JP2008106286A - 複合材料および装飾品 - Google Patents
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Abstract
【課題】加工性に優れたピンク色の複合材料、およびこの複合材料を少なくとも一部に使用した装飾品を提供する。
【解決手段】複合材料2において、Ptを主成分とする1または複数の第1相21と、Cuを含む1または複数の第2相22と、を有し、第1相21,22のうちの一方の相を他方の相の周囲に配置した。複数の第2相22は、たとえば第1相21内に配置され、あるいは複数の第1相は、たとえば第2相内に配置される。好ましくは、複合材料2は、第1相21と第2相22との間において両相21,22に接し、Pt−Cuにより形成された金属間化合物からなる第3相23をさらに有している。
【選択図】図2
【解決手段】複合材料2において、Ptを主成分とする1または複数の第1相21と、Cuを含む1または複数の第2相22と、を有し、第1相21,22のうちの一方の相を他方の相の周囲に配置した。複数の第2相22は、たとえば第1相21内に配置され、あるいは複数の第1相は、たとえば第2相内に配置される。好ましくは、複合材料2は、第1相21と第2相22との間において両相21,22に接し、Pt−Cuにより形成された金属間化合物からなる第3相23をさらに有している。
【選択図】図2
Description
本発明は、PtおよびCuを含む複合材料、並びに、この複合材料を少なくとも一部に使用した装飾品に関する。
希少価値が高く、美しい輝きを持つプラチナ(Pt)は、指輪やネックレス等の装飾品の材料として使用されている。Pt製の装飾品は、銀や金装飾品と比較して清楚な輝きを有することから、その希少性と併せて需要者に好まれている。
その一方で、Ptは延性が高く柔軟であることから、指輪やネックレス等の装飾品に加工した場合、傷付いたり、変形してしまったりする。そのため、Ptは、他の貴金属あるいは卑金属を添加することによって、硬さ、強さを向上させ、装飾品として実用化されてきた。
近年においては、需要者の嗜好の多様化により、装飾品においては、金や銀ばかりでなく、Ptにおいて同様に多色化が求められている。そのため、PtやPt合金と他の金属や合金、あるいはPtやPt合金と色付粉末とを組み合わせた金属材料や複合材料が提案されている(たとえば特許文献1参照)
特許文献1に記載の金属材料は、Ptなどの貴金属やその合金と、セラミクスやガラスの色付粉末とを粉末治金加工することにより得られるものである。この金属材料では、混合する色付粉末の種類の適宜選択することにより、所望とする色とすることができる。
ところで、ピンク色の装飾品は、銀装飾品においても見られるとおり、女性から多くの支持を集めている。そのため、Ptにおいても、ピンク色の装飾品の登場が望まれている。
特開昭59−136447号公報
しかしながら、特許文献1に記載の金属材料においては、ピンク色の材料を得るために、ピンク色を発現可能な色付粉末を形成する必要がある。ピンク色の色付粉末は、たとえばセラミクスがガラスにピンク色の顔料や染料を添加した後に粉砕するなどして得られるが、このような色付粉末を形成する作業は煩雑なものであり、ピンク色の材料を得るための作業性が悪い。そればかりか、セラミクスやガラス色付粉末を用いた場合には、Pt本来の金属光沢、すなわち清楚な輝きが損なわれてしまいかねない。
Ptにピンク色を与えるためには、鋳造法を採用することも考えられる。鋳造法を採用する場合には、PtとCuとを溶かして鋳型に流し込み、これを冷却することによって全体が金属間化合物(PtCu合金)相からなるピンク色のPtを得ることが考えられる。
しかしながら、全体が金属間化合物相である材料は、靭性が高く加工性の悪いものである。そのため、従来の一般的な鋳造法によってピンク色のPt装飾品を形成する場合には、仕上げの表面加工などを容易には行なうことができず、また表面を鏡面加工とするのが困難となって、Pt本体の清楚な輝きを得ることが困難となる。
本発明は、加工性に優れたピンク色の複合材料、およびこの複合材料を少なくとも一部に使用した装飾品を提供することを課題としている。
本発明の第1の側面においては、Ptを主成分とする1または複数の第1相と、Cuを含む1または複数の第2相と、を有し、前記第1および第2相のうちの一方の相は、他方の相の周囲に配置されていることを特徴とする複合材料が提供される。
前記複数の第2相は、たとえば前記第1相内に配置されており、あるいは前記複数の第1相は、たとえば前記第2相内に配置されている。
本発明の第2の側面においては、複合材料により形成された複合材料領域を有する装飾品であって、前記複合材料は、本発明の第1の側面に係るものであることを特徴とする、装飾品が提供される。
本発明の複合材料は、前記第1相と前記第2相との間において両相に接し、Pt−Cuにより形成された金属間化合物を含む第3相をさらに有しているのが好ましい。前記第3相は、たとえば前記第1相または前記第2相を被覆したものとされる。前記第3相の最大厚みは0.59μm以下とするのが好ましい。
前記第1相中に含まれるPtの総量は、たとえば前記複合材料の全組成の25質量%以上75質量%以下とされる。
前記第1相は、Pd、Rh、RuおよびAgのうちの少なくとも1種をさらに含んでいてもよく、前記第2相は、Au、AgおよびPdのうちの少なくとも1種をさらに含んでいてもよい。
本発明の装飾品においては、前記複合材料領域は、たとえば少なくとも直径1mmの円で規定される領域を含んでいる。
前記複合材料領域は、表面より所定深さの領域、たとえば少なくとも表面より1mmの深さの領域まで形成されている。
本発明の装飾品においては、前記第2相および前記第3相の少なくとも一部は表面より露出し、前記第2相の露出部は前記第3相の露出部によって囲まれているのが好ましい。
本発明に係る複合材料によれば、Ptを主成分とする1または複数の第1相と、Cuを含む1または複数の第2相と、を有しており、前記第1および第2相のうちの一方の相は、他方の相の周囲に配置されている。より具体的には、本発明の複合材料は、たとえば第1相内に複数の第2相が配置され、第2相内に複数の第1相が配置されたものとなっている。そのため、本発明の複合材料は、全体が金属間化合物相により形成された複合材料のように靭性が必要以上に高くなり過ぎることもなく、加工性に優れたものとなる。その結果、本発明の複合材料は、仕上げの表面加工などを容易に行なうことができ、また表面を鏡面加工とするのが容易であり、Pt本来の金属光沢である清楚な輝き維持したピンク色のプラチナ複合材料となる。
本発明に係る複合材料において、第1相および第2相に接する第3相をさらに有するものとすれば、第1相と第2相の間に金属間化合物を介在することになる。これにより、第1相のPtと第2相のCuとの間のイオン化傾向の相違に基づく電池効果の発生を、第3相の金属間化合物により抑制することができる。そのため、本発明の複合材料では、耐食性に優れたものとなるため、金属光沢を長期にわたって維持できるようになる。
本発明に係る装飾品では、1または複数の第1相と、1または複数の第2相と、を有する複合材料領域、たとえば第1相内に複数の第2相が配置され、あるいは第2相内に複数の第1相が配置された複合材料領域を有している。このような複合材料領域は、加工が容易なものであるため、本発明の装飾品では、少なくとも一部に、Pt本来の金属光沢を有するピンク色を付与できるため、審美性を向上させることができる。
本発明に係る装飾品において、複合材料領域を、第1相および第2相に接する第3相をさらに有するものとすれば、複合材料領域の耐食性を向上させることができるため、複合材料領域における金属光沢を長期にわたって維持できるようになる。とくに、指輪などの装飾品のように人肌に触れる装飾品においては、汗などにより腐食が進行しやすい状況にあるため、耐食性を向上させることの意義は大きい。
以下においては、本発明に係る装飾品および複合材料について、指輪を例にとって図面を参照しつつ説明する。ただし、本発明に係る複合材料の適用対象である装飾品、あるいは本発明に係る装飾品は、指輪に限定されるものではない。
図1(a)および図1(b)に示した指輪1は、リング状の部分の全体が複合材料2によって形成されたものである。図2に示したように、複合材料20は、第1相21、第2相22、および第3相23を有している。
第1相21は、複合材料2の母材となるものであり、プラチナ(Pt)を主成分としている。第1相21中に含まれるPtの総量は、たとえば全組成の25質量%以上75質量%以下とされている。Ptの総量が25質量%を下回る場合には、後述する第2相22の主成分である銅(Cu)の比率が大きくなるために、PtとCuとの間の電池効果によって耐食性が悪化し、また色合いが銅の色に近くなるため好ましくない。Ptの総量が75質量%を超える場合には、Cuの比率が小さくなるために、ピンク色とするのが困難となる。
第1相21のPt重量は、EDS(エネルギー分散型X線分析)半定量分析によって計算することができる。すなわち、表面から数μmの深さ領域より発生する特性X線を検出して、各元素分析を行い、そのピーク強度から組成を計算することができる。
第1相21は、パラジウム(Pd)、ロジウム(Rh)、ルテニウム(Ru)、および銀(Ag)のうちの少なくとも1種類を含んでいてもよい。例示した成分を第1相21に含ませることにより、複合材料2の耐食性を向上させることができる。すなわち、第1相21にPt以外の貴金属を含む場合には、PtとCuとの間に生じる電池効果が生じることを抑制することができる。
第2相22は、第1相21中に分散されたものであり、銅(Cu)を主成分としている。この第2相22の存在により、複合材料2はPtに加えてCuを含んだものとなり、その表面において第2相22の一部が露出するためにピンク色となる。また、複合材料2は、第2相22を第1相21中に分散したものであるため、複合材料2の全体が金属間化合物とはなっていない。そのため、複合材料2は、鋳造法によって得られるPt−Cu材料のように全体が金属間化合物とされている場合に比べて靭性が小さくなっており、第2相22の存在によって加工性が向上する。
第2相22中に含まれるCuの総量は、複合材料2の全組成の25質量%以上75質量%以下とするのが好ましい。Cuの総量が25質量%を下回る場合には、複合材料2が目的とするピンク色よりも淡いピンク色となる傾向がある。Cuの総量が75質量%を超える場合には、耐食性を長期間にわたり良好に維持することが困難になる。
第2相22のCuの重量は、第1相21のPtの質量を測定する場合と同様に、EDS半定量分析によって計算することができる。
また、第2相22の一部は表面に露出しており、このような露出部の直径(平均値)は、5〜150μmであるのが好ましい。第2相22の露出部の直径が5μmを下回る場合には、複合材料2が淡いピンク色となってしまう傾向がある。第2相22の直径が150μmを超える場合には、第2相22の露出面積が大きくなるので、長期間にわたって使用していると露出部が酸化されてしまう可能性が高くなる。
なお、第2相22の平均結晶粒径は任意の断面を、走査型電子顕微鏡(SEM)において得られる写真(SEM写真)にて、直径1000μmの範囲を1000倍で撮影し、平面上における1μm以上の複数の結晶相の最大直径を測定し、それらの平均値を平均粒径とした。ここで最大直径は各結晶相の外接円の直径とした。SEMによる断面観察においては、断面に対して金蒸着を行なわずに、電子反射像によって結晶相を観察するのが好ましい。そうすれば、第1相21と第2相22との区別を確実にできるため、適切に第2相22の平均粒径を算出することができる。
第2相22は、金(Au)、銀(Ag)およびパラジウム(Pd)のうちの少なくとも1種をさらに含んでいてもよい。例示した成分を第2相22に含ませることにより、複合材料2の耐食性を向上させることができる。すなわち、第2相22にCu以外の貴金属を含ませた場合には、PtとCuとの間に生じる電池効果が生じることを抑制することができる。また、例示した貴金属、とくにAuは、Cuと合金化させることによって、複合材料2の耐食性を向上させることができる。
第3相23は、複合材料2の耐食性の向上に寄与するものであり、金属間化合物により形成されている。この第3相23は、第1相21および第2相22の双方に接するものであり、複合材料2の内部においては第3相23が第2相22を被覆し、表面においては第3相の露出部が第2層22の露出部を取り囲むように配置されている。すなわち、第3相23は、第1相21と第2相22との間に介在している。このようにして金属間化合物である第3相23が第1相21と第2相22との間に介在することにより、第1相21のPtと第2相22のCuとの間のイオン化傾向の相違に基づく電池効果を抑制することができる。その結果、複合材料2は、耐食性に優れたものとなる。
第3相23の金属間化合物は、典型的には、PtとCuが整数比で存在するものであり、たとえばPtCuあるいはPtCu3として存在する。また、第3相23には、Pt以外の貴金属とCuとの金属間化合物、たとえばPtAu3が存在してもよい。PtとCu、PtとAuの比は整数比である方が、化学的に安定であるので好ましい。
第3相23の厚みは、たとえば20μm以下とされ、好ましくは0.59μm以下とされる。第3相の厚みが0.59μmを超える場合には、複合材料2を外形加工して宝飾品などを製作する際に、靭性の高い金属間化合物からなる第3相23の部分が他の部位と比べて研磨されにくく、表面に比較的大きな凹凸ができて光沢を出しにくくなる傾向がある。
第3相23の厚み(露出面においては幅)は、図3(a)に示したように複合材料2の任意の断面をSEMによって20×20μmの範囲を3500倍で撮影し、次の定義にしたがって決定した。図3(b)に示したように、まず、SEM写真から第1相21および第2相22の双方の表面に対して垂直に交差する接線Lを含む部分を5箇所選択する、次いで、選択された5箇所について、第3相23における厚みをそれぞれ測定し、それらの平均値を演算して第3相23の厚み(幅)とする。
複合材料2の表面における第3相23の面積比率は、任意の100μm×100μmの範囲において、1〜10%とするのが好ましく、先の範囲における第3相23が第2相22を囲む割合は、第2相22の外周の長さに対して85%以上とするのが好ましい。
図2に示した例では、Ptを主成分とする第1相21内に、Cuを含む複数の第2相22が配置されたものとなっているが、本発明の複合材料は、Cuを含む第2相を母材とし、この第2相内にPtを主成分とする複数の第1相が配置されたものであってもよい。この場合、第1相は、PtとCuとの金属間化合物である第3相により被覆されているのが好ましい。
次に、本発明の複合材料2の製造方法を、放電プラズマ焼結法により指輪1を形成する場合を例にとって説明する。
まず、Ptを含むPt粉末と、Cuを含むCu粉末とを所定割合で混合して混合粉末とする。
Pt粉末としては、たとえば平均粒径が9〜150μm、純度が99.9%以上のものを使用するのが好ましい。Cu粉末としては、たとえば平均粒径が5〜150μm、純度が99.9%以上のものを使用するのが好ましい。
混合粉末におけるPt粉末の重量比率は、たとえば25重量%以上75重量%以下とされ、混合粉末におけるCu粉末の重量比率は、たとえば25重量%以上75重量%以下とされる。
複合材料2にPt以外の貴金属を添加する場合には、Pt粉末またはCu粉末として、Ptと他の金属との合金またはCuと他の金属との合金を使用してもよく、またPt粉末およびCu粉末の他に、貴金属粉末を混合してもよい。
次いで、混合粉末を焼結金型内に充填してリング形状に成形した後、この成形体に対して、真空雰囲気中で、たとえば焼成温度が200℃〜500℃、4V〜20Vの低電圧でパルス状電流を印加する。これにより、成形体の粒子の間隙において、放電プラズマが瞬間的に発生し、成形体が焼結される。
ここで、成形体を形成するときの成形圧力は、たとえば300〜500MPaとされる。成形圧力が300MPaを下回る場合には、複合材料2に気孔が発生しやすく脆くなってしまい、成形圧力が500MPaを超える場合には、原料充填により応力集中を起こし、金型の破損へとつながることがある。焼成温度を200℃〜500℃とするのは、焼成温度が200℃を下回る場合には焼結不良となり、焼成温度が500℃を超える場合には過焼成となり、いずれの場合も焼結体が脆くなる傾向がある。一方、印加パルス電圧を4V〜20Vとするのは、印加パルス電圧が4Vを下回る場合には成形体の間隙において充分な放電が起こらず、目的とするプラズマ状態が達成できず、印加パルス電圧が20Vを超える場合には異常放電が生じる可能性が高くなるため、いずれの場合も目的とする組織状態が得られにくくなる。
このような放電プラズマ焼結法では、高エネルギー密度とジュール熱を広く応用することにより、電力消費量が少なく効率の良い焼結が可能となる。そのため、昇温・保持時間を含めた焼結時間は、概ね5〜20分程度の比較的短時間となり、鋳造法のように、材料全体が金属間化合物となることもなく、Ptを主成分とする第1相21に、Cuを含む複数の第2相22を分散させたものとすることができ、また第2相22を適当な厚みの金属間化合物の第3相23で被覆したものとすることができ、あるいは、Cuを含む第2相に、Ptを主成分とする複数の第1相を分散させるとともに、第1相を適当な厚みの金属間化合物の第3相で被覆したものとすることができる。
このようにして得られる指輪1は、第1相21内に第2相22が分散された複合材料2、あるいは第2相内に第1相が分散された複合材料からなるため、全体が金属間化合物相により形成された複合材料のように靭性が必要以上に高くなり過ぎることもなく、加工性に優れたものとなる。その結果、指輪1は、仕上げの表面加工などを容易に行なうことができ、また表面を鏡面加工とするのが容易であるため、Pt本来の金属光沢である清楚な輝きを維持したピンク色のものとすることができる。
また、複合材料2は、第1相21および第2相22に接する第3相23をさらに有しているため、第1相21と第2相22の間に金属間化合物である第3相23が介在することになる。そのため、第1相21のPtと第2相22のCuとの間のイオン化傾向の相違に基づく電池効果の発生を、金属間化合物である第3相23により抑制することができる。その結果、指輪1では、耐食性が高いものとなるため、Ptの金属光沢を長期にわたって維持できるようになる。とくに、指輪1などの装飾品のように人肌に触れる装飾品においては、汗などにより腐食が進行しやすい状況にあるため、耐食性を向上させることの意義は大きい。
次に、装飾品の一部に複合材料層を形成した例について、図4に示した指輪を例にとって説明する。
図4に示した指輪4は、芯材5の表面を複合材料層6によって被覆したものである。
芯材5は、主として指輪4の形状を規定するものであり、たとえば内径が13〜22mm、外径が15〜24mm、厚みが2〜10mmのリング状に形成されている。このような芯材5は、たとえば鋳造法あるいは押し出し成形法により形成することができる。芯材5を形成するための材料としては、貴金属および卑金属をいずれをも使用することができる。ただし、材料コストなどを考慮する必要がある場合は、Ag、Feおよびそれらを含む合金を使用しても良い。
複合材料層6は、図1を参照して説明した指輪1と同様に図2に示した組成状態を有する複合材料2により形成されている。すなわち、複合材料層6は、Ptを主成分とする第1相21内に、Cuを含む複数の第2相22が分散され、この第2相22がPtとCuとの金属間化合物を含む第3相23によって被覆された組織とされている(図2参照)。複合材料層2の厚みは、たとえば0.03〜0.1μmとされている。もちろん、複合材料層2は、Cuを含む第2相内に、Ptを主成分とする第1相が分散され、この第1相がPtとCuとの金属間化合物を含む第3相によって被覆された組織であってもよい。
このような指輪4は、予め形成しておいた芯材5を、Pt粉末とCu粉末との混合粉末によってインサートした成形体を形成した後に、この成形体を放電プラズマ焼結法により焼成することにより形成することができる。
このような指輪4においても、図2に示した組織状態の複合材料2からなる複合材料層6、あるいは第2相内に第3相に被覆された第1相が分散された複合材料層6が表面に形成されているため、加工性に優れ、また耐食性に優れたものとなる。
図5に示した時計7は、ベルト70の少なくとも表層が先に説明した指輪1,4(図1ないし図4参照)と同様な組織状態を有する複合材料層とされている。ベルト70は、全体が本発明の複合材料により形成されていてもよく、芯材の表面を本発明の複合材料により被覆したものであってもよい。時計7においては、側縁71が本発明の複合材料により形成されていてもよく、この場合にも、側縁71は、全体が本発明の複合材料により形成されていてもよく、芯材の表面を本発明の複合材料により被覆したものであってもよい。ベルト70または側縁71において芯材の表面に複合材料層を形成する場合には、複合材料層の厚みは、たとえば0.03〜0.1μmとされる。
図6に示したメガネ8は、フレーム80の少なくとも表層が先に説明した指輪1,4(図1ないし図4参照)と同様な組織状態の複合材料層とされている。フレーム80は、全体が本発明の複合材料により形成されていてもよく、芯材の表面を本発明の複合材料により被覆したものであってもよい。フレーム80において芯材の表面に複合材料層を形成する場合には、複合材料層の厚みは、たとえば0.03〜0.1μmとされる。
また、図5に示した時計7および図6に示したメガネ8における複合材料層は、Cuを含む第2相内に、Ptを主成分とする第1相が配置され、この第1相がPtとCuとの金属間化合物を含む第3相によって被覆された組織状態のものであってもよい。
本発明は上述した実施の形態には限定されず、種々に変更可能である。たとえば、複合材料2(複合材料層6)の第3相23は、用途に応じた耐食性が確保できる限りは省略してもよく、また第3相23は、成形体の形成条件や焼成条件を適宜設定することにより、放電プラズマ焼結法以外の方法により生成させてもよい。たとえば、多少のボイドが発生するものの、真空焼成などにより1.33×10-2Paの真空条件下で500℃まで徐々に昇温し、この温度で30分間焼成することによっても生成することができる。
本発明は、上述した指輪、時計およびメガネに限らず、他の装飾品の一部または全部として適用することができる。本発明を適用することができる他の装飾品としては、たとえばペンダント、ネックレス、ブレスレット、万年筆などの文房具類、食器、置物、ゴルフクラブ、携帯電話、あるいはボタンなどを挙げることができる。
本発明の複合材料を装飾品の一部として形成する場合には、当該一部における少なくとも直径1mmの円で規定される領域において、本発明の複合材料の組成状態となっていればよく、当該領域の表面から所定深さの領域、たとえば少なくとも表面より1mmの深さの領域までが本発明の複合材料として形成される。
本実施例においては、Pt−Cu複合材料からなる試料の断面における組織状態、Pt−Cu複合材料の色、加工性および耐食性を評価した。
(試料の作製)
試料は、Pt粉末およびCu粉末を混合して得られる混合粉末を、成形圧力を550MPaとして焼結金型においてリング状に成形した後、放電プラズマ焼結法により焼成することによりリング状に形成した。試料のサイズは、内径19.8mm、外径23mm、厚みが5mmに設定した。Pt粉末およびCu粉末の比率および最大粒径は下記表1に示した通りとした。また、焼成条件は、下記表2に示した通りとした。ただし、表2において焼成時間の欄が「0」であるものは、室温から所定の昇温速度で450℃まで昇温させた後、この温度状態を保持することなく自然冷却を行なったものである。
試料は、Pt粉末およびCu粉末を混合して得られる混合粉末を、成形圧力を550MPaとして焼結金型においてリング状に成形した後、放電プラズマ焼結法により焼成することによりリング状に形成した。試料のサイズは、内径19.8mm、外径23mm、厚みが5mmに設定した。Pt粉末およびCu粉末の比率および最大粒径は下記表1に示した通りとした。また、焼成条件は、下記表2に示した通りとした。ただし、表2において焼成時間の欄が「0」であるものは、室温から所定の昇温速度で450℃まで昇温させた後、この温度状態を保持することなく自然冷却を行なったものである。
一方、比較例として、鋳造法により形成した試料を作製した。比較例の試料は、試料No.1,2,3,4,5,6,7,15,16,17と同一組成の混合粉末材料を、1700℃で溶融させた後、700℃に保持された所定の金型に流し込み、金型を550rpmの回転数で回転させながら成形することにより作製した。
(組織状態の評価)
試料の組織状態は、第1相21、第2相22および第3相23(図2参照)の存在および組成、ならびに第3相23による第2相あるいは第1相の被覆状態を観察することにより行なった。
試料の組織状態は、第1相21、第2相22および第3相23(図2参照)の存在および組成、ならびに第3相23による第2相あるいは第1相の被覆状態を観察することにより行なった。
第1〜第3相21〜23の存在、および第3相23による第2相あるいは第1相の被覆状態は、SEM観察により行なった。第1〜第3相21〜23の組成は、EDS半定量分析を行なうことにより確認した。
組織状態の評価結果は、試料1〜25については下記表3に、比較例の試料については下記表4に示した。下記表3および表4においては、第3相23により第2相あるいは第1相が被覆されていることが確認できた場合を○印、第3相23による被覆が確認されなかった場合を×印を付した。
(色の評価)
色の評価は、目視により行なった。色の評価結果は、試料1〜25については下記表3に、比較例の試料については下記表4に示した。下記表3および表4においては、キレイなピンク色である場合を◎印、適度なピンク色である場合を○印、淡いピンク色が確認できる程度であったり、ピンク色が濃すぎる場合を△印、ピンク色が認められない場合を×印を付した。
色の評価は、目視により行なった。色の評価結果は、試料1〜25については下記表3に、比較例の試料については下記表4に示した。下記表3および表4においては、キレイなピンク色である場合を◎印、適度なピンク色である場合を○印、淡いピンク色が確認できる程度であったり、ピンク色が濃すぎる場合を△印、ピンク色が認められない場合を×印を付した。
(加工性の評価)
試料の加工性は歪み量として評価した。歪み量の測定は、焼結軸受−圧環強さ試験(JIS Z 2507)に準じて行なった。より具体的には、まず、試料に対して半径方向に一定のクロスヘッドスピードで荷重を加えていき、試料が破断させるまで試料を半径方向に変形させた。次いで、試料に作用させた負荷と、試料が破断されるまでの試料の変形量から、下記式(数1)に基づいて計算した。加工性の評価結果は、試料1〜25については下記表3に、比較例の試料については下記表4に示した。
試料の加工性は歪み量として評価した。歪み量の測定は、焼結軸受−圧環強さ試験(JIS Z 2507)に準じて行なった。より具体的には、まず、試料に対して半径方向に一定のクロスヘッドスピードで荷重を加えていき、試料が破断させるまで試料を半径方向に変形させた。次いで、試料に作用させた負荷と、試料が破断されるまでの試料の変形量から、下記式(数1)に基づいて計算した。加工性の評価結果は、試料1〜25については下記表3に、比較例の試料については下記表4に示した。
この式において、Kは軸受の圧環強さ、Fは破壊したときの最大荷重(N)、Lは中空円筒の長さ(mm)、Dは中空円筒の外径(mm)、eは中空円筒の壁厚(mm)である。なお、この式はe/Dが1/3以下の場合に適用され、歪量についてはε=100×△D/Dで表され、単位は%で示される。また、△Dとは破壊するまでの荷重方向での変形量(mm)、Dは中空円筒の外径(mm)である。
(耐食性の評価)
試料の耐食性は、バフ研磨した試料を人口汗に半浸漬させて40±5℃の雰囲気にて30分間放置した後に変色の度合い、表面の状態を目視により確認することにより行なった。
試料の耐食性は、バフ研磨した試料を人口汗に半浸漬させて40±5℃の雰囲気にて30分間放置した後に変色の度合い、表面の状態を目視により確認することにより行なった。
人口汗は、食塩9.2g/L、硫化ナトリウム0.8g/L、尿素1.7g/L、アンモニア水0.18mL/L、ショ糖0.22g/L、乳酸1.1mL/L、純水1Lにより作製した。
耐食性の評価結果は、試料1〜25については下記表3に、比較例の試料については下記表4に示した。下記表3および表4においては、耐食性に特に優れた場合を◎印、優れていれた場合を○印、耐食が認められるが実用上問題のない程度である場合を△印、実用上問題がある程度の耐食が認められる場合を×印を付した。
(結果の考察)
表3および表4から分かるように、色に関しては、本発明に係る複合材料である試料No.1〜25は、視認可能なピンク色を呈していた。これは、試料No.1〜25では、第1相(Pt)と第2相(Cu)とが完全に固溶せずに、第1相内に第2相が独立して存在しているため、あるいは、第2相内に第1相が独立して存在しているためであると考えられる。また、第3相において、金属間化合物として、Pt−Cuの他に、PtCu3やAuCu3が存在する場合には、綺麗なピンク色になる傾向があることが伺える。さらに、Ptの総量が25質量%を下回る場合には、色合いが銅の色に近くなるため好ましくなく、Ptの総量が75質量%を超える場合には、Cuの比率が小さくなるために、ピンク色とするのが困難となるという結果が得られた。
表3および表4から分かるように、色に関しては、本発明に係る複合材料である試料No.1〜25は、視認可能なピンク色を呈していた。これは、試料No.1〜25では、第1相(Pt)と第2相(Cu)とが完全に固溶せずに、第1相内に第2相が独立して存在しているため、あるいは、第2相内に第1相が独立して存在しているためであると考えられる。また、第3相において、金属間化合物として、Pt−Cuの他に、PtCu3やAuCu3が存在する場合には、綺麗なピンク色になる傾向があることが伺える。さらに、Ptの総量が25質量%を下回る場合には、色合いが銅の色に近くなるため好ましくなく、Ptの総量が75質量%を超える場合には、Cuの比率が小さくなるために、ピンク色とするのが困難となるという結果が得られた。
これに対して、試料No.1,2,3,4,5,6,7,15,16,17と同一の材料とを用いて従来の一般的な鋳造法により形成した比較例の試料は、ピンク色を呈するものではなかった。
加工性に関しては、本発明の試料No.1〜25は、鋳造法により形成した比較例の試料に比べて、著しく歪み量の小さなものとなっており、本発明の複合材料が加工性(切削性)に優れていることが確認された。これは、比較例の試料については全体が金属間化合物となって靱性が高く、切削性が悪いのに対して、本発明の試料No.1〜25では、金属間化合物が材料中に分散した状態で部分的に存在しているためであると考えられる。
耐食性に関しては、試料No.1〜25は、実用上の問題が生じる程の腐食は認められなかった。これは、試料No.1〜25は、金属間化合物が第1相と第2相に接するとともに、第2相を被覆して第3相として存在しているためであると考えられる。すなわち、第1相(Pt)と第2相(Cu)との間の第3相(金属間化合物)が存在することにより、第1相のPtと第2相のCuとの間のイオン化傾向の相違に基づく電池効果が抑制され、第3相が存在しない場合に比べて、耐食性が改善されるものと考えられる。また、表中で記載していないが、Ptの総量が25質量%を下回る場合には、第2相22の主成分である銅(Cu)の比率が大きくなるために、PtとCuとの間の電池効果によって耐食性が悪化する傾向が確認された。
以上の結果から、本発明の試料No.1〜25のように、組織状態において、第1相内に第2相を配置させ、第1相および第2相の両相に接する金属間化合物の第3相を、第2相を被覆した状態で存在させることにより、あるいは第2相内に第1相を配置させ、第1相が第3相によって被覆された状態とすることにより、ピンク色で、加工性および耐食性に優れた複合材料とすることができる。とくに、指輪のような耐食性がよりシビアに要求される装飾品であっても、本発明の試料No.1〜25では、長期にわたってピンク色の金属光沢を維持したものとすることができる。
本実施例では、複合材料における第3相(金属間化合物)の存在や厚みが、色、加工性および耐食性に与える影響について、試料No.5,No.6,No.11〜No.14に基づいて、より詳細に検討した。
ここで、図7(a)として試料No.5のSEM写真、図7(b)として試料No.6のSEM写真、図8として試料No.5,6と同様な組織状態を拡大して模式的に示した組織状態図、図9(a)として試料No.11のSEM写真、図9(b)として試料No.12のSEM写真、図10として試料No.11,12と同様な組織状態を拡大して模式的に示した組織状態図、図11(a)として試料No.13のSEM写真、図11(b)として試料No.14のSEM写真、図12として試料No.13,14と同様な組織状態組織状態を拡大して模式的に示した組織状態図をそれぞれ示した。
図7(a)および図7(b)に組織状態を示した試料No.5,No.6は、表3から分かるように、加工性において他の試料に比べて若干劣るものの、色および耐食性に優れたものである。ここで、試料No.5,No.6は、表1から分かるようにPt粉末とCu粉末との混合比が50重量%:50重量%のものである。また、図7(a)および図7(b)では、黒色の部分がPtを主成分とする第1相であり、灰色の部分がCuを含む第2相である。
これらの試料No.5,No.6は、図8に模式的に示したようにCuを含む複数の第2相22′内にPtを主成分とする第1相21′が配置された組織状態となっており、第2相22内に第1相21が独立して存在し、この第1相21′が全領域にわたり第3相23′である金属間化合物によって取り囲まれていた。また、第3相23′の厚みは、比較的に大きなものとなっており、領域によっては、複数の第1相21の結晶粒子が1つの第3相23′によって取り囲まれていた。
図9(a)および図9(b)に組織状態を示した試料No.11,No.12は、表3から分かるように、耐食性において他の試料に比べて劣るものの、色および加工性に優れたものである。ここで、試料No.11,No.12は、表1から分かるようにPt粉末とCu粉末(AuCu合金粉末)との混合比が25重量%:75重量%のものである。また、図9(a)および図9(b)では、黒色の部分がPtを主成分とする第1相であり、灰色の部分がCuを含む第2相である。
これらの試料No.11,No.12は、図10に模式的に示したように第2相22′内にPtを主成分とする複数の第1相21′が配置された組織状態となっており、第2相22′内に第1相21′が独立して存在していた。この倍率(3500倍)では第1相21と第2相22との間に第3相である金属間化合物を確認することができなかった。
図11(a)および図11(b)に組織状態を示した試料No.13,No.14は、表3から分かるように、色、加工性および耐食性の全てにおいて優れるものである。ここで、試料No.13,No.14は、表1から分かるようにPt粉末とCu粉末(AuCu合金粉末)との混合比が60重量%:40重量%のものである。また、図11(a)および図11(b)では、黒色の部分がPtを主成分とする第1相であり、灰色の部分がCuを含む第2相である。
これらの試料No.13,No.14は、図12に模式的に示したようにPtを主成分とする第1相21内に、Cuを含む複数の第2相22が配置された組織状態となっており、第1相21内に第2相22が独立して存在し、この第2相22が第3相23である金属間化合物によって被覆されていた。また第3相23の厚みは、比較的に小さなものとなっていた。
以上の結果から分かるように、第1相(Pt)21内に第2相(Cu)22を分散させるか、あるいは、第2相(Cu)22内に第1相(Pt)21を分散させるかして、金属間化合物である第3相23の厚みを極力小さくすることにより、加工性を向上させることができる。その一方で、金属間化合物の厚みを大きくすると耐食性が向上する反面、加工性が悪化する傾向にあるため、加工性を考慮した場合、目的とする耐食性を維持できる範囲において、金属間化合物の厚みをできるだけ小さくするのが好ましいことが分かる。
本実施例では、上記表1の試料No.8について、第3相の厚みを評価した。
ここで、試料No.8は、耐食性が特に優れている反面、加工性については良好な結果が得られているものの、加工性が特に優れたものではない。すなわち、試料No.8は、加工性を適度に確保しつつ、耐食性を特に向上させたものに相当するものであり、第3相の金属間化合物の厚みの上限値を規定するものに相当し得るものである。
第3相の厚みは、20×20μmの範囲を3500倍で5箇所の断面SEMにて撮影し、それぞれの断面SEM写真を用いて、図3(a)および図3(b)を参照して説明した手法に則して算出した。厚みの測定結果については、下記表5に示した。下記表5においては、各SEM写真について、それぞれの測定箇所での測定値および平均厚みを示した。
表5から分かるように、5枚のSEM写真における5箇所の測定において、第3相(金属間化合物)の厚みの最大値は0.59μmであり、各SEM写真における5箇所の平均値は0.15〜0.50μm、全ての測定の平均は0.31μmであった。
本実施例では、Pt複合材料の表面における第1相(Pt)の面積比率を評価した。
1,4 指輪
7 時計
70 (時計の)ベルト
71 (時計の)側縁
8 メガネ
80 (メガネの)フレーム
2 複合材料
21,21′ 第1相
22,22′ 第2相
23,23′ 第3相
6 複合材料層(複合材料領域)
D (第3相の)厚み
7 時計
70 (時計の)ベルト
71 (時計の)側縁
8 メガネ
80 (メガネの)フレーム
2 複合材料
21,21′ 第1相
22,22′ 第2相
23,23′ 第3相
6 複合材料層(複合材料領域)
D (第3相の)厚み
本発明の第1の側面においては、Ptを主成分とする1または複数の第1相と、Cuを含む1または複数の第2相と、前記第1相と前記第2相との間に位置し、PtとCuとにより形成された金属間化合物を含む第3相と、を有し、前記第1および第2相のうちの一方の相は、他方の相の周囲に配置されていることを特徴とする複合材料が提供される。
前記第3相は、たとえば前記第1相または前記第2相を被覆したものとされる。前記第3相の最大厚みは0.59μm以下とするのが好ましい。
本発明の第1の側面においては、Ptを主成分とする1または複数の第1相と、Cuを含む1または複数の第2相と、前記第1相と前記第2相との間に位置し、PtとCuとにより形成された金属間化合物を含む第3相と、を有してなり、前記第1相および前記第2相は、一方の相が他方の相の周囲に配置されている状態で表面に露出していることを特徴とする複合材料が提供される。
本発明の第1の側面においては、Ptからなる1または複数の第1相と、Cuからなる、またはAuとCuとにより形成された金属間化合物からなる1または複数の第2相と、前記第1相と前記第2相との間に位置し、PtとCuとにより形成された金属間化合物を含む第3相と、を有してなり、前記第1相および前記第2相は、一方の相が他方の相の周囲に配置されている状態で表面に露出していることを特徴とする複合材料が提供される。
本発明に係る複合材料によれば、Ptからなる1または複数の第1相と、Cuからなる、またはAuとCuとにより形成された金属間化合物からなる1または複数の第2相と、を有しており、前記第1および第2相のうちの一方の相は、他方の相の周囲に配置されている。より具体的には、本発明の複合材料は、たとえば第1相内に複数の第2相が配置され、第2相内に複数の第1相が配置されたものとなっている。そのため、本発明の複合材料は、全体が金属間化合物相により形成された複合材料のように靭性が必要以上に高くなり過ぎることもなく、加工性に優れたものとなる。その結果、本発明の複合材料は、仕上げの表面加工などを容易に行なうことができ、また表面を鏡面加工とするのが容易であり、Pt本来の金属光沢である清楚な輝き維持したピンク色のプラチナ複合材料となる。
第1相21は、複合材料2の母材となるものであり、プラチナ(Pt)からなっている。第1相21中に含まれるPtの総量は、たとえば全組成の25質量%以上75質量%以下とされている。Ptの総量が25質量%を下回る場合には、後述する第2相22の主成分である銅(Cu)の比率が大きくなるために、PtとCuとの間の電池効果によって耐食性が悪化し、また色合いが銅の色に近くなるため好ましくない。Ptの総量が75質量%を超える場合には、Cuの比率が小さくなるために、ピンク色とするのが困難となる。
第2相22は、第1相21中に分散されたものであり、銅(Cu)からなり、あるいは金(Au)と銅(Cu)の金属間化合物からなる。この第2相22の存在により、複合材料2はPtに加えてCuを含んだものとなり、その表面において第2相22の一部が露出するためにピンク色となる。また、複合材料2は、第2相22を第1相21中に分散したものであるため、複合材料2の全体が金属間化合物とはなっていない。そのため、複合材料2は、鋳造法によって得られるPt−Cu材料のように全体が金属間化合物とされている場合に比べて靭性が小さくなっており、第2相22の存在によって加工性が向上する。
図2に示した例では、Ptからなる第1相21内に、Cuからなる、あるいはAuとCuの金属間化合物からなる複数の第2相22が配置されたものとなっているが、本発明の複合材料は、Cuからなる、あるいはAuとCuの金属間化合物からなる第2相を母材とし、この第2相内にPtからなる複数の第1相が配置されたものであってもよい。この場合、第1相は、PtとCuとの金属間化合物である第3相により被覆されているのが好ましい。
複合材料2における第2相22をAuとCuとの金属間化合物とする場合には、Cu粉末として、AuとCuとの合金を使用してもよい。
このような放電プラズマ焼結法では、高エネルギー密度とジュール熱を広く応用することにより、電力消費量が少なく効率の良い焼結が可能となる。そのため、昇温・保持時間を含めた焼結時間は、概ね5〜20分程度の比較的短時間となり、鋳造法のように、材料全体が金属間化合物となることもなく、Ptからなる第1相21に、Cuからなる、あるいはAuとCuとの金属間化合物からなる複数の第2相22を分散させたものとすることができ、また第2相22を適当な厚みの金属間化合物の第3相23で被覆したものとすることができ、あるいは、Cuからなる、またはAuとCuとの金属間化合物からなる第2相に、Ptからなる複数の第1相を分散させるとともに、第1相を適当な厚みの金属間化合物の第3相で被覆したものとすることができる。
複合材料層6は、図1を参照して説明した指輪1と同様に図2に示した組成状態を有する複合材料2により形成されている。すなわち、複合材料層6は、Ptからなる第1相21内に、Cuからなる、あるいはAuとCuとの金属間化合物からなる複数の第2相22が分散され、この第2相22がPtとCuとの金属間化合物を含む第3相23によって被覆された組織とされている(図2参照)。複合材料層2の厚みは、たとえば0.03〜0.1μmとされている。もちろん、複合材料層2は、Cuからなる、あるいはAuとCuとの金属間化合物からなる第2相内に、Ptからなる第1相が分散され、この第1相がPtとCuとの金属間化合物を含む第3相によって被覆された組織であってもよい。
また、図5に示した時計7および図6に示したメガネ8における複合材料層は、Cuからなる、あるいはAuとCuとの金属間化合物からなる第2相内に、Ptからなる第1相が配置され、この第1相がPtとCuとの金属間化合物を含む第3相によって被覆された組織状態のものであってもよい。
本発明は上述した実施の形態には限定されず、種々に変更可能である。たとえば、複合材料2(複合材料層6)の第3相23は、成形体の形成条件や焼成条件を適宜設定することにより、放電プラズマ焼結法以外の方法により生成させてもよい。たとえば、多少のボイドが発生するものの、真空焼成などにより1.33×10-2Paの真空条件下で500℃まで徐々に昇温し、この温度で30分間焼成することによっても生成することができる。
Claims (15)
- Ptを主成分とする1または複数の第1相と、Cuを含む1または複数の第2相と、を有し、前記第1および第2相のうちの一方の相は、他方の相の周囲に配置されていることを特徴とする複合材料。
- 前記複数の第2相は、前記第1相内に配置されている、請求項1に記載の複合材料。
- 前記複数の第1相は、前記第2相内に配置されている、請求項1に記載の複合材料。
- 前記第1相と前記第2相との間において両相に接し、PtとCuとにより形成された金属間化合物を含む第3相をさらに有している、請求項1ないし3のいずれかに記載の複合材料。
- 前記第3相は、前記第1相または前記第2相を被覆している、請求項4に記載の複合材料。
- 前記第3相は、最大厚みが0.59μm以下である、請求項4または5に記載の複合材料。
- 前記第1相中に含まれるPtの総量は、全組成の25質量%以上75質量%以下である、請求項1ないし6のいずれかに記載の複合材料。
- 前記第1相は、Pd、Rh、RuおよびAgのうちの少なくとも1種をさらに含んでいる、請求項1ないし7のいずれかに記載の複合材料。
- 前記第2相は、Au、AgおよびPdのうちの少なくとも1種をさらに含んでいる、請求項1ないし7のいずれかに記載の複合材料。
- 複合材料により形成された複合材料領域を有する装飾品であって、
前記複合材料は、請求項1ないし9のいずれかに記載のものであることを特徴とする装飾品。 - 前記第2相および前記第3相の少なくとも一部は表面より露出しており、前記第2相の露出部は前記第3相の露出部によって囲まれている、請求項10に記載の装飾品。
- 前記第3相の前記露出部の最大幅が0.59μm以下である、請求項11に記載の装飾品。
- 前記複合材料領域は、少なくとも直径1mmの円で規定される領域を含んでいる、請求項10ないし12のいずれかに記載の装飾品。
- 前記複合材料領域は、表面から所定深さの領域まで形成されている、請求項10ないし13のいずれかに記載の装飾品。
- 前記複合材料領域は、少なくとも表面より1mmの深さの領域まで形成されている、請求項14に記載の装飾品。
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