JP2008096253A - 回転体の振動検出方法、振動検出プログラム、及び記録媒体 - Google Patents
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Abstract
【課題】水平モーメントである静アンバランスに、回転モーメントである偶アンバランスを組み合わせた回転体の振動検出方法を提供する。
【解決手段】装置に内蔵される回転体の回転時の振動量を、バランシングマシンとこれに接続する制御装置によって検出する方法であって、バランシングマシンから、回転体の静アンバランスと偶アンバランスのデータを読み取り、回転体を組み込む装置における固有の、静アンバランスに対する第1の振動伝達係数と、偶アンバランスに対する第2の振動伝達係数をそれぞれ算出し、回転体の装置への振動伝達部における、静アンバランスに第1の振動伝達係数を乗算した値に、偶アンバランスに第2の振動伝達係数を乗算した値を加算した値の絶対値を算出し、これを回転体の装置への伝達振動量として検出することを特徴とする回転体の振動検出方法である。
【選択図】図8
【解決手段】装置に内蔵される回転体の回転時の振動量を、バランシングマシンとこれに接続する制御装置によって検出する方法であって、バランシングマシンから、回転体の静アンバランスと偶アンバランスのデータを読み取り、回転体を組み込む装置における固有の、静アンバランスに対する第1の振動伝達係数と、偶アンバランスに対する第2の振動伝達係数をそれぞれ算出し、回転体の装置への振動伝達部における、静アンバランスに第1の振動伝達係数を乗算した値に、偶アンバランスに第2の振動伝達係数を乗算した値を加算した値の絶対値を算出し、これを回転体の装置への伝達振動量として検出することを特徴とする回転体の振動検出方法である。
【選択図】図8
Description
本発明は、回転体の振動検出方法、振動検出プログラム、及び記録媒体に関し、特に、車両に搭載されたり、家屋等に設置される空気調和装置(エアコンディショナ)において、空気流を発生させるブロワのような回転体の振動検出方法、振動検出プログラム、及び記録媒体に関する。
近年、車両や家屋等には室内温度を好適に調整するための空気調和装置が設けられることが多い。空気調和装置は、装置内にブロワと呼ばれるモータで回転させられるファンを備えた回転体を備えており、ブロワを回転させて室内又は室外の空気を装置内に取り込み、この空気を冷媒又はヒータを通過させて所望の温度にして室内に排出することにより、室内温度を調節するものである。
ブロワは、ファンを備えた円筒形の回転体をモータで回転させて空気流を発生させるものであるが、回転体にアンバランスがあると回転体の回転時に振動が発生し、この振動により空気調和装置本体に不快な振動や雑音が発生して快適性が損なわれる。回転体のアンバランスは、ファン及びモータの重さのばらつき、寸法のばらつきにより発生する。
ここで、回転体を内蔵した空気調和装置を搭載する自動車について説明すると、回転体にアンバランスがある場合は、空気調和装置で発生した振動が車体に伝わり、ハンドル振動の原因となるので、近年の自動車ではこの振動が快適性要求を損ねるものとなってしまっていた。そこで、ハンドル振動の発振源となる空気調和装置のブロアアッセンブリの低振動化の要求がある。
この要求に対して、現在は、回転体のどの方向にどれぐらいのアンバランスのモーメントがあるかをバランシングマシンと呼ばれる装置によって測定し、バランシングマシンに指示された位置に指示された錘を付加することによって、回転体のアンバランスを低減している。回転体のアンバランスは、実際には全方向にあり、全てを測定することはできないので、回転体のアンバランスの測定は、便宜的に回転体の上の面と下の面に代表させて測定している。この上面アンバランスと下面アンバランスが回転体の振動と強い相関を持っている。
しかし従来は、アンバランス作用高さを無視した、回転体中央の静アンバランス測定を行っていたために、厳密な回転体の振動解析を行うことができなかった。そこで近年、上下面を2面とする2面式バランシングマシンを用いた測定が行われるようになった。
ところが、2面式バランシングマシンは、アンバランス測定時のワーク回転数の影響が大きく、上下面のアンバランス測定精度が悪かった。これに対して、2面式バランシングマシンにおける上下面のアンバランス測定の精度を向上させる方法が特許文献1に記載されている。
このような状況の下で、回転体のアンバランスが規格を満たさない場合には、従来は静アンバランスのみの1面調整によって修正し、近年は上面アンバランスと下面アンバランスを用いた2面調整によって修正することが行われていた。
しかしながら、回転体のアンバランスの規格がますます厳しくなるに従い、回転体を組み込んだ装置にアンバランスの規格を満たさないものが増え、規格を満たさないものは廃却またはアンバランス修正となるので、廃却の場合は装置の製造工程における歩留まり悪化による製造コスト上昇という問題点があり、アンバランス修正の場合は修正コストが上昇するという問題点があった。
本発明は上記問題点に鑑みてなされたものであり、回転体のアンバランスには、前述の静アンバランス以外にも、回転体の回転時に重心回りに発生する偶アンバランスが関係しており、水平モーメントである静アンバランスに、回転モーメントである偶アンバランスを組み合わせることにより、現在の回転体の備えるアンバランスを相殺することができるアンバランスを生み出すための回転体の振動検出方法、振動検出プログラム、及び記録媒体を提供することを目的としている。
前記目的を達成する本発明の回転体の振動検出方法は、装置に内蔵される回転体の回転時の振動量を、バランシングマシンとこれに接続する制御装置によって検出する方法であって、バランシングマシンから、回転体の静アンバランスと偶アンバランスのデータを読み取り、回転体を組み込む装置における固有の、静アンバランスに対する第1の振動伝達係数と、偶アンバランスに対する第2の振動伝達係数をそれぞれ算出し、回転体の装置への振動伝達部における、静アンバランスに第1の振動伝達係数を乗算した値に、偶アンバランスに第2の振動伝達係数を乗算した値を加算した値(ベクトル和)の絶対値を算出して、これを回転体の装置への伝達振動量として検出することを特徴としている。
前記目的を達成する本発明の振動検出プログラムは、コンピュータに、バランシングマシンから、回転体の静アンバランスと偶アンバランスのデータを読み取らせる手順、回転体を組み込む装置における固有の、静アンバランスに対する第1の振動伝達係数と、偶アンバランスに対する第2の振動伝達係数をそれぞれ算出させる手順、回転体の装置への振動伝達部における、静アンバランスに第1の振動伝達係数を乗算した値に、偶アンバランスに第2の振動伝達係数を乗算した値を加算した値の絶対値を算出して、これを回転体の前記装置への伝達振動量として検出する手順を実行させることを特徴としている。
前記目的を達成する本発明の記録媒体は、コンピュータに、バランシングマシンから、回転体の静アンバランスと偶アンバランスのデータを読み取らせる手順、回転体を組み込む装置における固有の、静アンバランスに対する第1の振動伝達係数と、偶アンバランスに対する第2の振動伝達係数をそれぞれ算出させる手順、回転体の装置への振動伝達部における、静アンバランスに第1の振動伝達係数を乗算した値に、偶アンバランスに第2の振動伝達係数を乗算した値を加算した値の絶対値を算出して、これを回転体の前記装置への伝達振動量として検出する手順を実行させるためのプログラムを記録したコンピュータに読み取り可能な記録媒体である。
本発明によれば、回転体の静アンバランスと偶アンバランスを用いた検出値が、振動規格内に入る場合は、この回転体を良品とすることができるので、回転体の不良率を低くすることができる。
以下、添付図面を用いて本発明の実施の形態を、具体的な実施例に基づいて詳細に説明するが、本発明を容易に理解するために、従来技術の問題点を図面を用いて説明する。
一般に回転体のアンバランス(不釣合い)は、回転体の回転軸まわりの回転体の質量分布が一様でないことにより生じる。回転体にアンバランスがあると、回転体の回転時に遠心力により振動が発生する。このアンバランスを合成し、適当に選んだ2面を図1(a)に示すように、上面、下面とし、この2つの面でアンバランスを代表させる。回転体がファンであり、このファンを回転させるものがモータである場合には、上面でのアンバランスが上面アンバランス、下面でのアンバランスが下面アンバランスと呼ばれる。
また、アンバランス作用高さを無視して、上面アンバランスと下面アンバランスを適当な位置、例えば、図1(b)に示す中間面で合成したものは、静アンバランスと呼ばれる。更に、上面と下面において、上面アンバランスと下面アンバランスからそれぞれ静アンバランスの成分を引いたアンバランスが作用すると仮定したアンバランスは、偶アンバランスと呼ばれる。この偶アンバランスの例を図1(d)に示す。
図1(c)は、上面アンバランスから静アンバランスのa/(a+b)倍を減算したアンバランスと、下面アンバランスから静アンバランスのb/(a+b)倍を減算したアンバランスを示しており、図1(d)は、回転体の上面と下面における偶バランスを示している。通常はa=bであるので、上面の偶アンバランスは上面アンバランスから下面アンバランスを減算した値の半分の正の値となり、下面の偶アンバランスは下面アンバランスから上面アンバランスを減算した値の半分の負の値となる。
従来は、回転体の慣性力の総和をゼロに近づけるために、中間面において静アンバランスをゼロに近づけるように回転体に錘を付加して調整するか、又は回転体の任意の点回りのアンバランスのモーメントの総和をゼロに近づけるために、上面及び下面において調整、即ち、上面アンバランスと下面アンバランスを上面と下面の2面で調整して上面アンバランスと下面アンバランスとをゼロに近づけ、図2に示すように、上面アンバランス、下面アンバランス、及び静アンバランスがバランス良品域(規格内)に入るようにしていた。この調整は、回転体の上面と下面にそれぞれ錘を付加するというものである。
ところが、上下面のアンバランスの調整は、回転体の2面にそれぞれ錘を付加して行う調整方法であるので、錘が2個必要である。そして、錘の取り付け作業性の観点からみても時間がかかるので、回転体のアンバランス調整コストが大きくなり、回転体を内蔵する装置の製造コストが上昇するという問題点があった。
本発明は、このような従来の回転体のアンバランス調整を、上下面のアンバランスの調整によって行う不利益を解消するものであり、回転体にアンバランスがある場合は、回転体の振動量が大きくなることを見出し、回転体のアンバランスの調整を、回転体の任意の1面のみで行えるように、回転体の振動量を検出するものである。即ち、本発明は検出した回転体の振動量を、任意の面に錘を付加する調整、好ましくは1箇所に錘を付加する調整により低減させ、回転体を内蔵する装置の製造コストを低減することができる、回転体の振動検出方法を提供するものである。以下に本発明の回転体の振動検出方法を、順を追って説明する。
静アンバランスは静止状態のアンバランスであって、上面アンバランスと下面アンバランスとをベクトル合成したものである。そして、偶アンバランスは、回転体の回転時に、重心回りに発生するアンバランスであって、上面アンバランスから静アンバランスの半分を減算したもので、上面アンバランスから下面アンバランスを減算したアンバランスの半分に等しい。そして、回転体のアンバランスと発生振動の関係は、図3に示すモデルのように、静アンバランス(水平方向モーメント)と偶アンバランス(回転方向モーメント)とを加算した振動量である。
そこで、図4に示すような、すりこぎ運動を行う回転体の振動モデルを考える。図において、1は質量Mの回転体であり、2は慣性主軸、Gは重心、hは錘を取り付ける面の間の距離である。また、回転体1は、慣性主軸2上の点Y1とY2で、ばね定数k1、k2のばね3,4に支持されていると考えられる。このばね3,4の位置に振動ピックアップがあり、回転体1の振動は、これらのピックアップで測定されるものとする。そして、このばね3,4がある部分の振動の振幅をy1、y2とし、点Y1が回転体1を支持する部材への振動伝達部であるとする。I1からI4及びIgは、重心Gまわりの慣性モーメントであり、白抜きの矢印が測定された偶アンバランス、静アンバランス、及び重心における振動ygである。
この振動モデルに既知の水平振動の運動方程式を適用し、重心Gにおける水平方向の強制周期力(静アンバランス)を算出する。重心Gにおける水平振動の運動方程式は、重心Gにおける慣性力に、復原力を加算した状態を表す方程式であり、復原力は、点Y1における静アンバランスと偶アンバランスの和にばね定数k1を乗算した値と、点Y2における静アンバランスと偶アンバランスの和にばね定数k2を乗算した値とを加算した値である。
また、この振動モデルに既知の重心Gのまわりの回転振動の運動方程式を適用し、重心Gにおける強制周期力のモーメントを算出する。重心Gまわりの回転振動の運動方程式は、重心Gにおける慣性力のモーメントに、ばねの復原力のモーメントを加算した状態を表す方程式である。ばねの復原力のモーメントは、図4に示す慣性モーメントI3とIGの差に点Y1における静アンバランスを乗算した値に、慣性モーメントI1とIGの差に点Y1における偶アンバランスを乗算した値を加算して、これにばね定数k1を乗算した値から、慣性モーメントI3とIGの差に点Y2における静アンバランスを乗算した値に、慣性モーメントI2とIGの差に点Y2における偶アンバランスを乗算した値を加算して、これにばね定数k1を乗算した値を減算した値として表される。
そして、水平振動の運動方程式と重心Gのまわりの回転振動の運動方程式の2つの方程式から、点Y1における振動値y1(t)を、点Y1における静アンバランスに振動伝達係数αを乗算した値に、点Y1における偶アンバランスに振動伝達係数βを乗算した値として求めることができ、点Y2における振動値y2(t)を、点Y2における静アンバランスに振動伝達係数γを乗算した値に、点Y2における偶アンバランスに振動伝達係数δを乗算した値として求めることができる。
ここで、点Y1が回転体1を内蔵する製品の取付部、即ち回転体1の振動伝達部であった場合について考える。すると、前述の計算式から、点Y1において外部に伝達される振動は、点Y1における静アンバランスに振動伝達係数αを乗算した値に、点Y1における偶アンバランスに振動伝達係数βを乗算した値の絶対値として算出することができる。ここで、振動伝達係数α、βは、製品固有の振動伝達係数であり、以下のようにして算出することができる。
図4の振動モデルを使用して、まず、静アンバランスの影響による振動量を測定する。この場合は、偶アンバランスをゼロに固定し、静アンバランスを変化させた時の振動量を測定する。次に、偶アンバランスの影響による振動量を測定する。この場合は、静アンバランスをゼロに固定し、偶アンバランスを変化させた時の振動量を測定する。この測定において、図5に示すように、静アンバランスによる振動量の変化の傾きを算出し、この値をαとする。この場合は、静アンバランスによる振動変化の傾きが振動伝達係数αであり、偶アンバランスによる振動変化の傾きが振動伝達係数βである。この実施例では、傾きαが12.2度、傾きβが4.3度となっている。
なお、図5の振動伝達係数α、βの特性に送風振動値Wとして示されるように、回転体を含む装置が送風機である場合は、アンバランスがない場合でも、風の影響により振動Wが発生するため、この振動Wを初期値として加算する必要がある。即ち、送風機の振動値は、点Y1における静アンバランスに振動伝達係数αを乗算した値と、点Y1における偶アンバランスに振動伝達係数βを乗算した値の絶対値に、送風振動値Wを加算した値である。送風振動値Wは、静アンバランス及び偶アンバランスをゼロにした時の点Y1における振動量を測定することによって得ることができる。
また、上面アンバランスの振動伝達係数εと下面アンバランスの振動伝達係数ζとが等しくない場合は、図3で説明したアンバランスの分解式を用いて、静アンバランスは上面アンバランスと下面アンバランスのベクトル和、偶アンバランスは上面アンバランスから下面アンバランスを引いた値の半分に置き換えることができる。この場合、静アンバランスと偶アンバランスのベクトル和の絶対値は、上面アンバランスの3/2倍に下面アンバランスの半分を加算した値の絶対値となる。また、送風機の場合の振動は、図6に示すように、上面アンバランスに振動伝達係数εを乗算した値に下面アンバランスに振動伝達係数ζを乗算した値の和の絶対値に送風振動値Vを加算したものである。
上面アンバランスの振動伝達係数εと下面アンバランスの振動伝達係数ζは、以下のようにして測定する。まず、上面アンバランスの影響による振動量を測定する。この場合は、下面アンバランスをゼロに固定し、上面アンバランスを変化させた時の振動量を測定する。次に、下面アンバランスの影響による振動量を測定する。この場合は、上面アンバランスをゼロに固定し、下面アンバランスを変化させた時の振動量を測定する。この測定において、図6に示すように、上面アンバランスによる振動量の変化の傾きを算出し、この値をεとする。また、下面アンバランスによる振動量の変化の傾きを算出し、この値をζとする。この場合は、上面アンバランスによる振動変化の傾きが振動伝達係数εであり、下面アンバランスによる振動変化の傾きが振動伝達係数ζである。この実施例では、傾きεが13.3度、傾きζが9.8度となっている。
次に、回転体の振動検出によるバランス検査の方法を、更に具体的に説明する。図7は、図12で後述するパーソナルコンピュータ6に接続されるディスプレイ7に、バランシングマシン5によって測定された回転体の上面アンバランス、下面アンバランス、静アンバランス、及び偶アンバランスのデータが表示された状態を示すものである。
図12に示すバランシングマシン5は、測定すべき回転体を所定の回転数で回転させた時の、回転体の上面アンバランス、下面アンバランス、静アンバランス、及び偶アンバランスのデータをパーソナルコンピュータ6に送る。パーソナルコンピュータ6は、入力されたデータに基づき、図7に詳細を示すディスプレイ7の、回転数表示部10に回転数を表示し、上面アンバランス表示部11に上面アンバランス状態を表示し、下面アンバランス表示部12に下面アンバランス状態を表示し、静アンバランス表示部13に静アンバランス状態を表示し、偶アンバランス表示部14に偶アンバランス状態を表示する。
そして、アンバランス状態が各表示部の規格円9の中に納まっているときには、各表示部の脇にある適否表示部15に「OK」の表示を行う。一方、アンバランス状態が各表示部の規格円9の外にあるときには、各表示部の脇にある適否表示部15に「NG」の表示を行うと共に、各表示部の脇にある錘取付角度表示部16と錘取付量表示部17に、錘の取付角度と量をそれぞれ表示する。
これまでは、回転体にアンバランスがある時には、ディスプレイ7の上面アンバランス表示部11の脇の適否表示部15と、下面アンバランス表示部12の脇の適否表示部15にそれぞれ「NG」の表示が出るので、錘取付角度表示部16と錘取付量表示部に表示される、錘の取付角度と量のデータに従って、回転体の上面と下面に、それぞれ指示された錘を取り付けていた。
一方、本発明では、バランシングマシンからの静アンバランスと偶アンバランスのバランス測定値と計算式により、回転体の振動伝達部における振動量を算出して、回転体の適否を判定するために、前述の振動伝達係数α、βと送風振動値Wの値を、パーソナルコンピュータのパネルキーから予め入力しておく。そして、パーソナルコンピュータは、バランシングマシンからの静アンバランスのデータと偶アンバランスのデータを取り込み、静アンバランスに振動伝達係数αを乗算した値と、偶アンバランスに振動伝達係数βを乗算した値を図8(a)のように、ディスプレイに表示する。
図8(a)に示される画面は、回転体の何れかの面において静アンバランスと偶アンバランスをベクトル表示し、ベクトル和、即ち合成振動CVを算出して表示したものである。回転体の振動伝達面における実際の振動は、この合成振動CVの値に、送風振動値Wを加算したものである。
そして、合成振動CVの値が小さいか、或いは送風振動値Wの値が小さく、得られた振動値RVが、点線で示す振動値RV1のように規格円18の内部にあれば、この回転体に振動はないと判定される。一方、合成振動CVの値が大きいか、或いは送風振動値Wの値が大きく、得られた振動値RVが、実線で示す振動値RV2のように規格円18の外にあれば、この回転体に振動があると判定され、修正が必要となる。
振動値RVが、振動値RV2のように規格円18の外にあるときは、本発明では、算出した合成振動CVを相殺する修正振動−CVを計算し、これを図8(b)に示すように表示すると共に、この修正振動−CVを与える修正静アンバランスの値、即ち、付加する錘の位置(−X,−Y)を表示する。錘を付加する位置は1箇所である。図8(b)に示す実線で示す円は修正限界円19であり、修正静アンバランスを与える錘の位置の限界点を示すものであり、錘はこの修正限界円19の外には設置することができない。
このように、回転体の何れかの面において静アンバランスと偶アンバランスのベクトル和から合成振動CVを算出し、これに送風振動値Wを加算した実際の振動RVが規格円18の外にある場合は、本発明では、合成振動CVを相殺するような合成振動−CVを算出し、次いでこの合成振動−CVを発生させる1個の錘の位置を算出し、回転体の前述の面にこの1個の錘を取り付けることにより、回転体の振動伝達部における実際の振動値RVを振動規格円18の中に入れることができる。
錘を1箇所取り付けて振動を低減する回転体の面は、どこの位置でもかまわないが、回転体の重心が位置する面に取り付ける方が、回転体を内蔵する製品の構造上好ましい。更に、錘の取り付けによって、回転体の振動伝達部における振動がゼロになることが好ましいが、規格値として、回転体の振動伝達部における振動は5μm程度の幅を持たせるようにすれば、製品の歩留まりを向上させることができる。
このように、本発明では、バランシングマシンの検出データのうち、静アンバランスと偶アンバランスのデータから、回転体の振動伝達部における振動を検出し、この振動を相殺するような錘を回転体の1箇所に取り付けてアンバランスを低減することができるので、従来の上面アンバランスと下面アンバランスおよび静アンバランスを用いた回転体のアンバランスの修正方法に比べて、錘の数の低減、修正工数の低減すなわち修正コストの低減を図ることができる。
以上説明したように、本発明では回転体を内蔵する装置の回転体に起因する振動を、装置からの振動伝達部において測定し、この振動伝達部における振動が許容範囲内であれば、装置を良品と判定するようにしてアンバランス規格を広げている。このアンバランス規格を広げることができる理由を、簡易なモデルとして静アンバランスと偶アンバランスの位置関係が180°正対する場合について説明し、本発明の検証を行う。
図9(a)は振動相殺モデルを示すものであり、静アンバランスが負の値であり、これに対して偶アンバランスが正の場合のモデルである。図9(b)は振動加算モデルを示すものであり、静アンバランスが正の値であり、偶アンバランスも正の場合のモデルである。図9(c)は振動加算モデルを示すものであり、静アンバランスが負の値であり、偶アンバランスも負の場合のモデルである。図9(d)は振動相殺モデルを示すものであり、静アンバランスが正の値であり、これに対して偶アンバランスが負の場合のモデルである。
そして、図10に示すように、静アンバランスと偶アンバランスが共に正の領域を第1象限とし、静アンバランスが負で偶アンバランスが正の領域を第2象限とし、静アンバランスと偶アンバランスが共に負の領域を第3象限とし、静アンバランスが正で偶アンバランスが負の領域を第4象限とする。すると、静アンバランスと偶アンバランスが同じ方向の場合(座標で言う第1象限と第3象限)は、振動が加算されて大きくなる。すなわち、静アンバランスがゼロ、かつ偶アンバランスがゼロの1点が振動ゼロの点である。
これに対して、静アンバランスと偶アンバランスが180°正対する場所(座標で言う第2象限と第4象限)は、振動が相殺されて小さくなる。すなわち、静アンバランスと偶アンバランスとが正対し、釣り合った点は全て振動ゼロであり、理論上この点は無限にある。この振動ゼロラインが図10に破線で示される。そして、振動規格を5μmとした場合は、振動良品領域は一点鎖線で示される領域となる。
ここで、図11(a)、(b)を用いて、従来から採用されている一般的なバランス検査と、本発明による振動検出方法を用いたバランス検査との比較を行う。ここでは、振動規格を5μmとして比較する。図11(a)は、一般的なバランス検査による「バランス良品領域(規格)」を示すものである。一般的なバランス検査では、上面アンバランス、下面アンバランス、及び静アンバランスが規格内に入るようにしていたので、アンバランス分布が図の破線で示すような場合、ハッチングで示す良品域に入る製品の良品率はおよそ30パーセントであった。
これに対して、本発明の方法では、「振動良品領域」は第2象限から第4象限に向かう斜めの帯状の領域となる。そして、図11(a)に示したアンバランス分布は、図11(b)では破線で示すような領域となり、第2象限から第4象限に向かう斜めの帯状の領域に殆どが入り、製品の良品率はおよそ90パーセントであった。この結果、本発明では、バランス良品領域が一般的な「バランス良品領域」をはるかに上回ることが分かる。
以上のような本発明の回転体の振動検出方法は、図12に示す構成で実現可能である。回転体のアンバランスは、バランシングマシン5によって検出することができ、このバランシングマシン5からは、回転体の上面アンバランス、下面アンバランス、静アンバランス、及び偶アンバランスのデータが出力される。これらのデータは、パーソナルコンピュータ6に入力することができ、パーソナルコンピュータ6に接続されたディスプレイ7によって見ることができる。
このような構成において、本発明の回転体の振動検出方法は、プログラムの形でCD−ROMなどの記録媒体8に記憶させておき、これをパーソナルコンピュータ6に読み込ませて、パーソナルコンピュータ6の中のハードディスクなどの記憶部に記憶させることができる。
このような状況において、パーソナルコンピュータ6は、バランシングマシン5から出力されるデータの中から、静アンバランスと偶アンバランスのデータを読み取り、記憶されている本発明の回転体の振動検出方法のプログラムに従って、回転体の振動伝達部における振動を検出し、回転体の適否を判断する。この判断の結果、ディスプレイ7には回転体の合格品、アンバランスの修正可能品、或いはアンバランスの修正が不可能な不良品の判断結果が表示される。なお、アンバランスの修正可能品の場合は、錘の取付角度と量を表示する。
このように、本発明では、バランシングマシンの検出データのうち、静アンバランスと偶アンバランスのデータから、回転体の振動伝達部における振動を検出し、回転体の適否を判断することができるので、従来の上面アンバランスと下面アンバランスおよび静アンバランスの検出方法に比べて、回転体の良品率が高くなる。
本発明は、空気調和装置、特に車載用の空気調和装置の送風機であるブロワの回転振動の検出に有効に適用することができる。
1 回転体
2 慣性主軸
3、4 ばね
5 バランシングマシン
6 パーソナルコンピュータ
7 ディスプレイ
8 記録媒体
2 慣性主軸
3、4 ばね
5 バランシングマシン
6 パーソナルコンピュータ
7 ディスプレイ
8 記録媒体
Claims (7)
- 装置に内蔵される回転体の回転時の振動量を、バランシングマシンとこれに接続する制御装置によって検出する方法であって、
前記バランシングマシンから、前記回転体の静アンバランスと偶アンバランスのデータを読み取り、
前記回転体を組み込む前記装置における固有の、前記静アンバランスに対する第1の振動伝達係数と、前記偶アンバランスに対する第2の振動伝達係数をそれぞれ算出し、
前記回転体の前記装置への振動伝達部における、前記静アンバランスに前記第1の振動伝達係数を乗算した値に、前記偶アンバランスに前記第2の振動伝達係数を乗算した値を加算した値の絶対値を算出して、これを前記回転体の前記装置への伝達振動量として検出することを特徴とする回転体の振動検出方法。 - 前記算出した伝達振動量に、前記製品固有の初期振動値を加算したものを、前記回転体の前記装置への伝達振動量とすることを特徴とする請求項1に記載の回転体の振動検出方法。
- 前記初期振動値は、前記装置が送風機の場合に、送風振動値であることを特徴とする請求項2に記載の回転体の振動検出方法。
- 前記静アンバランスと偶アンバランスの位置関係が180°正対する場合に、前記静アンバランスと偶アンバランスが共に正の領域を第1象限、前記静アンバランスが負で前記偶アンバランスが正の領域を第2象限、前記静アンバランスと偶アンバランスが共に負の領域を第3象限、前記静アンバランスが正で前記偶アンバランスが負の領域を第4象限とした座標軸を定め、
前記回転体に振動が起きない前記静アンバランスと偶アンバランスの組み合わせを前記座標軸にプロットしてできる、前記座標軸の、ゼロ点、第2象限、及び第4象限を通る所定の傾きを持つ直線を、前記回転体の振動量がゼロのラインと定め、
前記静アンバランスがゼロの時に所定の正負の偶バランス値となり、前記ゼロラインに平行な2本の直線で囲まれる前記座標軸内の領域を振動規格内領域と定め、
検出した前記回転体の伝達振動量が、前記振動規格内領域に入る時に前記回転体の振動量を規格内とし、前記振動規格内領域から外れる時に前記回転体の振動量を規格外とすることを特徴とする請求項1から3の何れか1項に記載の回転体の振動検出方法。 - 検出した前記回転体の振動量が、前記規格外である場合に、前記バランシングマシンから読み出した、前記回転体の静アンバランスと偶アンバランスのデータに基づき、前記振動量を打ち消す静アンバランスを算出することを特徴とする請求項4に記載の回転体の振動検出方法。
- コンピュータに、バランシングマシンから、回転体の静アンバランスと偶アンバランスのデータを読み取らせる手順、前記回転体を組み込む装置における固有の、前記静アンバランスに対する第1の振動伝達係数と、前記偶アンバランスに対する第2の振動伝達係数をそれぞれ算出させる手順、前記回転体の前記装置への振動伝達部における、前記静アンバランスに前記第1の振動伝達係数を乗算した値に、前記偶アンバランスに前記第2の振動伝達係数を乗算した値を加算した値の絶対値を算出して、これを前記回転体の前記装置への伝達振動量として検出する手順を実行させるためのプログラム。
- コンピュータに、バランシングマシンから、回転体の静アンバランスと偶アンバランスのデータを読み取らせる手順、前記回転体を組み込む装置における固有の、前記静アンバランスに対する第1の振動伝達係数と、前記偶アンバランスに対する第2の振動伝達係数をそれぞれ算出させる手順、前記回転体の前記装置への振動伝達部における、前記静アンバランスに前記第1の振動伝達係数を乗算した値に、前記偶アンバランスに前記第2の振動伝達係数を乗算した値を加算した値の絶対値を算出して、これを前記回転体の前記装置への伝達振動量として検出する手順を実行させるためのプログラムを記録したコンピュータに読み取り可能な記録媒体。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2006277604A JP2008096253A (ja) | 2006-10-11 | 2006-10-11 | 回転体の振動検出方法、振動検出プログラム、及び記録媒体 |
Applications Claiming Priority (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
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JP2006277604A JP2008096253A (ja) | 2006-10-11 | 2006-10-11 | 回転体の振動検出方法、振動検出プログラム、及び記録媒体 |
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Publication Number | Publication Date |
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JP2008096253A true JP2008096253A (ja) | 2008-04-24 |
Family
ID=39379247
Family Applications (1)
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JP2006277604A Pending JP2008096253A (ja) | 2006-10-11 | 2006-10-11 | 回転体の振動検出方法、振動検出プログラム、及び記録媒体 |
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Country | Link |
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JP (1) | JP2008096253A (ja) |
Cited By (1)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
CN102778333A (zh) * | 2011-12-15 | 2012-11-14 | 上海卫星工程研究所 | 一种在大型转动部件上做动平衡测试的方法 |
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2006
- 2006-10-11 JP JP2006277604A patent/JP2008096253A/ja active Pending
Cited By (1)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
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CN102778333A (zh) * | 2011-12-15 | 2012-11-14 | 上海卫星工程研究所 | 一种在大型转动部件上做动平衡测试的方法 |
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