JP2008121304A - 耐酸性強力アンカー - Google Patents
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Abstract
【解決手段】削孔中にアンカー体5を挿入しこれをセメント系の定着材6で定着したアンカーであって、前記定着材6の構成化合物がアルミン酸三カルシウム:0.2〜1.5%、ケイ酸三カルシウム:60〜70%、ケイ酸二カルシウム:15〜25%、鉄アルミン酸四カルシウム:10〜15%を含む耐酸性充填剤からなり、前記アンカー体5が、本体表面にイソフタル酸8〜20モル%、固有粘度が0.7〜1.0%のイソテレフタル酸共重合飽和ポリエステルを粉体塗装している。
【選択図】図4
Description
このような工法においては、ワイヤロープの端部を地盤に強固にアンカーすることが肝要であるが、施工場所が火山地帯や温泉地帯などの強酸土壌や酸性ガス雰囲気である場合、さらには酸性雨が降り、地下水の酸性化が進行するといわれる昨今においては、アンカー固定のための定着材としてのセメントの劣化が促進されとともに、アンカー体も酸による腐食の進行が早くなる。
しかも、定着材により定着されるべきアンカー体が一般に鋼製であったため、前記のように海水や潮風にさらされる場所や、塩水流入河川や火山地帯の酸性雰囲気といった厳しい腐食環境においては耐食性が損なわれて強度が低下し、耐用年数が短くなる問題があった。
これによれば、アンカー体の塗膜の密着性がよいこととあいまって前記特定の定着材とアンカー体の付着力を強化することができ、かつ、塗膜が薄くアンカーの異形状態を維持できるので、アンカー引き抜き力による塗装組織のせん断破壊が起きず、強固な一体性を維持することができる。
アンカー体は異形鉄筋棒やボルトのほか、ワイヤロープからなる場合を含む。アンカー体をワイヤロープで構成したときには、施設構成部材であるワイヤロープを利用することができるため、特に専用のアンカー体を製作しておく必要がなくなり、工事費を節減することができる。
塗膜であるイソフタル酸8〜20モル%、固有粘度が0.7〜1.0%のイソテレフタル酸共重合飽和ポリエステルは溶融温度に達したときに粘性が水に近い物となるので、ワイヤロープの撚り合わせ素線間の微細な凹凸や隙間をよく濡らして固化される。しかも耐候性がよく、塗膜が強靭で例えば引張試験での破断時の強い衝撃でも地肌から塗装が剥離することがなく、更に密着性が抜群にすぐれ、密着強度がエポキシ樹脂の3〜5倍にも達するので、塗装表面に亀裂が発生せず耐久性にも優れている。
図1ないし図4は本発明にかかる耐酸性強力アンカーを自然保護型落石防止工であるロープネットに適用した例を示している。
このロープネットは、図1と図2のように、平行状の多数の縦ワイヤロープ1と横ワイヤロープ2をたとえば2000mm間隔で格子状に組んで網目状に構成されたロープネットRNを法面に密着するように敷設したもので、樹木WOの位置にあわせてロープの網目を調整することで伐採を最小限にとどめることができるため、浮石STを効果的に抑えることができしかも自然にやさしい工法であるとされている。
各縦ワイヤロープ1の山側端末部分と谷側の端末部分は、それぞれ地盤にアンカーされ、横ワイヤロープ2の左右端末部分も地盤にそれぞれアンカーされ、網目の交差部分も地盤にアンカーされる。地盤が土砂質である場合にはパイプアンカーPAKが使用され、地中に打ち込まれて摩擦力で保持されるが、地盤が岩盤である場合に本発明が適用される。図1において、黒の四角は本発明アンカーAKを示している。
前記凹凸は、塗装前の断面円周長aと塗装後の断面円周長bの比(a/b)が0.8〜1.0%の範囲とすることが好ましい。これは、(a/b)が0.8%以下であると十分な耐食効果が得られず、1.0%を超えると塗膜が引張り力で破壊される可能性が懸念されるからである。
前記変性飽和ポリエステル樹脂は、一定温度に達すると粘性が著しく低下して水のようないわゆる「しゃぶしゃぶ」の状態になる。このため微細な隙間にも入り、そこにある固体を濡らし固化して被膜を形成する。しかも、密着性が非常にすぐれ、密着強度が150kg/cm2にも達する特性がある。
静電塗装装置はたとえば静電吹付けが用いられ、樹脂粉末を荷電させ、エアガンによりアンカー体表面に吹付けることによって行われる。これにより、樹脂粉末はショットブラストを施されて凹凸が散在しているアンカー体5の表面に静電気により付着させられる。アンカー体5がワイヤロープである場合、隣り合う素線間の隙間やストランド間の隙間に侵入しやすくするために、樹脂粉体は80メッシュパスより細かい粒度のもの好適には120メッシュパスより細かいものを用い、厚さ40〜170μmになるように塗装条件を制御して行う。
ロープの場合は高周波加熱が好適であり、ロープを走行させながらロープに高周波コイルにより高周波を印加することにより、ロープ表面から内部に熱拡散して均一な加熱状態となる。樹脂粉末はロープ表面に接している下層から溶融し、ショットブラストによる無数の凹凸に流入してくさびのように食いこんで密着され、素線の表面、ストランドの表面に均一な膜を形成する。
C3A(アルミン酸三カルシウム):0.2〜1.5%
C3S(ケイ酸三カルシウム):60〜70%
C2S(ケイ酸二カルシウム):15〜25%
C4AF(鉄アルミン酸四カルシウム):10〜15%
なお、残部として、酸化マグネシウム(MgO),三酸化硫黄(SO3),塩化物イオン、全アルカリなどが含まれる。
しかし、普通ポルトランドセメントや早強ポルトランドセメントにおいて、化学構成物の5〜10%と相当高い比率を占めるアルミン酸三カルシウムの水和物は硫酸塩に侵食されやすい。そこで本発明はアルミン酸三カルシウムの構成比率を早強ポルトランドセメントよりも1/3以上減らし、これにより耐硫酸塩性を向上させたものである。上記範囲を限定したのはこの範囲を外れると十分な水和活性が得られず、所定の強度が得られないからである。
定着材6はカプセル状容器6aに充填されているので工事現場での持ち運びが便利であり、セメントへの水の浸漬管理が容易で品質の安定性が得られ、現場では軽量混練、注入作業が不要となり、作業の簡素化を図ることができるとともに短時間施工を行える。
前記のようにアンカー体5は表面に凹凸を有し、粉体塗装膜7が非常に密着性がよく、しかも粉体塗装膜7は前記特定成分(構成化合物)の耐硫酸塩ポルトランドセメントとの親和性がよいので、付着応力度(N/mm2)が非常に高く、緊密強固に一体化される。
また、紙面に対して右側の部分では、2本程度の縦ロープ1が山側に導かれ、本発明のアンカーAKに連結されている。そして、紙面に対して左側の部分では縦ロープ1が山側に導かれ、土砂用のアンカー装置Aに連結されている。
前記ロープ部分5aは上記荷重方向変換用サドル9の表面に沿い、サドル長手方向と交差する方向に張設され、ロープの先端は直接かまたは連結用部たとえばアイを介して前記最上段ロープRT、縦ロープ1あるいは横ロープ2などメインロープが連結される。もとよりロープ部分5aをそのまま延長して最上段ロープRTや縦ロープ1、横ロープ2としてもよい。
定着材6は、第1実施例に示したものと同様であり、また、定着工程については図4に示すところと同じであるから、説明は援用する。
前記ロープ部分とアンカー部分は、7×7構造など任意であり、全体に耐食メッキたとえば亜鉛メッキ好適には亜鉛―アルミ合金メッキが施され、かつ表面に前記第1実施例に述べた特定の粉体塗装膜7を有している。
図9〜10はそうしたアンカー体5およびこれと繋がるワイヤロープの例を示しており、10は6mm以上の直径のロープ本体であり、複数本の素線10aを撚りあわせたストランド10bの複数本を撚り合せて構成され、この例では、3×7構造となっており、各ストランド間には谷部11が形成されている。
そして、ロープ本体表面全体に、飽和ポリエステル系合成樹脂でイソフタル酸8〜20モル%を含み、固有粘度が0.7〜1.0のイソテレフタル酸共重合飽和ポリエステル樹脂が焼き付け塗装されている。
これによれば、1度の工程で能率よくすることが生産できる。また、素線に塗装してその素線を撚りあわせたものでなく、ストランドを撚り合せて作成したロープ全体を直接塗装し、ロープ全体を被膜で覆っているので、撚り合せに伴う塗膜の剥離や損傷が生じない。したがって、良好な耐食性を得ることができる。
図14は本発明のロープの例を示しており、ストランド本体の表面に焼付け塗装膜7を施した塗装ストランド10bを3本撚り合せて3×7構造としたものである。他の構成は記述したところと同じであるから説明は援用する。
ストランドは丸線と異なって凹凸が大きいので、常温の状態のストランドにいきなり高周波加熱を施すと山部と谷部での温度差が大きいため、加熱ムラが生じて安定した塗装表面が得難い。そこで、前記静電塗装前までに予熱を施しておく。この予熱は、高周波加熱でも雰囲気加熱でもよい。こうした予熱工程を採用して2段階加熱を行ったときには、ロープの山部と谷部の温度差を少なくすることができるため、山部と谷部での被膜厚さの不均一さが抑制され、全体としてピンホールのない均一な薄膜とすることができる。
具体例1:
亜鉛めっきを施した7本の素線を撚り合わせたストランドを3本撚り合わせた3×7構造の直径30mmのワイヤロープ本体に、塗膜厚が平均120μmの非常に均一で(L/d)×100が8.2(%)のピンホールのないイソフタル酸8〜20モル%を含み、固有粘度0.7〜1.0のイソテレフタル酸共重合飽和ポリエステルの焼付け塗装を施した。この塗装は、引張破断時の強い衝撃でも剥離することなく、塗膜の密着性も良好で、通常の非塗装ロープの巻収に用いられるドラムに巻き付けても剥離やクラックが生じないことが確認された。塩水噴霧試験機にかけて5000時間を経過しても錆やクラックの発生は皆無であった。
亜鉛めっきを施した19本の素線を撚り合わせたストランドを更に7本撚り合わせた図11に示す7×19構造の直径30mmのワイヤロープ本体に樹脂粉体としてイソフタル酸8〜20モル%を含み、固有粘度0.7〜1.0のイソテレフタル酸共重合飽和ポリエステルを焼付け塗装した。
塗膜厚は平均70μmでピンホールがなく、(L/d)×100が7.9(%)であった。この塗装は、引張破断時の強い衝撃でも剥離することなく、塗膜の密着性も良好で、通常の非塗装ロープの巻収に用いられるドラムに巻き付けても剥離やクラックが生じないことが確認された。塩水噴霧試験機にかけて5000時間を経過しても錆やクラックの発生は皆無であった。
樹脂粉体としてイソフタル酸8〜20モル%を含み、固有粘度0.7〜1.0のイソテレフタル酸共重合飽和ポリエステルを用い、亜鉛めっきを施した7本の素線を撚り合わせたストランドを3本撚り合わせた図13の1×7構造で直径10mmのストランドに塗膜厚が平均118μmの非常に均一で(L/d)×100が7.2(%)のピンホールのない薄い樹脂粉末焼付け塗装を施した。この塗装は、引張破断時の衝撃でも剥離することなく、塗膜の密着性も良好であった。
得られたストランド7本を更に撚り合わせて図12の直径30mmの7×7構造のロープを製作した。ロープを通常の無塗装ロープの巻収用に用いられる直径710mmのドラムに緊密に巻いても塗装の剥離やクラックは発生せず、繰り出しても何らの異常の見られず、塩水噴霧試験機にかけて5000時間を経過しても錆やクラックの発生は皆無であった。
亜鉛めっきを施した7本の素線を撚り合わせた1×7構造の直径8.9mmのストランドの全周に同様に塗装し、この塗装ストランド3本を撚り合わせて図14の3×7構造の直径18mmのロープを製作した。樹脂粉体としては、イソテレフタル酸共重合飽和ポリエステルに酸化チタンと顔料を3%配合し、攪拌混合したものを使用した。
ストランドの塗膜厚は平均103μmでピンホールがなく、(L/d)×100が7.6(%)であった。この塗装は、引張破断時の衝撃でも剥離することなく、塗膜の密着性も良好で、直径540mmのドラムに緊密に巻いても剥離やクラックが生じなかった。ロープを直線状態に戻しても何らの異常も見られず、塩水噴霧試験機にかけて5000時間を経過しても錆やクラックの発生は皆無であった。
構成化合物:
アルミン酸三カルシウム:0.7%、ケイ酸三カルシウム:64%、ケイ酸二カルシウム:19%、鉄アルミン酸四カルシウム:13%、残部(酸化マグネシウム,三酸化硫黄,塩化物イオン、全アルカリなど)3.3%
前記定着材をベースとして供試体を作製し、試験を行った。比較のため、従来定着材(早強ポルトランドセメント)についても供試体を作製し、試験を行った。従来定着材は、構成化合物が、アルミン酸三カルシウム:5%、ケイ酸三カルシウム:50%、ケイ酸二カルシウム:28%、鉄アルミン酸四カルシウム:12%、残部5%である。
各供試体はセメントペーストに対しW/C:36%とし、24時間型枠中で養生(20℃、80rh%)し、型枠から取り出し、端面切削後試験に供した。供試体の寸法は、直径30×高さ60mmである。.
外観変化状況は、4週間浸漬後から変化が大きくなり、13週浸漬後においては、従来品は表面の剥離、析出、変色が見られたが本発明品は変化がなく、4週間浸漬後品の内部断面観察を行ったところ、従来品は微細クラック状の水溶液浸透跡が見られたが、本発明品は変化がなかった。
アンカー体は、具体例1の仕様で、図12に示す7×7構造の直径30mmを使用した。この粉体樹脂塗膜付きアンカー体を直径114.3mm、厚さ4.5mm、高さ300mmの底付きパイプにセットし、前記定着材を充填して定着させ、1週間以上経過後、引張り試験を実施した。比較のため、表面に粉体樹脂塗膜を施さないめっきのみのアンカー体を用意し、これについても上記実験を行った。引張り試験はアンカー体の他端を端末合金加工し、前記底付きパイプを固定し、引張り試験機で端末合金加工部分を引張ることで実施した。
なお、アンカー体として、直径が24mm、20mmのものについても上記試験を行ったが、いずれも付着応力度は11.4〜11.5N/mm2であった。
また、本発明は岩盤におけるアンカーのほか、土砂部のアンカーとしても適用が可能である。
6 定着材
7 粉体樹脂塗膜
10 ロープ本体
Claims (3)
- 削孔内にアンカー体を挿入しこれをセメント系の定着材で定着したアンカーであって、前記定着材がC3A(アルミン酸三カルシウム):0.2〜1.5%、C3S(ケイ酸三カルシウム):60〜70%、C2S(ケイ酸二カルシウム):15〜25%、C4AF(鉄アルミン酸四カルシウム):10〜15%を含む耐酸性構成化合物からなり、前記アンカー体が、本体表面にイソフタル酸8〜20モル%、固有粘度が0.7〜1.0%のイソテレフタル酸共重合飽和ポリエステルを粉体塗装していることを特徴とする耐酸性強力アンカー。
- アンカー体は表面に塗装前の断面円周長aと塗装後の断面円周長bの比(a/b)が0.8%〜1.0%の範囲の凹凸があり、凸部の塗装厚さが300ミクロン以下であることを特徴とする請求項1に記載の耐酸性強力アンカー。
- アンカー体は異形鉄筋棒やボルトのほかワイヤロープからなる場合を含むことを特徴とする請求項1または2に記載の耐酸性強力アンカー。
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