JP2008101935A - 回転体のアンバランス修正方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】水平モーメントである静アンバランスに、回転モーメントである偶アンバランスを組み合わせた回転体のアンバランス修正方法を提供する。
【解決手段】装置に内蔵される回転体の回転時の振動要素をバランシングマシンで検出して、回転体の静アンバランスと偶アンバランスのデータを読み取り、回転体の装置への振動伝達面における静アンバランスに装置固有の第1の振動伝達係数を乗算した値に、偶アンバランスに装置固有の第2の振動伝達係数を乗算した値を加算した伝達振動量の絶対値を算出し、この絶対値が許容値を越える場合に、伝達振動量を相殺する相殺伝達運動量を定め、この相殺伝達運動量を発生することができる錘の回転体への取付位置を計算して表示し、表示された位置に錘を取り付けることによって回転体のアンバランスを修正する回転体のアンバランス修正方法である。
【選択図】図6
【解決手段】装置に内蔵される回転体の回転時の振動要素をバランシングマシンで検出して、回転体の静アンバランスと偶アンバランスのデータを読み取り、回転体の装置への振動伝達面における静アンバランスに装置固有の第1の振動伝達係数を乗算した値に、偶アンバランスに装置固有の第2の振動伝達係数を乗算した値を加算した伝達振動量の絶対値を算出し、この絶対値が許容値を越える場合に、伝達振動量を相殺する相殺伝達運動量を定め、この相殺伝達運動量を発生することができる錘の回転体への取付位置を計算して表示し、表示された位置に錘を取り付けることによって回転体のアンバランスを修正する回転体のアンバランス修正方法である。
【選択図】図6
Description
本発明は、回転体のアンバランス修正方法に関し、特に、車両や家屋等に設置される空気調和装置(エアコンディショナ)において、空気流を発生させるブロワのような回転体のアンバランスにより発生する振動を抑制するためのアンバランス修正方法に関する。
近年、車両や家屋等には室内温度を好適に調整するための空気調和装置が設けられることが多い。空気調和装置は、装置内にブロワと呼ばれるファンを備えた回転体を備えており、ブロワを回転させて室内又は室外の空気を装置内に取り込み、この空気を冷媒又はヒータを通過させて所望の温度にして室内に排出することにより、室内温度を調節するものである。
ブロワは、ファンを備えた円筒形の回転体をモータで回転させて空気流を発生させるものであるが、回転体にアンバランスがあると回転体の回転時に振動が発生し、この振動が空気調和装置側に伝わると不快な振動や雑音が発生して快適性が損なわれる。回転体のアンバランスは、回転体を構成するファンの質量のばらつき、回転体の寸法のばらつき、或いはモータのばらつきにより発生する。
ここで、回転体を内蔵した空気調和装置を搭載する自動車について説明すると、回転体にアンバランスがある場合は、空気調和装置で発生した振動が車体に伝わり、ハンドル振動の原因となるので、この振動が快適性要求を損ねるものとなっていた。そこで、ハンドル振動の発振源となる空気調和装置のブロワアッセンブリの低振動化の要求がある。
この要求に対して、現在は、回転体のどの方向にどれぐらいのアンバランスのモーメントがあるかをバランシングマシンと呼ばれる装置によって測定し、バランシングマシンで指示された位置に指示された錘を付加することによって、回転体のアンバランスを低減している。回転体のアンバランスは、実際には全方向にあり、全てを測定することはできないので、回転体のアンバランスの測定は、便宜的に回転体の上の面と下の面に代表させて測定している。このように、アンバランスを回転体の上下面に代表させたものは、回転体の振動と強い相関を持っている。
しかし従来は、アンバランス作用高さを無視して上面と下面のアンバランスを単純にベクトル合成した静アンバランスによる解析を行ってきたために、厳密な回転体の振動解析を行うことができなかった。即ち、回転体の低振動化を達成するためには、上面と下面のアンバランス個々の測定が必須であるのにそれを行っていなかった。そこで、2面式バランシングマシンを用いて上面と下面のアンバランスを測定することが行われるようになった。
図1はバランシングマシン7の一例を示すものである。バランシングマシン7には、測定すべき回転体を所定の回転数で回転させた時の、回転数を表示する回転数表示部10、上面アンバランス状態を表示する上面アンバランス表示部11、下面アンバランス状態を表示する下面アンバランス表示部12、静アンバランス状態を表示する静アンバランス表示部13、及び偶アンバランス状態を表示する偶アンバランス表示部14があり、各表示部の脇にある錘取付角度表示部16と錘取付量表示部17に,錘の取付角度と量をそれぞれ表示する。この表示は矢印等でベクトル表示される。
そして、各表示部には、アンバランス状態が規格内かどうかを示す規格円9が描かれており、アンバランス状態が規格円9の中に納まっているときには、各表示部の脇にある適否表示部15にOKの表示が行われる。一方、アンバランス状態が各表示部の規格円9の外にあるときには、各表示部の脇にある適否表示部15にNGの表示を行う。
これまでは、回転体にアンバランスがある時には、ディスプレイ7の上面アンバランス表示部11の脇の適否表示部15と、下面アンバランス表示部12の脇の適否表示部15にそれぞれNGの表示が出るので、錘取付角度表示部16と錘取付量表示部17に表示される、錘の取付角度と量のデータに従って、回転体の上面と下面に、それぞれ指示された錘を取り付けていた。
ところが、2面式バランシングマシン7は、アンバランス測定時のワーク回転数の影響が大きく、上面と下面のアンバランスの測定精度が悪かった。これに対して、2面式バランシングマシンにおける動アンバランス測定の精度を向上させる方法が特許文献1に記載されている(特許文献1では、アンバランスをファンの上下面に集約したものが動アンバランスとして示されている)。
このような状況の下で、回転体のアンバランスが規格を満たさない場合には、従来は、アンバランスを静アンバランスのみの1面調整によって修正し、近年は、アンバランスを回転体の上面と下面のアンバランスを用いて2面調整によって修正することが行われていた。
しかしながら、回転体のアンバランスの規格がますます厳しくなるに従い、製品のアンバランスの規格を満たさないものの数が増え、規格を満たさないものはアンバランスの調整により工数が増大したり、廃却により製品の歩留まりが悪化して製造コストが大幅に上昇するという問題点があった。
本発明は上記問題点に鑑みてなされたものであり、回転体のアンバランスには、前述の上面と下面のアンバランスと静アンバランス以外にも、回転体の回転時に発生する偶アンバランスが関係しており、水平モーメントである静アンバランスに、回転モーメントである偶アンバランスを組み合わせることにより、静アンバランスの調整のみで現在の回転体の備えるアンバランスを相殺することができる回転体のバランス点を見出し、このバランス点に錘を付加することによって、回転体のアンバランスを低減して回転体の振動伝達部における振動を許容値内にすることができる回転体のアンバランス修正方法を提供することを目的としている。即ち、回転体がファンとモータである場合には、ファンのみのアンバランスを調整してファンとモータの振動の節を、ファンとモータを収容する筐体のファンとモータの支持部に移動させることにより、筐体の振動を低減することができるファンのアンバランス修正方法を提供することを目的としている。
前記目的を達成する本発明の回転体のアンバランス修正方法は、装置に内蔵される回転体のアンバランスを修正する方法であって、回転体の回転時の振動要素をバランシングマシンで検出し、検出した振動要素の中から回転体の静アンバランスと偶アンバランスのデータを読み取り、回転体を組み込む装置における固有の、静アンバランスに対する第1の振動伝達係数と、偶アンバランスに対する第2の振動伝達係数をそれぞれ算出し、回転体の装置への振動伝達部における、静アンバランスに第1の振動伝達係数を乗算した値に、偶アンバランスに第2の振動伝達係数を乗算した値を加算した伝達振動量の絶対値を算出し、この絶対値が予め定めた許容値を越える場合に、伝達振動量が許容値未満となるように、伝達振動量を相殺する相殺伝達運動量を定め、回転体に付加する錘の質量を既知として、この相殺伝達運動量を発生することができる錘の、回転体への取付位置を計算して表示し、表示された位置に錘を取り付けることによって回転体のアンバランスを修正する回転体のアンバランス修正方法である。
本発明によれば、回転体の静アンバランスと偶アンバランスを検出可能なバランシングマシンを用いた回転体のアンバランス修正方法において、回転体の振動伝達部における振動が振動良品領域から外れた場合には、回転体の静アンバランスによる振動と偶アンバランスによる振動の和を相殺するようなアンバランスを作り出す錘を、回転体に付加することにより、この回転体を良品とすることができるので、回転体の不良率を低くするための修正工数、修正コストを低減することができる。
以下、添付図面を用いて本発明の実施の形態を、具体的な実施例に基づいて詳細に説明するが、本発明を容易に理解するために、従来技術の問題点を図面を用いて説明する。
一般に回転体のアンバランス(不釣合い)は、回転体の回転軸まわりの回転体の質量分布が一様でないことにより生じる。回転体にアンバランスがあると、回転体の回転時に遠心力により振動が発生する。このアンバランスを合成し、適当に選んだ2面を図2(a)に示すように、修正面1、修正面2とし、この2つの面でアンバランスを代表させる。回転体がファンであり、このファンを回転させるものがモータである場合には、修正面1でのアンバランスが上面アンバランス、修正面2でのアンバランスが下面アンバランスと呼ばれる。
また、アンバランス作用高さを無視して、上面アンバランスと下面アンバランスを適当な位置、例えば、図2(b)に示す修正面3で合成したものは、静アンバランスと呼ばれる。更に、修正面1と修正面2において、上面アンバランスと下面アンバランスからそれぞれ静アンバランスの成分を引いたアンバランスが作用すると仮定したアンバランスは、偶アンバランスと呼ばれる。この偶アンバランスの例を図2(d)に示す。
図2(c)は、上面アンバランスから静アンバランスのa/(a+b)倍を減算したアンバランスと、下面アンバランスから静アンバランスのb/(a+b)倍を減算したアンバランスを示しており、図2(d)は、回転体の上面と下面における偶バランスを示している。通常はa=bであるので、上面の偶アンバランスは上面アンバランスから下面アンバランスを減算した値の半分の正の値となり、下面の偶アンバランスは下面アンバランスから上面アンバランスを減算した値の半分の負の値となる。a=bではない時の値は括弧内に示した。
従来は、回転体の慣性力の総和をゼロに近づけるために、修正面3において静アンバランスをゼロに近づけるように回転体に錘を付加して調整するか、又は回転体の任意の点回りのアンバランスのモーメントの総和をゼロに近づけるために、修正面1及び修正面2において上面アンバランスと下面アンバランスを調整していた。この調整は、回転体の上面と下面にそれぞれ錘を付加するというものである。
ハンドル振動低減の厳しい要求に伴い、ますます厳しくなる回転体のアンバランスの規格に応えるためには、静アンバランスの調整では偶アンバランスの成分を消すことができないので、上面アンバランスと下面アンバランスの調整を実施しなければならない。ところが、上面アンバランスと下面アンバランスの調整は、回転体の上面と下面の2面にそれぞれ錘を付加して行う調整方法であるので、錘の取り付け作業性の観点からみても時間がかかって回転体のアンバランス調整コストが大きくなり、回転体を内蔵する装置の製造コストが上昇するという問題点があった。
本発明は、このような従来の回転体のアンバランス調整を、上面アンバランスと下面アンバランスの調整によって行う不利益を解消するものであり、回転体にアンバランスがあって振動が発生している場合でも、回転体の静アンバランスと偶アンバランスの調整により、回転体の振動伝達部における振動量が小さくできることを見出し、回転体のアンバランスの調整を、回転体の1面のみで行えるようにした、回転体のアンバランス修正方法を提供するものである。即ち、本発明は、回転体を内蔵する装置の製造コストを低減するものであり、回転体の振動伝達部における振動量を、適切な1面でアンバランスを調整することにより低減させることができる、回転体のアンバランス修正方法である。以下に、本発明の回転体のアンバランス修正方法を、順を追って説明する。
静アンバランスは静止状態のアンバランスであって、上面アンバランスと下面アンバランスとをベクトル合成したものである。そして、偶アンバランスは、回転体の回転時に発生するアンバランスであって、上面アンバランスから静アンバランスの半分を減算したものであり、上面アンバランスから下面アンバランスを減算したアンバランスの半分に等しい。そして、回転体のアンバランスと振動の関係は、静アンバランス(水平モーメント)と偶アンバランス(回転モーメント)とを合成した振動量である。
ここで、車両のエアコンディショナに使用されるファンとモータから構成されるブロワを例にとって、そのアンバランスの調整について説明する。ファンとモータの振動は、アンバランスをゼロにすることによって偏心量を無くし、遠心力が作用しないようにして抑制している。しかし、ファンとモータはすりこぎ運動をしているので、振動の節を、振動がブロワの筐体に伝達する面(ファンとモータのブロワの筐体への取り付け面)に持ってくれば、ファンとモータの振動が筐体に伝わらないと考えられる。
式(1)において、α、βはブロワが取り付けられた製品の固有値であり、αは偶アンバランスをゼロに固定して静アンバランスを変化させた時の振動の変化率(振動伝達係数)、βは静アンバランスをゼロに固定して偶アンバランスを変化させた時の振動の変化率(振動伝達係数)を表す。そして式(1)の絶対値の中をゼロにすると、アンバランスによりブロワから筐体に伝達される振動がゼロになるように調整する。この調整ベクトルをWu(→)、Wcu(→),Wcl(→)とすると、下式(2)〜(4)が得られ、
これを整理すると、下式(5)〜(7)が得られる。
ここで、ε=α+β/2である。式(5)〜(7)の修正ベクトルを図3(a)〜(f)に示す。実際にアンバランス修正を行う際には、式(5)〜(7)を、回転中心から修正する場所までの距離rで割った値で修正する。回転中心から修正する場所(羽根)までの距離は製品ごとに事前に計測されており、その値を用いて較正が行われるので、錘取付量表示部17には計算した大きさを距離rで割った値が表示される。
そこで、図4に示すような、すりこぎ運動を行う回転体の振動モデルを考える。図4において、1は質量Mの回転体であり、2は回転軸、2Aは慣性主軸、Gは重心、hは錘を取り付ける最上部と最下部との間の距離である。また、回転体1は、慣性主軸2A上の点Y1とY2で、ばね定数k1、k2のばね3,4に支持されていると考えられる。このばね3,4の位置に振動ピックアップがあり、回転体1の振動は、これらのピックアップで測定されるものとする。そして、このばね3,4がある部分の振動の振幅をy1(t)、y2(t)とし、点Y1が回転体1を支持する部材への振動伝達部であるとする。I1からI4及びIgは、重心Gまわりの慣性モーメントであり、白抜きの矢印が測定された正負の偶アンバランス、静アンバランス、及び重心Gにおけるアンバランスyg(t)である。
この振動モデルに既知の水平振動の運動方程式を適用する。重心Gにおける水平振動の運動方程式は、重心Gにおける慣性力に、復原力を加算した状態を表す方程式であり、復原力は、点Y1における静アンバランスと偶アンバランスの和にばね定数k1を乗算した値と、点Y2における静アンバランスと偶アンバランスの和にばね定数k2を乗算した値とを加算した値である。
また、この振動モデルに既知の重心Gのまわりの回転振動の運動方程式を適用する。重心Gまわりの回転振動の運動方程式は、重心Gにおける慣性力のモーメントに、ばねの復原力のモーメントを加算した状態を表す方程式である。ばねの復原力のモーメントは、図4に示される、「慣性モーメントI3とIgの差に点Y1における静アンバランスを乗算した値」に、「慣性モーメントI1とIgの差に点Y1における偶アンバランスを乗算した値」を加算し、これにばね定数k1を乗算した値から、「慣性モーメントI3とIgの差に点Y2における静アンバランスを乗算した値」に、「慣性モーメントI2とIgの差に点Y2における偶アンバランスを乗算した値」を加算して、これにばね定数k1を乗算した値を減算した値として表される。
そして、水平振動の運動方程式と重心Gのまわりの回転振動の運動方程式の2つの方程式から、点Y1における振動値y1(t)を、点Y1における静アンバランスに振動伝達係数αを乗算した値に、点Y1における偶アンバランスに振動伝達係数βを乗算した値として求めることができ、点Y2における振動値y2(t)を、点Y2における静アンバランスに振動伝達係数αを乗算した値に、点Y2における偶アンバランスに振動伝達係数βを乗算した値として求めることができる。
ここで、点Y1が回転体1を内蔵する製品の取付部、即ち回転体1の振動伝達部であった場合について考える。すると、前述の計算式から、点Y1において外部に伝達される振動は、下式(A)に示すように、点Y1における静アンバランス(→)に振動伝達係数αを乗算した値に、点Y1における偶アンバランス(→)に振動伝達係数βを乗算した値の絶対値として算出することができる。
ここで、振動伝達係数α、βは、前述のように、製品固有の振動伝達係数であり、以下のようにして算出することができる。
ここで、振動伝達係数α、βは、前述のように、製品固有の振動伝達係数であり、以下のようにして算出することができる。
図4の振動モデルを使用して、まず、静アンバランスの影響による振動量を測定する。この場合は、偶アンバランスをゼロに固定し、静アンバランスを変化させた時の振動量を測定する。次に、偶アンバランスの影響による振動量を測定する。この場合は、静アンバランスをゼロに固定し、偶アンバランスを変化させた時の振動量を測定する。この測定において、図5に示すように、静アンバランスによる振動変化の傾きが振動伝達係数αであり、偶アンバランスの影響による振動変化の傾きが振動伝達係数βである。この実施例では、振動伝達係数αが12.2、振動伝達係数βが4.3となっている。
なお、図5の振動伝達係数α、βの特性に送風振動値Wとして示されるように、回転体を含む装置が送風機である場合は、アンバランスがない場合でも、風の影響により振動Wが発生するため、この振動Wを初期値として加算する必要がある。即ち、送風機の振動値は、点Y1における静アンバランスに振動伝達係数αを乗算した値と、点Y1における偶アンバランスに振動伝達係数βを乗算した値の絶対値に、送風振動値Wを加算した値である。送風振動値Wは、静アンバランス及び偶アンバランスをゼロにした時の点Y1における振動量を測定することによって得ることができる。
ここで、送風振動値Sを考慮しない場合を考えると、式(B)における絶対値の中がゼロであれば、回転体の回転による振動がなくなり、外部に伝わる振動がゼロになる。式(B)の絶対値の中をゼロにするためには、静アンバランスによる振動と偶アンバランスによる振動の和をゼロにすれば良い。このためには、静アンバランスによる振動と偶アンバランスによる振動の和によって形成されるベクトルを求め、このベクトルと同じ大きさで反対方向を向く調整ベクトルを生成するような錘(即ち、調整量W)を、回転体の少なくとも1箇所に付加することにより実現可能である。
本発明では、この調整量Wを、図2(d)に示した修正面3に錘を付加し、修正面3における静アンバランスと逆向きの静アンバランスを発生させることによって実現する。この修正方法の具体例を以下に説明する。
静アンバランスと偶アンバランスのベクトル和の180度反対方向に、これと同じ大きさの錘を付加しても、振動の節が外部ケースへの伝達面に移動しないので、外部に伝わる振動はゼロにはならない。これは、静アンバランスと偶アンバランスの振動を伝える係数が異なるからであり、係数が同じであれば前述の式が成り立つ。よって、前述の式(2)の左辺がゼロになるように錘を加える。錘は修正面3に付加する場合は、静アンバランスが変化するので、係数αが除算される。
修正面3における調整ベクトルWは、前述の式(7)で表され、この式(7)におけるWs(→)が、修正に要する錘の大きさと方向を表す。錘の取付位置は、計算によりバランシングマシンの錘取付角度表示部16と錘取付量表示部17とを使用して表示される。
同様の方法は、他に2通り考えられる。すなわち、上面アンバランスと下面アンバランスを、図2と図3に示した修正面1と修正面2で調整することによっても、アンバランスによる筐体振動をゼロにすることができる。この場合のアンバランスによる振動は下式(8)で表される。なお、α、βは前述したようにブロワが取り付けられる製品の固有値であり、αは下面アンバランスをゼロに固定し、上面アンバランスを変化させた時の振動の変化率、βは上面アンバランスをゼロに固定し、下面アンバランスを変化させた時の振動の変化率を表す。
式(11)、(12)で得られる、修正面1における上面調整ベクトルWu(→)は図6(a)、(b)のように示され、修正面2における下面調整ベクトルWl(→)は図6(c)、(d)のように表される。実際にアンバランスを調整する際は、上面調整ベクトルWu(→)と下面調整ベクトルWl(→)とを、ファンとモータの回転中心から錘を取り付ける位置(ファンの羽根)までの距離rで割った値で調整することになる。
図7(a)は、静アンバランスと偶アンバランスの一方をゼロにして、他方を変化させた時の回転体の振幅変化を示すものである。偶アンバランスをゼロにして、静アンバランスを増大させると、回転体の振幅は次第に増大する。一方、静アンバランスをゼロにして、偶アンバランスを増大させると、回転体の振幅は緩やかに増大する。
図7(b)は、前述の式(1)に偶アンバランスと静アンバランスの実際の値を代入した時の、振幅の変化を示すものである。この図から、式(1)に偶アンバランスと静アンバランスの実際の値を代入した値と、回転体の振幅との間に実際に相関があることが理解される。
図8(a)は、車載の空気調和装置の送風機のブロワのような回転体において、静アンバランスの値が0.73(gcm)かつ227(°)、偶アンバランスの値が0.96(gcm)かつ236(°)の値であった時に、振動の値が5.25(μm)であった場合の例を示すものである。
図8(b)は、図8(a)のアンバランス状態を、従来法によって修正した状態を示すものである。従来法では、回転体の上面と下面の二面修正により、静アンバランスと偶アンバランスとがゼロになるように修正が行われる。この修正の結果、この例では、静アンバランスの値が0.00(gcm)かつ298(°)、偶アンバランスの値が0.01(gcm)かつ269(°)の値となった。この時の振動の値の4.13(μm)は、風などによる初期振動の値である。この二面修正では、手間がかかるが、理想状態の振動値が得られる。
図8(c)は、図8(a)のアンバランス状態を、別の従来法によって修正した状態を示すものである。別の従来法では、回転体の中央の一面修正により、静アンバランスのみがゼロになるような修正が行われる。この修正の結果、この例では、静アンバランスの値が0.01(gcm)かつ236(°)、偶アンバランスの値が0.96(gcm)かつ236(°)の値となった。この時の振動の値の4.39(μm)は、修正されなかった偶アンバランスによる振動の値である。
図8(d)は、図8(a)のアンバランス状態を、本発明の方法によって修正した状態を示すものである。本発明の方法でも回転体の上面と下面の何れかの一面修正により、静アンバランスのみが修正されるが、静アンバランスの値はゼロに修正されるわけではない。本発明の修正では、0.94(gcm)の錘Wsが49°方向、即ち、Ws(→)=−静アンバランス(→)−(β/α)偶アンバランス(→)に付加される。この場合は、静アンバランスの値が0.20(gcm)かつ56(°)となるが、偶アンバランスの値は修正前の値である0.96(gcm)かつ236(°)のままである。
このように、本発明の修正方法では、静アンバランスの値はゼロではないが、結果として、発生した振動が図8(b)に示される理想的な振動値の4.13μmに近い4.14μmとなる。このように、本発明の修正方法では、簡単な調整で大きな振動低減を実現することができる。なお、以上の実施例では、回転体のアンバランスの修正を行う面を、回転体の上面位置、中間面の位置、下面位置の3つの位置で説明したが、回転体のアンバランスの修正を行う位置は、これらの位置に限定されるものではなく、回転体の高さ方向のどの位置でもかまわない。
本発明は、空気調和装置、特に車載用の空気調和装置の送風機のブロワのファンの回転振動を低減するアンバランス修正方法として有効である。
1 回転体
2 回転軸
2A 慣性主軸
3、4 ばね
7 バランシングマシン
9 規格円
11 上面アンバランス表示部
12 下面アンバランス表示部
13 静アンバランス表示部
14 偶アンバランス表示部
2 回転軸
2A 慣性主軸
3、4 ばね
7 バランシングマシン
9 規格円
11 上面アンバランス表示部
12 下面アンバランス表示部
13 静アンバランス表示部
14 偶アンバランス表示部
Claims (3)
- 装置に内蔵される回転体のアンバランスを修正する方法であって、
回転体の回転時の振動要素をバランシングマシンで検出し、検出した振動要素の中から前記回転体の静アンバランスと偶アンバランスのデータを読み取り、
前記回転体を組み込む装置における固有の、前記静アンバランスに対する第1の振動伝達係数と、前記偶アンバランスに対する第2の振動伝達係数をそれぞれ算出し、
前記回転体の前記装置への振動伝達部における、前記静アンバランスに前記第1の振動伝達係数を乗算した値に、前記偶アンバランスに前記第2の振動伝達係数を乗算した値を加算した伝達振動量の絶対値を算出し、
この絶対値が予め定めた許容値を越える場合に、前記伝達振動量が前記許容値未満となるように、前記伝達振動量を相殺する相殺伝達運動量を定め、
前記回転体に付加する錘の質量を既知として、この相殺伝達運動量を発生することができる前記錘の、前記回転体への取付位置を計算して表示し、
表示された位置に前記錘を取り付けることによって前記回転体のアンバランスを修正する回転体のアンバランス修正方法。 - 前記許容値を、前記回転体の振動幅が、振動ゼロの場合に対して正負5μmとしたことを特徴とする請求項1に記載の回転体のアンバランス修正方法。
- 前記錘の前記回転体への取付位置が、前記回転体の上面又は下面上の位置、或いは前記回転体の重心のある断面位置である場合に、前記取付位置は前記錘の取付基準位置からの角度で表示されることを特徴とする請求項1または2に記載の回転体のアンバランス修正方法。
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2006
- 2006-10-17 JP JP2006282629A patent/JP2008101935A/ja active Pending
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