JP2008115073A - 表面が界面活性剤でコーティングされた炭素ナノチューブ及びその製造方法 - Google Patents

表面が界面活性剤でコーティングされた炭素ナノチューブ及びその製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】界面活性剤がコーティングされた炭素ナノチューブが外部の環境変化にも安定的な分散状態を維持するとともに、乾燥後、水中に入れても安定的に分散する炭素ナノチューブの製造方法と、この炭素ナノチューブを提供すること。
【解決手段】(i)炭素ナノチューブと界面活性剤を1:2〜2:5(w/w)の比率で混合し、酸素を除去する工程と、(ii)前記工程から得られた混合物と酸素のない水を0.7:100〜0.8:100(v/v)の比率で混合し、超音波処理して炭素ナノチューブを分散させる工程と、(iii)前記工程から得られた分散溶液に界面活性剤の量に対して1〜5%(モル比)の開始剤を使用し、55〜65℃で12〜24時間の間、攪拌しながら炭素ナノチューブの表面に界面活性剤をコーティングする工程とを包含してなる、界面活性剤がコーティングされた炭素ナノチューブの製造方法を提供することによって上記課題を解決する。
【選択図】図2

Description

本発明は、表面が界面活性剤でコーティングされた炭素ナノチューブ及びその製造方法に関する。より具体的には、本発明は炭素ナノチューブと界面活性剤の混合物に水を加えて超音波処理した後、開始剤を使用して界面活性剤を炭素ナノチューブの表面にコーティングさせる工程とを包含する、界面活性剤により表面がコーティングされた炭素ナノチューブの製造方法及び前記方法によって製造された表面が界面活性剤でコーティングされた炭素ナノチューブに関する。
単一壁炭素ナノチューブ(single wall carbon nanotube:以下SWNTと略記する)は、一般的に炭素ナノチューブとも称し、その機械的、電気的、熱的特性によって分子サイズの電子素材、高分子ナノ重合体、エネルギー貯蔵装置、強化構造体など多様に活用されており、その応用性がさらに拡大されている実情である。しかし、炭素ナノチューブを活用または応用するためには、それぞれ個別の炭素ナノチューブに分離された状態で水溶液内に分散させる工程が必要である。
最近、このような炭素ナノチューブの水溶液分散を可能にする方法が開発されている。例えば、界面活性剤を炭素ナノチューブの周囲に吸着させてナノチューブを分散させる方法(非特許文献1参照)、親水性高分子を利用してナノチューブを分散させる方法(非特許文献2参照)、DNAのような生体物質を利用してナノチューブを分散させる方法(非特許文献3参照)などがある。しかし、このような分散法を使用して分散させた炭素ナノチューブ分散体は、磁気結合構造体の動的特性によって、外部の環境変化に従って分散体が再凝集する問題がある。例えば、界面活性剤を炭素ナノチューブの周囲に吸着させて分散させたナノチューブから界面活性剤が除去される場合、ナノチューブが再凝集する現象などが発生する。
したがって、外部の環境変化によっても再凝集することなしに分散状態が維持されている炭素ナノチューブを開発することが要求されている。
Nano Lett.,2:269−273,2003 Macromolecules,32:2569−2576,1999 Science,302:1545−1548,2003
本発明者は、外部環境の変化によっても再凝集することなく分散状態を維持することのできる炭素ナノチューブを開発するために鋭意研究した結果、界面活性剤を炭素ナノチューブに吸着させて個別のナノチューブに分散させた後、炭素ナノチューブの表面に界面活性剤をコーティングする場合、外部の環境変化によっても安定的な分散状態を維持するとともに、完全に乾燥させた後、さらに水中に入れても安定的に分散状態が維持される、界面活性剤が表面にコーティングされた炭素ナノチューブを製造することができることを確認して本発明の完成に至った。
つまり、本発明の主な目的は、再凝集の現象が生じない水溶液内において分散させることのできる炭素ナノチューブを提供する。
本発明の他の目的は、前記炭素ナノチューブの製造方法を提供する。
本発明者等は、外部の環境に変化がある場合にも分散されている炭素ナノチューブが再凝集する現象をなくす方法を開発するために、多様な方法を検討する過程で、界面活性剤の処理を終えたナノチューブが再凝集する原因は、炭素ナノチューブから界面活性剤が除去されるときに発生する凝集現象であることを発見して、先ず炭素ナノチューブから界面活性剤が除去されない場合は、外部の環境に変化があっても炭素ナノチューブの再凝集は生じないという仮定を立てた。ここで、炭素ナノチューブから界面活性剤が除去されないようにするための、多様な方法を検討した結果、炭素ナノチューブに界面活性剤をコーティングすることによって、外部環境の変化があっても炭素ナノチューブから界面活性剤が除去されないことが認められた。これを確認するために、表面が界面活性剤でコーティングされた炭素ナノチューブと前記界面活性剤がコーティングされた炭素ナノチューブを乾燥してさらに水に再分散させたナノチューブに対してUV−vis−NIR領域における吸光度及び分散能力を測定した結果、両者とも同一のレベルであることが確認された。さらに、それぞれの炭素ナノチューブを3ヶ月間放置した後にも放置以前と同一レベルの分散能力を示すことが確認された。
前記のような仮定と実験結果に基づいて、本発明の界面活性剤がコーティングされた炭素ナノチューブの製造方法を次のように整理した。(i)炭素ナノチューブと界面活性剤を1:2〜2:5(w/w)の比率で混合し、酸素を除去する工程と、(ii)前記工程から得られた混合物と酸素のない水を0.7:100〜0.8:100(v/v)の比率で混合し、15〜20kHzの周波数で1〜1.5時間の間、超音波処理して炭素ナノチューブを分散させる工程と、(iii)前記工程から得られた分散溶液に界面活性剤の量に対して1〜5%(モル比)の開始剤を使用し、55〜65℃で12〜24時間の間、攪拌しながら炭素ナノチューブの表面に界面活性剤をコーティングする工程とを包含する。本発明の界面活性剤がコーティングされた炭素ナノチューブの製造方法を実施するにおいて、炭素ナノチューブは単一壁炭素ナノチューブ(SWNT)を使用することが好ましく、界面活性剤はセチルトリメチルアンモニウム4−ビニルベンゾエート(以下CTVBと略記する)を使用することが好ましく、開始剤は2,2’−アゾビス[2−(2−イミダゾリン−2−イル)プロパン]ジヒドロクロリドを使用することが好ましい。
一方、前記(i)の工程において、炭素ナノチューブと界面活性剤の混合比率が2:5(w/w)未満の場合には、界面活性剤の過多によって開始剤による反応収率が低くなり、1:2(w/w)を超過する場合には、界面活性剤の不足によって充分なコーティングがなされない。また、前記(ii)の工程において、炭素ナノチューブを分散させるために、炭素ナノチューブに水を混合する比率と超音波処理する条件は当業界において公知のことである(M.J.O’Connell,Science,297:593,2002;M.J.O’Connell,Nano. Lett.,3:269,2003参照)。さらに、(iii)の工程において、界面活性剤のコーティング反応に使用される開始剤は、当業界において公知のことであり(S.R.Kline,Langmuir,15:2726,1999;T.H.Kim,et al.,Langmuir,22:2844,2006参照)、開始剤を使用して55℃未満の温度で反応させる場合には、炭素ナノチューブに界面活性剤が充分にコーティングされず、反面、65℃超の温度で反応させる場合には、界面活性剤が炭素ナノチューブの表面にコーティングされる効率が低下する問題がある。また、12時間以内の間反応させる場合には、炭素ナノチューブに界面活性剤が充分にコーティングされず、反面、24時間以上反応させる場合には、界面活性剤の炭素ナノチューブへのコーティングがそれ以上進行しないので24時間以上の反応は不要であることを分った。
同時に、前記コーティング反応が終了された反応物にはCTVBがコーティングされたSWNTの他にも、コーティングされていない多量のCTVBが存在するため、前記の反応物の中からCTVBがコーティングされている純粋なSWNTのみを分離抽出するために、前記(iii)工程のコーティングを終了した後、その反応物を100,000×g〜150,000×gで3〜5時間の間遠心分離を行い、その上澄液を採取して乾燥させる工程をさらに包含することもある。
上述のように、本発明の界面活性剤がコーティングされた炭素ナノチューブは外部の環境変化にも安定的な分散状態を維持するだけでなく、完全に乾燥させた後、さらに水中に入れても安定的に分散させることができるので、炭素ナノチューブを利用する各種電子素材などの製品開発に広く活用することができる。
以下、実施例を通じて本発明をより詳細に説明する。ただし、これらの実施例は、本発明をより具体的に説明するためであって、本発明がこれらの実施例に限定されるものではない。
(実施例1)界面活性剤がコーティングされた炭素ナノチューブの製造
先ず、酸素が除去された水を得るために、ゴム栓のバイアルに蒸留水を充填、ゴム栓で密封した後、2本の注射針をゴム栓を通してバイアル内に挿入した。その中、1本の注射針を通して窒素ガスを注入するとともに、他の注射針では注入された窒素によって押し出される空気ガスが排出されるようにした。30分の間、このような窒素ガス注入を終えた後、注射針を除去して酸素が除去された水を得た。
次に、それぞれ2gのSWNT(純度98%、CNI Co.,USA)と、公知の方法で合成された5gの界面活性剤(CTVB)(Langmuir,22:2844−2850,2006参照)を混合して、ゴム栓のバイアルに入れて密封した後、上述と同様の方法によってバイアル内部の酸素を除去した。
その後、注射器を利用して前記酸素が除去された水1Lを前記バイアルに注入した後、前記バイアルをカップホーン(cup−horn)方式のソニケーター(VCX750, Cole Palmer Co.,USA)により、略500Wの電力を印加して生じた20kHzの周波数で1時間の間超音波処理した後、CTVBの量に対して5%(モル比)で開始剤であるVA−044(2,2’−アゾビス[2−(2−イミダゾリン−2−イル)プロパン]ジヒドロクロリド)(Sigma Chem. Co.,USA)を前記バイアル内部に注入し、1日間攪拌しながらコーティングさせることによって、CTVBがコーティングされたSWNTを作製した。その後、前記作製されたCTVBがコーティングされたSWNTをNMR(Bruker NMR FT−500MHz)によって測定し、コーティングされたCTVB、コーティングされていないCTVB、及びCTVBがコーティングされていないSWNTとのNMR測定結果と比較した(図1参照)。
図1は、界面活性剤(CTVB)と炭素ナノチューブ(SWNT)コーティング反応物のNMR分析結果を示すスペクトルであって、a)はコーティングされたCTVBのNMR分析結果を示し、b)はコーティングされていないCTVBのNMR分析結果を示し、c)はCTVBがコーティングされたSWNTのNMR分析結果を示し、d)はCTVBがコーティングされていないSWNTのNMR分析結果を示している。図1のb)及びd)から分るように、CTVBのビニル基とベンゼン環のピークは、NMR分析の時に5から8ppm間に存在するが、図1のa)及びc)から分るように、コーティングされた反応物には示されていないことを分かる。これは、界面活性剤が炭素ナノチューブの表面にコーティングされながら界面活性剤の運動性が低下してT2緩和時間(relaxation time)が短縮されるに従って発生する現象であるため、これを通じてコーティング反応が行われたことを確認することができた。
なお、前記コーティング反応が終った反応物には、CTVBがコーティングされたSWNTの他にも、コーティングされていない多量のCTVBが存在するため、前記反応物からCTVBがコーティングされた純粋なSWNTだけを分離抽出するために、前記反応物を略110,000×gで4時間の間、遠心分離を行い、その上澄液中の上位60%程度の溶液だけをピペットで採取した後、これを乾燥させることによって界面活性剤がコーティングされた炭素ナノチューブを取得した(図2参照)。図2は、界面活性剤がコーティングされた炭素ナノチューブ製造方法を概略的に示す模式図である。
(実施例2)界面活性剤がコーティングされた炭素ナノチューブの分散安定性の測定
前記実施例1で作製した界面活性剤コーティングの炭素ナノチューブは、SWNTの表面に形成されているCTVBのコーティング層が固く固化されているため、外部の激しい環境の変化によってもCTVB層が破壊されないメリットを有する。したがって、分散液の液相成分を完全に蒸発させて乾燥された固化状態のP−SWNTを作製した後、さらにこれを水に入れて略10分間ただ振うだけのことで、初期状態のように良好な分散状態を維持することができることを予想してこれを確認することにした。
先ず、前記実施例1で作製した界面活性剤コーティングの炭素ナノチューブ(対照群)と、前記界面活性剤がコーティングされた炭素ナノチューブを凍結乾燥させて固形粉にして得た後、これをさらに水に分散させ、再分散された界面活性剤コーティングの炭素ナノチューブ(実験群)とをそれぞれ準備した。
次いで、前記対照群と実験群を分光計(Jasco V−570,Jasco Co.,USA)を利用してそれぞれUV−vis−NIR領域における吸光度を測定した(図3参照)。図3は対照群と実験群とのUV−vis−NIR領域における吸光度を測定した結果を示すスペクトルであって、実線は対照群を示し、点線は実験群を示す。図3のように、UV−vis−NIR領域における吸光度を測定した結果によれば、対照群と実験群との比較において特別な差異がないことを確認することができた。
一方、前記対照群と実験群とをそれぞれ準備した直後と、3ヶ月経過後の分散能力をSANS(small angle neutron scattering、米国NISTのNG7ビームラインに所在)装置によって比較した。このとき、6Åの中性子波長を使用して0.0015Å−1<q<0.5368Å−1の領域において測定し、qは(4π/λ)sin(θ/2)であり、中性子ビームの波長λと散乱角度θで表示した(図4及び図5参照)。図4は作製直後の対照群と実験群とをSANS装置によって得た分散能力の結果を示すグラフであり、図中「△」は対照群=凍結乾燥前を、「○」は実験群=凍結乾燥後を表している。図5は作製直後の対照群と3ヶ月経過後の実験群とをSANS装置によって測定した分散能力を示すグラフである。図4及び図5のように、対照群と実験群は作製された直後はもちろん、3ヶ月が経過した後においても同一レベルの分散能力を保有していることが確認された。
以上のような実施例と前記実験結果を総合するとき、本発明による界面活性剤がコーティングされた炭素ナノチューブは、乾燥させた後再分散させた場合においても乾燥される以前と同一レベルの分散性を示し、このような特性は時間が経過してもその分散能に変化がないため、従来のナノチューブとは区別される優秀な分散性能を有していることが確認された。
界面活性剤(CTVB)と炭素ナノチューブ(SWNT)コーティング反応物のNMR分析結果を示すスペクトルである。 界面活性剤がコーティングされた炭素ナノチューブの製造方法を概略的に示す模式図である。 界面活性剤がコーティングされた炭素ナノチューブ(対照群)と乾燥後再分散された界面活性剤がコーティングされた炭素ナノチューブ(実験群)とのUV−vis−NIR領域における吸光度を測定した結果を示すスペクトルである。 作製した直後の界面活性剤コーティングの炭素ナノチューブ(対照群)と乾燥後再分散された界面活性剤コーティングの炭素ナノチューブ(実験群)をSANS装置によって測定した分散能力を示すグラフである。 3ヶ月経過後の界面活性剤コーティングの炭素ナノチューブ(対照群)と乾燥後再分散された界面活性剤コーティングの炭素ナノチューブ(実験群)をSANS装置によって測定した分散能力を示すグラフである。

Claims (6)

  1. (i)炭素ナノチューブと界面活性剤を1:2〜2:5(w/w)の比率で混合し、酸素を除去する工程と、
    (ii)前記工程から得られた混合物と酸素のない水を0.7:100〜0.8:100(v/v)の比率で混合し、15〜20kHzの周波数で1〜1.5時間の間、超音波処理して炭素ナノチューブを分散させる工程と、
    (iii)前記工程から得られた分散溶液に界面活性剤の量に対して1〜5%(モル比)の開始剤を使用し、55〜65℃で12〜24時間の間、攪拌しながら炭素ナノチューブの表面に界面活性剤をコーティングする工程とを包含してなる、界面活性剤がコーティングされた炭素ナノチューブの製造方法。
  2. 前記炭素ナノチューブは単一壁炭素ナノチューブ(single wall carbon nanotube;SWNT)であることを特徴とする請求項1に記載の界面活性剤がコーティングされた炭素ナノチューブの製造方法。
  3. 前記界面活性剤はセチルトリメチルアンモニウム4−ビニルベンゾエート(CTVB)であることを特徴とする請求項1または2に記載の界面活性剤がコーティングされた炭素ナノチューブの製造方法。
  4. 前記開始剤は2,2’−アゾビス[2−(2−イミダゾリン−2−イル)プロパン]ジヒドロクロリドであることを特徴とする請求項1、2または3に記載の界面活性剤がコーティングされた炭素ナノチューブの製造方法。
  5. 前記(iii)の工程においてコーティングを終了した後、その反応物を100,000×g〜150,000×gで3〜5時間の間遠心分離を行い、その上澄液を採取して乾燥させる工程をさらに包含することを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の界面活性剤がコーティングされた炭素ナノチューブの製造方法。
  6. 請求項1〜5のいずれかに記載の製造方法によって製造された表面に界面活性剤がコーティングされた炭素ナノチューブ。
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