を制限せずに、6台全ての実装ユニットに180個の部品を略均等に振り分けた場合のスループットよりも原則として低下することはない。
例えば、1つの実装ユニットが備える2つの装着ヘッド121のうち、一方のみが部品実装を行う実装ユニットと、双方の装着ヘッド121が部品実装を行う実装ユニットが混在する場合を想定する。
この場合、双方の装着ヘッド121が部品実装を行う実装ユニットにおいて、一方の装着ヘッド121による部品装着が、他方の装着ヘッド121による部品の吸着と当該部品の認識とが終了するまでに終了した場合には、いずれの装着ヘッド121による部品実装も行われない時間帯が発生することになる。そのため、一方の装着ヘッド121のみが部品実装を行う実装ユニットよりも多少の余分な生産タクトを要することとなる。
しかし、図3の説明で述べたとおり、双方の装着ヘッド121が部品実装を行う実装ユニット、つまり交互打ちを行う実装ユニットにおいて、一方の装着ヘッド121は、他方の装着ヘッド121が部品の吸着等を行っている間に部品実装を行う。
従って、一方の装着ヘッド121のみが部品実装を行う実装ユニットであっても、交互打ちを行う実装ユニットであっても、各装着ヘッド121の実タスク数が同じであれば、各実装ユニットにおける基板1枚あたりの生産タクトほぼ同じである。
つまり、双方の装着ヘッド121が部品実装を行う実装ユニットは、実タスクが増加するわけではなく、基板1枚あたりの生産タクトは、使用ヘッド数を制限しない場合と同じである。
従って、各実装ユニットの生産タクトが厳密には同期しない場合も発生するが、実装ライン7のスループットに変化はない。
なお、図16〜図20を用いて、使用ユニット台数、使用ノズル数、および使用ヘッド数を制限する場合を説明したが、これら図に示す各制限数等は、それぞれ一例であり、他の値等であってもよい。
例えば、使用ノズル数を制限する場合、全ての装着ヘッド121の使用ノズル数を制限するのではなく、一部の装着ヘッド121の使用ノズル数を制限してもよい。
少なくともいずれか1つの装着ヘッド121の1本の吸着ノズル120の使用が停止されれば、実装ライン7の消費エネルギーが僅かではあるが削減されるからである。
使用ユニット台数、および使用ヘッド数についても同じであり、使用を停止してもスループットの低下を招かない範囲で実装ユニットまたは装着ヘッド121の使用を停止するのであれば、一部の実装ユニットまたは装着ヘッド121の使用を停止すればよい。
以上のように、実装条件決定装置20は、実装ライン7の省エネルギー化を主な目的とした実装条件を各実装ユニットに設定する際、例えば、実装条件決定装置20の操作者に選択させ、操作者に選択された実装条件を各実装ユニットに設定させることができる。
図21は、実装条件決定装置20が、複数種の実装条件の中から、各実装ユニットに設定する実装条件を操作者に選択させる際の動作の流れを示すフローチャートである。
実装条件決定装置20のタスク数算出部24は、算出(図8のS10)した均等振り分けの場合の各装着ヘッドの論理タスク数から実タスク数を算出する(S40)。
決定部25は、実タスク数が増加しない範囲で、(1)必要な実装ユニット数、(2)必要なノズル数、および(3)必要な装着ヘッド数を算出する(S41)。具体的には、図14、図15等の説明で述べた通りである。
さらに、算出結果を実装条件決定装置20が備える、または、実装条件決定装置20に接続された表示装置に表示する(S42)。
具体的には、上記(1)〜(3)の結果を実装ラインに反映させる実装条件として、例えば、“実装ユニット2台使用”、“実装ユニット4台使用停止”、または“全ての装着ヘッドの4本の吸着ノズルを使用停止”等の情報が表示される。
その後、実装条件決定装置20が備える、または、実装条件決定装置20に接続されたキーボード等の入力装置からの、操作者によるいずれかの実装条件の選択を受け付ける(S43)。
実装条件決定装置20は、選択された条件を各部品実装機に設定する(S44)。
例えば、“実装ユニット4台使用停止”が選択された場合、実装ユニット1および2に対し、基板に部品を実装させる実装条件を設定する。
また、実装ユニット3〜6の4台には、部品実装に係る動作を停止させ、基板を下流に搬送させる実装条件を設定する。
これにより、操作者の選択に従った実装条件の下で、各実装ユニットが稼動し、効率的に部品実装基板が生産される。
このように、本実施の形態の実装条件決定装置20は、まず均等振り分けの場合のスループットに関連する値を算出する。
つまり、実装ラインを構成する全ての部品実装機に部品実装を行わせることを前提とすると、この均等振り分けの場合が最もスループットが高いものとなり、実装条件決定装置20は、このスループットを基準とする。
さらに、その値に基づいて、スループットの低下とならない範囲で、少なくとも1つの装着ヘッドの満載率を向上させる実装条件を決定する。
具体的には、本実施の形態においては、1台の実装ユニットが1台の部品実装機であり、スループットに関連する値として、各装着ヘッドの論理タスク数および実タスク数を算出する。
また、各装着ヘッドの実タスク数が増加しない範囲で、少なくとも1つの装着ヘッドの満載率を向上させる実装条件を決定する。
これにより、決定された実装条件の下で各部品実装機が稼動する実装ラインにおいて、部品実装基板の生産が効率化されることになる。