以下に、本発明の一実施形態に係る多層チューブについて説明する。本実施形態においては、本発明に係る多層チューブとして、半導体や液晶表示装置等の製造装置における薬液の輸送に用いられる配管用多層チューブを例として説明する。
図1は、本実施形態に係る多層チューブ1(以下、「チューブ1」という)の断面図である。図1に示すように、このチューブ1は、その径方向中央に、液体や気体を流通させることのできる中空部40が形成された円筒構造体であって、当該径方向において、最も内側に配置される内層10と、当該内層10の外側を覆う中間層20と、さらに当該中間層20を介して当該内層10の外側を覆う外層30と、を有している。
内層10は、中空部40を流れる薬液やガスに直接接触する。また、外層30は、チューブ1の径方向において最も外側に配置され、当該チューブ1が置かれた環境を満たす気体(例えば、空気)に直接接触する。中間層20は、その径方向内側の面で内層10と接着するとともに、当該径方向外側の面で外層30と接着している。すなわち、内層10と外層30とは、中間層20を介して互いに接着し、一体化されている。
内層10は、フッ素樹脂(以下、「第一フッ素樹脂」という)からなる。この内層10を形成する第一フッ素樹脂としては、溶融押出し可能なものを好ましく用いることができる。すなわち、例えば、末端基がふっ素化処理されたテトラフルオロエチレン−ペルフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(PFA)、テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体(FEP)、テトラフルオロエチレン−エチレン共重合体(ETFE)、クロロトリフルオロエチレン(CTFE)−テトラフルオロエチレン(TFE)共重合体、クロロトリフルオロエチレン(CTFE)−テトラフルオロエチレン(TFE)−ペルフルオロアルキルビニルエーテル共重合体等からなる群より選ばれる1つを単独で、又は2つ以上を積層して、または2つ以上をブレンドして好ましく用いることができ、中でも、PFA、ETFE、FEPのうち少なくとも1つを好ましく用いることができ、特に、耐薬品性、耐熱性、クリーン性、高純度性に優れている末端基がフッ素化処理されたPFAを好ましく用いることができる。
また、これらPFA等の第一フッ素樹脂としては、当該第一フッ素樹脂が所望の特性(例えば、耐薬品性、クリーン性、融点、剛性、伸縮性等)を備えるよう、当該第一フッ素樹脂を構成するモノマーの重合比や末端基を調整したものを適宜用いることができる。
中間層20は、酸無水物基、カルボキシ基、酸ハライド基及びカーボネート基からなる群から選ばれる少なくとも一種の官能基を有するフッ素樹脂(以下、「第二フッ素樹脂」という)からなる。この中間層20を形成する第二フッ素樹脂は、フッ素樹脂(以下、「ベースフッ素樹脂」という)に酸無水物基、カルボキシ基、酸ハライド基及びカーボネート基からなる群から選ばれる少なくとも一種の官能基を含有させることにより、当該ベースフッ素樹脂に比べて、内層10及び外層30との接着性を向上させたものである。この官能基としては、酸無水物基を好ましく用いることができる。
この第二フッ素樹脂を構成するベースフッ素樹脂としては、例えば、テトラフルオロエチレンに基づく繰り返し単位を含むフッ素樹脂を好ましく用いることができる。具体的に、このベースフッ素樹脂としては、例えば、PFA、FEP、ETFE、CTFE−TFE共重合体等からなる群より選ばれる1つを単独で、又は2つ以上をブレンドして好ましく用いることができ、特に、PFAを好ましく用いることができる。また、このベースフッ素樹脂としては、内層10に用いられた第一フッ素樹脂と同種のフッ素樹脂を好ましく用いることができる。すなわち、例えば、第一フッ素樹脂としてPFAを用いる場合には、第二フッ素樹脂として酸無水物基、カルボキシ基、酸ハライド基及びカーボネート基からなる群から選ばれる少なくとも一種の官能基を有するPFAを好ましく用いることができる。第二フッ素樹脂としては、酸無水物基を有するPFAをより好ましく用いることができる。
また、第二フッ素樹脂に含有される酸無水物基としては、不飽和カルボン酸無水物基を好ましく用いることができ、特に、ジカルボン酸無水物基を好ましく用いることができ、中でも環状炭化水素と結合したジカルボン酸無水物基を好ましく用いることができる。
また、この酸無水物基としては、重合性不飽和基及びジカルボン酸無水物基を環に有する環状炭化水素モノマー(以下、「環状モノマー」という)に基づく繰り返し単位を好ましく用いることができる。この場合、第二フッ素樹脂としては、例えば、テトラフルオロエチレンに基づく第一繰り返し単位、ジカルボン酸無水物基を有し且つ環内に重合性不飽和基を有する環状炭化水素モノマーに基づく第二繰り返し単位、及びテトラフルオロエチレン及び当該環状炭化水素モノマーを除くその他のモノマー(以下、「追加モノマー」という)に基づく第三繰り返し単位を有するものを好ましく用いることができる。
また、この第二フッ素樹脂としては、第一繰り返し単位、第二繰り返し単位、及び第三繰り返し単位の合計モル量に対して、当該第一繰り返し単位が50〜99.89モル%であり、当該第二繰り返し単位が0.01〜5モル%であり、当該第三繰り返し単位が0.1〜49.99モル%であるものを好ましく用いることができる。第一繰り返し単位、第二繰り返し単位、及び第三繰り返し単位のモル%が、それぞれ上記の範囲内にある場合には、第二フッ素樹脂は、耐熱性、耐薬品性、接着性、成形性、機械物性に優れたものとなる。さらに、この第二フッ素樹脂としては、第一繰り返し単位が60〜99.45モル%であり、第二繰り返し単位が0.05〜3モル%であり、第三繰り返し単位が0.5〜39.95モル%であるものがより好ましく、当該第一繰り返し単位が80〜98.9モル%であり、当該第二繰り返し単位が0.1〜1モル%であり、当該第三繰り返し単位が1〜19.9モル%であるものが最も好ましい。
この第二フッ素樹脂を構成する環状モノマーは、1つ以上の5員環又は6員環からなる環状炭化水素と、ジカルボン酸無水物基と、環内重合性不飽和基と、を有する重合性化合物が好ましい。この環状モノマーとしては、1つ以上の有橋多環炭化水素を有する環状炭化水素を有するものを好ましく用いることができ、特に、1つの有橋多環炭化水素からなる環状炭化水素、2つ以上の有橋多環炭化水素が縮合した環状炭化水素、又は有橋多環炭化水素と他の環状炭化水素とが縮合した環状炭化水素を有するものを好ましく用いることができる。また、この環状モノマーとしては、炭化水素環を構成する炭素原子間に存在する重合性不飽和基を1つ以上含む環内重合性不飽和基を有するものを好ましく用いることができる。また、この環状モノマーとしては、炭化水素環を構成する2つの炭素原子に結合し、又は環外の2つの炭素原子に結合しているジカルボン酸無水物基(−CO−O−CO−)を有するものを好ましく用いることができる。
具体的に、この環状モノマーとしては、例えば、5−ノルボルネン−2,3−ジカルボン酸無水物(以下、「NAH」という)や、下式(1)〜(3)で表される酸無水物等を好ましく用いることができ、特に、NAHを好ましく用いることができる。なお、上述の環状モノマーを用いることにより、特殊な重合方法を用いることなく、当該環状モノマーからなる繰り返し単位を含む第二フッ素樹脂を容易に製造することができる。
第二フッ素樹脂を構成する追加モノマーとしては、例えば、フッ化ビニル、フッ化ビニリデン(以下、「VdF」という)、クロロトリフルオロエチレン(以下、「CTFE」という)、トリフルオロエチレン、ヘキサフルオロプロピレン(以下、「HFP」という)、ペルフルオロアルキルビニルエーテルであるCF2=CFORf1(ここで、Rf1は炭素数1〜10で炭素原子間に酸素原子を含んでもよいペルフルオロアルキル基)、CF2=CFORf2SO2X1(Rf2は炭素数1〜10で炭素原子間に酸素原子を含んでもよいペルフルオロアルキレン基、X1はハロゲン原子又は水酸基)、CF2=CFORf2CO2X2(ここで、Rf2は炭素数1〜10で炭素原子間に酸素原子を含んでもよいペルフルオロアルキレン基、X2は水素原子又は炭素数1〜3のアルキル基)、CF2=CF(CF2)pOCF=CF2(ここで、pは1又は2)、CH2=CX3(CF2)qX4(ここで、X3及びX4は、互いに独立に水素原子又はフッ素原子、qは2〜10の整数)、ペルフルオロ(2−メチレン−4−メチル−1,3−ジオキソラン)、ペルフルオロ(2,2−ジメチル−1,3−ジオキソール)、ペルフルオロ(4−メトキシ−1,3−ジオキソール)、エチレン、プロピレン、イソブテン等の炭素数2〜4のオレフィンからなる群より選ばれる1つを単独で、又は2つ以上を組み合わせて用いることができる。
具体的に、この追加モノマーとしては、例えば、VdF、HFP、CTFE、CF2=CFORf1、CH2=CX3(CF2)qX4、及びエチレンからなる群より選ばれる1つ以上を含むものを用いることができ、好ましくは、HFP、CTFE、CF2=CFORf1、エチレン及びCH2=CX3(CF2)qX4からなる群より選ばれる1つ以上を含むものを用いることができ、特に好ましくは、HFP、CTFE及びCF2=CFORf1である。そして、追加モノマーとしては、最も好ましくは、CF2=CFORf1である。この場合、Rf1としては、炭素数1〜6のペルフルオロアルキル基が好ましく、炭素数2〜4のペルフルオロアルキル基がより好ましく、ペルフルオロプロピル基が最も好ましい。
また、第二フッ素樹脂としては、その融点が、150〜320℃の範囲内にあるものを好ましく用いることができ、特に、200〜310℃の範囲内にあるものを好ましく用いることができる。融点がこの範囲内にある第二フッ素樹脂は、特に溶融共押出しにおける成形性に優れる。なお、第二フッ素樹脂の融点は、当該第二フッ素樹脂に含まれる各繰り返し単位の含有比率によって適宜調節することができる。
また、第二フッ素樹脂として、TFEに基づく第一繰り返し単位が50〜99.89モル%であり、第二繰り返し単位が0.01〜5モル%であり、CTFEに基づく第三繰り返し単位が0.1〜49.99モル%であるフッ素樹脂を用いることも、中間層20のガスバリア性が向上するので好ましい。
外層30は、添加剤を含まないポリアミド系樹脂からなる。この添加剤は、成形後のポリアミド系樹脂に柔軟性を付与すること等を目的として用いられる可塑剤や、ポリアミド系樹脂のオゾン等による劣化を防止すること等を目的として用いられる老化防止剤である。可塑剤としては、例えば、N−ブチルベンゼンスルホンアミド、p−トルエンスルホンアミドを例示することができ、老化防止剤としては、例えば、ジ−t−ブチルフェノールを例示することができる。このような添加剤は、ポリアミド系樹脂に添加されることにより、当該ポリアミド系樹脂の成形性を向上させ、劣化を防止することができる一方で、当該ポリアミド系樹脂からなる成形体のアウトガスの要因となり得る。この外層30を形成するポリアミド系樹脂としては、内層10に用いられる第一フッ素樹脂や中間層20に用いられる第二フッ素樹脂よりもガスバリヤ性に優れた(ガス透過性が低い)脂肪族ポリアミド系樹脂や芳香族ポリアミド系樹脂を好ましく用いることができる。すなわち、例えば、ポリアミド12、ポリアミド6、ポリアミド66、ポリアミド46、ポリアミド11、ポリアミドMXD6(半芳香族系ポリアミド)、ポリアミド26、ポリアミド69、ポリアミド610、ポリアミド611、ポリアミド612、ポリアミド6T、ポリアミド6I、ポリアミド912、ポリアミド1012、ポリアミド1212、ポリアミドPACM12等からなる群より選ばれる1つを単独で、又は2つ以上をブレンドして用いることができ、又は当該群より選ばれる2つ以上をモノマーとして含む共重合体を好ましく用いることができる。具体的に、このポリアミド系樹脂としては、例えば、ポリアミド12、ポリアミド6、ポリアミド6/ポリアミド12共重合体を好ましく用いることができる。また、ポリアミド系樹脂としてポリアミド6/ポリアミド12共重合体を用いる場合には、ガスバリヤ性の点で、ポリアミド6の含有率が比較的高い共重合体を好ましく用いることができ、例えば、ポリアミド6とポリアミド12とのモル比(重合比)が7:3〜9:1の範囲内のものを好ましく用いることができる。
また、このチューブ1において、内層10の厚さは50〜400μmの範囲内であることが好ましく、中間層20の厚さは50〜400μmの範囲内であることが好ましく、外層30の厚さは100〜900μmの範囲内であることが好ましい。内層10の厚さが上述の範囲内である場合には、当該内層10は好ましい耐薬品性や耐食性を備えることができる。中間層20の厚さが上述の範囲内である場合には、当該中間層は好ましい接着性を備えることができる。外層30が上述の範囲内である場合には、当該外層30は好ましいガスバリヤ性を備えることができる。内層10、中間層20、外層30の厚さがそれぞれ上述の範囲内である場合には、チューブ1は、耐薬品性、ガスバリヤ性、クリーン性に加えて、好ましい柔軟性を備えることもできる。
また、このチューブ1は、第一フッ素樹脂と、第二フッ素樹脂と、添加剤を含まないポリアミド系樹脂と、を共押出しすることにより好ましく成形することができる。このチューブ1の共押出し成形においては、第一フッ素樹脂とポリアミド系樹脂とを互いに異なる所望の温度で溶融させることにより、当該第一フッ素樹脂の成形性と当該ポリアミド系樹脂の成形性とをそれぞれ良好に維持しつつ共押出しすることが好ましい。
すなわち、例えば、共押出し用の多層ダイス内において、第一フッ素樹脂の温度が予め定められた第一温度(例えば、当該第一フッ素樹脂が溶融状態で良好な成形性を維持しつつ当該ダイス内の流路を流れることができる温度)となるよう、当該第一フッ素樹脂を加熱して溶融させるとともに、ポリアミド系樹脂の温度が予め定められた第二温度(例えば、当該ポリアミド系樹脂が溶融状態で良好な成形性を維持しつつ当該ダイス内の流路を流れることができる温度)となるよう、当該ポリアミド系樹脂を加熱して溶融させる。この場合、第一温度は、第一フッ素樹脂の融点より所定範囲内の温度(例えば、50〜70℃)だけ高い温度として予め定めることができる。また、第二温度は、当該第一温度より低く、且つポリアミド系樹脂の融点より所定範囲内の温度(例えば、60〜160℃)だけ高い温度として予め定めることができる。
また、チューブ1の共押出し成形に用いるダイスとしては、当該ダイス内における第一フッ素樹脂を加熱するための第一ヒータと、ポリアミド系樹脂を加熱するための第二ヒータと、を互いに独立に備えたものを好ましく用いることができる。
すなわち、第一フッ素樹脂が流れる第一流路と、第二フッ素樹脂が流れる第二流路と、ポリアミド系樹脂が流れる第三流路と、を備えたダイスであって、当該第一流路内の第一フッ素樹脂を予め定められた第一温度に加熱する第一ヒータと、当該第三流路内のポリアミド系樹脂を当該第一温度より低い予め定められた第二温度に加熱する第二ヒータと、を備えたものを好ましく用いることができる。
図2に、このようなダイスの一例について、その断面を示す。図2に示すダイス50(以下、「第一ダイス50」という)は、外側ダイス50aと、当該外側ダイス50aの径方向内側に嵌め入れられた中間ダイス50bと、当該中間ダイス50bの径方向内側に嵌め入れられた内側ダイス50cと、当該内側ダイス50cの径方向内側(すなわち第一ダイス50の径方向中央部分)に嵌め入れられたマンドレル50dと、を有している。
この第一ダイス50においては、マンドレル50dと内側ダイス50cとの間に、円筒状の内層流路51が形成され、当該内層流路51の径方向外側であって当該内側ダイス50cと中間ダイス50bとの間に、円筒状の中間層流路52が形成され、当該中間層流路52の当該径方向外側であって当該中間ダイス50bと外側ダイス50aとの間に、円筒状の外層流路53が形成されている。内層流路51、中間層流路52、外層流路53は、押出し方向X1(図2に示す矢印が示す方向X1)に所定の長さだけ互いに略平行に延びた後、第一ダイス50の径方向中心側に寄り集まって合流し、この合流点から下流側には1つの合流流路54が形成されている。この合流流路54は、押出し方向X1における第一ダイス50の下流端に開口している。
また、第一ダイス50は、内層流路51の径方向内側に配置されたヒータ60(以下、「内部ヒータ60」という)と、外層流路53の当該径方向外側に配置されたヒータ61(以下、「外部ヒータ61」という)と、を有している。内部ヒータ60は、マンドレル50dの内部に埋め込まれ、内層流路51及び合流流路54に沿って配置されている。外部ヒータ61は、外側ダイス50aの径方向外側(すなわち、第一ダイス50の径方向外表面)を覆い、外層流路53のうち、中間層流路52及び内層流路51と略平行に延びている部分に沿って配置され、さらに合流流路54の径方向外側まで延びている。すなわち、内部ヒータ60と外部ヒータ61とは、内層流路51、中間層流路52、外層流路53、及び合流流路54を径方向の内側及び外側から挟むように配置されている。
また、内部ヒータ60の加熱温度と外部ヒータ61の加熱温度とは互いに独立に設定することができる。すなわち、第一ダイス50においては、マンドレル50d及び外側ダイス50aを、それぞれ内部ヒータ60及び外部ヒータ61によって、互いに異なる温度に加熱することができる。
また、第一ダイス50は、マンドレル50dのうち内部ヒータ60に近接する部分に配置された温度センサ62(以下、「内部センサ62」という)と、外側ダイス50aのうち外部ヒータ61に近接する部分に配置された温度センサ63(以下、「外部センサ63」という)と、を有している。内部センサ62及び外部センサ63は、それぞれマンドレル50dの温度及び外側ダイス50aの温度を互いに独立に測定することができる。そして、内部センサ62による測定結果及び外部センサ63による測定結果は、それぞれ内部ヒータ60及び外部ヒータ61にフィードバックすることができる。このため、内部ヒータ60及び外部ヒータ61は、内部センサ62及び外部センサ63による温度測定結果に基づいて、マンドレル50d及び外側ダイス50aをそれぞれ互いに異なる所望の温度に維持するよう加熱することができる。
そして、チューブ1の成形においては、この第一ダイス50において、内層流路51、中間層流路52、及び外層流路53に、それぞれ溶融状態の第一フッ素樹脂、第二フッ素樹脂、及びポリアミド系樹脂を流し、これら第一フッ素樹脂、第二フッ素樹脂、及びポリアミド系樹脂を合流流路54で積層して共押出しすることによって、当該第一フッ素樹脂からなる内層10、当該第二フッ素樹脂からなる中間層20、及び当該ポリアミド系樹脂からなる外層30を有する3層のチューブ1を成形することができる。
このとき、内層流路51の第一フッ素樹脂は、内部ヒータ60によって当該第一フッ素樹脂の融点より高い予め定められた第一温度に加熱されるとともに、外層流路53のポリアミド系樹脂は、外部ヒータ61によって当該第一の温度より低く当該ポリアミド系樹脂の融点より高い予め定められた第二温度に加熱される。これにより、共押出しにおける第一フッ素樹脂の成形性及びポリアミド系樹脂の成形性をいずれも良好に維持することができる。
また、チューブ1の共押出し成形に用いるダイスとしては、第一フッ素樹脂が流れる第一流路と、第二フッ素樹脂が流れる第二流路と、ポリアミド系樹脂が流れる第三流路と、を備えたダイスであって、当該第一流路内の第一フッ素樹脂を予め定められた第一温度に加熱する第一ヒータと、当該第二流路内の第二フッ素樹脂を予め定められた第二温度に加熱する第二ヒータと、当該第三流路内のポリアミド系樹脂を当該第一温度及び当該第二温度より低い予め定められた第三温度に加熱する第三ヒータと、を備えたものを好ましく用いることができる。
図3に、このようなダイスの一例について、その断面を示す。図3に示すダイス70(以下、「第二ダイス70」という)は、外側ダイス70bと、当該外側ダイス70bの径方向内側に嵌め入れられた内側ダイス70cと、当該内側ダイス70cの径方向内側(すなわち第二ダイス70の中央部分)に嵌め入れられたマンドレル70dと、さらに当該外側ダイス70bの径方向外側において、当該第二ダイス70の押出し方向X2(図3に示す矢印が示す方向X2)に対して略直交するように延びる外層ダイス70aと、を有している。
この第二ダイス70においては、マンドレル70dと内側ダイス70cとの間に、円筒状の内層流路71が形成され、当該内層流路71の径方向外側であって当該内側ダイス70cと外側ダイス70bとの間に、円筒状の中間層流路72が形成されるとともに、外層ダイス70aの内部には、当該第二ダイス70の径方向外側から内側に向けて延びる外層流路73が形成されている。内層流路71及び中間層流路72は、押出し方向X2に所定の長さだけ互いに略平行に延びた後、第二ダイス70の径方向中心側に寄り集まって合流するとともに、その下流側でさらに外層流路73とも合流し、この合流点から下流側には1つの合流流路74が形成されている。この合流流路74は、押出し方向X2における第二ダイス70の下流端に開口している。
また、第二ダイス70は、内層流路71の径方向内側に配置されたヒータ80(以下、「内部ヒータ80」という)と、中間層流路72の当該径方向外側に配置されたヒータ81(以下、「外部ヒータ81」という)と、外層流路73の押出し方向X2に略直行する方向に延びている部分を包むように配置されたヒータ82(以下、「外層ヒータ82」という)と、を有している。内部ヒータ80は、マンドレル70dの内部に埋め込まれ、内層流路71及び合流流路74に沿って配置されている。外部ヒータ81は、外側ダイス70bの径方向外側を覆い、中間層流路72のうち、内層流路71と略平行に延びている部分に沿って配置されている。外層ヒータ82は、外層ダイス70aを覆うように配置されている。
また、内部ヒータ80の加熱温度と、外部ヒータ81の加熱温度と、外層ヒータ82の加熱温度と、は互いに独立に設定することができる。すなわち、第二ダイス70においては、マンドレル70d、外側ダイス70b、及び外層ダイス70aを、それぞれ内部ヒータ80、外部ヒータ81、及び外層ヒータ82によって、互いに異なる温度に加熱することができる。
また、第二ダイス70は、マンドレル70dのうち内部ヒータ80に近接する部分に配置された温度センサ83(以下、「内部センサ83」という)と、外側ダイス70bのうち外部ヒータ81に近接する部分に配置された温度センサ84(以下、「外部センサ84」という)と、外層ダイス70aのうち外層ヒータ82に近接する部分に配置された温度センサ85(以下、「外層センサ85」という)と、を有している。内部センサ83、外部センサ84、及び外層センサ85は、それぞれマンドレル70dの温度、外側ダイス70bの温度、及び外層ダイス70aの温度を互いに独立に測定することができる。そして、内部センサ83による測定結果、外部センサ84による測定結果、及び外層センサ85による測定結果は、それぞれ内部ヒータ80、外部ヒータ81、及び外層ヒータ82にフィードバックすることができる。このため、内部ヒータ80、外部ヒータ81、及び外層ヒータ83は、内部センサ83、外部センサ84、及び外層センサ85による温度測定結果に基づいて、マンドレル70d、外側ダイス70b、及び外層ダイス70aをそれぞれ互いに異なる所望の温度に加熱することができる。
そして、チューブ1の成形においては、この第二ダイス70において、内層流路71、中間層流路72、及び外層流路73に、それぞれ溶融状態の第一フッ素樹脂、第二フッ素樹脂、及びポリアミド系樹脂を流し、これら第一フッ素樹脂、第二フッ素樹脂、及びポリアミド系樹脂を合流流路74で積層して共押出しすることによって、当該第一フッ素樹脂からなる内層10、当該第二フッ素樹脂からなる中間層20、及び当該ポリアミド系樹脂からなる外層30を有する3層のチューブ1を成形することができる。
このとき、内層流路71の第一フッ素樹脂は、内部ヒータ80によって当該第一フッ素樹脂の融点より高い予め定められた第一温度に加熱され、中間層流路72の第二フッ素樹脂は、外部ヒータ81によって当該第二フッ素樹脂の融点より高い予め定められた第二温度に加熱され、外層流路73のポリアミド系樹脂は、外層ヒータ82によって当該第一温度及び第二温度より低く当該ポリアミド系樹脂の融点より高い予め定められた第三温度に加熱される。これにより、共押出し成形における第一フッ素樹脂の成形性、第二フッ素樹脂の成形性、及びポリアミド系樹脂の成形性をいずれも良好に維持することができる。
また、第二ダイス70のうち、外層流路73の下流部分(当該外層流路73と合流流路74との合流点よりやや上流部分)には、外層ヒータ82は配置されておらず、当該外層流路73を流れるポリアミド系樹脂を冷却するための冷却路75が形成されている。このため、ポリアミド系樹脂は、外層流路73の上流側で外層ヒータ82によって第三温度に加熱された後、冷却路75内を流れる冷媒(気体や液体)によって冷却されてから、合流流路74に流入し、第一フッ素樹脂及び第二フッ素樹脂に積層されることとなる。
また、これらの共押出し成形に用いられる押出し機において、ダイスの上流で原料の樹脂を溶融させるスクリューシリンダーの加熱温度としては、230℃〜380℃の範囲内の温度を好ましく用いることができる。また、スクリューシリンダーの下流に連結されるダイスの加熱温度としては、280℃〜370℃の範囲内の温度を好ましく用いることができ、より好ましくは300〜350℃の範囲内の温度を用いることができる。また、第一フッ素樹脂とポリアミド系樹脂との融点差の点で、ダイス内において、第一フッ素樹脂が流れる流路の加熱温度は、ポリアミド系樹脂が流れる流路の加熱温度よりも15℃以上高いことが好ましい。また、スクリューの回転数は、目的に応じて適宜設定することができるが、例えば、1〜25回転/分の範囲内を好ましく用いることができる。なお、これらのダイスに用いるヒータとしては、例えば、金属の発熱によって加熱できるものを好ましく用いることができ、特に、ニクロム線ヒータを好ましく用いることができる。
次に、チューブ1の具体例について説明する。
[第二フッ素樹脂の製造]
酸無水物基を有するモノマーとしてNAH(無水ハイミックス酸、日立化成工業株式会社製)を、追加モノマーとしてCF2=CFO(CF2)3F(ペルフルオロプロピルビニルエーテル、旭硝子株式会社製)(以下、PPVEという)を用いて、第二フッ素樹脂を製造した。
まず、369kgの1,3−ジクロロ−1,1,2,2,3−ペンタフルオロプロパン(AK225cb、旭硝子社製)(以下、「AK225cb」という)と、30kgのPPVEと、を予め脱気された、内容積が430Lの撹拌機付き重合槽に仕込んだ。次いで、この重合槽内を加熱して50℃に昇温し、さらに50kgのTFEを仕込んだ後、当該重合層内の圧力を0.89MPa/Gまで昇圧した。
さらに、重合開始剤溶液として、(ペルフルオロブチリル)ペルオキシドを0.36質量%の濃度でAK225cbに溶解した溶液を調製し、重合槽中に当該溶液の3Lを1分間に6.25mlの速度にて連続的に添加しながら重合を行った。また、重合反応中における重合槽内の圧力が0.89MPa/Gを保持するようにTFEを連続的に仕込んだ。
また、NAHを0.3質量%の濃度でAK225cbに溶解した溶液を、重合中に仕込むTFEのモル数に対して0.1モル%に相当する量ずつ連続的に仕込んだ。
重合開始8時間後、32kgのTFEを仕込んだ時点で、重合槽内の温度を室温まで降温するとともに、圧力を常圧までパージした。得られたスラリをAK225cbと固液分離した後、150℃で15時間乾燥することにより、33kgの第二フッ素樹脂(以下、「接着性PFA」という)を得た。
溶融NMR分析及び赤外吸収スペクトル分析の結果から、この接着性PFAの共重合組成は、TFEに基づく繰り返し単位(第一繰り返し単位)/NAHに基づく繰り返し単位(第二繰り返し単位)/PPVEに基づく繰り返し単位(第三繰り返し単位)=97.9/0.1/2.0(モル%)であった。また、この接着性PFAの融点は300℃であり、ASTMD3307に従い5kg荷重下に372℃で測定した溶融流れ速度(Melt Flow Rate:MFR)は0.39mm3/秒であった。
[実施例1]
実施例1においては、内層10を形成する第一フッ素樹脂として、融点が284℃のPFA(940HP−Plus、三井デュポンフロロケミカル株式会社製)(以下、「第一PFA」という)を用い、中間層20を形成する第二フッ素樹脂として、上述のように製造した接着性PFAを用い、外層30を形成するポリアミド系樹脂として、融点が176℃であって添加剤の入っていないポリアミド12(3030U、宇部興産株式会社製)(以下、「第一ポリアミド12」という)を用いた。
また、この実施例1においては、図2に示す第一ダイス50を用いた。すなわち、まず、第一ダイス50を備えた3層押出成形機の内層流路51に連通するシリンダーに第一PFAのペレットを供給し、中間層流路52に連通するシリンダーに接着性PFAのペレットを供給し、外層流路53に連通するシリンダーに第一ポリアミド12のペレットを供給した。この押出成形機のシリンダーから第一ダイス50までの輸送ゾーンにおける第一PFA、接着性PFA、及び第一ポリアミド12の温度をそれぞれ370℃、340℃、230℃に維持した。
次いで、内部センサ62によって測定されるマンドレル50dの温度が350℃となり、外部センサ63によって測定される外側ダイス50aの温度が330℃となるように、内部ヒータ60及び外部ヒータ61によって、当該マンドレル50d及び当該外側ダイス50aを互いに独立に加熱した。
そして、溶融状態の第一PFA、接着性PFA、及び第一ポリアミド12を合流流路54内で合流させた後、第一ダイス50から押出すことにより、内層10、中間層20、及び外層30の3層からなるチューブ1(以下、「チューブA1」という)を成形した。このチューブA1の内径(すなわち、中空部40の直径)は6mmであり、その内層10、中間層20、外層30の厚さはそれぞれ0.3mm、0.1mm、0.7mmであった。
[実施例2]
実施例2においては、実施例1と同様、第一フッ素樹脂として第一PFAを用い、第二フッ素樹脂として接着性PFAを用い、ポリアミド系樹脂として第一ポリアミド12を用いた。
また、この実施例2においては、図3に示す第二ダイス70を用いた。すなわち、まず、第二ダイス70を備えた3層押出成形機の内層流路71に連通するシリンダーに第一PFAのペレットを供給し、中間層流路72に連通するシリンダーに接着性PFAのペレットを供給し、外層流路73に連通するシリンダーに第一ポリアミド12のペレットを供給した。この押出成形機のシリンダーから第二ダイス70までの輸送ゾーンにおける第一PFA、接着性PFA、及び第一ポリアミド12の温度をそれぞれ370℃、340℃、230℃に維持した。
次いで、内部センサ83によって測定されるマンドレル70dの温度が350℃となり、外層センサ85によって測定される外層ダイス70aの温度が300℃となるように、内部ヒータ80及び外層ヒータ82によって、当該マンドレル70d及び当該外層ダイス70aを互いに独立に加熱した。
そして、溶融状態の第一PFA、接着性PFA、及び第一ポリアミド12を合流流路74内で合流させた後、第二ダイス70から押出すことにより、内層10、中間層20、及び外層30の3層からなるチューブ1(以下、「チューブA2」という)を成形した。このチューブA2の内径は6mmであり、その内層10、中間層20、外層30の厚さはそれぞれ0.3mm、0.1mm、0.7mmであった。
[実施例3]
実施例3においては、第一フッ素樹脂として第一PFAを用い、第二フッ素樹脂として接着性PFAを用い、ポリアミド系樹脂として融点が215℃であって添加剤の入っていないポリアミド6(1030B、宇部興産株式会社製)を用いた。
また、この実施例3においては、第二ダイス70を用いた。すなわち、まず、第二ダイス70を備えた3層押出成形機の内層流路71に連通するシリンダーに第一PFAのペレットを供給し、中間層流路72に連通するシリンダーに接着性PFAのペレットを供給し、外層流路73に連通するシリンダーにポリアミド6のペレットを供給した。この押出成形機の輸送ゾーンにおける第一PFA、接着性PFA、及びポリアミド6の温度をそれぞれ370℃、340℃、260℃に維持した。
次いで、内部センサ83によって測定されるマンドレル70dの温度が350℃となり、外層センサ85によって測定される外層ダイス70aの温度が310℃となるように、内部ヒータ80及び外層ヒータ82によって、当該マンドレル70d及び当該外層ダイス70aを互いに独立に加熱した。
そして、溶融状態の第一PFA、接着性PFA、及びポリアミド6を合流流路74内で合流させた後、第二ダイス70から押出すことにより、内層10、中間層20、及び外層30の3層からなるチューブ1(以下、「チューブA3」という)を成形した。このチューブA3の内径は6mmであり、その内層10、中間層20、外層30の厚さはそれぞれ0.3mm、0.1mm、0.7mmであった。
[実施例4]
実施例4においては、第一フッ素樹脂として第一PFAを用い、第二フッ素樹脂として接着性PFAを用い、ポリアミド系樹脂として融点が200℃であって添加剤の入っていないポリアミド6/12共重合体(7034B、宇部興産株式会社製)を用いた。このポリアミド6/12共重合体に含まれるポリアミド6とポリアミド12とのモル比(重合比)は、8:2であった。
また、この実施例4においては、第二ダイス70を用いた。すなわち、まず、第二ダイス70を備えた3層押出成形機の内層流路71に連通するシリンダーに第一PFAのペレットを供給し、中間層流路72に連通するシリンダーに接着性PFAのペレットを供給し、外層流路73に連通するシリンダーにポリアミド6/12共重合体のペレットを供給した。この押出成形機の輸送ゾーンにおける第一PFA、接着性PFA、及びポリアミド6/12共重合体の温度をそれぞれ370℃、340℃、250℃に維持した。
次いで、内部センサ83によって測定されるマンドレル70dの温度が350℃となり、外層センサ85によって測定される外側ダイス70aの温度が310℃となるように、内部ヒータ80及び外層ヒータ82によって、当該マンドレル70d及び当該外側ダイス70aを互いに独立に加熱した。
そして、溶融状態の第一PFA、接着性PFA、及びポリアミド6/12共重合体を合流流路74内で合流させた後、第二ダイス70から押出すことにより、内層10、中間層20、及び外層30の3層からなるチューブ1(以下、「チューブA4」という)を成形した。このチューブA4の内径は6mmであり、その内層10、中間層20、外層30の厚さはそれぞれ0.3mm、0.1mm、0.7mmであった。
[実施例5]
実施例5においては、第一フッ素樹脂として融点が308℃であるPFA(451HP−J、三井デュポンフロロケミカル株式会社製)(以下、「第二PFA」という)を用い、第二フッ素樹脂として接着性PFAを用い、ポリアミド系樹脂としてポリアミド6を用いた。
また、この実施例5においては、第二ダイス70を用いた。すなわち、まず、第二ダイス70を備えた3層押出成形機の内層流路71に連通するシリンダーに第二PFAのペレットを供給し、中間層流路72に連通するシリンダーに接着性PFAのペレットを供給し、外層流路73に連通するシリンダーにポリアミド6のペレットを供給した。この押出成形機の輸送ゾーンにおける第二PFA、接着性PFA、及びポリアミド6の温度をそれぞれ380℃、340℃、260℃に維持した。
次いで、内部センサ83によって測定されるマンドレル70dの温度が370℃となり、外層センサ85によって測定される外側ダイス70aの温度が310℃となるように、内部ヒータ80及び外層ヒータ82によって、当該マンドレル70d及び当該外側ダイス70aを互いに独立に加熱した。
そして、溶融状態の第二PFA、接着性PFA、及びポリアミド6を合流流路74内で合流させた後、第二ダイス70から押出すことにより、内層10、中間層20、及び外層30の3層からなるチューブ1(以下、「チューブA5」という)を成形した。このチューブA5の内径は6mmであり、その内層10、中間層20、外層30の厚さはそれぞれ0.3mm、0.1mm、0.7mmであった。
[比較例1]
比較例1においては、第二PFAを単独で用いた。また、この比較例1においては、図4に示すダイス(以下、「第三ダイス100」という)を用いた。この第三ダイス100は、外側ダイス100aと、当該外側ダイス100aの径方向内側に嵌め入れられた中間ダイス100bと、当該中間ダイス100bの径方向内側に嵌め入れられた内側ダイス100cと、当該内側ダイス100cの径方向内側(すなわち第三ダイス100の径方向中央部分)に嵌め入れられたマンドレル100dと、を有している。この第三ダイス100には、第一ダイス50と同様に、同心円筒状の内層流路101、中間層流路102、外層流路103、及びこれら3つの流路の合流点から当該第三ダイス100の押出し方向X3(図4に示す矢印が示す方向X3)に延びる1つの合流流路104が形成されている。
また、この第三ダイス100は、その径方向外側を覆うように配置されたヒータ110と、当該第三ダイス100のうち当該ヒータ110と合流流路104との中間部分に配置された温度センサ111と、を有している。このヒータ110は、センサ111による温度測定結果に基づいて、第三ダイス100の全体を所望の温度に加熱することができる。
そして、この比較例1においては、まず、第三ダイス100を備えた押出成形機の内層流路101に連通するシリンダーに第二PFAのペレットを供給し、当該押出成形機の当該シリンダーから第三ダイス100までの輸送ゾーンにおける第二PFAの温度を380℃に維持した。次いで、センサ111によって測定される第三ダイス100の温度が370℃となるように、ヒータ110によって、当該第三ダイス100の全体を加熱した。
この加熱によって内層流路103内で溶融し、合流流路104に流入した第二PFAを、第三ダイス100の押出し方向X3における下流端から押出すことにより、当該第二PFAの単層からなるチューブ(以下、「チューブB1」という)を成形した。このチューブB1の内径は6mmであり、その層厚さは1.0mmであった。
[比較例2]
比較例2においては、第一フッ素樹脂として第二PFAを用い、第二フッ素樹脂として接着性PFAを用い、ポリアミド系樹脂として融点が176℃であって添加剤(N−ブチルベンゼンスルホンアミド及びジ−t−ブチルフェノールを含む)を5質量%含むポリアミド12(3030JI6L、宇部興産株式会社製)(以下、「第二ポリアミド12」という)を用いた。また、この比較例2においては、第三ダイス100を用いた。すなわち、まず、第三ダイス100を備えた3層押出成形機の内層流路101に連通するシリンダーに第二PFAのペレットを供給し、中間層流路102に連通するシリンダーに接着性PFAのペレットを供給し、外層流路103に連通するシリンダーに第二ポリアミド12のペレットを供給した。この押出成形機の輸送ゾーンにおける第二PFA、接着性PFA、及び第二ポリアミド12の温度をそれぞれ380℃、340℃、230℃に維持した。
次いで、センサ111によって測定される第三ダイス100の温度が370℃となるように、ヒータ110によって、当該第三ダイス100の全体を加熱した。そして、溶融状態の第二PFA、接着性PFA、及び第二ポリアミド12を合流流路104内で合流させた後、第三ダイス100から押出すことにより、内層、中間層、及び外層の3層からなるチューブ(以下、「チューブB2」という)を成形した。このチューブB2の内径は6mmであり、その内層、中間層、外層の厚さはそれぞれ0.3mm、0.1mm、0.7mmであった。
[比較例3]
比較例3においては、第一フッ素樹脂として第一PFAを用い、第二フッ素樹脂として接着性PFAを用い、ポリアミド系樹脂として第二ポリアミド12を用いた。また、この比較例3においては、第三ダイス100を用いた。すなわち、まず、第三ダイス100を備えた3層押出成形機の内層流路101に連通するシリンダーに第一PFAのペレットを供給し、中間層流路102に連通するシリンダーに接着性PFAのペレットを供給し、外層流路103に連通するシリンダーに第二ポリアミド12のペレットを供給した。この押出成形機の輸送ゾーンにおける第一PFA、接着性PFA、及び第二ポリアミド12の温度をそれぞれ370℃、340℃、230℃に維持した。
次いで、センサ111によって測定される外側ダイス100aの温度が350℃となるように、ヒータ110によって、当該外側ダイス100aを加熱した。そして、溶融状態の第一PFA、接着性PFA、及び第二ポリアミド12を合流流路104内で合流させた後、第三ダイス100から押出すことにより、内層、中間層、及び外層の3層からなるチューブ(以下、「チューブB3」という)を成形した。このチューブB3の内径は6mmであり、その内層、中間層、外層の厚さはそれぞれ0.3mm、0.1mm、0.7mmであった。
[比較例4]
比較例4においては、第一フッ素樹脂として第一PFAを用い、第二フッ素樹脂として接着性PFAを用い、ポリアミド系樹脂として第一ポリアミド12を用いた。また、この比較例4においては、第三ダイス100を用いた。すなわち、まず、第三ダイス100を備えた3層押出成形機の内層流路101に連通するシリンダーに第一PFAのペレットを供給し、中間層流路102に連通するシリンダーに接着性PFAのペレットを供給し、外層流路103に連通するシリンダーに第一ポリアミド12のペレットを供給した。この押出成形機の輸送ゾーンにおける第一PFA、接着性PFA、及び第一ポリアミド12の温度をそれぞれ370℃、340℃、230℃に維持した。
次いで、センサ111によって測定される外側ダイス100aの温度が350℃となるように、ヒータ110によって、当該外側ダイス100aを加熱した。そして、溶融状態の第一PFA、接着性PFA、及び第一ポリアミド12を合流流路104内で合流させた後、第三ダイス100から押出すことにより、内層、中間層、及び外層の3層からなるチューブ(以下、「チューブB4」という)を成形した。このチューブB4の内径は6mmであり、その内層、中間層、外層の厚さはそれぞれ0.3mm、0.1mm、0.7mmであった。
[各チューブの特性評価]
実施例1〜4において成形されたチューブA1〜A4、比較例1において成形されたチューブB1、比較例3及び4において成形されたチューブB3及びチューブB4の特性として、層間接着強度、酸素透過係数、アウトガス量、金属溶出量をそれぞれ測定した。
層間接着強度の測定は、JISにより規定された試験規格(JIS K6854−2:1999)を参考とした方法(180°はく離接着強さ試験)で測定した。試験対象の試験片としては、各チューブを長手方向に切り開き、さらに内層と外層との間(接着面)に切り込みを入れて、当該内層側を剥がして180°折り返したものを用いた。そして、この試験片を所定の試験装置に設置して、折り返された内層の先端部を、当該先端部の延長方向に引っ張った場合における、当該内層のはく離に要する荷重(N)を測定した。この180°はく離試験において、試験片の幅(cm)あたりに要した引っ張り荷重(N)を層間接着強度(N/cm)として算出した。
酸素透過係数の測定は、日本工業規格(Japanse Industrial Standard:JIS)により規定された試験規格(JIS K7126)を参考とした方法(差圧法)で測定した。測定対象の試験片としては、各チューブを長手方向に切り開いたものを用いた。そして、この試験片を、所定の測定装置の透過セルに設置して、1次圧0.3MPa(酸素)、気温20℃、相対湿度50%の環境下で、酸素の透過係数を測定した。すなわち、装置のストップバルブを開放して試験片の一方の面側に0.3MPaの圧力をかけた後、当該装置に備えられた圧力検出器により、当該試験片の他方の面側の圧力を定期的に測定した。酸素透過係数(mol・m/m2・s・Pa)は、気体透過度(mol/m2・s・Pa)と試験片の長さ(m)とを乗じた値として算出した。なお、気体透過度は、低圧側容積(m3)を気体定数で除した値と、試験温度(K)と、供給気体の低圧側と高圧側(試験片の一方の面側と他方の面側)との差圧(Pa)と、透過面積(m2)と、単位時間(s)あたりの低圧側の圧力変化量(Pa/s)と、を乗じることにより算出される。
アウトガス量の測定は、パージ&トラップ分析装置(JHS−100A、日本分析工業株式会社製)と、ガスクロマトグラフ分析装置(Automass sun、日本電子株式会社製)と、を用いて、パージ&トラップ−ガスクロマトグラフ質量分析法(P&T−GC/MS)により行った。測定対象とする試験片としては、成形された各チューブの一部を切り出したものを用いた。そして、この試験片をパージ&トラップ分析装置に設置し、吸着剤をマイナス40℃に冷却するとともに、当該試験片を100℃で30分間加熱することにより、当該加熱に伴い当該試験片から放出されたアウトガス成分を当該吸着剤でトラップした。その後、この吸着剤を358℃で20秒間加熱することにより、トラップしたアウトガス成分を放出させ、当該放出されたアウトガス成分をガスクロマトグラフ分析装置で分析した。
金属溶出量は、測定対象とするチューブを3.6%の塩酸(36%塩酸(電子工業用、関東化学株式会社製)を超純粋で希釈して調製したもの)中に室温で20時間静置した後、当該塩酸中に溶出した金属量を測定することにより算出した。具体的には、3.6%の塩酸中に含まれるナトリウム、マグネシウム、アルミニウム、カリウム、カルシウム、クロム、鉄、ニッケル、銅、亜鉛、カドミウム、鉛の量を、定量装置(Agilent7500S、横河アナリティカルシステムズ株式会社製)を用いた誘導結合プラズマ質量分析法(ICP−MS)により測定した。
図5には、上述の実施例1〜4、比較例1〜4で得られた各チューブの組成、成形に用いたダイス条件、及び測定された特性を示す。
比較例1〜4においては、第三ダイス100を用いて、第一フッ素樹脂、第二フッ素樹脂、及びポリアミド系樹脂のいずれをも当該第一フッ素樹脂の溶融押出しに適した温度に加熱して共押出し成形を行った。
比較例1においては、第二PFAからなる単層のチューブB1を良好に成形できたが、当該チューブB1の酸素透過係数は2.5×10−15mol・m/m2・s・Paと大きいものであり、ガスバリヤ性に劣るものであった。このため、このチューブB1は、半導体や液晶表示装置の製造装置において薬液等を輸送する配管としては不適切なものであった。一方、このチューブB1は、アウトガス量が0.1μg/g未満、金属溶出量が0.15ng/cm2であり、極めて優れたクリーン性を備えていた。
比較例2においては、チューブB2の成形過程で主に第二ポリアミド12の層に発泡が生じ、酸素透過係数等の特性を評価することができなかった。これは、第二PFAの溶融に適した加熱温度(370℃)と第二ポリアミド12の融点(176℃)との差が大きかったことに起因するものと考えられた。
比較例3においては、第一フッ素樹脂として、第二PFAより融点の低い第一PFAを用いるとともに、ダイスの加熱温度を当該第一PFAの溶融に適した350℃に低下させた。この結果、比較例2のような発泡が生じることなく、チューブB3を良好に成形できた。
しかしながら、このチューブB3のアウトガス量は980μg/gと極めて大きく、クリーン性が著しく低いものであった。この多量のアウトガスの発生は、外層を形成する第二ポリアミド12に含まれる添加剤、及び加熱による当該第二ポリアミド12の熱分解物に起因するものと考えられた。このため、このチューブB3は、半導体や液晶表示装置の製造装置において薬液等を輸送する配管としては不適切なものであった。なお、このチューブB3の層間接着強度は測定可能な上限値である20N/cmを上回っており、酸素透過係数は3.0×10−16mol・m/m2・s・Pa、金属溶出量は0.15ng/cm2であった。
比較例4においては、ポリアミド系樹脂として、添加剤を含まない第一ポリアミド12を用いた。しかしながら、この第一ポリアミド12は、第一PFAの溶融に適した加熱温度(350℃)の下で流動性が著しく増加(すなわち、粘度が低下)することにより、その成形性が著しく低下した。この結果、成形されたチューブB4は、その断面形状を真円に維持できず、大きく変形したものとなった。
また、チューブB4のアウトガス量は30μg/gであり、そのクリーン性は、半導体や液晶表示装置の製造装置において薬液等を輸送する配管としては十分なものといえなかった。なお、このチューブB4のアウトガスは、主に加熱による第一ポリアミド12の熱分解物に起因するものと考えられた。
また、チューブB4の層間接着強度は13N/cmであり、層間の接着性が比較的低かった。これは、成形過程における第一ポリアミド12の成形性の低下に起因するものと考えられた。また、このチューブB4の酸素透過係数は3.4×10−16mol・m/m2・s・Pa、金属溶出量は0.13ng/cm2であった。
実施例1〜4においては、第一ダイス又は第二ダイスを用いて、第一フッ素樹脂、第二フッ素樹脂、及びポリアミド系樹脂のそれぞれの成形性を良好に維持しつつ共押出し成形を行った。
実施例1においては、第一ダイス50を用いて、第一PFAをその溶融押出しに適した温度(350℃)に維持するとともに、第一ポリアミド12を当該第一ポリアミド12の溶融押出しに適した温度(330℃)に維持した。
この結果、比較例4のような変形を生じることなく、チューブA1を良好に成形することができた。さらに、このチューブA1のアウトガス量は、比較例4で得られたチューブB4の5分の1以下に低減され、5.8μg/gであった。また、このチューブA1の層間接着強度は、チューブB4より高い20N/cm以上であり、層間の良好な接着も達成できた。これは、第一PFAの温度と第一ポリアミド12の温度とを互いに独立に制御することにより、当該第一ポリアミド12の成形性を良好に維持するとともに、当該第一ポリアミド12の熱分解を効果的に抑制することができたためと考えられた。また、このチューブA1の酸素透過係数は2.0×10−16mol・m/m2・s・Paであり、金属溶出量は0.14ng/cm2であった。すなわち、このチューブA1は、ガスバリヤ性、クリーン性に優れたものであった。
実施例2においては、第二ダイス70を用いて、第一PFAをその溶融押出しに適した温度(350℃)に維持するとともに、第一ポリアミド12を当該第一ポリアミド12の溶融押出しに適した温度であって実施例1よりさらに低い温度(300℃)に維持した。
この結果、チューブA2のアウトガス量は、実施例1で得られたチューブA1よりさらに低減され、3.1μg/gであった。これは、第一ポリアミドの加熱温度と当該第一ポリアミドの融点との温度差をさらに低減させることにより、当該第一ポリアミド12の熱分解をより効果的に抑制できたためと考えられた。また、このチューブA2の層間接着強度は20N/cm以上、酸素透過係数は1.7×10−16mol・m/m2・s・Pa、金属溶出量は0.15ng/cm2であった。すなわち、このチューブA2もまた、ガスバリヤ性、クリーン性に優れたものであった。
実施例3においては、第二ダイス70を用いて、第一PFAをその溶融押出しに適した温度(350℃)に維持するとともに、ポリアミド6を当該ポリアミド6の溶融押出しに適した温度(310℃)に維持した。
この結果、チューブA3のアウトガス量は、実施例1で得られたチューブA1及び実施例2で得られたチューブA1に比べて著しく低減され、比較例1で得られた第二PFAの単層からなるチューブB1と同程度の0.1μg/gであった。また、チューブA3の酸素透過係数は、チューブA1及びチューブA2に比べて大きく低減され、2.8×10−17mol・m/m2・s・Paであった。また、このチューブA3の層間接着強度は20N/cm以上、金属溶出量は0.16ng/cm2であった。このようなチューブA3の極めて優れたガスバリヤ性及びクリーン性は、外層30にポリアミド6を採用したことによるものと考えられた。
実施例4においては、第二ダイス70を用いて、第一PFAをその溶融押出しに適した温度(350℃)に維持するとともに、ポリアミド6/12共重合体を当該ポリアミド6/12共重合体の溶融押出しに適した温度(310℃)に維持した。
この結果、チューブA4のアウトガス量は、実施例1で得られたチューブA1及び実施例2で得られたチューブA2に比べて著しく低減され、0.8μg/gであった。また、チューブA4の酸素透過係数は、チューブA1及びチューブA2に比べて大きく低減され、5.6×10−17mol・m/m2・s・Paであった。また、このチューブA4の層間接着強度は20N/cm以上、金属溶出量は0.16ng/cm2であった。このようなチューブA4の極めて優れたガスバリヤ性及びクリーン性は、外層30にポリアミド6を含む共重合体を採用したことによるものと考えられた。
実施例5においては、第二ダイス70を用いて、第二PFAをその溶融押出しに適した温度(370℃)に維持するとともに、ポリアミド6を当該ポリアミド6の溶融押出しに適した温度(310℃)に維持した。
この結果、チューブA5のアウトガス量は、実施例1で得られたチューブA1及び実施例2で得られたチューブA2に比べて著しく低減され、0.5μg/gであった。また、チューブA5の酸素透過係数は、チューブA1及びチューブA2と同程度の1.4×10−16mol・m/m2・s・Paであった。また、このチューブA4の層間接着強度は20N/cm以上、金属溶出量は0.15ng/cm2であった。このようなチューブA5の極めて優れたガスバリヤ性及びクリーン性は、外層30にポリアミド6を採用したことによるものと考えられた。
このように、実施例1〜5で得られたチューブA1〜A5は、層間が互いに強固に接着するとともに、耐薬品性、ガスバリヤ性、及びクリーン性のいずれにも優れたものであり、半導体や液晶表示装置等の製造装置における機能水や薬液等の配管に適したものであった。
なお、本発明に係る多層チューブは、上述の例に限定されるものではない。すなわち、本発明に係る多層チューブは、上述のような3層構造を有するものに限られず、例えば、フッ素樹脂からなる第一の層と、当該第一の層の一方側の面を覆い、添加剤を含まないポリアミド系樹脂からなる第二層と、からなる2層構造を有するものであってもよい。この場合でも、第一の層に係るフッ素樹脂としては、上述の内層10に用いられるフッ素樹脂を用いることができ、また、上述の中間層20に用いられる酸無水物基を有するフッ素樹脂を用いることもできる。さらに、このような酸無水物基を有するフッ素樹脂としては、例えば、テトラフルオロエチレンに基づく第一繰り返し単位、ジカルボン酸無水物基を有し且つ環内に重合性不飽和基を有する環状炭化水素モノマーに基づく第二繰り返し単位及びその他のモノマー(ただし、テトラフルオロエチレン及び前記環状炭化水素モノマーを除く。)に基づく第三繰り返し単位を含有し、前記第一繰り返し単位、前記第二繰り返し単位及び前記第三繰り返し単位の合計モル量に対して、前記第一繰り返し単位が50〜99.89モル%であり、前記第二繰り返し単位が0.01〜5モル%であり、前記第三繰り返し単位が0.1〜49.99モル%である含フッ素共重合体を好ましく用いることができる。
1 多層チューブ、10 内層、20 中間層、30 外層、50 第一ダイス、70 第二ダイス、51,71,101 内層流路、52,72,102 中間層流路、53,73,103 外層流路、60,80 内部ヒータ、61,81 外部ヒータ、82 外層ヒータ、62,83 内部センサ、63,84 外部センサ、85 外層センサ、100 第三ダイス、110 ヒータ、111 センサ。