JP2008095562A - エンジンオイルの劣化判定装置 - Google Patents
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Abstract
【課題】オイル劣化度の経時変化を反映した正確なオイル劣化判定を行う。
【解決手段】オイル劣化度の経時変化を考慮し、エンジン1の運転状態(油温θ、エンジン回転数r、燃料噴射量q)から求めるオイル劣化指標(全塩基価の減少と不溶解分の増加)を、現在のオイル劣化度α1、α2に依存する変数として時間積分を行ってオイル劣化度y1(オイル劣化指標:全塩基価の減少)とオイル劣化度y2(オイル劣化指標:不溶解分の増加)を算出する(ステップST5)。このようにしてオイル劣化度y1、y2を求めることにより、オイル劣化度の経時変化を反映した正確なオイル劣化判定を行うことが可能となり、エンジンオイルの交換時期を運転者等に適切に知らせることができる。
【選択図】図3
【解決手段】オイル劣化度の経時変化を考慮し、エンジン1の運転状態(油温θ、エンジン回転数r、燃料噴射量q)から求めるオイル劣化指標(全塩基価の減少と不溶解分の増加)を、現在のオイル劣化度α1、α2に依存する変数として時間積分を行ってオイル劣化度y1(オイル劣化指標:全塩基価の減少)とオイル劣化度y2(オイル劣化指標:不溶解分の増加)を算出する(ステップST5)。このようにしてオイル劣化度y1、y2を求めることにより、オイル劣化度の経時変化を反映した正確なオイル劣化判定を行うことが可能となり、エンジンオイルの交換時期を運転者等に適切に知らせることができる。
【選択図】図3
Description
本発明は、内燃機関を潤滑するエンジンオイルの劣化を判定するエンジンオイルの劣化判定装置に関する。
自動車等に搭載される内燃機関(以下、エンジンともいう)では、ピストン、クランクシャフト、コネクティングロッドなどの摺動各部をエンジンオイルにて潤滑している。このような潤滑用のエンジンオイルはエンジンの使用にともなって劣化する。
エンジンオイルの劣化は、例えば、基油の酸化、粘度増加、摩耗防止剤や清浄分散剤などの添加剤の消耗、すす(Soot)などの燃焼生成物の外部からの混入などによって生じる。これらのいずれの場合でも、エンジンの性能を維持するためにはエンジンオイルの交換が必要である。
エンジンオイルの交換時期を判定する方法として、エンジンオイルの劣化度を定量的に示すパラメータを検出してオイル交換時期を判定する方法がある。オイル劣化度を定量的に示すパラメータ(オイル劣化指標)としては、例えば、エンジンオイルの粘度、全酸価(TAN:Total Acid Number)、全塩基価(TBN:Total Base Number)などがあり、これらの粘度、全酸価、全塩基価などのいずれか1つのオイル劣化指標もくしは複数のオイル劣化指標を検出(推定)して、エンジンオイルの劣化を判定している。
また、オイル劣化指標に基づいてオイル劣化を判定する具体的な方法として、エンジンの運転状態(燃料噴射量、エンジン回転数、油温、車速など)をセンサなどによって検出し、それら検出値に基づいて、オイル劣化指標(全塩基価、不溶解分量、粘度など)毎の劣化係数を算出して、その劣化係数を積分した積分値をオイル劣化指標毎の基準値と比較してエンジンオイルの劣化判定するという方法がある(例えば、特許文献1〜3参照)。
なお、他のオイル劣化判定方法として、エンジンオイルの粘度などの物性、pHなどの性状をセンサで直接測定してオイル劣化を判定する方法がある。しかし、このようなセンサを用いた直接測定法は、2つの電極をオイル中に浸漬して電気特性変化を測定する方法であるので、エンジンオイルの添加剤の種類・配合比やオイル混入物の影響を受ける可能性が高く、オイル劣化を精度良く判定することは難しい。
特公平6−56094号公報
特開2002−317615号公報
特許第3493583号公報
ところで、上記したオイル劣化判定方法、つまり、エンジンの運転状態からオイル劣化指標(全塩基価減少、不溶解分の増加、粘度増加など)の劣化係数を算出して積分する方法では、経時(運転時間)に関係なく、エンジン運転状態が同じであればオイル劣化度が同じ(定数)として計算を行っている。このように、従来のオイル劣化判定方法では、オイル劣化度の経時変化(例えば図5に示す現象を参照)については考慮されていないため、実際のオイル劣化度を正確に反映した劣化判定を行うことが難しい。
本発明はそのような実情を考慮してなされたもので、オイル劣化度の経時変化を反映した正確なオイル劣化判定を行うことが可能なエンジンオイルの劣化判定装置を提供することを目的とする。
本発明は、内燃機関の運転状態に基づいてオイル劣化指標を求め、そのオイル劣化指標を時間積分した積分値からエンジンオイルの劣化を判定するエンジンオイルの劣化判定装置において、前記内燃機関の運転状態から求めるオイル劣化指標を、現在のオイル劣化度に依存する変数として時間積分を行うことを特徴としている。
本発明によれば、内燃機関の運転状態(例えば油温、エンジン回転数、燃料噴射量)から求めるオイル劣化指標を、現在のオイル劣化度に依存する変数として時間積分を行っているので、オイル劣化度の経時変化を反映した正確なオイル劣化判定を行うことが可能となる。
本発明において、内燃機関の運転状態から複数種のオイル劣化指標を求めてエンジンオイルの劣化を判定する場合、それら複数種のオイル劣化指標を、それぞれ現在のオイル劣化度に依存する変数として時間積分を行うようにしてもよい。より具体的には、エンジンオイル中の全塩基価の減少とエンジンオイル中の不溶解分(例えばペンタン不溶解分)の増加をオイル劣化指標とし、これら2つのオイル劣化指標を、それぞれ現在のオイル劣化度に依存する変数として時間積分を行うようにしてもよい。
本発明によれば、内燃機関の運転状態から求めるオイル劣化指標を、現在のオイル劣化度に依存する変数として時間積分を行っているので、オイル劣化度の経時変化を反映した正確なオイル劣化判定を行うことが可能となり、エンジンオイルの交換時期を運転者等に適切に知らせることができる。
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
まず、本発明のエンジンオイルの劣化判定装置を適用するエンジン(内燃機関)について説明する。
−エンジン−
図1は本発明を適用するエンジンの概略構成を示す図である。なお、図1にはエンジンの1気筒の構成のみを示している。
図1は本発明を適用するエンジンの概略構成を示す図である。なお、図1にはエンジンの1気筒の構成のみを示している。
エンジン1は、多気筒ガソリンエンジンであって、燃焼室1aを形成するピストン1b及び出力軸であるクランクシャフト15を備えている。ピストン1bはコネクティングロッド16を介してクランクシャフト15に連結されており、ピストン1bの往復運動がコネクティングロッド16によってクランクシャフト15の回転へと変換される。
クランクシャフト15には、外周面に複数の突起(歯)17a・・17aを有するシグナルロータ17が取り付けられている。シグナルロータ17の側方近傍にはクランクポジションセンサ27が配置されている。クランクポジションセンサ27は、例えば電磁ピックアップであって、クランクシャフト15が回転する際にシグナルロータ17の突起17aに対応するパルス状の信号(出力パルス)を発生する。
エンジン1のシリンダブロック1cの下側には、エンジンオイルを貯留するオイルパン18が設けられている。このオイルパン18に貯留されたエンジンオイルは、エンジン1の運転時に、異物を除去するオイルストレーナを介してオイルポンプによって汲み上げられ、さらにオイルフィルタで浄化された後に、ピストン1b、クランクシャフト15、コネクティングロッド16などに供給され、各部の潤滑・冷却等に使用される。そして、このようにして供給されたエンジンオイルは、エンジン1の各部の潤滑・冷却等のために使用された後、オイルパン18に戻され、再びオイルポンプによって汲み上げられるまでオイルパン18内に貯留される。オイルパン18には、エンジンオイルの温度を検出する油温センサ22が配置されている。また、エンジン1のシリンダブロック1cには、エンジン水温(冷却水温)を検出する水温センサ21が配置されている。
エンジン1の燃焼室1aには点火プラグ3が配置されている。点火プラグ3の点火タイミングはイグナイタ4によって調整される。イグナイタ4は、後述するECU(電子制御ユニット)100によって制御される。
エンジン1の燃焼室1aには吸気通路11と排気通路12が接続されている。吸気通路11と燃焼室1aとの間に吸気バルブ13が設けられており、この吸気バルブ13を開閉駆動することにより、吸気通路11と燃焼室1aとが連通または遮断される。また、排気通路12と燃焼室1aとの間に排気バルブ14が設けられており、この排気バルブ14を開閉駆動することにより、排気通路12と燃焼室1aとが連通または遮断される。これら吸気バルブ13及び排気バルブ14の開閉駆動は、クランクシャフト15の回転が伝達される吸気カムシャフト及び排気カムシャフトの各回転によって行われる。
一方、吸気通路11には、エアクリーナ7、熱線式のエアフローメータ23、吸気温センサ24(エアフローメータ23に内蔵)、及び、エンジン1の吸入空気量を調整するための電子制御式のスロットルバルブ5が配置されている。スロットルバルブ5はスロットルモータ6によって駆動される。スロットルバルブ5の開度はスロットルポジションセンサ26によって検出される。エンジン1の排気通路12には、排気ガス中の酸素濃度を検出するO2センサ25及び三元触媒8が配置されている。
そして、吸気通路11には、燃料噴射用のインジェクタ(燃料噴射弁)2が配置されている。インジェクタ2には、燃料タンクから燃料ポンプによって所定圧力の燃料が供給され、吸気通路11に燃料が噴射される。この噴射燃料は吸入空気と混合されて混合気となってエンジン1の燃焼室1aに導入される。燃焼室1aに導入された混合気(燃料+空気)は点火プラグ3にて点火されて燃焼・爆発する。この混合気の燃焼室1a内での燃焼・爆発によりピストン1bが往復運動してクランクシャフト15が回転する。以上のエンジン1の運転状態は、ECU100によって制御される。
−ECU−
ECU100は、図2に示すように、CPU101、ROM102、RAM103、バックアップRAM104などを備えている。
ECU100は、図2に示すように、CPU101、ROM102、RAM103、バックアップRAM104などを備えている。
ROM102は、各種制御プログラムや、それら各種制御プログラムを実行する際に参照されるマップ等が記憶されている。CPU101は、ROM102に記憶された各種制御プログラムやマップに基づいて演算処理を実行する。RAM103は、CPU101での演算結果や各センサから入力されたデータ等を一時的に記憶するメモリであり、バックアップRAM104は、エンジン1の停止時にその保存すべきデータ等を記憶する不揮発性のメモリである。
これらCPU101、ROM102、RAM103、及び、バックアップRAM104は、バス107を介して互いに接続されるとともに、入力インターフェース105及び出力インターフェース106と接続されている。
入力インターフェース105には、水温センサ21、油温センサ22、エアフローメータ23、吸気温センサ24、O2センサ25、スロットルポジションセンサ26、クランクポジションセンサ27、及び、イグニッションスイッチ28などが接続されている。出力インターフェース106には、インジェクタ2、点火プラグ3のイグナイタ4、スロットルバルブ5のスロットルモータ6、及び、オイル交換時期に至ったことを運転者等に通知(警告)するためのウォーニングランプ9などが接続されている。
そして、ECU100は、上記した各種センサの出力信号に基づいて、エンジン1の各種制御を実行する。さらに、ECU100は、下記のエンジンオイル劣化判定処理を実行する。
−エンジンオイル劣化判定処理−
まず、オイル劣化を判定する指標には、全塩基価、不溶解分量、粘度などが挙げられる。これらオイル劣化指標のうち、酸性物質中の中和能力を示す全塩基価は、図4に示すように添加剤(清浄剤)の消耗にともなって低下するので、全塩基価の減少量に対して所定の閾値Th0を設定することにより、オイル交換時期(Ddrain)を判定することができる。
まず、オイル劣化を判定する指標には、全塩基価、不溶解分量、粘度などが挙げられる。これらオイル劣化指標のうち、酸性物質中の中和能力を示す全塩基価は、図4に示すように添加剤(清浄剤)の消耗にともなって低下するので、全塩基価の減少量に対して所定の閾値Th0を設定することにより、オイル交換時期(Ddrain)を判定することができる。
また、エンジンオイルの劣化を判定する具体的な方法としては、上述したように、エンジンの運転状態(燃料噴射量、エンジン回転数、油温、車速など)をセンサ等によって検出し、それら検出値に基づいて、オイル劣化指標(全塩基価、不溶解分量、粘度など)毎の劣化係数を算出し、その劣化係数を積分した積分値を基準値と比較してオイル交換時期を判定する方法がある。
このような従来のオイル劣化判定方法では、エンジンオイルが新しいときと、エンジンオイルが古くなって添加剤の残存量が少なくなったときに関係なく、計算上の取り扱いは同じであり、同一のエンジン運転状態であれば、新しいエンジンオイル、劣化が進んだ古いエンジンオイルに関わらず、新たに生じる劣化度は同じとして計算(積分)を行って劣化を判定している。しかしながら、新しい状態のエンジンオイルと、使用過程でのエンジンオイルとでは、添加剤濃度や外部混入物の量・質に差があって、同一のストレス(例えば熱や酸性物質による影響)を受けても、エンジンオイルの受けるダメージ(劣化)は異なるため、正確なオイル劣化判定を行うには、オイル劣化度の経時変化を考慮する必要がある。
また、オイル劣化指標は、その指標毎に変化が異なるため、この点を考慮する必要がある。例えばオイル劣化指標を、全塩基価の減少と不溶解分の増加(例えばペンタン不溶解分の増加)の2つの指標とする場合、図5に示すように、全塩基価は走行初期から変化(減少)し、その変化の度合(全塩基価の減少度)は走行時間が長くなるほど小さくなる。一方、不溶解分は、走行時間がある程度経過した後に変化(増加)が顕著となり、しかも走行時間が長くなるほど不溶解分の増加度が加速される。このようにオイル劣化指標毎に劣化現象が異なるため、複数のオイル劣化指標を並列計算する場合、個々のオイル劣化度の経時変化を考慮する必要がある。
そこで、この例では、上記したようなオイル劣化度の経時変化を考慮し、エンジン1の運転状態から求めるオイル劣化指標を、現在のオイル劣化度に依存する変数として時間積分を行うことで、オイル劣化を正しく判定できるようにする。また、複数のオイル劣化指標を並列計算する場合、図5に示すようなオイル劣化指標の現象(減少・増大)を考慮して、エンジン1の運転状態から求める2つのオイル劣化指標(全塩基価の減少と不溶解分の増加)を、それぞれ現在のオイル劣化度に依存する変数として時間積分を行うことによりオイル劣化度を求めてオイル劣化判定を行う。
その具体的な例(エンジンオイル劣化判定処理)を、図3のフローチャートを参照して説明する。
まず、図3の各ステップの処理を説明する前に、ステップST4で算出する現在のオイル劣化度α1、オイル劣化度y1、及び、現在のオイル劣化度α2、オイル劣化度y2の演算式について説明する。
現在のオイル劣化度α1(オイル劣化指標:全塩基価の減少)の演算式は、例えば、図5に示すような全塩基価の減少(実際に起こる現象)を考慮し、予め実験・計算等によって油温θ、エンジン回転数r、燃料噴射量qの各パラメータとオイル劣化度α1との関係を近似する式[α1=∫Z1(θ,r,q)dt]を求めるという手法で得ることができる。また、オイル劣化度y1(オイル劣化指標:全塩基価の減少)の演算式は、油温θ、エンジン回転数r、燃料噴射量qの各パラメータとオイル劣化指標(全塩基価の減少)との関係を求める線形の式(予め実験・計算等によって求めた関係式)を基本式とし、その線形の式から求まる全塩基価の減少量(定数)を、現在のオイル劣化度α1に依存する変数としてオイル劣化度y1を算出する演算式[y1=∫g1(α1,θ,r,q)dt]である。換言すれば、オイル劣化度y1の演算式は、油温θ、エンジン回転数r、燃料噴射量qのエンジン1の運転状態に基づいて上記線形の式から求まる全塩基価の減少量(定数)にα1を掛け合わせて時間積分することにより、オイル劣化度y1を求める演算式である。
現在のオイル劣化度α2(オイル劣化指標:不溶解分の増加)の演算式は、例えば、図5に示すような不溶解分の増加(実際に起こる現象)を考慮し、予め実験・計算等によって油温θ、エンジン回転数r、燃料噴射量qの各パラメータと現在のオイル劣化度α2との関係を近似する式[α2=∫Z2(θ,r,q)dt]を求めるという手法で得ることができる。また、オイル劣化度y2(オイル劣化指標:不溶解分の増加)の演算式は、油温θ、エンジン回転数r、燃料噴射量qの各パラメータとオイル劣化指標(不溶解分の増加)との関係を求める線形の式(予め実験・計算等によって求めた関係式)を基本式とし、その線形の式から求まる不溶解分の増加量(定数)を、現在のオイル劣化度α2に依存する変数としてオイル劣化度y2を算出する演算式[y2=∫g2(α2,θ,r,q)dt]である。換言すれば、オイル劣化度y2の演算式は、油温θ、エンジン回転数r、燃料噴射量qのエンジン1の運転状態に基づいて上記線形の式から求まる不溶解分の増加量(定数)にα2を掛け合わせて時間積分することにより、オイル劣化度y2を求める演算式である。
なお、以上の現在のオイル劣化度α1、オイル劣化度y1、及び、現在のオイル劣化度α2、オイル劣化度y2の各演算式は、ECU100のROM102内に記憶しておく。
次に、オイル劣化判定処理について図3を参照して具体的に説明する。
まず、ステップST1において、エンジン1が始動しているか否かを判定し、エンジン1が始動していないときには、このルーチンを一旦終了する。エンジン1が始動している場合はステップST2に進む。
ステップST2では、次回始動時警告フラッグがONであるか否かを判定する。いま、エンジンオイルの交換初期(エンジンオイルが新品)のときには、オイル劣化度y1、y2は初期値「0」であり、次回始動時警告フラッグはOFFであるので、ステップST3に進む。
ステップST3においては、エンジン1の運転状態(油温θ、エンジン回転数r、燃料噴射量q)検出する。油温θは、オイルパン18に配置した油温センサ22の出力信号から読み込む。エンジン回転数rは、クランクポジションセンサ27の出力信号から読み込む。燃料噴射量qは、エンジン回転数r及び負荷(エアフローメータ23の検出信号から得られる吸入空気量)などのエンジン1の運転状態に基づいて算出する。
ステップST4では、ステップST3で検出した油温θ、エンジン回転数r、燃料噴射量qに基づいて、現在のオイル劣化度α1(オイル劣化指標:全塩基価の減少)を演算式[α1=∫Z1(θ,r,q)dt]を用いて算出するとともに、オイル劣化度y1(オイル劣化指標:全塩基価の減少)を演算式[y1=∫g1(α1,θ,r,q)dt]を用いて算出する。さらに、ステップST3で検出した油温θ、エンジン回転数r、燃料噴射量qに基づいて、現在のオイル劣化度α2(オイル劣化指標:不溶解分の増加)を演算式[α2=∫Z2(θ,r,q)dt]を用いて算出するとともに、オイル劣化度y2(オイル劣化指標:不溶解分の増加)を演算式[y2=∫g2(α2,θ,r,q)dt]を用いて算出する。
次に、ステップST5において、イグニッションスイッチ28がOFF(IG OFF)であるか否かを判定し、その判定結果が否定判定である場合(イグニッションスイッチ28がONである場合)、ステップST3に戻って、油温θ、エンジン回転数r、燃料噴射量qを検出し、それら油温θ、エンジン回転数r、燃料噴射量qに基づいて、現在のオイル劣化度α1(オイル劣化指標:全塩基価の減少)を演算式[α1=∫Z1(θ,r,q)dt]を用いて算出するとともに、オイル劣化度y1(オイル劣化指標:全塩基価の減少)を演算式[y1=∫g1(α1,θ,r,q)dt]を用いて算出する。さらに、油温θ、エンジン回転数r、燃料噴射量qに基づいて、現在のオイル劣化度α2(オイル劣化指標:不溶解分の増加)を演算式[α2=∫Z2(θ,r,q)dt]を用いて算出するとともに、オイル劣化度y2(オイル劣化指標:不溶解分の増加)を演算式[y2=∫g2(α2,θ,r,q)dt]を用いて算出する。
このような油温θ、エンジン回転数r、燃料噴射量qの検出(ステップST3)と、オイル劣化度y1,y2の算出(ステップST4)とは、イグニッションスイッチ28がOFF(ステップST5の判定結果が肯定判定)となるまで、所定時間毎(例えば数ms毎)に順次繰り返して実行される。
次に、イグニッションスイッチ28がOFF(ステップST5の判定結果が肯定判定)となると、ステップST6において、現時点(IG OFF時点)のオイル劣化度y1(オイル劣化指標:全塩基価の減少)が基準値Th1を超えているか否か、または、オイル劣化度y2(オイル劣化指標:不溶解分の増加)が基準値Th2を超えているか否かを判定する。ステップST6の判定結果が否定判定である場合([y1≦Th1]及び[y2≦Th2]である場合)は、エンジン1が停止した後に(ステップST7が肯定判定)、このルーチンを一旦終了する。
以上のステップST1〜ステップST7の処理は、エンジン1が始動する毎に順次実行される。ここで、オイル劣化度y1(y1=∫g1(α1,θ,r,q)dt)は全塩基価の減少量の時間積分値であるので、エンジン1の運転時間の増大にともなって増加していく。また、オイル劣化度y2(y2=∫g2(α2,θ,r,q)dt)は、不溶解分の増加量の時間積分値であり、エンジン1の運転時間がある程度経過した後に運転時間にともなって増加していく。そして、このように経時的に増加するオイル劣化度y1が基準値Th1を超えたとき[y1>Th1]、または、経時的に増加するオイル劣化度y2が基準値Th2を超えたとき[y2>Th2]には、ステップST6の判定結果が肯定判定となり、ステップST8において次回始動時警告フラグをONにする。
なお、ステップST6においてオイル劣化度y1(オイル劣化指標:全塩基価の減少)に対して設定する基準値Th1は、図5に示すような全塩基価の減少現象とオイル交換時期との関係などを考慮し、予め実験・計算等によって経験的に求めた値を設定する。また、オイル劣化度y2(オイル劣化指標:不溶解分の増加)に対して設定する基準値Th2についても、同様に図5に示すような不溶解分の増加現象とオイル交換時期との関係などを考慮し、予め実験・計算等によって経験的に求めた値を設定する。
そして、次回始動時警告フラグがONになった後、次回のエンジン始動時には、ステップST2の判定結果が肯定判定となるので、ステップST9においてウォーニングランプ9を点灯して、運転者等にオイル交換時期である旨の警告を発する。
ここで、ウォーニングランプ9を点灯した後においても、油温θ、エンジン回転数r、燃料噴射量qの検出(ステップST3)、及び、オイル劣化度y1,y2の算出(ステップST4)は、次回始動時警告フラグがOFFとなるまで、エンジン始動毎に順次繰り返して実行される。また、ウォーニングランプ9を点灯した後、エンジンオイルの交換が実施されるまでは、次回始動時警告フラグはONの状態が維持される。そして、オイル交換が実施され、例えばリセットスイッチ(図示せず)が操作されたときに、次回始動時警告フラグをOFFにするとともに、α1、y1及びα2、y2の各積分値を初期値「0」に戻す。
このような初期化が行われた後、再度、ステップST1〜ステップST7の処理がエンジン始動毎に順次実行され、ステップST4で算出されるオイル劣化度y1、y2がそれぞれ運転時間の増大にともなって増加していき、オイル劣化度y1が基準値Th1を超えた時点[y1>Th1]、または、経時的に増加するオイル劣化度y2が基準値Th2を超えた時点[y2>Th2]で、次回始動時警告フラグをONにし、次回のエンジン始動時にウォーニングランプ28を点灯する、という処理が順次繰り返される。
以上のエンジンオイル劣化判定処理によれば、オイル劣化度の経時変化を考慮し、エンジン1の運転状態(油温θ、エンジン回転数r、燃料噴射量q)から求めるオイル劣化指標(全塩基価の減少と不溶解分の増加)を、現在のオイル劣化度に依存する変数として時間積分を行っているので、オイル劣化を正しく判定することができる。しかも、2つのオイル劣化指標のうち、いずれか一方のオイル劣化指標(全塩基価の減少または不溶解分の増加)の劣化度が限界に達したときに、エンジンオイルの交換時期を運転者等に知らせることができるので、フェイルセーフ性を高めることができる。
−他の実施形態−
以上の例では、現在のオイル劣化度α1、α2を演算式を用いて算出しているが、これに替えて、現在のオイル劣化度α1、α2をマップを用いて算出するようにしてもよい。
以上の例では、現在のオイル劣化度α1、α2を演算式を用いて算出しているが、これに替えて、現在のオイル劣化度α1、α2をマップを用いて算出するようにしてもよい。
この場合、現在のオイル劣化度α1(オイル劣化指標:全塩基価の減少)を算出するマップは、例えば図5に示すような全塩基価の減少を考慮し、予め実験・計算等により、油温θ、エンジン回転数r、燃料噴射量qの各パラメータとオイル劣化度α1との関係をマップ化したものを用いる。また、現在のオイル劣化度α2(オイル劣化指標:不溶解分の増加)を算出するマップについても、同様に、例えば図5に示すような不溶解分の増加を考慮し、予め実験・計算等により、油温θ、エンジン回転数r、燃料噴射量qの各パラメータと現在のオイル劣化度α2との関係をマップ化したものを用いる。
さらに、オイル劣化度y1、y2についても、エンジン1の運転状態に基づいてマップを参照してオイル劣化指標を求め、そのオイル劣化指標の時間積分を行うことによって求めるようにしてもよい。
以上の例では、現在のオイル劣化度α1、α2とオイル劣化度y1、y2とを個別の演算式で算出しているが、これに限られることなく、現在のオイル劣化度α1、α2をオイル劣化度y1、y2の演算式に組み込んでもよい。具体的には、例えば、オイル劣化度y1の演算式を[y1=∫g1(Z1(θ,r,q),θ,r,q)dt]とし、オイル劣化度y2の演算式を[y2=∫g2(Z2(θ,r,q),θ,r,q)dt]としてもよい。
以上の例では、全塩基価の減少と不溶解分の増加との2つのオイル劣化指標を計算しているが、これに限られることなく、それら全塩基価の減少及び不溶解分の増加の2つの指標に、粘度増加などの他のオイル劣化指標を加えてオイル劣化を判定するようにしてもよい。また、全塩基価の減少または不溶解分の増加のいずれか一方のみをオイル劣化指標としてオイル劣化を判定するようにしてもよい。
以上の例では、エンジンの運転状態のうち、油温、エンジン回転数、燃料噴射量を検出し、それら油温、エンジン回転数、燃料噴射量の各検出値に基づいてオイル劣化度y1、y2を算出しているが、これに限られることなく、油温、エンジン回転数、燃料噴射量に加えて、エンジンの冷却水温などの他のエンジン運転状態を検出し、それら油温、エンジン回転数、燃料噴射量、冷却水温を含むエンジン運転状態の検出値に基づいてオイル劣化度y1,2を算出するようにしてもよい。
以上の例では、運転者等にオイル交換時期である旨を警告する手段として、ウォーニングランプを点灯しているが、これに限られることなく、ウォーニングランプの点滅、あるいはLEDや液晶などを用いてメッセージを表示する等の他の手段によって運転者等に警告を発するようにしてもよい。
また、オイル劣化度y1、y2から残存走行距離(次のオイル交換時期までの残り走行距離)を求め、それら2つの演算結果のうち、残存走行距離が短い方の数値を、常時または使用者の要求などに応じて、アナログ方式またはディジタル方式の表示装置に表示してもよい。
以上の例では、ガソリンエンジンのエンジンオイルの劣化判定に本発明を適用した例を示したが、本発明はこれに限られることなく、例えばLPG(液化石油ガス)やLNG(液化天然ガス)などの他の燃料とする点火方式のエンジンのエンジンオイルの劣化判定にも適用可能であり、また、筒内直噴型エンジンのエンジンオイルの劣化判定にも適用可能である。さらに、点火方式のエンジンに限られることなく、ディーゼルエンジンなどのエンジンオイルの劣化判定にも本発明を適用することは可能である。
1 エンジン
2 インジェクタ
3 点火プラグ
5 スロットルバルブ
6 スロットルモータ
9 ウォーニングランプ
18 オイルパン
22 油温センサ
27 クランクポジションセンサ
100 ECU(判定装置)
2 インジェクタ
3 点火プラグ
5 スロットルバルブ
6 スロットルモータ
9 ウォーニングランプ
18 オイルパン
22 油温センサ
27 クランクポジションセンサ
100 ECU(判定装置)
Claims (3)
- 内燃機関の運転状態に基づいてオイル劣化指標を求め、そのオイル劣化指標を時間積分した積分値からエンジンオイルの劣化を判定するエンジンオイルの劣化判定装置において、前記内燃機関の運転状態から求めるオイル劣化指標を、現在のオイル劣化度に依存する変数として時間積分を行うことを特徴とするエンジンオイルの劣化判定装置。
- 請求項1記載のエンジンオイルの劣化判定装置において、
前記内燃機関の運転状態から複数種のオイル劣化指標を求めてエンジンオイルの劣化を判定するにあたり、それら複数種のオイル劣化指標を、それぞれ現在のオイル劣化度に依存する変数として時間積分を行うことを特徴とするエンジンオイルの劣化判定装置。 - 請求項2記載のエンジンオイルの劣化判定装置において、
前記複数種のオイル劣化指標が、エンジンオイル中の全塩基価の減少とエンジンオイル中の不溶解分の増加であることを特徴とするエンジンオイルの劣化判定装置。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2006275680A JP2008095562A (ja) | 2006-10-06 | 2006-10-06 | エンジンオイルの劣化判定装置 |
Applications Claiming Priority (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2006275680A JP2008095562A (ja) | 2006-10-06 | 2006-10-06 | エンジンオイルの劣化判定装置 |
Publications (1)
Publication Number | Publication Date |
---|---|
JP2008095562A true JP2008095562A (ja) | 2008-04-24 |
Family
ID=39378672
Family Applications (1)
Application Number | Title | Priority Date | Filing Date |
---|---|---|---|
JP2006275680A Pending JP2008095562A (ja) | 2006-10-06 | 2006-10-06 | エンジンオイルの劣化判定装置 |
Country Status (1)
Country | Link |
---|---|
JP (1) | JP2008095562A (ja) |
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Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
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-
2006
- 2006-10-06 JP JP2006275680A patent/JP2008095562A/ja active Pending
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