JP2008106327A - 錫微粉末およびその製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】 粒径が微小で且つ粗粒を含まず、多層配線基板の導電ペースト用や導電樹脂用の導電性粒子として好適な錫微粉末、並びにその錫微粉末を効率よく製造する方法を提供する。
【解決手段】 プラズマ法により錫微微粒子を生成させ、錫の一次粒子生成部の温度を平均粒径2μmの粒子間の融合温度以下に調整した。得られた錫微粉末は真球状で、平均粒径が0.3〜2μm及び最大粒径が5μm以下であり、粒径の幾何標準偏差が1.6以下で凝集が少なく分散性に優れているものである。
【選択図】 図1

Description

本発明は、IC基板などの多層配線基板に使用される導電性ペースト用及び導電樹脂用の導電性粒子などとして好適な錫微粉末、並びにその製造方法に関する。
従来から、IC基板などの多層配線基板の導電ペースト用や導電樹脂用の導電性粒子として、銀、銅、錫等の低融点金属の粉末が使用されている。これらの金属粉末の製造方法としては、一般に、アトマイズ法やアークプラズマ法等の乾式法と、湿式還元法とが知られている。
特に導電ペースト用の金属粉末については、近年の多層配線基板等のファインピッチ化に伴い、微小粒径で粗粒を含まないことが要求されている。しかし、一般的な水アトマイズ法で作製した金属粉末は粒径分布が広く、しかも平均粒径が5μm以下のものでは真球状粉を得ることが困難であった。
一方、噴霧媒体に不活性ガスを用いるガスアトマイズ法によれば、真球状粉が得られるものの、平均粒径が十数μm程度と大きくなり、微細配線の導電ペースト用としては使用できない。
最近では、上記水アトマイズ法の改良により、平均粒径5μm以下の微粒子も作製可能になっている。しかし、微細配線の導電ペースト用として好適な粒径、例えば平均粒径2μmの微粉末を得るには、広い粒度分布から分級する必要があった。このように改良された水アトマイズ法においても、技術的に後工程の分級法を適用する必要があるうえ、分級効率も10%程度であるため、製造コストが高く、経済的に問題があった。
また、例えば特許文献1には、アークプラズマ法を用いた金属微粒子の製造方法が開示されている。しかし、アークプラズマ法で生成した微粒子は、プラズマガスが高温なため生成直後に非常に強固な凝集が起こりやすいという問題があった。
特に銀等の低融点金属(融点は銀が960.8℃、錫が231.9℃)では粒子間での焼結が進み、ぶどう房状(ネッキング)の形状になる。この粒子間焼結は、融点が低い錫の方が容易に起こる(例えば、非特許文献1参照)という欠点がある。
このようなぶどう房状に凝集した微粒子を導電性ペースト用や導電樹脂用の導電性粒子として用いると、焼結時に凝集微粒子が粗大化して、ボイドやクラックの発生原因になるという問題があった。
さらに、例えば特許文献2には、アークプラズマ法を用い微粒子表面を有機溶剤で被覆することで粒子径が均一で分散性に優れた錫微粉末が提案されている。
しかしながら、微粒子を有機溶剤で被覆することは、装置内への微粒子の付着を起こさせて生産性が低下するばかりか、有機溶剤の高温分解で生じる炭素が錫微粒子に付着して焼成温度を高くする必要がある可能性がある。また、錫微粒子の粒径や分散性を改善するための条件について、十分に開示されているとは言い難い。
一方、一般的な湿式還元法では、粒径1μm以下の金属微粒子の作製が可能である。しかしながら、湿式還元法では、凝集が起こりやすく、粒子形状としても良好な真球状粉を得ることができない。そのため、例えば特許文献3には、保護剤を添加して凝集を抑制しながら、還元する方法が用いられている。この改良された湿式還元法によれば、平均粒径0.1μm以下の金属微粉末が得られるが、粒径が小さいために嵩密度が低く、導電ペースト膜焼成としたとき高密度化が困難であり、また添加した保護剤が残留するため良好な導電性が得られない等の問題があった。
以上のように多層配線基板のファインピッチ化に対応した導電ペースト用や導電樹脂用の導電性粒子として好適な微小粒径で粗粒を含まない真球状の錫微粉末の開発が急務となっている。
特開昭56−9304号公報 特開2006-241549号公報 特開2003−306707号公報 H. Toku,O.W. Bende,A.C. Doring,A.C. de Cruz,P.K. Kiyohara and A.L. Silva,"KONA",21,(2003),163−177
本発明は、上記した従来の事情に鑑み、粒径が微小で且つ粗粒を含まず、多層配線基板の導電ペースト用や導電樹脂用の導電性粒子として好適な真球状の錫微粉末、並びにその真球状錫微粉末を効率よく製造する方法を提供することを目的とする。
本発明者らは、導電ペースト用や導電樹脂用の錫微粉末を製造する方法について鋭意検討した結果、形状が真球状で且つ好適な粒径の金属微粒子の製造に適したプラズマ法に着目すると共に、生成装置内の温度を調整することによって、粒径が微小で且つ粗粒を含まず、分散性の良好な真球状錫微粉末が製造できることを見出し、本発明を完成するに至ったものである。
即ち、本発明が提供する真球状錫微粉末は、形状が真球状の錫微粒子からなり、平均粒径が0.3〜2μm及び最大粒径が5μm以下であり、粒径の幾何標準偏差が1.6以下で凝集が少なく分散性に優れており、且つ炭素含有量が0.2質量%以下(炭素含有量が0質量%の場合を含む。)であることを特徴とするものである。
また、本発明の真球状錫微粉末は、比表面積から算出した平均粒径が、レーザー回折法により測定した平均粒径の50〜150%であることも特徴とするものである。
更に、上記本発明の真球状錫微粉末を製造する方法は、プラズマ法により錫微粉末を製造する方法であって、プラズマ出力と原料供給量または生成量との比を制御して一次粒子生成部の温度を平均粒径2μmの微粒子間の融合温度以下に調整することにより、分散性に優れた真球状の微粒子を回収することを特徴とするものである。
本発明の製造方法においては、不活性ガスと水素ガスを含む還元性雰囲気中において、錫あるいは錫化合物をプラズマにより気化させ、得られた錫蒸気を凝縮させて微粉化させることが好ましい。
本発明によれば、粒径が均一で且つ粗粒を含まず、分散性に優れた真球状の錫微粉末を効率的に製造することができる。また、有機溶剤の付着を必要としないため、装置・プロセスの簡略化とコストダウンを図ることができる。
また、この錫微粉末は平均粒径が0.3〜2μmと小さく且つ5μmを超える粗粒を含まないため、微細な配線ピッチが要求される導電ペースト及び導電樹脂の導電性粒子として、特にスルーホール用の導電ペーストの導電性粒子として好適に使用することができる。
本発明の真球状錫微粉末は、プラズマ法により非酸化性雰囲気において製造される。プラズマ法による粉末の製造は、プラズマの高温場に曝すことによって被加熱原料を蒸発させた後、凝縮させることで微粒子を生成させるものである。
本発明ではプラズマを利用し、錫あるいは錫化合物を原料としてプラズマ内に投入し、蒸発させた後、凝縮させて錫微粉末を製造する。
本発明の錫微粉末は高純度で形状が真球状であり、微細な配線ピッチが要求される導電ペースト等に適した粒径の錫微粉末である。
具体的には、平均粒径が0.3〜2μmと小さく且つ最大粒径が5μm以下であり、粗粒を含まない。平均粒径が2μmを超えるか又は最大粒径が5μmを超えると、微細な配線ピッチ用の導電ペースト等への適用が難しくなり、また平均粒径が0.3μm未満では微粒子同士の凝集が起こりやすくなる。
また、本発明の錫微粉末は、粒径の幾何標準偏差が1.6以下である。粒径の幾何標準偏差とは、平均粒径を積算篩した15.87%径で除したもの、あるいは、積算篩した84.13%径を平均粒径で除したものであり、粒径分布の均一度を示す指標として広く用いられている。本発明では幾何標準偏差の算出にレーザー回折法による体積積算の測定値を用いた。
ここで、幾何標準偏差が1.6を越えると均一に塗布できないか焼結時にクラックが発生する可能性がある。塗布時の均一性並びに焼結時のクラック防止を考慮すると、粒径の幾何標準偏差は1.4以下であることがより好ましい。
さらに本発明の錫微粉末は、炭素含有量が0.2質量%以下であり焼成が容易に進む。
特に、炭素含有量が0重量%の場合には、焼結させたとき、粒界に炭素がないため、粒界拡散、表面拡散、体積拡散などがより低温で起こりやすく、焼結が進行するため、より好ましい。
炭素含有量が0.2質量%を超えると焼結温度を高くすることが必要となる場合があるので、好ましくない。
本発明の錫微粉末では、比表面積から求めた平均粒径(以下、比表面積径)が、レーザー回折法による体積積算平均粒径(D50)の50〜150%の範囲となるような値になっている。比表面積径とレーザー回折法による平均粒径が近いほど分散性が良く、ペースト等として塗布する際に均一な膜形成が可能となり、焼成時にも収縮が均一でクラック等の発生を防止することができる。
さらに、レーザー回折法、電子顕微鏡(SEM)観察、比表面積法により測定した粒径が、ほぼ同等になっていることから、分散性が一層優れていることがわかる。また、この真球状錫微粉末は、高温に晒されて高結晶性であるため耐酸化性にも優れている。
一般に金属微粒子は表面活性が高いうえ、錫は低融点金属であるため、粒成長・凝集などが起こりやすい。しかし、本発明においては、錫微粒子の生成時の温度ならびに生成から回収までの間の搬送ガス温度を適切に制御するので、有機溶媒被覆などによる凝集抑制を行なわずとも、粒成長及び凝集を抑制することができる。したがって、高純度で低温焼成に優れた錫微粉が得られる。
すなわち、本発明の錫微粉末の製造方法においては、プラズマ法を用いて、原料をプラズマ内に投入して蒸発させた後、凝縮させて錫微粒子を生成させる。このとき、本発明の製造方法では、プラズマ出力、原料供給量および生成量を制御して錫の一次粒子生成部の温度を錫微粉末の所望の粒径の融合温度以下とするとともに回収室の雰囲気温度を前記融合温度以下に保持することによって分散性に優れた真球状錫微粉末を得ることを特徴とする。
ここで、上記プラズマ法としては、高周波プラズマ、あるいはアークプラズマのような熱プラズマを用いることが好ましい。
プラズマ法においては、原料はプラズマにより蒸発し、プラズマ外炎部で急速に凝縮する。凝縮直後においては、凝集粒子同士は容易に融合して微粒子(一次粒子)を生成する。融合は融合温度に対応する粒子径まで続く。すなわち、一次粒子は、微粒子の融合温度によって決まる粒子径まで成長する。さらに、搬送時も雰囲気温度が一次粒子の融合温度よりも高い場合には、融合を起こしてより大きな粒子へと成長するか一次粒子が強固に凝集した粗大粒子(二次粒子)となる。本発明における最大粒子には、このような二次粒子を含むものである。
従って、一次粒子生成部の温度を所望の粒径の融合温度よりも低い温度に制御することが重要であり、この温度制御により生成する錫微粒子の粒径を制御することが可能となる。また、生成した微粒子を搬送ガスで搬送する間の温度を所望の粒径の融合温度よりも低い温度に保持することにより、得られる錫微粉末の粒径及び分散性を所望の好ましい範囲に調整することが可能である。
一般的に微粉末の融合温度は、式1で示される2粒子間の焼結モデル計算により容易に見積もることが可能である。錫の場合には、物性、集結メカニズムを考慮して式1から導かれた式2より計算される。例えば、凝縮から一次粒子生成までの時間を0.1秒とすると、粒径0.3μmの微粒子は100℃程度で融合し、また粒径が2μmの場合には190℃程度で融合して、大きな粒子に成長しやすいか凝集を起こしやすい。したがって、一次粒子生成部の温度を20〜190℃に制御することが好ましい。
式1:τ=A × dp× exp (E/Rg T)
式2:τ=1.22 × 10× dp × T × exp (108 kJ mol-1/Rg T)
τ;焼結特性時間と呼ばれる速度定数、 A;焼結機構に依存する定数、
dp;一次粒子径、 E;固相拡散の活性化エネルギー、
m;成長モデルパラメーター、 Rg;ガス定数、 T;温度
ただし、平均粒径が1μmを超えると最大粒子径あるいは凝集粒子径が5μmを超える可能性が高くなる。したがって、一次粒子生成部の温度は平均粒径が1μm以下となる融合温度が好ましく、2粒子間の焼結モデルの計算から前記D50が0.5μmとした場合の融合温度である130℃以下とすることがより好ましく、120℃以下とすることが特に好ましい。
さらに、前記平均粒径0.5μmの融合温度である130℃を越えるような温度の場合には、融合により最大粒子径あるいは凝集粒子径が5μmを超える可能性が高くなるため、温度変動も少ないことが好ましく、たとえば30℃以下にすることがより好ましい。
具体的には、プラズマ出力、雰囲気圧力、ガス流量、原料供給量などを制御することによって、一次粒子生成部の温度を所望の粒径の融合温度よりも低い温度に調整することで、得られる錫微粉末の粒径及び分散性を所望の好ましい範囲にすることが可能である。特にプラズマ出力、原料供給量もしくは生成速度を制御することにより所望の粒径及び分散性の錫微粉末が得られる。
また、錫微粉末の粒径や分散性は、原料供給量や生成速度によっても変化する。原料供給量が多くなるか生成速度が大きいと、一次粒子が生成した直後の温度を制御しても、凝集粒子同士の衝突が多く一次粒子が大きく成長してしまう。したがって、原料供給量が少ないほど、また生成速度が低いほど、得られる微粉末の粒径が小さくなり且つ分散性が向上する。
プラズマ出力を制御する範囲として、例えば、高周波プラズマ装置を用いる場合は、プラズマ出力を60〜170kWとすることが好ましく、60〜100kWとすることがより好ましい。原料供給量は1〜70g/分とすることが好ましく、10〜30g/分とすることがより好ましい。
プラズマ出力が60kW未満であると未蒸発の原料が多くなり効率が悪く、170kWを超えると一次粒子生成部の温度が高くなり、粒径が大きくなり分散性も低下してしまう。原料供給量が、1g/分未満であると一次粒子生成部の温度が高くなり、粒径が大きくなってしまい、70g/分を超えると凝集粒子同士の衝突が多く、一次粒子が大きく成長してしまう。
また、プラズマ出力と原料供給量は相互に影響を及ぼすため、プラズマ出力と原料供給量は同時に調整することが好ましい。すなわち、原料供給量が少なくなると一次粒子生成部の温度が不安定かつ高くなる傾向があるため、プラズマ出力を低くすることが必要であり、原料供給量が多くなると未蒸発の原料が増えるため、プラズマ出力を高くすることが必要である。
すなわち、プラズマ出力(P)と1分間当たりの原料供給量(M)の比(P/M)を0.85〜13kW/gとすることが好ましく、8kW/g以下とすることがより好ましい。
アークプラズマ装置の場合、好ましい出力範囲は電流150〜250A、電圧15〜40Vであり、電流150〜200A、電圧20〜30Vの範囲がより好ましい。原料はバルクで使用するため、生成量により制御することが好ましく、生成量を1〜10g/分とすることが好ましく、1〜6g/分とすることがより好ましい。
アークプラズマ装置では、プラズマ出力を増加させると生成量が大きくなる傾向にあるが、好ましい粒径を得るためにはプラズマ出力と生成量の比を制御することが好ましく、プラズマ出力(P)と1分間当たりの生成量(M)の比(P/M)は、高周波プラズマ装置と同等にすることが好ましい。
プラズマ法における雰囲気は、非酸化性雰囲気とすることが好ましい。原料として錫を用いた場合には、蒸発時の錫の酸化反応を防止するために、一般的にはアルゴンなどの不活性ガスをプラズマガスとシースガスとからなる雰囲気ガスとして使用する。さらに、不活性ガスに水素を混合して使用すれば、錫の酸化防止と同時に錫の蒸発速度を向上させることができる。
また、原料として錫化合物を用いた場合には、熱力学的に還元可能な水素量を混ぜた不活性ガス、例えば、アルゴンと水素の混合ガスを雰囲気ガスとして用いることで錫微粉末を製造することができる。
水素は蒸発速度を向上させるため、雰囲気ガスへの混合量が多くなると生成した錫微粒子同士の衝突による凝集が起こりやすくなり、一次粒子生成部の温度による粒径制御が困難となる。したがって、水素の混合量は5〜50容量%とすることが好ましい。
以上のように本発明の製造方法においては、有機溶剤等による被覆を行なわずとも粒径が均一で凝集が少なく分散性に優れた真球状錫微粉末が得られることから、本発明の真球状錫微粉末は高純度で低温焼成における焼結特性にも優れている。
[実施例]
本発明による真球状錫微粉末およびその製造方法を実施例を用いて詳細に説明するが、本発明は実施例に何ら限定されるものではない。
本発明の実施例1〜5においては、図1に示す最高入力200kWの高周波プラズマ微粉製造装置(高周波プラズマ発振機:日本電子社製TP―12020、水冷生成室:内径660mm、長さ約1000mm)を用いて、錫微粉末を製造した。
すなわち、プラズマガス供給口6からプラズマガス、シースガス供給口8からシースガスとして合わせてアルゴンガスを150〜200リットル/分及び水素ガスを10〜40リットル/分の流量で混合して供給した。シースガスとプラズマガスの比率は、一次粒子生成部での温度によりシースガス:プラズマ=6:4〜8:2で調整した。プラズマトーチ1に約80kWの入力で高周波プラズマを点火して、安定したプラズマ炎9を得た。
投入した原料粉末は、プラズマ炎中で瞬時に蒸発気化し、温度が低くなるプラズマ尾炎部10でほとんどが凝縮し微粉化して一次粒子となる。しかしながら、プラズマ尾炎部10から冷却配管入口3までに錫の融合温度以上の領域が存在すると、衝突確立にも影響を受けるが、粒子間で合体融合して粒子が粗大化するか二次粒子体が形成される。融合温度以下では軽いネッキングによる二次凝集体が形成される。
したがって、微粉末を得て分散化させるためには、一次粒子生成部、すなわち生成室内の温度制御が重要であり、その温度制御を行なうとともに、冷却配管入口3に温度計を設置して温度を計測した。
原料粉末供給口7から、錫粉末(和光純薬工業(株)製、203−15305Tin Powder、粒径−45μm、純度99.5%)を導入して、10g/分の原料供給量でアルゴンガス20リットル/分とともにプラズマ炎9の内部に供給した。プラズマガス供給口6とシースガス供給口8から合計でアルゴンガスを160リットル/分及び水素ガスを20リットル/分の流量で混合して供給した。雰囲気圧力は90kPaとした。
プラズマトーチ1には77kWの入力で高周波プラズマを点火して、安定したプラズマ炎9を得た。このプラズマ炎9は10,000℃以上であるため、原料粉末は瞬時に蒸発気化し、温度が低くなるプラズマ尾炎部10で凝縮し、微粉化した。生成した錫微粉末は、冷却チャンバー19から冷却配管入口3に移動し、冷却配管4を搬送されて、大気雰囲気に暴露することなく回収装置5に到達した。
2粒子間の焼結モデルの計算からD50=0.5μmとした場合の融合温度は130℃であるが、冷却配管入口3の温度計による計測では116〜127℃を示した。また、前記プラズマ出力と原料供給量の比(P/M)は、7.7kW/gである。
得られた錫微粉末は、回収装置5内にて、アルゴンに約5容量%の酸素を混合した雰囲気中で1時間保持する徐酸化処理を行った後、装置から回収した。なお、以下の実施例においても回収は同様の方法で行った。
得られた錫微粉末の走査型電子顕微鏡((株)日立ハイテクノロジーズ製、S−4700:以下SEMと記載)写真を図2に示す。図2より、得られた錫微粉末は真球状であって凝集のない微粉末であることがわかる。
この錫微粉末の粒度分布は、レーザー回折法(日機装(株)製、MICROTRAC HRA MODEL:9320−X100)によれば、体積積算でD10=0.30μm、D50=0.46μm、D90=0.92μm、D100=2.31μmであり、粒径の幾何標準偏差は1.40であった。図2のSEM写真から求めた粒度分布は、D10=0.19μm、D50=0.43μm、D90=0.75μm、D100=2.36μmであり、レーザー回折法による粒度分布と同等であることから、分散性に優れた微粉末であることが確認できた。また、比表面積径が0.53μmに対してマイクロトラックからの平均粒径は0.46μmであり、115%に入っていることからも分散性も良いものができていることがわかる。さらに、燃焼非分散赤外吸収法により炭素分析を行なったところ、炭素含有量は0.01質量%であった。尚、JIS Z 2512に準拠してタップ密度測定を行ったところ、タップ密度は、2.1g/ccであった。
以上より、得られた錫微粉末は、粗粒を含まず分散性に優れた真球状の錫微粉末が得られたことがわかる。
錫粉末(福田金属箔粉工業(株)製、Sn−At−200、粒径−75μm、純度99%)の変更以外は、実施例1と同様にして錫微粉末を作製した。冷却配管入口3の温度計による計測では実施例1と同様に116〜127℃を示した。
この錫微粉末の粒度分布は、レーザー回折法によれば、体積積算でD10=0.32μm、D50=0.51μm、D90=1.06μm、D100=2.75μmであり、粒径の幾何標準偏差が1.45であった。また、比表面積径が0.63μmであり、レーザー回折法による平均粒径の124%に入っていることより、分散性も良い錫微粉末ができていることがわかる。さらに、実施例1と同様に炭素分析を行なったところ、炭素含有量は0.01質量%であった。
原料粉末供給口7から、錫粉末(福田金属箔粉工業(株)製、Sn−At−200、粒径−75μm、純度99%)を30g/分の原料供給量で供給した以外は、実施例1と同様にして錫微粉末を作製した。冷却配管入口3の温度計による計測では127〜129℃を示した。また、前記プラズマ出力と原料供給量の比(P/M)は、2.6kW/gである。
この錫微粉末の粒度分布は、レーザー回折法によれば、体積積算でD10=0.31μm、D50=0.54μm、D90=1.54μm、D100=3.89μmであり、粒径の幾何標準偏差は1.59であった。また、比表面積径が0.72μmであり、レーザー回折法による平均粒径の133%に入っていることより、分散性も良い錫微粉末ができていることがわかる。さらに、実施例1と同様に炭素分析を行なったところ、炭素含有量は0.01質量%であった。
原料粉末供給口7から、酸化第一錫粉末(添川理化学(株)製、酸化第一錫、一次粒径1μmの凝集粉、純度99.9%)を15g/分の原料供給量で供給した以外は、実施例1と同様にして錫微粉末を作製した。冷却配管入口3の温度計による計測では175〜184℃を示した。また、前記プラズマ出力と原料供給量の比(P/M)は、5.1kW/gである。
この錫微粉末の粒度分布は、レーザー回折法によれば、体積積算でD10=0.31μm、D50=0.47μm、D90=0.89μm、D100=1.94μmであり、粒径の幾何標準偏差は1.41であった。また、X線回折測定(X線回折装置:(株)リガク製、RINT−1400を行なったところ、図3に示すようにX線回折パターン上には錫を示すピークのみが見られ、完全に還元されており、錫微粉末は化合物から還元反応によっても作製可能であることがわかる。さらに、比表面積径は0.39μmであり、レーザー回折法による平均粒径の83%に入っていることより、分散性も良い錫微粉末ができていることがわかる。さらに、実施例1と同様に炭素分析を行なったところ、炭素含有量は0.01質量%であった。
実施例5においてはアークプラズマ法により錫微粉末を作製した。本実施例に用いたアークプラズマ微粉製造装置(アーク電力:最大300A、200V、反応チャンバー:内径約250mm、長さ約750mm)の模式図を図4に示す。
本装置は、原料を蒸発させる蒸発部11、蒸発部11を囲う水冷された生成室12、生成室12と連なる配管13と分級装置14、分級装置14と連なる粉末回収装置15とからなる。温度計16を配管13部分に設置して温度の計測が可能である。アークプラズマではドロップレット状の粗大粒子などがよくできるが、本装置では円柱容器に邪魔板が一枚入っている構造の非常に簡易的な分級装置14により、それらを取り除いている。
蒸発部11に直流アークの陰電極(タングステン+2%トリウム)17があり、陽極側に蒸発材料18である錫原料を取り付け、その両極間でアーク放電(200A、25V)させることによって錫微粒子を作製した。アークプラズマガスおよび微粉搬送用ガスにはアルゴンと水素の混合ガス(アルゴン:水素=1:1)をトータル流量として180リットル/分用いた。雰囲気圧力は100kPaとした。
プラズマにより生成した錫微粒子は、大気に暴露されることなく、生成室12、配管13内を搬送され、分級装置14にて分級された後、粉末回収装置15に到達し、分散性がよい錫微粉末として回収された。配管13に設置された温度計(熱電対)16の計測によれば、この部分の雰囲気は30〜40℃であった。また、生成量は2g/分であり、前記プラズマ出力と生成量の比(P/M)は、2.5kW/gであった。
得られた錫微粉末の粒度分布は、レーザー回折法によれば、体積積算でD10=0.26μm、D50=0.36μm、D90=0.51μm、D100=0.97μmであり、粒径の幾何標準偏差は1.30であった。また、比表面積径は0.20μmであり、レーザー回折法による平均粒径の56%に入っていることより、分散性も良い錫微粉末ができていることがわかる。さらに、実施例1と同様に炭素分析を行なったところ、炭素含有量は0.01質量%であった。
[比較例1]
原料粉末供給口7から、錫粉末(福田金属箔粉工業(株)製、Sn−At−200、平均粒径―75μm、純度99%)を100g/分の原料供給量で供給した以外は、実施例1と同様にして錫微粉末を作製した。冷却配管入口3に設置した温度計による計測では、2粒子間の焼結モデルの計算からD50=2μmとした場合の融合温度である190℃を超える190〜200℃を示した。なお、前記プラズマ出力と原料供給量の比(P/M)は、0.77kW/gである。
この錫微粉末の粒度分布は、レーザー回折法によれば、体積積算でD10=1.15μm、D50=6.34μm、D90=19.0μm、D100=88.0μmであり、5μmより大きい凝集体が形成された。この比較例では原料供給量を多くしたことにより、蒸気密度が高くなり粒径が凝集しやすくなったためと考えられる。また、蒸気密度が高くなったことから、冷却対象が増え生成室内の温度も高くなり、より凝集したものと考えられる。
[比較例2]
プラズマトーチ1の入力を81kW、原料粉末供給口7から、錫粉末(福田金属箔粉工業(株)製、Sn−At−200、粒径−75μm、純度99%)を6g/分の原料供給量で供給した以外は、実施例1と同様にして錫微粉末を作製した。前記プラズマ出力と原料供給量の比(P/M)は、13.5kW/gであり、好ましい制御の範囲を超えたものである。また、冷却配管入口3に設置した温度計による計測では、2粒子間の焼結モデルの計算からD50=0.5μmとした場合の融合温度である130℃を超える118〜151℃を示し、温度変動も大きい結果となった。
この錫微粉末の粒度分布は、レーザー回折法によれば、D10=0.35μm、D50=1.04μm、D90=2.96μm、D100=7.78μmであり、5μmより大きい凝集体が形成された。プラズマ入力が実施例1とほぼ同等にもかかわらず凝集した理由は、プラズマ出力と原料供給量の比(P/M)が13.5kW/gと大きく、原料の蒸発に消費されるエネルギーが小さくなり、生成室内の温度が不安定となったためと考えられる。
[比較例3]
活性アークプラズマ微粉製造装置(ホソカワミクロン(株)製、ARC−IE)を備えた図5の製造装置を用い、その陽極側に蒸発材料18として金属錫地金約60gを取り付けた。アルゴンガス30リットル/分と水素3リットル/分を流しながら、蒸発材料18と陰極17(タングステン+2%トリウム)の間に直流を供給し、電流200A、電圧30Vでアーク放電させることによって、金属錫地金を溶融蒸発させ、錫微粒子を生成させた。生成室内の温度制御は行なわず、供給する搬送ガスの温度のみを80℃に制御した。生成した錫微粒子をガスにより搬送し、被覆室20でテルピネオールのガスに接触させた後、粉末回収装置15に導入して錫微粉末を回収した。
この錫微粉末の粒度分布は、レーザー回折法によれば、D10=0.13μm、D50=0.52μm、D90=1.13μm、D100=2.31μmであった。SEM写真の観察では、5μm以上の粗大粒子は存在しなかったが、比表面積径は0.20μmであり、レーザー回折法による平均粒径の260%であり凝集が多いことがわかる。また、実施例1と同様に炭素分析を行なったところ、炭素含有量は0.23質量%であった。尚、実施例1と同様にタップ密度測定を行ったところ、タップ密度は、1.5g/ccであった。
生成室の温度が高い比較例1および原料供給量に対するプラズマ出力が大きく温度変動が大きい比較例2では、最大粒径が5μmを大きく上回る凝集体が形成された。また、生成室内の温度制御は行なわず有機溶剤被覆によって錫微粉末を得た比較例3では、焼結温度を高温化させる錫微粉末の炭素含有量が多く、凝集粉が多く低タップ密度で均一膜形成に不利なものになっていることがわかる。これに対して、実施例1〜5では、平均粒径が0.3〜2μmと小さく且つ最大粒径が5μm以下であり、粗粒を含まず凝集のない錫微粒子を作製することができている。さらに、焼結温度を高温化させる炭素含有量が少ない。このような錫微粉末は、微細な配線ピッチ用の導電ペースト等に好適なものである。
実施例で用いた高周波プラズマ微粉製造装置を模式的に示した側面図である。 本発明の真球状錫微粉末(実施例1)の走査型電子顕微鏡写真である。 本発明の真球状錫微粉末(実施例4)のX線回折パターンである。 実施例で用いたアークプラズマ微粉製造装置を模式的に示した側面図である。 比較例3で用いた活性アークプラズマ微粉製造装置を模式的に示した側面図である。
符号の説明
1 プラズマトーチ
2 生成室
3 冷却配管入口
4 冷却配管
5 回収装置
6 プラズマガス供給口
7 原料粉末供給口
8 シースガス供給口
9 プラズマ炎
10 プラズマ尾炎部
11 蒸発部
12 生成室
13 配管
14 分級装置
15 粉末回収装置
16 温度計(熱電対)
17 陰電極(タングステン+2%トリウム)
18 蒸発材料
19 冷却チャンバー
20 被覆室
21 ヒーター
22 有機溶剤

Claims (4)

  1. 平均粒径が0.3〜2μm及び最大粒径が5μm以下であり、粒径の幾何標準偏差が1.6以下で凝集が少なく分散性に優れ、且つ炭素含有量が0.2質量%以下(炭素含有量が0質量%の場合を含む。)であることを特徴とする真球状錫微粉末。
  2. 比表面積から算出した平均粒径が、レーザー回折法により測定した体積積算平均粒径の50〜150%であることを特徴とする請求項1に記載の真球状錫微粉末。
  3. プラズマを用いて錫微粉末を製造する方法であって、プラズマ出力と原料供給量または生成量との比を制御することによって、錫の一次粒子生成部の温度を平均粒径2μmの粒子間の融合温度以下に調整することを特徴とする請求項1または2に記載の真球状錫微粉末の製造方法。
  4. 不活性ガスと水素ガスを含む還元性雰囲気中において、錫あるいは錫化合物をプラズマにより気化させることを特徴とする請求項3に記載の真球状錫微粉末の製造方法。
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