以上のように長年の懸案であるにもかかわらず未だに解決されていない締付バンドの開閉に伴う問題について、本発明者は、常々思案していたところ、締付バンドが、実際には、レバーの基端部(枢支ピンに連結された端部)のところに開口を有し、この開口を利用してレバーの回動を行い得る可能性があることに気づいた。
すなわち、上述のような締付バンドでは、レバーが、枢支ピンに連結された基端部に該枢支ピンを含む領域を露出させる開口を規定する先端側周壁部を備える。ここで、この開口は、締付バンドの機能上は不可欠なものではないけれども、多量に使用される締付バンドが所望の機械的強度を確保しつつ安価に量産され得るためには、実際上不可欠なものになっていると考えられ、オープン式ドラム缶やベール缶の天蓋の固定のために広く利用されている締付バンドのレバーは、どのメーカーのものでも、この開口を備え、且つ該開口を規定する先端側周壁部を備える。しかも、締付バンドの封緘の仕方等については各種の改良が試みられているけれども、締付リングとレバーとの結合構造は前述の通り長年同じ状態に保たれており、その機能や強度及び製造コストの両面から一つの最良の形態にいきついているものと考えられる。
以上のような状況下において、本発明者は、この開口及び該開口の先端側周壁部を利用してレバーの回動を行い得るようにすれば、実際上、締付バンドの開閉を行い得ると考えて、本発明に至った。なお、締付バンドでは、その開閉を行うためにレバーがあり、レバーはその腕の長さを利用するものであることから、締付バンドの開閉に際しては、本来、レバーの先端部(枢支ピンに連結された基端部とは反対側の端部)又はその近傍の部分を利用すべきものであるけれども、上述の通り、レバーは締付リングに沿って最低限の長さで延びその先端部の利用を拒む形状を備えるという背理を含む。そこで、本発明者は、特許文献2等とは異なり、発想を転換して、この背理をそのまま受け入れることにより、本発明に到達した。
本発明は、前記諸点に鑑みなされたものであって、その目的とするところは、締付リングの開放(開き乃至締付解除)若しくは閉鎖(閉じ乃至締付け)又は開閉の両方を人手で容易に行い得る締付バンド用補助工具を提供することにある。
本発明の締付バンド用補助工具は、前記目的を達成すべく、締付リングと該締付リングの一方の端部に回動可能に一端で連結されたリンクと前記締付リングの他方の端部に枢支ピンを介して基端部で回動可能に連結され中間部で前記リンクの他端に回動可能に連結されたレバーとを有し、且つ該レバーが前記枢支ピンに連結された前記基端部に前記枢支ピンを含む領域を露出させる開口を規定する先端側周壁部を備えるタイプの締付バンドを開いたり閉じたりするための締付バンド用補助工具であって、
(1)全体としてU字状で、「U」を構成する一対の脚部のうち先端側の脚部及び該先端側の脚部と基端側の脚部とを結ぶ脚部連結部が前記開口に挿入可能な剛性の先端係合部と、該先端係合部の「U」を構成する一対の脚部のうち基端側の脚部に先端で連結され基端側に把手部を備えた腕部とを有し、締付位置にある前記締付バンドに対して先端係合部が前記開口内に挿入された状態で該締付バンドを開く方向に回動された際、前記脚部連結部の外側面で前記枢支ピンに当接すると共に、前記先端側脚部の内縁で前記レバーの前記開口の先端側周壁部の内面に当接して該レバーを開方向に回動させるように構成される、又は
(2)全体としてU字状で、「U」を構成する一対の脚部のうち先端側の脚部及び該先端側の脚部と基端側の脚部とを結ぶ脚部連結部が前記開口に挿入可能な剛性の先端係合部と、該先端係合部の「U」を構成する一対の脚部のうち基端側の脚部に先端で連結されレバーの外表面に係合される係合凹部を内面側に備えた腕本体部、及び該腕本体部の基端に連結された把手部を具備する腕部とを有し、開き位置にある前記締付バンドに対して先端係合部が前記開口内に挿入された状態で該締付バンドを締める方向に回動された際、前記先端側脚部の内縁で前記締付バンドの前記開口の先端側周壁部の内面に当接すると共に、腕本体部の内面側の凹部がレバーの外表面に係合してレバーを締付バンドの閉じ方向に回動させるように構成される。
本発明の締付バンド用補助工具のうち(1)の形態の締付バンド補助工具では、「締付位置にある締付バンドに対して先端係合部が前記開口内に挿入された状態で該締付バンドを開く方向に回動された際、「U」の脚部連結部の外側面で前記枢支ピンに当接すると共に、「U」の先端側脚部の内縁で締付バンドの前記開口の先端側周壁部の内面に当接して前記レバーを開方向に回動させるように構成される」から、補助工具のうち腕部の基端側の把手部を手で掴んで該把手部に回動力をかけるだけで、補助工具のうち「U」の脚部連結部の外側面が当接した枢支ピンが支点となって、「U」の先端側脚部の内縁で締付バンドの前記開口の先端側周壁部の内面に当接して前記レバーを開方向に回動させて、レバーを開き得る。従って、怪我などの虞れなく締付バンドを開き得る。ここで、補助工具は、締付バンドのレバーよりも十分に長くし得るから、女性など非力な人でも、疲労することなく、小さな力で容易に、締付バンドを開き得る。
以上において、補助工具は、回動されるべきレバーの基端側の枢支ピンを利用するもののレバーの腕の長さは利用していない。すなわち、この補助工具は、レバーの基端部近傍部分に形成されている開口を積極的に利用して、実際上締付リングの外周面に張り付いたような形状のレバーを開くもので、従来想定していなかった態様によりレバーを開くものである。補助工具の「U」字状の先端係合部の先端側脚部は、開口の先端側周壁部の内面に当接するもので、その当接位置から枢支ピンまでの距離はレバーの腕の長さと比較して小さいものの、開口に挿入可能な脚部連結部で十分な剛性が確保され得るから、補助工具の腕部の長さを十分に長くしておけば、レバーを容易に開き得る。例えば、腕の長さが10cm弱程度のレバーを備えた締付リングに対して、補助工具の先端側脚部の長さが3mm程度で腕の長さが25cm程度とした場合、極めて小さい力でレバーを開位置まで容易に回動し得ることを確認した。
なお、補助工具の先端係合部は、脚部連結部が外側面で枢支ピンの外周面に対面するように開口内に挿入されているので、閉状態にある締付バンドに対してそのレバーを開く方向に補助工具を回動させるだけで、補助工具に対して別段の位置決めを行わなくても且つ補助工具の先端係合部を所定位置に保持するために別段の位置規制を行わなくても、脚部連結部の外側面が枢支ピンの外周面のうち隣接・対向する部分に当接するから、補助工具によるレバーの開動作は安定に行われ得る。
以上において、また、この明細書において、締付リングのレバーについては、枢支ピンに連結されている側の端部を基端部と呼び、その反対側の端部を先端部と呼ぶ。一方、補助工具については、把手のあるほうの端部を基端部と呼び、その反対側の端部すなわち係合部のある側の端部を先端部と呼ぶ。なお、枢支ピンは、典型的には、レバーにも、締付リングの端部(前記他方の端部)にある該枢支ピン支持部にも固定されていないけれども、所望ならば、いずれかに固定されていてもよい。
また、以上において、「U」を構成する一対の脚部は、典型的には、平行であるけれども、該一対の脚部が相互に対面して延在する限り、開口への挿入や開口からの取出しが容易になるように「U」の開口に向かって拡がっていても、その逆に狭まっていてもよく、また、一対の脚部のうち一方又は両方の脚部の対向面が平面の代わり湾曲していたり凹凸を有していてもよい。また、「U」を構成する一対の脚部を連結する脚部連結部は、典型的には、該一対の脚部に直交する方向に延在する直線状であるけれども、その代わりに、斜交していても、湾曲している等、非直線状であってもよい。
すなわち、「U」を構成する一対の脚部のうち先端側の脚部の先端部またはその近傍において、締付バンドの開口の先端側周壁部の内面に係合し得る限り、先端側脚部の内面の全体が開口の先端側周壁部の内面に当接しなくてもよい。従って、「U」の形状は、この係合を確保し得る形状であれば、「コ」の字状であっても、湾曲した「U」字状であってもよい。
以上のように、本発明の締付バンド用補助工具のうち(1)の態様のものは、締付バンド用開き補助工具ないし締付バンド開き用補助工具として働き得る。
本発明の締付バンド用補助工具のうち(2)の形態の締付バンド補助工具では、「開き位置にある締付バンドに対して先端係合部が締付バンドの開口内に挿入された状態で該締付バンドを締める方向に回動された際、補助工具の「U」字状先端係合部の先端側脚部の内縁で締付バンドの開口の先端側周壁部の内面に当接すると共に、腕部の腕本体部の内面側の凹部がレバーの外表面に係合してレバーを締め方向に回動させるように構成される」から、閉方向の回動に際して、レバーに対して該レバーよりも長い腕部を備えた補助工具が該レバーに実際上一体化されたように働き得、且つ人が手で把持し易いようにレバーの取手部が突出し得るので、作業者が取手部を把持して補助工具を回動させるだけで、レバーを容易に閉方向に回動させて、締付バンドを閉じ(締付け)得る。従って、怪我などの虞れなく締付バンドを閉め(締め)得る。ここで、補助工具は、締付バンドのレバーよりも十分に長くし得るから、女性など非力な人でも、疲労することなく、小さな力で容易に、締付バンドを閉め(締め)得る。
なお、この締付バンド補助工具では、該工具の腕本体部が内面に締付バンドのレバーの外面に係合する凹部を備えるので、補助工具はレバーを安定に支え得る。ここで、腕本体部の「凹部」は、レバーが横にずれるのを規制し得るように、レバーの外に凸の表面の位置ズレを規制し得る程度の係合を確保できれば足る。従って、凹部は、該凹部内にレバーの外表面の実際上全体を受容するような大きなものであってもよいけれども、その代わりに、位置ズレを規制する程度の細かな凹凸を形成する凹部ないし溝部等であってもよい。
この場合においても、先端係合部について、「U」とは、前述のような形状を指す。「U」を構成する一対の脚部のうち先端側の脚部の基部(脚部連結部につながる部分)またはその近傍において、締付バンドの開口の基端側周壁部の縁部に係合し得る限り、先端側脚部の内面の全体が開口の基端側周壁部の内面に当接しなくてもよい。従って、「U」の形状は、この係合を確保し得る形状であれば、「コ」の字状であっても、湾曲した「U」字状であってもよい。
以上のように、本発明の締付バンド用補助工具のうち(2)の態様のものは、締付バンド用締め(閉じ)補助工具ないし締付バンド締め(閉じ)用補助工具として働き得る。
以上において、本発明の締付バンド用補助工具が、締付バンド開き用補助工具として働くに必要な構造と、締付バンド締め(閉じ)用補助工具として働くに必要な構造とは、実際上、殆ど重なる共通の構造を有する。従って、夫々に、僅かな条件を付加するだけで、締付バンド開き用補助工具が締付バンド締め(閉じ)用補助工具としても機能し得、同様に、締付バンド締め(閉じ)用補助工具が締付バンド開き用補助工具としても機能し得る。
より詳しくは、本発明の締付バンド用補助工具のうち(1)の態様の締付バンド開き用補助工具は、典型的には、前記腕部が、前記先端係合部の「U」を構成する一対の脚部のうち基端側の脚部に先端で連結され前記把持部に基端で連結された腕本体部を備え、腕本体部がレバーの外表面を受容する凹部を内面側に有し、開き位置にある前記締付バンドに対して先端係合部が前記開口内に挿入された状態で該締付バンドを締める方向に回動された際、前記先端側脚部の内縁で前記締付バンドの前記開口の基端側周壁の内面に当接すると共に、腕本体部の内面側の凹部にレバーの外表面を受容してレバーを締め方向に回動させるように構成される。
この締付バンド用補助工具は、前述のように、締付バンド締め(閉め)用補助工具としても機能し得るから、この締付バンド用補助工具は、締付バンド開閉用補助工具として機能し得る。
同様に、本発明の締付バンド用補助工具のうち(2)の態様の締付バンド開き用補助工具は、典型的には、締付位置にある前記締付バンドに対して先端係合部が前記開口内に挿入された状態で該締付バンドを開く方向に回動された際、前記脚部連結部の外面で前記枢支ピンに当接するように先端係合部が構成されると共に、前記先端側脚部の内縁で前記締付バンドの前記開口の基端側周壁の内面に当接して前記レバーを開方向に回動させるように構成される。
この締付バンド用補助工具は、前述のように、締付バンド開き用補助工具としても機能し得るから、この締付バンド用補助工具は、締付バンド開閉用補助工具として機能し得る。
本発明の締付バンド用補助工具では、典型的には、前記締付バンドは、筒状体の締付用のバンドである。但し、所望ならば、他の物品の締付に用いられる締付バンドに対して、本発明の締付バンド用補助工具が適用されるようになっていてもよい。ここで、筒状体は、典型的には、円筒状であるけれども、角筒状等他の形状でもよい。
本発明の締付バンド用補助工具では、典型的には、前記筒状体が天蓋を備えたオープンタイプのドラム缶又は天蓋を備えたペール缶であり、締付バンドが該天蓋を固定するものである。
この場合、女性など非力な人でも締付バンドの開閉が容易に行われ得るので、天蓋の着脱が容易に行われ得る。
本発明の好ましい一実施例の締付バンド用補助工具について説明する前に、該締付バンド用補助工具が適用される締付バンド5を備えたペール缶7について図5に基づいて説明する。締付バンド用補助工具が適用される締付バンド5付きのペール缶7は、典型的には、「JIS Z1620」に規定の鋼製ペールからなり、T形2種のバンドタイプである。但し、補助工具が適用可能である限り、これに限定されない。
ペール缶7は、缶本体80と、天蓋90と、締付バンド5とを有する。缶本体80、天蓋90及び締付バンド5は、夫々、鋼製の如き金属製である。但し、場合によっては、樹脂等の他の材料でできていてもよい。缶本体80は、例えば薬品や油や塗料やその他の化学品等を収容するもので、円筒状ないし上部程径の大きい円錐台状で、上端に横断面が円形になるように折曲加工され径方向に僅かに突出した開口縁部81を備える。なお、開口縁部81の横断面は、円形である代わりに、長円形等他の形状であってもよい。この例では、缶本体80は、把手82を備える典型的なペール缶本体からなる。但し、把手82は、なくてもよい。また、この例では、缶本体80は、円筒状であるけれども、滑らかに湾曲した角部を備える角筒状であってもよい。
天蓋90は、円板状の中央蓋部91と、該中央蓋部91の外周縁部に形成され缶本体80の上端の開口縁部81の上部に嵌る円形の係合縁部92とを備える。係合縁部92は、横断面が逆U字状で下向きに開いた凹部(図示せず)内にゴムその他のリング状のシール材(図示せず)が嵌込まれている。従って、天蓋90を缶本体80に被せると、係合縁部92のシール材が缶本体80の開口縁部81の上端部及びその周囲に密着されるように被せられた状態で、係合縁部92が缶本体80の上端開口縁部81の上部に嵌合する。天蓋90の円形中央蓋部91は、外周縁の係合縁部92よりも下方に位置し、天蓋90を缶本体80に被せた状態では、天蓋90の中央蓋部91は、典型的には、缶本体80の開口内に僅かに嵌り込む。
締付バンド5は、図5に加えて、図3の(a)及び(b)並びに図4(但し、この図では、後述の補助工具1が差し込まれた状態で示されている)に示したように、全体としてほぼ円形の締付リング30と、リンク50と、レバー60とを有する。締付バンド5を構成する締付リング30、リンク50及びレバー60は、典型的には、板金の打抜き・折曲体からなり、ピンで相互に連結されている。
締付リング30は、板金の打抜・折曲体からなり、両端部31,32の間に周方向間隙Aを備える点を除き、全体としてほぼ円形の平面形状を有する本体部33を備える。締付リング本体部33は、端部31,32間の間隙Aの大きさを変えるような変形に対して弾性を有する。締付リング本体部33は、内周側に開口34を備えた「C」字状ないし「U」字状の横断面形状を有する。締付リング30が組付けられた際には、本体部33の「C」の上端縁35側が天蓋90の係合縁部92の上部93に被さり、「C」の下端縁36側が缶本体80の開口縁部81の下部83に被さると共に、「C」の凹部の内周面(底面)37が、天蓋90の係合縁部92の外周面94及び缶本体80の開口縁部81の外周面84に接するか又は近接する。
締付リング30の一方の端部31にはピン支持体38が取付けられ、他方の端部32にはもう一つのピン支持体39が取付けられている。ピン支持体38は、締付リング本体部33の外周面に固定された基板部40と、本体部33の端部31の端縁31aの近傍において該基板部40の両側縁から立ち上がって径方向外向きに延びたピン支持壁部41a,41b(両者を区別しないとき又は総称するときは符号41で表す)とを有し、ピン支持壁部41a,41b間には、枢支ピン42が取付けられている。同様に、ピン支持体39は、締付リング本体部33の外周面に固定された基板部43と、本体部33の端部32の端縁32aの近傍において該基板部40の両側縁から立ち上がって径方向外向きに延びたピン支持壁部44a,44b(両者を区別しないとき又は総称するときは符号44で表す)とを有し、ピン支持壁部44a,44b間には、枢支ピン45が取付けられている。
リンク50は、一対の細長い板状のリンク部材51a,51b(両者を区別しないとき又は総称するときは符号51で表す、他の同様な要素についても以下同)からなる。リンク部材51aの一端部52aは、枢支ピン42の大径頭部42aとピン支持体38のピン支持壁部41aとの間において回動可能に枢支ピン42によって枢支されている。同様に、リンク部材51bの一端部52bは、枢支ピン42の大径カシメ端部42bとピン支持体38のピン支持壁部41bとの間において回動可能に枢支ピン42によって枢支されている。
ここでは、リンク部材51が板金の打抜体(細長い板状部材)からなり、枢支ピン42によって支持されている例について説明しているけれども、その代わりに、例えば、リンク部材が棒状ないしピン状の部材からなり、該棒状ないしピン状の部材の一端又は中間折曲端がそのままピン支持体38によって支持されるようになっていてもよい。
レバー60は、板金の打抜・折曲体からなり、U字状の横断面形状を有する。より詳しくは、レバー60は、外周壁部61と、該外周壁部61の上縁側の上側壁部62aと、該外周壁部61の下縁側の下側壁部62bとを備え、上側壁部62a及び下側壁部62bがUの二つの脚部をなす。二つの側壁部62a,62bを区別しないとき又は総称するときは符号62で表す。
レバー60は、基端部63において、枢支ピン45を介して、ピン支持体39に回動可能に連結されている。より詳しくは、レバー60の上側壁部62aの基端部63aが、枢支ピン45の大径頭部45aとピン支持体39のピン支持壁部44aとの間において回動可能に枢支ピン45によって枢支され、レバー60の下側壁部62bの基端部63bが、枢支ピン45の大径カシメ端部(図示せず)とピン支持体39のピン支持壁部44bとの間において回動可能に枢支ピン45によって枢支されている。
図3の(b)からわかるように、レバー60の外周壁部61は、レバー60の基端部63及びその近傍で切欠かれており、レバー60は、該基端部63及びその近傍に枢支ピン45が露出する(ピン45が外部から見え、該ピン45に外部から接近可能である)開口64を有する。レバー60の外周壁部61のうち、開口64を規定し該開口64よりも先端側に位置する周壁部65すなわち開口64についての先端側周壁部65の基端側縁部66と枢支ピン45の円柱状本体部45cの隣接する外周面部との間には、大きさGの周方向間隙67がある。この間隙67の大きさGは、ピン支持体39の支持壁部44の周方向への突出長にほぼ等しい。
レバー60は、その長手方向中間部の部位68で、枢支ピン53を介して、リンク50の端部54に回動可能に連結されている。より詳しくは、リンク50の上側リンク部材51aの端部54aが、枢支ピン53の大径頭部53aとレバー60の上側壁部62aの中間部の部位68aとの間において回動可能に枢支ピン53によって枢支され、リンク50の下側リンク部材51bの端部54bが、枢支ピン53のカシメ端部53bとレバー60の下側壁部62bの中間部の部位68bとの間において回動可能に枢支ピン53によって枢支されている。
従って、締付バンド5は、図3の(a)及び(b)に示したような閉位置(閉じ位置)ないし締付位置(状態)P1と、図4や図5に示したような開位置(開き位置)ないし締付解除位置(状態)P2との間で、可動である。
締付バンド5が、閉位置ないし締付位置P1にある場合、図3の(a)及び(b)からわかるように、締付リング30が天蓋90の外周に沿う締付位置Q1を採り、レバー60も該締付位置Q1にある締付リング30の外周に沿う締付位置T1を採る。図3の(a)からわかるように、このとき、リンク50もほぼ周方向に延びる。より詳しくは、締付バンド5が締付位置P1にある場合、図3の(a)に示したように、レバー60の枢支ピン45の回動中心軸線C1は、リンク50の両端52,54を支える枢支ピン42,53の回動中心軸線C2,C3を結ぶ仮想線V1(想像線)よりも外側(缶7の径方向外側)に位置する。
なお、レバー60は、天蓋90及び締付リング30の外周に沿うような円弧状形状を有し、レバー60が締付状態T1にある場合、レバー60の端部69は、実際上、締付リング30の外周面に近接または密接する位置を採る。
締付バンド5が、開位置ないし締付解除位置P2にある場合、図5や図4からわかるように、締付リング30が天蓋90の外周から離れた締付解除位置Q2を採り、レバー60も締付リング30の外周から離れた締付解除位置T2を採る。図5や図4からわかるように、このとき、リンク50も周方向からズレた位置を採る。より詳しくは、締付バンド5が締付解除位置P2にある場合、図4のからわかるように、レバー60の枢支ピン45の回動中心軸線C1は、リンク50の両端52,54を支える枢支ピン42,53の回動中心軸線C2,C3を結ぶ仮想線V1(想像線)よりも内側(缶7の径方向内側)に位置する。
レバー60の先端部69の近傍には、閂穴として働く被係合孔部70が形成され、レバー60が閉状態T1にある際に、締付リング30に枢支された閂レバー47が係合可能である。閂レバー47(図5参照)が被係合孔部70に嵌められると、締付バンド5の開放が禁止される。閂レバー47が孔部70に嵌合された状態で該レバー47の先端が折り曲げられることにより、封緘が行われる。一方、閂レバー47の被係合孔部70への係合が解除されると、レバー60の回動が許容され、締付バンド5の締付解除が許容される。なお、レバー60の開閉を禁止したり許容する構造は、閂レバー47と被係合孔部70との組合せの代わりに、封緘用のピン状体を用いるなど、他の構造であってもよい。
以上の説明からわかるとおり、本発明の好ましい一実施例の締付バンド開閉補助工具1が適用される締付バンド5は、締付リング30と該締付リング30の一方の端部31に回動可能に一端で連結されたリンク50と締付リング30の他方の端部32に枢支ピン45を介して基端部63で回動可能に連結され中間部の部位68でリンク50の他端54に回動可能に連結されたレバー60とを有することに加えて、特に、レバー60が枢支ピン45に連結された基端部63において、枢支ピン45の本体部45cを含む領域を露出させる開口64を規定する先端側周壁部65を備えるタイプのものである。
次に、図1及び図2の(a)を参照して、本発明の好ましい一実施例の締付バンド開閉補助工具1について説明する。
締付バンド用補助工具としての締付バンド開閉補助工具1は、典型的には金属製で、図1及び図2の(a)からわかるように、腕部10と、該腕部10の先端部11から延在する先端係合部20とを有する。なお、十分な機械的強度及び剛性が確保される限り、一部又は全部が金属の代わりに、樹脂やセラミック材料でできていてもよい。
腕部10は、先端側の腕本体部12と、該腕本体部12の基端13につながった把手部ないし把持部14とを有する。把手部14は、軽量化のために中空で、外周面14aに滑り止めの凹凸が形成されている。把手部14の基端部14bに工具1を壁等に掛け易くするための掛止部が形成されていてもよい。掛止部は、例えば、紐やピン等を通す孔14cからなる。なお、重量が問題にならない場合、取手部は中実な円柱状であってもよい。把手部14は、基端部に大径突出部18を有する。従って、把手部14を把持した手が滑り易いような場合でも、力を入れた際に手が基端側に外れる虞れが少ない。
腕本体部12は、把持を容易にするために把手部14に対して角度αだけ傾斜している。この例では、角度αは、10度程度である。但し、より大きくてもより小さくてもよい。なお、腕部10は典型的にはレバー60よりも十分長いので、角度αはゼロ(腕本体部12と把手部14とが一直線状)でもよい。
以下では、説明の簡明化のために、締付バンド開閉補助工具1に固定したXYZ直交座標系(右手系)を採る。腕本体部12の延在方向に沿って先端に向かう向きにZ軸を採り、図1の紙面(平面)に垂直に手前向きにX軸を採る。腕本体部12は、先細形状を有し、傾斜方向外側面(Y方向に向いた表面)に長手方向に沿って延びる凹部15を有する。従って、腕本体部12のうち凹部15のある領域における横断面は、ほぼU字状の形状を有する。この凹部15も軽量化のためであり、なお、重量が問題にならない場合、腕本体部12の凹部15はなくてもよい。
腕本体部12は、先端係合部20につながる先端部11に、接続部16を備える。また、腕本体部12は、該接続部16につながる先端側部分19に、レバー60の外表面に係合する長手方向凹部としての溝部17を有する。この溝部17は、凹部15の側壁15a,15bのうち接続部16に近接した部分の内側に形成されている。従って、凹部15の側壁15a,15bには、溝部17の底面を構成する表面17aが形成され、溝部17の側壁部17b,17cは、凹部15の側壁15a,15bのうち内面側が切欠かれた側壁に一致している。溝部17の底壁(底面)17aは、締付動作の際にレバー60の外周壁部61の外表面に接し得るように、後述の先端係合部20の先端腕部21の内面21aに対して多少傾斜している。溝部17は基端側に向かって(−Z側に位置する程)徐々に浅くなり、溝部17の底面17aは、溝部17のない基端側部分の側壁15a,15bの表面15c,15dに連続的につながっている。
ここで、腕部10の長さは、例えば、20〜25cm程度である。腕本体部12は、長さが10cm程度で外径が2cm程度であり、把手部14は、長さが10〜15cm程度で外径が腕本体部12よりも僅かに大きい。但し、所望の機械的強度が確保され得る限り、夫々の長さや外径は、より大きくてもより小さくてもよい。また、腕本体部12が把手部14よりも長くてもよい。
なお、腕本体部12は、全長にわたってほぼ一定の径を有する代わりに、先細になっていてもよい。また、把手14も先細になっていても、基端側程細くなっていてもよい。
先端係合部20は、基端部で腕本体部12の先端部11に一体的につながり+Z方向に延びた先端腕部21と、該外先端腕部21の先端部22側に一体的に形成された全体としてU字状のフック状係合部23とを有する。先端腕部21は、この例では、長方形状の横断面を有する。ここで、長方形の長辺は、XY断面においてY方向に延びている。フック状係合部23は、先端腕部21の先端部22に加えて、該先端腕部21の先端部22の先端から直角に+Y方向に延びた脚部連結部24と、該脚部連結部24の延在端から先端腕部21の先端部22に平行に−Z方向に延びた係合突起部25とを有する。従って、フック状係合部23は、Uの内側に、係合突起部25の内側面(−Y方向に向いた面)25aと脚部連結部24の内側面(−Z方向に向いた面)24bと先端腕部21の先端部22の内側面(+Y方向に向いた面)22aとによって規定され、−Z方向に開口した凹部Jを有する。
例えば、先端係合部20の長さは3〜4cm程度である。先端腕部21は、例えば、Y方向幅が1cm程度でX方向幅(厚さ)が5mm程度である。脚部連結部24は、例えば、Y方向長さが3mm程度でZ方向幅が4mm程度である。また、係合突起部25は、例えば、Z方向長さが3〜4mm程度でY方向幅が2mm程度である。フック状係合部23の先端部分25,24が締付バンド5の開口64内に挿入され得、且つ所望の機械的強度が確保され得る限り、いずれも、より大きくてもより小さくてもよい。なお、脚部連結部24及び係合突起部25のX方向幅(厚さ)は、典型的には、先端腕部21のX方向幅(厚さ)と同一である。但し、締付バンド5の開口64内に挿入され得、且つ所望の機械的強度が確保され得る限り、より大きくてもより小さくてもよい。
先端腕部21も+Y方向に向いた表面21aは平面状である。但し、曲げ強度が確保される限り、この表面21aに凹部があってもよい。
脚部連結部24及び係合突起部25も、夫々、Z方向及びY方向が長辺となる長方形断面形状を有する。
先端係合部20のフック状係合部23は、枢支ピン45のピン本体部45cとレバー60の外周壁部61の開口縁部66との間の間隙67内に、係合突起部25と脚部連結部24のうち係合突起部25につながる先端側部分24aとが挿入・取出可能な寸法形状を有する。より具体的には、フック状係合部23のうち脚部連結部24の外側表面26から係合突起部25の先端27までの長さL1は、枢支ピン45のピン本体部45cとレバー60の外周壁部61の開口縁部66との間の間隙67の最大長W1(後述の図6参照)よりも大きく、係合突起部25の厚さ(Y方向長さ)L2及び脚部連結部25の厚さ(Z方向長さ)L3は、前記最大長W1よりも小さい。なお、Uの一対の脚部を構成する係合突起部25と先端腕部21の先端部22との間の間隔すなわち突起部25と先端部22との間の間隙の大きさは、レバー60の外周壁部61の厚さよりも十分に大きい。なお、脚部連結部24の外側表面26と把手14の典型的な把持部分との間の距離Laは、例えば、25cm程度である。但し、より長くてもより短くてもよい。
次に、以上の如く構成された締付バンド開閉補助工具1の操作について、説明する。
まず、図3の(a)及び(b)に示したように、閉状態P1にある締付バンド5の開操作について、説明する。図6は、締付バンド5の一部が破断して示されている点を除いて、図3の(a)と同様に閉状態P1にある締付バンド5を示す。
まず、締付バンド開閉補助工具1の先端係合部20のフック状係合部23を、閉状態P1にある締付バンド5の枢支ピン45とレバー60の外側壁部61との間の間隙67内に挿入し、図6に示したように、フック状係合部23の係合突起部25の先端27の内縁27aがレバー60の外周壁部61の内面61aに接点S1で当接し、且つフック状係合部23の脚部連結部24の外表面26が枢支ピン45の外表面45aに接点S2で当接するように、把手部14を手で把持して、締付バンド開閉補助工具1をD1方向に回動させる。このとき、フック状係合部23の係合突起部25の先端27の内縁27aがレバー60の外周壁部61の内面61aからの反力を受けるので、典型的には(脚部連結部24の長さが過度に長くない限り)、フック状係合部23のうち先端腕部21の先端部22の内側表面22aが、レバー60の外側壁部61の開口縁部66に当接する。
この状態において、レバー60の把手14をD1方向に回動させると、締付バンド開閉補助工具1は、接点S2を支点とし、接点S1を作用点とするテコ3として働く。ここで、支点S2と作用点S1との腕の長さLfは数mm程度である。なお、支点S2と把手14の典型的な把持部との間の腕の長さLaは前述の通り25cm程度であり、レバー60の長さの3倍程度である。
従って、レバー60をE1方向に開く際に要する力が、100N程度であるとすると、把手14に加える力は、30〜40N程度でよく、特に、その力を締付バンド開閉補助工具1の長く延在し且つ角度αだけ傾斜して突出した把手14を握って該把手14に加えればよいので、怪我等の虞れがない状態でレバー60を極めて容易に(小さい力で短時間に)開方向D1に回動し得る。なお、この例のような場合、補助工具1の腕部10が十分に長く把手14はレバー60や天蓋90等から十分に離れて位置し、把手部14の把持に際して邪魔になるものはないので、角度αの傾斜はなくてもよい。
なお、ここで、レバー60の外側壁部61の縁部66近傍の接点S1のところには、10,000N程度の力がかかる可能性があるけれども、現在使用されている複数種類の締付バンドを、この締付バンド開閉補助工具1で実際に開いたところ、外周壁部61に実際上何らの変形を生じさせることなく、締付バンドを開くことができた。
念のために、開き動作をより詳しく説明すれば、図6に示したように仮想線V1が枢支ピン45の中心軸線C1よりも径方向内側に位置する初期状態(閉状態すなわち締付状態)P1から、図7に示したように仮想線V1が枢支ピン45の中心軸線C1に重なる状態P3まで、締付リング30に対して天蓋90の外周の係合縁部92から受ける径方向外向きの力に抗して、中心軸線C2と中心軸線C1との間の距離が徐々に短くなるので、補助工具1の把手14に加えるべきD1方向の回動力は徐々に大きくなる。仮想線V1が枢支ピン45の中心軸線C1に重なる状態P3になると、天蓋90から締付リング30にかかる開き力は、リンク50の中心軸線C2,C3間の部分及びレバー60の中心軸線C3,C1間の部分によって直接支えられるので、補助工具1の把手14に加えるべきD1方向の回動力はゼロになる。
なお、図7からわかるように、仮想線V1が中心軸線C1に重なる状態に達すると、レバー60は、E1方向に回動されて、締付リング30から離れている。
図7の臨界位置P3を越えると、天蓋90の外周の係合縁部92から締付リング30にかかる径方向外向きの力によって、締付リング30の端部31,32間の間隔が拡がるように締付リング30が変形されるので、補助工具1によってD1方向の力を加えなくても、レバー60がE1方向に回動されて、締付バンド5が自動的に開き、図4に示したような開位置P2に達する。
以上において、注目されるべきことは、締付バンド5はその開き動作(締付解除動作)が容易に行われ得るように元々レバー60を備えていることから、締付解除操作に際しては、常識的にはレバー60の延在部分、特にその先端部69又はその近傍部分を利用するのが通常の発想である(特許文献2の図6等に開示のバンド開き装置は、まさに、この発想に立っている)にもかかわらず、この締付バンド開閉補助工具1では、レバー60の延在部分や先端部69等を利用するのではなく、レバー60の枢支部近傍部分を直接利用している点より詳しくはレバー60の枢支部近傍にある開口を利用し、該レバー60の枢支部近傍に力を加えるようにしている点である。この締付バンド開閉補助工具1のバンド締付解除動作に際しては、レバー60の比較的長い腕は直接的には利用していない。この締付バンド開閉補助工具1は、このような逆転の発想に立つことなしには想到し得ない点で、独特のものである。
次に、締付バンド開閉補助工具1を用いた締付バンド5の閉じ操作(締付操作)について、図8(a)及び(b)に基づいて、説明する。
締付バンド5を閉じる場合、例えば、図5に示した天蓋90を缶本体80に被せると共に、嵌合状態にある天蓋90の外周係合部92及び缶本体80の開口縁部81の外周や上下に開状態P2にある締付バンド5を事前に嵌める。
次に、締付バンド開閉補助工具1が先端係合部20のフック状係合部23で締付バンド5に係合される。より詳しくは、締付バンド開閉補助工具1のフック状係合部23の突起部25及び脚部連結部24が締付バンド5の開口64を介して間隙67内に挿入される。なお、この締付バンド開閉補助工具1は、U字状のフック状係合部23を備えるので、該フック状係合部23の「U」の脚部間25,22の凹部Jがレバー60の外周壁部61の縁部66を受容する向き以外の向きには、挿入されず、締付バンド開閉補助工具1は、YZ平面が締付バンド5の延在面と実際上平行になるような向き(配置)を採る。
次に、締付バンド開閉補助工具1を、締付バンド5に対して、より詳しくは、該締付バンド5のレバー60に対してD2方向に回動させる。この回動により、図8の(b)に示したように、突起部25の内面25aがレバー60の外側壁部ないし外周壁部61の縁部66の近傍で該外周壁部61の内面61aに当接し且つ先端係合部20の先端腕部21の内面21aがレバー60の外周壁部61の外表面61bに当接すると共に、腕部10の腕本体部12が溝部17内にレバー60の外周壁部61を抱え込む(受容する)。このとき、溝部17の底壁17aも少なくとも一部においてレバー60の外周壁部61の外表面61bに当接し得る。すなわち、前述のように、溝17の底壁17aは先端腕部21の内面21aに対して多少傾斜しているので、先端係合部20の先端腕部21の内面21a(典型的にはその一部)のみでなく溝17の底壁17(典型的にはその一部)もレバー60の外周壁部61の外側面61bに当接し得る。
なお、レバー60は、典型的には、板金の折曲体からなるので、レバー60の外周壁部61は該レバー60の側壁部62a,62bにつながる側縁部において多少丸みをもってつながっている。従って、溝部17はレバー60の外周壁部61側の部分が完全に嵌り込むような幅である代わりに、外周壁部61の湾曲側縁部の少なくとも一部がはまり込むような幅であればよい。
この状態では、レバー60のD2方向回動に関する限り、締付バンド開閉補助工具1はレバー60と実際上一体的であるとみなし得る。
但し、締付バンド開閉補助工具1は、その腕の長さLa(図1)がレバー60の長さよりも少なくとも数倍長く且つ腕本体部12に対して角度αだけ外向きに傾斜した把手部14を備えるので、把手部14がレバー60の先端部69から離れて位置するから、レバー60の先端部69等に触れることなく(従って怪我等の虞れなく)把手部14を把持してD2方向回動を容易(小さい力で短時間に)に行い得る。
その結果、レバー60もE2方向(D2方向と一致する)に回動されて、締付バンド5の締付が行われ得る。この締付動作に際しても、枢支ピン45の中心軸線C1よりも径方向外側に位置する中心軸線C2,C3間の仮想線V1が中心軸線C1に一致するところまでレバー60をE2方向に回動させると、その後は、締付バンド5に働く径方向外向きの力によって、レバー60が自動的にE2方向に閉じられる。
なお、この締付操作に際しても、締付バンド開閉補助工具1は、レバー60の先端部69を利用するというよりもむしろ、レバー60のうち枢支ピン45に近接する基端側部分を利用する。もっとも、レバー60の外周壁部61の外表面61aへの当接に関する限り、レバー60の先端部69に近接する部分に当接可能であれば該部分に当接することが好ましい。但し、ここでも、レバー60の先端部69から相当離れた部分(基端部により近い部分)のみにおいて、外周壁部61の外表面61aに当接可能になっていてもよい。
なお、工具1は全体として先細になっているので、作業者が腰ベルトの工具差しに差して取出自在に収納することも可能である。
以上において、腕本体部12の溝部17にレバー60の外周壁部61が部分的に嵌る例について説明したけれども、凹部15自体にレバー60の外周壁部61が部分的に又は外周壁部61の全体若しくは外周壁部61及び側壁部62a,62bの一部が嵌り込むようになっていてもよい。その場合、凹部15は浅くてもよい。以上において、凹部15の横断面形状は、図示の例のように半円形の代わりに三角形その他の形状でもよい。例えば、図2の(b)に示したように、凹部15が、開口側程大きくなるように拡がった三角形状横断面の凹部15mからなり、該凹部15の上部にレバー60の外周壁部61が例えば2mm程度嵌り込むようになっていてもよい。この場合、凹部15mの底部は、レバー60の支持に直接関与しないので、重量(軽さ)や機械的強度を考慮して、平らな直線状(平面状)でも、U字状に湾曲していても、他の形状でもよい。
以上においては、締付バンド5の開閉(開きと閉じとの両方)を行い得る開閉補助工具の好ましい一例について説明したけれども、例えば、腕本体部12のうち内側表面12cにレバー60の外周壁部61の外表面に多少なりとも係合する凹みがある限り溝部17や凹部15を欠いていてもよく、その場合でも、実際には、開閉補助工具として機能し得る。なお、溝部17がなくても、凹部15が外周壁部61の少なくとも一部に係合する凹部として機能し得る限りは、実際上、締付バンド開閉補助具として働き得る。
一方、内側表面12cが横断面で見て外向きに凸状になっていて、レバー60の外周壁部61を実際上支え難い場合には、そのような補助工具は、締付バンド5の開き専用の締付バンド開き補助工具として働く。
他方、例えば、先端係合部20のフック状係合部23のうち係合突起部25が短くて、脚部連結部24の外側面26が枢支ピン45に当接すると係合突起部25がレバー60の外周壁部61の縁部66に引っ掛らず開口64から抜けてしまうような場合、補助工具は、閉じ専用の締付バンド閉じ(締付)補助工具として働く。
締付バンド5は、枢支ピン45を露出させる開口64を規定する先端側周壁部65を備える限り、その詳細な構造はどのようなものであってもよく、例えば、レバー60の側壁部62a,62bの基端側端部63a,63bがピン支持壁部44a,44bよりも内側にあったり、レバー60の外周壁部61がピン45よりも奥(内周側)にありしてもよい。
開口64から間隙67内に挿入可能であると共に「U」の一対の脚部を構成する係合突起部25と先端腕部21の先端部22との間に開口64の(レバー60の)先端側周壁部65の開口縁部(基端側縁部)66を受容可能であって、且つD1方向の開き操作の際に係合突起部25の内縁部で先端側周壁部65の内面61aに当接可能であると共に脚部連結部24の外側面26で枢支ピン45の外周面に当接可能であり、また、D2方向の閉じ操作の際に係合突起部25の内面25aで先端側周壁部65の内面61aに当接可能で且つ腕部10の内面でレバー60の外周壁部61の外表面61bに当接可能である限り、締付バンド開閉補助工具1の先端係合部20のフック状係合部23は、どのような形状であってもよい。例えば、係合突起部25が、直線状である代わりに曲がっていても、先端腕部21の先端部22に対して非平行であっても(例えば、係合突起部25の開口64への挿入や該開口64からの取出が容易になるように−Z側程(すなわちUの凹部Jの開口側程)相互の間隔が大きくなっていても、その逆に小さくなっていても)よく、また、脚部連結部24に対して直角である代わりに斜めになっていていもよい。脚部連結部24についても同様で、直線状である代わりに曲がっていても、係合突起部25や先端腕部21の先端部22に対して直角である代わりに、斜めに延びていてもよい。また、脚部連結部24と係合突起部25とが隅部において図に示したように滑らかに湾曲した曲面でつながる代わりに、斜めの接続面でつながっていてもよく、機械的強度が確保される場合には、直角な隅部があってもよい。更に、この例では、フック状係合部23を構成する各部22,24,25のY方向厚さが同一であるとして説明したけれども、開口64を介した間隙67に対する出し入れを許容し且つ機械的強度が確保され得る限り、先端側程細くなるようになっていても、一部が肥大化していても、一部が細くなっていてもよい。脚部連結部24の外側面26は、直線状である代わりに、外に向かって凸又は凹状に湾曲していてもよい。
更に、この例では、先端腕部21が先端係合部20の一部であるとして説明したけれども、先端腕部21のうち先端部22を除く部分を腕部10の腕本体部12の一部とみなしてもよい。その場合、先端腕部21の先端部22のみを先端係合部20の一部とみなせばよい。ここで、先端腕部21の先端部22は、部位25,24と共に開口Jを規定する「U」を構成する部分を指す。従って、先端腕部21の先端部22は、限りなく短くてもよい。